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特開2023-78590吸収器ユニット、熱交換ユニット、及び吸収式冷凍機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078590
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】吸収器ユニット、熱交換ユニット、及び吸収式冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20230531BHJP
   F25B 37/00 20060101ALI20230531BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
F25B15/00 303J
F25B37/00
F25B39/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191785
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 洪志
(72)【発明者】
【氏名】河野 文紀
(72)【発明者】
【氏名】下田平 修和
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093AA01
3L093BB11
3L093BB12
3L093BB13
3L093BB29
3L093BB31
3L093MM02
(57)【要約】
【課題】液相冷媒に吸収液が混入して冷凍能力が低下することを防止する観点から有利な吸収器ユニットを提供する。
【解決手段】吸収器ユニット1aは、第一伝熱管群12aと、第一滴下器13aと、第二伝熱管群12bと、第二滴下器13bと、仕切り14と、供給路15とを備える。第二滴下器13bは、第一滴下器13aから滴下され第一伝熱管群12aを流下した吸収液を第二伝熱管群12bに向かって滴下する。供給路15は、仕切り14に形成され、第一伝熱管群12aを流下した吸収液を第二滴下器13bへ導く。供給路15は、入口15aと、重力方向において入口15aよりも下方に配置された出口15bとを有する。供給路15は、入口15aから重力に従って吸収液が導かれる上流部15cと、上流部15cを通過した吸収液が重力に逆らって出口15bに向かって導かれる下流部15dとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一伝熱管群と、
前記第一伝熱管群に向かって吸収液を滴下する第一滴下器と、
重力方向において前記第一伝熱管群の下方に配置された第二伝熱管群と、
前記第一滴下器から滴下され前記第一伝熱管群を流下した前記吸収液を前記第二伝熱管群に向かって滴下する第二滴下器と、
前記第一伝熱管群が配置された第一空間と前記第二伝熱管群が配置された第二空間とを仕切る仕切りと、
前記仕切りに形成され、前記第一伝熱管群を流下した前記吸収液を前記第二滴下器へ導く供給路と、を備え、
前記供給路は、前記第一空間に接する入口と、前記重力方向において前記入口よりも下方に配置され、前記第二空間に接する出口と、前記入口から重力に従って前記吸収液が導かれる上流部と、前記上流部を通過した前記吸収液が重力に逆らって前記出口に向かって導かれる下流部とを有する、
吸収器ユニット。
【請求項2】
前記下流部は、前記重力方向において前記出口の下方に形成されている、請求項1に記載の吸収器ユニット。
【請求項3】
前記第二空間は、気相冷媒の流路に接する側部を有し、
前記出口は、前記重力方向に垂直な方向において前記入口よりも前記側部に近い位置に形成されている、
請求項1又は2に記載の吸収器ユニット。
【請求項4】
前記重力方向において前記第一伝熱管群と前記入口との間に配置され、前記入口を覆うカバーをさらに備えた、請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収器ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収器ユニットと、
第一蒸発器と、
前記第一蒸発器における圧力よりも高い圧力で気相冷媒を生成する第二蒸発器と、を備え、
前記第一伝熱管群に向かって滴下された前記吸収液は、前記第一蒸発器で生成された気相冷媒を吸収し、
前記第二伝熱管群に向かって滴下された前記吸収液は、前記第二蒸発器で生成された気相冷媒を吸収する、
熱交換ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の熱交換ユニットを備えた、吸収式冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収器ユニット、熱交換ユニット、及び吸収式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多段蒸発吸収型の吸収冷温水機が記載されている。この吸収冷温水機は、隔壁により上下方向に多段に形成された蒸発器及び吸収器を備えている。この隔壁には、冷媒を収容する冷媒再分配器と、溶液を収容する溶液再分配器とが形成されている。冷媒再分配器の底部には、下部の蒸発器に冷媒を導く多数の滴下孔が形成されている。加えて、溶液再分配器の底部には、下部の吸収器に溶液を導く多数の滴下孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-179975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の段階で吸収液に気相冷媒を吸収させることができ、液相冷媒に吸収液が混入して冷凍能力が低下することを防止する観点から有利な吸収器ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における吸収器ユニットは、
第一伝熱管群と、
前記第一伝熱管群に向かって吸収液を滴下する第一滴下器と、
重力方向において前記第一伝熱管群の下方に配置された第二伝熱管群と、
前記第一滴下器から滴下され前記第一伝熱管群を流下した前記吸収液を前記第二伝熱管群に向かって滴下する第二滴下器と、
前記第一伝熱管群が配置された第一空間と前記第二伝熱管群が配置された第二空間とを仕切る仕切りと、
前記仕切りに形成され、前記第一伝熱管群を流下した前記吸収液を前記第二滴下器へ導く供給路と、を備え、
前記供給路は、前記第一空間に接する入口と、前記重力方向において前記入口よりも下方に配置され、前記第二空間に接する出口と、前記入口から重力に従って前記吸収液が導かれる上流部と、前記上流部を通過した前記吸収液が重力に逆らって前記出口に向かって導かれる下流部とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における吸収器ユニットによれば、吸収液は、重力に従って供給路の入口から上流部に導かれて上流部を通過し、下流部において重力に逆らって供給路の出口に向かって導かれる。このため、吸収液は、供給路において液封を形成しやすい。このため、第二空間に存在する気相冷媒は、第一空間へ導かれにくく、第一空間に存在する吸収液のミストが吸収器ユニットの外部に飛散しにくい。その結果、液相冷媒に吸収液が混入して冷凍能力が低下することが防止されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1における熱交換ユニットを示す図
図2】実施の形態1における供給路及び第二滴下器を示す図
図3】実施の形態1における供給路を示す図
図4】実施の形態2における吸収器ユニットを示す図
図5】実施の形態3における吸収器ユニットを示す図
図6】実施の形態4における吸収器ユニットを示す図
図7】実施の形態5における吸収式冷凍機を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、蒸発器及び吸収器のそれぞれが多段に設けられた多段蒸発吸収型の吸収式冷凍機において、高濃度の吸収液と低濃度の吸収液との間の濃度差が大きいと成績係数(COP)が改善することが知られていた。高濃度の吸収液と低濃度の吸収液との間の濃度差が大きいと吸収液の循環量を低減でき、吸収器における温度効率が向上する。その結果、COPが改善しうる。
【0009】
当該業界では、液相冷媒の供給器における液相冷媒のヘッド及び吸収液の供給器における吸収液のヘッドを利用して液封を形成し、高圧段と低圧段との間の圧力差を保つことが一般的であった。そのような状況下において、発明者らは、高濃度の吸収液と低濃度の吸収液との濃度差の拡大に伴う能力の増加分を利用して伝熱面積を低減させ、吸収器を小型化するという着想を得た。発明者らは、その着想を実現するために、吸収液の供給器において必要な吸収液のヘッドは、高圧段と低圧段との間の圧力差を保つための吸収液のヘッドと、供給器から吸収液を滴下するための吸収液のヘッドとによって決まることに着目した。一方、吸収液の供給器における吸収液の液面は、吸収液の流下によって乱れうる。
【0010】
定格運転において、高圧段と低圧段との間の圧力差は大きく、吸収液の流量も大きい。このため、吸収液の供給器における吸収液のヘッドが高い。これにより、吸収液の供給器における吸収液の液面が乱れても、吸収液の供給器において吸収液を滴下するための孔が液封される。その結果、高圧段から低圧段へ高圧の気相冷媒が吹き抜けにくい。しかし、低負荷運転において、高圧段と低圧段との間の圧力差は小さく、吸収液の流量も小さい。このため、吸収液の供給器における吸収液のヘッドが低下する。これにより、吸収液の供給器における吸収液の液面の乱れによって吸収液が局所的に不足して液封を形成できず、高圧段から低圧段へ高圧の気相冷媒が吹き抜け、低圧段に存在する吸収液のミストが低圧の蒸発器に向かって飛散しうる。飛散した吸収液が液相冷媒に混入することにより、冷媒の蒸気圧の低下及び低濃度の吸収液の飽和濃度の上昇が生じ、吸収可能な気相冷媒の量が減少して冷凍能力が低下するという課題が発生しうる。その課題を解決するために、本発明者らは、本開示の主題を構成するに至った。
【0011】
そこで、本開示は、複数の段階で吸収液に気相冷媒を吸収させることができ、液相冷媒に吸収液が混入して冷凍能力が低下することを防止する観点から有利な吸収器ユニットを提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、図1図2、及び図3を用いて、実施の形態1を説明する。添付の図面においてZ軸正方向は重力方向であり、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交している。
【0014】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1における熱交換ユニット5の概要図である。図1において、熱交換ユニット5は、吸収器ユニット1aと、蒸発器ユニット2と、第一蒸気流路31aと、第二蒸気流路31bとを備えている。蒸発器ユニット2は気相冷媒を生成する。吸収器ユニット1aは、蒸発器ユニット2で生成された気相冷媒を吸収する。第一蒸気流路31a及び第二蒸気流路31bは、蒸発器ユニット2で生成された気相冷媒を吸収器ユニット1aへ導く。
【0015】
吸収器ユニット1aは、第一伝熱管群12aと、第一滴下器13aと、第二伝熱管群12bと、第二滴下器13bと、仕切り14とを備えている。第一滴下器13aは、第一伝熱管群12aに向かって吸収液を滴下する。第二伝熱管群12bは、重力方向において第一伝熱管群12aの下方に配置されている。第一伝熱管群12aは、その内部に水等の熱媒体の流路を有する。第二伝熱管群12bは、その内部に水等の熱媒体の流路を有する。第一伝熱管群12a及び第二伝熱管群12bのそれぞれは、例えば、複数段及び複数列に配列された複数の伝熱管を含む。第二滴下器13bは、第一滴下器13aから滴下され第一伝熱管群12aを流下した吸収液を第二伝熱管群12bに向かって滴下する。仕切り14は、第一伝熱管群12aが配置された第一空間16aと第二伝熱管群12bが配置された第二空間16bとを仕切っている。本明細書においては、「空間」とは、物質の存在しない真空領域の意味ではなく、物質が存在し現象がおこる場所を意味する。吸収器ユニット1aは、重力方向において、仕切り14の上方に第一伝熱管群12a及び第一滴下器13aを備えた第一吸収器10aを有し、仕切り14の下方に第二伝熱管群12b及び第二滴下器13bを備えた第二吸収器10bを有する。
【0016】
例えば、吸収器ユニット1aにおいて、吸収液は、第一吸収器10aに供給され、第一伝熱管群12aを流下する。その後、吸収液は、第二吸収器10bに供給され、第二伝熱管群12bを流下し、吸収器ユニット1aの外部に排出される。
【0017】
吸収器ユニット1aにおける第一吸収器10a及び第二吸収器10bのそれぞれは、シェルアンドチューブ熱交換器である。吸収液を供給する方式としては、例えば、散布式が採用されうる。
【0018】
第一滴下器13aは、第一伝熱管群12aに向かって吸収液を滴下する。第一滴下器13aは、例えば、吸収液を貯留するトレイを備え、そのトレイに貯留された吸収液を第一伝熱管群12aに向かって滴下する。
【0019】
図2は、吸収器ユニット1aにおける供給路15及び第二滴下器13bの概要図である。図2に示す通り、第二滴下器13bは、例えば、吸収液を貯留するトレイ13tを備え、そのトレイ13tに貯留された吸収液を第二伝熱管群12bに向かって滴下する。トレイ13tの底部には、孔13hが形成されている。トレイ13tに貯留された吸収液は、孔13hを通過して第二伝熱管群12bに向かって滴下される。
【0020】
第一滴下器13a及び第二滴下器13bのそれぞれは、例えば、プレス加工されたステンレス板を溶接することによって作製される。
【0021】
図1に示す通り、仕切り14には、供給路15が形成されている。供給路15は、第一伝熱管群12aを流下した吸収液を第二滴下器13bへ導く。図3は、仕切り14において供給路15をなす部位の斜視図である。
【0022】
図2及び図3に示す通り、供給路15は、入口15aと、出口15bと、上流部15cと、下流部15dとを有する。入口15aは、第一空間16aに接している。出口15bは、重力方向において入口15aよりも下方に配置されている。出口15bは、第二空間16bに接している。図2において矢印cで示す通り、吸収液は、上流部15cにおいて、入口15aから重力に従って導かれる。一方、図2において矢印dで示す通り、上流部15cを通過した吸収液は、下流部15dにおいて重力に逆らって出口15bに向かって導かれる。下流部15dは、例えば、重力方向において出口15bの下方に形成されている。
【0023】
供給路15は、例えば、仕切り14の一部によって囲まれている。これにより、供給路15から吸収液が漏れないように供給路15が構成されている。供給路15は、仕切り14をなす板材のプレス加工によって形成されうる。供給路15は、仕切り14において供給路15をなす部位を仕切り14の他の部位と溶接によって接合することによって、仕切り14と一体的に形成されてもよい。
【0024】
図2に示す通り、供給路15の入口15aは、例えば、重力方向における第一空間16aの最下部に接している。供給路15の出口15bは、例えば、重力方向における第二滴下器13bの上方で第二空間16bに接している。出口15bは、第一空間16aから出口15bを平面視したときに、トレイ13tの一部と重なるように形成されている。
【0025】
図2に示す通り、供給路15は、例えば、重力方向に垂直な方向において上流部15cと下流部15dとの間に形成された隔壁15jに接している。供給路15は、例えば、上流部15cと下流部15dとを連通させる連通部15kを有する。連通部15kは、例えば、隔壁15jの真下に形成されている。連通部15kは、例えば、重力方向において、入口15a及び出口15bの下方に形成されている。供給路15は、U字流路として形成されていてもよい。
【0026】
図1に示す通り、蒸発器ユニット2は、第一蒸発器20aと、第二蒸発器20bとを備えている。第二蒸発器20bは、第一蒸発器20aにおける圧力よりも高い圧力で気相冷媒を生成する。重力方向において、第一蒸発器20aは上段に配置され、第二蒸発器20bは下段に配置されている。第一蒸気流路31aは、第一蒸発器20aで生成された気相冷媒を第一空間16aに導く。第二蒸気流路31bは、第二蒸発器20bで生成された気相冷媒を第二空間16bに導く。第一蒸気流路31a及び第二蒸気流路31bのそれぞれを形成する部材は、断熱性及び耐圧性を有する鉄等の金属を含む材料によって構成されている。
【0027】
蒸発器ユニット2は、仕切り24を備えており、仕切り24によって、第一蒸発器20aと第二蒸発器20bとが仕切られている。第一蒸発器20aは、第三伝熱管群22aと、第一供給器23aとを備えている。第二蒸発器20bは、第四伝熱管群22bと、第二供給器23bとを備えている。第三伝熱管群22a及び第四伝熱管群22bのそれぞれは、例えば、複数段及び複数列に配列された複数の伝熱管を含む。
【0028】
第一伝熱管群12a、第二伝熱管群12b、第三伝熱管群22a、及び第四伝熱管群22bのそれぞれにおいて、複数の伝熱管は、例えば、互いに平行に配置されており、重力方向に複数段をなしている。第一伝熱管群12a、第二伝熱管群12b、第三伝熱管群22a、及び第四伝熱管群22bのそれぞれにおいて、複数の伝熱管は、例えば、伝熱管の長手方向(X軸方向)に垂直な平面(ZY平面)において正方格子をなすように配置されている。複数の伝熱管は、その平面において長方形格子、又は平行四辺形格子をなすように配置されていてもよい。伝熱管は、例えば、銅又はステンレス製の管である。伝熱管の内面又は外面には溝が形成されていてもよい。複数の伝熱管は、伝熱管の長手方向(X軸方向)に垂直な平面(ZY平面)において正方格子、長方形格子、又は平行四辺形格子を変則的になすように配置されていてもよい。
【0029】
蒸発器ユニット2における第一蒸発器20a及び第二蒸発器20bのそれぞれは、例えば、シェルアンドチューブ熱交換器である。例えば、水等の常温(20℃±15℃)での飽和蒸気圧が負圧である冷媒が用いられる場合、満液式のシェルアンドチューブ熱交換器では、液相冷媒の水位ヘッドが蒸発圧力に及ぼす影響が大きくなりやすい。このため、水等の冷媒が用いられる場合に、第一蒸発器20a及び第二蒸発器20bのそれぞれが噴霧式又は散布式のシェルアンドチューブ熱交換器であることが有利である。
【0030】
第一供給器23a及び第二供給器23bのそれぞれは、例えば、プレス加工されたステンレス板を溶接することによって作製される。
【0031】
熱交換ユニット5の内部には、冷媒及び吸収液が充填されている。冷媒は、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)等のフロン系冷媒又は水及びアンモニア等の自然冷媒である。吸収液は、例えば、臭化リチウム水溶液又はイオン流体である。
【0032】
図1に示す通り、熱交換ユニット5は、例えば、シェル3を備えている。シェル3は、断熱性及び耐圧性を有する容器として構成されている。シェル3の内部には、液相冷媒及び吸収液が貯留されている。シェル3は、シェル3の内部の気相冷媒を大気圧の空気等の外気から隔離する。
【0033】
図1に示す通り、熱交換ユニット5は、吸収液供給路17a、吸収液排出路17b、及び吸収液ポンプ19を備えている。
【0034】
吸収液供給路17aは、吸収器ユニット1aの外部から吸収器ユニット1aの内部に吸収液を導く経路である。吸収液供給路17aは、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。
【0035】
吸収液排出路17bは、吸収器ユニット1aの内部から吸収器ユニット1aの外部に吸収液を導く経路である。吸収液排出路17bは、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。
【0036】
吸収液ポンプ19は、例えば、速度型のキャンドポンプである。吸収液ポンプ19の作動により、吸収器ユニット1aに貯留された吸収液が圧送され、吸収液排出路17bを通って吸収器ユニット1aから排出される。
【0037】
図1に示す通り、熱交換ユニット5は、冷媒供給路26、循環路27、及び冷媒ポンプ28を備えている。
【0038】
冷媒供給路26は、蒸発器ユニット2の外部から蒸発器ユニット2の内部に液相冷媒を導く経路である。冷媒供給路26は、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。
【0039】
循環路27は、第二蒸発器20bに貯留された液相冷媒を循環させるための経路である。循環路27は、例えば、第二蒸発器20bに貯留された液相冷媒を第一蒸発器20aの第一供給器23aに導く。循環路27は、断熱性及び耐圧性を有する配管によって構成されている。
【0040】
冷媒ポンプ28は、例えば、速度型のキャンドポンプである。冷媒ポンプ28の作動により、第二蒸発器20bに貯留された液相冷媒が圧送され、循環路27を通って循環される。
【0041】
図1に示す通り、熱交換ユニット5は、第一エリミネータ32a及び第二エリミネータ32bを備えている。第一エリミネータ32a及び第二エリミネータ32bは、蒸発器ユニット2における液相冷媒の液滴が気相冷媒の流れに引きずられて吸収器ユニット1aに運ばれることを抑制する気液分離機構である。第一エリミネータ32a及び第二エリミネータ32bのそれぞれは、例えば、プレス加工されたステンレス板を溶接することによって作製されている。第一エリミネータ32aは、例えば、第一蒸気流路31aに配置されている。第二エリミネータ32bは、例えば、第二蒸気流路31bに配置されている。
【0042】
[1-2.動作]
以上のように構成された熱交換ユニット5について、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
図1及び図2に基づいて、熱交換ユニット5の動作を説明する。熱交換ユニット5が夜間等の所定の期間に放置された場合、熱交換ユニット5の内部の温度は、ほぼ室温に等しく均一である。加えて、熱交換ユニット5の内部の圧力も均一になっている。例えば、室温が25℃である場合、熱交換ユニット5の内部の温度もほぼ25℃で均一である。
【0044】
熱交換ユニット5の使用時に、第三伝熱管群22a及び第四伝熱管群22bの伝熱管の内部には、熱交換ユニット5の外部から熱を吸熱した水等の熱媒体が流れている。この熱媒体は、例えば、第四伝熱管群22bに12℃で流入する。第四伝熱管群22bを通過した熱媒体は、第三伝熱管群22aに導かれる。第一伝熱管群12a及び第二伝熱管群12bの伝熱管の内部には、熱交換ユニット5の外部に熱を放熱した水等の熱媒体が流れている。この熱媒体は、例えば、第二伝熱管群12bに32℃で流入する。第二伝熱管群12bを通過した熱媒体は、第一伝熱管群12aに導かれる。
【0045】
熱交換ユニット5の運転開始時に、吸収液が吸収液供給路17aを通って吸収器ユニット1aに供給される。供給される吸収液の温度は50℃程度であり、供給される吸収液の溶質の濃度は63質量%程度である。吸収器ユニット1aに供給された吸収液は、第一滴下器13aに貯留され、第一伝熱管群12aに向かって滴下される。第一伝熱管群12aにおける伝熱管の外面の周りを滴下された吸収液が流下することによって、第一蒸発器20aで発生した気相冷媒を吸収する。これにより、吸収液の溶質の濃度が低くなり、仕切り14に接する第一空間16aの底部に貯留される。同時に、第二蒸発器20bに貯留された液相冷媒は、冷媒ポンプ28によって圧送され、循環路27を通って第一供給器23aに供給される。第一供給器23aに供給された液相冷媒は、第三伝熱管群22aに向かって供給される。液相冷媒は、第三伝熱管群22aの伝熱管の周りで液膜を形成し流下する。液相冷媒は、液相冷媒の流下に伴い、第三伝熱管群22aの伝熱管を流れる熱媒体から熱を奪って蒸発する。蒸発しきれなかった液相冷媒は、第二供給器23bに貯留される。
【0046】
吸収液が第一伝熱管群12aの伝熱管の外面の周りを流下するとき、第一蒸発器20aにおける気相冷媒が吸収液に吸収される。気相冷媒が吸収されることにより、吸収液の温度は上昇する。しかし、同時に第一伝熱管群12aの伝熱管の内部を流れる熱媒体により冷却されるので、連続的に過冷却吸収が起こる。これにより、熱交換ユニット5において、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段における圧力が低下する。これにより、第三伝熱管群22aの伝熱管の外面の周りを流下する液相冷媒が蒸発する。液相冷媒が蒸発することによって液相冷媒の温度が低下する。しかし、同時に第三伝熱管群22aの伝熱管の内部を流れる熱媒体によって液相冷媒が加熱されるので、連続的に液相冷媒の蒸発が起こる。
【0047】
次に、第一伝熱管群12aを流下した吸収液は、入口15aから供給路15へ流入し、上流部15cにおいて入口15aから重力に従って吸収液が導かれる。上流部15cを通過した吸収液は、下流部15dにおいて重力に逆らって出口15bに向かって導かれる。これにより、図2に示す通り、供給路15において吸収液によって液封が形成されうる。吸収液は、下流部15d及び出口15bを通過して第二滴下器13bに供給され、貯留される。
【0048】
第二滴下器13bに貯留された吸収液の温度は44℃程度であり、その吸収液の溶質の濃度は59質量%程度である。第二滴下器13bに貯留された吸収液は、第二伝熱管群12bに向かって滴下される。滴下された吸収液は、第二伝熱管群12bの伝熱管の外面の周りを流下する期間に第二蒸発器20bで発生した気相冷媒を吸収する。これにより、吸収液の溶質の濃度が低下し、第二空間16bの下部に吸収液が貯留される。第二空間16bの下部に貯留された吸収液は、吸収液ポンプ19によって圧送され、吸収液排出路17bを通って吸収器ユニット1aから排出される。排出される吸収液の温度は37℃程度であり、その吸収液の溶質の濃度は55質量%程度である。同時に第二供給器23bに貯留された液相冷媒は、第四伝熱管群22bに向かって供給される。これにより、液相冷媒は、第四伝熱管群22bの伝熱管の周りで液膜を形成して流下する。第四伝熱管群22bの伝熱管の周りを液相冷媒が流下する期間に、液相冷媒は、伝熱管の内部を流れる熱媒体から熱を奪って蒸発する。蒸発しきれなかった液相冷媒は、シェル3の内部において第四伝熱管群22bの下方に貯留される。
【0049】
第二伝熱管群12bの伝熱管の外面の周りを吸収液が流下するとき、第二蒸発器20bにおける気相蒸気が吸収液に吸収される。気相冷媒が吸収されることにより、吸収液の温度が上昇する。しかし、同時に第二伝熱管群12bの伝熱管の内部を流れる熱媒体によって吸収液が冷却されるので、連続的に過冷却吸収が起こり、第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段における圧力が低下する。これに伴い、第四伝熱管群22bの伝熱管の外面の周りを流下する液相冷媒が蒸発する。液相冷媒の蒸発により、液相冷媒の温度が低下する。しかし、同時に第二伝熱管群12bの伝熱管の内部を流れる熱媒体によって液相冷媒が加熱されるので、連続的に液相冷媒の蒸発が起こる。
【0050】
このようにして、熱交換ユニット5の高圧段及び低圧段のそれぞれの圧力が所定の圧力に保たれ、熱交換ユニット5が定常状態になる。
【0051】
熱交換ユニット5の定格運転の定常状態において、第四伝熱管群22bの伝熱管の内部を流れる熱媒体は12℃から9.75℃程度まで冷却される。加えて、第三伝熱管群22aの伝熱管の内部を流れる熱媒体は9.75℃から7℃程度まで冷却される。これに伴い、第二蒸発器20bに貯留される液相冷媒の温度は7.6℃程度であり、第二蒸発器20bの内部の気相冷媒の圧力は7.6℃程度の液相冷媒の飽和蒸気圧である1044Pa程度である。第一蒸発器20aに貯留される液相冷媒の温度は6.1℃程度であり、第一蒸発器20aの内部の気相冷媒の圧力は6.1℃程度の液相冷媒の飽和蒸気圧である942Pa程度である。このため、第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段と、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段との間の圧力差は、約100Pa程度である。
【0052】
定格運転の定常状態において、第二伝熱管群12bの伝熱管の内部を流れる熱媒体は、32℃から34.25℃程度まで加熱され、第一伝熱管群12aの伝熱管の内部を流れる熱媒体は、34.25℃程度から36.5℃程度まで加熱される。第一滴下器13aに貯留され、第一伝熱管群12aに向かって滴下される吸収液の温度は50℃であり、その吸収液の密度は1750kg/m3程度である。供給路15を通って第二滴下器13bに向かって供給される吸収液の温度は44℃であり、その吸収液の密度は1680kg/m3程度である。第二空間16bの下部に貯留される吸収液の温度は37℃であり、その吸収液の密度は1610kg/m3程度である。
【0053】
一方、25%負荷運転等の低負荷運転の定常状態において、第四伝熱管群22bの伝熱管の内部を流れる熱媒体は、8.4℃から7.7℃程度まで冷却される。加えて、第三伝熱管群22aの伝熱管の内部を流れる熱媒体は、7.7℃程度から7℃程度まで冷却される。これに伴い、第二蒸発器20bの内部に貯留される液相冷媒の温度は6.4℃程度であり、第二蒸発器20bの内部の気相冷媒の圧力は6.4℃程度の液相冷媒の飽和蒸気圧である963Pa程度である。第一蒸発器20aの内部に貯留される液相冷媒の温度は6.1℃程度であり、第一蒸発器20aの内部の気相冷媒の圧力は6.1℃程度の液相冷媒の飽和蒸気圧である942Pa程度である。このため、第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段と、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段との間の圧力差は約21Pa程度である。
【0054】
例えば、25%負荷運転の定常状態において、第二伝熱管群12bの伝熱管の内部を流れる熱媒体は、18℃から18.6℃程度まで加熱される。加えて、第一伝熱管群12aの伝熱管の内部を流れる熱媒体は、18.6℃から19.1℃程度まで加熱される。第一滴下器13aに貯留され、第一伝熱管群12aに向かって滴下される吸収液の温度は28℃程度であり、その吸収液の密度は1500kg/m3程度である。供給路15を通って第二滴下器13bに向かって供給される吸収液の温度は21℃であり、その吸収液の密度は1460kg/m3程度である。第二空間16bの下部に貯留される吸収液の温度は18℃であり、その吸収液の密度は1420kg/m3程度である。
【0055】
図2において、定格運転の定常状態における供給路15において、高圧段と低圧段との間の圧力差を保つための吸収液のヘッドh1は6mm程度であり、吸収液を流すためのヘッドh2は11.6mm程度である。図2に示す通り、上流部15cにおいて、例えば、吸収液の液面は2mmの高さtbで乱れうる。第二滴下器13bの孔13hを通過する吸収液の速度は0.4m/秒程度である。第二滴下器13bの内部の吸収液のヘッドh3は7.6mm程度である。
【0056】
例えば25%負荷運転の定常状態における供給路15において、高圧段と低圧段との間の圧力差を保つための吸収液のヘッドh1は1.5mm程度であり、吸収液を流すためのヘッドh2は2.3mm程度である。上流部15cにおいて、例えば、吸収液の液面は2mmの高さtbで乱れうる。第二滴下器13bの孔13hを通過する吸収液の速度は0.1m/秒程度である。第二滴下器13bの内部の吸収液のヘッドh3は0.5mm程度である。
【0057】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施形態において、吸収器ユニット1aは、第一伝熱管群12aと、第一滴下器13aと、第二伝熱管群12bと、第二滴下器13bと、仕切り14と、供給路15とを備えている。第一滴下器13aは、第一伝熱管群12aに向かって吸収液を滴下する。第二伝熱管群12bは、重力方向において第一伝熱管群12aの下方に配置されている。第二滴下器13bは、第一滴下器13aから滴下され第一伝熱管群12aを流下した吸収液を第二伝熱管群12bに向かって滴下する。仕切り14は、第一伝熱管群12aが配置された第一空間16aと第二伝熱管群12bが配置された第二空間16bとを仕切る。供給路15は、仕切り14に形成され、第一伝熱管群12aを流下した吸収液を第二滴下器13bへ導く。供給路15は、第一空間16aに接する入口15aと、重力方向において入口15aよりも下方に配置され、第二空間16bに接する出口15bとを有する。供給路15は、入口15aから重力に従って吸収液が導かれる上流部15cと、上流部15cを通過した吸収液が重力に逆らって出口15bに向かって導かれる下流部15dとを有する。
【0058】
これにより、第一伝熱管群12aを流下した吸収液によって供給路15における吸収液の液面が乱れても、供給路15において吸収液によって液封が形成される。これにより、第二空間16bに存在する気相冷媒が第二空間16bから第一空間16aに吹き抜けにくく、第一空間16aに存在する吸収液のミストが第一蒸発器10aの内部に飛散しにくい。このため、液相冷媒への吸収液の混入に起因する冷凍能力の低下が防止されやすい。
【0059】
本実施の形態のように、下流部15dは、重力方向において出口15bの下方に形成されていてもよい。これにより、供給路15が簡素になりやすい。下流部15dは、重力方向において出口15bの上方に形成されていてもよい。
【0060】
本実施の形態のように、熱交換ユニット5は、吸収器ユニット1aと、第一蒸発器20aと、第二蒸発器20bとを備えていてもよい。第二蒸発器20bは、第一蒸発器20aにおける圧力よりも高い圧力で気相冷媒を生成する。第一伝熱管群12aに向かって滴下された吸収液は、第一蒸発器20aで生成された気相冷媒を吸収する。第二伝熱管群12bに向かって滴下された吸収液は、第二蒸発器20bで生成された気相冷媒を吸収する。これにより、熱交換ユニット5を備えた冷凍機が高いCOPが発揮しやすい。
【0061】
(実施の形態2)
以下、図4を用いて、実施の形態2を説明する。
【0062】
[2-1.構成]
図4は、実施の形態2における吸収器ユニット1bの概要図である。吸収器ユニット1bは、特に説明する部分を除き吸収器ユニット1aと同様に構成されている。吸収器ユニット1aの構成要素と同一又は対応する吸収器ユニット1bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。吸収器ユニット1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、吸収器ユニット1bにもあてはまる。
【0063】
図4に示す通り、第二空間16bは、気相冷媒の流路に接する側部16sを有する。例えば、側部16sは、第二蒸気流路31bに接している。吸収器ユニット1bにおいて、供給路15の出口15bは、重力方向に垂直な方向において入口15aよりも側部16sに近い位置に形成されている。出口15bは、例えば、重力方向に垂直かつ第二伝熱管群12bの伝熱管の長手方向に垂直な方向において入口15aよりも側部16sに近い位置に形成されている。
【0064】
[2-2.動作]
以上のように構成された吸収器ユニット1bについて、以下その動作、作用を説明する。図4に基づいて、吸収器ユニット1bを備えた熱交換ユニットの動作を説明する。この熱交換ユニットは、吸収器ユニット1aの代わりに吸収器ユニット1bを備える点以外は、熱交換ユニット5と同様に構成されている。
【0065】
吸収器ユニット1bを備えた熱交換ユニットの起動運転において、第一伝熱管群12aに供給される吸収液は、伝熱管の内部を流れる熱媒体に放熱しながら第一蒸発器20aから第一空間16aに導かれた気相冷媒を吸収する。これにより、吸収液の濃度が低下する。同時に、第三伝熱管群22aに供給される液相冷媒は、伝熱管の内部を流れる熱媒体から吸熱により蒸発し、その液相冷媒の温度が低くなる。その結果、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段における圧力が低下する。一方、第一伝熱管群12aを流下した吸収液は、入口15aから供給路15に導かれる。この場合、第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段では液相冷媒の蒸発及び吸収液への気相冷媒の吸収が始まっていないので、高圧段の圧力が高い。例えば、低圧段における圧力が940Pa程度であり、高圧段における圧力が1150Pa程度でありうる。第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段と、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段との間の圧力差は、定格運転でのその圧力差である約100Pa程度より大きい、210Pa程度になりうる。
【0066】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態においては、第二空間16bは、気相冷媒の流路に接する側部16sを有する。加えて、出口15bは、重力方向に垂直な方向において入口15aよりも側部16sに近い位置に形成されている。
【0067】
これにより、例えば、供給路15に液封の形成に十分な量の吸収液が存在しておらず、かつ、高圧段と低圧段との間の差圧が大きい、起動運転等の運転条件において、吸収液のミストが第一蒸発器20aへ飛散しにくい。なぜなら、高圧段に存在する気相冷媒の一部が供給路15を通って第一空間16aに吹き抜けた場合でも、高圧段の気相冷媒は、出口15b及び入口15aを通過し、第一蒸発器20aから離れるように第一空間16aに入りやすいからである。このため、液相冷媒への吸収液の混入に起因する冷凍能力の低下が防止されやすい。
【0068】
(実施の形態3)
以下、図5を用いて、実施の形態3を説明する。
【0069】
[3-1.構成]
図5は、実施の形態3における吸収器ユニット1cの概要図である。吸収器ユニット1cは、特に説明する部分を除き吸収器ユニット1bと同様に構成されている。吸収器ユニット1bの構成要素と同一又は対応する吸収器ユニット1cの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。吸収器ユニット1a及び1bに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、吸収器ユニット1cにもあてはまる。
【0070】
図5に示す通り、吸収器ユニット1cは、カバー18をさらに備えている。カバー18は、重力方向において第一伝熱管群12aと入口15aとの間に配置され、入口15aを覆っている。
【0071】
[3-2.動作]
以上のように構成された吸収器ユニット1cについて、以下その動作、作用を説明する。図5に基づいて、吸収器ユニット1cを備えた熱交換ユニットの動作を説明する。この熱交換ユニットは、吸収器ユニット1aの代わりに吸収器ユニット1cを備える点以外は、熱交換ユニット5と同様に構成される。
【0072】
吸収器ユニット1cを備えた熱交換ユニットは、例えば、外気温が高く、高圧段と低圧段との圧力差がより大きい条件で起動されうる。例えば、外気温が30℃程度であり、高圧段の圧力が940Pa程度であり、低圧段の圧力が1350Pa程度である条件で、吸収器ユニット1cを備えた熱交換ユニットが起動されうる。この場合、第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段と、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段との間の圧力差は、定格運転でのその圧力差約100Pa程度より大きい、410Pa程度になりうる。
【0073】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態においては、吸収器ユニット1cは、カバー18をさらに備えている。カバー18は、重力方向において第一伝熱管群12aと入口15aとの間に配置され、入口15aを覆っている。
【0074】
これにより、外気温が高い条件での起動等の供給路15に液封の形成に十分な量の吸収液が存在していない状態でも吸収液のミストが第一蒸発器20aへ飛散しにくい。なぜなら、高圧段に存在する気相冷媒が供給路15を通って第一空間16aに吹き抜けた場合でも、吸収液のミストがカバー18に付着しやすく、又は、吸収液のミストがカバー18で跳ね返って落下しやすいからである。このため、液相冷媒への吸収液の混入に起因する冷凍能力の低下が防止されやすい。
【0075】
(実施の形態4)
以下、図6を用いて、実施の形態4を説明する。
【0076】
[4-1.構成]
図6は、実施の形態4における吸収器ユニット1dの概要図である。吸収器ユニット1dは、特に説明する部分を除き吸収器ユニット1cと同様に構成されている。吸収器ユニット1cの構成要素と同一又は対応する吸収器ユニット1dの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。吸収器ユニット1a、1b、及び1cに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、吸収器ユニット1dにもあてはまる。
【0077】
図6に示す通り、吸収器ユニット1dにおいて、カバー18は、重力方向において第一伝熱管群12aと入口15aとの間に配置され、入口15aを覆っている。加えて、カバー18は、側壁18sを有する。側壁18sは、重力方向に垂直な方向において、入口15aよりも気相冷媒の流路の近くに配置されている。例えば、側壁18sは、重力方向に垂直であり、かつ、第一伝熱管群12aの伝熱管の長手方向に垂直な方向において、入口15aよりも第一蒸気流路31aの近くに配置されている。
【0078】
[4-2.動作]
以上のように構成された吸収器ユニット1dについて、以下その動作、作用を説明する。図6に基づいて、吸収器ユニット1dを備えた熱交換ユニットの動作を説明する。この熱交換ユニットは、吸収器ユニット1aの代わりに吸収器ユニット1dを備える点以外は、熱交換ユニット5と同様に構成される。
【0079】
吸収器ユニット1dを備えた熱交換ユニットは、例えば、外気温が高く、高圧段と低圧段との圧力差がより大きい条件で起動されうる。例えば、外気温が30℃程度であり、高圧段の圧力が940Pa程度であり、低圧段の圧力が1350Pa程度である条件で、吸収器ユニット1dを備えた熱交換ユニットが起動されうる。この場合、第二蒸発器20b及び第二吸収器10bを含む高圧段と、第一蒸発器20a及び第一吸収器10aを含む低圧段との間の圧力差は、定格運転でのその圧力差約100Pa程度より大きい、410Pa程度になりうる。
【0080】
[4-3.効果等]
以上のように、本実施の形態においては、吸収器ユニット1dは、カバー18をさらに備えている。カバー18は、重力方向において第一伝熱管群12aと入口15aとの間に配置され、入口15aを覆っている。加えて、カバー18は、側壁18sを有する。側壁18sは、重力方向に垂直な方向において、入口15aよりも気相冷媒の流路の近くに配置されている。
【0081】
これにより、外気温が高い条件での起動等の供給路15に液封の形成に十分な量の吸収液が存在していない状態でも吸収液のミストが第一蒸発器20aへ飛散しにくい。なぜなら、高圧段に存在する気相冷媒が供給路15を通って第一空間16aに吹き抜けた場合でも、側壁18sによって吸収液のミストの移動が防止されて第一蒸発器20aに吸収液のミストが導かれにくいからである。このため、液相冷媒への吸収液の混入に起因する冷凍能力の低下が防止されやすい。
【0082】
(実施の形態5)
以下、図7を用いて、実施の形態5を説明する。
【0083】
[5-1.構成]
図7に示す通り、吸収式冷凍機100は、例えば、熱交換ユニット5を備えている。吸収式冷凍機100は、例えば、再生器80及び凝縮器90をさらに備えている。吸収式冷凍機100は、例えば、一重効用サイクルの吸収式冷凍機である。吸収式冷凍機100は、二重効用サイクル又は三重効用サイクルの吸収式冷凍機であってもよい。再生器80の熱源としてガスバーナーを使用したとき、吸収式冷凍機100は、ガス式チラーでありうる。
【0084】
[5-2.動作]
以上のように構成された、吸収式冷凍機100について、以下その動作、作用を説明する。吸収器ユニット1aに貯留された吸収液は、吸収液排出路17bを通過して再生器80に導かれる。再生器80において加熱により吸収液の溶質の濃度が高められる。溶質の濃度が高められた吸収液は、吸収液供給路17aを通って吸収器ユニット1aに導かれる。一方、再生器80における吸収液の加熱により気相冷媒が発生する。この気相冷媒は、凝縮器90に導かれ、凝縮器90において冷却されて凝縮し、液相冷媒が生成される。液相冷媒は、例えば、減圧された後、冷媒供給路26を通って蒸発器ユニット2に導かれる。なお、吸収式冷凍機100において、吸収器ユニットは、吸収器ユニット1b、吸収器ユニット1c、又は吸収器ユニット1dであってもよい。
【0085】
[5-3.効果]
以上のように、本実施の形態においては、吸収式冷凍機100は、熱交換ユニット5を備えている。これにより、吸収式冷凍機100において、液相冷媒への吸収液の混入に起因する冷凍能力の低下が防止されやすい。
【0086】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1、2、3、4、及び5を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。例えば、入口15aは、重力方向に垂直な方向において出口15bよりも側部16sに近い位置に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、ビルのセントラル空調機及びプロセス冷却用のチラー等に適応された吸収式冷凍機に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1a、1b、1c、1d 吸収器ユニット
5 熱交換ユニット
12a 第一伝熱管群
12b 第二伝熱管群
13a 第一滴下器
13b 第二滴下器
14 仕切り
15 供給路
15a 入口
15b 出口
15c 上流部
15d 下流部
16a 第一空間
16b 第二空間
16s 側部
18 カバー
20a 第一蒸発器
20b 第二蒸発器
100 吸収式冷凍機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7