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特開2023-78583環境負荷量算出装置、案内情報提供システム及び環境負荷量算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078583
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】環境負荷量算出装置、案内情報提供システム及び環境負荷量算出方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230531BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230531BHJP
   G08G 1/137 20060101ALI20230531BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20230531BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G06Q50/10
G08G1/00 A
G08G1/137
G01C21/26 P
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191772
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平島 陽子
(72)【発明者】
【氏名】江端 智一
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129CC07
2F129CC16
2F129DD10
2F129DD20
2F129DD62
2F129EE29
2F129EE42
2F129EE52
2F129EE53
2F129EE82
2F129EE84
2F129FF11
2F129FF17
2F129FF18
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF66
2F129FF68
2F129HH12
5H181AA21
5H181AA24
5H181EE05
5H181FF10
5L049AA04
5L049CC12
(57)【要約】
【課題】環境負荷量算出装置において、移動経路又は利用施設に関する環境負荷量を高精度で算出する。
【解決手段】一定の期間に渡る前記交通機関の運行実績及び電力消費実績を用いて移動経路に関する消費電力を算出する消費電力算出部と、電力取引実績を用いて天候又は気温によって変動する電源分担率を推定する電源分担率推定部と、前記消費電力と前記電源分担率を基に前記利用者の検索した前記移動経路に関する二酸化炭素排出量を算出する排出量算出部と、前記二酸化炭素排出量を基に前記二酸化炭素排出量の削減量を算出する削減量算出部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部と記憶部を有する計算機を用いて、交通機関の利用者の移動に関する環境負荷の算出を行う環境負荷量算出装置であって、
一定の期間に渡る前記交通機関の運行実績及び電力消費実績を用いて、移動経路に関する消費電力を算出する消費電力算出部と、
電力取引実績を用いて、天候又は気温によって変動する電源分担率を推定する電源分担率推定部と、
前記消費電力と前記電源分担率を基に、前記利用者の検索した前記移動経路に関する二酸化炭素排出量を算出する排出量算出部と、
前記二酸化炭素排出量を基に、前記二酸化炭素排出量の削減量を算出する削減量算出部と、
を有することを特徴とする環境負荷量算出装置。
【請求項2】
前記消費電力算出部は、
前記運行実績及び前記電力消費実績を用いて、任意の路線の任意の区間について、一定の乗車率の場合の前記消費電力量を算出することを特徴とする請求項1の環境負荷量算出装置。
【請求項3】
前記消費電力算出部は、
前記移動経路に関する前記消費電力として、前記交通機関を利用した任意の経路及び区間の消費電力を算出し、
前記排出量算出部は、
電源ごとに前記二酸化炭素排出量を求め、前記電源ごとに前記二酸化炭素排出量の総和を取り、前記区間の前記二酸化炭素排出量を算出することを特徴とする請求項1の環境負荷量算出装置。
【請求項4】
前記電力分担率推定部は、
前記電力取引実績として、交通事業者の電力買取り実績を用いて、前記交通機関の走行時点の前記電源分担率を推定することを特徴とする請求項1の環境負荷量算出装置。
【請求項5】
前記削減量算出部は、
算出された前記二酸化炭素排出量と他の輸送サービスの二酸化炭素排出量との差分を求めて、前記削減量を算出することを特徴とする請求項1の環境負荷量算出装置。
【請求項6】
前記環境負荷量算出装置は、
前記交通機関の利用者の前記移動に関する前記環境負荷と共に、前記利用者が利用する施設に関する環境負荷の算出を行い、
前記消費電力算出部は、
前記交通機関の利用者の前記移動と、前記利用者が利用する前記施設の施設情報を含む行動計画の全体について、前記交通機関の前記運行実績及び前記電力消費実績と前記施設の電力消費実績とを用いて、前記移動経路に関する前記消費電力と前記施設に関する消費電力を含む前記行動計画の全体の消費電力を算出し、
前記排出量算出部は、
前記行動計画の全体の消費電力を用いて、前記利用者が検索した前記移動経路及び前記施設情報を含む前記行動計画の全体に関する前記二酸化炭素排出量を算出することを特徴とする請求項1の環境負荷量算出装置。
【請求項7】
前記行動計画は、
前記利用者が検索した前記移動経路及び前記施設情報を利用する時系列順に並べて構成され、前記利用者への行動案内として提供される情報であることを特徴とする請求項6の環境負荷量算出装置。
【請求項8】
電子媒体を用いて交通機関を利用する利用者へ経路案内情報を提供する案内情報提供システムであって、
前記利用者の移動に関する環境負荷の算出を行う第1の計算機と、
前記第1の計算機により算出された前記環境負荷に基づいて、前記利用者が保持する利用者端末へ前記経路案内情報を提供する第2の計算機と、を有し、
前記第1の計算機は、
処理部と記憶部を有する計算機を用いて、前記交通機関の前記利用者の移動に関する環境負荷の算出を行う環境負荷量算出装置であって、
一定の期間に渡る前記交通機関の運行実績及び電力消費実績を用いて、移動経路に関する消費電力を算出する消費電力算出部と、
電力取引実績を用いて、天候又は気温によって変動する電源分担率を推定する電力分担率推定部と、
前記消費電力と前記電源分担率を基に、前記利用者の検索した前記移動経路に関する二酸化炭素排出量を算出する排出量算出部と、
前記二酸化炭素排出量を基に、前記二酸化炭素排出量の削減量を算出する削減量算出部と、
を有し、
前記第2の計算機は、
前記利用者が入力した条件にしたがって前記移動経路を検索し、前記利用者へ前記経路案内情報を提供する経路施設検索部を有し、
前記経路施設検索部は、
検索された前記移動経路に関する前記環境負荷を前記第1の計算機に問い合わせ、
前記第1の計算機の前記排出量算出部が算出した前記二酸化炭素排出量を含む前記経路案内情報を前記利用者端末に送付することを特徴とする案内情報提供システム。
【請求項9】
前記第1の計算機は、
前記交通機関の利用者の前記移動に関する前記環境負荷と共に、前記利用者が利用する施設に関する環境負荷の算出を行い、
前記消費電力算出部は、
前記交通機関の利用者の前記移動と、前記利用者が利用する前記施設の施設情報を含む行動計画の全体について、前記交通機関の前記運行実績及び前記電力消費実績と前記施設の電力消費実績とを用いて、前記移動経路に関する前記消費電力と前記施設に関する消費電力を含む前記行動計画の全体の消費電力を算出し、
前記排出量算出部は、
前記行動計画の全体の消費電力を用いて、前記利用者が検索した前記移動経路及び前記施設情報を含む前記行動計画の全体に関する前記二酸化炭素排出量を算出し、
前記第2の計算機の前記経路施設検索部は、
前記利用者が入力した条件にしたがって前記移動経路及び前記施設情報を検索し、
検索された前記移動経路に関する前記環境負荷と前記施設情報に関する環境負荷を前記第1の計算機に問い合わせ、
前記第1の計算機の前記排出量算出部が算出した前記行動計画の全体に関する前記二酸化炭素排出量を含む前記経路案内情報を前記利用者端末に送付することを特徴とする請求項8に記載の案内情報提供システム。
【請求項10】
前記利用者端末は、
前記行動計画の全体に関する前記二酸化炭素排出量を含む前記経路案内情報を、前記移動経路及び前記施設ごとに表示することを特徴とする請求項9に記載の案内情報提供システム。
【請求項11】
前記行動計画は、
前記利用者が検索した前記移動経路及び前記施設情報を利用する時系列順に並べて構成され、前記利用者への行動案内として提供される情報であることを特徴とする請求項9に記載の案内情報提供システム。
【請求項12】
前記第1の計算機の前記消費電力算出部は、
前記運行実績及び前記電力消費実績を用いて、任意の路線の任意の区間について、一定の乗車率の場合の前記消費電力量を算出することを特徴とする請求項8に記載の案内情報提供システム。
【請求項13】
前記第2の計算機は、
前記電子媒体を用いて乗降する前記利用者の前記交通機関の乗降情報を取得して、運賃の請求と支払いを代行する決済部を更に有することを特徴とする請求項8に記載の案内情報提供システム。
【請求項14】
企業が運用する第3の計算機を更に有し、
前記第3の計算機は、
従業員が企業活動の一部として行った前記移動又は前記施設の利用に関する前記二酸化炭素排出量を確認し、前記従業員が所属する組織で利用できる企業内通貨に変換する実績管理部を有することを特徴とする請求項9に記載の案内情報提供システム。
【請求項15】
処理部と記憶部を有する計算機を用いて、交通機関の利用者の移動に関する環境負荷の算出を行う環境負荷量算出方法装であって、
一定の期間に渡る前記交通機関の運行実績及び電力消費実績を用いて、移動経路に関する消費電力を算出する消費電力算出ステップと、
電力取引実績を用いて、天候又は気温によって変動する電源分担率を推定する電力分担率推定ステップと、
前記消費電力と前記電源分担率を基に、前記利用者の検索した前記移動経路に関する二酸化炭素排出量を算出する排出量算出ステップと、
前記二酸化炭素排出量を基に、前記二酸化炭素排出量の削減量を算出する削減量算出ステップと、
を有することを特徴とする環境負荷量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷量算出装置、案内情報提供システム及び環境負荷量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会に向け、温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みが拡大している。2019年度の調査では、運輸部門の二酸化炭素排出量は全体の18.6%を占めており、公共交通各社においても、設備や車両の省エネルギー化、再生可能エネルギーの活用などの取組が進められている。
【0003】
このような取組によって、同じ2地点間の移動でも、利用する手段によって二酸化炭素の排出量は異なっているのが現状である。しかし、利用者には、自身が選択した行動が生み出す環境負荷を測る手段が無いと、より環境負荷の低い行動を選択するということができない。
【0004】
これに対して、アプリケーションを用いて交通サービスの案内情報を得る場合に、選択した交通サービスの排出する二酸化炭素排出量を試算して、提示するアプリケーションが現れている。
【0005】
例えば、特許文献1には、携帯端末で稼働するアプリケーションで、2地点間の移動経路を検索した場合に、移動経路情報と共に、移動に伴って排出される二酸化炭素の量を、各輸送事業者の指定するカーボンオフセット区間を考慮した上で試算して示し、利用者には排出量に応じた課金を要請するシステムが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、カーナビゲーションシステムにおいて、2地点間の移動経路を検索した場合に、移動経路情報と共に経路の勾配や渋滞状況を考慮した上で試算し、出発地から目的地までの二酸化炭素排出量が最小となる経路を提示するシステムが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、2地点間の移動経路を検索した場合に、移動経路情報と共に、車両の走行に用いる電力を蓄積する車両電池に蓄電された電力のエネルギー源の種類に応じて二酸化炭素の排出量を算出するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-108512号公報
【特許文献2】特開2009-79995号公報
【特許文献3】特開2019-15595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術は、移動経路の各区間で移動した場合の二酸化炭素排出量およびカーボンオフセット済の区間を交通事業者が定義する必要があるが、その定義方法は開示されていない。
【0010】
特許文献2に開示された技術は、移動経路の勾配や、渋滞状況による停止回数を踏まえて、各経路を自動車で走行した場合に排出される二酸化炭素の量を算出するが、自動車が利用するエネルギー源は考慮されていない。二酸化炭素の排出量は、火力や太陽光発電などのエネルギー源によって大きく異なるため、エネルギー源を考慮した排出量の算出を行う必要がある。
【0011】
特許文献3に開示された技術は、車両電池に蓄電された電力のエネルギー源の種類に応じて二酸化炭素の排出量を算出するが、鉄道の一般的な車両では車両上に蓄電せず、走行の時点で供給される電力を、架線を経由して利用するため開示されている方法を適用することはできない。
【0012】
交通事業者は再エネ活用や回生電力利用などさまざまな取組みを行っており、排出量は路線や列車種別、時間帯によっても変動する。しかし、特許文献1~3には、それらの取組みを反映する方法は開示されていない。さらに、移動手段の排出量だけで行動を選択すると、トータルでは環境負荷の高い行動を選んでしまう可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、環境負荷量算出装置において、移動経路又は利用施設に関する環境負荷量を高精度で算出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様の環境負荷量算出装置は、処理部と記憶部を有する計算機を用いて、交通機関の利用者の移動に関する環境負荷の算出を行う環境負荷量算出装置であって、一定の期間に渡る前記交通機関の運行実績及び電力消費実績を用いて、移動経路に関する消費電力を算出する消費電力算出部と、電力取引実績を用いて、天候又は気温によって変動する電源分担率を推定する電源分担率推定部と、前記消費電力と前記電源分担率を基に、前記利用者の検索した前記移動経路に関する二酸化炭素排出量を算出する排出量算出部と、前記二酸化炭素排出量を基に、前記二酸化炭素排出量の削減量を算出する削減量算出部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、環境負荷量算出装置において、移動経路又は利用施設に関する環境負荷量を高精度で算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例の案内情報提供システムの全体構成を示す図である。
図2】計画210の例を示す図である。
図3】エネルギー買取り実績300の例を示す図である。
図4A】電源分担率500の例を示す図である。
図4B】電源別排出量700の例を示す図である。
図5】実績500の例を示す図である。
図6】施設エネルギー消費600の例を示す図である。
図7】実施例の案内情報提供のシーケンスの例を示す図である。
図8】移動経路の二酸化炭素排出量算出処理フローを示す図である。
図9】施設利用の二酸化炭素排出量算出処理フローを示す図である。
図10A】消費電力算出処理の詳細フローを示す図である。
図10B】乗車率と消費電力の関係を示す図である。
図11】電源分担率算出の処理フローを示す図である。
図12】利用者端末3の案内提供画面の例を示す図である。
図13】利用者端末の案内提供画面の別の例を示す図である。
図14】実績管理計算機4の二酸化炭素削減量と企業内通貨換算確認画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施例について説明する。
【実施例0018】
図1は、実施例に係る案内情報提供システムの全体構成を示す図である。
案内情報提供システムは、利用者が検索した移動経路や施設の二酸化炭素排出量を算出して、より二酸化炭素排出量の少ない行動の案内情報を提供するシステムである。案内情報提供システムは、例えば、排出量算出計算機1と、実績管理計算機4、案内提供計算機2と、利用者端末3とが、ネットワーク9を介して接続して構成される情報処理システムである。
【0019】
排出量算出計算機1、案内提供計算機2、実績管理計算機4、はいずれも、ハードウェアとして、プログラムや種々のデータを格納する記憶装置(記憶部)11と、プログラムを実行する処理装置12と、ネットワーク2を介して通信を行う通信装置13を有している。ここで、処理装置12は、例えば、CPU(プロセッサ)で構成される。通信装置13は、例えば、通信I/Fで構成される。
【0020】
利用者端末3は利用者が保持するスマートフォン等の携帯端末である。利用者端末3は、ハードウェアとして、プログラムや種々のデータを格納する記憶部と、プログラムを実行するCPUと、ネットワーク2との通信を行う通信I/Fと、入力部と、表示部を有している。なお、図1には、説明の都合上、利用者端末3の経路・施設検索部31のみを図示している。
【0021】
排出量算出計算機1は、記憶装置(記憶部)11と、処理装置(CPU)12と、通信装置(通信I/F)13とを有し、二酸化炭素の排出量算出を行う。記憶装置(記憶部)11は、排出量算出プログラム100と、データベース(DB)110を記憶する。DB100は、電力買取り実績DB400、電源分担率DB500、運行・電力消費実績DB600、電源別排出量DB700、を含む。各DBの構成例については後述する。なお、以降の説明では、各DBに付した符号は、DBまたはそのDBの情報を指すことがある。例えば、運行・電力消費実績600、電源分担率500等、ということがある。
【0022】
排出量算出プログラム100は、電源分担率推定部101、消費電力算出部102、排出量算出部104、削減量算出部105の機能を有し、このプログラム100がCPU12で実行されることで、各機能が実現される。なお、排出量算出プログラム100は上記4つの機能が同時に含まれる必要はなく、各機能別のプログラムが集合したものでもよい。
【0023】
案内提供計算機2は、排出量算出計算機1による二酸化炭素の排出量算出結果を用いて、利用者ごとに経路情報に二酸化炭素排出量を追加した案内情報を生成して利用者端末3へ提供する情報処理装置である。この計算機2は、記憶部に、経路・施設検索部21と、決済部22の機能を有する案内プログラム20を記憶している。この案内プログラム20がCPUで実行されることでこれらの機能が実現されて、案内情報を生成して提供する。
【0024】
実績管理計算機4は、企業が保有し、企業の従業員が、企業活動の一部として行った移動や施設利用に関する二酸化炭素の排出量や、削減量を取得して管理する情報処理装置である。実績管理計算機4は、例えば、従業員が、企業活動の一部として行った移動や施設利用に関する二酸化炭素の排出量を確認し、より二酸化炭素の排出量が少ない手段を選択することで削減した二酸化炭素量を、従業員が所属する組織で利用できる企業内通貨に変換する。
【0025】
実績管理計算機4は、記憶部に、排出実績・削減実績DB900と、実績管理部41を有して、実績情報と企業内通貨を管理する情報処理装置である。CPUでプログラムが実行されることで、各DBの情報の記録および読み出し等の管理を行う。
【0026】
次に、排出量算出計算機1の各機能部について説明する。
【0027】
排出量算出プログラム100の電源分担率推定部101は、通信I/F13を介して、電力管理計算機6から電力取引実績200を取得し、曜日や時間帯、天候、気温に基づいて電源分担率500を作成する。
【0028】
消費電力算出部102は、通信I/F13を介して、運行管理計算機5から運行実績800を取得し、さらに、電力管理計算機6から電力消費実績300を取得し、路線と区間ごとに、乗車人数実績、消費電力実績を記録した運行・電力消費実績600を作成する。そして、消費電力算出部102は、案内提供計算機2から、通信I/F13を介して、問い合わせを受け、任意の経路および区間の一人あたり消費電力量を、前記運行・電力消費実績600と、乗車日時と、天候、気温に基づいて推定する。
【0029】
排出量算出部104は、乗車日時と、天候、気温に基づいて、乗車時の電源分担率を、前記電源分担率500から求め、前記消費電力量と、乗車時の電源分担率と、電源別排出量700から、当該路線・区間利用時の二酸化炭素排出量を求める。
【0030】
削減量算出部105は、排出量算出部104で求めた二酸化炭素排出量を基に、二酸化炭素排出量の削減量を算出する。
【0031】
次に、図2乃至図6を用いて、各DB(またはDB情報)の構成例について説明する。
【0032】
図2は、利用者の経路検索、および、施設検索の結果である計画情報210である。計画情報210は、利用者が検索した移動経路、および、施設情報を利用する時系列順に並べたものであり、利用者への行動案内として提供される情報である。計画情報210は、日時211、利用する駅ID、または、施設ID212、駅や施設の出入りを示す行動種別213,路線ID214,利用する交通便の便ID216と、交通便の種別、または、施設の種別を示す種別215と、交通便の編成数217から構成される。
【0033】
図3は、電力取引実績DB400の例を示す。電力取引実績DB400は、買い付け先311と、電源種別312、時間あたりの取引量313、取引開始時刻314、取引終了時刻315、取引開始時の天候316,取引開始時の気温317,取引の行われた曜日318から構成される。ここで、天候、気温、曜日が記録されるのは、太陽光発電の場合には、天候によって発電量が変動するためであり、さらに、一般家庭から太陽光によって発電した電力を買い取る場合には、当日の気温や曜日によって家庭での消費量が決まり、売りに出される電力が変動するためである。
【0034】
図4Aは、電源分担率500の例を示す。電源分担率500は、時間帯コード421と、天候コード422と、曜日423と、気温帯コード424、電源分担率425と、から構成される。
【0035】
図4Bは、電源別排出量700である。電源別排出量700は、電源種別426と、電源の優先順位427,排出量係数428から構成され、太陽光発電や、LNG火力発電などの電源の種類ごとに、利用の優先順位と、1kwhを発電するために排出される二酸化炭素の量である排出係数を規定したものである。なお、排出係数は、電力事業者から公開されるものである。
【0036】
図5は、運行・電力消費実績600の例を示す。運行・電力消費実績DB600は、路線ID511と、列車種別512と、編成数(編成数)513と、発駅514と、着駅515と、発駅出発時の乗車人数515と、発駅出発時の気温517と、発駅514から着駅515までの走行に要した電力である列車消費電力518と、発駅514から着駅515までの走行において回生ブレーキなどにより回収した電力である回収電力519と、から構成される。
【0037】
ここで、路線ID511と、列車種別512と、編成数513と、発駅514と、着駅515と、発駅出発時の乗車人数515は、前記排出量算出プログラム100の前記消費電力算出部が、前記運行管理計算機5より取得する。前記列車消費電力518と、前記回収電力519は、前記排出量算出プログラム100の前記消費電力算出部が、交通事業者の保有する電力管理計算機6から取得する。
【0038】
図6は、施設エネルギー消費600の例を示す図である。施設エネルギー消費600は、施設ID611と、サービスID612と、収容人数613と、消費電力613と、から構成される。
【0039】
次に、図7を参照して、企業の従業員が、セミナーの会場と移動経路を決定するために、本発明を利用するケースを説明する。
【0040】
まず、交通事業者が運用する排出量算出計算機1は、運行実績、電力消費実績を収集し、運行・消費電力実績600を作成する(S741)。次に、企業の従業員であるセミナー開催者が、会場を検索する(S711)。案内提供計算機2は、参加者の住所から、各人の移動距離が一定の値以下となる場所を検索し、それらの施設の利用と移動にかかる二酸化炭素排出量を、排出量算出計算機1に問い合わせる。案内提供計算機2は、施設利用と移動にかかる二酸化炭素排出量を算出する(S742)。
【0041】
次に、施設利用と移動が、全てLNG火力などの最も広く用いられている電源であった場合の二酸化炭素排出量を求め、その差分を削減量として算出し(S743)、施設と移動経路の案内情報を利用者端末3へ返す。
【0042】
セミナー開催者は、トータル排出量を考慮して会場を選択する(S712)。案内提供計算機2は施設利用費用を企業へ請求して、施設事業者へ支払う。さらに、移動と排出の実績(より排出量が削減できる手段を選択した場合の削減実績)を企業へ通知する。企業の実績管理計算機4は、部署ごとの削減量実績を記録し、削減量を企業内通貨へ換算して(S731)該当部署に付与し、気候変動対策情報開示に入れる(S732)。開催者またはその所属部署は、企業内通貨を利用して、活動を行う原資とする(S713)。
【0043】
なお、削減量の算出方法は、移動経路や輸送経路の場合には、多くの人が選択する最短経路や最安値経路の排出量との差分であっても良い。また、最初に指定した移動日時や発送日時ではなく、より排出量の少ない日時の移動や輸送が選択された場合には、最初に指定した日時と、選択した日時に移動や輸送を行う場合との排出量の差分を求めて、削減量としてもよい。
【0044】
次に、図8を参照して、移動経路の消費電力量算出について説明する。この処理は、排出量算出プログラム100の、消費電力算出部102による処理が関係する。
【0045】
排出量算出プログラム100はCPU12で実行され、消費電力算出部102は、運行管理計算機5から、定期的に(例えば週に一回又は月に一回などの頻度)、路線ID511と、列車種別512と、編成数(編成数)513と、走行区間である発駅514,着駅516について、発駅514出発時の乗車人数516を取得する。
【0046】
ここで、乗車人数は、車両備え付けられた荷重センサ、または、駅に設置されたセンサなどから取得することができる情報である。さらに、消費電力算出部102は、電力管理計算機5から、定期的に(例えば週に一回又は月に一回などの頻度)、路線ID511と、列車種別512と、走行区間である発駅514、着駅516間の走行のために消費した消費電力518、および、回収電力519を取得する(S801)。
【0047】
次に、消費電力算出部102は、案内提供計算機2の経路・施設検索部21から計画情報200を受け取ると、前記計画情報200の路線ID214と、便ID215と、乗車する駅ID212、降車する駅ID212で区別される乗車区間を時系列順に取り出す(S802)。なお、乗車する駅は、行動種別213が発である駅であり、降車する駅は行動種別213が着である駅である。
【0048】
そして、消費電力算出部102は、当該区間の乗車時の天候と気温の予測情報を、気象予報サービスを利用して取得する(S803)。数日から数時間先の天候や気温の予報をAPIにて提供するサービスは一般に提供されている。
【0049】
続いて、消費電力算出部102は、前記計画情報200から路線ID214、発駅IDと着駅IDから成る乗車区間、利用する便の編成数217と、列車種別216を取り出し、乗車時の気温の予測値を用いて、運行・消費電力実績600から、乗車区間の各駅間の消費電力を取得し、それらを加算して、乗車区間全体の消費電力を求める(S804)。この消費電力取得処理の詳細は図10を用いて後述する。
【0050】
そして、この消費電力から回収電力516を引いて、便によらず共通に負担する線路や架線、信号、駅などの共通設備分を加算し、実質的な消費電力を求める(S805)。次に、実質消費電力を乗車人数で除算し、一人あたりの消費電力を算出する(S806)。
【0051】
次に、乗車時の天候、気温、曜日、時間帯から、電源分担率500を参照して、乗車時の電源分担率を求める。そして、前記一人あたりの消費電力に前記分担率を乗算し、電源ごとの電力消費量を求め、当該電力消費量に当該電源の排出係数を乗算して、当該電源による電力を用いたことによる二酸化炭素排出量を求める。そして、全ての電源の二酸化炭素排出量の総和を、区間移動による二酸化炭素排出量とする。
【0052】
消費電力算出部102は、計画情報200から二酸化炭素排出量算出が未処理の区間を探し(S807)、未処理の区間がある場合は、当該区間に関する実績を取り出す(S801)。未処理の区間がない場合は、処理を終了する。
【0053】
なお、上記の消費電力算出部の処理(S804)から(S806)は、列車ごとの消費電力を車載の電力計にて計測している場合を想定しているが、実際には列車ごとの消費電力を計測していない場合も多い。このような場合には、対象日時を含む一定の期間における、対象となる列車の属する起電回路内の変電所の出力合計値と、起電回路内の列車の総輸送距離及び定員から、以下の式を用いて距離・一人あたり消費電力を求める。
輸送サービスの消費電力(kWh/1km・人)=出力合計値(kWh)/Σ(全便の総輸送距離×各便の定員)
【0054】
次に、図9を参照して、施設利用の消費電力量算出処理について説明する。この処理は、排出量算出プログラム100の、消費電力算出部102による処理が関係する。同じ距離でも、勾配やカーブ、空調利用、車両重量、乗車人数で消費電力は異なるため、排出量算出プログラム100は実績から消費電力を求める。
【0055】
排出量算出プログラム100はCPU12で実行され、消費電力算出部102は、案内提供計算機2の経路・施設検索部21から計画情報200を受け取ると、前記計画情報200の施設利用に関するレコードを取得し、施設ID214と、サービスID215を時系列順に取り出す(S901)。
【0056】
そして、消費電力算出部102は、当該施設の利用時の天候と気温の予測値を、気象予報サービスを利用して取得し(S902)、利用する施設IDと、サービス種別と、乗車時の気温の予測値を用いて、消費電力実績600に基づいて、施設利用にかかる消費電力を求める(S903)。
【0057】
次に、施設利用時の天候、気温、曜日、時間帯から、電源分担率500を参照して、施設利用時の電源分担率を求める(S905)。そして、前記一人あたりの消費電力に前記分担率を乗算し、電源ごとの電力消費量を求め、当該電力消費量に当該電源の排出係数を乗算して、当該電源による電力を用いたことによる二酸化炭素排出量を求める。そして、全ての電源の二酸化炭素排出量の総和を、施設利用による二酸化炭素排出量とする(S906)。
【0058】
消費電力算出部102は、計画情報200から二酸化炭素排出量算出が未処理の施設を探し(S907)、未処理の施設がある場合は、当該施設の利用に関する実績を取り出す(S901)。未処理の施設がない場合は、処理を終了する。
【0059】
次に、図10Aを参照して、消費電力算出部102の消費電力推定動作(S804)について説明する。図10Bは、乗車率と消費電力の関係を示す図である。
【0060】
消費電力算出部102は、消費電力算出部102は、運行管理計算機5から、定期的に(例えば週に一回又は月に一回などの頻度)、路線ID511と、列車種別512と、編成数(編成数)513と、走行区間である発駅514、着駅516について、発駅514出発時の乗車人数516を取得する。
【0061】
ここで、乗車人数は、車両備え付けられた荷重センサ、または、駅に設置されたセンサなどから取得することができる情報である。さらに、消費電力算出部102は、電力管理計算機5から、定期的に(例えば週に一回又は月に一回などの頻度)、路線ID511と、列車種別512と、走行区間である発駅514,着駅516間の走行のために消費した消費電力518、および、回収電力519を取得し、運行・電力消費実績600として記録する(S1001)。
【0062】
消費電力算出部102は、上記のようにして蓄積した運行・電力消費実績600から、直近の一定期間の実績のみを選択し、前記計画情報200から取り出した路線ID214と、列車種別と、編成数と、乗車する駅ID212、降車する駅ID212で区別される乗車区間がそれぞれ一致する実績のみを選択する(S1002)。
【0063】
さらに、消費電力算出部102は、当該区間の乗車時の気温が含まれる気温帯コードの実績のみを選別する(S1003)。そして、消費電力算出部102は、選別した実績を用いて、例えば50%など基準となる乗車率の場合の消費電力を求める。一般的に、乗車人数が0であっても、車両を走行させるためには一定の電力が必要であり、乗車人数が増えるごとに必要な電力が加算されていく。このため、輸送サービスの消費電力を比較する際には、乗車率が高い方が車両自体にかかる固定の電力が分割されるためより低い値となる。
【0064】
この点を考慮し、基準となる乗車率の場合の消費電力に基づいて二酸化炭素排出量を計算する。基準乗車率の消費電力の求め方は、車両の仕様として消費電力算定式が得られる場合は、実績データを算定式に当てはめてパラメータを同定し、乗車率と消費電力の関係式を求め、乗車率が50%の場合の消費電力を推定する(S1005)。消費電力算定式がない場合は、線形補間にて乗車率が50%の場合の消費電力を推定する(S1006)。
【0065】
図11を参照して、電源分担率の算出処理動作について説明する。
電源分担率推定部101は、直近の一定期間の電源別電力買取り実績から、天候や気温、曜日ごとの電源分担率を決定する。これは、再生可能エネルギーは天候、気温、曜日によって出力が変動するためである。特に、太陽光発電の場合、快晴と曇りの日では発電力に倍以上の差がある。また、一般家庭の電力需要は曜日や気温で変動するため、家庭での余剰電力の売電量も変動する。そこで、電力管理計算機6から、定期的に(例えば週に一回又は月に一回などの頻度)、任意の路線へ供給する電力について、電源種別312、単位時間当たりの取引量、取引開始時刻314、取引終了時刻315を取得し、取引開始時刻の天候316と、取引開始時刻の気温317と、取引が行われた曜日318を、電力取引実績400として記録する(S1101)。
【0066】
ここで、取引開始時刻の天候316は、晴を10、晴時々曇を15、曇を20、曇時々雨を25、雨を30、雨時々雪を35,雪を40のように、天候を示すコードとして記録する。取引開始時刻の気温317は、例えば、0℃から4℃までを00、5℃から9℃までを05と表現する5℃刻みの気温帯コードとして記録する。
【0067】
次に、電源分担率推定部101は、全電源についての取引量の総和の実績から、対象日時の電力需要の予測値を求める(S1102)。ここで、電力需要の予測値は、実績を基に、ARIMA(Autoregressive Integrated Moving Average)、RNN(Recurrent Neural Network)などの時系列予測手法を用いて求めることができる。
【0068】
電源分担率推定部101は、上記のようにして蓄積した電力取引実績400から、直近の一定期間の実績のみを選択し、前記計画情報200から取り出した、処理対象とする乗車区間の乗車の時点、つまり、行動種別214が発である実績の日時211の時点と同一の曜日、同一の時間帯の実績だけを選択する(S1103)。そして、電源分担率推定部101は、選択済実績の中から、前記日時211の時点の天候コードが一致する実績だけをさらに選択する(S1104)。この結果、該当する天候コードの実績が複数存在する場合には(S1105)、それらの中から気温帯コードが近い実績だけを選択し、それらの平均値をとって予測値とする(S1106)。
【0069】
電源分担率推定部101は、このようにして、対象日時と天候や気温などの条件が類似している実績を取り出し、対象日時の各電源別の取引量を推定する。S1104からS1106にて示した方法は、気温より天候を重視して類似した実績を選択する方法であるが、上記に限定されるものではない。例えば、k-近傍法のような方法を用いて、各実績の天候コード・気温コードを(20、25)のように分散表現し、対象日の天候コード・気温コードと、実績の天候コード・気温コードとの間のユークリッド距離を計算して、対象日との距離が一定の値以下である実績を類似度が高い実績として選択し、それら実績の電源別取引量の平均値をとって、予測値としても良い。そして、前記電力需要に対する各電源の取引量の占める割合を電源分担率とする(S1107)。
【0070】
さらに、一般的には、太陽光発電など変動する電源を利用する場合には、LNG火力などの安定的に供給される電源をバックアップとして用いる。そこで、太陽光発電など変動する電源が優先順位1位の主電源である場合は、まず、太陽光発電の取引量を求め、対象日時における対象路線、対象区間の電力消費量に対する当該取引量を太陽光電源の比率として、残りを優先順位が2位である他電源の比率としてもよい。
【0071】
電源分担率推定部101は、このようにして求めた電源分担率425を、時間帯コード421、天候コード422、気温帯コード423、曜日424とともに電源分担率500として記録する。この電源分担率500を参照し、排出量算出部104は二酸化炭素排出量を計算する。ただし、時間の経過により取引する電力事業者が変わり、電源別の取引量も変化するため、電源分担率推定部101は、排出量計算の度に電源分担率500を計算してもよい。以上のようにして、移動と施設利用を含む行動計画について、その二酸化炭素排出量を算出する。
【0072】
図12は、利用者端末3の経路・施設検索部31に表示される経路検索画面1200の一例を示す。
画面1200は、二酸化炭素排出量算出の結果として、利用者に対して通常の最短経路の案内情報1211に加えて、二酸化炭素排出量がより少ないカーボンミニマム経路の案内情報1221の表示を含む。
【0073】
例えば、最短経路の案内情報1211では、A駅を出発してX路線で20分間移動してB駅に到着し、施設Pにて仕事をして、X路線で20分移動してA駅に移動する。
【0074】
一方、カーボンミニマム経路の案内情報1221では、Y路線で30分移動してD駅に行き、施設Qにて仕事をして、Y路線を利用して30分移動しA駅へ移動する。カーボンミニマム経路の案内情報1221では、移動距離が長いために、移動にかかる排出量は多いが、利用する会議場Qの排出量が小さいために、行動計画全体の二酸化炭素排出量は、最短経路と比べて小さい。
【0075】
案内情報1211、および、案内情報1221では、これらの各区間で利用する交通便と、利用する施設の二酸化炭素排出量を表示し、さらに、それらの交通便、および、施設の二酸化炭素排出量の最大値を括弧内に表示し、行動計画全体の二酸化炭素排出量と、当該行動計画を採用することで削減できる二酸化炭素排出量の削減量を提示することで、より二酸化炭素排出量の少ない経路を選択するよう促している。
【0076】
ここで、二酸化炭素排出量の最大値とは、交通便や施設の電源が全てLNG火力などの最も広く用いられている電源であった場合の二酸化炭素排出量であり、当該最大値と、提示した経路の排出量との差分が二酸化炭素排出量の削減量となる。
【0077】
当該経路検索画面1200は、個人がオフィスやホテルなどの施設と交通手段を検索し、選択するための画面であるが、図7で述べたように企業の従業員が、セミナーの会場と移動経路を決定するためには、セミナー参加者について、当該経路検索画面1200と同様の情報を取得して、参加者全員の二酸化炭素排出量、および、二酸化炭素排出量削減量の総和を求めることで、より二酸化炭素排出量が少ない会場を選択することができる。
【0078】
図13は、利用者端末3の経路・施設検索部31に表示される経路検索画面1200のもう一つの例を示す。ここで、画面1200は、貨物を輸送する場合の輸送手段の検索結果表示画面であり、利用者に対してトラックによる輸送の案内情報1231に加えて、鉄道の貨物輸送を用いたカーボンミニマム経路の案内情報1241の表示を含む。
【0079】
ここで、トラックによる輸送の案内情報1231は夜間の輸送であるのに対して、カーボンミニマム経路の案内情報1241では、太陽光を電源とする鉄道の貨物輸送を利用して二酸化炭素排出量を削減するために昼間の輸送を提案している。このように、利用者は、二酸化炭素排出量がより少ない輸送手段と、輸送のタイミングを選択することができる。
【0080】
図14は、実績管理計算機4の実績管理部41に対して、実績管理計算機4の実績管理部41により二酸化炭素の排出削減量を確認する画面1300の例を示す。
【0081】
実績管理画面1300は、実績を確認する条件として、部署、期間を入力する入力項目を有している。管理者が、実績管理部41が提供する実績表示画面に表示された画面1300の項目について入力部より条件を入力する。すると、実績管理部41が、入力された項目の条件について、二酸化炭素の削減量を表示する。
【0082】
さらに、実績管理部41は、企業全体の二酸化炭素排出削減量に占める当該部署の割合を表示する。この画面では、組織の活動が活発であれば排出量は増加すると考えられるので、組織ごとに排出量を可視化するのではなく、削減量を可視化することで、企業活動は奨励しながら、削減の努力を促すことができる。
【0083】
さらに、実績管理部41は、削減した二酸化炭素排出量を、あらかじめ定められたレートに従って企業内通貨に換算して、部署に付与することで、部署単位の削減努力を促すといった運用ができる。画面1300では、企業内通貨換算後の当月獲得ポイント、および、累計獲得ポイントを表示している。
【0084】
このように、上記実施例では、移動経路や施設について、移動や施設利用に伴って排出される二酸化炭素の量を、車両の走行や施設に用いる消費電力量と、動的に変化する電力のエネルギー源とに基づいて算出して、案内情報として提供する。
【0085】
また、上記実施例では、移動手段と目的地での行動を含むトータルの二酸化炭素排出量を算出し、より環境負荷の低い行動を推薦する。例えば、火力電源の自宅で空調を付けて仕事するよりも、移動して再生可能エネルギーが利用できる手段、場所、時間帯で仕事をするよう誘導する。火力電源の社屋で会議を開催するよりも、多少遠くても、再生可能エネルギーを電源とする会議場で開催する方が排出量削減になれば、会議場の利用を提案する。
【0086】
上記実施例によれば、移動や施設利用に伴う排出量について、路線や列車種別、時間帯に応じて、より実態に近い値を提示することができる。これにより、利用者に対して、課金やポイント付与の妥当性を示し、より排出量が少ないサービスや、より排出量が少ない日、時間帯のサービス利用に誘導することが可能になる。
【0087】
以上のように、上記実施例によれば,運行実績と電力消費実績、および、電力取引実績を活用して、天候や気温で変動する再生可能エネルギーの供給量を踏まえて、輸送サービスの二酸化炭素排出量を精度よく算出することができる。これにより、移動や施設利用に伴う排出量について、路線や列車種別、時間帯に応じて、より実態に近い値を提示することができる。さらに、これにより、利用者に対して、課金やポイント付与の妥当性を示し、より排出量が少ないサービスや、より排出量が少ない日、時間帯のサービス利用に誘導することが可能になる。
【0088】
尚、上記実施例は、人の移動や施設利用を例としたが、開示する技術は物資の輸送にも適用できる。物資の輸送においては、排出量の少ない電源を利用できる時間帯を選択して輸送することで、排出量を削減する使い方も考えられる。
【0089】
また、上記実施例は、二酸化炭素排出量算出を扱っているが、資源利用量の削減についても、利用量の算出および削減量の算出に開示する技術が適用できる。
【0090】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されずに、種々変形して実施し得る。例えば、上記実施例の各データベースの構成は一例であって、一部のデータを登録しない、または関連する他のデータを追加して登録してもよい。
【0091】
また、上記実施例の案内情報提供システムでは、案内提供計算機2や実績管理計算機4、移動実績管理計算機5の機能を、それぞれ排出量算出計算機1から分離させて構成しているが、他の例によれば、これらの計算機3、4、5の機能の一部または全部を、排出量算出計算機1に備えるように構成してもよい。また、二酸化炭素排出量算出プログラム、および上記案内情報提供システムが実行する案内情報提供プログラムとしても把握することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 排出量算出計算機
3 利用者端末
4 実績管理計算機
5 運行管理計算機
9 ネットワーク
11 記憶装置
12 処理装置
13 通信装置
20 案内プログラム
21 経路・施設検索部
22 決済部
31 経路・施設検索部
100 排出量算出プログラム
101 電源分担率推定部
102 消費電力算出部
104 排出量算出部
105 削減量算出部
110 データベース
400 電力取引実績
500 電源分担率
600 運行・電力消費実績
700 電源別排出量
900 排出実績・削減実績
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14