(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078613
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03G 3/30 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
H03G3/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191815
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】井内 直人
【テーマコード(参考)】
5J100
【Fターム(参考)】
5J100JA01
5J100LA12
5J100LA13
5J100QA02
(57)【要約】
【課題】広帯域の入力信号が増幅装置に入力しても、増幅装置の信号出力の信号強度を所定の大きさに制御できるようにする。
【解決手段】入力信号を第1入力信号と第2入力信号とに分割する第1分割回路と、第1入力信号の信号強度を減衰させる可変アッテネータと、減衰信号を増幅して増幅信号として出力する増幅器と、増幅信号を出力信号と被検出信号に分割する第2分割回路と、被検出信号の信号強度に応じて可変アッテネータの減衰量を設定する第1出力調節回路と、第2入力信号の信号周波数を判定する判定回路と、判定回路の判定結果に応じて、第1出力調節回路が設定した減衰量を調節する第2出力調節回路とを備える、増幅装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した入力信号を増幅して出力信号として出力する増幅装置であって、
前記入力信号を第1入力信号と第2入力信号とに分割する第1分割回路と、
前記第1入力信号の信号強度を減衰させて減衰信号として出力する可変アッテネータと、
前記減衰信号を増幅して増幅信号として出力する増幅器と、
前記増幅信号を、前記出力信号と前記増幅信号の信号強度を検出するための被検出信号に分割する第2分割回路と、
前記第2分割回路が分割した前記被検出信号の信号強度を検出する検出回路と、
前記検出回路が検出した前記被検出信号の信号強度に応じて前記可変アッテネータの減衰量を設定する第1出力調節回路と、
前記第2入力信号の信号周波数を判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に応じて、前記第1出力調節回路が設定した前記減衰量を調節する第2出力調節回路と
を備える、増幅装置。
【請求項2】
入力した入力信号を増幅して出力信号として出力する増幅装置であって、
前記入力信号を第1入力信号と第2入力信号とに分割する第1分割回路と、
前記第1入力信号を増幅して増幅信号として出力し、増幅率が可変の増幅器と、
前記増幅信号を、前記出力信号と前記増幅信号の信号強度を検出するための被検出信号に分割する第2分割回路と、
前記第2分割回路が分割した前記被検出信号の信号強度を検出する検出回路と、
前記検出回路が検出した前記被検出信号の信号強度に応じて前記増幅器の前記増幅率を設定する第1出力調節回路と、
前記第2入力信号の信号周波数を判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に応じて、前記第1出力調節回路が設定した前記増幅率を調節する第2出力調節回路と
を備える、増幅装置。
【請求項3】
前記第1出力調節回路は、前記入力信号の信号周波数を基準周波数とした基準入力信号が当該増幅装置に入力した場合に、前記検出回路が検出した前記被検出信号の信号強度が所定の信号強度になるように前記減衰量又は前記増幅率を設定する、請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記第2出力調節回路は、前記判定回路が前記第2入力信号の信号周波数が前記基準周波数よりも低い周波数と判定した場合、前記第1出力調節回路が設定した前記減衰量又は前記増幅率を前記判定回路が判定した信号周波数に対応する値に調節する、請求項3に記載の増幅装置。
【請求項5】
前記第2出力調節回路は、前記判定回路が前記第2入力信号の信号周波数が前記基準周波数よりも高い周波数と判定した場合、前記第1出力調節回路が設定した前記減衰量又は前記増幅率を前記判定回路が判定した信号周波数に対応する値に調節する、請求項3に記載の増幅装置。
【請求項6】
前記基準周波数は、当該増幅装置の増幅帯域内の周波数である、請求項3から5のいずれか一項に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器の信号出力の信号強度を検出し、検出結果に応じて信号出力を所定の大きさの信号強度に制御するAPC(Automatic Power Control)回路を有する増幅装置が知られている(例えば、特許文献1から3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-151310号公報
【特許文献2】特開1996-330872号公報
【特許文献3】特公平06-101656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような増幅装置は、周波数特性が平坦ではない部材等が含まれていることがある。この場合、増幅装置に入力する信号の周波数が広帯域になると、APC回路で信号強度を制御しても、増幅装置全体の周波数特性により信号出力の信号強度が所定の大きさからずれてしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、広帯域の入力信号が増幅装置に入力しても、簡便な構成で増幅装置の信号出力の信号強度を所定の大きさに制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、入力した入力信号を増幅して出力信号として出力する増幅装置であって、前記入力信号を第1入力信号と第2入力信号とに分割する第1分割回路と、前記第1入力信号の信号強度を減衰させて減衰信号として出力する可変アッテネータと、前記減衰信号を増幅して増幅信号として出力する増幅器と、前記増幅信号を、前記出力信号と前記増幅信号の信号強度を検出するための被検出信号に分割する第2分割回路と、前記第2分割回路が分割した前記被検出信号の信号強度を検出する検出回路と、前記検出回路が検出した前記被検出信号の信号強度に応じて前記可変アッテネータの減衰量を設定する第1出力調節回路と、前記第2入力信号の信号周波数を判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に応じて、前記第1出力調節回路が設定した前記減衰量を調節する第2出力調節回路とを備える、増幅装置を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様においては、入力した入力信号を増幅して出力信号として出力する増幅装置であって、前記入力信号を第1入力信号と第2入力信号とに分割する第1分割回路と、前記第1入力信号を増幅して増幅信号として出力し、増幅率が可変の増幅器と、前記増幅信号を、前記出力信号と前記増幅信号の信号強度を検出するための被検出信号に分割する第2分割回路と、前記第2分割回路が分割した前記被検出信号の信号強度を検出する検出回路と、前記検出回路が検出した前記被検出信号の信号強度に応じて前記増幅器の前記増幅率を設定する第1出力調節回路と、前記第2入力信号の信号周波数を判定する判定回路と、前記判定回路の判定結果に応じて、前記第1出力調節回路が設定した前記増幅率を調節する第2出力調節回路とを備える、増幅装置を提供する。
【0008】
前記第1出力調節回路は、前記入力信号の信号周波数を基準周波数とした基準入力信号が当該増幅装置に入力した場合に、前記検出回路が検出した前記被検出信号の信号強度が所定の信号強度になるように前記減衰量又は前記増幅率を設定してもよい。
【0009】
前記第2出力調節回路は、前記判定回路が前記第2入力信号の信号周波数が前記基準周波数よりも低い周波数と判定した場合、前記第1出力調節回路が設定した前記減衰量又は前記増幅率を前記判定回路が判定した信号周波数に対応する値に調節してもよい。
【0010】
前記第2出力調節回路は、前記判定回路が前記第2入力信号の信号周波数が前記基準周波数よりも高い周波数と判定した場合、前記第1出力調節回路が設定した前記減衰量又は前記増幅率を前記判定回路が判定した信号周波数に対応する値に調節してもよい。
【0011】
前記基準周波数は、当該増幅装置の増幅帯域内の周波数であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広帯域の入力信号が増幅装置に入力しても、簡便な構成で増幅装置の信号出力の信号強度を所定の大きさに制御できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】従来の増幅装置100が出力する出力信号の一例を示す。
【
図3】本実施形態に係る増幅装置200の構成例を示す。
【
図4】本実施形態に係る第2出力調節回路260が記憶している対応テーブルの一例を示す。
【
図5】本実施形態に係る増幅装置200が出力する出力信号の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<従来の増幅装置100の構成>
図1は、従来の増幅装置100の構成例を示す。増幅装置100は、入力した入力信号を増幅して出力信号として出力する。増幅装置100は、APC回路により、入力信号を所定の大きさの信号強度に増幅した出力信号を出力する。増幅装置100は、入力端子10と出力端子20と、可変アッテネータ110と、増幅器120と、分割回路130と、検出回路140と、出力調節回路150とを備える。
【0015】
入力端子10には入力信号が入力し、出力端子20から出力信号が出力する。可変アッテネータ110は、入力信号を減衰させて減衰信号として出力する。可変アッテネータ110は、制御信号に応じた減衰量で入力信号を減衰させた減衰信号を出力する。
【0016】
増幅器120は、可変アッテネータ110が出力した減衰信号を増幅する。増幅器120は、減衰信号を所定の増幅率で増幅した信号を増幅信号として出力する。分割回路130は、増幅器120が出力した増幅信号を、出力端子20から出力する出力信号と増幅信号の信号強度を検出するための被検出信号に分割する。分割回路130は、例えば、カプラ等であり、増幅信号の一部を被検出信号として検出回路140に供給し、増幅信号の残りを出力信号として出力端子20から出力する。
【0017】
検出回路140は、分割回路130が分割した被検出信号の信号強度を検出する。出力調節回路150は、検出回路140が検出した被検出信号の信号強度に応じて可変アッテネータ110の減衰量を設定する。出力調節回路150は、例えば、被検出信号の信号強度が予め定められた値となるように、可変アッテネータ110の減衰量を設定する。
【0018】
ここで、分割回路130が増幅信号の出力信号と被検出信号との電力比を10:1に分割し、出力調節回路150が出力信号の信号強度を+10dBmになるように制御する例を考える。例えば、出力信号が+10dBm(10mW)の場合、被検出信号は0dBm(1mW)となるので、出力調節回路150は、被検出信号の信号強度が0dBmの場合、可変アッテネータ110の減衰量を変更しない。
【0019】
また、出力調節回路150は、被検出信号の信号強度が+1dBm(1.26mW)の場合、出力信号が+11dBm(12.6mW)になるので、可変アッテネータ110の減衰量を1dBだけ増加させる。例えば、出力調節回路150は、現在の減衰量から更に1dB減衰させる制御信号を可変アッテネータ110に供給する。
【0020】
これにより、増幅装置100の出力信号を+10dBmに調節することができる。出力調節回路150は、マイコン、FPGA等である。出力調節回路150は、被検出信号の信号強度に対する可変アッテネータ110の減衰量の調節量を記憶している記憶部を有してもよく、これに代えて、被検出信号の信号強度から減衰量の調節量を算出する関数等を用いてもよい。なお、出力調節回路150は、被検出信号の信号強度が予め定められた範囲内の値となるように、可変アッテネータ110の減衰量を設定してもよい。
【0021】
以上のように、従来の増幅装置100は、可変アッテネータ110、分割回路130、検出回路140、及び出力調節回路150がAPC回路として機能し、増幅器120に入力する信号の強度を略一定の値となるように可変アッテネータ110の減衰量を設定する。これにより、増幅装置100は、出力端子20から略一定の信号強度の出力信号を出力できる。
【0022】
ここで、可変アッテネータ110、増幅器120、分割回路130、検出回路140、及び出力調節回路150といった、増幅装置100を構成している部材は、信号の周波数に対して特性が変化してしまう周波数特性を有する場合がある。特に、入力信号の周波数が広帯域になると、中心周波数よりも低い周波数の入力信号に対する特性と中心周波数よりも高い周波数の入力信号に対する特性とが大きく異なってしまうことがある。この場合、増幅装置100は、広帯域の入力信号に対する出力信号の出力強度を略一定に保つことができなくなってしまうことがある。
【0023】
<増幅装置100が出力する出力信号の一例>
図2は、従来の増幅装置100が出力する出力信号の一例を示す。
図2は、横軸が入力信号の周波数を示し、縦軸が出力信号の信号強度として信号レベルを示す。
図2は、入力信号の信号強度が-13dBmであり、増幅装置100のAPC回路が出力信号の信号強度を+10dBmになるように制御した例を示す。ここで、増幅装置100のAPC回路を予め調節する段階において、周波数が7485MHzの入力信号を用いたものとする。
【0024】
この場合、入力信号の周波数が7485MHz近辺であれば、増幅装置100は、略+10dBm程度の信号強度の出力信号を出力できる。また、入力信号の周波数が7670MHzになっても、増幅装置100の出力信号の信号強度は+10.4dBm程度と、安定な信号強度となっていることがわかる。言い換えると、増幅装置100を構成している部材の周波数特性は、入力信号の周波数が高い周波にずれても+0.4dB程度のずれであり、ほぼ一定の特性であることがわかる。
【0025】
しかしながら、入力信号の周波数が7300MHzになると、増幅装置100を構成している部材の周波数特性により、増幅装置100の出力信号の信号強度は+7.5dBm程度に低下してしまうことがわかる。このように、
図2の例において、増幅装置100は、入力信号として用いる周波数帯域の中心周波数と下限周波数とを比較すると、信号強度が2.5dB程度変化し、上限周波数と下限周波数とを比較すると、信号強度が3dB程度変化する。
【0026】
そこで、本実施形態に係る増幅装置200は、周波数特性を有する部材を用いても、出力信号の出力強度を略一定に保つように動作する。このような増幅装置200について次に説明する。
【0027】
<本実施形態に係る増幅装置200の構成例>
図3は、本実施形態に係る増幅装置200の構成例を示す。増幅装置200において、
図1に示された従来の増幅装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、重複する説明を省略する。増幅装置200は、入力端子10と出力端子20と、第1分割回路210と、可変アッテネータ110と、増幅器120と、第2分割回路220と、検出回路140と、第1出力調節回路230と、周波数変換回路240と、判定回路250と、第2出力調節回路260とを備える。
【0028】
第1分割回路210は、入力信号を第1入力信号と第2入力信号とに分割する。第1分割回路210は、例えば、カプラ等であり、入力信号の一部を第2入力信号として周波数変換回路240に供給し、入力信号の残りを第1入力信号として増幅器120に供給する。可変アッテネータ110は、第1入力信号の信号強度を減衰させて減衰信号として出力する。増幅器120は、減衰信号を増幅して増幅信号として第2分割回路220に出力する。
【0029】
第2分割回路220は、増幅器120が増幅した増幅信号を、出力信号と増幅信号の信号強度を検出するための被検出信号に分割する。第2分割回路220は、例えば、カプラ等であり、増幅信号の一部を被検出信号として検出回路140に供給し、増幅信号の残りを出力信号として出力端子20から出力する。検出回路140は、第2分割回路220が分割した被検出信号の信号強度を検出する。
【0030】
第1出力調節回路230は、従来の増幅装置100の出力調節回路150と同様に、検出回路140が検出した被検出信号の信号強度に応じて可変アッテネータ110の減衰量を設定する。また、第1出力調節回路230は、第2出力調節回路260による可変アッテネータ110の減衰量の調節量を更に設定する。第2出力調節回路260の調節量については後述する。
【0031】
周波数変換回路240は、第2入力信号の信号周波数をより低い信号周波数の信号に変換する。周波数変換回路240は、ダウンコンバータとして機能する。周波数変換回路240は、例えば、ローカル発振器とミキサ、又は分周器を含む。
【0032】
判定回路250は、第2入力信号の信号周波数を判定する。判定回路250は、例えば、周波数カウンタとして機能し、周波数変換回路240が変換した信号の周波数を計測する。このように、判定回路250は、周波数変換回路240が変換した信号の信号周波数を判定する。これにより、判定回路250は、第2入力信号の信号周波数が計数できる周波数範囲よりも高い周波数であっても、当該第2入力信号の信号周波数を判定できる。
【0033】
判定回路250は、周波数カウンタに代えて、周波数変換回路240が変換した信号をFFT処理して周波数領域の信号に変換して第2入力信号の信号周波数を判定してもよい。また、第2入力信号の信号周波数が判定回路250の計数できる周波数範囲よりも低い周波数であることが判明している場合、周波数変換回路240はなくてもよい。
【0034】
なお、判定回路250は、計測した周波数に基づき、周波数変換回路240が変換する前の第2入力信号の信号周波数を換算してもよい。判定回路250は、例えば、計測した周波数にローカル発振器が出力するローカル信号の信号周波数に対応する値を加算して第2入力信号の信号周波数を判定する。また、判定回路250は、計測した周波数に分周器の分周比に対応する値を乗算して第2入力信号の信号周波数を判定してもよい。
【0035】
第2出力調節回路260は、判定回路250の判定結果に応じて、第1出力調節回路230が設定した減衰量を調節する。第2出力調節回路260は、第2入力信号の周波数に対応して可変アッテネータ110の減衰量を微調整する。第2出力調節回路260は、例えば、第2入力信号の周波数に対応付けられた可変アッテネータ110の減衰量の調節量を記憶する記憶部を有する。
【0036】
この場合、第2出力調節回路260は、判定回路250が判定した第2入力信号の周波数に対応する調節量を記憶部から読み出し、第1出力調節回路230に供給する。そして、第1出力調節回路230は、可変アッテネータ110の減衰量を微調整することができる。このような増幅装置200の微調整の詳細について、次に説明する。
【0037】
例えば、第1出力調節回路230は、入力信号の信号周波数を基準周波数とした基準入力信号が当該増幅装置200に入力した場合に、検出回路140が検出した被検出信号の信号強度が所定の信号強度になるように可変アッテネータ110の減衰量を設定する。基準周波数は、増幅装置200の増幅帯域内の周波数であればよい。基準周波数は、例えば、増幅装置200の増幅帯域の中心周波数である。これに代えて、基準周波数は、増幅装置200の増幅帯域の上限周波数又は下限周波数であってもよい。
【0038】
ここでは、基準周波数を7485MHzとした例を説明する。この場合、第1出力調節回路230だけで可変アッテネータ110の減衰量を設定した場合、増幅装置200の出力信号の信号強度の周波数特性は、
図2に示す周波数特性のようになる。この場合、例えば、増幅装置200の入力信号の信号周波数が7325MHzの場合、増幅装置200の出力信号の信号強度は略7.8dBmである。言い換えると、可変アッテネータ110の減衰量を略2.2dB小さくすれば、増幅装置200の出力信号の信号強度を略10dBmにできる。
【0039】
同様に、増幅装置200の入力信号の信号周波数が7375MHzの場合、増幅装置200の出力信号の信号強度は略8.5dBmである。言い換えると、可変アッテネータ110の減衰量を略1.5dB小さくすれば、増幅装置200の出力信号の信号強度を略10dBmにできる。また、増幅装置200の入力信号の信号周波数が7425MHzの場合、増幅装置200の出力信号の信号強度は略9.2dBmである。言い換えると、可変アッテネータ110の減衰量を略0.8dB小さくすれば、増幅装置200の出力信号の信号強度を略10dBmにできる。
【0040】
<対応テーブルの一例>
そこで、第2出力調節回路260の記憶部は、入力信号の信号周波数と可変アッテネータ110の減衰量の調節量との対応関係を予め記憶する。
図4は、本実施形態に係る第2出力調節回路260が記憶している対応テーブルの一例を示す。対応テーブルは、第2入力信号の周波数が7325MHz、7375MHz、7425MHzの場合にそれぞれ対応する可変アッテネータ110の調整量である-2.2dB、-1.5dB、-0.8dBを示すテーブルである。
【0041】
第2出力調節回路260は、このような対応テーブルから判定回路250が判定した第2入力信号の周波数に対応する調節量を読み出して、第1出力調節回路230に供給する。これにより、増幅装置200は、入力信号の信号周波数が7325MHz、7375MHz、7425MHzの場合でも、略10dBmの信号強度の出力信号を出力できる。
【0042】
<増幅装置200が出力する出力信号の一例>
図5は、本実施形態に係る増幅装置200が出力する出力信号の一例を示す。
図5は、横軸が入力信号の周波数を示し、縦軸が出力信号の信号強度として信号レベルを示す。
図5は、
図2と同様に、入力信号の信号強度が-13dBmであり、増幅装置200が出力信号の信号強度を+10dBmになるように制御した例を示す。増幅装置200は、増幅装置200を構成している部材が周波数特性を有しても、略一定の出力強度の出力信号を出力できることがわかる。
【0043】
なお、第2出力調節回路260は、判定回路250が判定した第2入力信号の周波数が対応テーブルに存在しなくても、対応テーブルに存在する周波数のうち最も近い周波数の調節量を読み出して、第1出力調節回路230に供給してもよい。これに代えて、第2出力調節回路260は、対応テーブルに存在する周波数を用いて補間、又は補外することにより、第2入力信号の周波数に対応する調節量を算出してもよい。
【0044】
これに代えて、第2出力調節回路260の記憶部は、第2入力信号の周波数に対応する調節量を算出するための関数を記憶してもよい。この場合、第2出力調節回路260は、判定回路250が判定した第2入力信号の周波数を関数に入力することにより、可変アッテネータ110の減衰量の調節量を算出できる。
図5は、入力信号の信号周波数が7300MHz、7350MHz、7400MHz、7450MHzの場合でも、第2出力調節回路260が可変アッテネータ110の減衰量の調節量を算出して第1出力調節回路230に供給した例を示す。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る増幅装置200は、第1出力調節回路230によるAPC動作に加えて、第2出力調節回路260が入力信号の信号周波数に応じた可変アッテネータ110の減衰量の微調整をする。これにより、広帯域の入力信号が増幅装置200に入力しても、増幅装置200は、簡便な構成で出力信号の信号強度を所定の大きさに制御できる。
【0046】
なお、増幅装置200は、入力信号の信号帯域のうち、比較的周波数特性が平坦な領域に対しては、第2出力調節回路260の微調整を実行しなくてもよい。例えば、
図2に示すように、入力信号の信号周波数が中心周波数(7485MHz)よりも大きい周波数の場合、出力信号の信号強度は略一定の値になっている。
【0047】
そこで、第2出力調節回路260は、判定回路250が第2入力信号の信号周波数が基準周波数よりも低い周波数と判定した場合、第1出力調節回路230が設定した減衰量を判定回路250が判定した信号周波数に対応する値に調節する。そして、第2出力調節回路260は、判定回路250が第2入力信号の信号周波数が基準周波数以上の周波数と判定した場合、第1出力調節回路230が設定した減衰量を調節しない。
【0048】
また、入力信号の信号周波数が基準周波数よりも小さい周波数の場合に、出力信号の信号強度が略一定の値になることもある。この場合、第2出力調節回路260は、判定回路250が第2入力信号の信号周波数が基準周波数よりも高い周波数と判定した場合、第1出力調節回路230が設定した減衰量を判定回路250が判定した信号周波数に対応する値に調節する。そして、第2出力調節回路260は、判定回路250が第2入力信号の信号周波数が基準周波数以下の周波数と判定した場合、第1出力調節回路230が設定した減衰量を調節しない。
【0049】
このように、増幅装置200は、周波数特性が大きく変化する周波数領域において、可変アッテネータ110の減衰量を微調整して、効率的に出力信号の信号強度を略一定の値にすることができる。なお、この場合、基準周波数は、周波数特性が平坦な周波数領域から大きく変化する周波数領域との境界近辺の周波数に設定されることが望ましい。
【0050】
以上の第1出力調節回路230、判定回路250、及び第2出力調節回路260の一部又は全部は、FPGA、マイコン等で構成することが望ましい。第1出力調節回路230、判定回路250、及び第2出力調節回路260がCPU等によって構成されている場合、第1出力調節回路230、判定回路250、及び第2出力調節回路260のうち少なくとも1つは記憶部を有する。第1出力調節回路230、判定回路250、及び第2出力調節回路260は共通の記憶部を有することが望ましい。
【0051】
記憶部は、CPUを機能させるOS(Operating System)、及びプログラム等の情報を格納してもよい。また、記憶部は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、CPUは、記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって、第1出力調節回路230、判定回路250、及び第2出力調節回路260として機能する。
【0052】
記憶部は、例えば、CPU等が実行する各種プログラム及び各種テーブル等を格納するROM(Read Only Memory)、及び作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部は、第1出力調節回路230、判定回路250、及び第2出力調節回路260が動作の過程で生成する(又は利用する)中間データ、算出結果、閾値、基準値、及びパラメータ等をそれぞれ記憶してもよい。記憶部は、例えば、
図4に示す対応テーブルを記憶する。また、記憶部は、各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してもよい。
【0053】
以上の本実施形態に係る増幅装置200は、第1出力調節回路230及び第2出力調節回路260が可変アッテネータ110の減衰量を調節する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、増幅器120は、増幅率が可変の増幅器であってもよい。この場合、第1出力調節回路230は、検出回路140が検出した被検出信号の信号強度に応じて増幅器120の増幅率を設定する。また、第2出力調節回路260は、判定回路250の判定結果に応じて、第1出力調節回路230が設定した増幅率を調節する。
【0054】
このような増幅装置200であっても、第2出力調節回路260は、入力信号の信号周波数に応じて適切に増幅器120の増幅率を微調整できる。したがって、増幅装置200は、広帯域の入力信号が入力しても、簡便な構成で出力信号の信号強度を所定の大きさに制御できる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0056】
10 入力端子
20 出力端子
100 増幅装置
110 可変アッテネータ
120 増幅器
130 分割回路
140 検出回路
150 出力調節回路
200 増幅装置
210 第1分割回路
220 第2分割回路
230 第1出力調節回路
240 周波数変換回路
250 判定回路
260 第2出力調節回路