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  • 特開-速度測定装置及び速度測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078586
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】速度測定装置及び速度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
G01P3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191778
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 静一郎
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久利
(57)【要約】
【課題】非接触で対象物の速度を容易に測定可能な速度測定装置を提供する。
【解決手段】
対象物1に励起光を照射する光源11と、励起光を照射された対象物1で生じた蛍光を検出する蛍光検出器12と、対象物1の速度と、対象物1で生じる蛍光の強度と、の関係を保存する関係保存装置21と、検出された蛍光の強度と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出する速度算出部22と、を備える速度測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に励起光を照射する光源と、
前記励起光を照射された前記対象物で生じた蛍光を検出する蛍光検出器と、
前記対象物の速度と、前記対象物で生じる蛍光の強度と、の関係を保存する関係保存装置と、
前記検出された蛍光の強度と、前記関係と、に基づき、前記対象物の速度を算出する速度算出部と、
を備える、速度測定装置。
【請求項2】
前記蛍光の強度が前記蛍光の積算強度である、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項3】
前記励起光を照射された前記対象物で生じた反射光を検出する反射光検出器をさらに備え、
前記関係が、前記対象物の速度と、前記対象物で生じる蛍光の強度及び前記対象物で生じる反射光の強度の比と、の関係であり、
前記速度算出部が、前記検出された蛍光の強度及び前記検出された反射光の強度の比と、前記関係と、に基づき、前記対象物の速度を算出する、
請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項4】
前記蛍光の強度が前記蛍光の積算強度であり、
前記反射光の強度が前記反射光の積算強度である、
請求項3に記載の速度測定装置。
【請求項5】
前記励起光の強度が一定である、請求項1から4のいずれか1項に記載の速度測定装置。
【請求項6】
対象物に励起光を照射することと、
前記励起光を照射された前記対象物で生じた蛍光を検出することと、
前記対象物の速度と、前記対象物で生じる蛍光の強度と、の関係を用意することと、
前記検出された蛍光の強度と、前記関係と、に基づき、前記対象物の速度を算出ことと、
を含む、速度測定方法。
【請求項7】
前記蛍光の強度が前記蛍光の積算強度である、請求項6に記載の速度測定方法。
【請求項8】
前記励起光を照射された前記対象物で生じた反射光を検出することをさらに含み、
前記関係が、前記対象物の速度と、前記対象物で生じる蛍光の強度及び前記対象物で生じる反射光の強度の比と、の関係であり、
前記検出された蛍光の強度及び前記検出された反射光の強度の比と、前記関係と、に基づき、前記対象物の速度を算出する、
請求項6に記載の速度測定方法。
【請求項9】
前記蛍光の強度が前記蛍光の積算強度であり、
前記反射光の強度が前記反射光の積算強度である、
請求項8に記載の速度測定方法。
【請求項10】
前記励起光の強度が一定である、請求項6から9のいずれか1項に記載の速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度測定装置及び速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の移動速度を非接触で測定する方法が提案されてきている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の方法は、パルス光を照射された対象物で生じる反射光と蛍光の空間的距離と、パルスの周期と、に基づいて、対象物の移動速度を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-21817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反射光と蛍光の空間的距離を検出することや、パルスの発生周期を正確に検出することは容易ではない。そこで、本発明は、非接触で対象物の速度を容易に測定可能な速度測定装置及び速度測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様に係る速度測定装置は、対象物に励起光を照射する光源と、励起光を照射された対象物で生じた蛍光を検出する蛍光検出器と、対象物の速度と、対象物で生じる蛍光の強度と、の関係を保存する関係保存装置と、検出された蛍光の強度と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出する速度算出部と、を備える。
【0006】
上記の速度測定装置において、蛍光の強度が蛍光の積算強度であってもよい。
【0007】
上記の速度測定装置が、励起光を照射された対象物で生じた反射光を検出する反射光検出器をさらに備え、関係が、対象物の速度と、対象物で生じる蛍光の強度及び対象物で生じる反射光の強度の比と、の関係であり、速度算出部が、検出された蛍光の強度及び検出された反射光の強度の比と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出してもよい。
【0008】
上記の速度測定装置において、蛍光の強度が蛍光の積算強度であり、反射光の強度が反射光の積算強度であってもよい。
【0009】
上記の速度測定装置において、励起光の強度が一定であってもよい。
【0010】
また、本発明の態様に係る速度測定方法は、対象物に励起光を照射することと、励起光を照射された対象物で生じた蛍光を検出することと、対象物の速度と、対象物で生じる蛍光の強度と、の関係を用意することと、検出された蛍光の強度と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出ことと、を含む。
【0011】
上記の速度測定方法において、蛍光の強度が蛍光の積算強度であってもよい。
【0012】
上記の速度測定方法が、励起光を照射された対象物で生じた反射光を検出することをさらに含み、関係が、対象物の速度と、対象物で生じる蛍光の強度及び対象物で生じる反射光の強度の比と、の関係であり、検出された蛍光の強度及び検出された反射光の強度の比と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出してもよい。
【0013】
上記の速度測定方法において、蛍光の強度が蛍光の積算強度であり、反射光の強度が反射光の積算強度であってもよい。
【0014】
上記の速度測定方法において、励起光の強度が一定であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非接触で対象物の速度を容易に測定可能な速度測定装置及び速度測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
図2図2は、励起時間と蛍光強度との関係を示す模式的なグラフである。
図3図3は、蛍光強度と対象物の速度との関係を示す模式的なグラフである。
図4図4は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
図5図5は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
図6図6は、他の実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
実施形態に係る速度測定装置は、図1に示すように、対象物1に励起光を照射する光源11と、励起光を照射された対象物1で生じた蛍光を検出する蛍光検出器12と、対象物1の速度と、対象物1で生じる蛍光の強度と、の関係を保存する関係保存装置21と、検出された蛍光の強度と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出する速度算出部22と、を備える。
【0019】
図2に示すように、一定の強度の励起光を対象物1に照射し、発生した蛍光が所定の強度に達するまでの時間を蛍光寿命又は蛍光時定数という。一定の強度の励起光を照射する場合、励起光の照射時間が短いほど蛍光の強度は弱くなり、励起光の照射時間が長いほど蛍光の強度は強くなる。
【0020】
光源11としては、レーザー及び発光ダイオード(LED)が使用可能であるが、特に限定されない。励起光の強度は、例えば、一定である。励起光の波長は、対象物1に含まれる蛍光物質に応じて適宜設定される。励起光は、例えば、紫外線であるが、特に限定されない。例えば、対象物がポリエチレンテレフタレートのフィルムである場合、励起光の波長は340nmから405nmである。分光光度計を用いて、対象物から最も強い蛍光を発生させる励起光の波長を決定してもよい。
【0021】
速度測定装置は、図1に示すように、励起光を反射し、蛍光を透過させるダイクロイックミラー13を備えていてもよい。ダイクロイックミラー13は、例えば、励起光が対象物1に垂直に入射するように設定されるが、これに限定されない。
【0022】
対象物1の少なくとも励起光で照射される部分は平面である。対象物1は、例えば、平行に移動する。対象物1に照射される励起光は所定のビーム幅を有する。励起光の照射面において、励起光の強度分布は一定である。対象物1が速く移動している場合、対象物1におけるある一点が励起光のビームを横切る時間は短い。そのため、対象物1で生じる蛍光の強度は弱い。対象物1が遅く移動している場合、対象物1におけるある一点が励起光のビームを横切る時間は長い。そのため、対象物1で生じる蛍光の強度は強い。よって、対象物1の速度と、対象物1で生じる蛍光の強度は、図3に示すように、概ね負比例の関係にある。
【0023】
図1に示す蛍光検出器12としては、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、及びフォトダイオード等の受光素子が使用可能である。また、蛍光検出器12として、CMOSセンサー等の複数の受光素子が配列されたラインイメージセンサーを用いてもよい。
【0024】
関係保存装置21は、例えば、中央演算処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ、プログラムメモリ、及び不揮発性メモリ等を備える主制御部31に接続されている。プログラムメモリ及び不揮発性メモリは、CPUが実行する種々のプログラム及び制御データなどを記憶する。CPUは、プログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、様々な演算処理を行う。ランダムアクセスメモリは、CPUにより行われる演算の結果を一時的に記憶する。
【0025】
関係保存装置21は、図3に例示したような、対象物1の速度と、対象物1で生じる蛍光の強度と、の関係を保存する。蛍光の強度は、積算強度であってもよい。図1に示す関係保存装置21は、複数の関係を保存してもよい。関係保存装置21は、複数の関係をライブラリーとして保存してもよい。例えば、関係保存装置21は、対象物1の材料ごとに、関係を保存してもよい。また、関係保存装置21は、対象物1の形状ごとに、関係を保存してもよい。あるいは、関係保存装置21は、対象物1の厚みごとに、関係を保存してもよい。関係保存装置21は、励起光の強度ごとに、関係を保存してもよい。関係は関数で表されてもよい。あるいは、関数は、テーブルで表されてもよい。
【0026】
速度算出部22は、蛍光検出器12から蛍光の強度を受信する。また、速度算出部22は、関係保存装置21から、対象物1の速度と、対象物1で生じる蛍光の強度と、の関係を読み出す。例えば、関係が、対象物1で生じる蛍光の強度を独立変数とし、対象物1の速度を従属変数とする関数として与えられている場合、速度算出部22は、関数の独立変数に蛍光検出器12から蛍光の強度の値を与えて、対象物1の速度を算出する。速度算出部22は、主制御部31の制御により、対象物1の速度を算出する。ただし、主制御部31が、プログラム等により、速度算出部22の機能を実現してもよい。
【0027】
主制御部31には、オペレーターが指示を入力するための入力部32が接続されていてもよい。入力部32の例としては、キーボード及びマウスが挙げられる。また、主制御部31には、速度算出部22が算出した対象物1の速度を出力する出力部33が接続されていてもよい。出力部33の例としては、ネットワークへの出力ポート、ディスプレイ、及びプリンターが挙げられる。
【0028】
実施形態に係る速度測定装置は、対象物1の速度を、非接触で容易に測定可能である。
【0029】
実施形態に係る速度測定装置が速度を測定する対象物は特に限定されないが、対象物がフィルムである例を図4を参照して説明する。第1のフィルム101と第2のフィルム102が、貼り合わせローラー201、202で貼り合わされ、積層フィルム103が形成される。積層フィルム103は、ローラー203、204で進行方向を制御されながら、巻き取り機で巻き取られる。実施形態に係る速度測定装置の光源11から積層フィルム103に励起光を照射し、積層フィルム103で生じた蛍光の強度を検出することにより、積層フィルム103の移動速度を測定することが可能である。
【0030】
フィルムは、例えば、樹脂からなる。例えば、ポリイミドフィルムは、機械強度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れているため、電子基板材料用途で多く利用されている。例えば、ポリイミドフィルムを基板材料とし、少なくとも片面に銅箔を積層したフレキシブル銅張積層板や、さらに回路を作成したフレキシブルプリント基板などが製造され、各種電子機器に使用されている。延伸ポリプロピレンフィルムは、加工性、水蒸気バリア性、透明性、機械的強度および剛性等の性能バランスに優れており、食品を包装するための包装フィルムとして用いられている。実施形態に係る速度測定装置によれば、これらフィルムの製造工程を管理することが可能である。
【0031】
図5に示すように、実施形態に係る速度測定装置が速度を測定する対象物は、透明なパイプ111内を流れる液体110であってもよい。実施形態に係る速度測定装置の光源11から透明なパイプ111内を流れる液体110に励起光を照射し、液体110で生じた蛍光の強度を検出することにより、液体110の流速を測定することが可能である。液体110は、蛍光物質を含んでいれば、透明であってもよい。
【0032】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0033】
例えば、図1に示す光源11が発する励起光の強度を、対象物1の予測される速度に応じて変化させてもよい。例えば、対象物1の予測される速度が速い場合、励起光の強度を強めるよう、光源11が制御されてもよい。また、対象物1の予測される速度が遅い場合、励起光の強度を弱めるよう、光源11が制御されてもよい。なお、蛍光を検出する際には、励起光の強度は一定であることが好ましい。
【0034】
光源11は、励起光を断続的に発してもよい。光源11が励起光を発する周期を、対象物1の予測される速度に応じて変化させてもよい。例えば、対象物1の予測される速度が速い場合、励起光を発する間隔を短くするよう、光源11が制御されてもよい。また、対象物1の予測される速度が遅い場合、励起光を発する間隔が長くなるよう、光源11が制御されてもよい。
【0035】
あるいは、図6に示すように、実施形態に係る速度測定装置は、励起光を照射された対象物1で生じた反射光を検出する反射光検出器14をさらに備えていてもよい。ここで、反射光とは、散乱光も含む。速度測定装置は、対象物1で生じた反射光を反射光検出器14に導くためのミラー15をさらに備えていてもよい。
【0036】
この場合、関係保存装置21に保存される関係は、対象物1の速度と、対象物1で生じる蛍光の強度及び対象物1で生じる反射光の強度の比と、の関係である。対象物1で生じる蛍光の強度及び対象物1で生じる反射光の強度の比は、例えば、対象物1で生じる蛍光の強度を対象物1で生じる反射光の強度で除した値である。蛍光の強度が蛍光の積算強度であり、反射光の強度が反射光の積算強度であってもよい。
【0037】
速度算出部22は、検出された蛍光の強度及び検出された反射光の強度の比と、関係と、に基づき、対象物の速度を算出する。励起光の強度は一定であることが好ましいが、変動し得る。対象物1で生じる蛍光の強度を対象物1で生じる反射光の強度で除することにより、励起光の強度の変動による影響を抑制することが可能である。
【0038】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・対象物、11・・・光源、12・・・蛍光検出器、13・・・ダイクロイックミラー、14・・・反射光検出器、15・・・ミラー、21・・・関係保存装置、22・・・速度算出部、31・・・主制御部、32・・・入力部、33・・・出力部、101、102・・・フィルム、103・・・積層フィルム、110・・・液体、111・・・パイプ、201、202、203、204・・・ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6