(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078627
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ワーク把持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
B25J15/08 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191842
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】田中 庸介
(72)【発明者】
【氏名】西野 修三
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ES03
3C707ET03
3C707ET08
3C707EU12
3C707EV08
3C707EV10
3C707EV18
3C707EW14
3C707KV11
3C707MT04
3C707NS07
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】上端の小径口部にキャップが被せられたペットボトルのようなワークのピッキングに活用できるワーク把持装置を提供する。
【解決手段】開閉運動する2本の把持指体1A,1Bでワークを把持するワーク把持装置において、前記両把持指体1A,1Bは、互いに接近離間運動する一対の駆動用可動体4A,4Bに上端部が、両把持指体1A,1Bの開閉運動方向に一定角度範囲内で揺動自在に軸支されたもので、この両把持指体1A,1Bを互いに接近する閉動方向の揺動限に付勢保持する付勢手段17が併設され、両把持指体1A,1Bの先端に、両把持指体1A,1Bの開閉方向に対して直交する水平支軸14によってワーク把持用ローラー15が軸支され、これら両ワーク把持用ローラー15が、互いの対向周面が上動する方向の回転のみが許容される一方向回転構造となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉運動する2本の把持指体でワークを把持するワーク把持装置において、前記両把持指体は、互いに接近離間運動する一対の駆動用可動体に上端部が、両把持指体の開閉運動方向に一定角度範囲内で揺動自在に軸支されたもので、この両把持指体を互いに接近する閉動方向の揺動限に付勢保持する付勢手段が併設され、両把持指体の先端に、両把持指体の開閉方向に対して直交する水平支軸によってワーク把持用ローラーが軸支され、これら両ワーク把持用ローラーが、互いの対向周面が上動する方向の回転のみが許容される一方向回転構造によって構成されている、ワーク把持装置。
【請求項2】
前記両ワーク把持用ローラーの周面は、弾性材によって被覆されている、請求項1に記載のワーク把持装置。
【請求項3】
前記両把持指体は、上下縦長の中芯部材と、この中芯部材の両側に取り付けられて当該中芯部材より上下両方向に延出する一対の帯状側板とから構成され、前記中芯部材より上方に延出する両帯状側板の上半部が、前記駆動用可動体に設けられた把持指体支持部を挟む状態で当該把持指体支持部に両把持指体の開閉運動方向に一定角度範囲内で揺動自在に軸支され、前記ワーク把持用ローラーは、前記中芯部材の下端より下方に延出する両帯状側板の下端部間に軸支し、前記把持指体支持部には、上端側延出部と下端側延出部とが設けられ、前記下端側延出部と中芯部材の上端部との間に前記付勢手段を構成する圧縮コイルバネが介装され、前記両帯状側板の上端部間には、前記把持指体が互いに接近する方向の閉動限に達したときに前記上端側延出部に当接する制止部材が取り付けられている、請求項1又は2に記載のワーク把持装置。
【請求項4】
前記両把持指体には、前記ワーク把持用ローラーの直上高さで両把持指体をつなぐ向きの光軸を形成する透過型光電センサーが取り付けられている、請求項1~3の何れか1項に記載のワーク把持装置。
【請求項5】
前記両把持指体には、前記ワーク把持用ローラーより上方位置に、当該ワーク把持用ローラーと同一の一方向回転構造の第二のワーク把持用ローラーが軸支され、前記ワーク把持用ローラーと第二のワーク把持用ローラーの両方でワークを把持するように構成された、請求項1~4の何れか1項に記載のワーク把持装置。
【請求項6】
前記両把持指体には、前記ワーク把持用ローラーより上方位置に、ワークの両側面に圧接する弾性当て部材が取り付けられている、請求項1~4の何れか1項に記載のワーク把持装置。
【請求項7】
前記弾性当て部材は、各把持指体の上下長さ方向に沿った縦長のもので、帯状バネ鋼板から成る基板とこの基板の外側に貼付された弾性材とから成り、前記基板は、横断面が凹曲した樋状に成形されたものであって、前記弾性材は、前記基板の凹曲面に貼付され、把持指体に対しては、各弾性当て部材における前記基板の上半部の巾方向中央部がネジ止めされ、各弾性当て部材における前記基板の下半部は、把持指体から離れて遊動自在となっている、請求項5に記載のワーク把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上端の小径口部にキャップが被せられたペットボトルのようなワークのピッキングに活用できるワーク把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉運動する2本の把持指体でワークを把持するワーク把持装置は、特許文献1など、多数の文献によって知られている。この2本の把持指体でワークを把持するワーク把持装置は、ワークの被把持部の周囲に常に広く開いた空間が確保できている状況や、ワークの被把持部が平行平坦面である場合などに活用されているが、例えばコンテナ内にバラ積みされているペットボトルのピッキングに活用できるようなワーク把持装置は考えられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、ワーク把持装置は、3次元空間内を自在に移動させることができるロボットハンドの先端に取り付けられて使用されるものであるが、ワークがコンテナ内にバラ積みされているような状況では、ピッキング対象のワークの被把持部の周囲に仮に2本の把持指体を差し入れる空間があったとしても、その空間自体が狭くて、十分に開いた状態の2本の把持指体を差し入れることができないことも多々ある。このような場合には、ロボットハンドの運動精度を十分に高めて、ワークの被把持部の周囲の狭い空間内に2本の把持指体を差し入れることを試みなければならないが、片側の把持指体の先端がワークの被把持部の上端面に当接するような事態の発生は完全に避けることはできない。
【0005】
勿論、従来のワーク把持装置においても、2本の把持指体は、開動させる方向の外力を受けた場合に付勢力に抗して外側に一定範囲内で開動できるように構成されているが、これは開動限にある2本の把持指体間の中央位置に対してワークの被把持部が片側にずれているような場合でも2本の把持指体で確実にワークを把持できるようにするための手段であって、片側の把持指体の先端がワークの被把持部の上端面に当接するような事態の発生は回避できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるワーク把持装置を提案するものであって、本発明に係るワーク把持装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、開閉運動する2本の把持指体(1A,1B)でワークを把持するワーク把持装置において、前記両把持指体(1A,1B)は、互いに接近離間運動する一対の駆動用可動体(4A,4B)に上端部が、両把持指体(1A,1B)の開閉運動方向に一定角度範囲内で揺動自在に軸支されたもので、この両把持指体(1A,1B)を互いに接近する閉動方向の揺動限に付勢保持する付勢手段(17)が併設され、両把持指体(1A,1B)の先端に、両把持指体(1A,1B)の開閉方向に対して直交する水平支軸(14)によってワーク把持用ローラー(15)が軸支され、これら両ワーク把持用ローラー(15)が、互いの対向周面が上動する方向の回転のみが許容される一方向回転構造となっている。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明のワーク把持装置は、閉動限位置にある両把持指体のワーク把持用ローラー間の間隔を、ピッキング対象のワークの被把持部の横巾より若干広く設定した状態で、前記ワーク把持用ローラーを含む両把持指体の先端部をピッキング対象のワークの高さ方向と平行に移動させて、ワークの被把持部の外側空間内に差し入れ、次に両把持指体を前記駆動用可動体によって互いに接近移動させ、最終的には、閉動限位置にあった両把持指体を、ワークの被把持部に対するワーク把持用ローラーの横からの圧接による反力で閉動限位置から開動限位置まで開動させた状態でワークに対する把持動作を完了させ、この後、両把持指体のワーク把持用ローラーがワークを把持した状態のワーク把持装置を所定場所まで移動させてワークのピッキング作業が完了するものである。
【0008】
上記のように使用する本発明のワーク把持装置の構成によれば、前記両把持指体の先端部のワーク把持用ローラー間の間隔がワークの被把持部の横巾よりも狭かったために、或いはワークの被把持部に対して一対のワーク把持用ローラーの位置が片側に寄り過ぎていたために、ワークの被把持部の上端面に片側又は両側のワーク把持用ローラーが突き当った場合、そのワーク把持用ローラーの突き当り箇所がワーク把持用ローラーの側面視において当該ローラーの軸心の真下位置より両ワーク把持用ローラーの許容回転方向側であれば、両把持指体のワーク側への移動に伴ってワーク把持用ローラーは許容回転方向に自転しながらワークの外側に前記付勢手段の付勢力に抗して押し退けられる。ワークの外側へ移動したワーク把持用ローラーは、続いて両把持指体のワーク側への移動に伴ってワークの側面に圧接しながら自転移動することになるので、結果的にはワーク把持用ローラーは、その周面とワーク外側面との間の摺接相対移動を実質的に伴うことなくワークの側面所定位置まで達することができる。この後は、両把持指体の互いの接近移動によってワーク把持用ローラー間でワークの被把持部を挟み付けて把持し、続いて、把持しているワークの引き出しピッキング移動が開始されるが、このときワーク把持用ローラーは、当該ローラー間からワークが脱出移動するのを許す方向には自転することができない一方向回転ローラーであるから、両ワーク把持用ローラーが把持している把持力よりもワークの重量などワークを引き下ろす力が勝っていない限り、両ワーク把持用ローラーが把持しているワークの引き出しピッキング移動は問題なく実行される。
【0009】
換言すれば、ピッキング対象のワーク位置を画像処理などで検出するときの誤差や、ワーク把持装置を移動させるロボット機構の動作誤差などが最大でXmm(例えば5mm程度)あるとしても、各把持指体の閉動限位置から開動限位置までの開動時におけるワーク把持用ローラーの移動距離と各ワーク把持用ローラーの半径を前記Xmmより短くないように構成すれば、ピッキング時の両ワーク把持用ローラー間の間隔をワークの被把持部の上端横巾と等しい程度に設定しても、前記誤差が最大のXmm生じる環境でも、ワークの被把持部の上端面に突き当たった片側又は両側のワーク把持用ローラーを、これらローラーの自転を活かしてワークの両側面上へ円滑に移行させることができる。勿論これらワーク把持用ローラーは、先に説明したように把持したワークの被把持部が両ワーク把持用ローラー間から脱出する方向への移動は、自転することなく両者間の摩擦力で確実に阻止できるので、把持したワークの取り出しも確実に行わせることができる。
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明の構成によれば、ピッキング対象のワークを一対の把持指体で把持させるとき、両ワーク把持用ローラー間の間隔を必要最小限に狭めておいても、そしてピッキング対象のワークとワーク把持装置との間の位置的誤差が予想される最大誤差となるような環境においても、ピッキング対象のワークの把持とこれに続くピッキング動作を確実に行わせることができるので、コンテナ内にバラ積みされて、被把持部の周囲の空間が広く確保できないようなワークのピッキングに極めて効果的に活用できるのである。特に上端の小径口部にキャップが被せられているようなペットボトルのピッキングには、一対のワーク把持用ローラーを前記キャップ直下の入隅部に嵌入させることにより確実に吊上げてピッキングすることができるので、極めて効果的に活用できる。
【0011】
本発明を実施する場合、前記両ワーク把持用ローラー(15)の周面を弾性材(26)によって被覆しておくことにより、一対の把持指体を互いに接近移動させてワークの被把持部を両ワーク把持用ローラーで挟み付けたときのワーク把持用ローラーとワークの被把持部との間の圧接面積を増大させて、自転できない状態のワーク把持用ローラーを把持指体に設けられた固定の把持面材として機能させ、確実なピッキングを実行させることができる。
【0012】
又、前記両把持指体(1A,1B)は、上下縦長の中芯部材(11)と、この中芯部材(11)の両側に取り付けられて当該中芯部材(11)より上下両方向に延出する一対の帯状側板(13a,13b)とから構成し、前記中芯部材(11)より上方に延出する両帯状側板(13a,13b)の上半部を、前記駆動用可動体(4A,4B)に設けられた把持指体支持部(9)を挟む状態で当該把持指体支持部(9)に、両把持指体(1A,1B)の開閉運動方向に一定角度範囲内で揺動自在に軸支し、前記ワーク把持用ローラー(15)は、前記中芯部材(11)の下端より下方に延出する両帯状側板(13a,13b)の下端部間に軸支し、前記把持指体支持部(9)には、上端側延出部(9a)と下端側延出部(9b)とを設け、前記下端側延出部(9b)と中芯部材(11)の上端部との間に前記付勢手段(17)を構成する圧縮コイルバネ(16)を介装し、前記両帯状側板(13a,13b)の上端部間には、前記把持指体(1A,1B)が互いに接近する方向の閉動限に達したときに前記上端側延出部(9a)に当接する制止部材(18)を取り付けることができる。この構成によれば、把持指体を、前記駆動用可動体に設けられた把持指体支持部をも内包する、左右両側面が平滑な1本の棒状体に形成することができる。
【0013】
前記両把持指体(1A,1B)には、前記ワーク把持用ローラー(15)の直上高さで両把持指体(1A,1B)をつなぐ向きの光軸(38)を形成する透過型光電センサー(35A,35B)を取り付けることができる。この透過型光電センサーを備えることにより、一対の把持指体をピッキング対象のワークの被把持部の両側に差し入れるとき、当該ワークの被把持部の上端位置を、両把持指体間に通っている光軸が前記被把持部の上端によって遮られることによって検出することができるので、この検出時点から設定時間後に両把持指体の差し入れ動作を終了させて次の動作、即ち、両把持指体を互いに接近移動させる動作を開始させるように自動制御が行える。上記段落に記載の構成を採用しているときは、透過型光電センサー(35A,35B)は、一対の帯状側板(13a,13b)間に位置する前記中芯部材(11)の下端部に取り付けることができる。
【0014】
前記両把持指体(1A,1B)には、前記ワーク把持用ローラー(15)より上方位置に、当該ワーク把持用ローラー(15)と同一の一方向回転構造の第二のワーク把持用ローラー(40)を軸支し、前記ワーク把持用ローラー(15)と第二のワーク把持用ローラー(40)の両方でワークを把持するように構成することができる。又、前記両把持指体(1A,1B)には、前記ワーク把持用ローラー(15)より上方位置に、ワークの両側面に圧接する弾性当て部材(28)を取り付けておくことができる。これらの構成によれば、ワーク把持用ローラーが圧接する箇所より上方に位置するワークの被把持部に対しても前記第二のワーク把持用ローラー又は前記弾性当て部材を圧接させることができるので、ワークのピッキング時にワークが、ワーク把持用ローラーによる把持位置を支点に一対の把持指体間で横方向に揺れ動くのを抑止させることができ、又、全体のワーク把持力も増すので、一層安定的にワークのピッキングを行うことができる。
【0015】
上記の弾性当て部材(28)を併用する場合、具体的には、当該弾性当て部材(28)は、各把持指体(1A,1B)の上下長さ方向に沿った縦長のものとして、帯状バネ鋼板から成る基板(29)とこの基板(29)の外側に貼付された弾性材(30)とから構成し、前記基板(29)は横断面が凹曲した樋状に成形すると共に、前記弾性材(30)は前記基板(29)の凹曲面に貼付し、把持指体(1A,1B)に対しては、各弾性当て部材(28)における前記基板(29)の上半部の巾方向中央部を固着して、各弾性当て部材(28)における前記基板(29)の下半部は、把持指体(1A,1B)から離れて遊動自在に構成するのが望ましい。この構成によれば、前記弾性当て部材の下半部は基板と共に3次元変形が可能な状態となり、被把持部が特殊形状のワークに対してもその特殊形状の被把持部に前記弾性材が馴染んで密着することができ、特殊形状であるが故の把持効果の低下を抑制できる。又、前記弾性材も基板によって横断面形状が凹曲するので、当該弾性材の左右両側辺2箇所をワークに圧接させることができ、この結果ワークの被把持部は、ワーク把持用ローラーとその上側の前記弾性材の左右両側辺2箇所の合計3箇所で把持されることになり、ワークの把持効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、開いている状態でのワーク把持装置を示す側面図である。
【
図2】
図2Aは、片側の把持指体を示す正面図、
図2Bは、片側の把持指体を、弾性当て部材を外した状態で示す正面図である。
【
図3】
図3は、片側の把持指体を示す拡大縦断側面図である。
【
図4】
図4は、一対の把持指体を開閉駆動する駆動用可動体を示す平面図である。
【
図5】
図5は、片側の把持指体を示す分解側面図である。
【
図6】
図6は、片側の把持指体を示す分解正面図である。
【
図7】
図7は、一対の把持指体のワーク(ペットボトル)に対する掴み動作の前半を説明する要部の側面図である。
【
図8】
図8は、同上掴み動作の後半を説明する要部の側面図である。
【
図9】
図9は、一対の把持指体の初期間隔を最小限まで狭めた状態での把持動作を説明する図である。
【
図10】
図10は、一対の把持指体の初期間隔が最小限で且つワークの被把持部に対する一対の把持指体の位置誤差が最大であるときの把持動作を説明する図である。
【
図11】
図11は、一対の把持指体がワーク(ペットボトル)を把持した状態を示す側面図である。
【
図15】
図15は、弾性当て部材の変形例を説明する横断平面図である。
【
図16】
図16は、別の実施例での一対の把持指体がワーク(ペットボトル)を把持した状態を示す要部の一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図4において、1A,1Bは一対の把持指体、2はロボット機構の最終段ハンドである。この最終段ハンド2には、仮想線で示すように、その先端面からレール状に突出して互いに平行且つ逆向きに往復駆動されるレール状横動体3a,3bが設けられており、これら両レール状横動体3a,3bに駆動用可動体4A,4Bを介して一対の把持指体1A,1Bが取り付けられている。各駆動用可動体4A,4Bは、レール状横動体3a,3bの外端部に嵌合して止めネジ5により固定される基台部6と、この基台部6に2本のボルトナット7と2本の止めネジ8とで着脱自在に取り付けられた把持指体支持部9とから構成されている。把持指体支持部9の垂直外側面には、この垂直外側面の長さよりも長尺の帯状板材10が2本の止めネジ10aによって取り付けられ、この帯状板材10の上端部が把持指体支持部9の上端側延出部9aを構成すると共に、帯状板材10の下端部が把持指体支持部9の下端側延出部9bを構成している。
【0018】
把持指体1A,1Bは対称構造のもので、上下縦長の中芯部材11と、この中芯部材11の左右両側にそれぞれ上下2本の止めネジ12によって取り付けられて当該中芯部材11より上下両方向に延出する一対の帯状側板13a,13bとから構成され、中芯部材11より上方に延出する両帯状側板13a,13bの上半部が、前記駆動用可動体4A,4Bの把持指体支持部9を挟む状態で当該把持指体支持部9に、両把持指体1A,1Bの前後開閉運動方向に揺動自在に支軸14によって軸支され、中芯部材11の下端より下方に延出する両帯状側板13a,13bの下端部間にはワーク把持用ローラー15が軸支されている。
【0019】
中芯部材11の上端部は、把持指体支持部9の下端側延出部9bの内側に入り込み、この中芯部材11の上端部と把持指体支持部9の下端側延出部9bとの間に圧縮コイルバネ16が介装されて、把持指体1A,1Bを支軸14の周りに閉動方向(両把持指体1A,1Bの下半部が互いに接近する揺動方向)に付勢する付勢手段17が構成されている。両帯状側板13a,13bの上端部間には、前記把持指体1A,1Bが前記圧縮コイルバネ16の付勢力で互いに接近する方向の閉動限に達したときに把持指体支持部9の上端側延出部9aに当接する制止部材18が取り付けられている。この制止部材18は、左右両端が止めネジ19によって両帯状側板13a,13bに固定された円柱状体によって構成されている。
【0020】
前記付勢手段17の圧縮コイルバネ16は、
図3、
図5、及び
図6に示すように、中芯部材11の上端部に設けられた貫通孔20内を貫通し、この圧縮コイルバネ16の内端部は、帯状板材10の内面側に形成された凹窪部10b内に嵌合し、圧縮コイルバネ16の外端部は、帯状側板13a,13b間に架設された連結部材21の内面に形成された凹窪部21a内に嵌合している。前記連結部材21は凸形断面形状のもので、内側突出部が中芯部材11に隣接する状態で両端部が帯状側板13a,13bに止めネジ22によって固定されている。この圧縮コイルバネ16の反発力によって把持指体1A,1Bは支軸14の周りを、下端のワーク把持用ローラー15が互いに接近移動する方向に閉動し、上端の制止部材18が把持指体支持部9の上端側延出部9aに当接することによって、閉動限で停止することになる(
図1、
図3参照)。この状態から把持指体1A,1Bの下端のワーク把持用ローラー15を外向きに押し広げると、両把持指体1A,1Bは、圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して支軸14の周りで開動し、中芯部材11の上端内側面が把持指体支持部9の下端側延出部9b(帯状板材10)に当接することにより、開動限で停止する(
図11参照)。
【0021】
ワーク把持用ローラー15は、
図3及び
図13に示すように、支軸23に外嵌された一方向回転ローラー本体15a、この一方向回転ローラー本体15aを軸方向両側から挟むように支軸23に嵌合され且つ外径が一方向回転ローラー本体15aの外径より大きな一対の円形板25a,25b、及びこれら一対の円形板25a,25b間で一方向回転ローラー本体15aに外嵌されたリング状弾性材26から構成されたもので、リング状弾性材26は、外径が一対の円形板25a,25bの外径とほぼ等しい大きさで、その弾性力で一方向回転ローラー本体15aの外周面に圧接固定されている。このワーク把持用ローラー15を支承する支軸23は、ワーク把持用ローラー15から突出する両端が帯状側板13a,13bの内側面に形成されている凹窪部27a,27bに嵌合した状態で、当該支軸23の両端が止めネジ24によって帯状側板13a,13bに固定されている。上記のように把持指体1A,1Bの下端に軸支されたワーク把持用ローラー15は、一方向回転ローラー本体15aの許容回転方向R(
図1及び
図3参照)にのみ自転可能となる。具体的には、把持指体1Aのワーク把持用ローラー15と把持指体1Bのワーク把持用ローラー15とは、
図1に矢印Rで示すように、互いに対面している周面が上動する方向にのみ自転可能となっている。一方向回転ローラー本体15aは種々の構造のものが市場に出回っている周知のものである。
【0022】
各把持指体1A,1Bには弾性当て部材28が設けられている。この弾性当て部材28は、ワーク把持用ローラー15の直上位置から中芯部材11の上端に取り付けられている連結部材21までの長さで、横巾が帯状側板13a,13bの外側面間の巾とほぼ等しい、把持指体1A,1Bの上下長さ方向に沿った縦長のもので、帯状バネ鋼板から成る基板29と、この基板29の表側に貼付された弾性材30とから構成されている。基板29は、帯状バネ鋼板を横断面が凹曲した樋状に成形したものであり、弾性材30は、合成樹脂やゴムによって厚板状に成形されたものであって、基板29の凹曲面に貼付されることにより、横断面が湾曲した樋状に変形している。この把持指体1A,1Bに対しては、弾性当て部材28における前記基板29の上半部の巾方向中央部が上下2本の止めネジ31によって中芯部材11にネジ止めされている。
【0023】
更に具体的に説明すると、前記止めネジ31は基板29に設けられたネジ挿通孔に内側から挿通され、この止めネジ31の頭部を覆うように基板29に弾性材30が貼付されるので、弾性材30の基板29に貼付される内側面には、止めネジ31の頭部が遊嵌する凹窪部32が設けられると共に、この凹窪部32と弾性材30の外側面との間にドライバー挿通孔33が設けられている。従って、ドライバー挿通孔33から凹窪部32内に挿入したドライバーによって止めネジ31を操作し、この止めネジ31によって中芯部材11に弾性当て部材28を取り付けることができる。このとき止めネジ31には、基板29を中芯部材11から浮かすための座金34が嵌められている。
【0024】
把持指体1A,1Bには、これら両把持指体1A,1Bが開いた状態でピッキング対象のワークに対して当該ワークの中心軸線に沿って接近移動したときに、当該ピッキング対象のワークの被把持部上端面を検出するための透過型光電センサー35A,35Bが取り付けられている。このセンサーの取り付けのために把持指体1A,1Bの中芯部材11は、弾性当て部材28の上半部を取り付ける領域から当該中芯部材11の下端までの下半部が、
図5及び
図6に示すように、弾性当て部材28の背面から離れるように一段低くなった薄肉部11aに形成され、更にこの薄肉部11aは、巾方向の中央部に下端からスリット11bが形成されて二股形状に構成されている。透過型光電センサー35A,35Bは、前記中芯部材11の薄肉部11a内に位置するようにスリット11bの片側に上下2本の止めネジ36によって取り付けられ、各透過型光電センサー35A,35Bの上端から延出している接続コード37a,37bは、中芯部材11のスリット11bと各把持指体1A,1Bの背面側の両帯状側板13a,13b間を経由して把持指体1A,1Bの上方に導かれている。尚、図示省略しているが、接続コード37a,37bが両帯状側板13a,13b間から外側に張り出さないように、コード押え金具で帯状板材10の背面や帯状側板13a/13bの内側面などに止着するか又は、両帯状側板13a,13bの外側辺間に薄板材から成るカバープレートを架設するのが望ましい。
【0025】
図1に示すように、両把持指体1A,1Bが内側に閉動限まで揺動した姿勢にあるとき、中芯部材11における薄肉部11aに取り付けられた透過型光電センサー35A,35Bが互いに平行な垂直姿勢になるように構成され、これら透過型光電センサー35A,35Bの取り付け位置は、投光側の透過型光電センサー35Aの投光器35aと受光側の透過型光電センサー35Bの受光器35bとが水平一直線上に位置するように設定されている。この投光器35aから受光器35bに至る光軸38は、両把持指体1A,1Bに取り付けられている弾性当て部材28の下端部を貫通する位置にあるので、両把持指体1A,1Bの弾性当て部材28には、基板29と弾性材30の両方に跨って下端から上向きに切込み凹入部39が形成され、この切込み凹入部39内を前記光軸38が通るように構成されている。
【0026】
以下、以上のように構成されたワーク把持装置の使用方法と作用を、
図7~
図11に基いて説明する。この使用方法では、ペットボトルPの上端小径口部Paに、上端直径よりも下端直径が少し大きな裁頭円錐形のキャップCがネジ嵌合により取り付けられた、ペットボトルPをピッキング対象のワークとしている。このペットボトルPは、例えば搬送用コンテナ内にバラ積みされていて、姿勢は決まっていないが、上方からの画像データの解析によりピッキング対象のペットボトルPが選択されると共に、当該ピッキング対象のペットボトルPの被把持部であるキャップCの位置及び姿勢が検索されて、上記のワーク把持装置を最終段ハンド2に備えたロボット機構に対する自動制御情報として伝送される。この自動制御情報を受けたロボット機構は、ピッキング対象のペットボトルPに対するワーク把持動作開始位置に向けて最終段ハンド2を移動させる。このときの最終段ハンド2に取り付けられているワーク把持装置の一対の把持指体1A,1Bは、
図1に示すように付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力で内側に閉動限まで揺動した初期姿勢にあって、且つ両把持指体1A,1B間の待機間隔は、ピッキング対象のペットボトルPにおける被把持部であるキャップCのサイズ情報やその周囲の空間状況などに基づいて決められているが、
図7では、両把持指体1A,1B間の待機間隔は最大限まで広げられた状態にある。更に、最終段ハンド2は、その軸心線CLの周りに自転して一対の把持指体1A,1Bの当該軸心の周りでの位相角を自在に変更できるものである。
【0027】
ワーク把持動作開始位置に到達した最終段ハンド2は、その軸心線CL上に被把持部であるキャップCが同心状に位置することになるが、このとき又はそれ以前に、必要に応じて最終段ハンド2が自転駆動され、前記初期姿勢にある一対の把持指体1A,1Bの軸心線CLの周りでの位相角も変更調整される。
図7に示すように、ワーク把持動作開始信号によって最終段ハンド2が軸心線CL上を前進移動することにより、前記初期姿勢にあって且つ所定の待機間隔(例えば最大間隔)に開いている一対の把持指体1A,1B間にピッキング対象のペットボトルPのキャップCが相対的に入り込むことになり、その直後に透過型光電センサー35A,35B間の光軸38がキャップCの上端によって遮られ、受光側の透過型光電センサー35BからキャップCの上端検出信号が出力される。このキャップCの上端検出信号によって、光軸38から一定距離だけ下にあるワーク把持用ローラー15の基準高さP1から所定距離(キャップCの上端検出時点からの移動距離)Dだけ下がった把持動作開始高さP2が演算され、ワーク把持用ローラー15が把持動作開始高さP2に達したときに、最終段ハンド2の軸心線CLに沿った移動が自動停止される。
【0028】
前記把持動作開始高さP2はワークによって異なるが、上記のペットボトルPの場合はキャップCの直下の環状の入隅部、即ち、上端小径口部Paとその上に被さっているキャップCとの間の環状の入隅部Pbである。ワーク把持用ローラー15が把持動作開始高さP2において自動停止すると、次に駆動用可動体4A,4Bが駆動されて一対の把持指体1A,1Bが互いに接近移動して、
図8に示すように、両把持指体1A,1Bの先端のワーク把持用ローラー15がペットボトルPのキャップCの直下の環状の入隅部Pbに直径方向両側から嵌入することになる。このときワーク把持用ローラー15がペットボトルP側から受ける反力で、両把持指体1A,1Bが付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して開動限姿勢まで支軸14の周りで揺動し、
図11に示すように両把持指体1A,1Bが互いに平行な直立状態になるまで、一対の把持指体1A,1Bのワーク把持動作が続行され、この結果、両把持指体1A,1Bの先端のワーク把持用ローラー15がペットボトルPのキャップCの直下の環状の入隅部Pbに所定の押圧力で嵌合する把持完了状態となる。この後は、ロボット機構の最終段ハンド2が、把持したペットボトルPを所定の場所に降ろすための動作を開始する。
【0029】
上記の一連のピッキング動作において、前記初期姿勢にあるときの両把持指体1A,1B間の待機間隔(ワーク把持用ローラー15間の間隔)が最大間隔に設定されていたので、
図7に示す把持動作開始高さP2にワーク把持用ローラー15が到達するまでの間に当該ワーク把持用ローラー15がキャップCの側面などに接触することは無いが、把持動作開始高さP2において両把持指体1A,1Bが互いに接近移動するとき、把持動作開始高さP2の誤差でワーク把持用ローラー15がキャップCの下端大径部の周縁に圧接しながらキャップ直下の環状の入隅部Pbに嵌入する状況になっても、その時のワーク把持用ローラー15の自転方向は、
図1に示すワーク把持用ローラー15(一方向回転ローラー本体15a)の許容回転方向Rとなるので、ワーク把持用ローラー15のリング状弾性材26の変形を伴いながら問題なく入隅部Pbに嵌入することができる。
【0030】
図11に示す把持完了後にペットボトルPを吊り上げて搬送するとき、ワーク把持用ローラー15とペットボトルPの入隅部Pbとの間の摩擦力にペットボトルPの重量が打ち勝つような状況である場合、そしてワーク把持用ローラー15の直径に対してペットボトルPの入隅部Pbの深さが浅いような場合には、ワーク把持用ローラー15が自由回転可能なものであると、これらワーク把持用ローラー15の前記許容回転方向Rとは逆方向の自転を伴ってワーク把持用ローラー15が入隅部PbからキャップCの外側面上に乗り上げる運動を伴って、ペットボトルPが一対の把持指体1A,1B間から下に抜け落ちることも考えられるが、上記の本発明の構成によれば、ワーク把持用ローラー15は前記許容回転方向Rにのみ自転可能であるから、上記のような条件の元でもペットボトルPが一対の把持指体1A,1B間から下に抜け落ちることは無い。
【0031】
以上の作用説明は、両把持指体1A,1Bが初期姿勢にあるときの両ワーク把持用ローラー15間の間隔が最大間隔に設定されていることが前提であるが、現実には、ピッキング対象のペットボトルPのキャップCの周囲にそれほどの空間が確保されていることは望めないし、可能ならば
図9に示すように、両把持指体1A,1Bが初期姿勢にあるときの両ワーク把持用ローラー15間の間隔L1を、キャップCの上端外径と等しくなる程度に小さく設定して使用することが望まれる。この場合は、キャップCが裁頭円錐形であるため、一対のワーク把持用ローラー15がキャップCの上端から下端に達する間、各ワーク把持用ローラー15(把持指体1A,1B)が付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して外側に広がりながら、そしてキャップCの下広がりの周面上を許容回転方向Rに自転しながら移動し、前記把持動作開始高さP2に達することになる。このときの両ワーク把持用ローラー15の外側への開動量 w1は、キャップCの上下端の半径差であり、ワーク把持用ローラー15(把持指体1A,1B)が閉動限から付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して外側に開動限まで揺動する最大開動量より十分に小さい。この後は、先に説明した通りの過程を経てペットボトルPのピッキングが行われるが、実際には、前記把持動作開始高さP2に達したワーク把持用ローラー15は、キャップCの最大径の下端を下方に通過しているので、両把持指体1A,1Bが付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力を受けて初期姿勢(閉動限位置)に戻る方向に移動し、ペットボトルPの前記入隅部Pbに入り込むことになる。勿論、最終的には先に説明した通り、一対の両把持指体1A,1Bは強制的に互いに接近する方向に駆動されて、互いに平行な直線状になるまで付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して開動するので、各ワーク把持用ローラー15は確実にペットボトルPの入隅部Pb内に押し込められる。
【0032】
上記
図9に基づく作用説明は、実際にピッキング動作を行うときのペットボトルPの被把持部であるキャップCの位置や姿勢、或いはロボット機構の最終段ハンド2がピッキング対象のペットボトルPに対するワーク把持動作開始位置にあるときの位置や姿勢、に誤差が無いと仮定してのものであるが、実際には、上記の位置や姿勢には種々の要因で誤差が生じる。この誤差によって、例えば
図9に示す一対のワーク把持用ローラー15間の間隔L1が広くなった場合は、
図7及び
図8に基づいて説明したように、基本的にはピッキング対象のペットボトルPのピッキング作業は問題なく行われる。しかしながら、
図9に示す一対のワーク把持用ローラー15間の間隔L1が許容範囲を超えて狭くなった場合は、例えば一対のワーク把持用ローラー15の片側又は両方がペットボトルPのキャップCの上端面に突き当たって、そのままピッキング作業を続行できないような異常事態になる。従って、上記の誤差には許容範囲を設定しなければならない。
【0033】
以下、具体的に説明すると、以上に説明した本発明のワーク把持装置においては、ワークを把持する一対の把持指体1A,1Bは、付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力で互いに接近する閉動限まで閉動した初期姿勢から、前記圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して開動限まで開動できるものであり、更にワークを把持するのは、一対の把持指体1A,1Bの先端に軸支され且つ互いに対面する周面が上動する許容回転方向Rにのみ自転可能なワーク把持用ローラー15である。従って
図10に示すように、片側だけのワーク把持用ローラー15で考えると、当該ワーク把持用ローラー15がキャップCの上端周縁を通る垂直仮想線に接する規定位置からキャップCの上端面側に、当該ワーク把持用ローラー15の半径より少し短い程度の巾、即ち、許容重なり代Sだけ張り出している状況であれば、キャップC側への押し付け力によって当該ワーク把持用ローラー15は、キャップCの上端周縁からキャップCの側面へと、許容回転方向Rの自転と、把持指体1Aの前記圧縮コイルバネ16の付勢力に抗しての開動を伴って、問題なく回り込むことができる。
【0034】
上記のことから、一対の把持指体1A,1Bが前記初期姿勢にあるときの両ワーク把持用ローラー15間の間隔を、キャップCの上端の直径と等しい間隔L1に設定していて、ロボット機構の最終段ハンド2の軸心線CLとキャップCの中心Caとの間のずれが、許容重なり代Sの1/2の範囲内であれば、一対のワーク把持用ローラー15の何れか一方が前記許容重なり代SだけキャップCの上端面側にずれるか又は、一対のワーク把持用ローラー15の両方がキャップCの上端面側にずれる場合は、両ワーク把持用ローラー15のずれ量の合計値が前記許容重なり代Sと等しくなり、ワーク把持用ローラー15が前記許容重なり代Sより大きくキャップCの上端面側にずれて、ワーク把持用ローラー15がキャップCの上端面に突き当たってピッキング作業を停止させなければならないような事態が生じる恐れはない。
【0035】
従って、一対のワーク把持用ローラー15間の間隔をキャップCの上端の直径と等しい間隔L1に設定し、各把持指体1A,1Bが閉動限の初期姿勢にある状態から付勢手段17の圧縮コイルバネ16の付勢力に抗して外側に開動して開動限に達するまでの各ワーク把持用ローラー15の開動量を、キャップCの上下端の半径差 w1+許容重なり代Sと等しいかそれより大きな開動量 w2に設定しておけば、両ワーク把持用ローラー15間の中心位置を通るロボット機構の最終段ハンド2の軸心線CLとキャップCの中心Caとの間のずれが、許容重なり代Sの1/2の範囲を超えない限り、両ワーク把持用ローラー15を、ペットボトルPのキャップ直下の環状の入隅部Pbに嵌入させるための把持動作開始高さP2まで確実に移動させることができる。
【0036】
両ワーク把持用ローラー15をペットボトルPのキャップ直下の環状の入隅部Pbに嵌入させた把持動作完了時には、
図11及び
図12に示すように、各把持指体1A,1Bの前記ワーク把持用ローラー15の直上に位置する弾性当て部材28の下半部が、ワーク把持用ローラー15が把持しているペットボトルPのキャップCを両側から把持している。この弾性当て部材28の下半部は、
図12に示すように、この弾性当て部材28の上半部が取り付けられている中芯部材11からは離れており、弾性材30と共に帯状バネ鋼板から成る基板29は3次元方向に自由変形が可能な状態にある。従って、閉動限の初期姿勢から開動限まで開動した両把持指体1A,1Bが更に互いに接近移動して、ペットボトルPのキャップCを強力に左右両側から挟持したとき、前記弾性当て部材28の下半部は、弾性材30の厚さ方向の圧縮変形と基板29の弾性変形を伴って、キャップCの周側面に沿って弾性変形する。即ち、ペットボトルPは、そのキャップ直下の環状の入隅部Pbに嵌入した一対のワーク把持用ローラー15と上端小径口部Paとの圧接と、これより上方位置での弾性当て部材28の下半部とキャップCの周側面との圧接の、左右両側上下2箇所が把持されることになるので、把持されたペットボトルPが一対の把持指体1A,1Bで把持されて吊上げ搬送される際、ペットボトルPが一対のワーク把持用ローラー15との圧接箇所を支点に、両把持指体1A,1Bを繋ぐ方向に対して直交する方向に揺れ動くことを抑止され、安定良く吊上げ搬送することができる。
【0037】
上記の構成では、帯状バネ鋼板から成る基板29の円弧形の初期横断面形状に沿って弾性材30も同じように横断面円弧形に変形しているが、
図13に示すように、この横断面円弧形の弾性材30の曲率半径がキャップCの円柱面に圧接されることによって大きくなり、横巾が増大するので、この弾性材30とキャップCの円柱面との間の圧接面のキャップCの周方向の長さが増大するが、当該弾性材30の基板29から張り出す巾方向両端部は、巾方向の中央部と比較してキャップCに対する押圧力が低下する。この点を解消して、弾性材30の巾方向両端部がキャップCの円柱面と強く圧接するように、
図15に示すように、弾性材30の横断面形状を、中央部30aの厚さが一番薄く、両端部30b,30cに至るほど厚さが漸増するように形成すれば、キャップCを把持したとき、弾性材30の中央部30aはキャップCの周面に圧接せずに、又は当接してもその圧接力は微弱であり、横断面形状における両端部30b,30cをキャップCの周面に強く圧接させることができる。
【0038】
上記のように構成することにより、ペットボトルPを一対の把持指体1A,1Bで把持したとき、各把持指体1A,1BとペットボトルPとの圧接箇所が、ワーク把持用ローラー15とペットボトルPの上端小径口部Paとの圧接箇所aと、弾性当て部材28の弾性材30の巾方向両端部30b,30cとキャップCとの圧接箇所b,cの3箇所となり、しかも圧接箇所b,cは圧接箇所aの上方左右両側に離れて位置するので、圧接箇所a,b,cは縦長倒立の二等辺三角形の各頂点に位置することになる。従って、把持されたペットボトルPの姿勢が安定良く保持される。
【0039】
本発明のワーク保持装置では、基本的には前記弾性当て部材28を使用せずに、一方向回転ローラー本体15aから成るワーク把持用ローラー15のみでワークを保持するように構成することができる。この場合、各把持指体1A,1Bの下端に軸支されたワーク把持用ローラー15のみでワークを保持するように構成することもできるが、好ましくは
図16に示すように、各把持指体1A,1Bに複数個のワーク把持用ローラーを取り付けて、ワークの保持力を増大させることができる。図示例では、各把持指体1A,1Bの先端に軸支されたワーク把持用ローラー15の上側に第二のワーク把持用ローラー40を取り付けている。
【0040】
具体構造としては種々考えられるが、図示の構造では、第二のワーク把持用ローラー40は、把持指体1A,1Bの左右両側に同心状の支軸41によって軸支された左右一対の揺動アーム42を設け、この左右一対の揺動アーム42の下端部間に第二のワーク把持用ローラー40を、ワーク把持用ローラー15と同一の軸支構造により軸支し、両揺動アーム42を圧縮コイルバネ43により相手側の把持指体1B,1Aに接近する方向に付勢している。44は、圧縮コイルバネ43による両揺動アーム42の揺動を制限するストッパー部材である。前記圧縮コイルバネ43は、両把持指体1A,1Bの中芯部材11に設けられた内側が開口する有底凹入孔45内に嵌入されて、外端が一対の揺動アーム42間に架設された連結板42aの内側に受け止められている。
【0041】
上記の構成では、両把持指体1A,1Bが互いに離間し且つ閉動限にある初期姿勢では、先端に第二のワーク把持用ローラー40を軸支している揺動アーム42は、圧縮コイルバネ43の付勢力で互いに接近する内側へ、ストッパー部材44に当接する位置まで揺動し、各把持指体1A,1Bの第二のワーク把持用ローラー40間の間隔が狭まった状態にあり、図示のように両把持指体1A,1Bが開動限位置において互いに接近し、ペットボトルPのキャップC直下の環状の入隅部Pbにワーク把持用ローラー15が嵌入して、当ペットボトルPを把持したとき、第二のワーク把持用ローラー40が、圧縮コイルバネ43の付勢力に抗する揺動アーム42の外側への揺動を伴ってキャップCの周側面に圧接することになる。従って、両把持指体1A,1Bによって把持されたペットボトルPは、左右一対のワーク把持用ローラー15とその上側に位置する左右一対の第二のワーク把持用ローラー40とによって把持されるので、左右一対のワーク把持用ローラー15のみで把持される場合と比較して、把持されて吊り下げられるペットボトルPが左右一対のワーク把持用ローラー15で把持された箇所を支点にして、両把持指体1A,1B間を結ぶ水平方向に対して直交する水平方向に揺れ動くことが無くなり、安定的に吊下げ搬送することができる。
【0042】
尚、
図16に示す構造はあくまで一例であって、両把持指体1A,1Bの構造を完全に変更することができるならば、例えば揺動アーム42を上下逆向きに配置して、支軸41から斜め上方に位置する揺動アーム42の上端間に第二のワーク把持用ローラー40を軸支すれば、この第二のワーク把持用ローラー40によるペットボトルPの吊下げ把持力を増大させることができる。又、左右一対の揺動アーム42も把持指体1A,1Bの帯状側板13a,13bの内側に配置することもできるし、或いは第二のワーク把持用ローラー40を、把持指体1A,1Bの帯状側板13a,13bに設けたスライドガイドに把持指体1A,1Bの長さ方向に対して直交する内外方向に直線状に一定範囲内で横動可能に構成して、内側から圧縮コイルバネにより外向きに付勢させることも可能である。
【0043】
更に、一対の把持指体1A,1Bを軸支する駆動用可動体4A,4Bを、互いに接近離間方向に開閉駆動させると共に3次元方向に移動させるためのロボット機構などは、周知の種々の手段を活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のワーク把持装置は、上端の小径口部にキャップが被せられたペットボトルのようなワークのピッキングに活用できる。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B 把持指体
2 ロボット機構の最終段ハンド
3a,3b レール状横動体
4A,4B 駆動用可動体
5,8,10a,12,19,22,24,31,36 止めネジ
6 基台部
7 ボルトナット
9 把持指体支持部
9a 上端側延出部
9b 下端側延出部
10 帯状板材
10b,21a,27a,27b,32 凹窪部
11 中芯部材
11a 薄肉部
11b スリット
13a,13b 帯状側板
14,23,41 支軸
15 ワーク把持用ローラー
15a 一方向回転ローラー本体
16,43 圧縮コイルバネ
17 付勢手段
18 制止部材
20 貫通孔
21 連結部材
25a,25b 円形板
26 リング状弾性材
28 弾性当て部材
29 帯状バネ鋼板から成る基板
30 弾性材
30a 弾性材の巾方向中央部
30b,30c 弾性材の巾方向両端部
33 ドライバー挿通孔
34 座金
35A,35B 透過型光電センサー
35a 投光器
35b 受光器
37a,37b 接続コード
38 光軸
39 切込み凹入部
40 第二のワーク把持用ローラー
42 左右一対の揺動アーム
42a 連結板
44 ストッパー部材
45 有底凹入孔
a~c 各把持指体とペットボトルとの圧接箇所
C キャップ
Ca キャップ軸心
CL 最終段ハンドの軸心線
D 所定距離(キャップCの上端検出時点からの移動距離)
P ペットボトル
w1,w2 ワーク把持用ローラーの開動量
Pa 上端小径口部
Pb キャップ直下の環状の入隅部
P1 ワーク把持用ローラーの基準高さ
P2 把持動作開始高さ
R ワーク把持用ローラーの許容回転方向
S 許容重なり代