(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078532
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水処理装置及びこれを用いた空間除菌システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20230101AFI20230531BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20230531BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C02F1/469
A61L9/14
A61L9/01 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191690
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】植田 充彦
【テーマコード(参考)】
4C180
4D061
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA19
4C180CB01
4C180EA58X
4C180GG06
4C180GG07
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4D061DA10
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4D061EB01
4D061EB05
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB30
4D061EB39
4D061FA20
4D061GC02
4D061GC12
(57)【要約】
【課題】塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理装置を提供する。
【解決手段】次亜塩素酸水処理装置1は、陽電極2が流路に沿って露出して延設された陽極流路13と、陽極流路13と陰極流路14とを隔てて設けられ、流路を流通する陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)に含まれる陽イオンを透過させる隔膜4と、陽電極2と陰電極3の間に電圧を印加する電気透析電源15とを備え、陽極流路13及び陰極流路14は、陽極流路13を流通する陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)と陰極流路14を流通する陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)とがいずれも同じ方向に流通するように構成され、少なくとも陽極側供給溶液9aは、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水である構造とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽電極が流路に沿って露出して延設された第一流路と、
前記第一流路と対向して並設され、陰電極が流路に沿って露出して延設された第二流路と、
前記第一流路と前記第二流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜と、
前記陽電極と前記陰電極との間に電圧を印加する電源と、
を備え、
前記第一流路及び前記第二流路は、前記第一流路を流通する第一溶液と前記第二流路を流通する第二溶液とがいずれも同じ方向に流通するように構成され、
少なくとも前記第一溶液は、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水であることを特徴とする次亜塩素酸水処理装置。
【請求項2】
平面状の前記陽電極と、前記陽電極と対向する平面状の前記隔膜と、前記陽電極と前記隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第一流路内に前記陽電極及び前記隔膜を露出させる第一スペーサ部材とを有し、
前記第一流路は、流路に沿って露出する前記陽電極及び前記隔膜と、前記第一スペーサ部材とにより構成されており、
平面状の前記陰電極と、前記陰電極と対向する平面状の前記隔膜と、前記陰電極と前記隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第二流路内に前記陰電極及び前記隔膜を露出させる第二スペーサ部材とを有し、
前記第二流路は、流路に沿って露出する前記陰電極及び前記隔膜と、前記第二スペーサ部材とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の次亜塩素酸水処理装置。
【請求項3】
前記第一流路及び前記第二流路は、いずれも蛇行状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の次亜塩素酸水処理装置。
【請求項4】
前記第一溶液及び前記第二溶液は、いずれも塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水処理装置。
【請求項5】
前記第一流路に前記第一溶液を供給するとともに、前記第二流路に前記第二溶液を供給する供給ポンプを備え、
前記供給ポンプは、前記第一溶液と前記第二溶液とを一定流速で供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水処理装置。
【請求項6】
前記陽電極及び前記陰電極は、いずれも白金を含む電極材で構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水処理装置と、
前記第一流路と連通接続され、前記第一溶液を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置と、
を備えることを特徴とする空間除菌システム。
【請求項8】
前記所定の空間には、前記所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられており、
前記第二流路は、前記排水管と連通接続され、前記第二溶液を前記排水管に導入可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の空間除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸水の残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水処理装置及びこれを用いた空間除菌システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塩水の電気分解をすることで、NaClOを主成分としHClO及びNaOHを含む次亜塩素酸水が生成される。次亜塩素酸水は弱酸性側にすることで、除菌力が向上することが知られており、イオン透過能を有する隔膜を使用して生成されるpH弱酸性側に制御する技術が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、pHが弱酸性に調整するだけでは、残留成分となるNaClO及びNaOHの抑制が十分にできているとはいえない。NaClO及びNaOHは、次亜塩素酸水が揮発後も固形分として表面に残留する成分で、この残留成分が潮解及び水に再溶解することで金属の腐食を促進する要因となる。そのため、NaClO及びNaOH成分を多く含む次亜塩素酸水をミスト噴霧すると、微小な残留成分が蓄積されるため、長期間使用時の腐食が懸念される。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、陽電極が流路に沿って露出するように延設した第一流路と、第一流路と対向して並設し、陰電極が流路に沿って露出するように延設した第二流路と、第一流路と第二流路とを隔てて設け、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜と、陽電極と陰電極との間に電圧を印加する電源とを備える。そして、第一流路及び第二流路は、第一流路を流通する第一溶液と第二流路を流通する第二溶液とがいずれも同じ方向に流通するように構成し、少なくとも第一溶液は、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水である構造とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水処理装置の概略図である。
【
図2】
図2は、次亜塩素酸水処理装置の分解斜視図ある。
【
図3】
図3は、次亜塩素酸水処理装置の垂直方向の断面イメージ図である。
【
図4】
図4は、次亜塩素酸水処理装置の水平方向の断面イメージ図である。
【
図5】
図5は、次亜塩素酸水処理装置を流通した次亜塩素酸水の特性と電気透析時間との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水処理装置を用いた空間除菌システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る次亜塩素酸水処理装置は、陽電極が流路に沿って露出して延設された第一流路と、第一流路と第二流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜と、陽電極と陰電極の間に電圧を印加する電源とを備える。そして、第一流路及び第二流路は、第一流路を流通する第一溶液と第二流路を流通する第二溶液とがいずれも同じ方向に流通するように構成され、少なくとも第一溶液は、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水である構造とする。
【0010】
こうした構成によれば、第一溶液及び第二溶液を、隔膜を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水である第一溶液から残留成分の要因となる陽イオンを分離することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明に係る次亜塩素酸水処理装置は、平面状の陽電極と、陽電極と対向する平面状の隔膜と、陽電極と隔膜との間に設けられ、流路に沿って第一流路内に陽電極及び隔膜を露出させる第一スペーサ部材とを有し、第一流路は、流路に沿って露出する陽電極及び隔膜と、第一スペーサ部材とにより構成されている。また、平面状の陰電極と、陰電極と対向する平面状の隔膜と、陰電極と隔膜との間に設けられ、流路に沿って第二流路内に陰電極及び隔膜を露出させる第二スペーサ部材とを有し、第二流路は、流路に沿って露出する陰電極及び隔膜と、第二スペーサ部材とにより構成されている。このようにすることで、第一スペーサ部材に形成される流路形状、及び第二スペーサ部材に形成される流路形状により、第一溶液から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、第一溶液から残留成分の要因となる陽イオンを分離する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0012】
また、本発明に係る次亜塩素酸水処理装置では、第一流路及び第二流路は、いずれも蛇行状に形成されていることが好ましい。これにより、第一溶液が陽電極及び隔膜に接触する経路、及び第二溶液が陰電極及び隔膜に接触する経路が長くなり、第一溶液から残留成分の要因となる陽イオンを分離する処理の距離及び時間を長くすることができる。つまり、陽電極及び陰電極のサイズに対して、第一溶液から残留成分の要因となる陽イオンを効率的に分離することができる。
【0013】
また、本発明に係る次亜塩素酸水処理装置では、第一溶液及び第二溶液は、いずれも塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水であってもよい。これにより、第一流路に流通する第一溶液は、残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化した次亜塩素酸水となり、第二流路に流通する第二溶液は、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化した次亜塩素酸水となる。つまり、第一流路に流通する第一溶液から、残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化した次亜塩素酸水を得るとともに、第二流路に流通する第二溶液から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄力の高い次亜塩素酸水を同時に得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る次亜塩素酸水処理装置は、第一流路に第一溶液を供給するとともに、第二流路に第二溶液を供給する供給ポンプを備え、供給ポンプは、第一溶液と第二溶液とを一定流速で供給することが好ましい。これにより、第一流路内にて第一溶液に電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第二流路内にて第二溶液に電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第一流路における第一溶液での残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化する濃度、第二流路における第二溶液での残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0015】
また、本発明に係る次亜塩素酸水処理装置では、陽電極及び陰電極は、いずれも白金を含む電極材で構成されていることが好ましい。これにより、白金を含む電極材は、塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成することができるので、第一溶液に残っている塩水成分を電気分解して次亜塩素酸水にすることができる。このため、第一溶液に残っている塩水成分を電気分解して、より高濃度な次亜塩素酸水を得ることができる。
【0016】
本発明に係る空間除菌システムは、上述した次亜塩素酸水処理装置と、第一流路と連通接続され、第一溶液を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置とを備える構造とする。こうした構成によれば、第一溶液を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、第一溶液が塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係る空間除菌システムは、所定の空間には、所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けており、第二流路は、排水管と連通接続され、第二溶液を排水管に導入可能に構成されている構造とする。このようにすることで、第二流路に流通する第二溶液から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水を排水管に流通させるので、アルカリ性溶液によって排水管の洗浄を行うことができる。
【0018】
(実施の形態1)
図1~
図4を参照して、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水処理装置1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水処理装置1の概略図である。
図2は、次亜塩素酸水処理装置1の分解斜視図である。
図3は、次亜塩素酸水処理装置1の垂直方向の断面イメージ図である。
図4は、次亜塩素酸水処理装置1の水平方向の断面イメージ図である。
【0019】
次亜塩素酸水処理装置1は、塩水(塩化ナトリウム水溶液)の電気分解によって生成された次亜塩素酸水に含まれる残留成分(Na+イオン等の陽イオンを有する成分:例えば、NaClO、NaOH)を、内部を流通する次亜塩素酸水から分離して低減するための装置である。
【0020】
具体的には、
図1~
図4に示すように、次亜塩素酸水処理装置1は、陽電極2と、陰電極3と、隔膜4と、陽極側スペーサ5と、陰極側スペーサ6と、陽極側電極用パッキン7a、陰極側電極用パッキン7b、陽極側槽筐体側面8aと、陰極側槽筐体側面8bと、陽極側溶液供給口9と、陽極側溶液抽出口10と、陰極側溶液供給口11と、陰極側溶液抽出口12と、陽極流路13と、陰極流路14と、電気透析電源15と、を備える。
【0021】
陽電極2は、平面状の電極板である。陽電極2は、陽極側スペーサ5によって陽極流路13の流路に沿って電極板の表面が露出している。陽電極2は、電気透析電源15によって電流が流れると陽極として機能する電極である。陽電極2は、陰電極3と対向して略平行に配置されている。陽電極2は、チタン基材の表面に白金を含む触媒が形成されており、電気分解による次亜塩素酸の発生効率が高い材料を使用する。白金を含む触媒は、少なくとも陽極流路13の流路に沿って露出される陽電極2の面に形成されている。電気透析により陽イオンを移動させて、残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を生成することが主目的であるが、NaClOから分解してできたNaCl及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClも、白金電極により次亜塩素酸へと変化させることが可能となる。
【0022】
陰電極3は、平面状の電極板である。陰電極3は、陰極側スペーサ6によって陰極流路14の流路に沿って電極板の表面が露出している。陰電極3は、電気透析電源15によって電流が流れると陰極として機能する電極である。陰電極3は、陽電極2と対向して略平行に配置されている。陰電極3は、陽電極2と同様に表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも陰極流路14の流路に沿って露出される陰電極3の面に形成されている。また、陽極流路13及び陰極流路14に沿って露出させて電気透析を行う領域の陽電極2と陰電極3は同形状とし、対向距離の短い方がイオンの移動をさせやすい。対向距離が短いと流路を流れる流量が少なくなり、生成できる次亜塩素酸水も少なくなるため、必要な次亜塩素酸水生成量を確保したうえで、対向距離を10mm以下程度に短くすることが望ましい。
【0023】
隔膜4は、平面状の薄膜である。隔膜4は、陽電極2及び陰電極3と対向して略平行に配置されている。隔膜4は、陽極流路13と陰極流路14とを隔てるように設けている。隔膜4は、次亜塩素酸水の残留成分であるNaClO及びNaOHに関係するNa+イオンのような陽イオンを移動させることが可能なイオン交換膜(陽イオン交換膜)である。隔膜4は、陽電極2及び陰電極3に電圧を印加することで、陰電極3に陽イオンを移動させることができる。この陽イオン交換膜としては、デュポン社製ナフィオンなどが挙げられる。なお、陰電極3側は、陽イオンを濃縮するため、長時間使用時に水道水等に含まれるスケール成分が析出する可能性がある。スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水処理装置1への次亜塩素酸水の通水ごとに、陽電極2と陰電極3の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させる。転極して使用することを想定する際には、陽電極2及び陰電極3は、同様の白金を含む触媒処理にしておくことが望ましい。
【0024】
陽極側スペーサ5は、絶縁性の部材である。陽極側スペーサ5は、陽電極2と隔膜4との間の距離を所定の間隔に制御する。陽極側スペーサ5は、陽極側スペーサ5の内部に、後述する陽極流路13を形作る陽極流路孔13aを有している。陽極流路孔13aは、陽極側スペーサ5に形成された陽極流路13を形成する孔のことである。陽極流路孔13aは、陽極側スペーサ5の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。また、陽極側スペーサ5の表面には、陽電極2及び隔膜4との密着性をあげるために、陽極側スペーサ5と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、陽極側スペーサ5は、請求項の「第一スペーサ部材」に相当する。
【0025】
陰極側スペーサ6は、絶縁性の部材である。陰極側スペーサ6は、陰電極3と隔膜4の距離を制御する。陰極側スペーサ6は、陰極側スペーサ6の内部に、後述する陰極流路14を形作る陰極流路孔14aを有している。陰極流路孔14aは、陰極側スペーサ6に形成された陰極流路14を形成する孔のことである。陰極流路孔14aは、陰極側スペーサ6の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。ここで、陰極流路孔14aと陽極流路孔13aとは、互いに対向するように配置されている。また、陰極側スペーサ6の表面には、陰電極3及び隔膜4との密着性をあげるために、陰極側スペーサ6と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、陰極側スペーサ6は、請求項の「第二スペーサ部材」に相当する。
【0026】
陽極側電極用パッキン7aは、陽電極2の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、陽極側スペーサ5と密着して外周方向に、陽極流路13内の溶液(後述する陽極側供給溶液9a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。陽極側電極用パッキン7aの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。陽極側電極用パッキン7aは、陽電極2より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて陽極側スペーサ5と陽極側槽筐体側面8aとを密着しながら、陽電極2の厚みで保持されることが望ましい。
【0027】
陰極側電極用パッキン7bは、陰電極3の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、陰極側スペーサ6と密着して外周方向に陰極流路14内の溶液(後述する陰極側供給溶液11a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。陰極側電極用パッキン7bの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。陰極側電極用パッキン7bは、陰電極3より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて陰極側スペーサ6と陰極側槽筐体側面8bと密着しながら、陰電極3の厚みで保持されることが望ましい。
【0028】
陽極側槽筐体側面8aは、陽電極2の外側に直接接触するように配置されている。陽極側槽筐体側面8aは、陽電極2の外側への溶液の染み込みを抑制するために、陽極側槽筐体側面8aの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。陽電極2の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気透析の効率向上にもつながる。
【0029】
陰極側槽筐体側面8bは、陰電極3の外側に直接接触するように配置されている。陰極側槽筐体側面8bは、陰電極3の外側への溶液の染み込みを抑制するために、陰極側槽筐体側面8bの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。陰電極3の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電極透析の効率向上にもつながる。
【0030】
陽極側溶液供給口9は、電気透析する陽極側供給溶液9aを流路内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陽電極2の外側から陽極側供給溶液9aを供給するため、陽極側溶液供給口9は、陽電極2より外周の位置に加工されている。
【0031】
陽極側供給溶液9aは、塩水から電気分解した次亜塩素酸水である。陽極側供給溶液9aは、陽極側溶液供給口9から陽極流路13に導入される。陽極側供給溶液9aは、請求項の「第一溶液」に相当する。
【0032】
より詳細には、陽極側供給溶液9aには、塩水を電気分解することで、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。塩水の電気分解が進むにつれて、NaClの濃度は減少し、NaClO、HClO、及びNaOHの濃度が上昇する。HClOとNaOHの反応によりNaClOとなることから、塩水の電気分解が十分にされるとNaClOが主成分の次亜塩素酸水が生成され、pHはアルカリ性を示す。陽イオンであるNa+イオンを含む成分は、揮発後に残留成分となるものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分としては、NaClO、NaOH、及びNaClがあてはまる。
【0033】
陽極側溶液抽出口10は、電気透析した陽極側抽出溶液10aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陽電極2の外側に陽極側抽出溶液10aを抽出するため、陽極側溶液抽出口10は、陽電極2より外周の位置に加工されている。
【0034】
陽極側抽出溶液10aは、HClOが主成分の次亜塩素酸水である。陽極側抽出溶液10aは、陽極流路13から陽極側溶液抽出口10に導入される。陽極側抽出溶液10aもまた請求項の「第一溶液」に相当する。
【0035】
より詳細には、陽極側抽出溶液10aは、陽極側供給溶液9aを陽極流路13に流通させて、陽極側供給溶液9aから残留成分の要因となる陽イオンを分離希薄化した溶液である。陽極側供給溶液9aに、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用した場合、陽極側抽出溶液10aには、陽イオンであるNa+イオンが分離希薄化され、HClOの成分が主成分の次亜塩素酸水となる。pHは酸性を示す。
【0036】
陰極側溶液供給口11は、電気透析する陰極側供給溶液11aを流路内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陰電極3の外側から陰極側供給溶液11aを供給するため、陰極側溶液供給口11は陰電極3より外周の位置に加工されている。
【0037】
陰極側供給溶液11aは、塩水から電気分解した次亜塩素酸水、純水、又は水道水である。陰極側供給溶液11aは、陰極側溶液供給口11から陰極流路14に導入される。陰極側供給溶液11aは、請求項の「第二溶液」に相当する。
【0038】
より詳細には、陰極側供給溶液11aとして塩水から電気分解した次亜塩素酸水を用いる場合、陰極側供給溶液11aには、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。塩水の電気分解が進むにつれて、NaClの濃度は減少し、NaClO、HClO、及びNaOHの濃度が上昇する。HClOとNaOHの反応によりNaClOとなることから、塩水の電気分解が十分にされるとNaClOが主成分の次亜塩素酸水が生成され、pHはアルカリ性を示す。陰極側供給溶液11aとして純水を使用した場合は、イオン成分の含まれない溶液となり、pHは中性を示す。陰極側供給溶液11aとして水道水を使用した場合には、使用地域の水道水中のイオン成分を含む溶液となる。
【0039】
陰極側供給溶液11aにイオン成分を含まない純水を使用すると、陽電極2と陰電極3の間に電流が流れなくなるため、一定の電流を流すために高い電圧の印加が必要となる。陰極側供給溶液11aに塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用した場合は、溶液内にイオンが含まれるため、一定の電流を流すための電圧の印加を低減することができる。陰極側供給溶液11aとして水道水を使用した場合には、イオンを含むため、一定の電流を流すための電圧の印加を低減することができるが、地域によってイオン含有量が異なるため、地域個別での条件設定が必要となる。
【0040】
陰極側溶液抽出口12は、電気透析した陰極側抽出溶液12aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陰電極3の外側に陰極側抽出溶液12aを抽出するため、陰極側溶液抽出口12は、陰電極3より外周の位置に加工されている。
【0041】
陰極側抽出溶液12aは、陰極側供給溶液11aが塩水から電気分解した次亜塩素酸水の場合はNaClO及びNaOHが主成分の次亜塩素酸水であり、陰極側供給溶液11aが純水又は水道水の場合はNaOHが主成分のアルカリ性の溶液である。陰極側抽出溶液12aは、陰極流路14から陰極側溶液抽出口12に導入される。陰極側抽出溶液12aもまた請求項の「第二溶液」に相当する。
【0042】
より詳細には、陰極側抽出溶液12aは、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化された溶液である。陰極側供給溶液11aとして、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用した場合には、陰極側抽出溶液12aには、陽イオンであるNa+イオンが分離濃縮化され、NaOHとして生成されることで、NaOHとNaClOが主成分の次亜塩素酸水となる。pHはアルカリ性を示す。陰極側供給溶液11aとして純水または水道水を使用した場合には、陰極側抽出溶液12aには、陽イオンであるNa+イオンが分離濃縮化され、NaOHが主成分である、pHがアルカリ性の溶液となる。
【0043】
陽極側溶液供給口9及び陰極側溶液供給口11は、鉛直方向の下方側に配置されることが望ましく、陽極側溶液抽出口10及び陰極側溶液抽出口12は、鉛直方向の上方側に配置されることが望ましい。流路内の電気透析反応及び電気分解反応により、酸素ガス及び水素ガス等が発生する際に、抽出口が上方に配置されてある方がガスをより効率的に溶液とともに排出することができる。
【0044】
陽極流路13は、陽電極2と陽極側スペーサ5と隔膜4とによって囲まれた領域で形成される流路である。陽極流路13は、陽極側スペーサ5の陽極流路孔13aによって蛇行して構成されている。より詳細には、陽極流路13は、水平方向に往復し下から上に陽極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに陽極流路13の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。陽極流路13において液の逆流を低減するため、陽極流路13が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。陽極流路13は、その一方に陽極側溶液供給口9が設けられ、他方に陽極側溶液抽出口10が設けられており、内部に陽極側溶液である陽極側供給溶液9aが流通している。なお、陽極流路13は、請求項の「第一流路」に相当する。
【0045】
陰極流路14は、陰電極3と陰極側スペーサ6と隔膜4によって囲まれた領域で形成される流路である。陰極流路14は、陰極側スペーサ6の陰極流路孔14aによって蛇行して構成されている。より詳細には、陰極流路14は、水平方向に往復し下から上に陰極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに陰極流路14の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。陰極流路14において液の逆流を低減するため、陰極流路14が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に流れる構造とすることが望ましい。陰極流路14は、その一方に陰極側溶液供給口11が設けられ、他方に陰極側溶液抽出口12が設けられており、内部に陰極側溶液である陰極側供給溶液11aが流通している。なお、陰極流路14は、請求項の「第二流路」に相当する。
【0046】
陽極流路13及び陰極流路14は、隔膜4を挟んで対称な形状で対向している。つまり、陽極流路13及び陰極流路14は、隔膜4を挟んで互いに対向する蛇行形状で構成されている。そして、陽極流路13内を流通する次亜塩素酸水に含まれるNa+イオンが陰極流路14側に移動する。イオンの移動量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、陽極側溶液供給口9及び陰極側溶液供給口11の前段、または陽極側溶液抽出口10及び陰極側溶液抽出口12の後段のどちらか片方にポンプ(図示せず)を設置して制御することができる。ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気透析および電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0047】
電気透析電源15は、陽電極2及び陰電極3と接続され、陽電極2及び陰電極3に電流及び電流を印加することができる直流電源である。電気透析電源15は、一定の電流となるように定電流制御の電源として使用してもよいし、一定の電圧となるように定電圧制御の電源として使用してもよい。なお、電気透析電源15は、スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水処理装置1への次亜塩素酸水の通水ごとに、陽電極2と陰電極3の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させるように制御してもよい。
【0048】
以上のように、次亜塩素酸水処理装置1は、各部材によって構成される。
【0049】
次に、
図3及び
図4を参照して、次亜塩素酸水処理装置1での処理動作について説明する。
【0050】
図3及び
図4に示すように、次亜塩素酸水処理装置1では、陽極側溶液供給口9を通って陽極側供給溶液9aが陽極流路13に供給され、陰極側溶液供給口11を通って陰極側供給溶液11aが陰極流路14に供給される。そして、陽極側溶液供給口9から供給された陽極側供給溶液9aは、蛇行して形成された陽極流路13を流通していき、陰極側溶液供給口11から供給された陰極側供給溶液11aは、同じく蛇行して形成された陰極流路14を流通していく。この際、陽極側供給溶液9a及び陰極側供給溶液11aは、隔膜4を挟んで対向し、同じ方向に流通されて陽極流路13及び陰極流路14をそれぞれ流通していくと同時に、両端の陽電極2及び陰電極3に電圧が印加される。電圧が印加されると、陽電極2側には陰イオン、陰電極3側には陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられる。隔膜4は、陽イオンのみを透過可能な膜で構成されているため、陽極流路13を流通する陽極側供給溶液9aに含まれる陽イオン(Na
+イオン)は、隔膜4を透過して、陰極流路14の陰極側供給溶液11aを通って陰電極3側に陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられる。反対に、陰極流路14を流通する陰イオンは、隔膜4を透過できないため、陽極流路13に含まれる陰イオンのみが陽電極2に引き付けられる。これを繰り返すことにより、陽極流路13を流通する陽極側供給溶液9aに含まれる陽イオン(Na
+イオン)が、陰極流路14を流通する陰極側供給溶液11aに移動して電気透析が進行し、陽極流路13を流通する陽極側供給溶液9aは、陽イオン(Na
+イオン)が分離希薄化され、陰極流路14を流通する陰極側供給溶液11aは、陽イオン(Na
+イオン)が濃縮化されて抽出される。その結果、陽極側溶液抽出口10から、陽極側抽出溶液10aとして、残留成分となるNaClO及びNaOHが分離希薄化してHClO成分が主成分となった次亜塩素酸水が抽出される。反対に、陰極側溶液抽出口12から、陰極側抽出溶液12aとして、残留成分を構成するNa
+イオンが濃縮化され、NaOHとして生成された成分を含む溶液(次亜塩素酸水または水)が抽出される。
【0051】
次亜塩素酸水処理装置1での処理動作では、陽極流路13及び陰極流路14にて電気透析を行う時間を長くすることで、陽イオン(Na+イオン)の移動量をより多くして、陽極側抽出溶液10aのNaClO及びNaOHからなる残留成分をより低減することができる。電気透析を行う時間を長くするためには、陽極流路13及び陰極流路14の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに陽極流路13及び陰極流路14の断面積を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。
【0052】
陽極流路13及び陰極流路を通る各溶液の流速は、同じであっても異なっていてもよい。流速が異なる場合には、抽出される各溶液の濃度に影響する。例えば、陽極流路13の流速を相対的に速くして、陰極流路14の流速を相対的に遅くした場合には、陽極流路13及び陰極流路14の流速を同じにした場合に比べて、陰極流路14から抽出した陰極側抽出溶液12aは少量かつ濃度が濃い溶液となる。これにより、陰極側抽出溶液12aを排液する場合には、陰極流路14の流速を遅くすることが望ましい。
【0053】
次に、
図5を参照して、実際に次亜塩素酸水処理装置1を流通して陽極側溶液抽出口10及び陰極側溶液抽出口12から抽出した陽極側抽出溶液10a及び陰極側抽出溶液12aの次亜塩素酸水の特性(導電率、pH、及び有効塩素濃度)について説明する。
図5は、次亜塩素酸水処理装置1を流通した次亜塩素酸水の特性と電気透析時間との関係を示す図である。より詳細には、
図5の(a)は、次亜塩素酸水処理装置1による電気透析時間と導電率の関係を示す図である。
図5の(b)は、次亜塩素酸水処理装置1による電気透析時間とpHの関係を示す図である。
図5の(c)は、次亜塩素酸水処理装置1による電気透析時間と有効塩素濃度の関係を示す図である。
【0054】
なお、
図5での実験評価では、次亜塩素酸水処理装置1に、流路断面積8mm
2、流路長675mmの陽極流路13及び陰極流路14を形成したものを用いた。また、陽極流路13及び陰極流路14には、ともに51mL/h、153mL/h、250mL/h、及び360mL/hの4条件の流速で各溶液(いずれも次亜塩素酸水)を流通させて電気透析時間を調整し、陽極側抽出溶液10a及び陰極側抽出溶液12aの導電率、pH、及び有効塩素濃度の測定を行った。
【0055】
また、陽極側溶液供給口9及び陰極側溶液供給口11に供給した陽極側供給溶液9a及び陰極側供給溶液11aの次亜塩素酸水(塩水から電気分解した次亜塩素酸水)は、いずれも導電率:264μS/cm、pH:8.5、有効塩素濃度:142ppm、及び塩化物イオン濃度:10ppm以下となるものを使用した。また、電気透析電源15には、0.2Aの定電流を印加可能な電源を使用して電気透析及び電気分解を行った。ここで、電気透析時間とは、溶液が陽電極2および陰電極3に流路内で直接触れている時間を指しており、電気透析時間が長いほど、流速は遅いことになる。今回、陽極側および陰極側の流速は同一に設定して電気透析及び電気分解を行っている。
【0056】
図5の(a)に示す導電率の推移を見ると、電気透析時間が長いほど、言い換えると流速が遅くなるほど、陽極側溶液抽出口10から抽出した陽極側抽出溶液10aの導電率(陽極側の導電率)が低下し、陰極側溶液抽出口12から抽出した陰極側抽出溶液12aの導電率(陰極側の導電率)は増加している。これは、陽極流路13を流通する陽極側溶液に含まれる陽イオンであるNa
+イオンが隔膜4を通って陰極側に移動し、陽極側はNaClOからHClOに変化して導電率が低下したと考えられる。NaClOは、Na
+イオンとClO
-イオンに電離するが、HClOは分子として存在することが主であるため、NaClOからHClOに変化することで導電率は低下する。
【0057】
図5の(b)に示すpHの推移を見ると、陽極側抽出溶液10aのpH(陽極側のpH)は弱酸性側に変化し、陰極側抽出溶液12aのpH(陰極側のpH)はよりアルカリ性側に変化している。このことから、陽極側でのNaClOからHClOへの変化の影響がうかがえる。陽極側において電気透析時間を長くするほどpHが中性に近づいているのは、溶液中にわずかに残っている塩化物イオンが電気分解によって次亜塩素酸に変化しているためと考えられる。一方、陰極側は、Na
+イオンが移動することでNaOHが形成されて、よりアルカリ性へと変化するためである。
【0058】
図5の(c)に示す有効塩素濃度の推移を見ると、陽極側抽出溶液10aの有効塩素濃度(陽極側の有効塩素濃度)は、NaClOからHClOへの変化であるため大きな変化はなく、溶液中にわずかに残っている塩化物イオンが電気分解によって次亜塩素酸に変化することによる有効塩素濃度の増加がみられる。陰極側抽出溶液12aの有効塩素濃度(陰極側の有効塩素濃度)は、電気透析時間が長くなると、NaClOの分解が生じて有効塩素濃度の減少につながっていると考えられる。そのため、電気透析時間を、
図5の(a)に示す陽極側の導電率が十分低下した条件で、かつ、
図5の(c)に示す陰極側の有効塩素濃度が低下しきらない条件を両立させることで、陽極側からは除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水を、陰極側からは洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水を同時に抽出することができる。HClO主体の次亜塩素酸水は、残留成分の抑制された溶液で、除菌力を維持しながら、空間噴霧時でも残留成分起因による金属腐食を抑制することが可能になる。一方、NaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水は、残留成分が残る溶液のため空間噴霧はできないが、洗浄力の高い溶液であり排水口等の酸性の汚れがある部位に流すことで洗浄効果をもたらすことができる。次亜塩素酸水処理装置1では、陽極側で生成するHClO主体の次亜塩素酸水を空間除菌に使用しつつ、反対側の陰極側で生成されるNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水も洗浄として活用が可能となる。
【0059】
以上、本実施の形態1に係る次亜塩素酸水処理装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0060】
(1)次亜塩素酸水処理装置1は、陽電極2が流路に沿って露出して延設された陽極流路13と、陽極流路13と陰極流路14とを隔てて設けられ、流路を流通する陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)に含まれる陽イオンを透過させる隔膜4と、陽電極2と陰電極3の間に電圧を印加する電気透析電源15とを備える。そして、陽極流路13及び陰極流路14は、陽極流路13を流通する陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)と陰極流路14を流通する陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)とがいずれも同じ方向に流通するように構成され、少なくとも陽極側供給溶液9aは、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水である構造とした。こうした構成によれば、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)及び陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)を、隔膜4を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水である陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)から残留成分の要因となる陽イオンを分離することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理装置1を提供することができる。
【0061】
(2)次亜塩素酸水処理装置1は、平面状の陽電極2と、陽電極2と対向する平面状の隔膜4と、陽電極2と隔膜4との間に設けられ、流路に沿って陽極流路13内に陽電極2及び隔膜4を露出させる陽極側スペーサ5とを有し、陽極流路13は、流路に沿って露出する陽電極2及び隔膜4と、陽極側スペーサ5とにより構成した。また、平面状の陰電極3と、陰電極3と対向する平面状の隔膜4と、陰電極3と隔膜4との間に設けられ、流路に沿って陰極流路14内に陰電極3及び隔膜4を露出させる陰極側スペーサ6とを有し、陰極流路14は、流路に沿って露出する陰電極3及び隔膜4と、陰極側スペーサ6とにより構成した。これにより、陽極側スペーサ5に形成される流路形状、及び陰極側スペーサ6に形成される流路形状により、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)から残留成分の要因となる陽イオンを分離する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0062】
(3)次亜塩素酸水処理装置1では、陽極流路13及び陰極流路14は、いずれも蛇行状に形成されている構造とした。これにより、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)が陽電極2及び隔膜4に接触する経路、陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)が陰電極3及び隔膜4に接触する経路が長くなり、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)から残留成分の要因となる陽イオンを分離する処理の時間及び時間を長くすることができる。つまり、陽電極2及び陰電極3のサイズに対して、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)から残留成分の要因となる陽イオンを効率的に分離することができる。
【0063】
(4)次亜塩素酸水処理装置1では、陽極側供給溶液9a及び陰極側供給溶液11aは、いずれも塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水であってもよい。こうした場合には、陽極流路13に流通する陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)は、残留成分の要因となる陽イオンが透過されて分離希薄化した次亜塩素酸水となり、陰極流路14に流通する陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)は、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化された次亜塩素酸水となる。つまり、陽極流路13に流通する陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)から、残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化した次亜塩素酸水を得るとともに、陰極流路14に流通する陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄力の高い次亜塩素酸水を同時に得ることができる。
【0064】
(5)次亜塩素酸水処理装置1は、陽極流路13に陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)を供給するとともに、陰極流路14に陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)を供給する供給ポンプ(図示せず)を備え、供給ポンプは、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)と陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)とを一定流速で供給する構造とした。こうした場合には、陽極流路13内にて陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)に電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、陰極流路14内にて陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)に電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、陽極流路13における陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)での残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化する濃度、陰極流路14における陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)での残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0065】
(6)次亜塩素酸水処理装置1では、陽電極2及び陰電極3は、いずれも白金を含む電極材で構成されている構造とした。これにより、白金を含む電極材は、塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成することができるので、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)に残っている塩水成分を電気分解して次亜塩素酸水にすることができる。このため、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)に残っている塩水成分を電気分解して、より高濃度な次亜塩素酸水を得ることができる。
【0066】
(実施の形態2)
図6を参照して、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水処理装置1を用いた空間除菌システム20について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2に係る、次亜塩素酸水処理装置1を用いた空間除菌システム20の概略図である。なお、以下で説明する実施の形態2に係る空間除菌システムは、実施の形態1に係る次亜塩素酸水処理装置1を組み込んだシステムである。実施の形態2の説明においては、実施の形態1に係る次亜塩素酸水処理装置1と実質的に同様の構成については、同様の符号を付し、説明を一部簡略化または省略する場合がある。
【0067】
本実施の形態2に係る空間除菌システム20は、浴室空間において、次亜塩素酸水処理装置1から生成された次亜塩素酸水をミスト噴霧装置27から噴霧するとともに排水口29に流すことで、浴室空間に対する除菌と洗浄とを行うシステムである。
【0068】
具体的には、
図6に示すように、空間除菌システム20は、次亜塩素酸水処理装置1と、次亜塩素酸水生成装置21と、陽極側供給ポンプ22と、陰極側供給ポンプ23と、陽極側抽出溶液タンク24と、陰極側抽出溶液タンク25と、陽極側抽出溶液浴室配管26と、ミスト噴霧装置27と、陰極側抽出溶液浴室配管28と、排水口29と、を備える。
【0069】
次亜塩素酸水処理装置1は、陽極流路13から除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である陽極側抽出溶液10aを抽出し、陰極流路14から洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰極側抽出溶液12aを抽出する装置である。陽極側抽出溶液10aは、陽極側抽出溶液タンク24で貯められた後、陽極側抽出溶液浴室配管26にてミスト噴霧装置27に送液される。そして、ミスト噴霧装置27から陽極側抽出溶液10aが浴室空間に噴霧される。また、陰極側抽出溶液12aは、陰極側抽出溶液タンク25で貯められた後、陰極側抽出溶液浴室配管28にて排水口29に送液される。排水口29に陰極側抽出溶液12aが流通され、排水口29を経由して排水管に流れる。
【0070】
次亜塩素酸水生成装置21は、塩水(塩化ナトリウム水溶液)を供給して、電気分解により次亜塩素酸水を生成する装置である。陽極及び陰極の2つの電極を、塩水の入った電解槽の中に入れ、電圧を印加して塩水の電気分解を行う。電気分解によって生成される次亜塩素酸水には、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。塩水の電気分解が進むにつれて、NaClの濃度は減少し、NaClO、HClO、及びNaOHの濃度が上昇する。HClOとNaOHの反応によりNaClOとなることから、塩水の電気分解が十分にされるとNaClOが主成分の次亜塩素酸水が生成され、pHはアルカリ性を示す。陽イオンであるNa+イオンを含む成分は、揮発後に残留成分となるものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分としては、NaClO、NaOH、及びNaClがあてはまる。
【0071】
陽極側供給ポンプ22は、次亜塩素酸水生成装置21の電解槽から、塩水の電気分解によって生成された次亜塩素酸水を抽出し、陽極側溶液(陽極側供給溶液9a)として次亜塩素酸水処理装置1の陽極流路13に供給するためのポンプである。陽極側供給ポンプ22は、一定の流速で次亜塩素酸水生成装置21の電解槽から、次亜塩素酸水処理装置1の陽極流路13に送液することができる。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0072】
陰極側供給ポンプ23は、次亜塩素酸水生成装置21の電解槽から、塩水の電気分解によって生成された次亜塩素酸水を抽出し、陰極側溶液(陰極側供給溶液11a)として次亜塩素酸水処理装置1の陰極流路14に供給するためのポンプである。陰極側供給ポンプ23は、一定の流速で次亜塩素酸水生成装置21の電解槽から、次亜塩素酸水処理装置1の陰極流路14に送液することができる。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0073】
陽極側抽出溶液タンク24は、陽極流路13から抽出した除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である陽極側抽出溶液10aを、ミスト噴霧装置27に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陽極側抽出溶液タンク24は、陽極側抽出溶液浴室配管26を介してミスト噴霧装置27と接続される。
【0074】
陰極側抽出溶液タンク25は、陰極流路14から抽出した洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰極側抽出溶液12aを、排水口29に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陰極側抽出溶液タンク25は、陰極側抽出溶液浴室配管28を介して排水口29と接続される。
【0075】
陽極側抽出溶液浴室配管26は、陽極側抽出溶液タンク24から、ミスト噴霧装置27まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び天井に施工されてあり、天井に設置されたミスト噴霧装置27と接続されている。
【0076】
陰極側抽出溶液浴室配管28は、陰極側抽出溶液タンク25から、排水口29まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び床面に施工されてあり、排水口29に接続されている。
【0077】
ミスト噴霧装置27は、次亜塩素酸水を浴室空間にミスト状にして噴霧する装置である。より詳細には、ミスト噴霧装置27は、陽極側抽出溶液タンク24から陽極側抽出溶液浴室配管26を通って搬送されてくる次亜塩素酸水である陽極側抽出溶液10aを微細なミストにして放出する装置である。ミスト噴霧装置27は、浴室空間の天井から浴室空間全体にミストが噴霧できるように噴霧部が天井から浴室側に突出して設置されている。ミストの噴霧方式としては、圧縮空気を使用して微細化する二流体噴霧方式、超音波素子を使用して10μm以下の微細ミストを噴霧する超音波方式、又は回転体から溶液を放出して破砕し1μm以下の微細ミストを噴霧する破砕噴霧方式などが挙げられる。
【0078】
排水口29は、浴室空間内で発生した水あるいは汚れを浴室空間外に排出するための排水管と接続するための接続口である。排水口29には、陰極側抽出溶液タンク25から陰極側抽出溶液浴室配管28を通って陰極側抽出溶液12aを搬送し、洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰極側抽出溶液12aにより、排水口29及び排水口29に接続される排水管の汚れを洗浄することができる。
【0079】
次に、空間除菌システム20の動作について説明する。
【0080】
空間除菌システム20では、浴室使用終了時に空間除菌システム20を使用可能な状態とするため、事前に次亜塩素酸水生成装置21で塩水の電気分解によって生成された次亜塩素酸水を生成し、次亜塩素酸水処理装置1を使用して、除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である陽極側抽出溶液10aを陽極側抽出溶液タンク24に必要量を貯めておくとともに、洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰極側抽出溶液12aを陰極側抽出溶液タンク25に必要量を貯めておく。そして、浴室使用終了後に、ユーザーが空間除菌システム20の開始スイッチを押すことで、陽極側抽出溶液タンク24からミスト噴霧装置27に自動的に送液され、毎日の除菌に必要な量(例えば400mL)が噴霧される。また、陰極側抽出溶液タンク25から、排水口29に自動的に送液され、洗浄に必要な量(例えば400mL)が通水される。
【0081】
この結果、ミスト噴霧装置27から除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水がミスト噴霧されるので、浴室空間内のカビ及び菌に対してHClOの酸化力により除菌をすることができる。また、毎入浴後に定期的に噴霧することで、浴室にカビ及び菌が成長しない浴室空間を維持することができる。特に、NaClO及びNaOHのような残留するイオン成分を抑制しているため、噴霧時に金属表面に付着したとしても残留成分として残ることはなく、残留成分による長期的な腐食の発生を抑制することができる。
【0082】
一方、洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水が排水口29に通水されるので、排水口29及び排水管のヌメリ低減につなげることができる。人に関する汚れは、酸性側であり、排水口29には酸性側の汚れが集まってきていることから、アルカリ性のNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水は中和させながら汚れを除去することになる。
【0083】
HClO主体の次亜塩素酸水ミスト噴霧、並びに、NaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水の排水口29への通水の組み合わせにより、より快適な浴室空間に近づけることができる。
【0084】
以上、本実施の形態2に係る、次亜塩素酸水処理装置1を用いた空間除菌システム20によれば、以下の効果を享受することができる。
【0085】
(7)空間除菌システム20は、次亜塩素酸水処理装置1と、陽極流路13と連通接続され、陽極側抽出溶液10aを用いて次亜塩素酸水ミストを浴室空間に放出するミスト噴霧装置27とを備える構造とした。こうした構成によれば、陽極側抽出溶液10aを用いて次亜塩素酸水ミストを浴室空間に放出しても、浴室空間に残る残留成分が抑制される。つまり、陽極側抽出溶液10aが塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水であるため、浴室空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0086】
(8)空間除菌システム20は、浴室空間には、浴室空間内で発生する水を排出する排水口29が設けており、陰極流路14は、排水口29と連通接続され、陰極側抽出溶液12aを排水口29に導入可能に構成されている構造とした。陰極流路14に流通する陰極側抽出溶液12aから、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水を排水口29(及び排水口29に接続された排水管)に流通させるので、アルカリ性溶液により、排水口29及び排水口29に接続された排水管)の洗浄を行うことができる。
【0087】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る次亜塩素酸水処理装置は、生成したHClO主体の次亜塩素酸水をミスト噴霧することで浴室空間のカビ及び菌に対して除菌を行いながら、浴室内で使用される金属等への腐食を抑制することを可能とする有用な手段である。
【符号の説明】
【0089】
1 次亜塩素酸水処理装置
2 陽電極
3 陰電極
4 隔膜
5 陽極側スペーサ
6 陰極側スペーサ
7a 陽極側電極用パッキン
7b 陰極側電極用パッキン
8a 陽極側槽筐体側面
8b 陰極側槽筐体側面
9 陽極側溶液供給口
9a 陽極側供給溶液
10 陽極側溶液抽出口
10a 陽極側抽出溶液
11 陰極側溶液供給口
11a 陰極側供給溶液
12 陰極側溶液抽出口
12a 陰極側抽出溶液
13 陽極流路
13a 陽極流路孔
14 陰極流路
14a 陰極流路孔
15 電気透析電源
20 空間除菌システム
21 次亜塩素酸水生成装置
22 陽極側供給ポンプ
23 陰極側供給ポンプ
24 陽極側抽出溶液タンク
25 陰極側抽出溶液タンク
26 陽極側抽出溶液浴室配管
27 ミスト噴霧装置
28 陰極側抽出溶液浴室配管
29 排水口