(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078637
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】光沢度面分布量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/57 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
G01N21/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191862
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059EE02
2G059FF01
2G059JJ11
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】測定対象表面の領域に対する光沢度面分布量を簡易に測定することができる光沢度面分布量測定装置を提供すること。
【解決手段】測定対象表面Sに対して入射角θiの平行光を照射する光源6と、物体側テレセントリック光学系を形成し、正反射光に平行な光軸をもつ大口径凸レンズ10と、大口径凸レンズ10の像側焦点位置に光軸に対して垂直に配置されて光軸を中心として物体側の光軸に平行な正反射光のみを通過させる絞り孔が形成された第1絞り状態と、絞り孔を半径方向に広げて正反射光及び測定対象表面Sからの拡散反射光を通過させる拡大通過孔が形成された第2絞り状態とを切り替える絞り切替機構11と、絞り孔を通過した正反射光と拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量を測定する撮像センサ14と、正反射光及び拡散反射光の各光量をもとに測定対象表面Sの光沢度面分布量を算出する光沢度面分布量算出部5bとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象表面の光沢度面分布量を測定する光沢度面分布量測定装置であって、
前記測定対象表面に対して設定入射角の平行光を照射する光源と、
物体側テレセントリック光学系を形成し、前記平行光の正反射光に平行な光軸をもち前記測定対象表面からの反射光が入射される大口径凸レンズと、
前記大口径凸レンズの像側焦点位置に前記光軸に対して垂直に配置されて前記光軸を中心として物体側の光軸に平行な正反射光のみを通過させる絞り孔が形成された第1絞り状態と、前記絞り孔を半径方向に広げて前記正反射光及び前記測定対象表面からの拡散反射光を通過させる拡大通過孔が形成された第2絞り状態とを切り替える絞り切替機構と、
前記絞り切替機構の絞り切替により、前記絞り孔を通過した正反射光と前記拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量を測定する撮像センサと、
前記絞り孔を通過した正反射光と前記拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量をもとに前記測定対象表面の光沢度面分布量を算出する光沢度面分布量算出部と
を備えたことを特徴とする光沢度面分布量測定装置。
【請求項2】
測定対象表面の光沢度面分布量を測定する光沢度面分布量測定装置であって、
前記測定対象表面に対して設定入射角の平行光を照射する光源と、
物体側テレセントリック光学系を形成し、前記平行光の正反射光に平行な光軸をもち前記測定対象表面からの反射光が入射される大口径凸レンズと、
前記大口径凸レンズの像側焦点位置に前記光軸に対して垂直に配置されて前記光軸を中心として物体側の光軸に平行な正反射光のみを通過させる絞り孔に第1の色が形成された第1フィルタと、前記絞り孔の外周側に半径方向に広げて前記測定対象表面からの拡散反射光のみを通過させるリング通過孔に第2の色が形成された第2フィルタとを有するカラーフィルタと、
前記絞り孔を通過した前記第1の色の正反射光と前記リング通過孔を通過した第2の色の拡散反射光との各光量を測定する撮像センサと、
前記絞り孔を通過した正反射光と前記リング通過孔を通過した拡散反射光との各光量をもとに前記測定対象表面の光沢度面分布量を算出する光沢度面分布量算出部と
を備えたことを特徴とする光沢度面分布量測定装置。
【請求項3】
前記光沢度面分布量算出部は、画素ごと又は所定複数画素領域ごとの光沢度を算出して前記測定対象表面の光沢度面分布を前記光沢度面分布量として算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光沢度面分布量測定装置。
【請求項4】
基準測定対象表面に対する基準光沢度面分布量を予め求めておき、
前記光沢度面分布量算出部は、前記基準光沢度面分布量に規格化した規格化光沢度面分布量を算出することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光沢度面分布量測定装置。
【請求項5】
前記光沢度面分布量は、正反射光の光量を、正反射光及び拡散反射光の光量の和で除算した値であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の光沢度面分布量測定装置。
【請求項6】
前記光沢度面分布量は、正反射光の光量を、拡散反射光の光量で除算した値であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の光沢度面分布量測定装置。
【請求項7】
前記測定対象表面から反射される正反射光の反射角を新たな設定入射角に変更すべく前記測定対象表面の傾きを変更する傾き変更部と、
前記測定対象表面に対する前記光源の平行光の設定入射角を前記新たな設定入射角に変更する入射角変更部と
を備えたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の光沢度面分布量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象表面の領域に対する光沢度面分布量を簡易に測定することができる光沢度面分布量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の見栄えを管理するため、製品表面の光沢度を安定させることは重要である。ここで、光沢度計を用いると、製品表面の光沢度を定量化することができる。なお、プレス加工において、黒当たりなどは製品不具合発生の予兆として現れるが、この黒当たりなども光沢度を用いて評価することができる。
【0003】
特許文献1には、物体から得られる正反射光と拡散反射光の撮像画像の明度/色成分に基づき光沢度を検出する光沢感評価方法であって、物体への入射光に対して異なる受光開き角で受光する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、物体から得られる正反射光に基づき光沢度を検出する光沢特性評価方法であって、物体への入射光に対して異なる受光開き角で受光する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3には、光束の開き角を規定するスリットからの光で被検面を照射する照明部と、照明された光の被検面からの反射光による像を撮る撮像部と、照明部の入射角および撮像部の受光角を設定する操作部とを備え、設定された入射角および受光角により得られた反射光に基づき光学特性(光沢度)を求める構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-243353号公報
【特許文献2】特開2007-33099号公報
【特許文献3】特開2017-26466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の光沢度計は、平滑面での1点に対する光沢度を計測するものである。したがって、面的な光沢度の分布量を得るには、多大な労力と時間とを要するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、測定対象表面の領域に対する光沢度面分布量を簡易に測定することができる光沢度面分布量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、測定対象表面の光沢度面分布量を測定する光沢度面分布量測定装置であって、前記測定対象表面に対して設定入射角の平行光を照射する光源と、物体側テレセントリック光学系を形成し、前記平行光の正反射光に平行な光軸をもち前記測定対象表面からの反射光が入射される大口径凸レンズと、前記大口径凸レンズの像側焦点位置に前記光軸に対して垂直に配置されて前記光軸を中心として物体側の光軸に平行な正反射光のみを通過させる絞り孔が形成された第1絞り状態と、前記絞り孔を半径方向に広げて前記正反射光及び前記測定対象表面からの拡散反射光を通過させる拡大通過孔が形成された第2絞り状態とを切り替える絞り切替機構と、前記絞り切替機構の絞り切替により、前記絞り孔を通過した正反射光と前記拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量を測定する撮像センサと、前記絞り孔を通過した正反射光と前記拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量をもとに前記測定対象表面の光沢度面分布量を算出する光沢度面分布量算出部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、測定対象表面の光沢度面分布量を測定する光沢度面分布量測定装置であって、前記測定対象表面に対して設定入射角の平行光を照射する光源と、物体側テレセントリック光学系を形成し、前記平行光の正反射光に平行な光軸をもち前記測定対象表面からの反射光が入射される大口径凸レンズと、前記大口径凸レンズの像側焦点位置に前記光軸に対して垂直に配置されて前記光軸を中心として物体側の光軸に平行な正反射光のみを通過させる絞り孔に第1の色が形成された第1フィルタと、前記絞り孔の外周側に半径方向に広げて前記測定対象表面からの拡散反射光のみを通過させるリング通過孔に第2の色が形成された第2フィルタとを有するカラーフィルタと、前記絞り孔を通過した前記第1の色の正反射光と前記リング通過孔を通過した第2の色の拡散反射光との各光量を測定する撮像センサと、前記絞り孔を通過した正反射光と前記リング通過孔を通過した拡散反射光との各光量をもとに前記測定対象表面の光沢度面分布量を算出する光沢度面分布量算出部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記光沢度面分布量算出部は、画素ごと又は所定複数画素領域ごとの光沢度を算出して前記測定対象表面の光沢度面分布を前記光沢度面分布量として算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、基準測定対象表面に対する基準光沢度面分布量を予め求めておき、前記光沢度面分布量算出部は、前記基準光沢度面分布量に規格化した規格化光沢度面分布量を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記光沢度面分布量は、正反射光の光量を、正反射光及び拡散反射光の光量の和で除算した値であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記光沢度面分布量は、正反射光の光量を、拡散反射光の光量で除算した値であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記測定対象表面から反射される正反射光の反射角を新たな設定入射角に変更すべく前記測定対象表面の傾きを変更する傾き変更部と、前記測定対象表面に対する前記光源の平行光の設定入射角を前記新たな設定入射角に変更する入射角変更部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象表面の領域に対する光沢度面分布量を簡易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る光沢度面分布量測定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、撮像カメラの構成と第1絞り状態における正反射光及び拡散反射光の一例とを示す図である。
【
図3】
図3は、撮像カメラの構成と第2絞り状態における正反射光及び拡散反射光の一例とを示す図である。
【
図4】
図4は、絞り切替機構の第1絞り状態と第2絞り状態とを示す図である。
【
図5】
図5は、制御部による光沢度面分布量の算出処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、絞り切替機構に対応する変形例1のカラーフィルタの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、変形例2による光沢度面分布画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例4による入射角変更が可能な構成を有する光沢度面分布量測定装置の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、測定対象物に異なる傾きの測定対象表面を有する場合における変形例4の応用例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る光沢度面分布量測定装置について説明する。
【0019】
<概要構成>
図1は、本実施の形態に係る光沢度面分布量測定装置1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、光沢度面分布量測定装置1は、物体側テレセントリック光学系が形成された撮像カメラ8により、測定対象物100の測定対象表面Sからの正反射光及び拡散反射光を受光し、正反射光及び拡散反射光の各光量をもとに測定対象表面Sの光沢度面分布量を測定する。
【0020】
光沢度面分布量測定装置1は、装置本体1a、光源6及び撮像カメラ8を有する。光源6は、測定対象表面Sに対して予め設定される設定入射角である入射角θiの平行光を照射する白色光源である。ここで、測定対象表面Sに対する正反射光の反射角θrは入射角θiと同じ角となり、測定対象表面Sは、正反射光が撮像カメラ8の光軸に平行となるように配置される。なお、
図1では、設定入射角である入射角θiは20°に設定している。
【0021】
撮像カメラ8は、物体側テレセントリック光学系を形成し、光源6からの平行光の正反射光に平行な光軸をもち測定対象表面Sからの反射光が入射される大口径凸レンズ10と、大口径凸レンズ10の像側焦点位置に、光軸に対して垂直に配置されて光軸を中心として物体側の光軸に平行な正反射光のみを通過させる絞り孔が形成された第1絞り状態と、絞り孔を半径方向に広げて正反射光及び測定対象表面Sからの拡散反射光を通過させる拡大通過孔が形成された第2絞り状態とを切り替える絞り切替機構11と、絞り切替機構11の絞り切替により、絞り孔を通過した正反射光と拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量を測定する撮像センサ14とを有する。
【0022】
装置本体1aは、入力部2、表示部3、記憶部4、制御部5を有する。入力部2は、マウスやキーボードなどの入力インタフェースである。表示部3は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示インタフェースである。記憶部4は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。
【0023】
制御部5は、光沢度面分布量測定装置1の全体を制御する制御部であり、画像取得処理部5a及び光沢度面分布量算出部5bを有する。制御部5は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0024】
画像取得処理部5aは、光源6、及び、絞り切替機構11を含む撮像カメラ8を操作して測定対象表面Sの表面画像を取得する。画像取得処理部5aは、光源6から平行光を照射させ、絞り切替機構11を介して、第1絞り状態のときの表面画像である第1画像と、第2絞り状態のときの表面画像である第2画像とを撮像センサ14から取得する。第1画像は、正反射光のみを受光した画像であり、第2画像は、正反射光及び拡散反射光を受光した画像である。なお、拡散反射光は、撮像カメラ8に入力される拡散反射光であり、測定対象表面Sからの正反射光の周囲の拡散反射光である。したがって、計測される拡散反射光は、すべての拡散反射光の一部である。また、第1画像及び第2画像は、光強度を精度良く測定するため、光量が飽和しない一定露光時間で撮像される。
【0025】
光沢度面分布量算出部5bは、第1絞り状態において絞り孔を通過した正反射光と、第2絞り状態において拡大通過孔を通過した正反射光及び拡散反射光との各光量をもとに測定対象表面Sの光沢度面分布量を算出する。光沢度は、一般に、正反射光の光強度を入射光の光強度で除算した値に比例する。ここで、入射光の光強度の測定は困難であるため、本実施の形態では、入射光の光強度を、撮像カメラ8に入射された正反射光及び拡散反射光の光強度の和とする、みなし入射光の光強度として取り扱う。拡散反射光は、入射点から3次元的に反射し、撮像カメラ8では全ての拡散反射光を取得することはできないが、光沢度を評価する場合、正反射光側の周囲の拡散反射光が評価上有効な拡散反射光であり、本実施の形態では、この一部の拡散反射光を全ての拡散反射光とみなしてして光沢度を測定する。なお、光沢度の光強度は、一定露光時間内の光量として求められる。
【0026】
光沢度面分布量算出部5bは、測定対象表面S上の1点の光沢度ではなく、測定対象表面Sの面的な領域の光沢度である光沢度面分布量(取得光沢度面分布量)を求めている。したがって、取得光沢度面分布量は、第1画像の光量を、第2画像の光量で除算した値となる。この取得光沢度面分布量は、複数の測定対象表面Sに対する相対的な光沢度面分布量となるため、本実施の形態では、基準測定対象表面に対する基準光沢度面分布量を予め求めておく。そして、光沢度面分布量算出部5bは、取得光沢度面分布量を基準光沢度面分布量に規格化し、この規格化した規格化光沢度面分布量を光沢度面分布量として算出する。
【0027】
基準測定対象表面としては、例えば屈折率1.567であるガラス表面があげられる。このガラス表面は、JIS規格で、入射角20°のとき、反射率が5%の場合に光沢度100(%)としている材料である。なお、JIS規格では、入射角60°のとき、反射率が10%の場合に光沢度100(%)としている。本実施の形態では、基準光沢度面分布量を100(%)とし、取得光沢度面分布量を基準光沢度面分布量に規格化した規格化光沢度面分布量、例えば60(%)を光沢度面分布量として算出する。これにより、光沢度面分布量を定量的に計測することができる。なお、計測された光沢度面分布量は、表示部3あるいは記憶部4に出力される。
【0028】
<撮像カメラの構成>
図2は、撮像カメラ8の構成と第1絞り状態における正反射光L及び拡散反射光L1,L2の一例とを示す図である。また、
図3は、撮像カメラ8の構成と第2絞り状態における正反射光L及び拡散反射光L1,L2の一例とを示す図である。
図4は、絞り切替機構11の第1絞り状態と第2絞り状態とを示す図である。
【0029】
図2及び
図3に示すように、撮像カメラ8には、光軸Cに平行な測定対象表面Sからの正反射光をすべて入力できる大口径の入力領域を有して物体側テレセントリック光学系を形成する大口径凸レンズ10が測定対象表面S側に設けられる。大口径凸レンズ10は、大口径であるため、光軸C方向の厚みが大きくなるので、フレネルレンズとすることが好ましい。
【0030】
大口径凸レンズ10の像側の焦点FCには、絞り切替機構11が配置される。絞り切替機構11は、大口径凸レンズ10の光軸Cに対して垂直に配置されて焦点FCを中心として物体側の光軸Cに平行な正反射光Lのみを通過させる絞り孔11aを形成した第1絞り状態と、絞り孔11aを半径方向に広げて正反射光及び測定対象表面Sからの拡散反射光を通過させる拡大通過孔11bが形成された第2絞り状態とを切り替える。
【0031】
図2は、第1絞り状態における正反射光Lと拡散反射光L1,L2の光路を示している。なお、拡散反射光L1,L2は、撮像カメラ8に入射される拡散反射光の一例を示している。
図2に示すように、第1絞り状態では、全ての正反射光Lは、絞り孔11aを通過し、拡散反射光L1,L2は通過しない。一方、
図3は、第2絞り状態における正反射光Lと拡散反射光L1,L2の光路を示しており、第2絞り状態では、全ての正反射光L及び拡散反射光L1,L2は、拡大通過孔11bを通過する。
【0032】
図4に示すように、絞り切替機構11は、絞り孔11aが形成される第1絞り状態と、拡大通過孔11bが形成される第2絞り状態とが切り替えられる。絞り切替機構11は、例えば、絞り羽根によって形成される。なお、拡大通過孔11bは、撮像カメラ8の鏡筒の径と同等な径を有する全開状態を形成している。また、絞り羽根に限らず、第1絞り状態が形成された絞りと、第2絞り状態が形成された絞りとを交互に挿脱することによって切り替えてもよいし、第1絞り状態の絞りのみを挿脱することによって切り替えてもよい。
【0033】
絞り凸レンズ13は、絞り切替機構11を通過した光を撮像センサ14上に結像させる。撮像センサ14は、第1絞り状態の第1画像及び第2絞り状態の第2画像を撮像する。
【0034】
<光沢度面分布量の算出処理>
図5は、制御部5による光沢度面分布量の算出処理手順を示すフローチャートである。
図5に示すように、制御部5は、まず光源6からの平行光を、測定対象表面Sに対して入射角θi、例えば入射角20°とし、測定対象表面Sからの正反射光が撮像カメラ8の光軸に平行となるように測定対象表面Sが配置された状態で、光源6から平行光を測定対象表面Sに照射する(ステップS110)。その後、制御部5は、絞り切替機構11を第1絞り状態にし(ステップS120)、撮像センサ14から正反射光のみの第1画像を取得する(ステップS130)。その後、制御部5は、絞り切替機構11を第2絞り状態にし(ステップS140)、正反射光及び拡散反射光の第2画像を取得する(ステップS150)。
【0035】
その後、制御部5は、第1画像の光量を、第2画像の光量で除算した値を取得光沢度面分布量として算出する(ステップS160)。さらに、制御部5は、取得光沢度面分布量を予め求めた基準光沢度面分布量に規格化し、この規格化した規格化光沢度面分布量を光沢度面分布量として算出し(ステップS170)、表示部3あるいは記憶部4に出力して本処理を終了する。なお、基準光沢度面分布量は、基準測定対象表面に対し、取得光沢度面分布量の算出と同じ処理を施すことによって予め求めておく。
【0036】
なお、JIS規格では、入射角として20°、45°、60°、75°、85°が規定されているが、これにこだわる必要はない。なお、入射角20°での規格化光沢度面分布量が30(%)以下の場合、入射角θiを増大し、例えば、入射角60°での規格化光沢度面分布量を求めて測定解像度を高くすることが好ましい。
【0037】
また、上記の実施の形態では、基準測定対象表面としてガラス面(鏡面反射面)を用い、ガラス面に対する光沢度面分布量を基準光沢度面分布量としていたが、これに限らず、測定対象表面Sの適正な光沢度面分布量を基準光沢度面分布量としてもよい。この基準光沢度面分布量は、マスタデータとして記憶部4に記憶しておき、取得光沢度面分布量が基準光沢度面分布量の±15%を超える場合に、光沢度が不適であると評価する。これにより、光沢度が一定範囲内の製品を安定して管理することができる。
【0038】
<変形例1>
図6は、絞り切替機構11に対応する変形例1のカラーフィルタ21の構成を示す図である。カラーフィルタ21は、絞り孔11aに対応する領域に第1の色(赤)で着色されたフィルタである第1フィルタF1が形成され、絞り孔11aを通過する正反射光は第1の色に変換される。一方、絞り孔11aの外周側に半径方向に広げて測定対象表面Sからの拡散反射光のみを通過させるリング通過孔11cに第2の色(青)で着色されたフィルタである第2フィルタF2が形成され、リング通過孔11cを通過する拡散反射光は第2の色に変換される。
【0039】
これにより、取得光沢度面分布量は、第1の色の光量を、第1の色の光量と第2の色の光量との和で除算することによって求めることができる。
【0040】
この変形例1では、絞り切替機構11のように第1絞り状態と第2絞り状態とに切り替える必要がなく、1回の撮像により取得光沢度面分布量を求めることができる。
【0041】
<変形例2>
上記の実施の形態及び変形例1では、いずれも面として平均的な光沢度面分布量を求めていたが、本変形例2では、光沢度面分布量算出部5bが、画素ごと又は所定複数画素領域ごとの光沢度を算出して測定対象表面Sの光沢度面分布を光沢度面分布量として算出するようにしている。光沢度面分布が得られるのは、
図3に示すように、拡散反射光の出射の位置P1が、撮像センサ14が受光する拡散反射光の位置P2に対応するからである。
【0042】
これにより、例えば
図7に示すように光沢度面分布を求めることができる。
図7に示した光沢度面分布画像Dでは、光沢度が低い領域E1と光沢度が高い領域E2とを有する光沢度面分布が得られている。領域E1は、所定光沢度よりも低い光沢度の領域であり、領域E2は、所定光沢度以上の高い光沢度の領域である。なお、光沢度面分布画像Dは、所定光沢度により領域分離していたが、これに限らず、光沢度の値をさらに細分化したカラー分布あるいは明度分布としてもよい。
【0043】
<変形例3>
上記の実施の形態及び変形例1,2では、正反射光の光量を、正反射光及び拡散反射光の光量で除算した値として光沢度面分布量を求めていたが、これに限らず、正反射光の光量を拡散反射光のみの光量で除算した値を光沢度面分布量として算出して評価するようにしてもよい。
【0044】
<変形例4>
本変形例4では、入射角θiを変更する場合、測定対象表面Sの傾き及び光源6の位置を自動で変更するようにしている。例えば、
図8に示すように、入射角20°を入射角60°に変更する場合、傾き変更部31は、測定対象表面Sから反射される正反射光の反射角θrを新たな設定入射角である入射角60°に変更すべく測定対象表面Sの傾きを変更する。さらに、入射角変更部32は、測定対象表面Sに対する光源6の平行光の設定入射角である入射角20°を新たな設定入射角である入射角60°に変更するために光源6の位置及び向きを変更する。なお、自動変更でなく、入力部2を操作部として手動変更するようにしてもよい。
【0045】
なお、
図9に示すように、測定対象物100が異なる傾きの測定対象表面S´を有する場合、傾き変更部31は、測定対象物100を移動させるとともに、測定対象表面S´の反射角を調整する。また、入射角変更部32は、測定対象表面S´に対する入射角20°を確保するため、光源6を移動させるとともに、光源6の向きを変更させる。
【0046】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の光沢度面分布量測定装置は、測定対象表面の領域に対する光沢度面分布量を簡易に測定したい場合に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 光沢度面分布量測定装置
1a 装置本体
2 入力部
3 表示部
4 記憶部
5 制御部
5a 画像取得処理部
5b 光沢度面分布量算出部
6 光源
8 撮像カメラ
10 大口径凸レンズ
11 絞り切替機構
11a 絞り孔
11b 拡大通過孔
11c リング通過孔
13 絞り凸レンズ
14 撮像センサ
21 カラーフィルタ
31 傾き変更部
32 入射角変更部
100 測定対象物
C 光軸
D 光沢度面分布画像
E1,E2 領域
F1 第1フィルタ
F2 第2フィルタ
FC 焦点
L 正反射光
L1,L2 拡散反射光
P1,P2 位置
S 測定対象表面
θi 入射角
θr 反射角