IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エンジンの吸気構造 図1
  • 特開-エンジンの吸気構造 図2
  • 特開-エンジンの吸気構造 図3
  • 特開-エンジンの吸気構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078741
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】エンジンの吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/17 20160101AFI20230531BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20230531BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20230531BHJP
   F02D 9/10 20060101ALI20230531BHJP
   F02M 26/21 20160101ALI20230531BHJP
   F02B 53/04 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
F02M26/17
F02M35/10 101N
F02M35/16 E
F02M35/10 301P
F02M35/10 101J
F02M35/10 101K
F02M35/10 101M
F02D9/10 H
F02M26/21
F02B53/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192006
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】加藤 二郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山内 武俊
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕司
(72)【発明者】
【氏名】津田 周
(72)【発明者】
【氏名】野小生 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤平 伸次
【テーマコード(参考)】
3G062
3G065
【Fターム(参考)】
3G062ED04
3G062ED10
3G062GA20
3G065BA06
3G065CA14
3G065DA05
3G065HA21
(57)【要約】
【課題】吸気通路の振動をより確実に抑制できるエンジンの吸気構造を提供する。
【解決手段】スロットルバルブボディを、インテークマニホールドの上端に連結し、水平方向と平行で且つエンジン本体の一側面に沿う方向を横方向としたとき、インテークマニホールドを、スロットルバルブボディから横方向の一方且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状とし、EGR通路に、上下方向に延びるとともに上端部がインテークマニホールドの上部における横方向の他方側の面に接続された縦管部と、当該縦管部の下端部と下側排気通路とを連結する連結部とを設ける、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体と、前記エンジン本体の一側面に開口する吸気ポートに接続されて前記エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出される排気が流通する排気通路と、前記吸気通路と前記排気通路とを連通して排気の一部であるEGRガスを前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えるエンジンの吸気構造において、
前記吸気通路は、前記エンジン本体の一側面に沿って前記吸気ポートの開口部分から上方に延びて上部に前記EGR通路の下流端が接続されたインテークマニホールドと、当該インテークマニホールドの上流に配設されて前記吸気の流路面積を変更可能なスロットル弁および当該スロットル弁を駆動する駆動装置を含むスロットルバルブボディとを備え、
前記排気通路は、前記インテークマニホールドの下方に配設された下側排気通路を備え、
前記スロットルバルブボディは、前記インテークマニホールドの上端に連結されており、
水平方向と平行で且つ前記エンジン本体の前記一側面に沿う方向を横方向としたとき、前記インテークマニホールドは、前記スロットルバルブボディから前記横方向の一方且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状を有し、
前記EGR通路は、上下方向に延びるとともに上端部が前記インテークマニホールドの上部における前記横方向の他方側の面に接続された縦管部と、当該縦管部の下端部と前記下側排気通路とを連結する連結部とを備える、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの吸気構造において、
前記縦管部は、前記エンジン本体に固定されるEGR固定部を備える、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンの吸気構造において、
前記EGR固定部の高さ位置は、前記インテークマニホールドの下端の高さ位置よりも低い、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載のエンジンの吸気構造において、
前記EGR固定部は、前記横方向について前記スロットルバルブボディと重複する位置に設けられている、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジンの吸気構造において、
前記縦管部は、前記EGRガスの流路面積を変更可能なEGR弁および当該EGR弁を駆動するEGR弁用駆動装置を含むEGRバルブボディを備える、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエンジンの吸気構造において、
前記インテークマニホールドは樹脂製である、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジンの吸気構造において、
前記エンジン本体はロータリーピストンエンジンである、ことを特徴とするエンジンの吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体と、エンジン本体の一側面に開口する吸気ポートに接続されてエンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、エンジン本体から導出される排気が流通する排気通路と、吸気通路と排気通路とを連通して排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流するEGR通路とを備えるエンジンの吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンの吸気構造として、例えば、特許文献1には、吸気の流路面積を変更可能なスロットル弁と当該スロットル弁を駆動する駆動装置とを含むスロットルバルブボディが吸気通路に設けられて、スロットルバルブボディ周辺の吸気通路の振動を抑制するためにEGRチューブによってスロットルバルブボディを支持するようにした構造が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1の構造では、インテークマニホールド(特許文献1における吸気マニホールド)がエンジン本体(特許文献1におけるシリンダヘッド)に当該エンジン本体から上方に延びるように接続されているとともに、インテークマニホールドの上流端にこれと水平方向に並ぶ状態でスロットルバルブボディが連結されている。そして、インテークマニホールドの上流端にEGRチューブが接続されているとともに、当該EGRチューブがインテークマニホールドの上流端から下方に延びる形状とされてエンジン本体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-141406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の構造では、スロットルバルブボディの重量のほとんどをEGRチューブが支えることになる。そのため、スロットルバルブボディの振動ひいては吸気通路の振動を抑制するためにEGRチューブの剛性を高める必要がある。換言すると、特許文献1の構造では、EGRチューブの剛性が十分に高くない場合には吸気通路の振動抑制効果が限定的になる。このように、特許文献1の構造は、吸気通路の振動をより確実に抑制する点において改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、吸気通路の振動をより確実に抑制できるエンジンの吸気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、エンジン本体と、前記エンジン本体の一側面に開口する吸気ポートに接続されて前記エンジン本体に導入される吸気が流通する吸気通路と、前記エンジン本体から導出される排気が流通する排気通路と、前記吸気通路と前記排気通路とを連通して排気の一部であるEGRガスを前記吸気通路に還流するEGR通路とを備えるエンジンの吸気構造において、前記吸気通路は、前記エンジン本体の一側面に沿って前記吸気ポートの開口部分から上方に延びて上部に前記EGR通路の下流端が接続されたインテークマニホールドと、当該インテークマニホールドの上流に配設されて前記吸気の流路面積を変更可能なスロットル弁および当該スロットル弁を駆動する駆動装置を含むスロットルバルブボディとを備え、前記排気通路は、前記インテークマニホールドの下方に配設された下側排気通路を備え、前記スロットルバルブボディは、前記インテークマニホールドの上端に連結されており、水平方向と平行で且つ前記エンジン本体の前記一側面に沿う方向を横方向としたとき、前記インテークマニホールドは、前記スロットルバルブボディから前記横方向の一方且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状を有し、前記EGR通路は、上下方向に延びるとともに上端部が前記インテークマニホールドの上部における前記横方向の他方側の面に接続された縦管部と、当該縦管部の下端部と前記下側排気通路とを連結する連結部とを備える、ことを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、スロットルバルブボディがインテークマニホールドの上端に連結されている。そのため、スロットルバルブボディをインテークマニホールドに安定して支持させることができる。また、インテークマニホールドが、スロットルバルブボディから横方向の一方且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状を有し、且つ、このインテークマニホールドの上部にEGR通路が接続されている。そのため、インテークマニホールドをスロットルバルブボディから下方にまっすぐ延びる形状とする場合に比して、インテークマニホールドの上下寸法を増大させることなく、EGRガスと吸気の流路長を確保してこれらの混合を促進することができる。
【0009】
しかも、本発明では、EGR通路が、連結部においてインテークマニホールドの下方に設けられた下側排気通路に連結されるとともに、上下方向に延びて上端部がインテークマニホールドの上部における横方向の他方側の面に接続された縦管部を有している。そのため、インテークマニホールドの上部の上下方向の振動を抑制できる。具体的に、本発明では、横方向の一方且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状を呈するインテークマニホールドの上端にスロットルバルブボディが連結されていることで、インテークマニホールドの横方向の他方側に位置するその上部が上下方向に変位しやすくなる。これに対して、上記の縦管部がインテークマニホールドの横方向の他方側の上部の変位を規制するので、当該上部の振動が抑制される。
【0010】
以上のように、本発明によれば、インテークマニホールドの上下寸法を小さく抑え、且つ、EGRガスと吸気の混合を促進しつつ、スロットルバルブボディおよび吸気通路の振動をより確実に抑制できる。
【0011】
前記構成において、好ましくは、前記縦管部は、前記エンジン本体に固定されるEGR固定部を備える(請求項2)。
【0012】
この構成によれば、EGR固定部を介して縦管部がエンジン本体に安定して支持される。従って、縦管部により支持されるインテークマニホールドおよび吸気通路の振動をより一層確実に抑制できる。
【0013】
前記構成において、好ましくは、前記EGR固定部の高さ位置は、前記インテークマニホールドの下端の高さ位置よりも低い(請求項3)。
【0014】
この構成によれば、インテークマニホールド全体の上下方向の変位つまりインテークマニホールド全体の上下方向の振動ひいては吸気通路の振動を効果的に抑制できる。
【0015】
前記構成において、好ましくは、前記EGR固定部は、前記横方向について前記スロットルバルブボディと重複する位置に設けられている(請求項4)。
【0016】
この構成によれば、縦管部およびEGR固定部を介してスロットルバルブボディをエンジン本体に安定して支持することができる。
【0017】
前記構成において、好ましくは、前記縦管部は、前記EGRガスの流路面積を変更可能なEGR弁および当該EGR弁を駆動するEGR弁用駆動装置を含むEGRバルブボディを備える(請求項5)。
【0018】
この構成によれば、縦管部の剛性を高めて縦管部の変位ひいては吸気通路の変位を抑制でき、吸気通路の振動をより一層確実に抑制できる。
【0019】
ここで、インテークマニホールドが樹脂製の場合は金属製の場合に比べて変位しやすい。従って、本発明を、前記インテークマニホールドが樹脂製である吸気通路に適用すると効果的である(請求項6)。
【0020】
また、前記エンジン本体としては、ロータリーピストンエンジンが挙げられる(請求項7)。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明のエンジンの吸気構造によれば、吸気通路の振動をより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの概略構成を示したシステム図である。
図2】エンジンを右方から見た概略側面図である。
図3図2に対応する図であって吸排気系の部品の詳細を示した概略側面図である。
図4】エンジンを後方から見た概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(エンジンの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの吸気構造が適用されたエンジンの概略構成を示したシステム図である。
【0024】
本実施形態に係るエンジン1は車両に搭載される。例えば、エンジン1は、走行用の動力源としてのモータ、これに給電するバッテリおよびバッテリを充電する発電機を備えたハイブリッド車両に搭載されて、発電機を発電する装置として利用される。エンジン1は、エンジン本体10と、エンジン本体10に導入される吸気が内側を流通する吸気通路3と、エンジン本体10から排出される排気が内側を流通する排気通路8と、排気通路8と吸気通路3とを連通して排気の一部であるEGRガスを排気通路8から吸気通路3に還流するEGR通路6とを備える。
【0025】
(エンジン本体)
本実施形態のエンジン本体10は、1ロータタイプのロータリーピストンエンジン(以下、ロータリーエンジンという)であり、所定の回転軸回りに回転する1つのロータ11と、ロータ11の回転軸に沿って延びるエキセントリックシャフト12と、2ノードのペリトロコイド曲線に沿う内周面を備えるロータハウジング13と、ロータ11の回転軸に沿う方向についてロータハウジング13を挟みこむ一対のサイドハウジング14、14とを有する。ロータ11は、ロータハウジング13と2つのサイドハウジング14、14により区画されたロータ収容室Rに収容されており、エキセントリックシャフト12に対して遊星回転運動してロータハウジング13の内周面に沿って回転する。
【0026】
また、エンジン本体10は、一方のサイドハウジング14のロータハウジング13と反対側(ロータ11の回転軸に沿う方向について)の部分に連結されて、フライホイール21が固定されるリアホルダー20を有する。なお、エンジン本体10の下部には、オイルパン22が取り付けられている。
【0027】
エンジン本体10は、ロータ11の回転軸およびエキセントリックシャフト12が略水平方向(上下方向と略直交する方向)に延びる姿勢で車両に搭載されている。以下では、図2等に示すように、ロータ11の回転軸に沿う方向つまりエキセントリックシャフト12の長手方向を前後方向といい、フライホイール21が配設される側を後、反対側を前として説明する。また、エンジン1の説明において、エンジン1が車両に搭載された状態での上下方向を単に上下方向とし、エンジン本体10を後方から見たときの左右方向を単に左右方向として説明する。なお、図1のエンジン本体10は、これを前方から見たときの概略断面図である。ここで、本実施形態では、上下方向つまりエンジン1が車両に搭載された状態での上下方向が請求項の「上下方向」に相当し、前後方向つまりエキセントリックシャフト12の長手方向が請求項の「横方向」に相当する。
【0028】
エンジン本体10には、吸気通路3に接続されて吸気通路3内の吸気をロータ収容室Rに導入する吸気ポート15、および、排気通路8に接続されてロータ収容室Rから排気を排気通路8に導出する排気ポート16が形成されている。吸気ポート15は、ロータ収容室Rの右側上部に開口しており、排気ポート16はロータ収容室Rの右側下部に開口している。つまり、エンジン本体10は、ロータ11が前方から見て時計回りに回転し、ロータ収容室Rの右側上部、左側上部、左側下部、右側下部の各領域がそれぞれ概ね吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の実施領域となるように構成されている。
【0029】
吸気ポート15および排気ポート16は、それぞれ2つずつエンジン本体10に設けられている。エンジン本体10は、サイドポート式のロータリーエンジンであり、吸気ポート15および排気ポート16はサイドハウジング14に形成されている。つまり、2つのサイドハウジング14の上部にそれぞれ1つずつ吸気ポート15が形成されており、各吸気ポート15は、各サイドハウジング14の右側面の上部に開口している。また、2つのサイドハウジング14の下部にそれぞれ1つずつ排気ポート16が形成されており、各排気ポート16は、各サイドハウジング14の右側面の下部に開口している。
【0030】
エンジン本体10には、ロータ収容室R内に燃料を噴射する燃料噴射装置17と、ロータ収容室R内に形成された燃料と空気の混合気を添加する点火プラグ18とが取り付けられている。本実施形態では、燃料噴射装置17は、ロータ収容室Rの上端を臨むように取り付けられており、点火プラグ18は、ロータ収容室Rの左下部を臨むように取り付けられている。
【0031】
(吸気通路)
吸気通路3には、吸気中に含まれる異物を除去するエアクリーナ31Aと、吸気通路3を通過する吸気の流路面積を変更してエンジン本体10に導入される吸気の量を調整可能なスロットル弁41とが、上流側からこの順に設けられている。
【0032】
具体的に、吸気通路3は、上流側から順に並ぶ、第1吸気通路31と、第2吸気通路32と、スロットルバルブボディ40と、インテークマニホールド50とを備える。エアクリーナ31Aは、第1吸気通路31に設けられており、スロットル弁41はスロットルバルブボディ40に設けられている。スロットルバルブボディ40は、スロットル弁41に加えて、スロットル弁41を囲んで吸気が通過する通路を区画するスロットルバルブケース42と、スロットル弁41を駆動するアクチュエータ43とを有する。スロットル弁41は、アクチュエータ43により駆動されてスロットルバルブケース42により区画された通路を開閉する。本実施形態では、スロットル弁41を駆動するアクチュエータ43はモータであり、以下では、このアクチュエータ43をスロットルバルブモータ43という。スロットルバルブモータ43は、請求項の「駆動装置」に相当する。
【0033】
第1吸気通路31のエアクリーナ31Aよりも下流側の部分には、当該部分を通過する吸気の流量を検出するエアフロメータセンサSN1が設けられている。インテークマニホールド50には、これを通過するガスの温度である吸気温を検出する吸気温センサSN2が設けられている。
【0034】
各吸気ポート15、15には、インテークマニホールド50の下流端が接続されており、第1吸気通路31に流入した吸気(空気)は、エアクリーナ31A、第2吸気通路32、スロットルバルブケース42およびインテークマニホールド50、各吸気ポート15、15を通って、ロータ収容室Rに導入される。
【0035】
(排気通路)
排気通路8には、排気を浄化するための浄化装置81が設けられている。排気通路8は、各排気ポート16、16と連通する排気マニホールド82を備えており、浄化装置81は、排気マニホールド82の下流側に配設されている。
【0036】
(EGR通路)
EGR通路6は、排気マニホールド82と、インテークマニホールド50とを連通している。EGR通路6には、EGRガスを冷却するEGRクーラ62と、EGR通路6を通過するEGRガスの流路面積を変更して吸気通路3に導入されるEGRガスの量を調整可能なEGR弁71とが設けられている。
【0037】
具体的に、EGR通路6は、排気通路8側から順に並ぶ、第1EGR通路61と、EGRクーラ62と、第2EGR通路63と、EGRバルブボディ70と、第3EGR通路64とを備える。EGR弁71は、EGRバルブボディ70に設けられている。排気マニホールド82には第1EGR通路61の上流端(EGRガスの流れ方向について)が接続されており、インテークマニホールド50には第3EGR通路64の下流端(EGRガスの流れ方向について)が接続されている。
【0038】
EGRバルブボディ70は、EGR弁71に加えて、EGR弁71を囲んでEGRガスが通過する通路を区画するEGRバルブケース72と、EGR弁71を駆動するアクチュエータ73とを有する。EGR弁71は、アクチュエータ73により駆動されてEGRバルブケース72により区画された通路を開閉する。本実施形態では、EGR弁71を駆動するアクチュエータ73はモータであり、以下では、このアクチュエータ73をEGRバルブモータ73という。EGRバルブモータ73は、請求項の「EGR弁用駆動装置」に相当する。
【0039】
(詳細構造)
図2および図3は、それぞれエンジン1を右方から見た概略側面図である。図2では、エンジン本体10の各ハウジング等を鎖線で示す一方、ボルト等の図示は省略している。図3では、エンジン本体10の各ハウジング等の図示を省略する一方、ボルト等を図示している。図4は、エンジン1を後方から見た概略側面図である。
【0040】
上記のように、各吸気ポート15は、各サイドハウジング14の右側面の上部、つまり、エンジン本体10の右側面10Aの上部に開口しており、各排気ポート16は、各サイドハウジング14の右側面の下部、つまり、エンジン本体10の右側面10Aの下部に開口している。なお、各吸気ポート15が開口してこれらの開口部分が形成された上記のエンジン本体10の右側面10Aは、請求項の「エンジン本体の一側面」に相当する。
【0041】
各排気ポート16、16と連通する上記の排気マニホールド82は、エンジン本体10の右方に配設されている。排気マニホールド82は、前後方向に延びる形状を有している。排気マニホールド82は、2つの排気ポート16、16と連通する状態で、エンジン本体10の右側面10Aの下部にエキマニ固定部120を介して固定されている。排気マニホールド82は、請求項の「下側排気通路」に相当する。
【0042】
吸気通路3のうちスロットルバルブボディ40から下流側の部分は、エンジン本体10の右方に配置されている。インテークマニホールド50は、エンジン本体10の右側面10Aの吸気ポート15、15の開口部から、エンジン本体10の右側面10Aに沿って上方に延びている。インテークマニホールド50は、エンジン本体10よりも上方の位置まで延びている。インテークマニホールド50の下部は前後方向に延びる形状を有し、2つの吸気ポート15、15と連通している。
【0043】
インテークマニホールド50は、前方に凸となるように、その上端から前方(前後方向の一方側)且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状を有している。また、インテークマニホールド50は、その上端部が、その下端部に対して後方にずれた位置となる形状を有している。本実施形態では、インテークマニホールド50は、樹脂製である。
【0044】
インテークマニホールド50の下部には、エンジン本体10の右側面10Aに固定されるインマニ被固定部110が設けられている。インテークマニホールド50は、このインマニ被固定部110がボルト112によってエンジン本体10の右側面10Aに固定されることで、エンジン本体10に固定されている。
【0045】
具体的に、インマニ被固定部110は、インテークマニホールド50の下部の四隅にそれぞれ1つずつ設けられている。図4に示すように、エンジン本体10の右側の上部は、下側ほど右側に位置するように傾斜しており、エンジン本体10の右側面10Aは、その上部を構成して下側ほど右側に位置するように傾斜する傾斜面210Aと、この傾斜面210Aの下縁からほぼまっすぐ下方に延びる鉛直面220Aとで構成されている。4つのインマニ被固定部110は、それぞれ傾斜面210Aに沿う板状を有しており、当該傾斜面210Aにそれぞれボルト112によって固定されている。
【0046】
スロットルバルブボディ40は、エンジン本体10よりも上方の位置において、インテークマニホールド50の上端に連結されている。
【0047】
具体的に、スロットルバルブケース42は所定の方向に延びる略円筒状を有する。スロットルバルブモータ43は所定の方向に延びる略円柱状の外形を有してスロットルバルブケース42の外側面に固定されている。スロットルバルブボディ40は、スロットルバルブケース42がインテークマニホールド50の上端から上方に延び、且つ、スロットルバルブモータ43がスロットルバルブケース42の後方において左右方向に延びる姿勢で、インテークマニホールド50の上端に連結されている。また、図4に示すように、スロットルバルブボディ40は、後面視でスロットルバルブモータ43がスロットルバルブケース42の左縁よりも左方に突出する状態で、インテークマニホールド50の上端に連結されている。本実施形態では、スロットルバルブケース42は、金属製である。
【0048】
EGR通路6は、エンジン本体10の右方に配設されている。EGR通路6は、大きく分けて、インテークマニホールド50の上部の後面から下方に延びる縦管部65と、縦管部65の下端から前方に延びて排気マニホールド82に接続される連結部66とで構成されている。縦管部65は、インテークマニホールド50の後方に配設され、連結部66は、インテークマニホールド50と排気マニホールド82の間に配設されており、EGR通路6は、全体として、インテークマニホールド50の上部の後面から、インテークマニホールド50の後方およびインテークマニホールド50と排気マニホールド82との間の領域を通って、排気マニホールド82の前部の上面まで延びている。縦管部65は、第3EGR通路64、EGRバルブボディ70および第2EGR通路63を含み、連結部66は、EGRクーラ62および第1EGR通路61を含む。
【0049】
具体的に、インテークマニホールド50の上端部には、その後面に、後方に突出するEGR通路接続部59が設けられている。第3EGR通路64の下流端つまりEGR通路6の下流端は、このEGR通路接続部59つまりインテークマニホールド50の上部における後側(前後方向についてインテークマニホールドの凸側と反対側)の面に接続されている。第3EGR通路64はEGR通路接続部59から下方に延びている。詳細には、第3EGR通路64の上部は、後方に凸となるように、EGR通路接続部59の後面からEGR通路接続部59の下方に向かって湾曲している。第3EGR通路64の下部は、EGR通路接続部59の下方において、第3EGR通路64の上部の下端から下方にほぼまっすぐ延びている。
【0050】
EGRバルブボディ70は、第3EGR通路64の右方に配設されている。EGRバルブケース72は所定の方向に延びる略円筒状を有する。EGRバルブモータ73は所定の方向に延びる略円柱状の外形を有し、EGRバルブケース72の外側面に固定されている。EGRバルブボディ70は、EGRバルブケース72が上下方向に延び、且つ、EGRバルブモータ73がEGRバルブケース72の上端から上方に延びる姿勢で、第3EGR通路64の右方に配設されている。第3EGR通路64は、EGRバルブケース72の左側面に連結されており、EGRバルブケース72の左側面からEGRバルブモータ73とエンジン本体10の右側面10Aとの間を通って上方に延びている。
【0051】
第2EGR通路63は、EGRバルブケース72の下面に連結されている。第2EGR通路63は、EGRバルブケース72の下面から前斜め下方に延びている。
【0052】
第2EGR通路63には、フランジ部140が一体に形成されている。フランジ部140は、第2EGR通路63から下方に延びる略三角形(右方からの側面視で)の板状を有する。このフランジ部140の下端には、第2EGR通路63ひいてはEGR通路6をエンジン本体10の右側面10Aに固定するためのEGR固定部141が設けられている。
【0053】
EGR固定部141は、ボルト142によりエンジン本体10の右側面10Aに固定されている。EGR固定部141は、エンジン本体10の右側面10Aのうちの鉛直面220Aの上部に固定されている。つまり、本実施形態では、縦管部65は、その下端部にEGR固定部141を有しており、このEGR固定部141を介して縦管部65およびEGR通路6はエンジン本体10に固定されている。
【0054】
第2EGR通路63およびフランジ部140の下端位置は、インテークマニホールド50の下端位置よりも下側であり、EGR固定部141の高さ位置(上下方向の位置)は、インテークマニホールド50の下端の高さ位置(上下方向の位置)よりも低くなっている。また、図3に示すように、EGR固定部141は、側面視(右方から見た状態)で、スロットルバルブボディ40の真下に位置しており、前後方向についてスロットルバルブボディ40と重複する位置に配設されている。つまり、EGR固定部141は、前後方向について、スロットルバルブボディ40の前端位置から後端位置までの領域に設けられている。図3の鎖線L1は、スロットルバルブボディ40の重心を通る鉛直線である。本実施形態では、図3に示すように、EGR固定部141は、側面視(右方から見た状態)で、スロットルバルブボディ40の重心を通る鉛直線上に設けられている。また、本実施形態では、図4に示すように、EGR固定部141は、後面視(後方から見た状態)でも、スロットルバルブボディ40の真下に位置しており、左右方向についてもスロットルバルブボディ40と重複する位置に配設されている。すなわち、本実施形態では、EGR固定部141は、上面視(上方から見た状態)でスロットルバルブボディ40と重複する位置に配設されている。
【0055】
EGRクーラ62は、略直方体状を有する。EGRクーラ62は、第2EGR通路63の前端から前方に延びる姿勢で、インテークマニホールド50の下方且つ排気マニホールド82の上方に配設されている。詳細には、EGRクーラ62は、前側ほど下側に位置するように傾斜する姿勢で、インテークマニホールド50と排気マニホールド82の間に配設されている。EGRクーラ62は、EGRクーラ62の下面から下方に延びるEGRクーラ被固定部130を介してエンジン本体10の右側面10Aに固定されている。なお、EGRクーラ62は、EGRガスを冷却液により冷却しており、EGRクーラ62には、これを流通する冷却水を導入・導出するためのパイプ62A、62Bが接続されている。
【0056】
第1EGR通路61は、EGRクーラ62の前端から前方に延びている。詳細には、第1EGR通路61は、前側ほど下側に位置するように傾斜している。第1EGR通路61の前端は下方に向かって湾曲しており、排気マニホールド82の前端部の上面に接続されている。つまり、第1EGR通路61は、排気マニホールド82の前端部の上面から上斜め後方に延びている。
【0057】
ここで、本実施形態では、第1EGR通路61、EGRクーラ62、第2EGR通路63、EGRバルブケース72および第3EGR通路64は、全て金属製である。
【0058】
(作用等)
以上のように、上記実施形態では、スロットルバルブモータ43を含むスロットルバルブボディ40がインテークマニホールド50の上端に連結されている。そのため、スロットルバルブボディ40をインテークマニホールド50で安定して支持できる。
【0059】
ここで、仮に、インテークマニホールド50を上下方向にまっすぐに延びる形状とし且つその流路長を確保しつつ、スロットルバルブボディ40をインテークマニホールド50の上方に単に配置した場合では、吸気通路3のうちこれらが占める領域の上下寸法が過大になる。これに対して、上記実施形態では、インテークマニホールド50が、その上端からつまりスロットルバルブボディ40から前方且つ下方に向かって湾曲しつつ延びる形状を呈している。そのため、インテークマニホールド50とスロットルバルブボディ40が占める領域の上下寸法が過大になるのを抑制しつつ、スロットルバルブボディ40をインテークマニホールド50の上方に配置するという上記の構成を実現し、且つ、インテークマニホールド50の流路長を確保できる。そして、上記実施形態では、インテークマニホールド50の上部にEGR通路6が接続されているので、インテークマニホールド50の流路長が確保されることにより、インテークマニホールド50の上部に導入されるEGRガスをエンジン本体10に到達するまでの間に吸気と十分に混合させることができる。
【0060】
ただし、上記のように、インテークマニホールド50が前方且つ下方に向かって湾曲する形状を呈し、インテークマニホールド50の上端にスロットルバルブボディ40が連結されていることで、インテークマニホールド50の上部、詳細には、インテークマニホールド50のうち後上部の領域に位置する部分が図3の矢印Y1に示すように上下方向に変位しやすくなる。特に、上記実施形態では、インテークマニホールド50が樹脂製であるため、変位しやすい。
【0061】
これに対して、上記実施形態では、EGR通路6がインテークマニホールド50の下方に設けられた排気マニホールド82に接続されている。そして、EGR通路6の下流端がインテークマニホールド50の上部の後面に接続されて、EGR通路6がこの接続部分から下方に延びている。詳細には、EGR通路6のうち第3EGR通路64、EGRバルブボディ70および第2EGR通路63からなり上下方向に延びる縦管部65の上端部が、インテークマニホールド50の上部の後面に設けられたEGR通路接続部59に接続されて、当該EGR通路接続部59から下方に延びている。つまり、排気マニホールド82によってその変位が規制されたEGR通路6が、インテークマニホールド50の上部の後面から下方に延びるように配設されている。そのため、EGR通路6によって、インテークマニホールド50の上部つまりインテークマニホールド50のうち後上部の領域に位置する部分の上下方向の変位を規制することができる。従って、上記実施形態によれば、上記の効果を得つつ、インテークマニホールド50の上下方向の振動ひいては吸気通路3の振動をより確実に抑制できる。
【0062】
特に、上記実施形態では、第2EGR通路63、および、これを含む縦管部65が、排気マニホールド82に加えてEGR固定部141を介してエンジン本体10に支持されている。そのため、縦管部65をエンジン本体10に安定して支持させることができる。従って、縦管部65により支持されるインテークマニホールド50および吸気通路3の振動をより一層確実に抑制できる。
【0063】
また、上記実施形態では、EGR固定部141の高さ位置が、インテークマニホールド50の下端の高さ位置よりも低く設定されている。そのため、縦管部65によってインテークマニホールド50全体の上下方向の変位および振動ひいては吸気通路の振動を効果的に抑制することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、EGR固定部141が、前後方向についてスロットルバルブボディ40と重複する位置に設けられている。そのため、縦管部65およびEGR固定部141を介してエンジン本体10によってスロットルバルブボディ40を安定して支持することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、EGR弁71およびEGRバルブモータ73を備えるEGRバルブボディ70が縦管部65の一部を構成している。つまり、EGRバルブボディ70が縦管部65に設けられている。そのため、縦管部65の剛性を高くでき、縦管部65の変位ひいてはインテークマニホールド50および吸気通路3の変位および振動をより一層確実に抑制できる。
【0066】
(変形例)
上記実施形態では、エンジン本体10がロータリーピストンエンジンの場合を説明したが、エンジン本体10の種類はこれに限られない。
【0067】
上記実施形態では、インテークマニホールド50が樹脂製の場合を説明したが、インテークマニホールド50の材質はこれに限られない。
【符号の説明】
【0068】
3 吸気通路
6 EGR通路
8 排気通路
10 エンジン本体
15 吸気ポート
16 排気ポート
40 スロットルバルブボディ
41 スロットル弁
42 スロットルバルブケース
43 スロットルバルブモータ(駆動装置)
50 インテークマニホールド
65 縦管部
66 連結部
70 EGRバルブボディ
71 EGR弁
73 EGRバルブモータ(EGR弁用駆動装置)
82 排気マニホールド(下側排気通路)
141 EGR固定部
図1
図2
図3
図4