(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007853
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/12 20060101AFI20230112BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B43K24/12
B43K24/18 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110957
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100208100
【弁理士】
【氏名又は名称】坪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】豊島 遼太朗
(72)【発明者】
【氏名】河原木 康平
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HA05
2C353HA06
2C353HA07
2C353HA09
2C353HE01
2C353HE15
(57)【要約】
【課題】筆記時に選択したペンリフィルのペン先を軸心上に合致させた状態で突出させ、繊細な筆記作業を可能とするノック式筆記具を提供する。
【解決手段】軸筒1内に、ボールペンリフィル5の移動を案内するガイド孔を有すリフィルガイド2を配置し、このガイド孔は、ボールペンリフィル5を軸筒1内壁から軸心上の位置へ復動可能となるよう、軸心を基点に直線状又は放射線状に形成され、非筆記時には、それぞれのガイド孔に、軸筒内壁に沿うようにボールペンリフィル5がそれぞれ1本ずつ挿通された状態で、複数本のボールペンリフィル5が軸筒1に収納され、ボールペンリフィル5後方にはトリガー6が配置され、このトリガー6はボールペンリフィル5を軸筒1内壁から軸心上へ押し込んだ後も軸筒1外へ突出される状態に形成され、軸筒1後方内側に、トリガー6の後端を支持可能に形成したリフィル受け部4を配置されるように構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、ペンリフィルの移動を案内するガイド孔を有すリフィルガイドを配置し、該ガイド孔は、ペンリフィルを軸筒内壁から軸心上の位置へ復動可能となるよう、軸心を基点に直線状又は放射線状に形成され、
非筆記時には、それぞれのガイド孔に、軸筒内壁に沿うようにペンリフィルがそれぞれ1本ずつ挿通された状態で、複数本のペンリフィルが軸筒に収納され、
各ペンリフィル後方にはトリガーが配置され、該トリガーはペンリフィルを軸筒内壁から軸心上へ押し込んだ後も軸筒外へ突出される状態に形成され、
軸筒後方内側に、前記トリガーの後端を支持可能に形成したリフィル受け部を配置している
ことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項2】
前記軸筒の出没口近傍の内周面に、中心が軸筒の軸心と一致し、ペンリフィルの外周面に圧接する保持部が設けられた
ことを特徴とする請求項1記載のノック式筆記具。
【請求項3】
軸筒に収納された複数本のペンリフィルは、それぞれ色の異なるインクが充填されたリフィル、又は、ボールペンチップ先端に回転可能に抱持されたボールの直径が異なるボールペンリフィルである
ことを特徴とする請求項1又は2記載のノック式筆記具。
【請求項4】
軸筒に収納された複数本のペンリフィルのうち少なくとも1本は、シャープペンシルとして機能するシャープペンシルリフィルであって、
その余のペンリフィルは、それぞれ色の異なるインクが充填され、又は、ボールペンチップ先端に回転可能に抱持されたボールの直径が異なるボールペンリフィルである
ことを特徴とする請求項1ないし3記載のノック式筆記具。
【請求項5】
軸筒に収納された複数本のペンリフィルは、2本以上がシャープペンシルとして機能するシャープペンシルリフィルであって、
各々のシャープペンシルリフィルが、シャープペンシルリフィルの内部に収容される、異なる鉛芯の太さに対応する規格の口金及びチャックを具備している
ことを特徴とする請求項1、2又は4記載のノック式筆記具。
【請求項6】
軸筒に収納された複数本のペンリフィルは、インクが貯蔵されているインク貯蔵部を具備し、フェルト、合成繊維又は合成樹脂を使用したペン先を有するサインペンリフィルである
ことを特徴とする請求項1又は2記載のノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関するものであり、より詳細には、軸筒内に複数のペンリフィルを収納し、ペンリフィルの後端側に接続されたスライドレバーを選択的にノックして所望のペンリフィルのペン先を突出させるタイプのノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色の異なるボールペンリフィルを複数備え、選択的に繰り出して使用する多色ペンが広く出回っている。例えば、黒、赤、青、緑等の異なる色のボールペンリフィルを備えた種々の組み合わせの多色ペン、あるいは、シャープペンリフィルを含む多機能ペンが商品化されている。
【0003】
これらの多色ペンあるいは多機能ぺンから1本の所望のリフィルを選択する方式として、ノック式と回転式が広く知られている。ノック式の多色ペン等においては、一般に、所望の色の付いたスライドレバーを選択し、指先で繰り出してペン先を突出させる。回転式の場合には、左右に行き来するツイスト方式と360度回転し順番にペン先が出没するロータリー方式が知られている。
【0004】
これらの多色ペン等では、複数本のペンリフィルが、軸筒内面にほぼ内接するような位置に放射状に配置されている。そして、ノックないし回転操作によりペンリフィルは、先細に形成されている軸筒の内壁に沿って、ペン先が軸心位置へと移動し、出没口からペン先が突出することで筆記可能な状態となっている。
【0005】
上記した配置では、ペンリフィルは、可撓性によりペンリフィル自体が軸筒先端にかけて曲がった状態になるか、スライドレバーとの接続箇所すなわち軸筒内壁付近から出没口にかけてペンリフィルが伸び、軸筒の軸心に対し傾いた状態となっていた。したがって、ペンリフィルは軸筒の軸心上と一致せず、ペン先が軸心に一定の角度をもった状態で突出することになる。そのため、筆記するときに違和感を覚えることがある。
また、ペン先が出没口から斜めに出るために、出没口を単色のノック式ペンに比べて大きく成形する必要がある。そのために、ペン先と出没口に遊びが生じ、精緻な図面や繊細な文字を書くときの支障になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-43478号公報
【特許文献2】実開平1-85092号公報
【特許文献3】特開2013-129069号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】シエド・ランプ、“リボルペン 書くときにペン先が傾かない3色ボールペン”、[online]、[令和3年6月29日検索]、インターネット<URL:https://www.wemake.jp/concepts/452>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この問題に対し、軸筒先端口内面にガタ付き防止部を形成し、このガタ付き防止部が軸筒先端口内面でペンリフィルと接することでペン先のガタ付きをなくすことが特許文献1で開示されている。
【0009】
しかし、ガタ付き防止部を設けたとしても、ペン先が斜めになっている状態それ自体の解消とはならないことから、単色ペンに比して書きづらく、繊細な文字を記載することが困難であるという課題は残ったままである。また、シャープペンシルリフィルにあってはペン先が斜めになった状態で筆圧が加えられるため、シャープペンシルの鉛芯が折れやすいという課題がある。
【0010】
この課題に対し、特許文献2では、筆記面に対しペン先を垂直に配置できるようにするため、回転式筆記具において、軸筒先端開口部を軸筒の軸心からあえてずらし偏心させ、繰り出しカムの先端頂点部を偏心させた軸筒先端開口部に合致させることで、ペン先が斜めになることを排除することが提案されている。しかし、筆記時にペン先が軸心からずれた場所に位置しているため、通常の筆記具に比して違和感を拭い得ない。
【0011】
さらに、特許文献3では、軸筒内に配置されるペンリフィルのガイド孔につき、複数の孔のうち1つを軸心に重なるように設け、シャープペンシルリフィル用のガイド孔とし、ボールペンリフィル用に他の孔を軸筒の内壁に沿うように配置することが提案されている。この構成を採った場合、シャープペンシルとしては課題が解決されるものの、それ以外のボールペンリフィルのペン先が斜めに突出することへの解決手段とはなり得ていない。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、各ペンリフィル自体を軸筒の軸心上に移動させ、任意に選択したペン先を軸心上に合致させた状態で突出させ、繊細な筆記作業を可能とする筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための第1の発明に係る態様は、軸筒内に、ペンリフィルの移動を案内するガイド孔を有すリフィルガイドを配置し、このガイド孔は、ペンリフィルを軸筒内壁から軸心上の位置へ復動可能となるよう、軸心を基点に直線状又は放射線状に形成され、非筆記時には、それぞれのガイド孔に、軸筒内壁に沿うようにペンリフィルがそれぞれ1本ずつ挿通され、各ペンリフィル後方にはトリガーが配置され、このトリガーはペンリフィルを軸筒内壁から軸心上へ押し込んだ後も軸筒外へ突出される状態に形成され、軸筒後方内側に、トリガーの後端を支持可能に形成したリフィル受け部を配置しているノック式筆記具であることを要旨とする。
【0014】
上記課題を解決するための第2の発明に係る態様は、第1の発明において、軸筒の出没口近傍の内周面に、中心が軸筒の軸心と一致し、ペンリフィルの外周面に圧接する保持部が設けられたノック式筆記具であることを要旨とする。
【0015】
上記課題を解決するための第3の発明に係る態様は、第1又は第2の発明において、軸筒に収納された複数本のペンリフィルは、それぞれ色の異なるインクが充填されたリフィル、又は、ボールペンチップ先端に回転可能に抱持されたボールの直径が異なるボールペンリフィルであるノック式筆記具であることを要旨とする。
【0016】
上記課題を解決するための第4の発明に係る態様は、第1ないし第3の発明において、軸筒に収納された複数本のペンリフィルのうち少なくとも1本は、シャープペンシルとして機能するシャープペンシルリフィルであって、その余のペンリフィルは、それぞれ色の異なるインクが充填され、又は、ボールペンチップ先端に回転可能に抱持されたボールの直径が異なるボールペンリフィルであることを要旨とする。
【0017】
上記課題を解決するための第5の発明に係る態様は、第1、第2又は第4の発明において、軸筒に収納された複数本のペンリフィルは、2本以上がシャープペンシルとして機能するシャープペンシルリフィルであって、各々のシャープペンシルリフィルが、シャープペンシルリフィルの内部に収容される、異なる鉛芯の太さに対応する規格の口金及びチャックを具備していることを要旨とする。
【0018】
上記課題を解決するための第6の発明に係る態様は、第1又は第2の発明において、軸筒に収納された複数本のペンリフィルは、インクが貯蔵されているインク貯蔵部を具備し、フェルト、合成繊維又は合成樹脂を使用したペン先を有するサインペンリフィルであること要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した第1の発明に係るノック式筆記具によれば、ペンリフィルが軸筒と平行に軸心上に位置し、ペン先が軸筒先口の中央から突出するために、ペンリフィルの外周面と出没口の内周面とに遊びがほとんど無い状態に形成可能であり、ガタが生じにくい。そして、剛体のペンリフィルを収納しても機能する。ペン先が真っ直ぐに突出することで筆記時の違和感がなくなり、また、遊びが無いことで、筆記の正確性を高める効果を奏する。
【0020】
上述の第2の発明に係るノック式筆記具によれば、中心が軸筒の軸心と一致するように出没口近傍の内周面に設けた保持部によって、ペンリフィルの外周面が圧接された状態でペン先が突出される。このことにより、ペン先の安定度がさらに増し、強い筆圧で筆記してもペン先の変形やブレが少なくなる。また、筆圧が高い筆記者に対して、耐久性の高いノック式筆記具を提供することができる。
【0021】
上述の第3の発明に係るノック式筆記具によれば、第1及び第2の発明に係る機能を有しつつ、1本で複数の種類の色又は字幅を書き分けられるノック式筆記具を提供することができる。
【0022】
上述の第4の発明に係るノック式筆記具によれば、第1及び第2の発明に係る機能をシャープペンシルリフィルにも適用したことで、ペン先から突出したシャープペンシルの鉛芯に対し、横方向からの筆圧が掛かり難くなり、鉛芯が折れにくいシャープペンシル付き多機能ペンを提供することができる。
【0023】
上述の第5の発明に係るノック式筆記具によれば、極細の鉛芯でも折れにくく、多様な字幅を書き分けられる複数のシャープペンシルリフィルを備えた多機能ペンを提供することができる。
【0024】
上述の第6の発明に係るノック式筆記具によれば、第1及び第2の発明に係る機能を有した多色サインペンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るノック式筆記具の一例で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図2】本発明に係るノック式筆記具の一例で、(c)は
図1(a)のB-B線断面図、(d)は
図1(a)のC-C線断面図、(e)は
図1(a)のD-D線断面図である。(f)は
図1(b)のA-A線断面図である。
【
図3】本発明に係るノック式筆記具のペンリフィルの状態を表す模式図で、(g)が非筆記時、(h)は筆記時の状態を示している。
【
図4】本発明に係るノック式筆記具の一例で、軸筒の一部を切り欠いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図面の記載において、同一要素又同一機能を有する要素には、同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係などは現実のものと異なりうること、また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率に異なる部分が含まれていることがあることに留意すべきである。
なお、以下に示す説明において、「前方」とはノック式筆記具においてペン先の出没する側を意味し、「後方」とはその反対側、すなわち、トリガー(スライドレバー)の位置する側を意味する。
【0027】
本発明の一実施の形態に係るノック式筆記具は、
図1に示すような外観を呈する。すなわち、
図1(a)に示すように、軸筒1は、前方に位置する前軸11と、後方に位置する後軸12とが、互いに螺合して形成される。軸筒1内部には、3本のボールペンリフィル5が収納されている。そして、軸筒1の先端にはペン先の出没する出没口11aが設けられ、後端には尾冠8が嵌め込んだ状態で配置されている。軸筒1先端の出没口11aは、ボールペンリフィル5のペン先が筆記のために突出し、また没入するためのものである。後軸12後端付近には、前後方向にスライド溝12aが穿設されている。
【0028】
図2は、
図1のノック式筆記具を各断面図で示したものであり、
図4は、軸筒の一部を切り欠いた斜視図である。
図2(f)に示すように、ボールペンリフィル5の後端は後軸12後方に位置するトリガー6に連接されている。
図2(f)及び
図4に示すように、スライド溝12aの中には、トリガー6の一部である第1トリガー突起6bと第2トリガー突起6cが前後にスライド可能に位置している。後軸12内の後端付近にはリフィル受け部4がその軸心と軸筒1との軸心とが一致するように設けられている。
ボールペンリフィル5の前方と、スプリング受け3の後端面との間には、ボールペンリフィル5が挿入されているスプリング7が介装されている。このスプリング7によりボールペンリフィル5は常に後方へ付勢される。
図2(c)に示すように、トリガー6は、平面視で、後軸12内に放射線状に配置されている。非筆記状態にあるボールペンリフィル6に連接されたトリガーの第1トリガー突起6bは、軸心付近に向かい合うように位置する。
図2(f)及び
図4に示すように、筆記時には、所望のボールペンリフィル5のトリガー6を指先などで押圧して、軸線方向に前進させる。このとき、トリガー6は軸心方向にも押され、後述するリフィルガイド2の第1ガイド孔2aに案内されてボールペンリフィル5が軸心上まで移動し、トリガー6の後端面がリフィル受け部4の前端面によって押さえられ、筆圧を受け止める。これと同時に、ペン先が出没口11aから突出する。
トリガー6の一部である第1トリガー突起6b及び第2トリガー突起6cの反対側、すなわち、軸筒1の外側を向く面には、
図1(b)及び
図2(c)に示すようにトリガー段差6aが設けられる。トリガー6を指先などで押圧し、トリガー段差6aの軸筒側の面が軸筒1の外周面に当接したときに、ボールペンリフィル5と軸心とが一致した状態となる。
【0029】
図2(f)及び
図4に示すように、後軸12内には、リフィルガイド2が設けられている。このリフィルガイド2には、
図2(d)に示すように、ボールペンリフィル5を横方向に、すなわち、軸筒内壁から軸心上の位置へ復動可能に、かつ、縦方向に誘導するための第1ガイド孔2aが設けられている。第1ガイド孔2aは、平面視で、軸心から軸筒内壁へと放射状に伸びる3本の孔であり、リフィルガイド2は、円柱をこの放射状の孔で上下方向に刳り抜くように形成される。リフィルガイド2は、後軸12と一体形成しても良いし別部材から成るものとしても良い。
また、前軸11内前方にはスプリング受け3が設けられる。
図2(e)に示すように、スプリング受け3にも、平面視で第1ガイド孔2aと同様の第2ガイド孔3aが設けられている。
従来の多色ボールペンでは、ペンリフィルが挿通される孔が、ペンリフィルの外周面よりもわずかに大きい径の円形に、ペンリフィルと同数、個々独立した状態で設けられ、このことにより、ペンリフィルが軸心上へ移動することを妨げていたが、本発明では、挿通される孔が上述のようにいわば抜き通しの状態になっているため、ペンリフィルの後端からペン先までの全体が軸心上まで移動することが可能となっている。
図3(g)に示すように、非筆記時のボールペンリフィル5は、軸筒1内壁付近に軸心に平行な状態で位置する。そして、筆記時には選択したボールペンリフィル5が、
図3(h)に示すように、真っすぐに軸心上に位置した状態となり、ペン先が出没口11aから真っすぐに突出する。
【0030】
図2(f)及び
図4に示すように、出没口11a近傍の内周面には、中心が軸筒1の軸心と一致し、ボールペンリフィル5外周面に圧接する保持部11bが設けられる。図示は省略するが、保持部11bは、数本の縦リブからなる。保持部11bの後端面は、ペン先が滑らかに移動可能となるよう縦断面で後方に開く放物線状に形成されることが好ましい。
この保持部11bによりボールペンリフィル5の先端部分が保持されるので、ペン先のブレを一層軽減することができる。
なお、保持部11bは、前軸11と別部材とすることなく、前軸11の出没口11a部分を肉厚に形成することでも同様の保持効果を持たせることができる。
【0031】
筆記時のボールペンリフィル5を他のボールペンリフィル5に切り替えるときは、切り替えようとするボールペンリフィル5のトリガー6を指先等で押圧し、軸線方向に前進させる。このとき、既に筆記状態にあり、軸心上に位置しているペンリフィルのトリガー6の一部である第1トリガー突起6bに、切替えようとするトリガー6の一部である第2トリガー突起6cが突き当り、ボールペンリフィル5ごと外側に押しやられることになる。その結果、リフィル受け部4の前端面からトリガー6の後端面が外れ、先のボールペンリフィル5が後退し、代って次のペン先が出没口11aから突出する。
【0032】
上述の実施形態では、ボールペンリフィルの数を3本としたが、この本数に限られるものではなく、任意の本数に増減することが可能である。もっとも、軸筒の内外径の適正さに鑑み、1筆記具あたりのペンリフィルの数は、2~5本が好ましい。
【0033】
上述の実施形態における3本のボールペンリフィルは、それぞれ色の異なるインクが充填された多色ボールペンとする他に、例えば、すべて黒色を選択しつつボールペンチップ先端に回転可能に抱持されたボールの直径が異なるボールペンリフィルとしても良い。ボールの直径を多種とすることで、ペン先が安定し精緻な筆記が可能となる本発明の効果を、太さの書き分けの面で発揮することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
前記実施形態では、ペンリフィルをボールペンリフィルとしたが、シャープペンシルリフィルとしてもよい。
シャープペンシルリフィルは、これに連接したトリガーを軸筒先端方向に押圧することにより、鉛芯繰出機構を作動させて、鉛芯を繰り出すように構成される。シャープペンシルリフィルが2本以上収納される場合には、それぞれのシャープペンシルリフィルが異なる鉛芯の太さに対応する規格の口金及びチャックを具備しているシャープペンシルリフィルとして構成される。従前の多機能ペンに収納されているシャープペンシルでは、鉛芯が出没口から斜めに突出するため、折れやすい嫌いがあったが、ペン先が真っ直ぐ突出する本発明では、鉛芯が折れにくくなる。さらに、字幅の異なる鉛芯を収容するものとした場合、製図のように多種の線の書き分けを1本の筆記具で対応することが可能となる。
【0035】
また、ペンリフィルを、インクが貯蔵されているインク貯蔵部を具備し、フェルト、合成繊維又は合成樹脂を使用したペン先を有するサインペンリフィルとしてもよい。サインペンリフィル用のインクは、空気中の水分を吸収するなどして乾燥を防ぐ機能を有するインクを用いることが好ましい。複数本の異なるサインペンを使用する際、それぞれのキャップの開閉が煩瑣であるところ、1本の筆記具の中に複数のサインペンリフィルを収納することによって、キャップを着ける場合でも1つで足りることとなり、また、インクの性能によってはキャップを不要とし、開閉の煩瑣を軽減ないし解消し得る。
さらに、ペンリフィルとして、ボールペンリフィル、シャープペンシルリフィル及びサインペンリフィルを任意の組み合わせにより構成されたものとしても良い。その他のペンリフィルとして、電子ペン用や修正ペン用のリフィルを収納することで、より多機能な1本の筆記具とすることができる。
【0036】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、構成部品の形状、構造、配置等を上記のものに特定するものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 軸筒
11 前軸
11a 出没口
11b 保持部
12 後軸
12a スライド溝
2 リフィルガイド
2a 第1ガイド孔
3 スプリング受け
3a 第2ガイド孔
4 リフィル受け部
5 ボールペンリフィル
6 トリガー
6a トリガー段差
6b 第1トリガー突起
6c 第2トリガー突起
7 スプリング
8 尾冠