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  • 特開-車輪、及び、再帰反射加工方法 図1
  • 特開-車輪、及び、再帰反射加工方法 図2
  • 特開-車輪、及び、再帰反射加工方法 図3
  • 特開-車輪、及び、再帰反射加工方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078653
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】車輪、及び、再帰反射加工方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 1/02 20060101AFI20230531BHJP
   B60B 21/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B60B1/02
B60B21/00 K
B60B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191887
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】599056530
【氏名又は名称】株式会社小松プロセス
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利也
(72)【発明者】
【氏名】田中 修次
(72)【発明者】
【氏名】石田 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽仁
(72)【発明者】
【氏名】嵐 正晴
(57)【要約】
【課題】 暗所における視認性又はデザイン性を向上させた車輪を提供する。
【解決手段】 本実施形態における再帰反射加工方法は、車輪のスポークの一部、又は、スポークの近傍にある他の部品の少なくとも一部をマスキングする工程と、前記マスキングが行われたスポークに、再帰反射層を形成する工程とを有する。好適には、前記マスキングする工程において、前記スポークと、リムとを接合する接合部品をマスキングする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪のスポークの一部、又は、スポークの近傍にある他の部品の少なくとも一部をマスキングする工程と、
前記マスキングが行われたスポークに、再帰反射層を形成する工程と
を有する再帰反射加工方法。
【請求項2】
前記マスキングする工程において、前記スポークと、リムとを接合する接合部品をマスキングする
請求項1に記載の再帰反射加工方法。
【請求項3】
前記マスキング工程において、前記車輪のスポーク全体で特定の模様となるように、複数のスポークにマスキングする
請求項1に記載の再帰反射加工方法。
【請求項4】
前記再帰反射層を形成する工程は、
前記マスキングされたスポークの全周に、光輝材が含まれた塗料を塗布する工程と、
塗布された塗料の層に対して、再帰反射するガラスビーズの一部を埋め込んで、前記再帰反射層を形成する工程と
を含む
請求項1に記載の再帰反射加工方法。
【請求項5】
スポークと、
前記スポークの少なくとも一部の全周に形成された再帰反射層と
を有する車輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪、及び、再帰反射加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ホイールキャップ本体6の表面に、表面にガラスビーズ層10を有する再帰反射体7を一体形成することにより、再帰反射部を設け、夜間、車体側部側からホイールキャップの表面に当たった光を、再帰反射部によって反射させ、夜間であっても車体側部側の離れた場所からの視認を可能とするホイールキャップが開示されている。
また、特許文献2には、円錐台形状のホイールカバーの表面に、皺や気泡を生じさせず、かつ、反射性を損なわずに再帰反射装飾フィルムを取付孔に至るまでに剥がれることなく貼付された自転車用ホイールカバーが開示されている。
特許文献3には、車輌用ホイールの表面に任意の再帰反射材を設けたことを特徴とする反射ホイールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-019402号公報
【特許文献2】特開2020-079020号公報
【特許文献3】特開2000-016001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、暗所における視認性又はデザイン性を向上させた車輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る再帰反射加工方法は、車輪のスポークの一部、又は、スポークの近傍にある他の部品の少なくとも一部をマスキングする工程と、前記マスキングが行われたスポークに、再帰反射層を形成する工程とを有する。
【0006】
好適には、前記マスキングする工程において、前記スポークと、リムとを接合する接合部品をマスキングする。
好適には、前記マスキング工程において、前記車輪のスポーク全体で特定の模様となるように、複数のスポークにマスキングする。
【0007】
好適には、前記再帰反射層を形成する工程は、前記マスキングされたスポークの全周に、光輝材が含まれた塗料を塗布する工程と、塗布された塗料の層に対して、再帰反射するガラスビーズの一部を埋め込んで、前記再帰反射層を形成する工程とを含む。
【0008】
また、本発明に係る車輪は、スポークと、前記スポークの少なくとも一部に形成された再帰反射層とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、暗所における視認性又はデザイン性を向上させた車輪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における自転車の再帰反射加工処理(S10)を説明するフローチャートである。
図2図1の再帰反射加工処理(S10)により形成される再帰反射層の断面を模式的に説明する図である。
図3】再帰反射加工が施された自転車1を横方向から光を当てて撮影した写真である。
図4】再帰反射加工が施された自転車(右側)と、再帰反射加工が施されていない自転車(左側)とを縦方向から光を当てて撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
図1は、本実施形態における自転車の再帰反射加工処理(S10)を説明するフローチャートである。
図1に例示するように、ステップ100(S100)において、自転車のスポーク100及びリム102に対して、脱脂処理を施す。脱脂処理は、例えば、研磨剤を吹き付けて行ってもよいし、高温の水蒸気を吹き付けて行ってもよいし、溶剤によって拭き取ってもよい。なお、本例では、スポーク100及びリム102が組み上げられた状態で再帰反射加工が行われる場合を具体例として説明するが、スポーク100及び102をばらばらにした状態(部品にばらした状態)で再帰反射加工を行ってよい。
【0012】
ステップ105(S105)において、脱脂処理が施されたスポーク100及びリム102の一部に対して、マスキングを行う。マスキング工程では、例えば、スポーク100と、リム102とを接合する接合部品(ニップル)のみをマスキングテープで覆ってもよいし、車輪のスポーク全体で特定の模様となるように、複数のスポーク100の一部にマスキングしてもよい。また、リム102全体をマスキングしてもよい。接合部品(ニップル)をマスキングして、接合部品が塗料で固着されることを防止することにより、車輪10のメンテナンス時において、スポーク100をリム102から容易に外すことができる。同様に、ハブの一部(接合領域)やタイヤ部もマスキングする。
【0013】
ステップ110(S110)において、マスキングされたスポーク100及びリム102に対して、プライマーを均一に塗布する。
ステップ115(S115)において、プライマーが塗布されたスポーク100及びリム102を自然乾燥させる。乾燥時間は、例えば、20分~60分程度である。
【0014】
ステップ120(S120)において、プライマーを塗布し乾燥させたスポーク100及びリム102に対して、光輝材が含まれた塗料を均一に塗布する。塗料が塗布される領域は、スポーク100の全周にわたる。すなわち、マスキングされた領域を除き、スポーク100の全周に対して、均一な膜厚となるように塗料が塗布される。塗料の塗布作業において、組み上げられたスポーク100及びリム102を等速度で回転させながら、塗装機によりノズルを動かしながら塗料を塗布する。
【0015】
ステップ125(S125)において、塗料が塗布されたスポーク100及びリム102に対して、再帰反射するガラスビーズ212を吹き付ける。スポーク100及びリム102の表面に形成された塗料層に、吹き付けられたガラスビーズ212の一部が埋め込まれる。ガラスビーズの吹き付けも、ステップ120と同様に、等速度で回転させながら均一に行われる。
【0016】
ステップ130(S130)において、ガラスビーズを吹き付けた後、スポーク100及びリム102を常温で乾燥させる。乾燥時間は10時間以上である。
ステップ135(S135)において、乾燥後に、焼き付けを行う。焼き付けは、例えば、80℃で20分程度行われる。これにより塗料が固化し、ガラスビーズ212がスポーク100の表面に固定される。
【0017】
図2は、図1の再帰反射加工処理(S10)により形成される再帰反射層の断面を模式的に説明する図である。
図2に例示するように、スポーク100(基材)の表面に形成される再帰反射層は、プライマー層200と、反射層210とを含む。
プライマー層200は、図1のプライマー塗装工程(S110)及び自然乾燥工程(S115)に形成された層であり、基材と反射層210の間に位置し、反射層210を基材(スポーク100)の表面に強く固着させる。
【0018】
反射層210は、光輝材214が含まれた塗料層と、再帰反射するガラスビーズ212とを有する。光輝材214は、ガラスビーズ212の周囲に配置され、光を反射させる性質を向上させる。そのため、再帰反射時の視認性を向上させることが期待できる。
【0019】
塗料層に含まれる光輝材214は、光輝性のある材料であり、光を反射させる性質を備える。光輝材214は、例えば、雲母(マイカ)、酸化チタン被覆マイカ、アルミペースト、又は、ガラスフレーク金属蒸着TiO2顔料等の微粒子である。なお、本例の塗料層は、マイカである反射材を含むことにより、再帰反射時に白色の光を発色する。
塗料層を構成する塗料は、透明性のある樹脂であり、例えば、ポリエステル系樹脂などの合成樹脂である。
【0020】
ガラスビーズ212は、再帰反射性の高い透明ビーズである。ガラスビーズ212は、例えば、屈折率1.50~2.20の球形ガラスであり、好ましくは、屈折率1.90~2.20の球形ガラスである。また、このガラスビーズ212の直径は、例えば、10μm~150μmであり、好ましくは、45μm~75μmである。なお、本例のガラスビーズ212は、屈折率1.93、かつ、直径45μm~75μmのガラスビーズである。また、ガラスビーズ212の比重は、4.2±0.1である。
本例のガラスビーズ212は、屈折率1.93のガラスビーズであるため、空気中から入射した光をガラスビーズ212の表面で屈折させ、屈折させた光をガラスビーズ212の内部を通過してその底面に焦点を結ぶ。一部は底面からガラスビーズ212の外に出ていくが、焦点への入射した角度と同じ角度で反射し、反射させた光を再びガラスビーズ212の表面で屈折させ、光を入射した方向と同方向にガラスビーズ212から出射させる。このように、本例のガラスビーズ212は、空気中から入射する光を再帰反射させるガラスビーズである。
また、ガラスビーズ212は、直径の1/3以上が塗料層から露出した状態で、プライマー層200を介して基材の表面に固着されている。本例のガラスビーズ212は、直径の1/2が露出した状態で固着されている。
【0021】
図3は、再帰反射加工が施された自転車1を横方向から光を当てて撮影した写真である。
図3に示すように、再帰反射加工が施された車輪10のスポーク100及びリム102は、強く再帰反射して、暗所でも容易に視認できる。本例では、スポーク100全体に一様に再帰反射加工が施されており、全体に再帰反射しているが、マスキングによってスポーク100の一部のみを再帰反射加工した場合には、マスキングの位置に対応した模様が形成され、暗所においてデザイン性の高い自転車1となる。
【0022】
図4は、再帰反射加工が施された自転車(右側)と、再帰反射加工が施されていない自転車(左側)とを縦方向から光を当てて撮影した写真である。
図4からも明らかなように、再帰反射加工が施された自転車の車輪10が強く再帰反射している。図3及び図4から明らかなように、スポーク100の全周に再帰反射加工を施すことにより、いずれの方向から光を当てても再帰反射する。すなわち、暗所において、いずれの方向からでも高い視認性を実現できる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態における再帰反射加工処理によれば、暗所において視認性及びデザイン性の高い自転車1を提供することができる。
また、本実施形態の再帰反射加工処理は、再帰反射する反射シートや反射ラベルと比較して、多様な表面形状に対して加工を施すことができる。例えば、立体形状に加工する場合、反射シートや反射ラベルだとシワや剥がれが生じる恐れあるが、本例の再帰反射加工処理によれば、そのような場所への塗装が可能となる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0024】
次に、上記実施例における変形例を説明する。
上記実施形態では、自転車1の車輪に対して、再帰反射加工処理を施した形態を具体例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、車イスや自動二輪車の車輪に対して、再帰反射加工処理を施してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 自転車
10 車輪
100 スポーク
102 リム
200 プライマー層
210 反射層
212 ガラスビーズ
214 光輝材
図1
図2
図3
図4