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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078563
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】電子計算装置及びその筐体
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20230531BHJP
   G11B 33/02 20060101ALI20230531BHJP
   G11B 33/12 20060101ALI20230531BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20230531BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230531BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G11B33/02 301E
G11B33/12 301A
G11B33/12 313S
G11B33/14 503A
H05K7/20 H
H05K7/20 G
G06F1/20 B
H01L23/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191739
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 翔
(72)【発明者】
【氏名】上村 修
(72)【発明者】
【氏名】宮本 憲一
(72)【発明者】
【氏名】安達 哲弘
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AB04
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA04
5E322BB03
5F136CA11
5F136CA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上下の2段にそれぞれ電子計算モジュールを搭載可能な電子計算装置において何れかの段から電子計算モジュールが抜去されたときに、電気的な制御を必要としない1つのシャッターにより、筐体内部におけるサーキュレーションの発生を防止する。
【解決手段】ファンを内蔵した2つの電子計算モジュール4を垂直方向に搭載可能な電子計算装置の筐体2において、2つの電子計算モジュール4が挿入されている場合には、2つの電子計算モジュール4にそれぞれ対応するプッシュロッドがカバー(スプリングカバー24)を前面方向に押し出す弾性力によって、シャッター22は中間位置にあり、何れか一方の電子計算モジュール4が抜去された場合には、抜去に対応するプッシュロッドがカバーを押し出す弾性力が失われることにより、シャッター22は回転機構23を軸として、抜去側の格納空間の側に動作し、当該格納空間における流路を抑止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置と、前記記憶装置の背面側に底面に対して垂直方向に配置されるファンを内蔵した2つの電子計算モジュールとを搭載可能な電子計算装置の筐体において、
前記2つの電子計算モジュールが搭載される格納空間を仕切る仕切板と、
前記ファンの動作によって発生する冷却風の前記格納空間における流路を調整する板状部材であって、前記記憶装置の背面側に、前記仕切板に延設されて配置される1つのシャッターと、
前記仕切板と前記シャッターとを接続し、自身の回転軸を中心に回転可能な1以上の回転機構と、
前記シャッターに固定されたカバーとそれぞれの前記電子計算モジュールとの間に配置された棒状部材であって、対応する前記電子計算モジュールの挿入時に、当該電子計算モジュールに押されてその挿入方向に移動し、前記カバーに接触するプッシュロッドと、
前記プッシュロッドに巻き付けられた弾性部材であって、当該プッシュロッドが前記挿入方向に移動すると圧縮されて、前面方向に押し出す弾性力を前記プッシュロッドに与えるプッシュロッドスプリングと、
を備え、
前記2つの電子計算モジュールが前記格納空間に挿入されている場合には、前記2つの電子計算モジュールにそれぞれ対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力によって、前記シャッターは前記2つの電子計算モジュールの中間位置にあり、
何れか一方の前記電子計算モジュールが前記格納空間から抜去された場合には、当該抜去された電子計算モジュールに対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力が失われることにより、前記シャッターは前記回転機構を軸として、当該抜去された電子計算モジュールの格納空間の側に動作し、当該格納空間における前記流路を抑止する
ことを特徴とする電子計算装置の筐体。
【請求項2】
自然長より長い状態で端部が前記仕切板及び前記シャッターにそれぞれ固定された弾性部材であって、背面方向への弾性力が常に発生するシャッタースプリングをさらに備え、
前記カバーは、前記シャッタースプリングを非接触に覆う態様で前記シャッターに固定されたスプリングカバーであり、
何れか一方の前記電子計算モジュールが前記格納空間から抜去された場合には、前記シャッターの動作によって前記シャッターと前記シャッタースプリングとの間に角度が生じることで前記シャッタースプリングの弾性力において垂直方向の分力が発生し、当該分力が前記シャッターの動作を増強する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子計算装置の筐体。
【請求項3】
前記カバーは、前記電子計算モジュールの挿入時に、前記プッシュロッドが接触するよりも前から当該電子計算モジュールの天板に接触し、挿入の進行に伴って当該天板から垂直方向に押す力を受ける構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子計算装置の筐体。
【請求項4】
前記回転機構は、前記回転軸を中心に回転する複数の板状部材が前記仕切板と前記シャッターとに固定された構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子計算装置の筐体。
【請求項5】
前記仕切板で仕切られた2つの前記格納空間は、前記2つの電子計算モジュールが向かい合わせに配置されるように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子計算装置の筐体。
【請求項6】
記憶装置と、
ファンを内蔵した2つの電子計算モジュールと、
前記記憶装置を前面側に格納し、前記記憶装置の背面側に底面に対して垂直方向に前記2つの電子計算モジュールを格納する筐体と、
を備え、
前記筐体は、
前記2つの電子計算モジュールが搭載される格納空間を仕切る仕切板と、
前記ファンの動作によって発生する冷却風の前記格納空間における流路を調整する板状部材であって、前記記憶装置の背面側に、前記仕切板に延設されて配置される1つのシャッターと、
前記仕切板と前記シャッターとを接続し、自身の回転軸を中心に回転可能な1以上の回転機構と、
を有し、
前記2つの電子計算モジュールはそれぞれ、
前記電子計算モジュールの前面側に配置された棒状部材であって、対応する前記電子計算モジュールの挿入時に、当該電子計算モジュールに押されてその挿入方向に移動し、前記シャッターに固定されたカバーに接触するプッシュロッドと、
前記プッシュロッドに巻き付けられた弾性部材であって、当該プッシュロッドが前記挿入方向に移動すると圧縮されて、前面方向に押し出す弾性力を前記プッシュロッドに与えるプッシュロッドスプリングと、
を有し、
前記2つの電子計算モジュールが前記格納空間に挿入されている場合には、前記2つの電子計算モジュールにそれぞれ対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力によって、前記シャッターは前記2つの電子計算モジュールの中間位置にあり、
何れか一方の前記電子計算モジュールが前記格納空間から抜去された場合には、当該抜去された電子計算モジュールに対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力が失われることにより、前記シャッターは前記回転機構を軸として、当該抜去された電子計算モジュールの格納空間の側に動作し、当該格納空間における前記流路を抑止する
ことを特徴とする電子計算装置。
【請求項7】
前記筐体は、
自然長より長い状態で端部が前記仕切板及び前記シャッターにそれぞれ固定された弾性部材であって、背面方向への弾性力が常に発生するシャッタースプリングをさらに有し、
前記カバーは、前記シャッタースプリングを非接触に覆う態様で前記シャッターに固定されたスプリングカバーであり、
何れか一方の前記電子計算モジュールが前記格納空間から抜去された場合には、前記シャッターの動作によって前記シャッターと前記シャッタースプリングとの間に角度が生じることで前記シャッタースプリングの弾性力において垂直方向の分力が発生し、当該分力が前記シャッターの動作を増強する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子計算装置。
【請求項8】
前記カバーは、前記電子計算モジュールの挿入時に、前記プッシュロッドが接触するよりも前から当該電子計算モジュールの天板に接触し、挿入の進行に伴って当該天板から垂直方向に押す力を受ける構造を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子計算装置。
【請求項9】
前記回転機構は、前記回転軸を中心に回転する複数の板状部材が前記仕切板と前記シャッターとに固定された構造を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子計算装置。
【請求項10】
前記筐体は、前記仕切板で仕切られた2つの前記格納空間に、前記2つの電子計算モジュールを向かい合わせに配置する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子計算装置。
【請求項11】
前記2つの電子計算モジュールは、
前記筐体に対する挿入面の一部を切り欠いた凹部を有し、
前記凹部に前記プッシュロッド及び前記プッシュロッドスプリングを配置する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子計算装置およびその筐体に関し、冷却ファンを内蔵した電子計算モジュールが上下段に搭載される電子計算装置及びその筐体に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体内に複数の発熱体(例えばドライブ等)が搭載される電子計算装置(例えばストレージユニット)では、熱による性能低下を抑制するために、発熱体を冷却することの重要性が知られている。
【0003】
例えば特許文献1の実施形態1には、コンピュータにおいて、2つの冷却ファンの風圧バランスに応じて回頭する板状部材を利用して、何れかの冷却ファンが停止した場合に、当該冷却ファン側の通風経路を遮断して逆流防止弁とする構成が開示されている。また、特許文献1の実施形態2には、上記の板状部材の動作を電気的に制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-170181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、複数のドライブが搭載される一般的なストレージユニットの構造として、前後に開口した筐体の一方(例えば前面側)に複数のドライブが配置され、他方(例えば背面側)に上下2段に分けて冷却ファンを内蔵するコントローラボード(電子計算モジュール)が配置される構造が知られている。このような構造を有するストレージユニットでは、ドライブ及びコントローラボードにそれぞれ通風経路を確保することで、上下段にコントローラボードが搭載された場合でも、冷却ファンの動作によって、外部から冷却風を取り込んで筐体内部を通過させて発熱体(例えばドライブ)を冷却することができる。
【0006】
しかし、上記構造を有する従来のストレージユニットでは、保守作業時等で1つのコントローラボードが抜去された際に、筐体内部で抜去後の空間が空洞となり、圧力損失が極端に低下することにより、サーキュレーションが発生してしまう。サーキュレーションが発生すると、ドライブ側から吸い込む風量が低下し、ドライブの冷却性能が低下してしまうという問題があった。
【0007】
このようなサーキュレーション発生の問題に対しては、可動式のシャッターを用いて不要な通風経路(冷却風の流路)を遮断する解決方法が知られているが、その場合は搭載されるコントローラボードの数だけ(すなわち2つ)シャッターを設置する必要があった。しかし、上下の各段にシャッターを設置すると、筐体のサイズや筐体内の格納スペースが制約を受けるという別の課題が存在した。ストレージユニットの筐体は、コントローラボードの搭載向きや部品高さによる制限が存在するため、筐体のサイズが大きくなったり筐体内の格納スペースが狭くなったりすることは好ましくない。
【0008】
また、上述した特許文献1には、1つの板状部材で通風経路を切り替える冷却構造が開示されているが、冷却構造を搭載する電子計算装置の構造上の相違が大きく、上下2段にコントローラボードが搭載されるストレージユニットに適用することは困難と想定される。また、特許文献1の実施形態2に開示された構成のように、シャッターの動作を電気的に制御する場合には、冷却ファンの動作を監視するセンサや板状部材を制御するアクチュエータ等が別途必要になるため、部品コストの上昇や格納スペースの制約という課題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、上下の2段にそれぞれ電子計算モジュールを搭載可能な電子計算装置において何れかの段から電子計算モジュールが抜去されたときに、最低限の個数(すなわち1つ)のシャッターにより、電気的な制御を必要とすることなく、筐体内部におけるサーキュレーションの発生を防止することが可能な、電子計算装置およびその筐体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、記憶装置と、前記記憶装置の背面側に底面に対して垂直方向に配置されるファンを内蔵した2つの電子計算モジュールとを搭載可能な電子計算装置の筐体において、前記2つの電子計算モジュールが搭載される格納空間を仕切る仕切板と、前記ファンの動作によって発生する冷却風の前記格納空間における流路を調整する板状部材であって、前記記憶装置の背面側に、前記仕切板に延設されて配置される1つのシャッターと、前記仕切板と前記シャッターとを接続し、自身の回転軸を中心に回転可能な1以上の回転機構と、前記シャッターに固定されたカバーとそれぞれの前記電子計算モジュールとの間に配置された棒状部材であって、対応する前記電子計算モジュールの挿入時に、当該電子計算モジュールに押されてその挿入方向に移動し、前記カバーに接触するプッシュロッドと、前記プッシュロッドに巻き付けられた弾性部材であって、当該プッシュロッドが前記挿入方向に移動すると圧縮されて、前面方向に押し出す弾性力を前記プッシュロッドに与えるプッシュロッドスプリングと、を備え、前記2つの電子計算モジュールが前記格納空間に挿入されている場合には、前記2つの電子計算モジュールにそれぞれ対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力によって、前記シャッターは前記2つの電子計算モジュールの中間位置にあり、何れか一方の前記電子計算モジュールが前記格納空間から抜去された場合には、当該抜去された電子計算モジュールに対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力が失われることにより、前記シャッターは前記回転機構を軸として、当該抜去された電子計算モジュールの格納空間の側に動作し、当該格納空間における前記流路を抑止する、電子計算装置の筐体が提供される。
【0011】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、記憶装置と、ファンを内蔵した2つの電子計算モジュールと、前記記憶装置を前面側に格納し、前記記憶装置の背面側に底面に対して垂直方向に前記2つの電子計算モジュールを格納する筐体と、を備え、前記筐体は、前記2つの電子計算モジュールが搭載される格納空間を仕切る仕切板と、前記ファンの動作によって発生する冷却風の前記格納空間における流路を調整する板状部材であって、前記記憶装置の背面側に、前記仕切板に延設されて配置される1つのシャッターと、前記仕切板と前記シャッターとを接続し、自身の回転軸を中心に回転可能な1以上の回転機構と、を有し、前記2つの電子計算モジュールはそれぞれ、前記電子計算モジュールの前面側に配置された棒状部材であって、対応する前記電子計算モジュールの挿入時に、当該電子計算モジュールに押されてその挿入方向に移動し、前記シャッターに固定されたカバーに接触するプッシュロッドと、前記プッシュロッドに巻き付けられた弾性部材であって、当該プッシュロッドが前記挿入方向に移動すると圧縮されて、前面方向に押し出す弾性力を前記プッシュロッドに与えるプッシュロッドスプリングと、を有し、前記2つの電子計算モジュールが前記格納空間に挿入されている場合には、前記2つの電子計算モジュールにそれぞれ対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力によって、前記シャッターは前記2つの電子計算モジュールの中間位置にあり、何れか一方の前記電子計算モジュールが前記格納空間から抜去された場合には、当該抜去された電子計算モジュールに対応する前記プッシュロッドが前記カバーを前面方向に押し出す弾性力が失われることにより、前記シャッターは前記回転機構を軸として、当該抜去された電子計算モジュールの格納空間の側に動作し、当該格納空間における前記流路を抑止する、電子計算装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上下の2段にそれぞれ電子計算モジュールを搭載可能な電子計算装置において何れかの段から電子計算モジュールが抜去されたときに、電気的な制御を必要としない1つのシャッターにより、筐体内部におけるサーキュレーションの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るストレージ筐体2を備えるストレージユニット1の外観斜視図である。
図2】ストレージ筐体2の内部構造を示す図である。
図3】シャッター22の詳細な構造を示す図である。
図4】シャッター22の三面図である。
図5】コントローラ4の外観斜視図である。
図6】プッシュロッドスプリング44が圧縮されていない状態におけるプッシュロッド43付近の拡大図である。
図7】プッシュロッドスプリング44が圧縮されている状態におけるプッシュロッド43付近の拡大図である。
図8】プッシュロッド43の当接に基づくシャッター22の動作を説明するための図(その1)である。
図9】プッシュロッド43の当接に基づくシャッター22の動作を説明するための図(その2)である。
図10】シャッター22の動作遷移を説明するための図(その1)である。
図11】シャッター22の動作遷移を説明するための図(その2)である。
図12】シャッター22の動作遷移を説明するための図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0015】
なお、以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本発明が実施形態に制限されることは無く、本発明の思想に合致するあらゆる応用例が本発明の技術的範囲に含まれる。本発明は、当業者であれば本発明の範囲内で様々な追加や変更等を行うことができる。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は複数でも単数でも構わない。
【0016】
なお、以下の説明では、同種の要素を区別せずに説明する場合には、添字や枝番を含む参照符号のうちの共通部分(添字や枝番を除く部分)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合には、添字や枝番を含む参照符号を使用することがある。例えば、プッシュロッドを特に区別せずに説明する場合には「プッシュロッド43」と記載するのに対して、個別のプッシュロッド43を区別して説明する場合には「プッシュロッド43a」、「プッシュロッド43b」のように記載する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るストレージ筐体2を備えるストレージユニット1の外観斜視図である。また、図2は、ストレージ筐体2の内部構造を示す図である。図1及び図2等を参照しながら、ストレージユニット1の構成及びストレージ筐体2の構造を説明する。
【0018】
ストレージユニット1は、ストレージ筐体2に1以上の記憶装置(ドライブ3)と最大2つのコントローラボード(電子計算モジュール4)とが配置される電子計算装置である。以降の説明では、簡略のため、ストレージ筐体2を「筐体2」と表記することがある。
【0019】
ストレージ筐体2は、ストレージユニット1の筐体(シャーシ)として機能する箱型の構造体であって、前側(筐体前面)から複数のドライブ3を搭載可能な構造、かつ、後ろ側(筐体背面)から最大2つの電子計算モジュール4を挿抜可能な構造となっている。電子計算モジュール4は、筐体2の内部で上下2段に分かれて配置される。以降の説明では、簡略のため、電子計算モジュール4を「コントローラ4」と表記することがある。また、上段に配置される電子計算モジュール4を「上側コントローラ4a」と表記し、下段に配置される電子計算モジュール4を「下側コントローラ4b」と表記する。
【0020】
図1に示したように、複数のドライブ3は、例えばストレージ筐体2の前面側に上下2段で並べて配置されるが、本実施形態において、ドライブ3の個数及び配置方法は特に限定されない。ドライブ3は、例えばNVMe(Non-Volatile Memory Express)SSD(Solid State Drive)であるが、これに限定されるものではなく、既知の様々な記憶装置であってよい。ストレージ筐体2は、少なくとも部分的に前後方向に開口しており、前後方向に空流経路(冷却風の流路)が形成される。また、ドライブ3及びコントローラ4の内部にもそれぞれ、前後方向に冷却風の流路が形成されており、コントローラ4のファン42が動作した場合には、ドライブ3の前面から外部の空気(冷却風)を取り込み、後方のコントローラ4に送ることができる構造となっている。
【0021】
電子計算モジュール4(上側コントローラ4a、下側コントローラ4b)は、例えば、ドライブ3を物理記憶領域とするストレージシステムを制御するストレージコントローラが搭載されたコントローラボードであって、冷却用のファン42を内蔵する(図5参照)。上側コントローラ4a及び下側コントローラ4bは、向かい合わせの位置関係で筐体2に挿入され、そのまま筐体2の内部に配置される。なお、電子計算モジュール4はコントローラボードに限定されなくてもよく、少なくとも、冷却用のファンを内蔵する電子機器であればよい。
【0022】
なお、本実施形態では、図1及び図2の配置を基準として前後(前面-背面)方向及び上下方向を説明するが、実際のストレージユニット1においては、前後方向または上下方向が入れ替わってもよい。例えば、筐体2の内部では、上段及び下段にそれぞれコントローラ4を挿抜可能であるが、上段と下段とで構造上の相違はないと考えてよい。
【0023】
図2に示すように、筐体2は、仕切板21、シャッター22、回転機構23、スプリングカバー24、及びシャッタースプリング25(図3に図示)を備える。なお、筐体2における部品の構成を考えたとき、ストレージ筐体における標準的な部材である仕切板21に対し、本実施形態の特徴的な部材であるシャッター22が、回転機構23、スプリングカバー24、及びシャッタースプリング25を有する、と考えてもよい。
【0024】
仕切板21は、上側コントローラ4aと下側コントローラ4bとの間を仕切る板状の部材であり、例えばコントローラ4の前後方向の長さよりもシャッター22の奥行きだけ短い長さで、筐体背面から筐体内部に向けて配置される。本実施形態では、両コントローラ4(上側コントローラ4a及び下側コントローラ4b)が、筐体2内部で向かい合わせに配置されるため、筐体2に両コントローラ4が挿入されたとき、仕切板21は、上側コントローラ4a及び下側コントローラ4bのそれぞれの天板41と対向する。
【0025】
なお、筐体2は、両コントローラ4が向かい合わせに配置される構造とすることで、シャッター22の関連部品(例えばスプリングカバー24)を上下に対称的な形状とすることができ、部品サイズの増大を抑制できる。また、これらの関連部品の可動スペースを上下段の中央付近にまとめられるため、必要なスペースを抑制できる。
【0026】
シャッター22は、仕切板21の前側の端部に設けられた、1枚の板状の部材であり、回転機構23を介して仕切板21に延設される。詳細な構造は後述するが、シャッター22は、抜去されたコントローラ4の側に押し上げ(または押し下げ)られる機構を有し、最大程度に押し上げ(または押し下げ)られたときに、1つのコントローラ4の格納スペースである筐体2の内部空間を遮断する程度の長さを有する。本実施形態の筐体2は、このようなシャッター22により、上下段何れかのコントローラ4が抜去されたときに、コントローラ4の内部を通過する冷却風の流路を遮断(あるいは抑止)する機能を実現する。なお、上下段にともにコントローラ4が挿入されている場合、シャッター22は上側コントローラ4aと下側コントローラ4bとの間で略水平状態となるが、シャッター22は、このような状態でもその前端がドライブ3の格納領域に到達しないように配置される。
【0027】
回転機構23は、仕切板21とシャッター22との双方に固定される回転機構である。回転機構23は、仕切板21とシャッター22との間に回転軸を持ち、少なくともシャッター22側が上下方向に回転可能な構造を有する。回転機構23は、例えば回転軸を中心に回転可能な複数の板状部材(例えば板金)を仕切板21とシャッター22(スプリングカバー24でもよい)の双方に固定した構造によって実現されるが(図3図4も参照)、これに限定されるものではなく、例えば一般的な蝶番等であってもよい。回転機構23にどのような構造部品を用いるかは、筐体2において部品を搭載可能な寸法(言い換えれば、コントローラ4の形状や寸法)に応じて決定すればよい。上記のように回転機構23に複数の板金を用いる場合には、一般的な蝶番を用いる場合よりも省スペース化に期待できることから、コントローラ4において凹部40(後述する図5参照)に挟まれた天板中央部分の幅を広げ、多くの部品を搭載することができる。なお、図2では、スプリングカバー24の近傍にそれぞれ1個ずつ、回転機構23が設けられているが、仕切板21とシャッター22との間であれば、その設置場所及び設置数は限定されない。
【0028】
スプリングカバー24は、シャッタースプリング25を非接触に覆う、例えば台形状の部材であって、シャッター22に固定される。スプリングカバー24は、筐体2の前後方向にシャッター22と略同じ長さを有する。スプリングカバー24は、後述する図9に示すようにシャッター22がシャッタースプリング25に対して傾きをなした場合でも、シャッタースプリング25に接触しない程度の空間を内部に確保した形状であることが好ましい。また、スプリングカバー24は、シャッター22が筐体2内部の上下段の何れかの壁面に当接した際に、スプリングカバー24とともに筐体2内部におけるサーキュレーションの流路を塞ぐ機能を持ってもよい。
【0029】
図3は、シャッター22の詳細な構造を示す図である。また、図4は、シャッター22の三面図である。なお、図3及び図4では、位置関係を分かり易くするために、シャッター22には固定されないプッシュロッド43がスプリングカバー24に接している状態を示している。
【0030】
図3及び図4によれば、スプリングカバー24は、シャッター22の上下側で対称的な形状を有する。また、スプリングカバー24、シャッタースプリング25、及びプッシュロッド43は、上方からみたときに同一直線上に配置される。また、スプリングカバー24は、その筐体背面側の面が、コントローラ4の挿入途中(半挿入時)に天板41及びプッシュロッド43によって押されるような位置に(すなわち、天板41の一部及びプッシュロッド43の端部が当接可能に)配置される。なお、回転機構23の配置は、シャッタースプリング25の内側でも外側でもよい。
【0031】
シャッタースプリング25は、棒状の弾性部材(例えば、引張コイルばね)であって、端部が仕切板21及びシャッター22にそれぞれ固定される。より詳しく説明すると、シャッタースプリング25の仕切板21への固定位置(シャーシ側固定端)は、シャッター22からみて回転機構23の回転軸よりも水平方向に遠方(すなわち、後方)の所定点である。一方、シャッタースプリング25のシャッター22への固定位置(シャッター側固定端)は、仕切板21からみて回転機構23の回転軸よりも水平方向に遠方(すなわち、前方)の所定点である。後述する図8及び図9では、シャーシ側固定端を点P、回転機構23の回転軸を点Q、シャッター側固定端を点Rで示している。
【0032】
また、本実施形態において、シャッタースプリング25は、自然長よりも長い(伸びた)状態で仕切板21及びシャッター22に固定される。したがって、シャッタースプリング25には、常に収縮しようとする引張力が発生する。そして、コントローラ4の挿抜によってシャッター22がわずかに回転すると、シャッタースプリング25の引張力のベクトルとシャッター22との間に角度が発生することから、シャッタースプリング25の引張力の分力によってシャッター22に回転モーメントが発生し、シャッター22をより大きく回転させて上方向または下方向に傾けることができる。
【0033】
図5は、コントローラ4の外観斜視図である。図5に示したように、コントローラ4は、段差が形成された天板41を上面に有し、平面状の底板(不図示)を下面に有する。天板41は、コントローラ4の筐体2への挿入時に、その前端部がスプリングカバー24を押すように形成される。
【0034】
コントローラ4には、挿入面の上側(筐体前面側の仕切板21側)を一部切り欠いた窪み(凹部40)が形成され、この凹部40に、プッシュロッド43、プッシュロッドスプリング44、及びスプリング受け部材45(図6図7参照)が配置されている。このような凹部40を形成することにより、後述するプッシュロッド43の可動範囲を確保することができる。また、前述したように、コントローラ4は冷却用のファン42を内蔵しており、ファン42が動作した場合には、天板及び底板で囲まれたコントローラ4の内部を前後方向に冷却風が流れる構造となっている。
【0035】
プッシュロッド43は、筐体2に対するコントローラ4の挿抜の動作に応じて、凹部40において前後方向に移動可能な棒状の部材であって、その周囲に、弾性部材(例えば、圧縮コイルばね)であるプッシュロッドスプリング44が巻き付けられている。プッシュロッドスプリング44は、前方の一端がプッシュロッド43に固定され、後方の一端はスプリング受け部材45(図6図7参照)によって支えられる。プッシュロッド43とプッシュロッドスプリング44は組になって設置される。
【0036】
図6は、プッシュロッドスプリング44が圧縮されていない状態におけるプッシュロッド43付近の拡大図であり、図7は、プッシュロッドスプリング44が圧縮されている状態におけるプッシュロッド43付近の拡大図である。
【0037】
コントローラ4が筐体2に配置されていないときは、図6に示したように、プッシュロッドスプリング44は圧縮されず自然長の状態となる。あるいは、プッシュロッドスプリング44を挟んでコントローラ4に固定された前後のスプリング受け部材45の間隔が、プッシュロッドスプリング44の自然長よりも短い場合には、プッシュロッドスプリング44は、前後のスプリング受け部材45の両端に受け止められた状態となる。これらの状態では、プッシュロッド43は、プッシュロッドスプリング44からの力を受けない。
【0038】
一方、コントローラ4が筐体2に挿入される途中でプッシュロッド43がスプリングカバー24に当接するようになると、図7に示したように、プッシュロッドスプリング44は圧縮された状態となり、プッシュロッド43を前側に押し出す弾性力を発生する。
【0039】
なお、図6及び図7では、プッシュロッド43及びプッシュロッドスプリング44は、コントローラ4に設けられるとしているが、本実施形態においてプッシュロッド43及びプッシュロッドスプリング44は、筐体2(例えば仕切板21)に設けられてもよい。但し、筐体2に設けられる場合でも、コントローラ4に設けられる場合と同様に、プッシュロッド43がコントローラ4の挿抜方向にスライド可能であり、コントローラ4を筐体2に挿抜する途中でプッシュロッド43がスプリングカバー24に当接する位置に配置され、かつ、プッシュロッド43がスプリングカバー24に当接した状態でコントローラ4の挿入が進む場合にはプッシュロッドスプリング44が圧縮されてプッシュロッド43をスプリングカバー24側に押し出す弾性力を発生する、という構造を有することが必要である。
【0040】
図8及び図9は、プッシュロッド43の当接に基づくシャッター22の動作を説明するための図(その1,その2)である。図8は、筐体2の上下段に上側コントローラ4a及び下側コントローラ4bが搭載されているときのシャッター22の状態を示した図であり、図9は、筐体2の上段から上側コントローラ4aが抜去されたときのシャッター22の状態を示した図である。図8及び図9に示したプッシュロッド43aは、上側コントローラ4aに対応するプッシュロッド43であり、プッシュロッド43bは、下側コントローラ4bに対応するプッシュロッド43である。
【0041】
図8及び図9において、点Pはシャッタースプリング25のシャーシ側固定端を示し、点Qは回転機構23の回転軸を示し、点Rはシャッタースプリング25のシャッター側固定端を示す。そして、距離Aは点Pと点Qとの距離であり、距離Bは点Qと点Rとの距離である。ここで、点Pが存在する仕切板21及び点Rが存在するシャッター22は、いずれも伸縮しない部材であり、ともに回転機構23と固定されていることから、距離A,Bは常に固定値であることが分かる。また、図9に示した距離Cは、点Pと点Rとの距離であり、シャッタースプリング25の長さと言い換えることができる。この距離Cについては後述する。
【0042】
まず、図8の状態について説明する。
【0043】
コントローラ4を筐体2に挿入する途中の半挿入状態では、コントローラ4に対応するプッシュロッド43がスプリングカバー24に接触し、挿入の進行に伴ってプッシュロッドスプリング44を圧縮する。そのため、コントローラ4が完全に筐体2に挿入された挿入状態では、プッシュロッドスプリング44によってプッシュロッド43を前面に押し出す弾性力が発生する。すなわち、上下段でコントローラ4が挿入状態となると、プッシュロッド43a,43bの双方で前面に押し出す力が発生する。
【0044】
一方、シャッタースプリング25は、自然長よりも長い(伸びた)状態で仕切板21及びシャッター22に固定されている。そのため、シャッタースプリング25(ひいてはスプリングカバー24)には、常に収縮しようとする引張力が発生する。
【0045】
この結果、図8に示したように、上下のコントローラ4a,4bに取り付けられたプッシュロッド43a,43bがスプリングカバー24を押し続ける力(図8の左向きの矢印)が上下で均衡して、シャッター22には上下方向への力がほとんど発生せず、さらに、シャッタースプリング25による収縮しようとする力(図8の右向きの矢印)が作用することから、シャッター22は、両コントローラ4a,4bと平行な状態となる。このような平行状態では、ファン42の動作によって各コントローラ4a,4bを通過する冷却風の流路は、シャッター22によって阻害されない。
【0046】
次に、図9の状態について説明する。
【0047】
上側コントローラ4aを筐体2から除去していくと、プッシュロッドスプリング44がプッシュロッド43aを押す力が徐々に弱まり、プッシュロッドスプリング44が自然長に戻った(もしくは、前後のスプリング受け部材45の間の長さまで戻った)ときには、プッシュロッド43aを前面に押し出す力がなくなる。一方、下側コントローラ4bは筐体2に搭載されていることから、プッシュロッド43bは変わらずスプリングカバー24を押し続ける。この結果、上下のプッシュロッド43a,43bによる力の均衡が崩れ、スプリングカバー24(すなわちシャッター22)は、回転機構23の回転軸を中心に、時計回りにわずかに回転する。
【0048】
ここで、シャッタースプリング25のシャッター側固定端(点R)を基準とすると、シャッタースプリング25のシャーシ側固定端(点P)は回転軸(点Q)よりも離れた位置にあるため、上記のようにシャッター22がわずかにでも回転すると、シャッタースプリング25の引張力のベクトルとシャッター22との間に角度が発生し、その回転をより進める方向(図9の場合は時計回り方向)への分力が発生する。この結果、回転モーメントが発生し、シャッター22は、プッシュロッド43bによる押し出しのストロークを超えても、シャッタースプリング25によって回転動作を続ける。
【0049】
上記したシャッター22の一連の回転動作について、距離A,B,Cを用いて説明する。図8では、シャッター22が平行状態で、点P,Q,Rが直線上に存在したことから、シャッタースプリング25の長さは「A+B」であった。しかし、図9では、シャッター22がわずかに回転したことにより、点P,Q,Rが三角形を形成するため、シャッタースプリング25の長さを示す距離Cは、「C<A+B」の関係となり、図8のときよりも短くなる。そしてシャッタースプリング25では点Rから点Pに向かう引張力が発生していることから、シャッタースプリング25の長さ(距離C)をより短くするように力が働く。この結果、シャッタースプリング25が接続されたシャッター22に回転モーメントが発生し、大きく回転動作を続けることになる。
【0050】
以上に説明したように、図9の場合、シャッター22は、シャッタースプリング25の引張力によって、抜去されたコントローラ4aの方向に大きく回転し、最終的には、筐体2におけるコントローラ4aの格納スペースを遮蔽する位置で停止する。
【0051】
図10図12は、シャッター22の動作遷移を説明するための図(その1~その3)である。図8及び図9では、スプリングカバー24に対するプッシュロッド43の当接によるシャッター22の動作について説明したが、図10図12では、コントローラ4の挿抜に伴う全体的なシャッター22の動作の一例として、筐体2の上下段にコントローラ4(上側コントローラ4a及び下側コントローラ4b)が挿入されている状態から下側コントローラ4bが抜去されるときのシャッター22の動作の遷移を説明する。
【0052】
まず、筐体2の上下段にコントローラ4(上側コントローラ4a及び下側コントローラ4b)が挿入状態にあるときは、図8を参照して説明したように、スプリングカバー24は上側のプッシュロッド43a及び下側のプッシュロッド43bから押された状態となる。したがってこのとき、スプリングカバー24が接続されたシャッター22は、図10に示したように、両コントローラ4と平行な状態となっている。
【0053】
次に、下側コントローラ4bの抜去が始まると、図9を参照して説明したように(図9は上側コントローラ4aを抜去する場合について説明したものであるから、本例では上下を逆にして考えればよい)、スプリングカバー24は、上側のプッシュロッド43aから押された状態のまま、下側のプッシュロッド43bから押される力がなくなり(徐々に弱くなり)、上下段で力が不均衡となる。したがって、スプリングカバー24が接続されたシャッター22は、回転機構23の回転軸を中心に、わずかに反時計回り(下側)に回転する。
【0054】
このとき、図9で説明したように、シャッタースプリング25の引張力の分力による回転モーメントが発生することで、シャッター22は、プッシュロッド43aによる押し出しのストロークを超えても回転動作を続ける。したがって、図11に示したように、下側コントローラ4bの抜去が進み、下側のプッシュロッド43bがスプリングカバー24に当接しない状態になった以降も、シャッター22はさらに下側に回転する。
【0055】
その後、下側コントローラ4bの抜去が進み、下側コントローラ4bの天板41bがスプリングカバー24に当接しない位置にまで抜去されると、シャッター22は、筐体2内における下側コントローラ4bの格納スペースの底面に到達する。すなわち、図12に示したように、シャッター22は、筐体2の下段を塞ぐ位置まで押し下げられる。シャッター22がこのような位置に下がることにより、上側コントローラ4aのファン42が動作した場合でも、筐体2の下段ではサーキュレーションが発生しないため、ドライブ3から吸い込む風量の低下を抑制することができ、ドライブ3の冷却性能の低下を回避することができる。
【0056】
また、筐体2において、一方のコントローラ(例えば上側コントローラ4a)が挿入されている状態で他方のコントローラ(例えば下側コントローラ4b)が挿入される場合には、上述した図10図12の遷移を逆に考えればよい。
【0057】
具体的にはまず、筐体2の下段において下側コントローラ4bの挿入が開始すると、下側コントローラ4bの天板41bがスプリングカバー24に当接し、下側コントローラ4bの挿入に伴ってスプリングカバー24を押し上げる。この結果、図12の状態から図11の状態に遷移する形態で、スプリングカバー24に接続されたシャッター22は、筐体2の下段を塞ぐ位置に下がった状態から、徐々に上側に押し上げられていく。図12に示した矢印は、天板41bがシャッター22を押す力を表している。
【0058】
その後、さらに下側コントローラ4bの挿入が進むと、下側のプッシュロッド43bがスプリングカバー24に当接し、プッシュロッド43bがスプリングカバー24を前面に押していく。挿入が進むにつれて、プッシュロッドスプリング44が収縮するため、プッシュロッド43bがスプリングカバー24を前面に押し出す弾性力が強くなる。
【0059】
そして最終的に下側コントローラ4bの挿入が完了すると、スプリングカバー24は上側のプッシュロッド43aだけでなく下側のプッシュロッド43bからも同程度の力で押されることになり、図10に示したように、シャッター22は両コントローラ4と平行な状態となる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る筐体2は、筐体内部の上下段に1つずつコントローラ4を搭載可能なストレージ筐体であって、上下段にコントローラ4が挿入された場合には、上下段の中間部材(仕切板21)に回転機構23を介して延設された1つのシャッター22に固定されたスプリングカバー24が両コントローラ4に対応する上下段のプッシュロッド43a,43bによって前面に押されることで、シャッター22は両コントローラ4と平行な状態で安定することができる。またこのとき、シャッター22には、シャッタースプリング25に常に発生する引張力によって背面側に押す力もかかることから、平行な状態をより安定的に維持できる。一方、筐体2において上下段の何れかのコントローラ4が抜去された場合には、1つのシャッター22が当該抜去された段に押し上がる(または押し下がる)ことにより、コントローラ4の抜去によって生じる筐体2内部の空間における冷却風の流路を遮断(または抑止)することができる。このとき、抜去開始直後は、上下段のプッシュロッド43a,43bがスプリングカバー24を前面に押す力の均衡が崩れることで、シャッター22は抜去側に回転する動作を開始するものであり、さらにこの動作によってシャッター22とシャッタースプリング25との間に角度が生じることでシャッタースプリング25の弾性力に垂直方向の分力が発生し、この分力によってシャッター22の動作が増強され、シャッター22はより大きくコントローラ4の格納空間側に回転することができる。かくして、本実施形態に係る筐体2は、保守作業時等に1つのコントローラ4を抜去した場合にサーキュレーションが発生することを防止し、ドライブ3の冷却性能の低下を回避することができる。また、本実施形態に係る筐体2は、複数のシャッターを必要とせずに1つのシャッター22で上述した効果を得られることから、筐体2のサイズや筐体2内部の格納スペースに対する制約の発生を避けることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ストレージユニット
2 ストレージ筐体(筐体)
3 ドライブ
4 電子計算モジュール(コントローラボード)
4a 上側コントローラ
4b 下側コントローラ
21 仕切板
22 シャッター
23 回転機構
24 スプリングカバー
25 シャッタースプリング
40 凹部
41(41a,41b) 天板
42 ファン
43(43a,43b) プッシュロッド
44 プッシュロッドスプリング
45 スプリング受け部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12