(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078740
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】エンジンの吸気構造
(51)【国際特許分類】
F02M 26/19 20160101AFI20230531BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20230531BHJP
F02D 9/10 20060101ALI20230531BHJP
F02B 53/04 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
F02M26/19 331
F02M35/10 101F
F02M35/10 101D
F02D9/10 H
F02M35/10 101K
F02B53/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192005
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】加藤 二郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山内 武俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 和博
(72)【発明者】
【氏名】山下 修
(72)【発明者】
【氏名】田中 清喬
(72)【発明者】
【氏名】砂流 雄剛
(72)【発明者】
【氏名】権代 明典
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】林 一英
(72)【発明者】
【氏名】村上 一樹
【テーマコード(参考)】
3G062
3G065
【Fターム(参考)】
3G062ED04
3G062ED07
3G062ED10
3G065BA06
3G065CA23
3G065DA05
3G065HA21
(57)【要約】
【課題】エンジン本体周りに吸気通路をコンパクトに配設しつつ吸気とEGRガスの混合を促進できるエンジンの吸気構造を提供する。
【解決手段】吸気通路に、スロットル弁が配設された第1通路部と、当該第1通路部の下流側に配設された第2通路部とを設け、第1通路部を所定の第1方向に沿って直線状に延びる形状とし、第2通路部を、第1通路部の下流側の端部から、当該端部に対して第1方向と直交する第2方向の一方側にむかって湾曲する形状とし、第2通路部の内壁に、第1通路部の内壁の第2方向の他方側部分から第2方向の一方側に向かって湾曲しつつ延びる湾曲壁を設け、湾曲壁を、第2方向の他方側に凸となるように窪んだ湾曲形状とし、EGR通路の下流側の端部を、湾曲壁の上流側の端部に接続する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体と、前記エンジン本体に形成された吸気ポートに接続されて前記エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出される排気が流通する排気通路と、前記吸気通路と前記排気通路とを連通して排気の一部を前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えるエンジンの吸気構造において、
前記吸気通路は、前記吸気の流路面積を変更可能なスロットル弁が配設された第1通路部と、当該第1通路部の下流側に配設された第2通路部とを備え、
前記第1通路部は所定の第1方向に沿って直線状に延びる形状を有し、
前記第2通路部は、前記第1通路部の下流側の端部から前記第1方向と直交する第2方向の一方側に向かって湾曲する形状を有し、
前記第2通路部の内壁は、前記第1通路部の内壁の前記第2方向の他方側部分から前記第2方向の一方側に向かって湾曲しつつ延びる湾曲壁を有し、
前記湾曲壁は、前記第2方向の他方側に凸となるように窪んだ湾曲形状を有し、
前記EGR通路の下流側の端部は、前記湾曲壁の上流側の端部に接続されている、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの吸気構造において、
前記EGR通路の下流側の端部は、前記第2通路部の内方に突出しており、その先端に下流側に開口する開口部を備える、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンの吸気構造において、
前記第2通路部の内壁は、前記第1通路部の内壁の前記第2方向の前記一方側の部分から当該第2方向の一方側に向かって湾曲しつつ延びる第2湾曲壁を有し、
前記第2湾曲壁は、前記第2方向の一方側に凸となるように窪んだ湾曲形状を有する、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジンの吸気構造において、
前記エンジン本体はロータリーピストンエンジンである、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体と、エンジン本体に形成された吸気ポートに接続されてエンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、エンジン本体から導出される排気が流通する排気通路と、吸気通路と排気通路とを連通して排気の一部を吸気通路に還流するEGR通路とを備えるエンジンの吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両等に設けられるエンジンでは、排気の一部を吸気通路に還流させるEGRが実施される。
【0003】
例えば、特許文献1には、直列に並ぶ4つの気筒が形成されたエンジン本体とターボ過給機とを備えるエンジンであって、排気通路のうちタービンよりも上流側の部分を通過する排気の一部を吸気通路のうちコンプレッサよりも下流側の部分に還流させるエンジンが開示されている。また、特許文献1のエンジンでは、吸気通路のうちEGRガスが導入される部分よりも下流側の通路が折り返すように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構成では、吸気通路のうちEGRガスが導入される部分よりも下流側の通路が折り返すように形成されていることで、2本の通路がエンジン本体周りに並設されることになり、レイアウト性が悪いという問題がある。これより、この折り返しを省略することが考えられるが、この場合は、EGRガスが導入される部分からエンジン本体までのガスの流路長が短くなることで、エンジン本体に導入されるまでの間のEGRガスと吸気の混合が不十分になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、エンジン本体周りに吸気通路をコンパクトに配設しつつ吸気とEGRガスの混合を促進できるエンジンの吸気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、エンジン本体と、前記エンジン本体に形成された吸気ポートに接続されて前記エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出される排気が流通する排気通路と、前記吸気通路と前記排気通路とを連通して排気の一部を前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えるエンジンの吸気構造において、前記吸気通路は、前記吸気の流路面積を変更可能なスロットル弁が配設された第1通路部と、当該第1通路部の下流側に配設された第2通路部とを備え、前記第1通路部は所定の第1方向に沿って直線状に延びる形状を有し、前記第2通路部は、前記第1通路部の下流側の端部から、当該端部に対して前記第1方向と直交する第2方向の一方側にむかって湾曲する形状を有し、前記第2通路部の内壁は、前記第1通路部の内壁の前記第2方向の他方側部分から前記第2方向の一方側に向かって湾曲しつつ延びる湾曲壁を有し、前記湾曲壁は、前記第2方向の他方側に凸となるように窪んだ湾曲形状を有し、前記EGR通路の下流側の端部は、前記湾曲壁の上流側の端部に接続されている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明では、第1方向に沿って直線状に延びる第1通路部の下流側に配設された第2通路部が、第1通路部の下流側の端部から第1方向の一方側に向かって湾曲する形状とされている。そして、第2通路部の内壁であって第1通路部の内壁から延びる湾曲壁の上流側の端部にEGR導入部の下流側の端部が接続されている。そのため、第2通路部を第1方向に沿ってまっすぐに延びる形状とした場合に比べて、第2通路部の通路長ひいてはEGRガスの流路長を長くできるとともに、第2通路部のEGR導入部から下流側の領域に2次流れを生じさせることができ、EGR導入部から第2通路部に導入されたEGRガスと吸気との混合を促進できる。これより、本発明によれば、特許文献1のように2本の吸気通路を並設する場合に比べて吸気通路が占めるスペースを小さく抑えて吸気通路をエンジン本体の周辺にコンパクトに配設しつつ、EGRガスと吸気との混合を促進できる。
【0009】
しかも、この構成では、湾曲壁が第2方向の他方側に凸となるように窪んだ湾曲形状とされていることで、EGR導入部を通じて第2通路部に導入されたEGRガスを湾曲壁に沿って下流側に向かわせることができる。従って、EGRガスが吸気通路の上流側に逆流するのを防止して、EGRガスを適切に下流側に移動させることつまりエンジン本体に流入させることができる。
【0010】
前記構成において、好ましくは、前記EGR通路の下流側の端部は、前記第2通路部の内方に突出しており、その先端に下流側に開口する開口部を備える(請求項2)。
【0011】
この構成によれば、EGRガスを確実に下流側に移動させて適切にエンジン本体に流入させることができる。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記第2通路部の内壁は、前記第1通路部の内壁の前記第2方向の前記一方側の部分から当該第2方向の一方側に向かって湾曲しつつ延びる第2湾曲壁を有し、前記第2湾曲壁は、前記第2方向の一方側に凸となるように窪んだ湾曲形状を有する(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、第2湾曲壁に沿う領域に渦を発生させることができ、この渦の作用によりEGRガスと吸気との混合をより一層促進できる。
【0014】
前記エンジン本体としては、ロータリーピストンエンジンが挙げられる(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のエンジンの吸気構造によれば、エンジン本体周りに吸気通路をコンパクトに配設しつつ吸気とEGRガスの混合を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの概略構成を示したシステム図である。
【
図3】
図2に対応する図であって吸排気系の部品の詳細を示した概略側面図である。
【
図5】
図4のV-V線断面を示した概略断面図である。
【
図6】EGR通路の下流側の端部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(エンジンの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの吸気構造が適用されたエンジンの概略構成を示したシステム図である。
図2および
図3は、それぞれエンジンの概略側面図である。
図4は、
図2および
図3と直交する方向から見たエンジンの概略側面図である。
【0018】
本実施形態に係るエンジン1は車両に搭載される。例えば、エンジン1は、走行用の動力源としてのモータ、これに給電するバッテリおよびバッテリを充電する発電機を備えたハイブリッド車両に搭載されて、発電機を発電する装置として利用される。エンジン1は、エンジン本体10と、エンジン本体10に導入される吸気が内側を流通する吸気通路3と、エンジン本体10から排出される排気が内側を流通する排気通路8と、排気通路8と吸気通路3とを連通して排気の一部であるEGRガスを排気通路8から吸気通路3に還流するEGR通路6とを備える。
【0019】
(エンジン本体)
本実施形態のエンジン本体10は、1ロータタイプのロータリーピストンエンジン(以下、ロータリーエンジンという)であり、所定の回転軸回りに回転する1つのロータ11と、ロータ11の回転軸に沿って延びるエキセントリックシャフト12と、2ノードのペリトロコイド曲線に沿う内周面を備えるロータハウジング13と、ロータ11の回転軸に沿う方向についてロータハウジング13を挟みこむ一対のサイドハウジング14、14とを有する。ロータ11は、ロータハウジング13と2つのサイドハウジング14、14により区画されたロータ収容室Rに収容されており、エキセントリックシャフト12に対して遊星回転運動してロータハウジング13の内周面に沿って回転する。
【0020】
また、エンジン本体10は、一方のサイドハウジング14のロータハウジング13と反対側(ロータ11の回転軸に沿う方向について)の部分に連結されて、フライホイール21が固定されるリアホルダー20を有する。なお、エンジン本体10の下部には、オイルパン22が取り付けられている。
【0021】
エンジン本体10は、ロータ11の回転軸およびエキセントリックシャフト12が略水平方向(上下方向と略直交する方向)に延びる姿勢で車両に搭載されている。以下では、
図2等に示すように、ロータ11の回転軸に沿う方向つまりエキセントリックシャフト12の長手方向を前後方向といい、フライホイール21が配設される側を後、反対側を前として説明する。また、エンジン1の説明において、当該100が車両に搭載された状態での上下方向を単に上下方向とし、エンジン本体10を後方から見たときの左右方向を単に左右方向として説明する。なお、また、
図2および
図3は、エンジン1を右方から見た図である。
図4は、エンジン1を後方から見た図である。ここで、本実施形態では、「上下方向」が請求項の「第1方向」に相当し、「前後方向」が請求項の「第2方向」に相当する。
【0022】
エンジン本体10には、吸気通路3に接続されて吸気通路3内の吸気をロータ収容室Rに導入する吸気ポート15、および、排気通路8に接続されてロータ収容室Rから排気を排気通路8に導出する排気ポート16が形成されている。吸気ポート15は、ロータ収容室Rの右側上部に開口しており、排気ポート16はロータ収容室Rの右側下部に開口している。つまり、エンジン本体10は、ロータ11が前方から見て時計回りに回転し、ロータ収容室Rの右側上部、左側上部、左側下部、右側下部の各領域がそれぞれ概ね吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の実施領域となるように構成されている。
【0023】
吸気ポート15および排気ポート16は、それぞれ2つずつエンジン本体10に設けられている。エンジン本体10は、サイドポート式のロータリーエンジンであり、吸気ポート15および排気ポート16はサイドハウジング14に形成されている。つまり、2つのサイドハウジング14の上部にそれぞれ1つずつ吸気ポート15が形成されており、各吸気ポート15は、各サイドハウジング14の上部の右側面に開口している。また、2つのサイドハウジング14の下部にそれぞれ1つずつ排気ポート16が形成されており、各排気ポート16は、各サイドハウジング14の下部の右側面に開口している。
【0024】
エンジン本体10には、ロータ収容室R内に燃料を噴射する燃料噴射装置17と、ロータ収容室R内に形成された燃料と空気の混合気を添加する点火プラグ18とが取り付けられている。本実施形態では、燃料噴射装置17は、ロータ収容室Rの上端を臨むように取り付けられており、点火プラグ18は、ロータ収容室Rの左下部を臨むように取り付けられている。
【0025】
(吸気通路)
吸気通路3には、吸気中に含まれる異物を除去するエアクリーナ31Aと、吸気の流路面積を変更してエンジン本体10に導入される吸気の量を調整可能なスロットル弁41とが、上流側からこの順に設けられている。
【0026】
具体的に、吸気通路3は、上流側から順に並ぶ、第1吸気通路31と、第2吸気通路32と、スロットルボディ40と、インテークマニホールド50とを備える。エアクリーナ31Aは、第1吸気通路31に設けられており、スロットル弁41はスロットルボディ40に設けられている。スロットルボディ40は、スロットル弁41に加えて、スロットル弁41を囲んで吸気が通過する通路を区画するスロットルバルブケース42と、スロットル弁41を駆動するアクチュエータ43とを有する。スロットル弁41は、アクチュエータ43により駆動されてスロットルバルブケース42により区画された通路を開閉する。本実施形態では、スロットル弁41を駆動するアクチュエータ43はモータであり、以下では、このアクチュエータ43をスロットルバルブモータ43という。
【0027】
第1吸気通路31のエアクリーナ31Aよりも下流側の部分には、当該部分を通過する吸気の流量を検出するエアフロメータセンサSN1が設けられている。インテークマニホールド50には、これを通過するガスの温度である吸気温を検出する吸気温センサSN2が設けられている。
【0028】
各吸気ポート15、15には、インテークマニホールド50の下流側の端部が接続されており、第1吸気通路31に流入した吸気(空気)は、エアクリーナ31A、第2吸気通路32、スロットルバルブケース42およびインテークマニホールド50、各吸気ポート15、15を通って、ロータ収容室Rに導入される。
【0029】
図3等に示すように、吸気通路3のうちスロットルボディ40から下流側の部分は、後方から見てエンジン本体10の右方に配置されている。スロットルボディ40は、エンジン本体10よりも上方に配置されている。インテークマニホールド50は、エンジン本体10の右側面10Aに沿ってスロットルボディ40の下端から下方に延びている。スロットルボディ40およびインテークマニホールドの詳細構造については後述する。
【0030】
(排気通路)
排気通路8には、排気を浄化するための浄化装置81が設けられている。排気通路8は、各排気ポート16、16と連通する排気マニホールド82を備えており、浄化装置81は、排気マニホールド82の下流側に配設されている。
【0031】
図2等に示すように、排気マニホールド82は、前後方向に延びる形状を有している。排気マニホールド82は、2つの排気ポート16、16と連通する状態で、エンジン本体10の右側面10Aの下部にエキマニ固定部120を介して固定されている。
【0032】
(EGR通路)
EGR通路6には、EGRガスを冷却するEGRクーラ62と、EGRガスの流路面積を変更して吸気通路3に導入されるEGRガスの量を調整可能なEGR弁71とが設けられている。
【0033】
具体的に、EGR通路6は、排気通路8側から順に並ぶ、第1EGR通路61と、EGRクーラ62と、第2EGR通路63と、EGRバルブボディ70と、第3EGR通路64とを備える。EGR弁71は、EGRバルブボディ70に設けられている。EGRバルブボディ70は、EGR弁71に加えて、EGR弁71を囲んでEGRガスが通過する通路を区画するEGRバルブケース72と、EGR弁71を駆動するアクチュエータ73とを有する。EGR弁71は、アクチュエータ73により駆動されてEGRバルブケース72により区画された通路を開閉する。本実施形態では、EGR弁71を駆動するアクチュエータ73はモータであり、以下では、このアクチュエータ73をEGRバルブモータ73という。
【0034】
EGR通路6は、排気通路8の浄化装置81よりも上流側の部分と、吸気通路3のスロットル弁41よりも下流側の部分とを連通している。具体的に、EGR通路6の上流側の端部つまりEGR通路6の排気通路8側の端部は排気マニホールド82に接続されており、EGR通路6の下流側の端部つまりEGR通路6の吸気通路3側の端部はインテークマニホールド50に接続されている。なお、EGRクーラ62は、EGRガスを冷却液により冷却しており、
図2等に示すように、EGRクーラ62には、これを流通する冷却水を導入・導出するためのパイプ62A、62Bが接続されている。
【0035】
図2等に示すように、EGR通路6は、エンジン本体10の右方に配設されている。具体的に、第1EGR通路61は、排気マニホールド82の前端部の上部に接続されており、この接続部分から上斜め後方に延びている。EGRクーラ62は、略直方体状を有し、第1EGR通路61の後端から後方に延びる姿勢で第1EGR固定部130を介してエンジン本体10の右側面10Aに固定されている。第2EGR通路63は、EGRクーラ62の後端から上斜め後方に延びている。EGRバルブボディ70は、その下部にEGRバルブケース72が位置し、その上部にEGRバルブモータ73が位置する姿勢で、第2EGR通路63の上端に当該上端から上方に延びるように配設されている。EGR通路6は、第2EGR通路63とEGRバルブボディ70との連結部分から下方に延びる第2EGR固定部140によってもエンジン本体10の右側面10Aに固定されている。第3EGR通路64は、EGRバルブケース72の左側面に連結されており、EGRバルブボディ70とエンジン本体10の右側面10Aとの間においてEGRバルブケース72の左側面から上方に延びている。第3EGR通路64は、EGRバルブケース72の左側面から上方に延びる部分と、この部分の上端から後方に膨出するように湾曲する部分と、この湾曲部分の前端から前方に延びるEGR導入部65とで構成されている。EGR導入部65はEGR通路6の下流側の端部を構成しており、吸気通路3にはこのEGR導入部65が接続されている。
【0036】
(スロットルボディ40およびインテークマニホールドの詳細構造)
図5は、
図3のV-V線断面の概略図である。
【0037】
上記のように、スロットルボディ40は、エンジン本体10の右方且つ上方に配置されている。スロットルバルブケース42は延筒状を有しており、エンジン本体10の右上方において上下方向にほぼまっすぐに(直線状に)延びている。スロットルバルブモータ43は、スロットルバルブケース42の後方に配設されている。
【0038】
インテークマニホールド50は、形状の違いから大きく3つの部位に分けられ、インテークマニホールド50の上部を構成する第1インマニ部51と、インテークマニホールド50の上下中央部分を構成する第2インマニ部52と、インテークマニホールド50の下部を構成する第3インマニ部53とで構成されている。本実施形態では、スロットルバルブケース42は金属製であり、インテークマニホールド50は樹脂製である。
【0039】
第1インマニ部51は、スロットルバルブケース42の内径とほぼ同じ内径の略円筒状を有する。第1インマニ部51は、スロットルバルブケース42の下端部つまり吸気の流れ方向における下流側の端部から下方にほぼまっすぐ(直線状に)延びている。
【0040】
第2インマニ部52は、第1インマニ部51の下端部つまり下流側の端部(吸気の流れ方向について)から前方(前後方向の一方側)に向かって湾曲する形状を有している。第2インマニ部52は、第1インマニ部51の下端部から、この端部に対して下側且つ前側にずれた位置にむかって前斜め下方延びている。本実施形態では、第2インマニ部52の下端の後端位置は、第1インマニ部の上端の前端位置よりも前側となっている。
【0041】
第2インマニ部52の内壁は、第1インマニ部51の内壁の後側部分(前後方向の他方側部分)から前方に向かって延びる第1湾曲壁52Aであって、後側(前後方向の他方側)に凸となるように窪んだ湾曲形状を呈する第1湾曲壁52Aを有する。具体的に、第2インマニ部52の後側部分、つまり、
図5に示すように第2インマニ部52をその左右方向の中央で切断したときの断面の後側部分は、右方から見て略S字状を呈し、第2インマニ部52の後側の内壁の上部は後方に凸となるように窪んでおり、下部は前方に凸となるように湾曲している。上記の第1湾曲壁52Aは、この第2インマニ部52の後側の内壁の上部を構成している。なお、この第1湾曲壁52Aは請求項の「湾曲壁」に相当する。
【0042】
また、第2インマニ部52の内壁は、第1インマニ部51の内壁の前側部分(前後方向の一方側の部分)から前方に向かって延びる第2湾曲壁52Cであって、前側(前後方向の一方側)に凸となるように窪んだ湾曲形状を呈する第2湾曲壁52Cを有する。具体的に、第2インマニ部52の前側部分、つまり、
図5に示すように第2インマニ部52をその左右方向の中央で切断したときの断面の前側部分は、全体として前方に凸となるように湾曲しており、この第2インマニ部52の前側部分の内壁が上記の第2湾曲壁52Cを構成している。第2湾曲壁52Cの上端部52Dは、第1インマニ部51の前側の内壁51Bから略直交するように前方に延びており、第1インマニ部51の前側の内壁51Bと第2湾曲壁52Cとの境界部分には、略直角に折れ曲がる角部52Xが形成されている。
【0043】
EGR通路6の下流側の端部つまりEGR導入部65は、上記の第1湾曲壁52Aの上端つまり上流側の端部(吸気の流れ方向について)に接続されている。本実施形態では、EGR導入部65は、第2インマニ部52の内側に突出する状態で第1湾曲壁52Aに接続されている。
【0044】
具体的に、EGR導入部65は略円筒状を有する。第1湾曲壁52Aの上端には、前後方向に貫通する貫通孔52Eが形成されている。EGR導入部65は、前後方向に延び、且つ、その先端が第1湾曲壁52Aから第2インマニ部52の内方(径方向の内側)に突出する姿勢で、第1湾曲壁52Aの上端に接続されている。EGR導入部65の第1湾曲壁52Aから第2インマニ部52の内方への突出量は、第2インマニ部52の内径の半分よりも小さい量に抑えられている。
【0045】
図6は、EGR導入部65を下方から見た図である。
図6に示すように、EGR導入部65の先端には、下方つまり下流側(吸気の流れ方向について)に開口する開口部65Aが形成されている。EGRガスは、この開口部65Aから第2インマニ部52内に導入される。詳細には、EGR導入部65の先端の上壁65Bは前側ほど下側に位置するように傾斜しており、この傾斜壁65Bの下端から後方に開口部65Aが形成されている。また、開口部65Aの後端位置と第1湾曲壁52Aの前後方向の位置はほぼ同じとされており、開口部65Aは第1湾曲壁52Aの表面から前方の領域に形成されている。
【0046】
上記吸気温センサSN2は、第2インマニ部52の下端部つまり下流側の端部(吸気の流れ方向について)に配設されている。詳細には、吸気温センサSN2は、第2湾曲壁72Cの下端部に露出するように第2インマニ部52に取り付けられている。
【0047】
第3インマニ部53は、前後方向に延びる形状を有し、第1インマニ部の下端部から前方および後方に広がっている。第3インマニ部53の下部の前端および後端には、左方つまりエンジン本体10側に開口する開口部53A、53Aがそれぞれ形成されている。各開口部53A、53Aは、吸気ポート15、15とそれぞれ連通しており、吸気は、これら開口部53A、53Aを通じて吸気通路3から吸気ポート15、15に導入される。
【0048】
ここで、本実施形態では、吸気通路3のうち、上記のスロットルバルブケース42と第1インマニ部51とで構成される上下方向にほぼまっすぐに延びる部分150が、請求項の「第1通路部」に相当する。また、上記の第2インマニ部52が、請求項の「第2通路部」に相当する。
【0049】
(作用等)
上記実施形態では、第2インマニ部52が、上下方向に延びる第1インマニ部51の下端部(下流側の端部)から前方に向かって湾曲する形状を有しており、第2インマニ部52の流路長は、第2インマニ部52を上下方向にまっすぐ延びる形状とした場合の流路長よりも長くされている。つまり、上記実施形態では、上下方向の寸法を拡大させることなく第2インマニ部52の流路長の増大が実現されている。そして、EGR通路6の下流側の端部(EGR導入部65)が、第1湾曲壁52Aの上端部(上流側の端部)つまり第2インマニ部52の上端部(上流側の端部)に接続されている。そのため、上記実施形態によれば、エンジン本体10の周囲に第2インマニ部52つまり吸気通路3をコンパクトに配設しつつ、第2インマニ部52内でのEGRガスと吸気の混合を促進して、エンジン本体10での適切な燃焼を実現できる。
【0050】
また、上記実施形態では、第2インマニ部52の下端部(下流側の端部)に吸気温センサSN2が取り付けられている。そのため、上記のように、第2インマニ部52内においてEGRガスと吸気の混合が促進されることで、吸気温センサSN2に、EGRガスと吸気のより均質なガスの温度を検出させることができる。
【0051】
さらに、第2インマニ部52が湾曲形状を有していることで、第2インマニ部52内には二次流れが形成される。具体的に、
図7の矢印Y1に示すように、第2インマニ部52の内部には、その中心線(第2インマニ部52を通過するガスの主流)と直交する方向の流れが生成される。これより、第2インマニ部52内において、主としてその中心線を通過する吸気(矢印Y2)と、第2インマニ部52の壁面側から導入されるEGRガス(矢印Y3)との混合を確実に促進することができる。
【0052】
さらに、上記実施形態では、EGR通路6の下流側の端部(EGR導入部65)が、第1インマニ部51の内壁の後側部分(前後方向の他方側部分)から前方に向かって延び、且つ、後側(前後方向の他方側)に凸となるように窪んだ湾曲形状を呈する第1湾曲壁52Aの上端(上流側の端部)に接続されている。そのため、EGRガスを適切に、つまり、適切な量のEGRガスを適切なタイミングで、エンジン本体10に導入できる。
【0053】
具体的に、スロットル弁41の下流側には負圧が生じやすい。そのため、吸気通路3のうちスロットル弁41に比較的近い部分にEGR通路6を接続すると、
図7の破線矢印Y10に示すように、EGRガスの一部がスロットル弁41側つまり上流側に流れてしまい、EGRガスが適切にエンジン本体10に導入されないおそれがある。これに対して、上記実施形態によれば、
図7の矢印Y3に示すように、EGRガスを第1湾曲壁52Aに沿わせて下流側に案内できる。これより、スロットル弁41に比較的近い部分にEGR通路6を接続してこれらをエンジン本体10回りにコンパクトに配置しつつ、EGRガスを適切にエンジン本体10に導入できる。また、上記実施形態によれば、EGRガスのスロットル弁41側への逆流が抑制されることで、EGRガスに含まれる煤等のスロットル弁41への付着を抑制できるという効果も得られる。
【0054】
また、上記実施形態では、第2インマニ部52の前側の内壁である第2湾曲壁52Cが、第1インマニ部51の内壁の前側部分から前方に向かって延び、且つ、前側に凸となるように窪んだ湾曲形状とされている。そのため、第2インマニ部52の前側上部に、
図7の矢印Y4に示すように渦を生成させること、つまり、比較的強い乱流を生成することができる。従って、第2インマニ部52内において、EGRガスと吸気の混合をより一層促進することができる。特に、上記実施形態では、第1インマニ部51の前側の内壁51Bと第2湾曲壁52Cとの境界部分に、略直角に折れ曲がる角部52Xが形成されている。そのため、吸気をより確実に剥離させて強い渦および乱流を生じさせ、EGRガスと吸気との混合を確実に促進することができる。
【0055】
(変形例)
上記実施形態では、エンジン本体10がロータリーピストンエンジンの場合を説明したが、エンジン本体10の種類はこれに限られない。
【0056】
上記実施形態では、インテークマニホールド50の上部を構成する第1インマニ部51を上下方向にまっすぐに延びる形状として、第2インマニ部52を湾曲する形状とした場合を説明したが、インテークマニホールド50の上部あるいは全体を湾曲する形状とし、インテークマニホールド50の上端から延びる部分に第1湾曲壁52Aおよび第2湾曲壁52Cを設けてもよい。
【0057】
上記実施形態では、エンジン本体10の側面に、スロットルバルブケース42およびインテークマニホールド50が上下方向に延びる姿勢で配設された場合を説明したが、これらは水平方向に延びる姿勢で配設されてもよい。つまり、請求項における「第1方向」は「上下方向」に限られない。なお、スロットルバルブケース42およびインテークマニホールド50が水平方向に延びる姿勢で配設される場合は、上記実施形態における「上下方向」を「左右方向」あるいは「前後方向」と読み替え、「左右方向」あるいは「前後方向」の一方を「上下方向」と読み替えればよい。
【符号の説明】
【0058】
3 吸気通路
6 EGR通路
8 排気通路
10 エンジン本体
15 吸気ポート
16 排気ポート
40 スロットルバルブボディ
41 スロットル弁
42 スロットルバルブケース(第1通路部)
50 インテークマニホールド
51 第1インマニ部(第1通路部)
52 第2インマニ部(第2通路部)
52A 第1湾曲壁
52C 第2湾曲壁
65 EGR導入部(EGR通路の下流側の端部)
65A 開口部