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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078691
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20230531BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A47J27/14 Z
H05B6/12 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191942
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】591186176
【氏名又は名称】株式会社 ゼンショーホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 涼都
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 新
【テーマコード(参考)】
3K151
4B054
【Fターム(参考)】
3K151AA36
3K151BA11
3K151CA05
3K151CA56
4B054AA16
4B054AA30
4B054AC08
4B054AC20
4B054BA08
4B054BB11
4B054CH02
4B054CH12
(57)【要約】
【課題】同一の調理容器内で調理物の調理と保温との両方を行うことが可能な加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置100は、鍋1を加熱する加熱部20と、加熱部20を制御する制御装置50と、を備え、制御装置50は、加熱部20から鍋1に加えられる熱量が、鍋1の深さ方向に垂直な前後方向において前側よりも後側のほうが多くなるように加熱部20を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記加熱部から前記調理容器に加えられる熱量が、前記調理容器の深さ方向に垂直な所定の一方向において一方側よりも他方側のほうが多くなるように前記加熱部を制御する加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記加熱部は、前記一方向において前記他方側に偏って配置される加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱装置であって、
前記加熱部は、
前記調理容器の底壁のうち前記一方向において前記一方側にある一部領域を加熱せずに前記他方側にある一部領域を加熱する底壁加熱部と、
前記調理容器の側壁のうち前記一方向において前記一方側にある一部領域を加熱せずに前記他方側にある一部領域加熱する側壁加熱部と、を有する加熱装置。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記加熱部は、前記一方側を加熱する第1加熱部と、前記他方側を加熱する第2加熱部と、を有し、
前記制御装置は、前記第2加熱部が発生する熱量が、前記第1加熱部が発生する熱量よりも大きくなるように、前記第1加熱部及び前記第2加熱部を制御する加熱装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の加熱装置であって、
前記調理容器内の被調理物の容量を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記検出手段によって検出された前記被調理物の容量に基づいて前記加熱部を制御する加熱装置。
【請求項6】
請求項3に記載の加熱装置であって、
前記調理容器内の被調理物の容量を検出する検出手段をさらに備え、
前記側壁加熱部は、
第1側壁加熱部と、
前記第1側壁加熱部よりも前記調理容器の深さ方向において前記底壁側に設けられる第2側壁加熱部と、を有し、
前記制御装置は、
記調理容器内の前記被調理物の容量が第1閾値以上であって第2閾値よりも小さい場合には、前記第1側壁加熱部による加熱を停止し、前記底壁加熱部及び前記第2側壁加熱部によって前記調理容器を加熱し、
記調理容器内の前記被調理物の容量が前記第2閾値以上である場合には、前記第1側壁加熱部、前記第2側壁加熱部、及び前記底壁加熱部によって前記調理容器を加熱する加熱装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の加熱装置であって、
前記検出手段は、温度を検出する温度センサである加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器を加熱する加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理容器内の被調理物を加熱調理する加熱調理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-194903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲食店では、調理された調理物は、提供されるまでの間は保温状態で保存される。一般に、調理する温度と保温する温度とは異なるため、追加で調理を行う場合には、ある加熱装置で調理済みの調理物を保温し、別の加熱装置で新たに調理を行うといった場合がある。つまり、調理物の調理と保温とは、別々の調理容器や加熱装置によって行われることがある。
【0005】
しかしながら、調理物の調理と保温とを別の機器で行うと、その分だけ設備コストが発生し、容器の移動・交換等の作業も発生する。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、同一の調理容器内で調理物の調理と保温との両方を行うことが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、調理容器を加熱する加熱部と、加熱部を制御する制御装置と、を備え、加熱部から調理容器に加えられる熱量が、調理容器の深さ方向に垂直な所定の一方向において一方側よりも他方側のほうが多くなるように構成される加熱装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、加熱装置は、一方向における一方側と他方側とで加熱部から調理容器に加えられる熱量が異なるため、一方側で調理物を保温し、他方側で調理物を調理するようにして、同一の調理容器内において保温と調理の両方と行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る調理装置の構成を示す断面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る鍋の本体部の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る鍋及び加熱部を示す右側面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る鍋及び加熱部を示す底面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る鍋及び加熱部を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る加熱装置100及びこれを備える調理装置101について説明する。以下では、図1等に示すように、直交三軸を設定する。X軸方向の一方側を「前」、他方側を「後」とし、X軸方向を「前後方向」とも称する。また、Y軸方向の一方側を「左」、他方側を「右」とし、Y軸方向を「左右方向」とも称する。また、Z軸方向の一方側を「上」、他方側を「下」とし、Z軸方向を「上下方向」とも称する。本実施形態では、Z軸方向(上下方向)は、鉛直方向に平行である。
【0011】
調理装置101は、食材を調理するための自動調理装置である。具体的には、調理装置101は、例えば店舗に設置され、食材(肉、魚又は野菜等)を調理して(煮込んで)料理を提供する。調理装置101は、煮込みの他に例えば、炒め、蒸し、茹で又は揚げ等の調理に用いられてもよい。以下では、被調理物が牛丼等の肉煮料理である場合を例に説明する。肉煮料理は、具材をタレと共に煮込むことで調理される。
【0012】
図1及び図2に示すように、調理装置101は、被調理物が投入される調理容器としての鍋1と、鍋1を加熱する加熱装置100と、を備える。
【0013】
鍋1は、図1から図3に示すように、上部に開口を有する有底の箱状の容器である本体部2と、本体部2の内側を2つの空間に仕切る仕切板9と、を有する。本体部2及び仕切板9は、それぞれ金属製である。
【0014】
本体部2は、図3に示すように、上下方向の下方からみた底面視で略四角形の底壁3と、底壁3の四角形状の各辺から上方に延びる4つの側壁4L,4R,4F,4Bと、を有する。
【0015】
底壁3は、上下方向に対して垂直な平板状に形成される。以下、底壁3に垂直な方向を鍋1の深さ方向とも称する。鍋1は、その深さ方向が上下方向に沿うように後述する加熱装置100の筐体10に設置される。
【0016】
底壁3には、鍋1の内容物を排出するための排出孔3aが形成される(図1参照)。排出孔3aには配管Pが接続され、配管Pを通じて残存した内容物等を鍋1内から排出できるようになっている。また、排出孔3a及び配管Pが設けられることで、鍋1を筐体10から取り外すことなく、鍋1を洗浄し、洗浄に利用した水等を鍋1から排出することができる。
【0017】
図1から図3に示すように、各側壁4L,4R,4F,4Bは、底壁3に垂直な方向(上下方向)に対して傾斜するテーパ部5L,5R,5F,5Bと、上下方向に沿って平行に設けられる上壁部6L,6R,6F,6Bと、を有する。各側壁4L,4R,4F,4Bの上壁部6L,6R,6F,6Bによって、略四角形の開口が形成される。各側壁4L,4R,4F,4Bの上壁部6L,6R,6F,6Bと底壁3とは、各側壁4L,4R,4F,4Bのテーパ部5L,5R,5F,5Bによって接続される。
【0018】
図1に示すように、前後の側壁4F、4Bのテーパ部5F,5Bは、上方に向かうにつれて底壁3から遠ざかるように前後に延びるように傾斜する。図2に示すように、左右の側壁4L,4Rのテーパ部5L,5Rは、上方に向かうにつれて底壁3から遠ざかるように左右に延びるように傾斜する。よって、鍋1内においてテーパ部5L,5R,5F,5Bに囲まれる領域では、単位高さ当たりの容量が下方に向かうにつれて小さくなる。したがって、内容量が少なくなっても、液面を高く保つことができるため、内容物の取り出しが容易となる。
【0019】
また、後側及び左右の側壁4B,4L,4Rのテーパ部5B,5L,5Rは、底壁3に対する傾斜角が同一である。前側の側壁4Fのテーパ部5Fは、他の三方の側壁4B,4L,4Rのテーパ部5B,5L,5Rよりも底壁3からの傾斜角が小さく形成される。つまり、前側の側壁4Fのテーパ部5Fは、他の三方の側壁4B,4L,4Rのテーパ部5B,5L,5Rよりも、底壁3に対してなだらかである。各側壁4L,4R,4F,4Bのテーパ部5L,5R,5F,5Bの底壁3から高さ(上下方向の距離)は、互いに同一である。
【0020】
仕切板9は、着脱可能に本体部2の内側に取り付けられる。仕切板9は、前後方向に対して垂直な板状部材であって、上下方向の全体にわたって本体部2の内側に設けられる。仕切板9を本体部2に取り付けることで、本体部2の内側空間は、前後方向に並ぶ2つの空間(以下、「前側空間FS」、「後側空間BS」とも称する。)に仕切られる。また、仕切板9は、前後方向に沿って本体部2の内側でスライド可能に設けられる。これにより、前側空間FS及び後側空間BSの大きさを調整することができる。仕切板9には、一又は複数の貫通孔9aが設けられており、仕切板9によって仕切られた2つの空間は、仕切板9の貫通孔9aを通じて連通している。
【0021】
加熱装置100は、鍋1を収容する収容空間ASを形成する筐体10と、収容空間ASに収容された鍋1を加熱する加熱部20と、鍋1の内容物(被調理物)の容量を検出する検出手段としての温度センサ40と、加熱部20を制御する制御装置50と、を有する。
【0022】
筐体10は、直方体状の箱であり、筐体10の内部には、鍋1の本体部2を支持する底部支持壁11及び側部支持壁12が設けられる。鍋1は、底部支持壁11に載置される。側部支持壁12は、鍋1の本体部2の側壁4L,4R,4F,4Bの上壁部6L,6R,6F,6Bを外側から囲うように支持する。鍋1は、本体部2が底部支持壁11及び側部支持壁12に接触することで、筐体10内で位置決めされる。このように、底部支持壁11及び側部支持壁12の内側に、鍋1の本体部2を収容可能な収容空間ASが形成される。収容空間ASは、筐体10の天板に開口しており、開口を通じて鍋1を収容空間ASに収容することができる。
【0023】
加熱部20は、図4及び図5に示すように、鍋1の本体部2の底壁3を加熱する底壁加熱部22と、本体部2の側壁4L,4R,4Bを加熱する側壁加熱部と、を有する。なお、以下では、図4及び図5に示すように、鍋1を通り鍋1の前後方向の略中央において前後方向に垂直な仮想の基準面RPを設定して、加熱部20の構成について説明する。本実施形態では、鍋1の仕切板9は、基準面RPと略同じ位置に設けられる。
【0024】
底壁加熱部22は、電磁誘導によって鍋1を加熱する加熱コイルである。底壁加熱部22は、筐体10の底部支持壁11に埋め込まれる。底壁加熱部22は、図5に示すように、下方から見た底面視において、略長円形に形成される。底壁加熱部22は、左右方向において底壁3の幅に対して略全域に設けられる一方、前後方向においては、底壁3の前側の一部には設けられない。底壁加熱部22は、基準面RPよりも後側の底壁3の全域と基準面RP寄りの前側の一部領域とにわたって設けられる。別の観点からいえば、底壁加熱部22は、その中心C1が、底壁3の長方形状の中心C2よりも前後方向において後側に位置している。このように、底壁加熱部22は、前後方向において後側に偏って配置され、鍋1の前側の一部を加熱せずに後側の一部を加熱する。
【0025】
側壁加熱部は、図4に示すように、第1側壁加熱部23と、第1側壁加熱部23よりも上下方向において底壁側(下方側)に設けられる第2側壁加熱部24と、を有する。つまり、上下方向においては、上方から下方に向けて、第1側壁加熱部23、第2側壁加熱部24、底壁加熱部22の順で設けられる。第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24は、それぞれ通電によって発熱する電熱ヒータである。第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24は、筐体10内に収容された鍋1の本体部2に対して本体部2の外側から接触する。
【0026】
第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24は、図5に示すように、それぞれ周方向の両端の間に開口が設けられる略U字状に形成される。第1側壁加熱部23は、鍋1の本体部2の後側の側壁4Bの左右方向全域にわたって設けられる第1基部23aと、第1基部23aの端部から前側に延びるように設けられる一対の第1腕部23b、23cと、を有する。第1基部23aは、側壁4Bに接触して側壁4Bを加熱する。第1腕部23bは側壁4Rに接触し、第1腕部23cは側壁4Lに接触して、それぞれ側壁4R,4Lを加熱する。
【0027】
第2側壁加熱部24は、第1側壁加熱部23と同様に形成される。第2側壁加熱部24は、鍋1の本体部2の後側の側壁4Bの左右方向全域にわたって設けられる第2基部24aと、第2基部24aの端部から延びる一対の第2腕部24b、24cと、を有している。
【0028】
第1側壁加熱部23の一対の第1腕部23b,23cと第2側壁加熱部24の一対の第2腕部24b,24cとは、それぞれ前後方向の後側の一部にのみ設けられ、前側の一部には設けられない。このように、側壁加熱部は、前後方向において後側に偏って設けられ、鍋1の前側の一部領域は加熱せずに後側の一部領域を加熱する。本実施形態では、第1側壁加熱部23の一対の第1腕部23b、23cは、前後方向の位置が基準面RPと略一致する位置まで第1基部23aから前側へ伸びるように設けられる。同様に、第2側壁加熱部24の一対の第2腕部24b、24cは、前後方向の位置が基準面RPと略一致する位置まで第2基部24aから前側へ伸びるように設けられる。
【0029】
以上のように、加熱部20は、前後方向の後側に偏って設けられている。よって、加熱部20は、基準面RPに対して非対称となるように構成されている。本実施形態では、前後方向が、鍋1の深さ方向に垂直な所定の一方向に相当する。
【0030】
温度センサ40は、図1に示すように、鍋1の深さ方向(上下方向)に延びるように鍋1の後側空間BSに挿入される。温度センサ40は、上下方向の複数個所において鍋1の内部の温度を測定することができる。通常、鍋1に投入された内容物と空気との間には温度差が生じる。よって、温度センサ40によって鍋1の内部の温度を測定することで、鍋1の内部に内容物が存在しているのか否かを区別することができる。
【0031】
本実施形態では、温度センサ40は、上下方向の位置(高さ)が異なる3か所の温度を測定する。以下、高さの低いほうから順に「第1測定点P1」、「第2測定点P2」、及び「第3測定点P3」とする。温度センサ40によって深さ方向において高さが異なる3か所において温度を測定することで、鍋1の内部の内容物の高さ(主にタレの液面)、ひいては内容物の容量を検出することができる。
【0032】
本実施形態では、「小」、「中」、及び「大」の3段階によって鍋1の内容物の容量が検出される。「小」は、鍋1の内容物の高さが、温度センサ40の第1測定点P1の高さ以上であって、第2測定点P2よりも高さが低くなるような容量である。「中」は、鍋1の内容物の高さが温度センサ40の第2測定点P2の高さ以上であって、第3測定点P3の高さよりも低くなるような容量である。「大」は、鍋1の内容物の高さが第3測定点P3の高さよりも高くなるような容量である。鍋1の内容物の高さが温度センサ40の第1測定点P1の高さとなる容量が「第1閾値」、第2測定点P2の高さとなる容量が「第2閾値」、第3測定点P3の高さとなる容量が「第3閾値」に相当する。
【0033】
制御装置50は、CPU等の演算処理装置、記憶装置、ネットワーク接続装置等を備えるコンピュータにより構成される。記憶装置には、予めプログラム、アプリケーション等が記憶されており、CPUがこれを実行することにより、本明細書に記載の制御装置50の各種機能を実行する。なお、制御装置50は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0034】
制御装置50は、作業者によって操作器(図示省略)の調理ボタン(図示省略)が操作されると、温度センサ40によって測定された温度に基づいて鍋1の内容物の容量を検出し、容量に応じて加熱部20に対して制御信号(電流)を出力し、加熱部20を作動させる。
【0035】
次に、本実施形態の調理装置101による加熱調理方法について説明する。
【0036】
調理装置101では、鍋1は仕切板9によって前側空間FSと後側空間BSに仕切られている。また、加熱部20は、前後方向の後側に偏って設けられている。このため、加熱部20から鍋1に加えられる熱量は、前後方向の前側よりも後側が多くなる。よって、鍋1の後側空間BSは被調理物を加熱調理する調理用として使用され、鍋1の前側空間FSは調理された被調理物の保温用として使用される。
【0037】
以下、加熱調理方法について具体的に説明する。
【0038】
まず、作業者によって調理前の被調理物が調理用である鍋1の後側空間BSに投入される。肉煮料理では、鍋1内にタレと具材が投入される。鍋1の後側空間BSに投入されたタレは、仕切板9の貫通孔9aを通じて前側空間FSにも移動する。具材は、仕切板9の貫通孔9aを通過できないため、後側空間BSにとどまる。言い換えると、仕切板9の貫通孔9aは、具材を通過させない大きさに形成されている。
【0039】
次に、作業者は、調理ボタンを押圧する。これにより、調理装置101によって被調理物の調理が自動で行われる。
【0040】
調理ボタンが押圧されると、制御装置50には、自動調理を開始する調理開始信号が入力される。調理開始信号が入力されると、制御装置50は、温度センサ40が測定する温度を取得し、温度に基づいて鍋1の内容物の容量を検出する。
【0041】
温度センサ40において、第1測定点P1で内容物の存在が検知され、第2測定点P2及び第3測定点P3では内容物が検知されない場合には、容量は「小」であると判定される。第1測定点P1及び第2測定点P2で内容物が検知され、第3測定点P3で内容物が検知されない場合には、容量が「中」であると判定される。第1測定点P1、第2測定点P2、及び第3測定点P3のすべてにおいて内容物が検知されると、容量が「大」であると判定される。
【0042】
次に、検出された鍋1の容量に応じて、制御装置50から加熱部20に電流が供給される。容量が「小」又は「中」である場合には、底壁加熱部22及び第2側壁加熱部24に所定の大きさの電流が供給され、第1側壁加熱部23には電流は供給されない。
【0043】
鍋1の容量が「大」である場合には、底壁加熱部22、第1側壁加熱部23、及び第2側壁加熱部24のすべてに所定の大きさの電流が供給される。
【0044】
このように、鍋1の内容量が多いほど(言い換えると液面が高くなるほど)、深さ方向の位置が高い位置にある加熱部20によって鍋1を加熱するように制御される。よって、鍋1の内容量が変化しても、自動で被調理物を調理することができる。
【0045】
また、加熱部20は、前後方向の後側に偏って設けられるため、制御装置50によって加熱部20が作動されることで、加熱部20から鍋1に加えられる熱量は、前後方向の前側よりも後側が多くなる。このため、相対的に後側空間BSの温度が高く、前側空間FSの温度が低くなる。よって、作業者は、鍋1の後側空間BSでは具材を加熱調理し、調理された具材を後側空間BSから前側空間FSへ移動させることで保温させることができる。
【0046】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0047】
加熱装置100では、加熱部20から鍋1に加えられる熱量が、前側よりも後側が多くなるように構成される。このため、鍋1の前側で被調理物を保温し、後側で被調理物を調理するようにして、同一の鍋1内において保温と調理の両方と行うことができる。したがって、保温と調理とを別の機器で行う場合と比較して、作業効率の向上とコスト低減を図ることができる。
【0048】
また、加熱装置100では、同一の鍋1内において被調理物を保温する部分と加熱調理する部分とが分かれているため、加熱調理が済んだ被調理物を保温する部分へと容易に移動させることができる。これにより、調理済みの被調理物をさらに煮込むことがなく、追加の調理を行うことができ、被調理物を常に良い状態で提供することができる。
【0049】
また、加熱装置100では、加熱部20は、前後方向の後側に偏って配置される。このため、制御装置50は、加熱部20を作動させるか停止させるかのON-OFF制御をするだけで、加熱部20から鍋1に加えられる熱量が後側の方が多くなるように加熱部20を制御することができる。このように、加熱装置100によれば、制御装置50による複雑な制御の必要がないため、装置構成を簡略化することができる。
【0050】
また、加熱装置100では、温度センサ40によって鍋1内の温度を測定することで、鍋1の内容量が検出される。制御装置50が内容量に基づいて加熱部20を制御することで、内容量に応じて自動で被調理物を加熱調理することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る加熱装置200について、説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
上記第1実施形態では、加熱部20が前後方向の後側に偏って配置され、制御装置50は加熱部20をON-OFF制御することで、加熱部20から鍋1に加えられる熱量は、前後方向の後側が前側よりも多くなるように構成される。
【0053】
これに対し、第2実施形態では、加熱部20が前後方向に偏って配置される構成ではなく、加熱部120から鍋1に加えられる熱量が前後方向の後側の方が前側よりも多くなるように加熱部120が制御装置50によって制御される。
【0054】
第2実施形態の加熱部120は、図6に示すように、鍋1の前後方向の前側を加熱する第1加熱部としての前側加熱部125と、鍋1の後側を加熱する第2加熱部としての後側加熱部121と、を有する。具体的には、前側加熱部125と後側加熱部121とは、基準面RPに対して略対称となるように配置される。
【0055】
前側加熱部125は、鍋1の底壁3を加熱する前側底壁加熱部26と、鍋1の側壁4L,4R,4F(図1参照)を加熱する前側側壁加熱部と、を有する。
【0056】
前側底壁加熱部26は、電磁誘導によって対象を加熱する加熱コイルである。前側底壁加熱部26は、基準面RPより前側にある鍋1の底壁3の前側部分に臨むようにして底部支持壁11(図1参照)に設けられ、鍋1の底壁3の前側部分を加熱する。
【0057】
前側側壁加熱部は、第1前側側壁加熱部27と、第1前側側壁加熱部27よりも上下方向において底壁3側に設けられる第2前側側壁加熱部28と、を有する。第1前側側壁加熱部27及び第2前側側壁加熱部28は、それぞれ通電によって発熱する電熱ヒータである。また、第1前側側壁加熱部27及び第2前側側壁加熱部28は、それぞれ第1実施形態の第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24と同様に、U字状に形成される。
【0058】
第1前側側壁加熱部27は、鍋1の本体部2の左右方向全域にわたって設けられる第1基部27aと、第1基部27aの端部から後側に延びるように設けられる一対の第1腕部27b、27cと、を有する。同様に、第2前側側壁加熱部28は、第2基部28aと、第2基部28aの端部から後側に延びる一対の第2腕部28b、28cと、を有する。
【0059】
後側加熱部121、鍋1の底壁3を加熱する後側底壁加熱部22aと、鍋1の側壁4L,4R,4Bを加熱する後側側壁加熱部と、を有する。
【0060】
後側底壁加熱部22aは、電磁誘導によって対象を加熱する加熱コイルである。後側底壁加熱部22aは、基準面RPより後側にある鍋1の底壁3の後側半分に臨むようにして底部支持壁11に設けられ、鍋1の底壁3の後側部分を加熱する。
【0061】
後側側壁加熱部は、第1後側側壁加熱部23と、第2後側側壁加熱部24と、を有する。後側側壁加熱部は、第1実施形態における側壁加熱部(第1側壁加熱部23、第2側壁加熱部24)と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
制御装置50は、加熱部120に供給する電流の大きさを比例的に制御できるように構成される。制御装置50は、例えば、前側加熱部125に所定の大きさで電流を供給すると共に、前側加熱部125よりも大きい電流を後側加熱部121に供給するように加熱部120を制御する。このようにして、後側加熱部121から鍋1に加えられる熱量が、前側加熱部125から鍋1に加えられる熱量よりも多くなるように制御装置50によって加熱部120の作動が制御される。
【0063】
以上の第2実施形態であっても、加熱部120から鍋1に加えられる熱量が、前側よりも後側が多くなるように構成されるため、同一の鍋1内において保温と調理の両方と行うことができる。したがって、保温と調理とを別の機器で行う場合と比較して、作業効率の向上とコスト低減を図ることができる。
【0064】
また、第2実施形態では、鍋1の前側を加熱する前側加熱部125が設けられるため、前側加熱部125が生じる熱量を制御することで、保温温度を自由に制御することができる。つまり、第2実施形態によれば、保温温度と調理温度とをそれぞれ個別に制御することができるため、調理の自由度が向上する。
【0065】
次に、各実施形態の変形例について説明する。
【0066】
第1実施形態では、底壁加熱部22は、基準面RPに対する底壁3の前側及び後側の両方を加熱する一方、第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24は、側壁4L,4Rの基準面RPに対する前側を加熱せず後側のみを加熱する。これに対し、底壁加熱部22は、底壁3の後側のみを加熱し、第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24は、側壁4L,4Rの前側の一部及び後側の全域を加熱するように構成してもよい。つまり、第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24は、一対の第1腕部23b、23c及び一対の第2腕部24b、24cが基準面RPを超えて前側に延びるように構成されてもよい。また、第1側壁加熱部23及び第2側壁加熱部24の一方が、鍋1の前側及び後側の両方を加熱し、他方が後側のみを加熱するように構成してもよい。このように、第1実施形態では、加熱部20の構成は上記実施形態に記載の構成に限定されず、加熱部20が前後方向の後側に偏って配置され、前側よりも後側において多くの熱量を鍋1に加えるように構成されるものであれば、種々の形態を採用することができる。
【0067】
第1実施形態では、制御装置50が、加熱部20をON-OFF制御する場合について説明した。これに対し、制御装置50による加熱部20の制御は、ON-OFF制御に限定されない。例えば、第1実施形態において、制御装置50は、供給する電流量を比例的に制御する比例制御によって加熱部20を制御してもよい。
【0068】
第2実施形態では、前後方向の前側と後側とで基準面RPに対し略対称となるように前側加熱部125と後側加熱部121とが設けられるが、この構成に限定されるものではない。前側加熱部125と後側加熱部121とは、配置や形状が互いに異なるものであってもよい。この場合でも、制御装置50によって前側加熱部125と後側加熱部121とをそれぞれ個別に制御することで、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0069】
また、第2実施形態では、前側加熱部125と後側加熱部121とは、共通の加熱部を有していてもよい。例えば、鍋1の底壁3の全体を加熱する共通の底壁加熱部を設けてもよい。この場合、前側加熱部125は前側側壁加熱部(第1前側側壁加熱部27、第2前側側壁加熱部28)によって構成され、後側加熱部121は後側側壁加熱部(第1後側側壁加熱部23、第2後側側壁加熱部24)によって構成される。
【0070】
また、上記各実施形態では、加熱部20、120は、底壁加熱部22、後側底壁加熱部22a、及び前側底壁加熱部26は、誘導加熱によって鍋1を加熱する加熱コイルによって構成される。第1側壁加熱部23(第1後側側壁加熱部23)、第2側壁加熱部24(第2後側側壁加熱部24)、第1前側側壁加熱部27、及び第2前側側壁加熱部28は、電熱ヒータによって構成される。これに対し、加熱部20,120は、鍋1を加熱できるものである限り、任意の加熱方式を採用することができる。例えば、底壁3を加熱する加熱部を電熱ヒータとしてもよいし、側壁4L,4R,4F,4Bを加熱する加熱部を誘導式の加熱コイルとしてもよい。また、加熱方式としては、ガス等を利用した加熱としてもよい。
【0071】
また、上記各実施形態では、検出手段は温度センサ40であったが、これに限定されない。検出手段は、例えば、温度以外の手法で内容物の液面の高さを検出するレベルゲージ、鍋1の内容物の重量を測定する重量計などであってもよい。また、上記各実施形態の温度センサ40は、鍋1の内容物の温度を測定するものであるが、これに代えて、鍋1の本体部2の温度を測定するものでもよい。内容物の有無によって鍋1そのものの温度も変化するため、鍋1の温度を測定することで、内容物の容量を検出することが可能である。また、検出手段は、複数個所の温度を測定する場合であっても、単一の温度センサ40に限定されず、例えば、複数の温度センサによって構成されるものでもよい。
【0072】
また、各実施形態では、制御装置50は、その一部または全部の構成が、クラウド環境に設けられるクラウドサーバとして構成されてもよい。
【0073】
また、上述した制御装置50による一連の処理は、コンピュータにこれを実行さるためのプログラムとして提供されてもよい。
【0074】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムは、制御装置50によって読み取り可能な記憶媒体によって提供される。また、プログラムは、ネットワーク回線を通じて制御装置50に提供されてもよい。
【0075】
また、制御装置50が実行する各種プログラムは、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0077】
100 加熱装置
200 加熱装置
1 鍋(調理容器)
3 底壁
4B 側壁
4F 側壁
4L 側壁
4R 側壁
20 加熱部
22 底壁加熱部
23 第1側壁加熱部
24 第2側壁加熱部
40 温度センサ(検出手段)
50 制御装置
120 加熱部
121 後側加熱部(第2加熱部)
125 前側加熱部(第1加熱部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6