(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078733
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】白金族元素担持多孔性粒子及び白金族元素触媒、並びにこれらが充填されたカラム
(51)【国際特許分類】
B01J 31/28 20060101AFI20230531BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230531BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230531BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20230531BHJP
C07C 255/50 20060101ALI20230531BHJP
C07C 253/30 20060101ALI20230531BHJP
C07C 69/94 20060101ALI20230531BHJP
C07C 67/343 20060101ALI20230531BHJP
C07B 59/00 20060101ALI20230531BHJP
C07C 233/07 20060101ALI20230531BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20230531BHJP
C07D 277/42 20060101ALI20230531BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
B01J31/28 Z
B01J37/04 102
B01J37/02 101C
B01J23/44 Z
C07C255/50
C07C253/30
C07C69/94
C07C67/343
C07B59/00
C07C233/07
C07C231/12
C07D277/42
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191997
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】521518574
【氏名又は名称】株式会社altFlow
(71)【出願人】
【識別番号】505191803
【氏名又は名称】株式会社エマオス京都
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】永木 愛一郎
(72)【発明者】
【氏名】前川 圭
(72)【発明者】
【氏名】芦刈 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】石塚 紀生
(72)【発明者】
【氏名】松山 清
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA11
4G169BA02B
4G169BA22B
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
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4G169CB66
4G169DA06
4G169EA01X
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4G169FB80
4H006AA02
4H006AC23
4H006BA25
4H006BA26
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BT32
4H006QN30
4H039CA41
4H039CD20
(57)【要約】
【課題】白金族元素触媒が充填された、背圧の低いカラム、及びこれに用いる白金族元素担持粒子を提供すること。
【解決手段】互いに連通した複数の孔部を有し、白金族元素が担持されたことを特徴とする白金族元素担持多孔性粒子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通した複数の孔部を有し、
白金族元素が担持されたことを特徴とする白金族元素担持多孔性粒子。
【請求項2】
前記複数の孔部の中に白金族元素が分散している、請求項1に記載の白金族元素担持多孔性粒子。
【請求項3】
前記白金族元素が、パラジウム又は白金である、請求項1又は2に記載の白金族元素担持多孔性粒子。
【請求項4】
前記白金族元素が、パラジウムである、請求項3に記載の白金族元素担持多孔性粒子。
【請求項5】
前記白金族元素担持多孔性粒子の体積平均粒径が100μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子を含むことを特徴とする、白金族元素触媒。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子、又は請求項6に記載の白金族元素触媒が充填されたカラム。
【請求項8】
互いに連通した複数の孔部を有する多孔性粒子と、白金族元素と、を混合する混合工程を含む、白金族元素担持多孔性粒子の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程が、超臨界流体を用いて行われる、請求項8に記載の白金族元素担持多孔性粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子、又は請求項6に記載の白金族元素触媒を用いた反応工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素担持多孔性粒子及び白金族元素触媒、並びにこれらが充填されたカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
白金族元素は、炭素-炭素結合形成反応や酸化還元反応やクロスカップリング反応などの触媒として使用されている。
白金族元素触媒の形態としては、担体としての炭素にパラジウムを担持させたパラジウム炭素や、担体としてのシリカゲルにパラジウムを担持させたパラジウムシリカや、ポリスチレンなどの有機高分子材料にパラジウムを担持させたパラジウム担持ポリマーなどが知られている。
【0003】
また、連続フロー合成などでは、前記パラジウム炭素やパラジウムシリカやパラジウム担持ポリマーが充填されたカラムを使用する。
しかしながら、前記パラジウム炭素やパラジウムシリカやパラジウム担持ポリマーが充填されたカラムでは、カラムの背圧が高く、流速を上げることが困難であり、連続して長時間反応させることはできなかった(非特許文献1)。
【0004】
さらに、棒状の1本のモノリス型担体に、触媒を担持させたカラムが知られているが、1本ずつ作成が必要なことから、品質管理が困難であり、低い温度かつ短いカラム長(短い滞留時間)での反応が不可能であり、高流速で収率が低下するといった問題がある(非特許文献2及び3)。
【0005】
したがって、白金族元素触媒が充填された、背圧の低いカラム、及びこれに用いる白金族元素担持粒子は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Org. Process Res. Dev. 2007 11:458
【非特許文献2】Catal. Sci. Technol. 2016 6:4690-4694
【非特許文献3】Catalysts 2019 9:300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、白金族元素触媒が充填された、背圧の低いカラム、及びこれに用いる白金族元素担持粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、互いに連通した複数の孔部を有し、白金族元素が担持されたことを特徴とする白金族元素担持多孔性粒子により、白金族元素触媒が充填された、背圧の低いカラム、及びこれに用いる白金族元素担持粒子が提供できることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下のとおりである。即ち、
<1> 互いに連通した複数の孔部を有し、白金族元素が担持されたことを特徴とする白金族元素担持多孔性粒子である。
<2> 前記<1>に記載の白金族元素担持多孔性粒子を含むことを特徴とする、白金族元素触媒である。
<3> 前記<1>に記載の白金族元素担持多孔性粒子、又は前記<2>に記載の白金族元素触媒が充填されたカラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、白金族元素触媒が充填された、背圧の低いカラム、及びこれに用いる白金族元素担持粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、常圧条件下で白金族元素を固定した白金族元素担持多孔性粒子の顕微鏡写真である。
【
図1B】
図1Bは、超臨界条件下で白金族元素を固定した白金族元素担持多孔性粒子の顕微鏡写真である。
【
図2】
図2は、合成例5で使用したマイクロリアクターシステムの概略図である。である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(白金族元素担持多孔性粒子)
前記白金族元素担持多孔性粒子は、互いに連通した複数の孔部(貫通孔)を有し、白金族元素が担持されている。
すなわち、前記白金族元素担持多孔性粒子は、互いに連通した複数の孔部(貫通孔)を有する多孔性粒子に、白金族元素が担持されたものである。
【0013】
前記互いに連通した複数の孔部(貫通孔)とは、複数の孔部において、互いの領域が、流体が流通できるよう連結されている状態をいう。
すなわち、前記貫通孔は、表面に露出する開口部を有する一の前記孔部と、表面に露出する開口部を有する他の前記孔部とが互いに連通しているものをいう。
【0014】
前記白金族元素担持多孔性粒子の貫通孔の孔径の平均直径(前記貫通孔の平均細孔径)の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多孔性粒子の前記複数の孔部の中に白金族元素を分散させる観点、及び前記白金族元素担持多孔性粒子が充填されたカラムの背圧を低下させる観点から、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、9nm以上がさらに好ましく、10nm以上がさらに好ましく、12nm以上が特に好ましい。
前記白金族元素担持多孔性粒子の貫通孔の孔径の平均直径(前記貫通孔の平均細孔径)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多孔性粒子の前記複数の孔部の中に白金族元素を分散させる観点、及び前記白金族元素担持多孔性粒子が充填されたカラムの背圧を低下させる観点から、20μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下がよりさらに好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が最も好ましい。
【0015】
前記貫通孔の平均細孔径は、マイクロメリティックス社のBELsorp mini IIより測定する。
【0016】
前記白金族元素担持多孔性粒子の体積平均粒径(体積平均粒子径)の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記白金族元素担持多孔性粒子が充填されたカラムの背圧を低下させる観点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、20μm以上がよりさらに好ましく、30μm以上が特に好ましく、40μm以上が最も好ましい。
白金族元素担持多孔性粒子の平均粒径(体積平均粒子径)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、単位体積当たりの表面積を大きくする観点から、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0017】
前記白金族元素担持多孔性粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3000II、マイクロトラック・ベル株式会社製)により測定する。サンプル量が少ないためにレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置での測定が困難な場合は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)の画像から平均粒径を概算してもよい。
【0018】
前記白金族元素担持多孔性粒子の単位重さあたりの全細孔容積の下限値は、特に限定されないが、圧力損失の低減の観点から1μL/g以上が好ましく、5μL/g以上がより好ましく、9μL/g以上がさらに好ましい。
前記白金族元素担持多孔性粒子の単位重さあたりの全細孔容積の上限値は、特に限定されないが、多孔性粒子の強度の観点から、10mL/g以下が好ましく、5mL/g以下がより好ましく、1mL/g以下がさらに好ましい。
前記単位重さあたりの全細孔容積は、窒素ガス吸着法(BELsorp mini II、マイクロメリティックス社製)により測定する。
【0019】
-多孔性粒子-
前記多孔性粒子は、互いに連通した複数の孔部(貫通孔)を有する多孔性粒子である。
前記多孔性粒子としては、例えば、国際公開第2017/026424号、国際公開第2017/026425号、国際公開第2017/026426号、又は国際公開第2020/179642号に記載の多孔性粒子(多孔質体)などが挙げられる。
【0020】
前記多孔性粒子は、略球形である。前記多孔性粒子は、例えば、長径(最も長い径)が、短径(最も短い径)に対し、例えば1.6倍以下、1.4倍以下、又は1.2倍以下である。前記多孔性粒子は、理想的には、例えば、真球形で、長径と短径とが同じ長さである。
【0021】
前記多孔性粒子の体積平均粒径(体積平均粒子径)の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、20μm以上がよりさらに好ましく、30μm以上が特に好ましく、40μm以上が最も好ましい。
前記多孔性粒子の体積平均粒径(体積平均粒子径)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
前記多孔性粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3000II、マイクロトラック・ベル株式会社)により測定する。サンプル量が少ないためにレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置での測定が困難な場合は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)の画像から平均粒径を概算してもよい。
【0022】
前記多孔性粒子は、互いに連通した複数の孔部(貫通孔)を有するものである。すなわち、その内部に、多孔構造が連通している貫通孔を有し、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口している。前記貫通孔は、多孔構造が連通している結果、例えば、屈曲した構造を有する。また、前記多孔性粒子は、粒子凝集型構造ではなく、共連続構造の(粒子内部に多孔構造が連通している)貫通孔を有する多孔性粒子である。
なお、本発明において、前記「粒子凝集型」の多孔性構造とは、粒子内に孔のない小さい粒子が相互に結合して骨格状を成すと同時に、前記粒子の隙間としての孔を形成している構造をいう。前記「粒子凝集型」の多孔性構造において、さらにその粒子の集合体の外形が略粒状を成すものを粒子凝集型の粒子という。
【0023】
前記多孔性粒子において、多孔構造が連通している貫通孔を有することは、例えば、前記多孔性粒子の断面又は表面の写真により確認できる。また、前記貫通孔の端部が、前記多孔性粒子の外部に向かって開口していることは、例えば、前記多孔性粒子の表面の写真により確認できる。
前記多孔性粒子は、例えば、スキン層(粒子表面を被覆している層)が無いことにより、前記貫通孔の端部が塞がれることなく、前記多孔性粒子の外部に向かって開口している。このスキン層の有無も、前記多孔性粒子の表面の写真により確認できる。また、前記多孔性粒子は、他の多孔性粒子と粒子間で結合せず互いに分離していることが好ましい。
【0024】
また、前記多孔性粒子は、他の多孔性粒子と粒子間で結合せず互いに分離している複数の多孔性粒子の集合体であってもよい。前記多孔性粒子の集合体のうち、略球状の多孔性粒子(前記多孔性粒子)の数が、例えば50%を超え、又は70%以上、80%以上、90%以上、等であってもよい。
【0025】
前記多孔性粒子において、前記多孔構造が連通している貫通孔は、例えば、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内にメソポアを有する連続気泡構造等であってもよい。
前記貫通孔の孔径は、特に限定されないが、例えば10~1,000,000nm(1mm)、20~100,000nm、又は30~50,000nmの範囲である。
前記貫通孔の平均孔径の下限値としては、圧力損失低減の観点から、1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、9nm以上がさらに好ましく、10nm以上がさらに好ましく、12nm以上が特に好ましい。
前記貫通孔の平均孔径の上限値としては、多孔性粒子の強度の観点から、20μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下以下がよりさらに好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が最も好ましい。
なお、前記貫通孔の孔径を、以下「細孔径」ともいう場合がある。細孔径については、後述するように、前記多孔性粒子製造時の各種要素に影響され、前記各種要素の調整により、前記細孔径を調整することが可能である。前記細孔径は、通常は不均一であり、その均一性(分散)の度合いは、例えば、前記多孔性粒子製造時の重合反応における系内の熱分布や撹拌の影響で異なる。
【0026】
前記多孔性粒子の単位重さあたりの全細孔容積の下限値は、特に限定されないが、圧力損失の低減の観点から1μL/gが好ましく、5μL/gがより好ましく、9μL/gがさらに好ましい。
前記多孔性粒子の単位重さあたりの全細孔容積の上限値は、特に限定されないが、多孔性粒子の強度の観点から、10mL/gが好ましく、5mL/gがより好ましく、1mL/gがさらに好ましい。
前記単位重さあたりの全細孔容積は、窒素ガス吸着法(BELsorp mini II、マイクロメリティックス社製)により測定する。
【0027】
前記多孔性粒子の空孔率(空隙率)は、特に限定されないが、例えば、30~95体積%、35~90体積%、又は40~85体積%である。前記空孔率(空隙率)は、例えば、窒素吸着法、水銀圧入法、液体クロマトグラフィー法などにより測定することができる
【0028】
前記多孔性粒子の材質は、特に限定されないが、例えば、有機ポリマー、無機ポリマー、及び有機・無機ハイブリッドポリマーが挙げられる。
前記有機ポリマーとしては、特に限定されず任意であるが、例えば、エポキシ樹脂、ポリエチレン誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。
前記ポリエチレン誘導体としては、例えば、側鎖に任意の置換基を有する誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のポリマーが挙げられる。前記ポリ(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、任意のポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ラウリル等ポリ(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコールエステル等が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の一方又は両方をいい、「(共)重合」とは「重合」と「共重合」の一方又は両方を意味する。「(メタ)アクリレート」についても同様である。また、「(ポリ)アルキレン………」は「アルキレン………」と「ポリアルキレン………」の一方又は両方をいう。「(ポリ)エチレン………」についても同様である。
【0029】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0030】
前記有機ポリマーは、例えば、主鎖中に、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、前記有機ポリマーは、例えば、側鎖(置換記)を含んでいても含んでいなくてもよく、側鎖中に、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0031】
また、前記無機ポリマーとしては、例えば、無機シリカ等が挙げられる。前記有機・無機ハイブリッドポリマーとしては、例えば、ハイブリッドシリカ等が挙げられる。すなわち、前記多孔性粒子は、例えば、シリカゲルにより、又はシリカゲルを含んで形成されていてもよい。
なお、本発明において、単に「シリカゲル」という場合、特に断らない限り、前記シリカゲルとしては、例えば、無機シリカでもよいし、ハイブリッドシリカでもよい。なお、前記無機シリカとは、分子中に有機基を含まないシリカゲルをいい、前記ハイブリッドシリカとは、分子中(例えば側鎖等)に有機基を含むシリカゲルをいう。
また、前記無機シリカ及びハイブリッドシリカは、それぞれ、分子中に、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、前記多孔性粒子は、例えば、単一のポリマーから構成されていてもよいが、複数のポリマーの混合物又はコポリマー等であってもよい。前記コポリマーは、例えば、ランダムコポリマーでもよいし、ブロックコポリマーでもよい。
【0032】
また、前記多孔性粒子を形成する前記ポリマーの原料モノマーは、例えば、ラジカル重合性モノマーでもよいが、イオン重合性モノマーでもよい(原料プレポリマーも同様。本段落において、以下同じ。)。
ラジカル重合モノマーの場合は、フリーラジカル重合を使用すると前述の粒子凝集型のポリマーになりやすいので、本願のスピノーダル分解を起こさせるためには逐次反応的に進むリビングラジカル重合を使用することが好ましい。イオン重合や縮重合も逐次反応であるのでスピノーダル分解を起こしやすいと言うことが出来る。
前記イオン重合性モノマーとしては、例えば、アニオン重合性モノマーでも、カチオン重合性モノマーでもよい。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、前記ポリエチレン誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。イオン重合性モノマーとしては、例えば、エポキシモノマー、スチレン、1,3ブタジエンとその誘導体、ビニルピリジン、メタアクリル酸エステル類、アクリロニトリル、等が挙げられる。
前記多孔性粒子を形成する前記モノマーは、例えば、ラジカル重合性モノマー以外のモノマーでもよく、例えば、イオン重合性モノマーでもよい。
【0033】
また、前記多孔性粒子は、前記ポリマー以外の他の成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、無機系のフィラー類(シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、等)、有機系のフィラー類(アクリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、等)、ナノファイバー類(カーボンナノファイパーやセルロースナノファイバー、等)等が挙げられる。
【0034】
前記多孔性粒子の材質が有機ポリマーである場合は、原料モノマーの組合せにより、前記多孔性粒子の表面積や粒径、表面積の性質を変化させることができる。
【0035】
前記多孔性粒子は、エポキシ化合物と硬化剤との共重合体により形成された多孔質体であってもよい。
前記多孔質体は、1~3級のアミノ基を含まないことが好ましい。また、前記多孔質体は、酸処理により4級化する窒素原子を含まないことが好ましい。
前記多孔質体としては、例えば、国際公開第2020/179642号に記載の多孔質体などが挙げられる。
【0036】
[エポキシ化合物]
前記エポキシ化合物は、1~3級のアミノ基を含まないことが好ましい。また、前記エポキシ化合物は、酸処理により4級化する窒素原子を含まないことが好ましい。アミド結合、ウレタン結合等の窒素原子であれば、酸性下でも4級化しない。
【0037】
前記多孔質体が前記1~3級のアミノ基を含まない場合において、前記エポキシ化合物が1~3級のアミノ基を含んでいるか、又は前記エポキシ化合物が酸処理により4級化する窒素原子を含んでいても、製造される多孔質体が、1~3級のアミノ基を含まなければよい。
【0038】
前記多孔質体が前記酸処理により4級化する窒素原子を含まない場合において、前記エポキシ化合物が1~3級のアミノ基を含んでいるか、又は前記エポキシ化合物が酸処理により4級化する窒素原子を含んでいても、製造される多孔質体が、酸処理により4級化する窒素原子を含まなければよい。
【0039】
前記エポキシ化合物は、1種単独でも2種以上併用してもよい。また、例えば、膨潤による悪影響や付加反応時の阻害が許容できる範囲においては、窒素原子を含むエポキシ化合物の使用または併用も可能である。
【0040】
前記エポキシ化合物は、1分子中のエポキシ基の数が多い方が、多孔質構造が形成されやすく好ましい。具体的には、例えば、前記エポキシ化合物1分子中のエポキシ基の数が、5個以上または10個以上であってもよく、上限は特に限定されないが、例えば、30以下または15以下であってもよい。また、前記エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基が2個以下であるエポキシ化合物を含まないことが好ましい。
【0041】
前記エポキシ化合物は、例えば、エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方であってもよい。例えば、前記エポキシ化合物として、製造される多孔質体の構造に対応したエポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方を用いることができる。
【0042】
前記エポキシ化合物の具体例は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。
【0043】
1~3級の窒素原子を含まないエポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やEHPE3150(株式会社ダイセルの商品名、詳細は後述)などが挙げられる。
【0044】
1~3級の窒素原子を含むエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルアミンタイプのTETRAD-C(テトラッド-Cともいう、三菱ガス化学株式会社の商品名)、トリアジン環を有するTEPIC(テピックともいう、日産化学株式会社の商品名)などが挙げられる。
【0045】
TETRAD-Cの構造は、下記化学式(1)で表される。
【0046】
【0047】
TEPICの構造は、下記化学式(4)で表される。また、TEPICのシリーズとしては、例えば、TEPIC-L(テピックL)、TEPIC-VL(テピックVL)、TEPIC-FL(テピックFL)、TEPIC-PAS(テピックPAS)、TEPIC-UC(テピックUC)が挙げられる。これらは、下記化学式(4)の構造の一部を変化させたものであり、TEPICと類似の構造を有する。
【0048】
【0049】
窒素原子を含まないエポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式タイプのEHPE3150(株式会社ダイセルの商品名)などが挙げられる。特に、EHPE3150、ノボラック型エポキシ化合物が好ましい。なお、EHPE3150は「2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物」という化学構造を有し、下記化学式(E1)で表すことができる。下記化学式(E1)において、nは、正の整数であり、例えば、10~15である。
【0050】
【0051】
前記エポキシ化合物(例えば、エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方)は、例えば、多官能エポキシ基含有化合物であってもよい。
【0052】
[硬化剤]
前記硬化剤は、特に限定されない。また、前記硬化剤は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0053】
前記多孔質体が前記1~3級のアミノ基を含まない場合において、前記硬化剤が1~3級のアミノ基を含んでいるか、又は前記硬化剤が酸処理により4級化する窒素原子を含んでいても、製造される多孔質体が、1~3級のアミノ基を含まなければよい。
【0054】
前記多孔質体が前記酸処理により4級化する窒素原子を含まない場合において、前記硬化剤が1~3級のアミノ基を含んでいるか、又は前記硬化剤が酸処理により4級化する窒素原子を含んでいても、製造される多孔質体が、酸処理により4級化する窒素原子を含まなければよい。
【0055】
前記硬化剤としては、例えば、一般的なエポキシ樹脂用の硬化剤を用いることができる。1~3級のアミノ基を含まない硬化剤としては、フェノール化合物、酸無水物、ポリメルカプタン等が挙げられ、特にフェノール化合物が好ましい。
【0056】
一般的なフェノールノボラック樹脂ではなく水酸基が二個以下の低官能基成分を除去したフェノール樹脂を使用することにより、窒素原子を含まない硬化剤で多孔質構造が形成できる。ただし、前記多孔質体において、前記エポキシ化合物及び前記フェノール化合物は、前述のとおり、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記硬化剤として用いるフェノール化合物としては、フェノールノボラックタイプ、トリフェニルメタンタイプ、テトラキスフェノールエタンタイプ、キシリレンタイプ、ビフェニレンタイプ、ナフトール/クレゾールタイプ、ジシクロペンタジエンタイプなどがあるが、1分子中にフェノール性水酸基を3個(3官能)以上含むことが好ましい。また、前記フェノール化合物は、1分子中にフェノール性水酸基が2個(2官能)以下であるフェノール化合物を含まないことが好ましい。前記硬化剤において、1分子中に含まれるフェノール性水酸基が多い方が、スピノーダル分解による相分離で共連続構造(多孔構造が連通している孔を有する構造)が形成されやすいためである。
【0058】
前記硬化剤としては、好ましくは、2官能以下の成分を含まないフェノールノボラックタイプ、トリフェニルメタンタイプ、キシリレンタイプ、ビフェニレンタイプ、ナフトール/クレゾールタイプであり、特に好ましくは2官能以下の成分を含まないフェノールノボラックタイプ、トリフェニルメタンタイプである。
【0059】
前記硬化剤は、前述のとおり、2種類以上の併用も可能であり、スピノーダル分解による相分離で共連続構造ができる限りにおいては2官能成分以下の併用も可能である。2官能以下の成分を含まないフェノールノボラックタイプとしてはDL-92(明和化成株式会社の商品名、同社製品のフェノールノボラックタイプH-4からダイマー(2量体)を除いたもの)、MEH-7500(明和化成株式会社の商品名)などが挙げられる。DL-92は、下記化学式(F1)で表すことができる。下記化学式(F1)において、nは、正の整数であり、例えば、3~10程度である。
【0060】
【0061】
--多孔性粒子の製造方法--
前記多孔性粒子の製造方法は、モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、分散媒中に分散させて分散液を調製する分散液調製工程と、前記多孔性粒子原料を前記分散液中で重合させる重合工程と、を含み、前記重合工程において、スピノーダル分解により前記貫通孔を形成する。
【0062】
前記多孔性粒子の製造方法は、例えば、前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を、分散剤とともに分散媒中に分散させる。前記分散剤は、例えば、界面活性剤であってもよい。
【0063】
前記多孔性粒子の製造方法において、例えば、前記分散剤が、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックを含んで形成された前記ブロックコポリマーであってもよい。
この場合において、例えば、前記多孔性粒子の製造方法が、さらに、前記分散剤(前記ブロックコポリマー)を製造する分散剤製造工程を含み、前記分散剤製造工程が、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックの一方を形成する第1のリビングラジカル重合工程と、前記第1のリビングラジカル重合工程後に、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックの他方を形成する第2のリビングラジカル重合工程と、を含んでいてもよい。
なお、前記前記ブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックを含んで形成されているから、広義の「界面活性剤」ということができる。
【0064】
前記製造方法により、多孔構造が連通している貫通孔を有する、外形が略球状の、スキン層がない多孔性粒子を製造することができる。このメカニズムは不明であるが、例えば、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持することができるためと推測される。
具体的には、例えば、前記界面を適切な状態に維持することによって、前記多孔性粒子原料を凝集させずに重合することができるため、前記貫通孔を形成できると考えられる。また、例えば、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に粒子状に分散した状態を維持できるので、略球状の前記多孔性粒子を製造できると考えられる。また、例えば、前記界面において、前記多孔性粒子原料中の親水性物質又は疎水性物質の一方が偏在すると、それが重合等を起こすことにより、スキン層が形成されるおそれがある。このスキン層により、多孔性粒子表面で貫通孔が塞がれてしまいやすい。しかし、前記界面において、親水性物質と疎水性物質との比を適切な状態に制御することで、スキン層の形成を防止することができる。
ただし、このメカニズムは例示であり、本発明をなんら限定しない。
【0065】
前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持する方法は、特に限定されないが、例えば、前記界面活性剤、又は広義の界面活性剤である前記ブロックコポリマー(分散剤)を用いる方法が挙げられる。また、前記界面活性剤又は前記ブロックコポリマー(分散剤)において、後述するように、疎水性部分と親水性部分の比を適切に制御することが好ましい。
また、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持する方法として、例えば、前記分散液を物理的に攪拌する方法等も挙げられる。
【0066】
本発明において「スピノーダル分解」は、多成分混合系が共連続構造を形成して相分離(例えば、2成分混合系が2相分離)する現象、又は相分離した状態をいう。
「スピノーダル分解」は、例えば、2成分混合系を高温度から急冷し不安定状態においた場合におこる2相分離の過程をいう場合もあるが、本発明では、前記急冷した場合に限定されない。すなわち、本発明において、前記スピノーダル分解を起こさせる方法は、特に限定されず、どのような方法でもよい。例えば、前記多孔性粒子原料が分散媒中に分散され、かつ、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持したまま、前記多孔性粒子原料を重合又は架橋させることで、スピノーダル分解が生じてその構造が固定されると考えられる。前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持する方法は、例えば、前述のとおりである。
【0067】
以下、前記多孔性粒子の製造方法について、より具体的に説明する。
【0068】
[1.分散液]
前記多孔性粒子の製造方法では、まず、モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、分散媒中に分散させて分散液を調製する(分散液調製工程)。
前記モノマー及びプレポリマーは、特に限定されないが、例えば、前述の有機ポリマー、無機ポリマー及び有機・無機ハイブリッドポリマーのそれぞれに対応したモノマー及びプレポリマーが挙げられる。
例えば、エポキシ樹脂の原料としては、例えば、前記各エポキシ樹脂に対応したエポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方を用いることができる。前記エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーは、1種単独でも2種以上併用してもよい。
前記エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーとしては、例えば、三菱ガス化学工業株式会社の商品名「テトラッド-C」、及び日産化学株式会社の商品名「テピック」、三菱化学株式会社の商品名「エピコート828」等が挙げられる。
シリカゲルの場合、原料モノマーとしては、例えば、TMOS(テトラメトキシシラン)、TEOS(テトラエトキシシラン)、MTMS(メトキシシラン)、SQ(シルセスキオキサン)等が挙げられる。
また、有機・無機ハイブリッド系の原料モノマーとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、1,2-ビストリメトキシシリルエタン等のオルガノアルコキシシラン、及び、シランカップリング剤の反応部を含む有機高分子化合物とシリカの組合せも挙げられ、これらは、例えば、ハイブリッドシリカの原料モノマーとして用いることができる。
【0069】
前記エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーは、例えば、多官能エポキシ基含有化合物であってもよい。また、前記エポキシ樹脂は、例えば、前記エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーと、硬化剤とを重合させたものでもよい。
前記硬化剤は、例えば、多官能アミノ基含有化合物であってもよい。すなわち、前記エポキシ樹脂は、例えば、多官能エポキシ基含有化合物と多官能アミノ基含有化合物との重合体であってもよい。また、前記エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーは、1種単独でも2種以上併用してもよく、前記硬化剤は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0070】
前記多官能エポキシ基含有化合物は、1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ化合物であり、1分子中にエポキシ基を3個以上、例えば3個又は4個有することが好ましい。1分子中に3個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物を用いることにより、例えば、適切な細孔径と強度を合わせ持った多孔性エポキシ樹脂粒子を製造することが可能となる。前記多官能エポキシ基含有化合物は、例えば、芳香族エポキシ化合物であっても非芳香族エポキシ化合物であってもよい。
また、前記多官能エポキシ基含有化合物は、例えば、高分子化合物(例えばオリゴマー又はプレポリマー)であっても、低分子化合物(例えばモノマー)であってもよい。
【0071】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、スチルベン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースなどのポリフェニルベースエポキシ化合物、フルオレン含有エポキシ化合物、トリアジン環含有エポキシ化合物等、複素芳香環を含むエポキシ化合物等が挙げられる。
【0072】
前記芳香族エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、フルオレン含有エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレートであり、特に好ましくは、エポキシ当量が500以下で、融点が100℃以下である、ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、フルオレン含有エポキシ化合物等であってもよい。また、前記芳香族エポキシ化合物は、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(前記化学式(1)のシクロヘキサン環をベンゼン環に変えた化合物)等であってもよい。
【0073】
前記非芳香族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環族グリシジルエステル型エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは脂環族グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環族グリシジルエステル型エポキシ化合物等が挙げられる。特に好ましくは、エポキシ当量が500以下で、融点が100℃以下の脂環族グリシジルエーテル型エポキシ化合物、又は脂環族グリシジルエステル型エポキシ化合物である。
【0074】
また、前記非芳香族エポキシ化合物としては、前述の理由により、1分子中にエポキシ基を3個以上、例えば3~4個有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0075】
1分子中に3個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物としては特に限定されず、脂環式の炭化水素基と3個以上のエポキシ基とを有するものを適宜利用することができる。また、より親水性を高めるという観点からは、脂環式エポキシ化合物中に窒素原子を含むことが好ましい。脂環式エポキシ化合物中に窒素原子を含む化合物としては、例えば、下記化学式(A)で表される化合物でもよい。
【化5】
【0076】
前記化学式(A)中、Xは、式中の窒素原子と直接又は炭素数が1~5の直鎖アルキレン基を介して結合する炭素数が3~8の脂環式炭化水素基を表す。Yは、同一であっても異なってもよく、それぞれ、水素原子であるか、又は、式中の窒素原子と直接又は炭素数が1~5の直鎖アルキレン基を介して結合するエポキシ基である。mは、2、3又は4(特に好ましくは2)である。ただし、Y及びmは、前記化学式(A)中にエポキシ基が3個以上含まれるように選択される。また、各「NY2」は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0077】
前記化学式(A)中のXは、前述のとおり、式中の窒素原子と直接又は炭素数が1~5(より好ましくは1~3、さらに好ましくは1)の直鎖アルキレン基を介して結合する炭素数が3~8(より好ましくは4~7、さらに好ましくは5~6)の脂環式炭化水素基である。また、窒素原子と脂環式炭化水素基との間に存在し得る前記直鎖アルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等である。前記直鎖アルキレン基の炭素数は、多孔性粒子の機械的強度低下防止の観点から、前記上限を超えないことが好ましい。このようなXとしては、例えば、下記式(I)~(VI)で表される基が挙げられる。
【化6】
【0078】
また、前記化学式(A)中のYは、前述のとおり、式中の窒素原子と直接又は炭素数が1~5(より好ましくは1~3、さらに好ましくは1)の直鎖アルキレン基を介して結合するエポキシ基である。前記直鎖アルキレン基は、特に限定されないが、例えば、Xで説明した直鎖アルキレン基と同様である。
【0079】
また、前記化学式(A)中のmは、前述のとおり2、3又は4である。架橋反応が不十分とならない観点から、mは2以上が好ましく、立体障害による反応性の低下を引き起こさない観点から、mは4以下が好ましい。また、前記化学式(A)中の各「NY2」において、前述のとおり、Yは、同一であっても異なってもよく、それぞれ、水素原子であるか、又は、式中の窒素原子と直接又は炭素数が1~5の直鎖アルキレン基を介して結合するエポキシ基である。各「NY2」において、Yの少なくとも1つ(好ましくは2つとも)が、前記エポキシ基であることが好ましい。前記化学式(A)中のエポキシ基の数は、架橋反応が不十分とならない観点から、少なすぎないことが好ましく、立体障害による反応性の低下を引き起こさない観点から、多すぎないことが好ましい。
【0080】
1分子中に3個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、例えば、下記化学式(1A)又は(1)で表される化合物が挙げられる。
【化7】
【0081】
前記非芳香族エポキシ化合物としては、例えば、「イソシアヌル酸トリグリシジル」すなわちトリグリシジルイソシアヌレート(2,2,2,-トリ-(2,3-エポキシプロピル)-イソシアヌレート)のように、イソシアヌル環を有する化合物であってもよい。
【0082】
得られる多孔性エポキシ樹脂粒子に高い親水性を付与できる観点から、多官能エポキシ基含有化合物としては窒素原子を有するものが好ましい。特に多官能アミノ基含有化合物との相溶性や反応性、得られる多孔性エポキシ樹脂粒子の強度の観点から、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンが好ましい。また、高い親水性及び原料の汎用性の観点からトリグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
【0083】
これらの多官能エポキシ基含有化合物は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0084】
また、前記多孔性エポキシ樹脂粒子の原料となる多官能エポキシ基含有化合物は、例えば、芳香族アミノ化合物であっても非芳香族アミノ化合物であってもよい。
【0085】
前記芳香族アミノ化合物としては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン等の芳香族アミノ化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、トリアジン環などの複素芳香環を有するアミノ化合物等が挙げられる。好ましくは分子内に一級アミノ基を2以上有する芳香族アミノ化合物であり、特に好ましくは、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンである。
【0086】
前記非芳香族アミノ化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミノ化合物、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンやこれらの変性物等の脂環式アミノ化合物、その他、ポリアミノ化合物とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミノ化合物等が挙げられる。
【0087】
これらのうち、効率的な架橋反応を達成するという観点から、分子内に1級アミノ基を2個以上有する脂環式アミノ化合物が好ましく、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、及びこれらの変性物からなる群の中から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、中でも、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンが特に好ましい。なお、このようなアミンの変性物としては、エポキシ変性物、カルボン酸変性物、尿素変性物、ケトン化合物による変性物、シラン化合物による変性物等の各種変性物が挙げられ、前述のような脂環式アミノ化合物を公知の方法で変性させたものを適宜用いることができる。
【0088】
これらの多官能アミノ基含有化合物は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0089】
前記多孔性粒子原料(モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方)において、エポキシモノマー及びエポキシプレポリマー以外の例としては、例えば、スチレン、エチルスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体などの芳香族モノビニル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリルのようなニトリル類;グリシジル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシブチル(メタ)アクリレート、9,10-エポキシステアリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有化合物;その他のビニルエステル類、ビニルエーテル類等のモノビニル単量体が挙げられる。前記多孔性粒子は、例えば、前記多孔性粒子原料の1種又は2種以上を(共)重合物した後、得られた(共)重合物に対してエピクロルヒドリン、(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル、アルキレンジイソシアネート等の架橋剤を用いて架橋構造を導入することにより多孔質架橋粒子としたものや、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等の芳香族ポリビニル化合物、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、グリセロールジ(メタ)アクリル酸エステル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリカルボン酸ポリビニルエステル類、ポリカルボン酸ポリアリルエステル類、ポリオールポリビニルエーテル類、ポリオールポリアリルエーテル類、ブタジエン、メチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル等のポリビニル化合物の1種又は2種以上を(共)重合させたもの、もしくはこのようなポリビニル化合物の1種又は2種以上と、上述のモノビニル単量体の1種又は2種以上とを共重合して得られる多孔質架橋粒子などであってもよい。工業的な生産性の観点からは、ポリビニル化合物の1種又は2種以上とモノビニル単量体の1種又は2種以上を共重合させたものが好ましい。
【0090】
前記分散媒としては、特に限定されないが、有機溶媒及び水が挙げられ、単独で用いても二種類以上併用してもよい。前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジオクチルフタレートなどが挙げられ、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0091】
前記分散液中において、前記多孔性粒子原料(モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方)の濃度は、特に限定されないが、前記分散媒に対し、例えば0.01~10,000g/L、1~5,000g/L、又は5~3,000g/Lである。
【0092】
また、前記多孔性粒子の製造方法は、例えば、前記分散液調製工程において、前記多孔性粒子原料を、分散剤とともに分散媒中に分散させてもよい。前記分散剤の濃度は、特に限定されないが、前記分散媒に対し、例えば1~500g/L、2~300g/L、又は3~250g/Lである。
【0093】
前記分散剤は、例えば、界面活性剤であってもよい。前記界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、親水性ブロックと疎水性ブロックからなるブロックコポリマー、例えばポリアクリル酸ブロックとポリアクリルエステルブロックからなるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンブロックとポリアクリルエステルブロックからなるブロックコポリマー、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックからなるブロックコポリマー、等が挙げられる。
【0094】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、脂肪アルコールのリン酸エステル塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキル1級アミン塩、アルキル2級アミン塩、アルキル3級アミン塩、アルキル4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられる。高分子界面活性剤としては、部分ケン化ポリビニルアルコール、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、部分ケン化ポリメタクリル酸塩等が例示される。
【0095】
用いる界面活性剤を選択することにより、得られる多孔性エポキシ樹脂粒子の平均粒径や粒度分布、粒子の凝集状態を制御することができ、例えば、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を用いることにより、平均粒径を小さく且つ粒度分布を狭くすることができる。また、高分子界面活性剤を用いることにより平均粒径を大きくすると共に、粒子の凝集を抑制することができる。なかでも、界面活性剤として、親水性ブロックと疎水性ブロックからなるブロックコポリマーを用いる場合には、少量の添加で乳化できることから、重合反応時の溶液の粘度を低く保つことができるため撹拌が容易となり好ましい。
【0096】
これらの界面活性剤は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0097】
また、例えば、前記分散剤が、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックを含んで形成されたブロックコポリマーであってもよい。この場合において、例えば、前記多孔性粒子の製造方法が、さらに、前記分散剤を製造する分散剤製造工程を含み、前記分散剤製造工程が、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックの一方を形成する第1のリビングラジカル重合工程と、前記第1のリビングラジカル重合工程後に、リビングラジカル重合により前記疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックの他方を形成する第2のリビングラジカル重合工程と、を含んでいてもよい。なお、前記ブロックコポリマー(分散剤)及び前記分散剤製造工程については、後述の[2.ブロックコポリマー(分散剤)及び分散剤製造工程]において詳しく説明する。
【0098】
また、前記分散液調製工程において、前記分散液中に、前記多孔性粒子原料及び前記分散剤以外の他の成分を含有させてもよい。前記他の成分は、特に限定されないが、例えば、本来の分散に影響を生じない範囲でノニオン活性剤以外の他の界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。
【0099】
[2.ブロックコポリマー(分散剤)及び分散剤製造工程]
以下において、前記ブロックコポリマー(分散剤)及び前記分散剤製造工程について詳しく説明する。
【0100】
まず、前記ブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロック及び親水性ポリマーブロックを含んで形成されているから、前述のとおり、広義の「界面活性剤」ということができる。また、前記ブロックコポリマー及び前記分散剤製造工程は、例えば、特開2015-83688号公報の記載と同様もしくはそれに準じてもよいし、又は、それを参考にしてもよい。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0101】
前記ブロックコポリマーは、例えば、前記疎水性ポリマーブロック(以下、単に「疎水性ブロック」又は「疎水性ブロックA」又は「Aブロック」ということがある。)-前記親水性ポリマーブロック(以下、単に「親水性ブロック」又は「親水性ブロックB」又は「Bブロック」ということがある。)からなるジブロックコポリマーであってもよい。前記ブロックコポリマーは、例えば、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、有機リン化合物、有機窒素化合物又は有機酸素化合物を触媒として、ラジカル発生剤を用いて付加重合性モノマーを重合して得られたブロックコポリマーであってもよい。
【0102】
前記ブロックコポリマー分子中において、前記Aブロック(疎水性ブロック)の含有率は、例えば、5~95質量%、10~90質量%、15~85質量%、又は20~80質量%である。
また、前記ブロックコポリマー分子中において、前記Bブロック(親水性ブロック)の含有率は、例えば、5~95質量%、10~90質量%、15~85質量%、又は20~80質量%である。
【0103】
また、前記Aブロック(疎水性ブロック)の原料である疎水性モノマーは、例えば、疎水基を有する(メタ)アクリレート((メタ)アクリス酸エステル)、疎水基を有するビニル化合物、疎水基を有するアリル化合物、等が挙げられる。
前記Bブロック(親水性ブロック)の原料である親水性モノマーは、例えば、親水基を有する(メタ)アクリレート((メタ)アクリス酸エステル)、親水基を有するビニル化合物、親水基を有するアリル化合物、等が挙げられる。
例えば、前記疎水性モノマーがラウリル(メタ)アクリレートを含み、かつ、親水性モノマーがポリエチレングリコールメタクリレートを含んでいてもよい。
【0104】
前記分散剤(ブロックコポリマー)は、前述のとおり、疎水性ポリマーブロックA及び親水性ポリマーブロックBを含んで形成されたジブロックの構造で(以下「A-Bジブロックポリマー」という場合がある。)ある。例えば、前記分散液調製工程において、前記分散剤(ブロックコポリマー)を、前記多孔性粒子原料(モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む)とともに前記分散媒中に分散させる。
前記多孔性粒子原料が前記分散媒に対し相対的に親水性が高い場合、例えば、親水性ポリマーブロックBが前記多孔性粒子原料に吸着し、前記多孔性粒子原料が凝集してできた粒子の表面を、疎水性ポリマーブロックAが被覆する。これにより、疎水性ポリマーブロックAが、疎水性の前記分散媒に向き合う形となる。
逆に、前記多孔性粒子原料が前記分散媒に対し相対的に疎水性が高い場合、例えば、疎水性ポリマーブロックAが前記多孔性粒子原料に吸着し、前記多孔性粒子原料が凝集してできた粒子の表面を、親水性ポリマーブロックBが被覆する。これにより、親水性ポリマーブロックBが、親水性の前記分散媒に向き合う形となる。
このようにして、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に粒子状に分散した状態とすることができる。この状態は、例えば、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に乳化(懸濁)した状態ということもできる。これにより、例えば、重合前及び重合後の前記分散液の分散安定性や保存安定性を向上させることもできる。
【0105】
なお、前記多孔性粒子原料(モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む)については前述のとおりであるが、例えば、前記多孔性原料が、ラジカル重合性あるいは熱硬化性のモノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含んでいてもよい。また、前記モノマー及びプレポリマーは、例えば、親水性のモノマー及びプレポリマーであってもよい。
【0106】
つぎに、前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法は、例えば、前述のとおり、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、有機リン化合物、有機窒素化合物又は有機酸素化合物を触媒として、ラジカル発生剤を用いて付加重合性モノマー(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を重合する製造方法であってもよい。このような製造方法は、例えば、特開2015-83688号公報に記載されている。この製造方法によれば、重金属、臭気、着色、コストなどの問題がない。具体的には、例えば、下記(1)~(6)の利点がある。
(1)重金属化合物を使用しない;ATRP法やDT法のような重金属化合物を使用しない。
(2)精製が必須ではない;ATRP法やDT法は重金属、RAFT法やMADIX法は硫黄化合物の除去が必要である。
(3)特殊で高価な化合物を必要とせず、市場にある比較的安価な材料が使用でき、よって低コストである;他のリビングラジカル重合方法では特別な化合物が必要である。
(4)重合条件が温和で、従来のラジカル重合方法と同様の条件で重合を行うことができる;NMP法では高温が必要であり、ATRP法では酸素の除去が必要である。
(5)使用するモノマーや溶媒なども精製する必要がなく、様々なモノマーが使用でき、酸基、アミノ基などの様々な官能基を有するモノマーを使用することが可能で、ポリマーブロックに様々な官能基を導入することができる;特にATRP法では酸基がその触媒毒となり、酸基をそのまま使用することはできない。NMP法ではメタクリレートはうまく重合しない。
(6)分子量と構造が制御でき、所望の結合状態のブロックポリマーが容易に得られ、かつ重合率も非常によい。
【0107】
なお、前記説明は例示であって、本発明において、前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法は、特に限定されない。すなわち、前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法は、特開2015-83688号公報に記載の方法のみには限定されず、どのような製造方法でもよい。
【0108】
前記Aブロックを形成する疎水性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルプロパン(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの脂肪族、脂環族、芳香族アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の長いものが好ましい。
前記疎水性モノマーは、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0109】
前記Bブロックを構成する親水性モノマーは、特に限定されないが、例えば、ポリグリコール基を有するモノマーが挙げられ、より具体的には、例えば、ポリ(n=2以上)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノ又はポリ(n=2以上)エチレングリコールモノ又はポリ(n=2以上)プロピレングリコールランダムコポリマーのモノ(メタ)アクリレート、モノ又はポリ(n=2以上)エチレングリコールモノ又はポリ(n=2以上)プロピレングリコールブロックコポリマーのモノ(メタ)アクリレート、などのポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、さらには(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノオクチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノオレイルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノステアリン酸エステル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノオクチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル又はエステルのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にポリ(n=6以上)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが望ましい。
なお、前記nは、前記ポリグリコール基における重合度を表す。
また、前記親水性モノマーは、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0110】
また、前記ブロックコポリマー(分散剤)は、前記疎水性ポリマーブロックA(Aブロック)及び親水性ポリマーブロックB(Bブロック)のみから形成されていてもよいが、それ以外の構成要素を含んで(共重合されて)いてもよい。前記Aブロック及びBブロックの基本的性質を変えない範囲で共重合し得るモノマーとしては、従来公知のモノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルヒドロキシベンゼン、クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルエチルベンゼン、ビニルジメチルベンゼン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、1-ヘキセン、シクロヘキセン、シクロデセン、ジクロロエチレン、クロロエチレン、フロロエチレン、テトラフロロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソシアナトジメチルメタンイソプロペニルベンゼン、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシメチルスチレンなどのビニル系モノマー、水酸基を含有するモノマーとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、さらには、その他のモノマーとしては、(メタ)アクリロイロキシエチルモノ又はポリ(n=2以上)カプロラクトンなどの前記した(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ε-カプロラクトンやγ-ブチロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られるポリエステル系モノ(メタ)アクリル酸エステル;2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレートや2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルスクシネートなどの前記した(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルに2塩基酸を反応させてハーフエステル化したのち、もう一方のカルボキシル基にアルコール、アルキレングリコールを反応させたエステル系(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレートやジメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどの3個以上の水酸基をもつ多官能水酸基化合物のモノ(メタ)アクリレート;3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン元素含有(メタ)アクリレート;2-(4-ベンゾキシ-3-ヒドロキシフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5-(メタ)アクリロイロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールの如き紫外線を吸収するモノマー、特にこのモノマーは色素の耐光性を向上させるのに共重合するとよい;エチル-α-ヒドロキシメチルアクリレートなどのα位水酸基メチル置換アクリレート類などが挙げられる。
【0111】
前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPC)におけるスチレン換算の数平均分子量(以下数平均分子量はGPCのスチレン換算を言い、単に分子量という)で、例えば1,000以上、1,500以上、2,000以上又は3,000以上であり、例えば300,000以下、100,000以下、又は50,000以下である。前記分子量の範囲は、例えば、1,000~300,000、好ましくは1,500~100,000、さらに好ましくは2,000~50,000、さらに好ましくは3,000~50,000である。前記多孔性粒子原料の、前記分散媒中への分散安定性の観点からは、前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量が1,000以上であることが好ましい。また、前記ブロックコポリマー(分散剤)の、前記分散媒に対する溶解性の観点からは、前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量が300,000以下であることが好ましい。前記ブロックコポリマー(分散剤)の分子量が大きすぎると分散媒中での分散剤同士の凝集や分子間の絡まりが強くなりすぎて前記多孔性粒子原料の分散が出来ないおそれがある。
【0112】
前記ブロックコポリマー(分散剤)における、重量平均分子量と数平均分子量の比である分散度(以下PDIと称す)は、特に限定されない。リビングラジカル重合では非常に小さいPDI(~1.3)の高分子分散剤とすることができるが、本発明では前記ブロックコポリマー(分散剤)が前記したブロック構造をとることが重要であるので、PDIは大きくは関与しない。しかし、あまりに広いPDIであると、前記ブロックコポリマー(分散剤)が、分子量の大きいポリマーから分子量の小さいポリマーまで含むことになり、前記した分子量範囲以外の現象が起こる可能性があり好ましくない。本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)では、PDIは好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。
【0113】
つぎに、前記ブロックコポリマー(分散剤)中における疎水性ブロックと親水性ブロックの質量比は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。
この疎水性ブロックと親水性ブロックの質量比を適切に制御することで、例えば、前記多孔性粒子の製造方法において、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面を適切な状態に維持することができる。これによって、例えば、前記多孔性粒子原料が前記分散媒中に粒子状に分散した状態を維持できるので、略球状の前記多孔性粒子を製造できる。また、例えば、前記疎水性ブロックと親水性ブロックの質量比を適切に制御することで、前記多孔性粒子原料と前記分散媒との界面において、親水性物質と疎水性物質との比を適切な状態に制御することができる。例えば、前記界面において、親水性物質又は疎水性物質の一方が偏在すると、それが重合等を起こすことにより、スキン層が形成されるおそれがある。このスキン層により、多孔性粒子表面で貫通孔が塞がれてしまいやすい。しかし、前記界面において、親水性物質と疎水性物質との比を適切な状態に制御することで、スキン層の形成を防止することができる。ただし、これらの説明は例示であって、本発明を限定しない。
【0114】
つぎに、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)を得る重合方法(製造方法)について説明する。この重合方法は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、有機ヨウ化物を重合開始化合物とし、有機リン化合物、有機窒素化合物又は有機酸素化合物を触媒として、ラジカル発生剤を用いて付加重合性モノマー(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を重合する方法であってもよい。
この重合方法は、金属化合物やリガンドを使用せず、ニトロキサイド、ジチオカルボン酸エステルやザンテートなどの特殊な化合物を使用しなくてもよく、従来の付加重合性モノマーとラジカル発生剤である重合開始剤を使用するラジカル重合に、有機ヨウ化物である開始化合物と触媒を併用するだけで、容易に行えるリビングラジカル重合である。
【0115】
上記重合方法は、下記一般反応式1
【数1】
で表される反応機構で進み、ドーマント種Polymer-X(P-X)の成長ラジカルへの可逆的活性反応であると考えられる。この重合機構は触媒の種類によって変わる可能性があるが、つぎのように進むと考えられる。上記式1では、重合開始剤から発生したP・がXAと反応して、in siteで触媒A・が生成する。A・はP-Xの活性化剤として作用して、この触媒作用によってP-Xは高い頻度で活性化する。
【0116】
さらに詳しくは、ヨウ素(X)が結合した開始化合物の存在下、重合開始剤から生じるラジカルが、触媒の活性水素や活性ハロゲン原子を引き抜き、触媒ラジカルA・となる。ついでそのA・が開始化合物のXを引き抜きXAとなり、その開始化合物がラジカルとなって、そのラジカルにモノマーが重合し、すぐにXAからXを引き抜き、停止反応を防止する。さらに熱などによってA・が末端XからXを引き抜きXAと末端ラジカルとなってそこにモノマーが反応して、すぐに末端ラジカルにXを与え安定化させる。この繰り返しで重合が進行して分子量や構造の制御ができる。但し、場合によっては、副反応として、二分子停止反応や不均化を伴うことがある。
【0117】
前記リビングラジカル重合を開始させる開始化合物は、従来公知の有機ヨウ化物であって特に限定されない。
具体的に例示すると、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化t-ブチル;アイオドフェニルメタン、アイオドジフェニルメタン、アイオドトリフェニルメタン、2-アイオド-1-フェニルエタン、1-アイオド-1-フェニルエタン、1-アイオド-1,1-ジフェニルエタン、ジヨードメタンなどのアルキルヨウ化物;アイオドジクロロメタン、アイオドクロロメタン、アイオドトリクロロメタン、アイオドジブロモメタンなどのヨウ素原子を含む有機ハロゲン化物;1-アイオドエタノール、1-アイオドプロパノール、2-アイオドプロパノール、2-アイオド-2-プロパノール、2-アイオド-2-メチルプロパノール、2-フェニル-1-アイオドエタノール、2-フェニル-2-アイオドエタノールなどのヨウ化アルコール;それらのヨウ化アルコールを酢酸、酪酸、フマル酸などのカルボン酸化合物とのエステル化合物;アイオド酢酸、α-アイオドプロピオン酸、α-アイオド酪酸、α-アイオドイソ酪酸、α-アイオド吉草酸、α-アイオドイソ吉草酸、α-アイオドカプロン酸、α-アイオドフェニル酢酸、α-アイオドジフェニル酢酸、α-アイオド-α-フェニルプロピオン酸、α-アイオド-β-フェニルプロピオン酸、β-アイオドプロピオン酸、β-アイオド酪酸、β-アイオドイソ酪酸、β-アイオド吉草酸、β-アイオドイソ吉草酸、β-アイオドカプロン酸、β-アイオドフェニル酢酸、β-アイオドジフェニル酢酸、β-アイオド-α-フェニルプロピオン酸、β-アイオド-β-フェニルプロピオン酸などのヨウ化カルボン酸;それらヨウ化カルボン酸のメタノール、エタノール、フェノール、ベンジルアルコール、さらには前記したヨウ化アルコールなどとのエステル化物;それらのヨウ化カルボン酸の酸無水物;それらのヨウ化カルボン酸のクロライド、ブロマイドなどの酸無水物;ヨードアセトニトリル、2-シアノ-2-アイオドプロパン、2-シアノ-2-アイオドブタン、1-シアノ-1-アイオドシクロヘキサン、2-シアノ-2-アイオドバレロニトリルなどのシアノ基含有ヨウ化物などが挙げられる。
また、ヨウ素を2つもつ2官能開始化合物も使用でき、例えば、1,2-ジアイオドエタン、1,2-ジアイオドテトラフロロエタン、1,2-ジアイオドテトラクロロエタン、1,2-ジアイオド-1-フェニルエタン、前記したα-アイオドイソ酪酸などのヨウ化カルボン酸とエチレングリコールなどのジオール、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンとの反応物などが挙げられる。なお、「アイオド」は「ヨード」と同義であり、ヨウ化物を表す。以下において同様である。
また、前記開始化合物は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0118】
また、これらの化合物は、例えば、市販品をそのまま使用してもよいし、従来公知の方法で得ることもできる。例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物とヨウ素の反応によって得られるし、又は前記した有機ヨウ化物のヨウ素の代わりにブロマイド、クロライドなどの他のハロゲン原子が置換した有機ハロゲン化物を、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩を使用しハロゲン交換反応させて本発明で用いる有機ヨウ化物を得ることができる。それらは特に限定されない。
【0119】
前記触媒としては、例えば、前記開始化合物のヨウ素原子を引き抜き、ラジカルとなる有機リン化合物、有機窒素化合物、又は有機酸素化合物であって、好ましくは、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物である有機リン化合物、又はイミド系化合物、ヒダントイン系化合物である有機窒素化合物、又はフェノール系化合物、アイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類である有機酸素化合物の1種以上から選ばれる。これらの化合物は特に限定されないが、具体的に例示すると、リン化合物では、ヨウ素原子を含むハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート系化合物であり、例えば、ジクロロアイオドリン、ジブロモアイオドリン、三ヨウ化リン、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジパーフロロエチルフォスフィネート、ジフェニルフォスファイト、ジベンジルフォスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フォスファイト、ジアリルフォスファイト、エチレンフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネート、エトキシメチルフォスフィネート、フェノキシメチルフォスフィネートなどが挙げられる。窒素化合物ではイミド系化合物、ヒダントイン系化合物であり、例えば、スクシンイミド、2,2-ジメチルスクシンイミド、α,α-ジメチル-β-メチルスクシンイミド、3-エチル-3-メチル-2,5-ピロリジンジオン、シス-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、α-メチル-α-プロピルスクシンイミド、5-メチルヘキサヒドロイソインドール-1,3-ジオン、2-フェニルスクシンイミド、α-メチル-α-フェニルスクシンイミド、2,3-ジアセトキシスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、4-メチルフタルイミド、N-クロロフタルイミド、N-ブロモフタルイミド、N-ブロモフタルイミド、4-ニトロフタルイミド、2,3-ナフタレンカルボキシイミド、ピロメリットジイミド、5-ブロモイソインドール-1,3-ジオン、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-アイオドスクシンイミド、ヒダントイン、ジアイオドヒダントインなどが挙げられる。酸素化合物としては、芳香環に水酸基を有するフェノール性水酸基であるフェノール系化合物、そのフェノール性水酸基のヨウ素化物であるアイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類であり、例えば、フェノール類としてフェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルフェノール、t-ブチルメチルフェノール、カテコール、レソルシノール、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ジ-t-ブチルメトキシフェノール、ヒドロキシスチレンを重合したポリマー又はそのヒドロキシフェニル基担持ポリマー微粒子などが挙げられる。
これらはモノマーの保存として重合禁止剤として添加されているので、市販品のモノマーを精製せずそのまま使用することで効果を発揮することもできる。
アイオドオキシフェニル化合物としてはチモールジアイオダイドなどが挙げられ、ビタミン類としてはビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。
【0120】
前記触媒の量としては、特に限定されないが、例えば、前記重合開始剤のモル数未満である。前記触媒のモル数が多すぎると、重合が制御されすぎて重合が進行しないおそれがある。
【0121】
つぎに、本発明で使用される重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、通常用いられている有機過酸化物やアゾ化合物等の、従来公知の重合開始剤を使用することができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシル-3,3-イソプロピルヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルヒドロパーオキシド、アセチルパーオキシド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチレート)、2,2’-アゾビス(メトキシジメチルバレロニトリル)などが挙げられ、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0122】
前記重合開始剤の使用量は特に限定されないが、例えば、モノマーモル数に対して0.001~0.1モル倍、さらに好ましくは0.002~0.05モル倍である。前記重合開始剤の使用量があまりに少ないと重合が不十分になる恐れがあり、また、多すぎると付加重合モノマーだけのポリマーができてしまう恐れがある。
【0123】
以上のとおり、有機ヨウ化物である開始化合物、付加重合性モノマー、重合開始剤及び触媒を少なくとも使用して重合することによって、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)を得ることができる。上記重合は、有機溶剤を使用しないバルクで重合を行ってもよいが、溶媒を使用する溶液重合が好ましい。用いる有機溶剤は特に限定されず、本発明に使用する有機ヨウ化物、触媒、付加重合性モノマー及び重合開始剤を溶解する溶媒であればよい。前記有機溶剤を例示すると、ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸エチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジオクチルフタレートなどが挙げられ、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0124】
重合液の固形分(モノマー濃度)としては、特に限定されないが、例えば5~80質量%、好ましくは20~60質量%である。重合をスムーズに完結させる観点からは、前記モノマー濃度が低すぎないことが好ましい。また、重合液の粘度が高くなりすぎ、攪拌が困難になったり、重合率が悪くなったりすることを防止する観点からは、前記モノマー濃度が高すぎないことが好ましい。
【0125】
重合温度は特に限定されず、0℃~150℃、さらに好ましくは30℃~120℃である。重合温度は、それぞれの重合開始剤の半減期によって調整される。また、重合時間は、モノマーがなくなるまで重合を続けることが好ましいが、特に限定されず、例えば、0.5時間~48時間、実用的な時間として好ましくは1時間~24時間、さらに好ましくは2時間~12時間である。
【0126】
前記重合反応の雰囲気は、特に限定されず、例えば大気中でそのまま重合してもよく、すなわち、系内に通常の範囲内で酸素が存在してもよいし、必要に応じて、酸素を除去するため窒素やアルゴン気流下で行ってもよい。また、使用する材料は、蒸留、活性炭やアルミナで不純物を除去してもよいが、市販品をそのまま使用できる。また、重合は、遮光下で行ってもよいし、ガラスのような透明容器中で行ってもなんら問題はない。
【0127】
前記ブロックコポリマー(分散剤)の製造方法(重合方法)の操作及びメカニズムは、例えば、以下のとおりである。まず、1官能の有機ヨウ化物を開始化合物として、少なくとも酸基を有する付加重合性モノマーを前記方法によって重合し、1つのポリマーブロック(Aブロックとする)を得る。このポリマー末端はヨウ素基で置換されているため安定化しており、再度モノマーを添加し、熱などによって解離させ、あるいは更に少しラジカル開始剤を少し追加して再び重合を開始することができる。
【0128】
このAブロックを取り出して精製して、再び有機溶剤に溶解させ、これを開始化合物として、次のモノマーを追加して、好ましくは触媒及び重合開始剤を追加して重合することにより、ポリマー末端ヨウ素が解離して再度重合が開始し、BブロックがAブロックに連結したジブロックポリマーを得ることができる。また、Aブロックを形成後、ポリマーを取り出さずにそのままBブロックモノマーを加えて、好ましくは触媒及び重合開始剤を加えて重合を行うことによって前記ブロックコポリマー(分散剤)を得ることができる。
【0129】
同様にして、上記ブロックの生成を逆にして、先に親水性のポリマーであるBブロックモノマーを重合して、ついで疎水性基を有するモノマーを少なくとも含むモノマーを重合してA-Bのジブロックポリマー(前記ブロックコポリマー)を得てもよい。
【0130】
本発明で用いる重合では、例えば、開始化合物の量によってポリマーの分子量をコントロールすることができる。より具体的には、例えば、開始化合物のモル数に対してモノマーのモル数を設定することで、任意の分子量、又は分子量の大小を制御できる。例えば、開始化合物を1モル使用して、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、1×100×500=50,000の理論分子量を与えるものであり、すなわち、設定分子量として、
[開始化合物1モル×モノマー分子量×モノマー対開始化合物モル比]
で算出することができる。
【0131】
しかし、本発明で用いる重合方法では、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があり、上記の理論分子量にならない場合がある。これらの副反応がないポリマーが好ましいが、カップリングして分子量が大きくなっても、停止して分子量が小さくなっていてもよい。また、重合率が100%でなくてもよく、残ったモノマーは留去したり、ブロックポリマーを析出する際に除去したり、所望のブロックポリマーを得た後、重合開始剤や触媒を加えて重合を完結させてもよい。本発明で用いるジブロックポリマーを生成、含有していればよく、それぞれのブロックポリマー単位を含んでいてもなんら問題はない。好ましくは、前記ブロックポリマーを50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含有する前記ブロックコポリマー(分散剤)であればよい。また、前記した副反応を伴うことによってPDIは広くなるが、そのPDIは特に限定されず、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。
【0132】
以上のようにして、有機ヨウ化物を開始化合物として、付加重合性モノマー、重合開始剤及び触媒を少なくとも使用して重合することによって、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)であるジブロックポリマーを得ることができる。ただし、前述のとおり、この製造方法(重合方法)は任意であり、本発明で用いる前記ブロックコポリマー(分散剤)は、どのような方法で製造してもよい。
【0133】
[3.重合による多孔性粒子の製造]
前記多孔性粒子の製造方法は、具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。なお、以下においては、主に、熱硬化性のモノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む前記多孔性粒子原料を用いた製造方法について説明する。また、前記熱硬化性のモノマー及びプレポリマーの中でも、特に、エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方を含む前記多孔性粒子原料について説明する。ただし、前記多孔性粒子原料は、前述のとおり、特に限定されず任意である。
【0134】
まず、モノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む多孔性粒子原料を、前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している分散媒中に分散させて分散液を調製する(分散液調製工程)。多孔性粒子原料については、前述のとおりである。
前記分散液調整工程は、具体的には、例えば、少なくともポロゲンとなる溶媒を含む熱硬化性組成物と、前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している疎水性有機溶剤(分散媒)とを混合して熱硬化性組成物を疎水性有機溶剤中に粒子状に分散させる。前記熱硬化性組成物(多孔性粒子原料)は、例えば、エポキシ樹脂原料(エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方)、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂原料組成物である。そして、その後、例えば、前記分散液を加熱して前記重合工程を行う。そして、重合(硬化)によりエポキシ樹脂製の多孔性粒子を得る(重合工程)。その後、必要に応じ、前記多孔性粒子(粒子状硬化物)からポロゲン、溶媒、未反応物等を除去する。
【0135】
原料であるエポキシモノマー及びエポキシプレポリマーについては前述のとおりであるが、なかでも、エポキシ当量が600以下でポロゲンに溶解可能なエポキシモノマー及びエポキシプレポリマーが特に好ましい。
【0136】
前記多孔性粒子の製造方法で用いる前記硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン類、ポリアミドアミン類、酸無水物、フェノール系などを挙げることができる。前記硬化剤のうち、多官能アミノ基含有化合物については、例えば、前述のとおりである。
より具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミンなどが挙げられる。本発明においては、エポキシ樹脂と反応して水酸基を形成し、得られる多孔体に親水性を付与する、あるいは後で化学的に修飾することの出来る機能を有する硬化剤を用いることが好ましい。
【0137】
前記多孔性粒子の製造方法においては、硬化促進剤を使用することもできる。硬化促進剤としては特に限定されず、既知のあらゆる化合物を使用することができるが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン、2-フェノール-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェノール-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類、DBU(ジアザビシクロウンデセン:1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene))及びDBN(ジアザビシクロノネン:1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene)等の強塩基などを好適に用いることができる。
【0138】
本発明において、用語「ポロゲン」とは、細孔形成剤としての不活性溶媒又は不活性溶媒混合物を指称する。ポロゲンは、重合のある段階で多孔性ポリマーを形成させる重合反応中に存在し、所定の段階でこれを反応混合物中から除去することによって、三次元網目状骨格構造及び連通する空隙を有するエポキシ樹脂硬化物多孔体が得られる。
【0139】
本発明において、前記ポロゲンは、例えば、前記多孔性粒子原料及び前記硬化剤を溶解させることができ、かつ前記多孔性粒子原料及び前記硬化剤が重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な溶媒である。前記ポロゲンとしては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類等が挙げられる。中でも分子量200~20,000程度のポリエチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく、特に分子量200~20,000程度のポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
前記ポロゲンは、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0140】
本発明においては、ポロゲンとして、例えば、水酸基を有し、水酸基価100(mgKOH/g)以上のポリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコール誘導体を使用することが望ましい。水酸基価が100(mgKOH/g)より小さくなると粘度が高くなり、形成されるエポキシ樹脂硬化物多孔体の孔径を大きくすることが困難になったり、エポキシ樹脂硬化物多孔体への親水性の付与効果が低下することがある。エポキシ樹脂硬化物多孔体表面の水酸基量とポロゲンの水酸基当量とは密接な関係にあり、ポロゲンの水酸基価が小さくなるに連れてエポキシ樹脂硬化物表面に現れる水酸基量も減少し、表面の親水性が低下するためと考えられる。
また、前記ポロゲンは、エポキシ樹脂製多孔性粒子の合成のみならず、他の材質から形成された多孔性粒子の合成においても同様に用いることができる。
【0141】
前記熱硬化性組成物(多孔性粒子原料)は、前述のとおり、例えば、エポキシ樹脂原料(エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方)、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂原料組成物である。この前記熱硬化性組成物(多孔性粒子原料)は、例えば、前記エポキシ樹脂原料(エポキシモノマー及びエポキシプレポリマーの少なくとも一方)及び前記硬化剤を、前記ポロゲンに混合して均一化することにより調製することができる。
【0142】
前記熱硬化性組成物中におけるエポキシ樹脂原料(例えば多官能エポキシ基含有化合物)と硬化剤(例えば多官能アミノ基含有化合物)の含有割合は、例えば、エポキシ樹脂原料中のエポキシ基1当量に対して硬化剤中の官能基(例えばアミノ基)が0.8~1.2当量、特に0.9~1.1当量となるように調製することが好ましい。例えば、エポキシ樹脂原料の当量比を上記下限以上とすると、得られる多孔性エポキシ樹脂の架橋密度を高めることができ、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性等が向上する傾向にあり、他方、上記上限以下とすると、未反応の硬化剤を低減することができ、前記硬化剤が未反応のまま多孔性エポキシ樹脂中に残留することを抑制し、架橋密度を高めることができる傾向にある。
【0143】
前記熱硬化性組成物中におけるエポキシ樹脂原料(例えば多官能エポキシ基含有化合物)と硬化剤(例えば多官能フェノール樹脂)の含有割合は、例えば、エポキシ樹脂原料中のエポキシ基1当量に対して硬化剤中の官能基(例えばフェノール性水酸基)が1.1~4当量、特に1.5~3当量となるように調製することが好ましい。例えば、エポキシ樹脂原料の当量比を上記下限以上とすると、得られる多孔性エポキシ樹脂の架橋密度を高めることができ、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性等が向上する傾向にあり、他方、上限以下とすると、未反応の硬化剤を低減することができ、前記硬化剤が未反応のまま多孔性工ポキシ樹脂中に残留することを抑制し、架橋密度を高めることができる傾向にある。
【0144】
また、前記熱硬化性組成物中のポロゲンとなる溶媒の含有割合は、例えば、得られる多孔性エポキシ樹脂粒子の細孔径、細孔分布等に影響し、ポロゲンの含有割合が多いと細孔径は大きく、少ないと細孔径は小さくなる傾向にある。また、ポロゲンの含有割合が多いと細孔分布はブロードとなり、少ないとシャープとなる傾向にある。
【0145】
前記熱硬化性組成物中のポロゲン溶媒の含有割合は、前記熱硬化性組成物に含まれる多官能エポキシ基含有化合物と多官能アミノ基含有化合物の合計に対して、通常50~500重量%であることが好ましく、50~400重量%であることがより好ましく、50~300重量%であることがさらに好ましく、100~200重量%であることが特に好ましい。ポロゲンの含有割合が上記下限以上であるとより空孔率の高い多孔質構造を形成することができ、他方、上記上限以下であると得られる多孔性エポキシ樹脂の空孔率を適度な範囲に抑えることができ、機械的強度が向上する傾向にある。
【0146】
また、前記熱硬化性組成物には、硬化促進剤を添加してもよい。前記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。
【0147】
また、前記熱硬化性組成物には、前記エポキシ樹脂原料及び前記硬化剤以外の反応原料化合物を混合して用いてもよい。前記エポキシ樹脂原料及び前記硬化剤と共に付加重合反応に供し得る反応原料化合物としては、例えば、前記エポキシ樹脂原料及び前記硬化剤と共に付加重合し得るものであればよく、特に制限はないが、例えば、前述の、エポキシ樹脂以外のポリマーの原料として例示したモノマー及びプレポリマーの1種又は2種以上が挙げられる。ただし、多孔性エポキシ樹脂本来の耐衝撃性、耐薬品性、耐久性、取り扱い性、生産性等の特長を有効に得る上で、前記エポキシ樹脂原料及び前記硬化剤以外の反応原料化合物は、全反応原料化合物中に30重量%以下、特に0~15重量%であることが好ましい。また、前記熱硬化性組成物には、前記エポキシ樹脂原料および前記硬化剤以外の非反応原料化合物を混合して用いてもよい。例えば一次粒子径が数nmから数十nmの微粉シリカを添加して増粘すると重合体の表面に孔のないスキン層が生成するのを低減する効果が得られる。
【0148】
前記熱硬化性組成物の調製方法としては特に制限されず、常温で又は加温しながら多官能エポキシ基含有化合物、多官能アミノ基含有化合物及びポロゲンを混合する方法を採用してもよく、常温で又は加温しながら多官能エポキシ基含有化合物及び多官能アミノ基含有化合物の混合物をポロゲン中に添加して混合ないしは溶解させる方法を採用してもよい。
【0149】
つぎに、前記分散液調製工程において、例えば、十分に剪断力を与えて撹拌すれば、前記多孔性粒子原料(熱硬化性組成物)を粒子状に分散させることが可能である。この場合において、前記粒子の大きさや粒径分布を考慮して適切な方法をとることが出来る。例えば、前記多孔性粒子原料(熱硬化性組成物)の分散方法としては、十分な剪断力を与えられる方法でよい。
より具体的には、例えば、プロペラ型、パドル型、タービン型、スクリュー型などの各種の形状の撹拌羽根を有する装置だけでなく、自転・公転ミキサーや試験管の底部を高速旋回して内容液を撹拌する「ボルテックスミキサー」、超音波撹拌、膜乳化法など公知の方法が使用できる。出来るだけ粒径が一定になる方法を選ぶことが好ましい。
【0150】
前記分散液調整工程においては、前述のとおり、例えば、前記熱硬化性組成物と、前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している疎水性有機溶剤(分散媒)とを混合して熱硬化性組成物を疎水性有機溶剤中に粒子状に分散させてもよい。前記ブロックコポリマー(分散剤)を予め添加している疎水性有機溶剤(分散媒)中において、前記ブロックコポリマー(分散剤)濃度は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり1~500g/L、2~300g/L、又は3~250g/Lである。前記ブロックコポリマー濃度を上記下限以上とすると、粒径の制御が容易であったり、重合時の凝集を抑制することができ、上記上限以下とすると、重合時に泡が立ったり粘度が上昇することを抑制でき、製造が容易となる。そして、前述のとおり、熱硬化性組成物を疎水性有機溶剤中に粒子状に分散させた油中水滴型の乳化物を形成した状態で、次の重合工程を行うことができる。
【0151】
また、前記多孔性粒子原料を前記分散液中で重合させる重合工程において、分散剤(例えば、前記ブロックコポリマー又は界面活性剤)の使用量は、特に限定されないが、前記エポキシ樹脂原料、前記硬化剤、及びポロゲンの合計量に対して、例えば、1~20重量%、又は2~10重量%程度である。前記分散剤の使用量は、例えば、得られる多孔性粒子の平均粒径や粒度分布、粒子の凝集に影響する。前記分散剤の使用量が多いと平均粒径や粒度分布、粒子の凝集を制御とすることができ、少ないと泡立ちや粘度を低く保つことができる傾向にある。よって、前記分散剤の使用量が上記下限以上であると、原料混合液を均一に乳化できて粒度分布を狭い範囲にすることができたり、粒子の凝集を抑制することができる。また、上記上限以下であると、泡立ちや粘度の上昇を抑制することができ、製造が容易となる。
【0152】
前記重合工程において、反応温度は、特に限定されず、適宜設定可能である。前記反応温度は、基本的にはエポキシ樹脂と硬化剤の組合せによって決まり、また、撹拌速度やポロゲン、界面活性剤の使用量等によっても異なるが、例えば、20~250℃、40~220℃、又は50~200℃である。前記加熱温度は、例えば、得られる多孔性粒子の細孔径に影響する。加熱温度が高いと得られる多孔性粒子の細孔径が小さくなり、加熱温度が低いと得られる多孔性粒子の細孔径が大きくなる傾向がある。加熱温度が適度に高いと付加重合反応が円滑に進行し、加熱温度が適度に低いと反応速度が速くなり過ぎることを防止し、多孔質構造をうまく形成することができる。
【0153】
前記重合工程において、反応時間も特に限定されず、適宜設定可能である。前記反応時間は、撹拌速度、加熱温度やポロゲン、界面活性剤の使用量等によっても異なるが、例えば、0.01~100hr、0.05~24hr、又は0.1~20hrである。前記反応時間は、例えば、得られる多孔性粒子の反応率に影響する。反応時間が長いと反応率が高く未反応物が少ないため機械的強度が高くなる傾向があり、反応時間が短いと反応率が低く未反応物が多いため機械的強度が低くなる傾向がある。反応時間が適度に長いと付加重合反応が十分に進行して所望の多孔質構造を形成でき、適度に短いと撹拌による破砕などの可能性を低減することができる。
【0154】
また、前記重合工程において、前記分散液を攪拌しながら反応を行うことが好ましい。攪拌速度は特に限定されず、加熱温度や反応スケール、ポロゲン、界面活性剤の使用量等によっても異なるが、例えば、10~20,000rpm、30~10,000rpm、50~5,000rpm、50~800rpm、又は100~400rpmである。なお、「rpm」は、1分間あたりの回転数を表す。
前記撹拌速度は、例えば、得られる多孔性粒子の粒径に影響する。一般的に、撹拌速度が大きいと得られる多孔性粒子の粒径が小さくなり、撹拌速度が小さいと得られる多孔性粒子の粒径が大きくなる傾向がある。撹拌速度が適度に大きいと相分離等が抑制され、均一な粒径のものを得ることができ、撹拌速度が適度に小さいと粒子径が小さくなりすぎず、泡立ちも抑制可能である。
【0155】
前記重合工程が終了したら、前述のとおり、必要に応じ、前記多孔性粒子(粒子状硬化物)からポロゲン、溶媒、未反応物等を除去する。具体的には、例えば、前記多孔性微粒子を含む分散媒を多量の洗浄用溶媒で希釈して沈降粒子を遠心分離機で分けることを繰り返して十分に洗浄した後、減圧乾燥機で前記洗浄用溶媒を除く。なお、前記洗浄用溶媒は、分散媒とポロゲンに対する溶解性が高い溶媒が好ましく、また、沸点が低く除去しやすい溶媒が好ましい。
前記洗浄用溶媒としては、具体的には、テトラヒドロフラン等が挙げられる。このようにして、前記多孔性粒子を得ることが出来る。なお、前記多孔性粒子の材質は、前述のとおり、特に限定されない。例えば、熱硬化性樹脂以外から形成された多孔性粒子の場合は、熱硬化性のモノマー及びプレポリマーの少なくとも一方を含む前記多孔性粒子原料に代えて、多孔性粒子の材質に応じた多孔性粒子原料を用い、ポロゲン及び硬化剤を用いなくてもよい。
【0156】
また、製造した前記多孔性粒子は、例えば、物理的処理又は化学的処理による表面の改質等を行ってもよい。前記物理的処理又は化学的処理は、例えば、クロマトグラフィー用の分離剤としての特性を向上させる目的で行うことができる。前記物理的処理又は化学的処理としては、例えば、表面親水化、表面疎水化、官能基導入等が挙げられる。
前記多孔性粒子が、前記1~3級のアミノ基を含まない、又は、前記酸処理により4級化する窒素原子を含まない場合は、前記アミノ基又は前記窒素原が、前記官能基導入(表面処理)の妨げになることを抑制または防止できる。
【0157】
-白金族元素-
前記白金族元素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムなどが挙げられる。
これらの中でも、汎用性の観点から、パラジウム又は白金が好ましく、パラジウムがより好ましい。
前記多孔性粒子に対する、白金族元素の含有量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、触媒反応の効率の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上がよりさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が最も好ましい。
前記多孔性粒子に対する、白金族元素の含有量の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20質量%以下、15質量%以下などが挙げられる。
【0158】
前記多孔性粒子に対する、白金族元素の含有量は、TGA-50(株式会社島津製作所製)を用いた熱重量分析(TGA)により測定する。
【0159】
前記白金族元素担持多孔性粒子における、白金族元素の存在状態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、白金族元素の凝集による前記白金族元素担持多孔性粒子が充填されたカラムの反応性の低下を防ぐ観点から、すなわち、凝集により反応に関与できない白金族元素の発生を抑制し、パラジウムブラックなどのような失活体となることを防ぐ観点から、前記多孔性粒子の表面に白金族元素が集中して存在している状態ではなく、前記多孔性粒子の前記複数の孔部の中に白金族元素が分散している状態が好ましい。
【0160】
(白金族元素触媒)
前記白金族元素触媒は、前記白金族元素担持多孔性粒子を含み、さらにその他の要素を含むことができる。
前記白金族元素担持多孔性粒子は、上述のとおりである。
【0161】
(カラム)
前記カラムは、前記白金族元素担持多孔性粒子又は前記白金族元素触媒が充填されたカラムである。
前記白金族元素担持多孔性粒子、及び前記白金族元素触媒は、上述のとおりである。
【0162】
前記カラムの内部直径の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、圧力損失低減の観点から、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。
前記カラムの内部直径の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱効率の観点から、200mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、50mm以下がさらに好ましい。
【0163】
前記カラムの長さ(管長さ)の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、滞留時間延長の観点から、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、25mm以上がさらに好ましく、50mm以上が特に好ましい。
前記カラムの長さ(管長さ)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、圧力損失低減の観点から、500mm以下が好ましく、300mm以下がより好ましく、250mm以下がさらに好ましい。
【0164】
前記カラムへの充填方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾式充填、湿式充填などが挙げられる。
これらの中でも、充填の容易性や均質性の観点から、乾式充填が好ましく、圧力損失の低減の観点から、湿式充填が好ましい。
【0165】
前記乾式充填の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥後の、白金族元素担持多孔性粒子(担体)を加え、タッピングによる空隙率の減少を数度くりかえし、擦り切れ量まで加えて封をする方法などが挙げられる。
前記湿式充填の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールなどの有機溶媒で膨潤させた、白金族元素担持多孔性粒子(担体)を加え、管上部からの加圧、又は下部からの減圧により充填量を増加させ、擦り切れ量まで担体を加えて封をする方法などが挙げられる。
【0166】
流速1mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上などが挙げられる。
流速1mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高流量化の観点から、15MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましく、3MPa以下がさらに好ましく、1MPa以下がよりさらに好ましく、0.5MPa以下が特に好ましく、0.3MPa以下が最も好ましい。
【0167】
流速3mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上などが挙げられる。
流速3mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高流量化の観点から、15MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましく、3MPa以下がさらに好ましく、2MPa以下がよりさらに好ましく、0.5MPa以下が特に好ましく、0.3MPa以下が最も好ましい。
【0168】
流速5mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上などが挙げられる。
流速5mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高流量化の観点から、15MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましく、3MPa以下がさらに好ましく、2MPa以下がよりさらに好ましく、1MPa以下が特に好ましく、0.3MPa以下が最も好ましい。
【0169】
流速10mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上などが挙げられる。
流速10mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高流量化の観点から、15MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましく、3MPa以下がさらに好ましく、2MPa以下がよりさらに好ましく、1.5MPa以下が特に好ましく、0.5MPa以下が最も好ましい。
【0170】
前記カラム圧力は、前記カラムに、ノルマルヘキサンをプランジャポンプ(PU2089plus、日本分光株式会社製)で送液した際のポンプに表示される圧力である。
【0171】
(白金族元素担持多孔性粒子の製造方法)
前記白金族元素担持多孔性粒子の製造方法は、互いに連通した複数の孔部を有する多孔性粒子と、白金族元素と、を混合する混合工程を含み、さらにその他の工程(A)を含むことができる。
前記互いに連通した複数の孔部を有する多孔性粒子、及び白金族元素は、上述のとおりである。
【0172】
-混合工程-
前記混合工程は、互いに連通した複数の孔部を有する多孔性粒子と、白金族元素と、を混合する工程である。
【0173】
前記混合工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常圧条件下での混合、超臨界条件下での混合などが挙げられる。これらの中でも、超臨界条件下での混合が好ましい。
前記超臨界条件下での混合を行うことにより、前記多孔性粒子の前記複数の孔部の中に白金族元素が分散している状態の多孔性粒子を得ることができる。
前記超臨界条件下での混合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、超臨界流体を用いて行う方法などが挙げられる。
【0174】
前記超臨界流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、二酸化炭素などが挙げられる。
これらの中でも、操作性の観点から、二酸化炭素が好ましい。
【0175】
前記常圧条件下での混合時の、温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、触媒の溶解性の観点から、4℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
前記常圧条件下での混合時の、温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、25℃以下がさらに好ましい。
【0176】
前記常圧条件下での混合時間の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吸着率向上の観点から、1時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましく、12時間以上がさらに好ましく、20時間以上が特に好ましい。
前記常圧条件下での混合時間の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、作業効率の観点から、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。
【0177】
前記超臨界条件下での混合時の、温度の下限値としては、超臨界状態を保持する観点から、臨界温度以上が好ましい。
前記超臨界流体が二酸化炭素の場合は、31℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。
前記超臨界条件下での混合時の、温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、操作性の観点から、60℃以下が好ましく、55℃以下がより好ましく、45℃以下がさらに好ましい。
【0178】
前記超臨界条件下での混合時間の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吸着率向上の観点から、1時間以上が好ましく、6時間以上がより好ましく、12時間以上がさらに好ましい。
前記超臨界条件下での混合時間の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、作業効率の観点から、24時間以下が好ましく、18時間以下がより好ましく、16時間以下がさらに好ましい。
【0179】
前記混合工程を行う回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記白金族元素担持多孔性粒子が充填されたカラムの背圧を低下させる観点から、2回以上行うことが好ましい。
前記混合工程を2回以上行う場合は、混合工程と混合工程の間に、その他の工程(A)を含むことができる。
【0180】
混合する白金族元素としては、白金族元素を含む化合物を使用することができる。
前記白金族元素を含む化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラジウム化合物、白金化合物、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、オスミウム化合物、イリジウム化合物などが挙げられる。
【0181】
前記パラジウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、フッ化パラジウム、臭化パラジウム、及び、ヨウ化パラジウム、水酸化パラジウム、二硝酸パラジウム(II)、四硝酸パラジウム(IV)、ジニトロパラジウム、炭酸パラジウム、リン酸パラジウム、ジメトキシパラジウム、メトキシリン酸パラジウム、亜硫酸パラジウム、ジニトロパラジウム、及びパラジウムジアジドなどが挙げられる。
これらの中でも、入手容易性の観点から、酢酸パラジウムが好ましい。
【0182】
前記白金化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化白金(IV)、塩化白金(IV)、塩化白金(II)、ヘキサクロリド白金(IV)酸、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、ヘキサクロリド白金(IV)酸カリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、空気中での安定性の観点から、テトラクロロ白金(II)酸カリウムおよびヘキサクロリド白金(IV)酸カリウムが好ましい。
【0183】
前記ルテニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(IV)、四酸化ルテニウム、臭化ルテニウム(III)、よう化ルテニウム(III)、フッ化ルテニウム(VI)、硫化ルテニウム、ルテニウム酸二カリウム(VI)、過ルテニウム酸カリウム(VII)、配位錯体などが挙げられる。
前記配位錯体における配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばN-ヘテロサイクリックカルベン、トリフェニルホスフィン、ビピリジン、ターフェニレンなどが挙げられる。
これらの中でも、安定性の観点から、酸化ルテニウム(IV)が好ましい。
【0184】
前記ロジウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ロジウム(III)、酢酸ロジウム(III)、酸化ロジウム(III)、酸化ロジウム(IV)、硝酸ロジウム(III)、よう化ロジウム(III)、フッ化ロジウム(VI)、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、シクロオクタジエンロジウムクロリドダイマーなどが挙げられる。
これらの中でも、安定性の観点から、酸化ロジウム(III)が好ましい。
【0185】
前記オスミウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化オスミウム(IV)、オスミウム酸カリウム、酸化オスミウム(VIII)などが挙げられる。
これらの中でも、空気中での安定性の観点から、酸化オスミウム(VIII)が好ましい。
【0186】
前記イリジウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化イリジウム(III)、塩化イリジウム(IV)、酸化イリジウム(IV)、臭化イリジウム(III)、臭化イリジウム(IV)、硫酸イリジウム(IV)、配位錯体などが挙げられる。
前記配位錯体における配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2-(パラフェニル)ピリジン、ビピリジン、一酸化炭素などが挙げられる。
これらの中でも、安定性の観点から、酸化イリジウム(IV)が好ましい。
【0187】
前記多孔性粒子に対する、前記混合する白金族元素の添加量(仕込み量)の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、触媒反応の効率の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上がよりさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が最も好ましい。
前記多孔性粒子に対する、前記混合する白金族元素の添加量(仕込み量)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20質量%以下、10質量%以下などが挙げられる。
【0188】
前記白金族元素がパラジウムの場合の、前記常圧条件下での混合の具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔性粒子を懸濁させたアセトン溶液に対し、酢酸パラジウムを加えて室温で24時間、マグネティックスターラーで撹拌し、多孔性粒子を濾別し、アセトンで洗浄する方法などが挙げられる。
前記白金族元素が白金の場合の、前記常圧条件下での混合の具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔性粒子を懸濁させた水溶液に対し、テトラクロロ白金(II)酸カリウムを加えて室温で16時間、マグネティックスターラーで撹拌し、多孔性粒子を濾別し、メタノールで洗浄する方法などが挙げられる。
【0189】
前記白金族元素がパラジウムの場合の、前記超臨界条件下での混合の具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔性粒子、酢酸パラジウム、及びアセトンを耐圧容器に加え、液体二酸化炭素を内圧10MPaになるまで流入し、密閉した後、容器を40℃に加熱し、14時間、マグネティックスターラーで撹拌した後、加熱を停止し、内圧を解放した後に担体の懸濁液を取り出し、多孔性粒子を濾別し、アセトンで洗浄する方法などが挙げられる。
【0190】
-その他の工程(A)-
前記その他の工程(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合工程後の白金族元素を還元する還元工程、前記還元工程後の乾燥工程などが挙げられる。
【0191】
前記還元工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合工程後の多孔性粒子を、水素化ホウ素ナトリウム水溶液に懸濁する方法、ヒドラジン水溶液に懸濁する方法、水素ガスと接触させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、容易性の観点から、前記混合工程後の多孔性粒子を、水素化ホウ素ナトリウム水溶液に懸濁する方法が好ましい。
【0192】
前記懸濁の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スターラーで撹拌する方法などが挙げられる。
【0193】
前記還元工程の時間の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間以上が好ましく、30分間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましく、2時間以上が特に好ましい。
前記還元工程の時間の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましく、6時間以下がさらに好ましく、4時間以下が特に好ましい。
【0194】
前記還元工程の具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合工程後の多孔性粒子を、水素化ホウ素ナトリウム水溶液に懸濁し、室温で3時間、マグネティックスターラーで撹拌し、多孔性粒子を濾別し、水及びエタノール又はメタノールで洗浄する方法などが挙げられる。
【0195】
前記乾燥工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空下で乾燥する工程などが挙げられる。
【0196】
(化合物の製造方法)
前記化合物の製造方法は、前記白金族元素担持多孔性粒子、又は前記白金族元素触媒を用いた反応工程を含み、さらのその他の工程(B)を含むことができる。
前記白金族元素担持多孔性粒子、及び前記白金族元素触媒は、上述のとおりである。
【0197】
-白金族元素担持多孔性粒子、又は白金族元素触媒を用いた反応工程-
前記白金族元素担持多孔性粒子、又は白金族元素触媒を用いた反応工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カップリング反応、還元反応、ワッカー酸化反応、排気ガスの浄化反応などが挙げられる。
これらの中でも、カップリング反応、還元反応、又はワッカー酸化反応が好ましく、カップリング反応、又は還元反応がより好ましく、カップリング反応がさらに好ましい。
【0198】
--カップリング反応--
前記カップリング反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鈴木カップリング反応、スティルカップリング反応、宮浦ホウ素化反応、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング反応、薗頭カップリング反応、檜山カップリング反応、バックワルド・ハートウィッグアミノ化反応などが挙げられる。
これらの中でも、鈴木カップリング反応、又はスティルカップリング反応が好ましい。
【0199】
前記鈴木カップリング反応とは、ハロゲン化アリールと有機ホウ素化合物とを、パラジウム触媒及び塩基などの求核種の作用によりクロスカップリングさせる化学反応である。
【0200】
前記ハロゲン化アリールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile、1-(5-エトキシカルボニルチアゾル-2-イル)-4-(4-ヨードフェニルスルホニル)ピペラジン:1-(5-ethoxycalbonylthiazol-2-yl)-4-(4-iodophenylsulfonyl)piperazine、6-ヨード2-ナフト酸 ターシャリーブチル:tert-butyl 6-iodo-2-naphthoate等のヨード化合物などが挙げられる。
前記有機ホウ素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニルボロン酸、合成例4で合成した3-(1-アダマンチル)4-メトキシフェニルホウ酸:3-(1-adamantyl)-4-methoxyphenylboronic acid等のボロン酸化合物、合成例1で合成したリチウム トリイソプロポキシ(フェニル)ボラート:lithium triisopropoxy(phenyl)borate、合成例2で合成したリチウム トリイソプロポキシ(4-ノルマルペンチルフェニル)ボラート:lithium triisopropoxy(4-n-pentylphenyl)borate、合成例3で合成したリチウム トリイソプロポキシ(2-((ピペリジン-1-イル)メチル)フェニル)ボラート:lithium triisopropoxy(2-((piperidin-1-yl)methyl)phenyl)borate等のボラート化合物などが挙げられる。
【0201】
前記スティルカップリング反応とは、ハロゲン化アリールと有機スズ化合物とを、パラジウム触媒及び塩基などの求核種の作用によりクロスカップリングさせる化学反応である。
【0202】
前記ハロゲン化アリールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile、1-(5-エトキシカルボニルチアゾル-2-イル)-4-(4-ヨードフェニルスルホニル)ピペラジン:1-(5-ethoxycalbonylthiazol-2-yl)-4-(4-iodophenylsulfonyl)piperazine、6-ヨード2-ナフト酸 ターシャリーブチル:tert-butyl 6-iodo-2-naphthoate等のヨード化合物などが挙げられる。
前記有機スズ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリブチルフェニルスタナンなどが挙げられる。
【0203】
--還元反応--
前記還元反応としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキン、アルケン、アジド、ニトロ、不飽和カルボニル、ベンジルエーテル、cbz基、アルデヒド、イミン、ケトン、又は芳香環、の還元反応などが挙げられる。
【0204】
前記白金族元素担持多孔性粒子、又は白金族元素触媒を用いた反応工程の反応方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒に、反応原料を溶解させた反応液を、ポンプを使用し、前記カラムへ送液する方法などが挙げられる。
【0205】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサン、メタノール、エタノール、メタノールとテトラヒドロフランの混合溶媒などが挙げられる。
【0206】
前記反応工程における、流速1mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上などが挙げられる。
前記反応工程における、流速1mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがでるが、高流量化の観点から、15MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましく、3MPa以下がさらに好ましく、2MPa以下がよりさらに好ましく、1.5MPa以下がよりさらに好ましく、1MPa以下が特に好ましく、0.5MPa以下が最も好ましい。
前記カラム圧力は、前記カラムに、反応液を日本分光株式会社製HPLCポンプで送液した際のポンプに表示される圧力である。
【0207】
前記反応工程における、流速1mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力は、送液開始10分後に上記範囲であることが好ましく、送液開始30分後に上記範囲であることがより好ましく、送液開始1時間後に上記範囲であることがさらに好ましく、送液開始3時間後に上記範囲であることがよりさらに好ましく、送液開始6時間後に上記範囲であることが特に好ましく、送液開始8時間後に上記範囲であることが最も好ましい。
また、前記反応工程における、流速1mL/minで送液したときの、前記カラムのカラム圧力は、送液開始8時間後に洗浄後、さらに送液したときの、送液開始10分後に上記範囲であることが好ましく、送液開始30分後に上記範囲であることがより好ましく、送液開始1時間後に上記範囲であることがさらに好ましく、送液開始3時間後に上記範囲であることがよりさらに好ましく、送液開始6時間後に上記範囲であることが特に好ましく、送液開始8時間後に上記範囲であることが最も好ましい。
【0208】
-その他の工程(B)-
前記その他の工程(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記白金族元素担持多孔性粒子、又は白金族元素触媒を用いた反応工程の反応原料を合成する、反応原料合成工程などが挙げられる。
【0209】
前記反応原料合成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バッチ法による合成、マイクロリアクターを用いたフロー法による合成などが挙げられる。
【0210】
--マイクロリアクター--
前記マイクロリアクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、混合手段と、流通路とを備え、更に必要に応じてその他の手段を備えるマイクロリアクター(以下、「フローマイクロリアクター」と称することがある)などが挙げられる。
前記混合手段と前記流通路とは、一体型であってもよいし、別体型であってもよい。
【0211】
前記混合手段は、2種以上の液体を混合可能な手段である。
前記流通路は、液体を流通可能な管である。前記流通路は、少なくとも1つの前記混合手段と接続される。
【0212】
前記フローマイクロリアクターを用いることで、安定性の低い化合物について、生成から次の反応までの滞留時間を短時間にし、副反応を抑制することができる。
また、前記フローマイクロリアクターは、冷却効率が優れるため、発熱反応における発熱による副反応を抑制することができる。
【0213】
--一体型のフローマイクロリアクター--
前記一体型のフローマイクロリアクターの前記混合手段及び前記流通路としては、基板型のマイクロミキサーなどが挙げられる。
【0214】
前記基板型のマイクロミキサーは、内部又は表面に通路が形成された基板からなり、マイクロチャンネルと称される場合がある。
前記基板型のマイクロミキサーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、国際公開第96/30113号パンフレットに記載される混合のための微細な流路を有するミキサー;文献「“マイクロリアクターズ”三章、W.Ehrfeld、V.Hessel、H.Lowe著、Wiley-VCH社刊」に記載されるミキサーなどが挙げられる。
【0215】
前記基板型のマイクロミキサーは、前記混合手段及び前記流通路が、複数の液体を混合可能な微小な流路により構成されている。
【0216】
前記基板型のマイクロミキサーには、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐した構成が好ましい。
【0217】
前記導入路の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、混合を所望する複数の液体を別々の導入路から導入し、流路で合流させて混合することが好ましい。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0218】
--別体型のフローマイクロリアクター--
前記別体型のフローマイクロリアクターは、混合手段と、流通路とが接続してなる。
【0219】
前記混合手段としては、2種以上の液体を混合可能な限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、管継手型のマイクロミキサーなどが挙げられる。
【0220】
前記管継手型のマイクロミキサーは、内部に形成された流路を備え、必要に応じて前記内部に形成された流路と、前記流通路とを接続する接続部材を備える。前記接続部材における接続方式としては、特に制限はなく、公知の接続方式の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ねじ込み式、ユニオン式、突合わせ溶接式、差込み溶接式、ソケット溶接式、フランジ式、食込み式、フレア式、メカニカル式などが挙げられる。
【0221】
前記管継手型のマイクロミキサーの内部には、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐された構成が好ましい。前記導入路の数が2つである場合には、前記管継手型のマイクロミキサーとして、例えば、T字型やY字型を用いることができ、前記導入路の数が3つである場合には、例えば、十字型を用いることができる。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0222】
前記管継手型のマイクロミキサーの材質としては、特に制限はなく、耐熱性、耐圧性、耐溶剤性、及び加工容易性などの要求に応じて、適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、シリコン、及びテフロン(登録商標)、PFA(パーフルオロアルコキシ樹脂)などのフッ素樹脂、TFAA(トリフルオロアセトアミド)などが挙げられる。
【0223】
前記管継手型のマイクロミキサーとしては、市販品を利用することができ、例えば、アズビル株式会社製YM-1型ミキサー、YM-2型ミキサー;株式会社島津ジーエルシー製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);東レエンジニアリング株式会社開発品マイクロ・ハイ・ミキサー;スウェージロック社製ユニオンティー、株式会社三幸精機工業製T字型マイクロミキサーなどが挙げられる。
【0224】
前記混合手段内での2以上の原料物質の混合方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、層流による混合、乱流による混合などが挙げられる。中でも、より効率的に反応制御や除熱を行える点で、層流による混合(静的混合)が好ましい。
【0225】
なお、前記混合手段内の流路は微小であるため、混合手段に導入された複数の液体同士はおのずと層流支配の流れとなりやすく、流れに直交する方向に拡散して混合される。層流による混合において、さらに、流路内に分岐点及び合流点を設けることで、流れる液体の層流断面を分割するような構成とし、混合速度を高める構成としてもよい。
また、前記混合手段の流路において、乱流による混合(動的混合)を行う場合には、流量や流路の形状(接液部分の3次元形状や流路の屈曲などの形状、壁面の粗さ、など)を調整することによって、層流から乱流へと変化させることができる。前記乱流による混合は、前記層流による混合と比べて、混合効率がよく混合速度が速いという利点を有する。
【0226】
ここで、前記混合手段内の前記流路の内径が小さい方が、分子の拡散距離を短くできるので、混合に要する時間を短縮させて混合効率を向上させることができる。さらに、前記流路の内径が小さい方が、体積に対する表面積の比が大きくなり、例えば、反応熱の除熱などの、液体の温度制御を容易に行うことができる。
一方で、前記流路の内径が小さ過ぎると、液体を流す時の圧力損失が増加するとともに、送液に使用するポンプとして特別な高耐圧のものが必要となるため、製造コストが高くなることがある。また、送液流量が制限されることにより、前記マイクロミキサーの構造も制限されることがある。
【0227】
前記混合手段内の前記流路の内径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~4mmが好ましく、100μm~3mmがより好ましく、250μm~2mmが更に好ましく、500μm~1mmが特に好ましい。
前記内径が50μm未満であると、圧力損失が増大することがある。前記内径が4mmを超えると、単位体積当たりの表面積が小さくなり、その結果、迅速な混合や反応熱の除熱が困難になることがある。一方、前記内径が前記特に好ましい範囲であると、より迅速に混合でき、より効率的に反応熱を除熱できる点で有利である。
より具体的には、前記混合手段の内部に形成される流路の内径としては、50μm~1,000μmが好ましく、100μm~800μmがより好ましく、250μm~500μmが更に好ましい。
【0228】
前記流路の断面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm2~16mm2が好ましく、1,000μm2~4.0mm2がより好ましく、10,000μm2~2.1mm2が更に好ましく、190,000μm2~1mm2が特に好ましい。
【0229】
前記流路の断面形状としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、矩形、半円形、三角形などが挙げられる。
【0230】
前記流通路は、少なくとも1つの前記混合手段と接続され、液体を流通可能な管であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その内径、外径、長さ、材質などの構成は、所望する反応に応じて適宜選択することができる。
【0231】
前記流通路は、例えば、原料物質を混合手段に供給する際に使用される。
また、前記流通路は、例えば、前記混合手段によって混合された2種以上の物質の反応生成物を、次の混合手段に供給する際に使用される。なお、この際、前記流通路内では反応が継続して起きていてもよい。
【0232】
前記流通路としては、市販品を利用することができ、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のステンレスチューブ(外径1/16インチ(1.58mm)、内径250μm、500μm及び1,000μmから選択可能、チューブ長さは使用者により調整可能)などが挙げられる。
【0233】
前記流通路の材質としては、特に制限はなく、前記混合手段の材質として例示したものを、好適に利用することができる。
【0234】
前記流通路の内径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~4mmが好ましく、100μm~3mmがより好ましく、250μm~2mmが更に好ましく、500μm~1mmが特に好ましい。
より具体的には、前記流通路の内径としては、50μm~1,000μmが好ましく、100μm~800μmがより好ましく、250μm~500μmが更に好ましい。
【0235】
前記混合手段の下流に連結される前記流通路の内径としては、50μm~4mmが好ましく、100μm~2mmがより好ましく、500μm~1mmが更に好ましい。
【0236】
原材料を供給する流通路における液の流量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1.0ml/min~20ml/minであってもよいし、2.0ml/min~15ml/minであってもよいし、3.0ml/min~10ml/minであってもよい。
【0237】
反応液が流通する流通路における前記反応液の滞留時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.001sec~10secなどが挙げられる。
【0238】
--その他の手段--
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、送液手段、温度調節手段などが挙げられる。
【0239】
前記送液手段としては、各種原料物質を、前記フローマイクロリアクターの前記流通路に供給できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポンプなどが挙げられる。
【0240】
前記ポンプとしては、特に制限はなく、工業的に使用されうるものから適宜選択することができるが、送液時に脈動を生じないものが好ましく、例えば、プランジャポンプ、ギアーポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0241】
前記温度調節手段としては、前記フローマイクロリアクターの前記混合手段、及び前記流路の温度を調節できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例0242】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0243】
1.ポリマーへの白金族元素触媒担持
(実施例1)常圧条件下でのパラジウム固定1
国際公開第2020/179642号の実施例1に記載の方法で製造した多孔性粒子(ポリマー担体:体積平均粒径89μm、平均細孔径14nm、全細孔容積27μL/g)1.8gを懸濁させたアセトン溶液(ナカライテスク株式会社製、72mL)に対し、酢酸パラジウム0.12g(東京化成工業株式会社製、担体に対しパラジウムの重量は3wt%)を加えて室温で24時間、マグネティックスターラーで撹拌した。
ポリマー担体を濾別し、アセトン(ナカライテスク株式会社製、18mL)で洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム(東京化成工業株式会社製、0.3g)の水溶液(60mL)に懸濁し、室温で3時間、マグネティックスターラーにて撹拌した。ポリマー担体を濾別し、水(18mL)及びエタノール又はメタノールで洗浄した後、真空下で乾燥し、パラジウム担持多孔性粒子1.7gを得た。
得られたパラジウム担持多孔性粒子におけるパラジウムの含有量を、TGA-50(株式会社島津製作所製)を用いた熱重量分析(TGA)により測定した。測定結果を表1に示した。
【0244】
【0245】
(実施例2)常圧条件下でのパラジウム固定2
酢酸パラジウム0.18g(担体に対しパラジウムの重量は5wt%)を加えた以外は、実施例1と同様にして、パラジウム担持多孔性粒子を得た。実施例1と同様に、パラジウムの含有量をTGAにより測定した。測定結果を表1に示した。
【0246】
(実施例3)常圧条件下でのパラジウム固定3
酢酸パラジウム0.27g(担体に対しパラジウムの重量は7wt%)を加えた以外は、実施例1と同様にして、パラジウム担持多孔性粒子を得た。実施例1と同様に、パラジウムの含有量をTGAにより測定した。測定結果を表1に示した。
【0247】
(実施例4)常圧条件下でのパラジウム固定4
酢酸パラジウム0.38g(担体に対しパラジウムの重量は10wt%)を加えた以外は、実施例1と同様にして、パラジウム担持多孔性粒子を得た。実施例1と同様に、パラジウムの含有量をTGAにより測定した。測定結果を表1に示した。
【0248】
(実施例5)常圧条件下でのパラジウム固定5
国際公開第2017/026425の実施例3に記載の方法で製造した多孔性粒子(シリカゲル担体:平均粒径27μm、平均細孔径12nm、全細孔容積906μL/g)1.3gを懸濁させたアセトニトリル溶液(富士フィルム和光純薬株式会社製、120mL)に対し、酢酸パラジウム0.14g(東京化成工業株式会社製、担体に対しパラジウムの重量は5wt%)を加えて数回振り混ぜた後、室温で24時間、静置した。
シリカゲル担体を濾別し、水(20mL)及びメタノールで洗浄後、真空下で乾燥した。水(50mL)に懸濁し、ヒドラジン一水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.1mL)を加えて数回振り混ぜた後、室温で3時間、静置した。シリカゲル担体を濾別し、水(20mL)及びメタノールで洗浄した後、真空下で乾燥し、パラジウム担持多孔性粒子1.3gを得た。
【0249】
(実施例6)超臨界条件下でのパラジウム固定1
国際公開第国際公開第2020/179642号の実施例1に記載の方法で製造した多孔性粒子(ポリマー担体:体積平均粒径89μm、平均細孔径14nm、全細孔容積27μL/g))1.8g、酢酸パラジウム0.12g(東京化成工業株式会社製、担体に対しパラジウムの重量は3wt%)及びアセトン(ナカライテスク株式会社製、18mL)を耐圧容器(耐圧硝子工業株式会社製、内容積80mL)に加えた。液体二酸化炭素を内圧10MPaになるまで流入し、密閉した後、容器を40℃に加熱した(容器内の圧力は15MPa程度)。これを14時間、マグネティックスターラーで撹拌した後、加熱を停止し、内圧を解放した後に担体の懸濁液を取り出した。
ポリマー担体を濾別し、アセトン(ナカライテスク株式会社製、18mL)で洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム(東京化成工業株式会社製、0.3g)を水(60mL)に溶解した水溶液に懸濁し室温で3時間、マグネティックスターラーで撹拌した。ポリマー担体を濾別し、水(18mL)及びエタノール又はメタノールで洗浄した後、真空下で乾燥し、パラジウム担持多孔性粒子1.7gを得た。
得られたパラジウム担持多孔性粒子におけるパラジウムの含有量をTGA-50(株式会社島津製作所製)を用いた熱重量分析(TGA)により測定した。測定結果を表2に示した。
【0250】
【0251】
(実施例7)超臨界条件下でのパラジウム固定2
酢酸パラジウム0.18g(担体に対しパラジウムの重量は5wt%)を加えた以外は、実施例6と同様にして、パラジウム担持多孔性粒子を得た。実施例1と同様に、パラジウムの含有量をTGAにより測定した。測定結果を表2に示した。
【0252】
(実施例8)超臨界条件下でのパラジウム固定3(複数回固定)
国際公開第国際公開第2020/179642号の実施例1に記載の方法で製造した多孔性粒子(ポリマー担体:体積平均粒径89μm、平均細孔径14nm、全細孔容積27μL/g))1.8g、酢酸パラジウム0.18g(東京化成工業株式会社製、担体に対しパラジウムの重量は5wt%)及びアセトン(ナカライテスク株式会社製、18mL)を耐圧容器(内容積80mL)に加えた。液体二酸化炭素を内圧10MPaになるまで流入し、密閉した後、容器を40℃に加熱した(容器内の圧力は15MPa程度)。これを14時間、マグネティックスターラーで撹拌した。加熱を停止し、内圧を解放した後に担体の懸濁液を取り出した。
ポリマー担体を濾別し、アセトン(ナカライテスク株式会社製、18mL)で洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム(東京化成工業株式会社製、0.3g)を水(60mL)に溶解した水溶液に懸濁し、室温で3時間、マグネティックスターラーで撹拌した。ポリマー担体を濾別し、水(30mL)及びアセトンで洗浄し湿潤のパラジウム担持多孔性粒子を得た。
【0253】
前記湿潤のパラジウム担持多孔性粒子に対し、酢酸パラジウム0.18g(担体に対しパラジウムの重量は5wt%)及びアセトン(東京化成工業株式会社製、18mL)を耐圧容器(内容積80mL)に加えた。液体二酸化炭素を内圧10MPaになるまで流入し、密閉した後、容器を40℃に加熱した(容器内の圧力は15MPa程度)。これを14時間、マグネティックスターラーで撹拌した。加熱を停止し、内圧を解放した後に担体の懸濁液を取り出した。
ポリマー担体を濾別し、アセトン(ナカライテスク株式会社製、18mL)で洗浄後、水素化ホウ素ナトリウム(東京化成工業株式会社製、0.3g)を水(60mL)に溶解した水溶液に懸濁し室温で3時間、マグネティックスターラーで撹拌した。ポリマー担体を濾別し、水(3mL)及びエタノール又はメタノールで洗浄した後、真空下で乾燥し、パラジウム担持多孔性粒子1.7gを得た。
得られたパラジウム担持多孔性粒子におけるパラジウムの含有量をTGA-50(株式会社島津製作所製)を用いた熱重量分析(TGA)により測定した。測定結果を表3に示した。
【0254】
【0255】
(実施例9)常圧条件下での白金固定1
国際公開第国際公開第2020/179642号の実施例1に記載の方法で製造した多孔性粒子(ポリマー担体:体積平均粒径89μm、平均細孔径14nm、全細孔容積27μL/g)1.0gを懸濁させた水(16mL)溶液に対し、テトラクロロ白金(II)酸カリウム0.11g(富士フィルム和光純薬株式会社製、担体に対し白金の重量は5wt%)を加えて室温で16時間、マグネティックスターラーで撹拌した。
水素化ホウ素ナトリウム(東京化成工業株式会社製、0.3g)の水溶液(3mL)を加え、室温で3時間、マグネティックスターラーにて撹拌した。ポリマー担体を濾別し、水(25mL)及びメタノールで洗浄した後、真空下で乾燥し、白金担持多孔性粒子1.0gを得た。
【0256】
(試験例1)顕微鏡写真による評価
検体の作成及び分析は、花市電子顕微鏡技術研究所にて行った。試料は、樹脂包埋超薄切法により作製した。すなわち、エポキシ樹脂(EPON812)との熱重合を60℃、48時間行うことでパラジウムの担持されたポリマー(実施例2及び7のパラジウム担持多孔性粒子、いずれも5wt%)を埋没させた。これをウルトラミクロトーム加工により厚さ80から90nmの試料とした。撮影はJEOL社製JEM2010を用いて行った。
図1A及びBに、パラジウム固定担体の顕微鏡写真を示した。
図1Aの左は、常圧条件下でパラジウムを固定した、実施例2のパラジウム担持多孔性粒子の顕微鏡写真(低倍率)であり、
図1Aの右は、常圧条件下でパラジウムを固定した、実施例2のパラジウム担持多孔性粒子の顕微鏡写真(高倍率)である。
図1Bの左は、超臨界条件下でパラジウムを固定した、実施例7のパラジウム担持多孔性粒子の顕微鏡写真(低倍率)であり、
図1Bの右は、超臨界条件下でパラジウムを固定した、実施例7のパラジウム担持多孔性粒子の顕微鏡写真(高倍率)である。
【0257】
2.カラムリアクターへの充填
(実施例10)カラムリアクターへの充填1(乾式充填)
株式会社巴製作所製フェラル式カラム(内部直径4.6mm、管長さ10cm)に、乾燥後の、実施例1から9で製造した白金族元素担持多孔性粒子(担体)を加えた。タッピングによる空隙率の減少を数度くりかえし、擦り切れ量まで担体を加えて封をした。この際に充填されたパラジウム担持多孔性粒子は、およそ700から800mgである。とくに断りのない限り、以下のカップリング反応には本方式のカラムを用いた。
【0258】
(試験例2)カラム圧力の測定1
実施例1から9で製造した白金族元素担持多孔性粒子(担体)に代えて、国際公開第国際公開第2020/179642号の実施例1に記載の方法で製造した多孔性粒子(ポリマー担体:体積平均粒径89μm、平均細孔径14nm))を使用した以外は、実施例10と同様にしてカラムリアクターへの充填を行った。ヘキサン、又はエタノールを通液したときの、カラム圧力を測定した。測定結果を表4に示した。
なお、前記カラム圧力は、日本分光株式会社製HPLCポンプで送液した際のポンプに表示される圧力である。実験は室温で行った。
【0259】
【0260】
(実施例11)カラムリアクターへの充填2(湿式充填)
エタノール(5mL)を用いて、800mgの実施例1から9で製造した白金族元素担持多孔性粒子(担体)を膨潤させた。
株式会社巴製作所製フェラル式カラム(内部直径4.6mm、管長さ10cm)に、前記膨潤後のパラジウム担持多孔性粒子(担体)を充填した。管上部からの加圧あるいは下部からの減圧により充填量の増加を試み、擦り切れ量まで担体を加えて封をした。充填量はおよそ400から500mgである。
【0261】
(試験例3)カラム圧力の測定2
実施例1から9で製造した白金族元素担持多孔性粒子(担体)に代えて、国際公開第国際公開第2020/179642号の実施例1に記載の方法で製造した多孔性粒子(ポリマー担体:体積平均粒径89μm、平均細孔径14nm、全細孔容積27μL/g))を使用した以外は、実施例11と同様にしてカラムリアクターへの充填を行った。ヘキサン、又はエタノールを通液したときの、カラム圧力を測定した。測定結果を表4に示した。
【0262】
3.化合物の合成
(合成例1)反応原料であるボラートの合成1(バッチ法)
【化8】
真空乾燥した200mLのナス型フラスコ(アルゴン雰囲気)にブロモベンゼン(東京化成工業株式会社製、0.78mL、7.45mmol)と脱水THF(富士フィルム和光純薬株式会社製、112.1mL)を加え、-78℃のバス内で撹拌した。この溶液にノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(関東化学株式会社製、1.58M、5.0mL)を滴下し、-78℃において10分間撹拌した。次いでホウ酸トリイソプロピル(東京化成工業株式会社製、2.06mL)を加え、-78℃において20分間撹拌した。次いでメタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、30.0mL)を加えた後、バスを除去し室温での撹拌を行った。
【0263】
(合成例2)反応原料であるボラートの合成2(バッチ法)
【化9】
真空乾燥した200mLのナス型フラスコ(アルゴン雰囲気)に4-ブロモペンチルベンゼン(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.47mL、2.1mmol)と脱水THF(富士フィルム和光純薬株式会社製、37.4mL)を加え、-78℃のバス内で撹拌した。この溶液にノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(関東化学株式会社製、1.58M、1.7mL)を滴下し、-78℃において10分間撹拌した。次いでホウ酸トリイソプロピル(東京化成工業株式会社製、0.7mL、3.1mmol)を加え、-78℃において20分間撹拌した。次いでメタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、10mL)を加えた後、バスを除去し室温での撹拌を行った。
【0264】
(合成例3)反応原料であるボラートの合成3(フロー法)
図2に示した、2つのT型マイクロ混合器(M1及びM2:株式会社三幸精機工業製)、マイクロチューブリアクター(R1、及びR2:GLサイエンス社製)、50cmのプレクーリングユニット(P1:GL Sciences社製)および100cmのプレクーリングユニット(P2、及び3:GL Sciences社製)から構成される統合フローマイクロリアクターシステムを使用した。
【0265】
ステンレスチューブ及びテフロン(登録商標)チューブは、いずれも内部直径1.0mmのものを用いた。送液にはハーバード社製のシリンジポンプとGLサイエンス社製のガスタイトシリンジを用いた。
ガスタイトシリンジをテフロン(登録商標)チューブ(50cm)に接続し、これをプレクーリングユニット(P1、P2、及び3:ステンレスチューブ、50又は100cm)に接続した。T字型マイクロ混合器(M1及びM2:内部直径500又は250μm)をプレクーリングユニット又はマイクロチューブリアクター(R1、及びR2:ステンレスチューブ)と接続し、フローリアクターを構築した。
プレクーリングユニット、マイクロ混合器及びマイクロチューブリアクターを25℃の水浴に浸し、温度を調節した
【0266】
1-(3-ブロモベンジル)ピペリジン:1-(3-bromobenzyl)piperidineのTHF溶液(0.10M:Eur. J. Org. Chem. 2020:618に記載の方法で合成した1-(3-ブロモベンジル)ピペリジン:1-(3-bromobenzyl)piperidineをTHF(富士フィルム和光純薬株式会社製)に溶解した)をテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M1(内部直径500μm)へ、6.0mL/minの流速で送液した。一方、ノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(関東化学株式会社製、0.42M:1.58M溶液を脱水THF(富士フィルム和光純薬株式会社製)で希釈した)を同様にテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M1へ、1.5mL/minの流速で送液した。これらの混合溶液はステンレスチューブリアクターR1(200cm)を経由してマイクロ混合器M2(内部直径250μm)へ送液された。他方、ホウ酸トリイソプロピルのTHF溶液(0.625M:東京化成工業株式会社製のホウ酸トリイソプロピルを脱水THF(富士フィルム和光純薬株式会社製)に溶解した)をテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M2へ、1.44mL/minの流速で送液した。これらの混合溶液はステンレスチューブリアクターR2(100cm)を経由してボラート溶液として回収された。
送液開始から30秒後からサンプリングを開始し、よく乾燥させた100mLナス型フラスコに7分間サンプリングした。回収した溶液にメタノール22.4mLを加えた。
【0267】
(合成例4)反応原料である3-(1-アダマンチル)4-メトキシフェニルホウ酸:3-(1-adamantyl)-4-methoxyphenylboronic acidの合成
ボラート合成と同様の手法によりホウ酸合成を行った。
2-(1-アダマンチル)-4-ブロモアニソール:2-(1-adamantyl)-4-bromoanisoleのTHF溶液(富士フィルム和光純薬社製、0.10M)をテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M1(内部直径500μm)へ、6.0mL/minの流速で送液した。一方、ノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(関東化学株式会社製、0.42M)を同様にテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M1へ、1.5mL/minの流速で送液した。これらの混合溶液はステンレスチューブリアクターR1(200cm)を経由してマイクロ混合器M2(内部直径250μm)へ送液された。他方、ホウ酸トリイソプロピルのTHF溶液(東京化成工業株式会社製、0.625M)をテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M2へ、1.44mL/minの流速で送液した。これらの混合溶液はステンレスチューブリアクターR2(100cm)を経由してボラート溶液として回収された。
送液開始から30秒後からサンプリングを開始し、よく乾燥させた100mLナス型フラスコに7分間サンプリングした。7分間のサンプリング溶液を1N塩酸に加えて室温で1時間放置した後、酢酸エチルで抽出した。抽出溶液は硫酸ナトリウムで乾燥し、これを除いた後、溶媒を減圧で留去した。得られた濃縮液をノルマルヘキサンに滴下し、析出した白色固体を回収し減圧乾燥して目的のホウ酸生成物を得た。収量は961mgであり、収率は80%であった。
【0268】
(実施例12)目的化合物の合成1:触媒評価
【化10】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業株式会社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.04M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光株式会社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、60℃又は80℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例1、2、6又は7のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行った。定量は、内部標準を用いたガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により行った。またプランジャポンプ本体に表示される圧力をカラムの背圧として記録した。
結果を表5に示した。
【0269】
【0270】
(実施例13)目的化合物の合成2:カラム充填法の評価
【化11】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業株式会社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.04M)を加えて溶解させた。HPLC用ポンプ(株式会社島津製作所製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、80℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例7のパラジウム担持多孔性粒子を湿式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行った。定量は、内部標準法によるガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により行った。またHPLC用ポンプ本体に表示される圧力をカラムの背圧として記録した。
結果を表6に示した。
【0271】
【0272】
(実施例14)目的化合物の合成3:触媒評価
【化12】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業株式会社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.04M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光株式会社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、60℃又は80℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例5のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行った。定量は、内部標準法を用いた液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)により行った。またプランジャポンプ本体に表示される圧力をカラムの背圧として記録した。
結果を表7に示した。
【0273】
【0274】
(実施例15)目的化合物の合成4:超臨界・化学固定カラムを用いた3時間運転
【化13】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業株式会社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.067M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(株式会社島津製作所製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、80℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例2又は7のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを3時間連続で行った。
定量は、内部標準法を用いたガスクロマトグラフィーにより行った。ガスクロマトグラフィーでは、サンプル溶液に対し酢酸エチル(2mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(4mL)、純水(2mL)及び内部標準物質(直鎖アルカン)を加えてよく振り混ぜ、有機層を分析に用いた。またプランジャポンプ使用時は、ポンプ本体に表示される圧力をカラムの背圧として記録した。
結果を表8に示した。なお、常圧固定カラムは、160分後に閉塞した。
【0275】
【0276】
(実施例16)目的化合物の合成5:超臨界担持カラムを用いた反応(流速依存性)
【化14】
超臨界固定化一回のものと二回のものを用い、反応の流速依存性を検証した。
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業株式会社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.07M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、80℃、流速1mL/min、1.5mL/min、2mL/min、3mL/min、カラム1本(実施例7のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)、又は80℃、流速1mL/min、1.5mL/min、2mL/min、3mL/min、4mL/min、5mL/min、6mL/min、7mL/min、又は、8mL/min、カラム1本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、適宜水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行った。
定量は、実施例15と同様にして、内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。
結果を表9に示した。
【0277】
【0278】
(実施例17)目的化合物の合成6:超臨界二回担持カラムを用いた長時間運転
【化15】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.04M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、80℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、30分のサンプル回収を行った後、5秒程度サンプリングを行い、これを用いた面積百分率法による液体クロマトグラフィーにより収率の算出を行った。液体クロマトグラフィーでは、ガスクロマトグラフィーと同様の処理をした溶液、又はサンプリング液そのものをメタノールなどで希釈して分析に用いた。
8時間の連続運転を行い、テトラヒドロフランとメタノールの1対1溶液を1mL/minで20分間流入することによりカラムの洗浄を行った。その4日後、同様の溶液を用いて同様の検討を8時間行った。
結果を表10に示した。
【0279】
【0280】
(実施例18)目的化合物の合成7:ボラートの直接カップリング
【化16】
合成例1で合成したリチウム トリイソプロポキシ(フェニル)ボラート:lithium triisopropoxy(phenyl)borate(0.05M)のメタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶液に対し、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、1.15g、0.033M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光株式会社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、60℃又は97℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例7又は8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行った。
定量は、実施例15と同様にして、内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。
結果を表11に示した。
【0281】
【0282】
(実施例19)目的化合物の合成8:ボラートの直接カップリングによる液晶分子(5CB)合成
【化17】
合成例2で合成したリチウム トリイソプロポキシ(4-ノルマル-ペンチルフェニル)ボラート:lithium triisopropoxy(4-n-pentylphenyl)borate(0.05M)のメタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶液に対し、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.38g, 0.033M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光株式会社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、97℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、適宜水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行った。
定量は、実施例15と同様にして、内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った(収率76%)。
【0283】
(実施例20)目的化合物の合成9:ボラートの直接カップリングによる生理活性物質(HDAC阻害剤、米国特許公報2005197336号)合成
【化18】
合成例3で合成したリチウム トリイソプロポキシ(2-((ピペリジン-1-イル)メチル)フェニル)ボラード:lithium triisopropoxy(2-((piperidin-1-yl)methyl)phenyl)borate(0.05M)のメタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶液に対し、Eur. J. Org. Chem. 2020:618に記載の方法で合成した1-(5-エトキシカルボニルチアゾル-2-イル)-4-(4-ヨードフェニルスルホニル)ピペラジン:1-(5-ethoxycalbonylthiazol-2-yl)-4-(4-iodophenylsulfonyl)piperazine(0.033M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光株式会社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、97℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、50分間のサンプリングを行った。
50分間のサンプリング後、塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後これをろ過により除去し、さらに減圧条件により溶媒を留去した。少量の酢酸エチルに生成物を溶解し、ノルマルヘキサンに滴下して固体を析出させ、これを濾別することにより873mgの生成物(収率95%)を得た。構造は、Eur. J. Org. Chem. 2020:618に記載のとおり、NMRにより決定したところ、Eur. J. Org. Chem. 2020:618に記載のものと一致した。
【0284】
(実施例21)目的化合物の合成10:超臨界二回担持カラムを用いたカップリング反応の温度検討
【化19】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、フェニルボロン酸(東京化成工業社製、0.05M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.07M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、80℃、60℃、40℃又は25℃、流速1mL/min、0.5mL/min又は0.25mL/min、カラム1本又は2本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
流速1mL/minのときは、10分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行い、流速0.5mL/minのときは、20分間の安定化の後、10分間のサンプリングを行い、流速0.25mL/minかつカラム本数が1本のときは、30分間の安定化の後、20分間のサンプリングを行い、流速0.25mL/minかつカラム本数が2本の時は、40分間の安定化の後、20分間のサンプリングを行った。
定量は、実施例15と同様にして、内部標準法によるガスクロマトグラフィーにより行った。
結果を表12に示した。
【0285】
【0286】
(実施例22)目的化合物の合成11:超臨界二回担持カラムを用いたカップリング反応による生理活性物質の合成
【化20】
メタノールとテトラヒドロフランの2対8の混合溶媒に対し、合成例4で合成した3-(1-アダマンチル)4-メトキシフェニルホウ酸:3-(1-adamantyl)-4-methoxyphenylboronic acid(0.05M)、Catal. Today in press. DOI: 10.1016/j.cattod.2020.07.014に記載の方法で合成した6-ヨード-2-ナフトエ酸 ターシャリーブチル:tert-butyl 6-iodo-2-naphthoate(0.033M)、及び水酸化カリウム(シグマ-アルドリッチ社製、0.07M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(日本分光社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、25℃、流速0.25mL/min、カラム3本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ20cm)を接続した。
20分間サンプリングを行い、溶液に塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加え、ジクロロメタン(20mL)で三回抽出した。得られたジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾別し、溶媒を留去した。シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒はノルマルヘキサンと酢酸エチルの体積比が20:1)により98%の収率で目的のカップリング体を得た。
本生成物はトリフルオロ酢酸により、尋常性ざ瘡の外用薬であるアダパレンへと変換可能である(Catal. Today in press. DOI: 10.1016/j.cattod.2020.07.014)。
【0287】
(実施例23)目的化合物の合成12:Stilleカップリング
【化21】
メタノールとジメチルスルホキシドの3対7の溶媒に対し、トリブチルフェニルスタナン(シグマ-アルドリッチ社製、0.0495M)、4-ヨードベンゾニトリル:4-iodobenzonitrile(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.033M)、塩化リチウム(富士フィルム和光純薬社製、0.099M)を加えて溶解させた。プランジャポンプ(株式会社島津製作所製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、97℃、流速1mL/min、カラム1本(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ100cm)を接続し、水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
10分間の安定化の後、10分間サンプリングを行い、実施例15と同様にして内部標準法によりガスクロマトグラフィーで分析したところ、95%の収率で目的のカップリング体が生じていることが分かった。
【0288】
(実施例24)目的化合物の合成13:重水による重水素化による重アセトアニリド合成
【化22】
アセトアニリド(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.10M)のイソプロパノールと重水の3対7の混合溶液を調製し、シリンジポンプ(日本分光株式会社製)を使用し、水浴中のカラムリアクターへ、97℃、流速0.1mL/min、カラム1本(実施例9の白金担持多孔性粒子を湿式充填したカラム)の条件で送液を行った。カラムリアクターの出口にはステンレス製のチューブ(内部直径1.0mm、管長さ50cm)を接続し、適宜水浴に浸し、反応溶媒の気化を防いだ。
40分間の安定化の後、50分間のサンプリングを行った。
50分間のサンプリング後、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後これをろ過により除去し、さらに減圧条件により溶媒を留去した。得られた固体を減圧条件で乾燥し、71mgの生成物(収率101%)を得た。
重水素化率は、内部標準物質として1,4-ジオキサンを添加してプロトンNMRを測定し、1,4-ジオキサンと生成物に由来するプロトンシグナルの積分強度を比較することにより算出した。ベンゼン環の重水素化率は、o-位87%、m-位63%、p-位60%であった。
【0289】
4.棒状のモノリス型担体との比較
合成例3と同様のフロー装置を用いて原料のボラート溶液を調製した。
プレクーリングユニット、マイクロ混合器及びマイクロチューブリアクターを0℃の氷浴に浸し、温度を調節した。
ブロモベンゼン(富士フィルム和光純薬社製、0.10M)のTHF溶液をテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M1(内部直径500μm)へ、6.0mL/minの流速で送液した。一方、ノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(関東化学株式会社製、0.60M)を同様にテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M1へ、1.5mL/minの流速で送液した。これらの混合溶液はステンレスチューブリアクターR1(25cm)を経由してマイクロ混合器M2(内部直径500μm)へ送液された。他方、ホウ酸トリイソメチルのTHF溶液(東京化成工業株式会社製、0.12M)をテフロン(登録商標)チューブ及びプレクーリングユニットを経由してマイクロ混合器M2へ、5.0mL/minの流速で送液した。これらの混合溶液はステンレスチューブリアクターR2(50cm)を経由してボラート溶液として回収された。得られた溶液に対し、4-ヨードベンゾニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製)のメタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)溶液を、4-ヨードベンゾニトリルの最終濃度が0.033Mとなりかつ加えたメタノールの体積がTHFの体積の0,67倍となるように加えた。
溶液をプランジャポンプ(株式会社島津製作所製)により、Catalysts 2019 9:300に記載の棒状モノリスの充填されたカラム(内径4.6mm、長さ15cm)に送液した。カラムは100℃の油浴により加熱されていた。送液を開始し、安定化時間(流速1mL/minの場合は、10分間から30分間、高流速の場合は、より短い時間)の後、10分間サンプリングした。定量は実施例15と同様にガスクロマトグラフィーで行った。
結果を表13の上段に示した。
表13の下段には、実施例16の結果の一部(実施例8のパラジウム担持多孔性粒子を乾式充填したカラム)を示した。
【0290】
【0291】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 互いに連通した複数の孔部を有し、白金族元素が担持されたことを特徴とする白金族元素担持多孔性粒子。
<2> 前記複数の孔部の中に白金族元素が分散している、前記<1>に記載の白金族元素担持多孔性粒子。
<3> 前記白金族元素が、パラジウム又は白金である、前記<1>又は<2>に記載の白金族元素担持多孔性粒子。
<4> 前記白金族元素が、パラジウムである、前記<3>に記載の白金族元素担持多孔性粒子。
<5> 前記白金族元素担持多孔性粒子の体積平均粒径が100μm以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子を含むことを特徴とする、白金族元素触媒。
<7> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子、又は前記<6>に記載の白金族元素触媒が充填されたカラム。
<8> 互いに連通した複数の孔部を有する多孔性粒子と、白金族元素と、を混合する混合工程を含む、白金族元素担持多孔性粒子の製造方法。
<9> 前記混合工程が、超臨界流体を用いて行われる、前記<8>に記載の白金族元素担持多孔性粒子の製造方法。
<10> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の白金族元素担持多孔性粒子、又は前記<6>に記載の白金族元素触媒を用いた反応工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法。