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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078616
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】円筒体表面の検査方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
G01N21/952
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191825
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 忠
(72)【発明者】
【氏名】千原 駿
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA44
2G051AB07
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB05
2G051BC04
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】
円筒体表面が透明または透明に近い材質であっても微小な欠陥を検出し、また検出した欠陥の種類を判別することができる円筒体表面の検査方法および円筒体表面の検査装置を提供する。
【解決手段】
本発明の円筒体表面の検査方法は、円筒体を回転させた状態で、円筒体に対して光を照射し、照射した光が円筒体の表面で反射した反射光を1次元撮像手段で受光し、1次元撮像手段が撮像した画像から円筒体の表面の欠陥を検出したときに円筒体の回転を停止させる第1の手順と、次いで、円筒体を停止させた状態で、円筒体の表面に対する照射角度が、第1の手順において円筒体の表面に照射された光の照射角度とは異なる角度から、円筒体に対して光を照射し、照射した光が円筒体の表面で反射した反射光を2次元撮像手段で受光し、第1の手順において検出された欠陥の位置を2次元撮像手段で撮像する、第2の手順を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の表面を検査する方法であって、
円筒体を回転させた状態で、
前記円筒体に対して光を照射し、
前記照射した光が前記円筒体の表面で反射した反射光を1次元撮像手段で受光し、
前記1次元撮像手段が撮像した画像から前記円筒体の表面の欠陥を検出したときに当該円筒体の回転を停止させる、第1の手順と、
次いで、前記円筒体を停止させた状態で、
前記円筒体の表面に対する照射角度が、前記第1の手順において当該円筒体の表面に照射された光の照射角度とは異なる角度から、当該円筒体に対して光を照射し、
前記照射した光が前記円筒体の表面で反射した反射光を2次元撮像手段で受光し、
前記第1の手順において検出された前記欠陥の位置を前記2次元撮像手段で撮像する、第2の手順と、
を行う、円筒体表面の検査方法。
【請求項2】
円筒体の表面を検査する装置であって、
円筒体を当該円筒体の軸周りに回転可能に支持する支持機構と、
前記支持機構に支持された前記円筒体に対して光を照射する光源と、
前記光源を移動させる手段であって、当該光源から照射される光の前記円筒体の表面に対する照射角度を変えられる照射角度変更手段と、
1次元撮像手段および2次元撮像手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段が、
前記支持機構で前記円筒体を回転させた状態で、前記光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を前記1次元撮像手段で受光し、当該1次元撮像手段が撮像した画像から当該円筒体の表面の欠陥を検出したときに当該支持機構を停止させて当該円筒体の回転を停止させる、第1の手順と、
次いで、前記円筒体の回転を停止させた状態で、前記光源から照射される光の当該円筒体の表面に対する照射角度を、前記第1の手順における照射角度とは異なる角度となるように、前記照射角度変更手段で当該光源を移動させ、当該光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を前記2次元撮像手段で受光し、前記第1の手順において検出された前記欠陥の位置を当該2次元撮像手段で撮像する、第2の手順と、
を行うように制御する、
円筒体表面の検査装置。
【請求項3】
円筒体の表面を検査する装置であって、
円筒体を当該円筒体の軸周りに回転可能に支持する支持機構と、
前記支持機構に支持された前記円筒体に対して光を照射する第1の光源と、
前記円筒体の表面に対する照射角度が、前記第1の光源から照射される光の照射角度とは異なる角度から、当該円筒体に対して光を照射する第2の光源と、
1次元撮像手段および2次元撮像手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段が、
前記支持機構で前記円筒体を回転させた状態で、前記第1の光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を前記1次元撮像手段で受光し、当該1次元撮像手段が撮像した画像から当該円筒体の表面の欠陥を検出したときに当該支持機構を停止させて当該円筒体の回転を停止させる、第1の手順と、
次いで、前記円筒体の回転を停止させた状態で、前記第2の光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を前記2次元撮像手段で受光し、前記第1の手順において検出された前記欠陥の位置を当該2次元撮像手段で撮像する、第2の手順と、
を行うように制御する、
円筒体表面の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒体表面の欠陥を検出する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムローラー等の円筒体の製造工程において、その表面に傷や凹みなどの欠陥が発生することが問題となっている。円筒体の用途によって要求される表面性状は異なるが、フィルム製膜用のローラーなど傷や凹みを嫌う用途の場合には高精度に表面を検査する検査方法および検査装置が必要となる。
【0003】
従来このような欠陥の検査を行う場合、人間の目による目視検査のほか、円筒体表面を何らかの方法で検知し、欠陥の有無を判断することで検査を行っていた。例えば、特許文献1にあるように距離センサを用いて円筒体表面を測定する技術や、特許文献2のように、円筒体と測定用2本の円筒体を接触させた隙間から漏れ出る光を検出して表面の凹凸の有無を確認する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-303702号公報
【特許文献2】特開2003-149168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の技術には次のような問題がある。特許文献1はレーザー光などを用いた距離計を利用しているため、円筒体表面の材質が透明またはそれに近い場合に光が透過し、円筒体表面の内部の情報、例えば内部異物などからの反射光を検知してしまい、表面との距離を正確に測ることができず大量の誤検出が発生してしまう。また、特許文献2は欠陥部からの光の漏れを検出しているが、これも円筒体表面の材質が透明なゴムなどでは円筒体欠陥部以外からも光が漏れてしまうため、凹凸を検出することはできなくなってしまう。
【0006】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するもので、円筒体表面が透明または透明に近い材質であっても微小な欠陥を検出し、また検出した欠陥の種類を判別することができる円筒体表面検査装置および円筒体の検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の円筒体表面の検査方法は、円筒体の表面を検査する方法であって、
円筒体を回転させた状態で、上記円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が上記円筒体の表面で反射した反射光を1次元撮像手段で受光し、当該1次元撮像手段が撮像した画像から上記円筒体の表面の欠陥を検出したときに当該円筒体の回転を停止させる第1の手順と、
次いで、上記円筒体を停止させた状態で、当該円筒体の表面に対する照射角度が、第1の手順において当該円筒体の表面に照射された光の照射角度とは異なる角度から、当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を2次元撮像手段で受光し、第1の手順において検出された上記欠陥の位置を当該2次元撮像手段で撮像する、第2の手順を行う。
【0008】
上記課題を解決する本発明の円筒体表面の検査装置は、
円筒体を軸周りに回転可能に支持する支持機構と、当該支持機構に支持された当該円筒体に対して光を照射する光源と、当該光源を移動させる手段であって、当該光源から照射される光の当該円筒体の表面に対する照射角度を変えられる照射角度変更手段と、1次元撮像手段および2次元撮像手段と、制御手段と、を備え、
上記制御手段が、上記支持機構で上記円筒体を回転させた状態で、上記光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を上記1次元撮像手段で受光し、当該1次元撮像手段が撮像した画像から円筒体の表面の欠陥を検出したときに当該支持機構を停止させて当該円筒体の回転を停止させる第1の手順と、
次いで、上記円筒体の回転を停止させた状態で、上記光源から照射される光の当該円筒体の表面に対する照射角度を、上記第1の手順における上記照射角度とは異なる角度となるように、上記照射角度変更手段で光源を移動させ、当該光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を上記2次元撮像手段で受光し、当該第1の手順において検出された欠陥の位置を当該2次元撮像手段で撮像する第2の手順を行う、ように制御する。
【0009】
上記課題を解決する本発明の別の形態の円筒体表面の検査装置は、
円筒体を円筒体の軸周りに回転可能に支持する支持機構と、当該支持機構に支持された当該円筒体に対して光を照射する第1の光源と、当該円筒体の表面に対する照射角度が、当該第1の光源から照射される光の照射角度とは異なる角度から、当該円筒体に対して光を照射する第2の光源と、1次元撮像手段および2次元撮像手段と、制御手段と、を備え、
上記制御手段が、上記支持機構で上記円筒体を回転させた状態で、上記第1の光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を上記1次元撮像手段で受光し、当該1次元撮像手段が撮像した画像から当該円筒体の表面の欠陥を検出したときに当該支持機構を停止させて当該円筒体の回転を停止させる第1の手順と、
次いで、上記円筒体の回転を停止させた状態で、上記第2の光源から当該円筒体に対して光を照射し、当該照射した光が当該円筒体の表面で反射した反射光を上記2次元撮像手段で受光し、上記第1の手順において検出された欠陥の位置を当該2次元撮像手段で撮像する第2の手順を行う、ように制御する。
【0010】
なお、円筒体は被検査対象であるので、本発明の円筒体表面の検査装置において、円筒体そのものは検査装置の構成には含まれない。
【0011】
本発明における各用語は以下のように定義する。
「円筒体」とは例えば産業機械に用いられるローラーやその組み立て前の円筒状の部品などを言い、円筒状部品に軸を取り付けたものも含む。また、中実円柱状のローラー及びその部材も含む。
【0012】
「光源」とは、光を発生する機器を言い、例えばLEDや有機EL、蛍光灯、ハロゲンランプ、HIDランプなどを言う。
【0013】
「1次元撮像手段」とは、光の明暗を電気信号に変換する素子を一直線上に並べたものであり、一般的にはラインカメラやラインスキャンカメラと呼ばれているものを指す。
【0014】
「2次元撮像手段」とは、光の明暗を電気信号に変換する素子を平面上に並べたものであり、一般的にはエリアカメラやエリアスキャンカメラと呼ばれているものや、マイクロスコープと呼ばれているものを指す。
【0015】
「照射角度変更手段」とは、光源を移動可能に支持し、モーターやアクチュエータなどの駆動手段によって、光源を移動させることのできる機構を指す。
【0016】
「制御手段」とは、光源や1次元撮像手段、2次元撮像手段、照射角度変更手段、支持機構の動作を制御する手段を指し、例えばプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLCと呼称することがある)やパーソナルコンピューター(以下、PCと呼称することがある)、スマートフォンやタブレット型端末、およびこれらと組み合わせた電気回路やそれらと同等の機能を含む画像処理装置などを言う。
【0017】
「円筒体の表面の欠陥を検出したときに円筒体の回転を停止させる」とは、欠陥を検出するのと同時に円筒体を停止させる手順だけではなく、欠陥を検出してから所定の時間または回転量だけ円筒体を回転させてから停止させる手順も含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の円筒体表面の検査方法および円筒体表面の検査装置によれば、円筒体表面が透明または透明に近い材質であっても欠陥を検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の円筒体表面の検査装置の第1の実施形態を円筒体の中心軸方向から見た概略図である。
図2】支持機構、光源からの光の照射角度の一例を説明する概略図である。
図3】本発明の円筒体の表面検査装置の第2の実施形態を円筒体の中心軸方向から見た概略図である。
図4】本発明の円筒体表面の検査装置の第3の実施形態を平面方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1を参照する。図1は本発明の円筒体表面の検査装置の第1の実施形態を円筒体の中心軸方向から見た概略図である。第1の実施形態の検査装置1a(以下、単に「検査装置1a」と称する)は、円筒体2を軸周りに回転可能に支持する支持機構(図1では図示せず)、円筒体2に対して光を照射する光源5、光源5が照射した光が円筒体2の表面で反射した反射光を受光する1次元撮像手段3、光源5の位置を変更する照射角度変更手段(図示せず)、位置が変更した光源5’が照射した光が円筒体2の表面で反射した反射光を受光する2次元撮像手段4、および支持機構、光源5(5’)、1次元画像手段3、2次元画像手段5、照射角度変更手段を制御する制御手段(図示せず)を備えている。
【0022】
検査装置1aが検査対象とする円筒体2としては、あらゆる円筒体に適用可能であるが、外径100mm以上1000mm以下、面長0.5m以上10m以下の円筒体に好適に用いられる。例えば、製紙装置、プラスチックフィルムの製膜装置、金属の圧延装置、およびウェブのコーティングや蒸着等の後加工設備、印刷や複写装置に用いられるローラーなどが挙げられる。特に、検査装置1aを用いれば大型の円筒体であっても微細な表面欠陥を検出可能なため、円筒体表面の微細欠陥が製品欠陥に直結する用途、例えば熱可塑性樹脂を2本のローラーで挟圧冷却し、プラスチックフィルムを得る製膜装置で用いるローラーの微小な表面欠陥を好適に検出することができる。
【0023】
制御手段は、先ず、支持機構で円筒体2を回転させた状態で、光源5から円筒体2に対して光を照射し、照射した光が円筒体2の表面で反射した反射光を1次元撮像手段3で受光し、1次元撮像手段3が撮像した画像から円筒体2の表面の欠陥を検出するのと同時に支持機構を停止させて円筒体2の回転を停止させる第1の手順を行うように制御する。
【0024】
図2を参照する。図2は支持機構を説明する概略図である。支持機構6は、円筒体2の回転軸を中心として円筒体2を回転可能に支持し回転させる。支持機構6は円筒体2の少なくとも2カ所を支持する。2か所を回転可能に支持する方法は特に限定されないが、例えば、ベアリングの内輪に軸を嵌合して支持したものを2個並べて回転可能に支持し、それらベアリングの外輪上に円筒体2を乗せて支持するものや、単に円筒体2の軸にベアリングを嵌合してそのベアリングを支持するものを使用してもよい。円筒体2を回転させる方法は特に限定されないが、例えば、ACモーターやDCモーターといった一般的なモーターを用いることができ、必要に応じて変速機構を設けてもよい。支持機構6によって一定の速度で円筒体2を回転させながら1次元撮像手段3で撮像することによって、円筒体2の回転方向Drに対して一定のスケールで撮像することができる。また、回転速度が速すぎることで、1次元撮像手段3の測定可能速度を超えてしまい測定漏れが起きることを防ぐことが出来る。
【0025】
再び図1を参照する。光源5による光の照射方法は特に限定されないが、1次元撮像手段3での撮像中は、光源5、1次元撮像手段3、および1次元撮像手段3が撮像する円筒体2の表面の相互の位置関係が変わらないように照射されていると、一定の見え方で撮像できるため好ましい。
【0026】
光源5、1次元撮像手段3、および1次元撮像手段3が撮像する円筒体2の表面の相互の位置関係は、円筒体2の表面材質や検出したい欠陥の形状、光源の種類などによって、適宜調整し決定される。特に表面が透明または透明に近い材質である円筒体2を検査する際には、図1に示すように円筒体2の中心軸方向に向けて1次元撮像手段3で撮像し、1次元撮像手段3が撮像している部分における円筒体2の表面の接線方向と、1次元撮像手段3が撮像している表面部分と光源5の位置を結んだ線とのなす角θが0~30度になるよう配置すると微小な欠陥も検知しやすくなるため好ましい。また、1次元撮像手段3は円筒体2の中心軸方向に向けてもよいし、0~10°程度傾けてもよい。
【0027】
光源5は、LEDや有機EL、蛍光灯、ハロゲンランプやHIDランプなど一般的に入手可能な光源を適宜選択して用いることができる。LEDや有機ELは照射範囲の形状や照射する光の色を撮像手段や円筒体2の材質などに合わせて変更することができるため好ましく用いることができる。
【0028】
1次元撮像手段4は、光の明暗を電気信号に変換する素子(以下、撮像素子と呼称することがある)を一直線上に並べたものであり、一般的にはラインカメラやラインスキャンカメラと呼ばれているものを指す。撮像素子はCCDやCMOSなどが一般的に用いられ、素子数は要求する分解能や視野によって適宜選択されるが、例えば、大きさ100μm以下の欠陥を10mm以上の視野で検知したい場合、素子数は2000個以上が好ましく、4000個以上がより好ましい。また、要求する分解能や視野に適したレンズを用いて拡大率や視野を調整することが好ましい。
【0029】
円筒体2を回転させながら連続的に1次元撮像手段3で撮像し、得られた1次元の撮像データを解析することで、欠陥を検出することができる。また、得られた1次元の撮像データを並べることで2次元の画像データを得て、得られた2次元の画像データを解析することでも欠陥を検出することができる。これらは例えば市販の画像処理装置やコンピュータープログラムによって実現することが可能であるが、手段は特に限定されない。
【0030】
制御手段は、次いで、円筒体2の回転を停止させた状態で、光源5から照射される円筒体2の表面に対する照射角度を、第1の手順における照射角度とは異なる角度となるように、照射角度変更手段で光源5を符号5’の位置まで移動させ、光源5’から円筒体2に対して光を照射し、照射した光が円筒体2の表面で反射した反射光を2次元撮像手段4で受光し、第1の手順において検出された欠陥の位置を2次元撮像手段4で撮像する第2の手順を行うように制御する。
【0031】
なお、上記照射角度は、図1に示す1次元撮像手段3が撮像している部分における円筒体2の表面の接線方向と、1次元撮像手段3が撮像している表面部分と光源5の位置を結んだ線とのなす角θのほか、図2に示す円筒体2の表面の撮像部における法線周りにおける円筒体2の軸方向と光源5の光の照射方向のなす角φも含む。
【0032】
照射角度変更手段は、光源5を符号5’の位置に移動させて、円筒体2の表面にある欠陥に光を照射する角度を変えることができる。照射角度変更手段としては特に限定されないが、光源5を移動可能に支持し、リニアアクチュエータやサーボモータで移動させるものなど使用することができる。
【0033】
2次元撮像手段4は撮像素子を平面上に並べたものであり、一般的にはエリアカメラやエリアスキャンカメラと呼ばれているものや、マイクロスコープと呼ばれているものを指す。撮像素子はCCDやCMOSなどが一般的に用いられ、素子数は要求する分解能や視野によって適宜選択されるが、例えば大きさ100μm以下の欠陥を□10mm以上の視野で検知したい場合、素子数は200万個以上が好ましく、400万個以上がより好ましい。また、要求する分解能や視野に適したレンズを用いて拡大率や視野を調整することが好ましい。
【0034】
2次元撮像手段4での撮像は2次元撮像手段4と欠陥と光源5の位置関係が固定された状態で撮像するため、得られた撮像データから容易に欠陥のサイズを測定することができる。
【0035】
第1の手順と第2の手順で得られた撮像データ、すなわち欠陥に対する光の照射角度の異なる撮像データを比較することで、欠陥の種類の特定が容易となる。例えば、突起や付着物などの凸状欠陥とキズや打痕などの凹状欠陥では、光の照射角度を変えたときの影の移動の仕方が異なる。また、円筒体2が透明または半透明である場合には、同様に表面の欠陥と内部の欠陥で影の見え方が異なるためこれらを判別することが可能となる。
【0036】
また、第2の手順の前に第1の手順と同じ光の照射角度で2次元撮像手段4を用いて撮像する手順を追加しても良いし、第2の手順の後、さらに光の照射角度を1回ないし複数回変更して2次元撮像手段4で撮像する手順を追加し、得られた撮像データを比較すると、さらに高精度に欠陥の種類の判別が可能になるため、好ましい。
【0037】
制御手段は、光源5、1次元撮像手段3、2次元撮像手段4、照射角度変更手段、および支持機構6の動作を制御する。制御手段は特に限定されないが、例えばPLCやPC、スマートフォンやタブレット型端末、およびこれらと組み合わせた電気回路やそれらと同等の機能を含む画像処理装置などを用いることができる。
【0038】
検査装置1aでは、照射角度変更手段5で光源5の位置を自動的に移動させているが、手動で光源5を動かしてもよい。ただし、自動で制御した方が、光源5による照射位置が正確になるので好ましい。
【0039】
検査装置1aでは、第1の手順において欠陥を検出するのと同時に支持機構を停止させて円筒体2の回転を停止し、第2の手順において、1次元画像手段3で撮像していた撮像位置とおおよそ一致する位置を、光源5’で照射しつつ2次元撮像手段4で撮像しているが、この方法には限る必要はない。第1の手順において欠陥を検出してから所定の時間または回転量だけ円筒体2を回転させてから支持機構を停止し、第2の手順において、1次元画像手段3で検出した欠陥の場所、つまり1次元画像手段3が撮像している位置とは異なる位置を、光源5’で照射しつつ2次元撮像手段4で撮像してもよい。
【0040】
[第2の実施形態]
図3を参照する。図3は本発明の円筒体表面の検査装置の第2の実施形態を円筒体の中心軸方向から見た概略図である。第2の実施形態の検査装置1b(以下、単に「検査装置1b」と称する)は、第1の実施形態の検査装置1aが備えていた光源5の代わりに、第1の光源51と第1の光源とは異なる角度から光を照射する第2の光源52を備えている。また、検査装置1bは光源を機械的に動かさないので、検査装置1aが備えていた照射角度変更手段は備えていなくてもよい。そのため、検査査装置1bは照射角度変更手段を必要としないので、制御手段で照射角度変更手段を制御する必要もない。検査装置1bは、これらの違い以外は検査装置1aを同じ構成を備えている。
【0041】
第2の光源52は、円筒体2の表面に対する照射角度が、第1の光源51から照射される光の照射角度とは異なる角度から円筒体2に対して光を照射する。
【0042】
制御手段は、先ず、支持機構で円筒体2を回転させた状態で、第1の光源51から円筒体2の表面に光を照射し、その照射した光が円筒体2の表面で反射した反射光を1次元画像手段3で受光し、1次元撮像手段3が撮像した画像から欠陥を検出してから所定の時間または回転量だけ円筒体2を回転させてから支持機構を停止させる第1の手順を行うように制御する。
【0043】
制御手段は、次いで、円筒体2の回転を停止させた状態で、第1の光源51を消灯し第2の光源52を点灯することで円筒体2に対する照射角度を変更し、照射した光が円筒体2の表面で反射した反射光を2次元画像手段で受光し、2次元撮像手段4で第1の手順において検出された欠陥部を撮像する第2の手順を行うように制御する。なお、2次元画像手段4による撮像に支障が出ないのであれば、第1の光源51は点灯させたままでもよい。
【0044】
検査装置1aによる検査と同様に、この検査装置1bの検査においても、第1の手順と第2の手順で得られた撮像データ、すなわち欠陥に対する光の照射角度の異なる撮像データを比較することで、欠陥の種類の特定が容易となる。 第1の光源1を消灯する前に2次元撮像手段4で撮像する手順を追加してもよく、第2の光源52を複数設けて、各々の第2の光源からの光の照射毎に複数回にわたって2次元撮像手段4で撮像する手順を追加してもよい。
【0045】
第2の光源52は少なくとも1つあればよいが、複数備えていてもよい。例えば、図3に示すように、第2の光源52をリング形状の分割点灯可能なLEDとして、照射部位を90度ずつ4分割し、それを切り替えることで照射角度を変更する方式などを好適に用いることができる。
【0046】
検査装置1bでは、第1の手順において欠陥を検出してから所定の時間または回転量だけ円筒体2を回転させてから支持機構を停止し、第2の手順において、1次元画像手段3で検出した欠陥の場所、つまり1次元画像手段3が撮像している位置とは異なる位置を、第2の光源52で照射しつつ2次元撮像手段4で撮像しているが、この方法には限る必要はない。第1の手順において欠陥を検出するのと同時に支持機構を停止させて円筒体2の回転を停止し、第2の手順において、1次元画像手段3で撮像していた撮像位置とおおよそ一致する位置を、第2の光源52で照射しつつ2次元撮像手段4で撮像してもよい。
【0047】
また、検査装置1bでは、第1の光源51と第2の光源52の2つの光源を備えているが、1次元撮像手段3と2次元撮像手段4の撮像部分を一致させて、分割点灯可能な1つの光源でこの撮像部分を照射してもよい。この場合、第1の手順において点灯させる箇所が第1の光源51に、第2の手順において点灯させる箇所が第2の光源52となる。このような分割点灯可能な光源としては、例えばリング形状の分割点灯可能なLEDライトが挙げられる。
【0048】
[第3の実施形態]
図4を参照する。図4は本発明の円筒体表面の検査装置の第3の実施形態を平面方向から見た概略図である。第3の実施形態の検査装置1c(以下、単に「検査装置1c」と称する)は第2の実施形態の検査装置1bの構成を変えた実施形態である。
【0049】
検査装置1cでは、1次元撮像手段3と2次元撮像手段4の撮像部分を一致させ、第1の光源51と第2の光源52の2つの光源を備える代わりに、分割点灯可能な1つの分割点灯可能な光源5でこの撮像部分を照射している。第1と第2の手順とで光源5の別の箇所を点灯させることで、第1の手順において点灯させる箇所で第1の光源51を、第2の手順において点灯させる箇所で第2の光源52を代用している。
【0050】
検査装置1cでは、1次元撮像手段3と2次元撮像手段4の撮像部分を一致させているので、第1の手順において、欠陥を検出するのと同時に支持機構6を停止させて円筒体2の回転を停止させる。
【0051】
また、検査装置1cは移動支持機構7を備えており、検査装置1c全体を移動支持機構7に固定しているので、検査装置1c全体を円筒体2の中心軸と平行に移動させることが出来る。円筒体2を回転させながら、移動支持機構7によって検査装置1cを円筒体2の回転軸と平行に移動させることによって、検査装置1cは円筒体2の表面を円筒体2の回転方向Drに対して斜めに走査することが可能となり、円筒体2の表面全面を円滑に検査することが可能となる。また、移動支持機構7は円筒体2の回転角に連動して移動する機構も備えているので、円筒体2が1回転する間に撮像機構7が円筒体2の回転軸と平行な方向に1次元撮像手段3の円筒体2回転軸方向Dpの測定範囲以下の距離だけ進むようにすることで、円筒体2の表面の全面をくまなく測定することが出来る。移動支持機構7としては市販のリニアガイドやリニアアクチュエータ、リニアベアリングとシャフトの組み合わせ、およびラックピニオンやボールネジなどを好適に用いることが出来る。
【0052】
[その他]
検査装置1a、1b、1cでは、支持機構6で円筒体2を自動制御で回転させているが、円筒体2の両端をベアリングなど回転可能な支持方法で支持し、手回しで回転させてもよい。ただし、一定速度で回転させることで一定の縮尺で撮像できることから駆動手段によって回転させることが好ましく、回転に要する労力も削減できる。
【実施例0053】

図4に示す検査装置1cを用いて、円筒体2として外径300mm、面長2m、表面材質が透明なシリコーンゴムであるローラーの表面検査を行った。1次元撮像手段3として、キーエンス製ラインカメラ(XG―HL04M)を用い、2次元撮像手段4としてANMO社製デジタルマイクロスコープ(Dino-Lite Edge AMR)を用いた。光源5としてはリング状LEDライトを用い、1次元撮像手段3が撮像する際には円周における1/4を点灯させ、点灯させた部分を第1の光源51として1次元撮像手段3が撮像している部分における円筒体2の表面の接線方向と、1次元撮像手段3が撮像している部分と光源5の位置を結んだ線とのなす角θが10度、円筒体2の表面の撮像部における法線周りにおける円筒体2の軸方向と光源5の光の照射方向のなす角φが90度になるよう配置した。1次元撮像手段3での撮影時にはローラーの回転速度を2rpmとし、移動支持機構7は円筒体2が1回転する間に円筒体2の軸方向と平行に15mm移動させるよう設定した。1次元撮像手段3の測定結果をコンピュータープログラムにて整列することで平面画像とし、その画像において明領域となっている部分を欠陥と判定し検出した。検出と同時に円筒体2の回転と移動支持機構7による平行移動を停止し、欠陥を2次元撮像手段4を用いて撮像した。この時、リング状LEDの円周の1/4ずつを点灯させて切り替え円筒体2の表面の撮像部における法線周りにおける円筒体2の軸方向と光源5の光の照射方向のなす角φを90度ずつ変更し、一つの欠陥に対し計4枚を撮像した。
【0054】
一つの欠陥当たり4枚の画像を確認し、欠陥の内側に影が伸びているものをキズや凹み、欠陥の外側に影が伸びているものを突起や付着異物、影がほとんど見えないものを内部異物と判定し分類した。一方で、1次元撮像手段3の画像からは欠陥の特徴がはっきりせず欠陥を判定することはできなかった。
【0055】
次いで、確認としてシリコーンゴムローラーの各欠陥部を切り取り、オリンパス社製レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000)にて観察し、欠陥の種類を特定した。その結果、検出した欠陥15点中14点において正しい判定ができていた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、フィルム製膜用ローラーなどの産業用ローラーを測定対象とする円筒体表面形状測定装置に限らず、プリンターなどの民生用装置に用いられるローラーなどを測定対象とする測定装置などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1a、1b、1c 円筒体表面の検査装置
2 円筒体
3 1次元撮像手段
4 2次元撮像手段
5、5’ 光源
51 第1の光源
52 第2の光源
6 支持機構
7 移動支持機構
Dr 円筒体回転方向
Dp 円筒体中心軸方向
θ 円筒体の接線と光照射方向のなす角
φ 円筒体の軸と光照射方向のなす角
図1
図2
図3
図4