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特開2023-7873スチレン系難燃性樹脂組成物及びその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007873
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】スチレン系難燃性樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20230112BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20230112BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20230112BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20230112BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L25/04
C08K5/02
C08K3/016
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110987
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】今野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】植草 伸也
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB03X
4J002BC03X
4J002BN141
4J002DE128
4J002EB046
4J002EB096
4J002EB136
4J002EJ057
4J002EU179
4J002FD049
4J002FD089
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性、難燃性を備え、かつ耐光性の一層優れたスチレン系難燃性樹脂組成物、及びその成形体を提供する。
【解決手段】ゴム変性スチレン系樹脂と臭素系有機難燃剤を含むスチレン系難燃性樹脂組成物で、特定の臭素系化合物、及び特定粘度範囲の熱可塑性樹脂を組み合わせて配合することにより、所望の難燃性や耐衝撃性を得、かつ高い耐光性を両立して発現出来ることを見出し、本発明に到達した。本発明の樹脂組成物は屋内光、屋外光問わず光に晒される環境で用いられるOA機器、家電製品等の用途でも好適に利用できる。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、(B)難燃剤として(B-1)黄色系の臭素系化合物と、(B-2)融点が100℃以上300℃以下の臭素系化合物の2種類を含み、合計が7質量部以上14質量部以下である(B)難燃剤と、(C)難燃助剤0.5質量部以上5.5質量部以下と、(D)200℃における溶融粘度が500Pa・s以上2000Pa・s以下の熱可塑性樹脂を5質量部以上20質量部以下と、を含有しUL94規格でV-2を達成するスチレン系難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
(B-1)の黄色度YIが10以上65以下であることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物
【請求項3】
(B-1)と(B-2)の質量部比率(B-1)/(B-2)が1以上3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物
【請求項4】
さらに(E)紫外線吸収剤0.1質量部以上1.5質量部以下を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物
【請求項5】
(E)紫外線吸収剤の、250~400nmの吸光度の積分値に占める350~400nmの吸光度の積分値の割合が20%以上であることを特徴とする請求項4記載のスチレン系難燃性樹脂組成物
【請求項6】
荷重たわみ温度が70℃以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物
【請求項7】
タルクを含まないことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系難燃性樹脂組成物と、該組成物を用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム変性スチレン系樹脂は広範囲の用途に使用されており、特に、難燃性樹脂はワープロ、パーソナルコンピュータ、プリンター、複写機等のOA機器、テレビ、VTR、オーディオ等の家電製品等を初めとする多岐の分野で使用されている。従来から、スチレン系樹脂に難燃性を付与するために、種々の難燃剤が提案されており、中でも安価で物性バランスに優れているハロゲン含有有機化合物が多く使用されている。しかしながら近年、コンピュータやOA機器等の普及に伴い、スチレン系樹脂に対する要求が従来の難燃性や耐衝撃性だけでなく、自然光や蛍光灯、LED灯などの光に対するさらなる耐光性が求められるようになってきた。
【0003】
特許文献1、2には、高度な難燃性や衝撃強度と共に耐光性に優れたスチレン系難燃性樹脂組成物が開示されているが、光暴露が過酷な環境での変色を一層抑制しつつ所望の難燃性等を得ることが十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-199925号公報
【特許文献2】特開2016-003241号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は耐衝撃性や、耐熱性、難燃性を備え、かつ耐光性の一層優れたスチレン系難燃性樹脂組成物、及びその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、これらの諸問題を解決すべく、鋭意研究した結果、ゴム変性スチレン系樹脂と臭素系有機難燃剤を含むスチレン系難燃性樹脂組成物で、特定の臭素系化合物、及び特定粘度範囲の熱可塑性樹脂を組み合わせて配合することにより、所望の難燃性や耐衝撃性、耐熱性を得、かつ高い耐光性を両立して発現出来ることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.(A)ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、(B)難燃剤として(B-1)黄色系の臭素系化合物と、(B-2)融点が100℃以上300℃以下の臭素系化合物の2種類を含み合計が7質量部以上14質量部以下である(B)難燃剤と、(C)難燃助剤0.5質量部以上5.5質量部以下と、(D)200℃における溶融粘度が500Pa・s以上2000Pa・s以下の熱可塑性樹脂を5質量部以上20質量部以下と、を含有しUL94規格でV-2を達成するスチレン系難燃性樹脂組成物

2.(B-1)の黄色度YIが10以上65以下であることを特徴とする上記1に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物

3.(B-1)と(B-2)の質量部比率(B-1)/(B-2)が1以上3以下であることを特徴とする上記1または2に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物

4.さらに(E)紫外線吸収剤0.1質量部以上1.5質量部以下を含むことを特徴とする上記1~3のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物

5.(E)紫外線吸収剤の、250~400nmの吸光度の積分値に占める350~400nmの吸光度の積分値の割合が20%以上であることを特徴とする上記4に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物

6.荷重たわみ温度が70℃以上であることを特徴とする上記1~5のいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物

7.タルクを含まないことを特徴とする上記1~~6のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物

8.上記1から7までのいずれか1項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は優れた耐光性を備え、かつ耐衝撃性、耐熱性や難燃性を有するスチレン系難燃性樹脂組成物である。したがって本発明の樹脂組成物は屋内光、屋外光問わず光に晒される環境で用いられるOA機器、家電製品等の用途でも好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
【0010】
先ず、(A)ゴム変性スチレン系樹脂について説明する。本発明において使用する(A)ゴム変性スチレン系樹脂とは、芳香族ビニル化合物系単量体を重合したものにゴム状重合体を加えてゴム変性を行ったものである。重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。芳香族ビニル化合物系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の公知のものが使用できるが、好ましくはスチレンである。また、これらの芳香族ビニル化合物系単量体と共重合可能なアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のスチレン系単量体や無水マレイン酸等以外の単量体も、樹脂組成物の性能を損なわない程度のものであれば良い。さらに本発明ではジビニルベンゼン等の架橋剤をスチレン系単量体に対し添加して重合したものであっても差し支えない。
【0011】
また本発明の(A)ゴム変性スチレン系樹脂のゴム変性に用いるゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダムまたはブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン-イソプレンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムなどが挙げられるが、特にポリブタジエン、スチレン-ブタジエンのランダム、ブロック又はグラフト共重合体が好ましい。また、これらは一部水素添加されていても差し支えない。
【0012】
このような(A)ゴム変性スチレン系樹脂の例として、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレン-スチレン共重合体)、MBS樹脂(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体)等が挙げられるが好ましいのはHIPSである。
【0013】
(A)ゴム変性スチレン系樹脂中の芳香族ビニル重合体の分子量については特に制限はないが、還元粘度(ηsp/C)で0.5dl/g以上1.0dl/g以下が好ましい。0.5dl/g以上であることにより樹脂の溶融ストランドが断線しにくく安定製造に有利となりまた1.0dl/g以下であることにより溶融した樹脂の流動性が確保出来る。
【0014】
(A)ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体の含有量については特に制限はないが、3質量%以上10質量%以下が好ましい。ゴム状重合体の含有量がこの範囲にあることで成形体の耐衝撃性と剛性のバランスが良い。
【0015】
(A)ゴム変性スチレン系樹脂中のメタノール可溶成分量は0.5質量%以上3.0質量%以下が好ましい。メタノール可溶成分量がこの範囲にあることで耐熱性と靭性、耐衝撃性のバランスが良い。
【0016】
次に(B-1)黄色系の臭素系化合物について説明する。目視判定により黄色味を帯びていることが知覚できればよく、黄色系に分類される一般的な色の呼称としては黄色のほか、淡黄色、黄橙色、金色なども含む。またその他にも檸檬色、硫黄色、山吹色、ひまわり色、菜の花色、うこん色、蜜柑色、タンポポ色、銀杏色といった和名などもあるが、本発明ではこれらもすべて黄色系とする。また、目視判定をする際の環境としては、例えばJIS K 5600-4-3に記載されている光源やブースに準拠した条件で判定を行ってもよいが、特にこれらは限定しない。
【0017】
本発明において使用する(B-1)は黄色度YIが10~65のものが好ましい。YIがこの範囲にあることで耐光性が良い。好ましい範囲は13~50であり、さらに好ましくは15~40である。YIの測定方法については実施例で述べる。
【0018】
また(B-1)の融点は300℃以上であると好ましい。300℃以上であることにより加工温度近傍では固体状態として存在する。組成物としたときに固体で分散するため、光を当てたときに照射光が散乱され耐光性が良い。形状については、例えばオイル状、ワニス状、ガム状、粉末状、ペレット状、フレーク状のいずれであっても良い。
【0019】
このような条件を満たす市販の臭素系化合物としては、阪本薬品工業製のSR-T1000、SR-T2000、SR-T3040、SR-T7040、SR-T5000、SR-T9000、SR-T20000、第一工業製薬製のSR-460B、日宝化学製のヘキサブロモベンゼン、東京化成工業のデカブロモジフェニルエーテル、アルベマール製のSAYTEX BT93などが挙げられる。このうち、アルベマール製のSAYTEX BT-93が好ましい。
【0020】
次に(B-2)融点が100℃以上300℃以下の臭素系化合物について説明する。融点が300℃以下であることにより燃焼開始温度近傍の温度で液体であるため、燃焼試験を行った際に樹脂組成物に流動性を付与する。そのためUL94規格でのV-2クラス合格に貢献する。100℃以上であることにより通常連続使用する温度範囲で固体であるため樹脂組成物としたときに良好な耐熱性を有する。より好ましくは150℃以上280℃以下であって、さらに好ましくは200℃以上260℃以下である。
【0021】
本発明で用いられる(B-2)融点が100℃以上300℃以下の臭素系化合物としては、臭素化トリアジン系化合物や、臭素化ビスフェノールエーテル系化合物などが挙げられる。
【0022】
このような構造を満たす市販のものとしては、第一工業製薬製のピロガードSR-130、SR-245、SR-720Nなどが挙げられる。この中で耐熱性と難燃性を両立する観点からはピロガードSR-245が好ましい。
【0023】
(B)の添加量は(A)ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、7質量部以上14質量部以下である。7質量部以上であることにより自己消化性を有しつつ、14質量部以下であることにより良好な耐衝撃性を示す。
【0024】
(B-1)と(B-2)の質量部比率(B-1)/(B-2)は1以上3以下であることが好ましい。この範囲内であることにより耐光性と難燃性のバランスがより良いため好ましい。
【0025】
次に(C)難燃助剤について説明する。本発明において用いられる(C)難燃助剤は、(B)含臭素系難燃剤の難燃効果をさらに高める働きをするものであり、例えば三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等の酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、無水ホウ酸亜鉛、無水ホウ酸等のホウ素系化合物、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛等のスズ系化合物、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン系化合物、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等のジルコニウム系化合物、硫化亜鉛等の亜鉛系化合物が挙げられ、中でも、三酸化アンチモンを使用することが好ましい。
【0026】
(C)難燃助剤の添加量は(A)ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上5.5質量部以下である。この範囲内であることにより難燃性と耐衝撃性のバランスを満足することが出来る。
【0027】
次に(D)200℃における溶融粘度が500Pa・s以上2000Pa・s以下の熱可塑性樹脂について説明する。溶融粘度がこの範囲にあることにより耐衝撃性と燃焼試験時の滴下性とをバランスよく両立することができる。本発明における溶融粘度の測定方法については実施例で述べる。
【0028】
また、(D)は200℃において溶融粘度を測定できるものでなければならないため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルまたはスチレン系樹脂、アクリル樹脂といった汎用プラスチックや、ポリアセタールやポリエステル等の一部のエンジニアリングプラスチックが含まれる。200℃において溶融しないポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルといったエンジニアリングプラスチックや、ポリフェニレンスルファイド、テフロン(登録商標)、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマーといったスーパーエンジニアルングプラスチックは含まない。
【0029】
このうち、(A)ゴム変性スチレン系樹脂との相容性の観点からは、スチレン系樹脂、換言すると芳香族ビニル化合物系単量体を重合して得られるものが好ましい。重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。芳香族ビニル化合物系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の公知のものが使用できるが、好ましくはスチレンである。また、これらの芳香族ビニル化合物系単量体と共重合可能なアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のスチレン系単量体や無水マレイン酸等以外の単量体も、樹脂組成物の性能を損なわない程度であれば良い。さらに本発明ではジビニルベンゼン等の架橋剤をスチレン系単量体に対し添加して重合したものであっても差し支えない。
【0030】
このようなスチレン系樹脂の例として、ポリスチレン(GPPS)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、MS樹脂(メチルメタクリレート-スチレン共重合体)等が挙げられる。この中で、ゴム変性スチレン系樹脂との相容性が高いことからポリスチレン(GPPS)が好ましい。
【0031】
(D)の添加量は(A)ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下である。この範囲内であることにより難燃性と耐衝撃性のバランスを満足することが出来る。
【0032】
次に(E)紫外線吸収剤について説明する。本発明の樹脂組成物は、(E)成分として、紫外線吸収剤を配合することが好ましい。(E)成分としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾトリアゾリルフェノール)、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、または金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、またはキレート類等が挙げられる。これらの中でも、特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0033】
また(E)紫外線吸収剤の、250~400nmの吸光度の積分値に占める350~400nmの吸光度の積分値の割合が20%以上であることが好ましい。この範囲にあることで耐光性がより高い。
【0034】
(E)紫外線吸収剤の好ましい添加量は(A)ゴム変性スチレン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上1.5質量部以下である。この範囲内にあることにより耐光性と耐衝撃性をよりバランス良く両立することが出来る。
【0035】
本発明の樹脂組成物は荷重たわみ温度が70℃以上であることが好ましい。OA機器、家電製品等の用途で用いる際の適用範囲がより広くなる。
【0036】
本発明の樹脂組成物はタルクを含まないことが好ましい。タルクを含まないことで燃焼試験時の滴下性が良い。
【0037】
本発明の目的を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、展着剤、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染顔料、充填剤、着色防止剤、補強剤、相溶化剤、結晶化促進剤、難燃剤、難燃助剤、等を添加することができる。
【0038】
これらの添加方法は、特に限定されず、公知の方法で添加すれば良い。例えば、(A)ゴム変性スチレン系樹脂の製造時の原料の仕込工程、重合工程、仕上工程で添加する方法や、押出機や成形機を用いて樹脂組成物を混合する工程で添加する方法を適用することができる。
【0039】
次に本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0040】
本発明の樹脂組成物の混合方法は、特に限定されず、公知の混合技術を適用することが出来る。例えば、ミキサー型混合機、V型他ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置を用いて、各種原料を予め混合しておき、その混合物を溶融混練することによって、均一な樹脂組成物を製造することが出来る。溶融混練装置も、特に限定されないが、例えばバンバリー型ミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等が挙げられる。更に、押出機等の溶融混練装置の途中から他の添加剤を別途添加する方法もある。
【0041】
本発明の樹脂組成物から成形品を得る成形法には特に制限は無くカレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形などの押出成形法や、射出成形、RIM成形、射出発泡成形などの射出成形法といった公知の成形法を好適に用いることが出来るが、好ましくは射出成形またはシート成形である。
【実施例0042】
以下に本発明を実施例及び比較例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
(A-1)ゴム変性スチレン系樹脂(ゴム状重合体ポリブタジエンゴム、還元粘度0.70dl/g、ゴム状重合体含有量9.5質量%、メタノール可溶成分量1質量%)
(A-2)ゴム変性スチレン系樹脂(ゴム状重合体ポリブタジエンゴム、還元粘度0.75dl/g、ゴム状重合体含有量9.5質量%、メタノール可溶成分量3.5質量%)
(B-1-a)臭素系化合物
商品名「Saytex BT-93」(融点460℃、黄色粉末、YI 30、アルベマール社製)
(B-1-b)臭素系化合物
商品名「Saytex BT-93W」(融点460℃、白色粉末、YI 7、アルベマール社製)
(B-2-a)臭素系化合物
商品名「ピロガードSR-245」(融点230℃、白色粉末、第一工業製薬社製
(B-2-b)臭素系化合物
商品名「ピロガードSR-720N」(融点110℃、白色粉末、第一工業製薬社製)
(B-2-c)臭素系化合物
商品名「Sayetx 8010」(融点350℃、白色粉末、アルベマール社製
(C)難燃助剤
商品名「AT-3CN」(鈴裕化学社製)
(D-1)ポリスチレン(GPPS、溶融粘度500Pa・s)
(D-2)ポリスチレン(GPPS、溶融粘度1500Pa・s)
(D-3)ポリスチレン(GPPS、溶融粘度3000Pa・s)
(D-4)ポリエチレン(PE、溶融粘度10Pa・s)
(E-1)紫外線吸収剤
商品名「アデカスタブ LA-36」(350~400nm吸光度34%)
(E-2)紫外線吸収剤
商品名「アデカスタブ LA-32」(350~400nm吸光度19%)
(タルク)富士タルク工業社製FH108(平均粒径7μm)








【0044】
(A)スチレン系樹脂の還元粘度(ηsp/C)の測定は、(A)スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン17.5mlとアセトン17.5mlの混合溶媒を加え、温度25℃で2時間振とう溶解した後、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、250mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、不溶分を濾過乾燥した。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度0.4%(質量/体積)の試料溶液を作製した。この試料溶液、及び純トルエンを温度30℃の恒温でウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0-1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数
C:ポリマー濃度
【0045】
ゴム状重合体含有量の測定は、ゴム変性スチレン系樹脂をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/氷酢酸溶液を加え暗所に約30分放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0046】
メタノール可溶成分量の測定:試料を溶媒に溶解し、10倍量の貧溶媒でポリスチレンを再沈させ、再沈ポリスチレンの質量を求め、残分をメタノール可溶成分量とした。
測定条件
試料量:1g、溶媒:MEK40ml、貧溶媒:メタノール400ml
【0047】
YI:日本分光製紫外可視分光光度計V-670に積分球ユニットILN-725を装着したものを使用した。粉末試料用ホルダPSH-001を使って反射モードで測定し、得られた結果を同社製カラー診断ソフトVWCD-790型で解析し黄色度YIを求めた。
【0048】
溶融粘度:ティーエーインスツルメント社製AR2000exを分析装置に使用した。直径25mmのパラレルプレートを用いて、周波数1Hz、ギャップ:0.75mmの設定で試料0.3g程度を使用して測定した。得られたペレットをセットし、250℃で溶融させたあと150℃まで降温しながら測定を行い、200℃でのずり応力から粘度換算値を求めた。
【0049】
〔燃焼性〕
燃焼性の評価用試験片は、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J100E-P)にて、127×12.7×2.0mmの燃焼用試験片を成形した。米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のサブジェクト94号の垂直燃焼試験方法(UL94)に基づき、燃焼試験を行った。この試験方法でV-2以上の評価となった場合を合格とし、V-2に満たなかった場合は不合格である。
【0050】
〔シャルピー衝撃強さ〕
得られたペレットを温度80℃×3時間で加熱乾燥後、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J100E-P)にて、JIS K 7139に記載のA型試験片(ダンベル)を成形した。この際、シリンダー温度205℃、金型温度45℃とした。
上記ダンベル片の中央部より切り出し、切削でノッチ(タイプA、r=0.25mm)を入れた試験片を用いて、JIS K 7111-1に基づき測定を行った。強度が6KJ/m2未満だと成形品の強度が不十分であり、6KJ/m2以上を合格とした。
【0051】
〔耐光促進試験〕
得られたペレットを温度80℃×20時間で加熱乾燥後、射出成形機(東洋機械金属製、Ti-80G2にて、縦横90×45mm、厚みが1~3mmの3段プレートを成形した。この際、シリンダー温度215℃、金型温度45℃とした。得られた試験片を所定のホルダにセット可能なサイズに切り出しキセノン耐光促進試験機(アトラス製 Ci4000)を用い、ブラックパネル温度55℃、相対湿度55%、340nmでの分光放射照度0.3W/m2/nmの条件で照射した。試験開始から300時間後に試験片を取り出した。
〔ΔE値〕
日本電色工業社製分光色彩計SE 7700にて、耐光促進試験前及び後の試験片のL*、a*、b*の各値を測定した。この際、光源はD65、視野角は10°とし、測定値は正反射光を除いた値とした。
下記式によりΔE値(色差)を算出した。
〔式〕 ΔE=√(L*-L*+(a*-a*+(b*-b*
ここで、L*、a*、b*は各値の光照射前の試験片の測定値、L*、a*、b*は光照射後の試験片の測定値である。
300時間照射前後でのΔEが5以上だと成形品の耐光性が不十分であり、5未満を合格とした。
【0052】
〔荷重たわみ温度〕
得られたペレットを温度80℃×3時間で加熱乾燥後、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J100E-P)にて、80mm×10mm×4mmtの寸法に成形した。この際、シリンダー温度205℃、金型温度45℃とした。安田精機製熱変形温度測定機NO.148 HDPC-3 Heat Distortion Testerを用い、JIS K 7191に基づき測定を行った。荷重は1.8MPaで行った。
【0053】
次に、本発明のスチレン系難燃樹脂組成物の調製方法を述べる。
実施例1~15:(A)~(E)、およびタルクを表1に示す配合量で予備混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)に供給してストランドとし、水冷してからペレタイザーへ導きペレット化した。
【0054】
【表1】


【0055】
比較例1~12:(A)~(C)、及び(D)を表2に示す配合量にて、実施例と同様の操作を行った。





【0056】
【表2】

※はグローイングでNGであった。
【0057】
表1の実施例より本発明の樹脂組成物は、難燃性に優れるとともに耐衝撃性、耐光性が高いことが分かる。一方、表2の比較例より本発明の規定を満足しない樹脂組成物は難燃性、耐衝撃性もしくは耐光性のいずれかが劣ることが分かる。