(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078761
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】電池監視システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20230531BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20230531BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20230531BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/382
G08C15/00 D
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192031
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 壮耶
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
(72)【発明者】
【氏名】松川 和生
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 善行
【テーマコード(参考)】
2F073
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2F073AA12
2F073AB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073CC01
2F073CC10
2F073CD11
2F073DD06
2F073EE01
2F073EF02
2F073FG01
2F073FG14
2F073GG01
2F073GG07
2F073GG08
2G216BA01
2G216CC03
2G216CC04
5H030AA09
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】電池監視装置の第2クロック信号の周波数を監視する。
【解決手段】電池監視システム100は、電池監視ECU10と複数の電池監視装置30とを備え、電池監視ECUは、第1クロック生成部12と、第1クロック信号に、電池監視情報を重畳させた重畳信号を出力し、電池の状態の監視結果を受け取る送受信部16と、を備え、電池監視装置のそれぞれは、重畳信号を受け取る受信部42と、生成する第2クロック生成部50と、重畳信号から参照クロック信号を生成するとともに電池監視情報を復元する制御部48と、第2クロック信号と、電池監視情報と、を用いて電池の状態を監視する電池監視部54と、参照クロック信号の周波数と第2クロック信号の周波数との差分を監視する周波数監視部53と、電池監視情報と、当段までの各段における監視結果と、当段までの各段における差分を示す差分情報と、を後段に出力する送信部44と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池の状態を監視する電池監視システム(100)であって、
電池監視ECU(10)と、
複数の電池監視装置(30)と、を備え、
前記電池監視ECUと複数の前記電池監視装置とは、リング接続、デイジーチェーン接続、マルチドロップ接続のいずれかの接続形態で接続されており、
前記電池監視ECUは、
第1クロック信号を生成する第1クロック生成部(12)と、
前記第1クロック信号に、電池監視情報を重畳させた重畳信号を、前記電池監視装置の少なくとも一つに出力し、前記電池の状態の監視結果を受け取る送受信部(16)と、を備え、
前記電池監視装置のそれぞれは、
前段からの前記重畳信号を受け取る受信部(42)と、
自身の動作の基準となる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部(50)と、
前記前段からの前記重畳信号のクロックを参照クロック信号として抽出するとともに前記電池監視情報を復元する制御部(48)と、
前記第2クロック信号と、前記電池監視情報と、を用いて前記電池の状態を監視する電池監視部(54)と、
前記参照クロック信号の周波数と前記第2クロック信号の周波数との差分を監視する周波数監視部(53)と、
前記電池監視情報と、当段までの各段における前記監視結果と、当段までの各段における前記差分を示す差分情報と、を後段に出力する送信部(44)と、
を備える、電池監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池監視システムであって、
前記電池監視ECUは、前記電池監視装置のそれぞれの段における前記差分情報を用いて、前記第1クロック信号の周波数に対する前記第2クロック信号の絶対的な周波数のズレを算出する上位制御部(14)を備える、電池監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電池監視システムであって、
前記上位制御部は、前記第1クロック信号に対する前記第2クロック信号の絶対的な周波数のズレを、前記電池の状態と合わせて取得する、電池監視システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電池監視システムであって、
前記上位制御部は、前記第1クロック信号の周波数に対する前記電池監視装置における前記第2クロック信号の周波数の差が、第1閾値(TH1)よりも大きく、かつ、第2閾値(TH2)以下である場合には、前記第1クロック信号と前記第2クロック信号の周波数の差を用いて、前記電池の状態を補正して取得する、電池監視システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池監視システムであって、
当段の前記周波数監視部が、前記前段の前記電池監視装置から受信した前記重畳信号から抽出した前記参照クロック信号の周波数に対する前記第2クロック信号の周波数の相対的なずれが予め定めた閾値よりも大きいと判断した場合、当段の前記制御部は、前記第2クロック生成部に対し、周波数のずれに応じて前記第2クロック信号の周波数を補正させる、電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池を利用した自動車が増加している。二次電池の電気的特性を測定することによって、二次電池の残量(State of Charge: SOC)を始めとする電池内部の状態を取得する電池監視システム(Battery Management System: BMS)の需要が高まっている。特許文献1には、複数の電池監視ICによって複数の電池を監視し、それら複数の電池監視ICをデイジーチェーン接続した電池監視システムが開示されている。こうした電池監視システムでは、全体の制御を司る電池監視ECUが設けられ、電池監視ECUから、初段の電池監視装置に、指示等が出力されると、デイジーチェーン接続された複数の電池監視装置の各々は、前段から受け取った情報に、自身のデータ等を加えて、後段に向けて送り出す。最終段の電池監視装置は、全ての情報を、電池監視ECUに出力する。電池監視装置のそれぞれは、発振器を備え、その発振周波数を用いて電池を計測し監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、各電池の状態を高精度に測定するためには、電池監視装置のそれぞれの発振器周波数の精度を高くしておく必要があった。そのためには、電池監視装置の発振器として水晶発振子のような高精度発振器を用いる必要がある。
【0005】
しかし、電池監視装置のそれぞれの発振器を、水晶発振子のような高精度発振器で構成すると、コストの増加を招いてしまうという課題があった。本開示の電池監視装置はそのような課題に対するものであり、デイジーチェーン接続による信号通信を持つ電池監視システムの電池監視装置において、高精度の発振器を用いることなく測定の精度を十分なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の一形態によれば、複数の電池の状態を監視する電池監視システム(100)が提供される。この電池監視システムは、電池監視ECU(10)と、複数の電池監視装置(30)と、を備え、前記電池監視ECUと複数の前記電池監視装置とは、リング接続、デイジーチェーン接続、マルチドロップ接続のいずれかの接続形態で接続されており、前記電池監視ECUは、第1クロック信号を生成する第1クロック生成部(12)と、前記第1クロック信号に、電池監視情報を重畳させた重畳信号を、前記電池監視装置の少なくとも一つに出力し、前記電池の状態の監視結果を受け取る送受信部(16)と、を備え、前記電池監視装置のそれぞれは、前段からの前記重畳信号を受け取る受信部(42)と、自身の動作の基準となる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部(50)と、前記前段からの前記重畳信号のクロックを参照クロック信号として抽出するとともに前記電池監視情報を復元する制御部(48)と、前記第2クロック信号と、前記電池監視情報と、を用いて前記電池の状態を監視する電池監視部(54)と、前記参照クロック信号の周波数と前記第2クロック信号の周波数との差分を監視する周波数監視部(53)と、前記電池監視情報と、当段までの各段における前記監視結果と、当段までの各段における前記差分を示す差分情報と、を後段に出力する送信部(44)と、を備える。
【0008】
この形態の電池監視システムによれば、電池監視ECUの制御部は、各段の電池監視装置の第2クロック信号の周波数の第1クロック信号に対する誤差を取得し、全発振器の発振周波数情報を監視できる。そして、制御部は、どの段の電池監視装置の第2クロック信号の周波数を、どの程度補正すべきか、について判断できる。
【0009】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、電池監視システムの他、電池監視方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【
図2】電池監視ECUの制御部が実行する処理フローチャートである。
【
図3】電池監視装置の制御部が実行する動作フローチャートである。
【
図4】電池監視ECUが送信する第1重畳信号と、電池監視装置が送受信する第2重畳信号を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【
図6】第3実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
・第1実施形態:
・・電池監視システム100の構成:
図1に示すように、電池監視システム100は、電池監視ECU10と、複数個(本実施形態ではm個、mは2以上の整数)の電池監視装置30と、を備える。x段目(xは1からmのいずれかの整数)の電池監視装置30は、x段目の電池組CSxに含まれるn個(nは1以上の整数)の二次電池(以下「電池」と呼ぶ。)の電池状態を監視する。したがって、電池監視システム100は、複数(本実施形態では、m×n個)の電池C11からCmnの電池状態を監視する。なお、本実施形態では、各段の電池監視装置30が監視する電池の数は、n個と同数であるが、各段の電池監視装置30が監視する電池の数は、異なっていてもよい。
【0012】
電池監視ECU10は、2つの接続部18、20を備えており、各々の電池監視装置30は、それぞれ2つの接続部34、36を備えている。電池監視ECU10と、複数の電池監視装置30とは、リング接続されている。すなわち、電池監視ECU10の一方の接続部18は、伝送路22により1段目の電池監視装置30の一方の接続部34と接続されている。1段目の電池監視装置30の他方の接続部36は、伝送路24により2段目の電池監視装置30の一方の接続部34と接続されている。2段目の電池監視装置30の他方の接続部36は、伝送路25により3段目の電池監視装置30の一方の接続部34と接続されている。以下、最終段の電池監視装置30まで、前段の電池監視装置30の他方の接続部36は、当段の電池監視装置30の一方の接続部34と伝送路により接続されている。最終段であるm段目の電池監視装置30の他方の接続部36は、伝送路26により電池監視ECU10の他方の接続部20と接続されている。このように、電池監視ECU10と、複数の電池監視装置30とは、1つのリングを形成するように、接続されている。
【0013】
詳細については後述するが、電池監視ECU10は、自己が有する第1クロック生成部12が発生させる第1クロック信号を基に動作し、電池監視装置30は、自己が有する第2クロック生成部50が発生させる第2クロック信号を基に動作する。電池監視装置30の制御部48は、電池監視ECU10から、第2クロック信号の補正指示を受けると、第2クロック信号の周波数が第1クロック信号の周波数に同期もしくは近づけるように、第2クロック生成部50に対し第2クロック信号の周波数を補正させる。
【0014】
以下、電池監視ECU10と電池監視装置30の構成について説明する。
電池監視ECU10は、第1クロック生成部12と、上位制御部14と、送受信部16と、上述した接続部18、20を備える。第1クロック生成部12は、電池監視ECU10の動作の基となる第1クロック信号を生成する。第1クロック生成部12は、水晶発振器を用いて、高精度なクロック信号である第1クロック信号を生成する。第1クロック生成部12は、水晶発振器以外の発振器、例えば、シリコンMEMS発振器を用いてもよい。また、第1クロック生成部12は、GNSS衛星からGNSS基準周波数発生器が発生させる信号を受信して、第1クロック信号を生成してもよい。
【0015】
上位制御部14は、第1クロック信号に、電池監視情報を重畳させた第1重畳信号を生成し、送受信部16に送る。電池監視情報は、電池監視装置30が監視すべき電池を特定する情報や、電池監視装置30に第2クロック信号の周波数の補正を実行させるかを示す補正指示を含む。電池監視情報における監視すべき電池を特定する情報は、どの電池を監視すべきかを示す。監視すべき電池は、特定の組の特定の1個の電池でもよく、特定の組の特定の複数の電池でもよく、特定の組の全部の電池でもよく、全ての組の全ての電池でもよい。補正指示は、どの電池監視装置30の第2クロック信号を補正させるか、補正対象の電池監視装置30を特定する情報を含む。本実施形態では、補正指示は、第2クロック信号の周波数をどの程度補正させるかを示す情報、つまり、補正対象の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数の補正量を含んでいる。
【0016】
第1クロック信号への電池監視情報の重畳は、例えば、マンチェスタ符号を用いた位相符号化により行われる。電池監視情報の重畳は、マンチェスタ符号を用いた位相符号化以外の方法、例えば、位相変調(Phase shift keying)により行われてもよい。
【0017】
送受信部16は、電池監視装置30の少なくとも一つに、電池の監視に関する指示を出力し、電池監視装置30の少なくとも一つから指示の結果を受け取る。送受信部16は、第1重畳信号から差動信号を生成し、接続部18を介して伝送路22に送信する。差動信号とは、一つの信号を、互いに逆位相の2つの信号とした信号である。電池監視ECU10と電池監視装置30とを接続する伝送路22、26、電池監視装置30と電池監視装置とを接続する伝送路24、25、・・・は、それぞれ2本の信号線を有している。送受信部16は、伝送路22の2本の信号線の一方の信号線に元の信号を、他方の信号線に、一方の信号線の信号にHとLが反転した逆位相の信号を送る。接続部18は、コンデンサを有しており、送受信部16と伝送路22とをコンデンサを介して接続している。そのため、接続部18は、差動信号の直流成分を伝送させず、交流成分のみを伝送させる。
【0018】
送受信部16は、また、最終段の電池監視装置30から伝送路26、接続部20を介して、電池監視情報と、前段までの電池監視装置30における電池監視結果と、前段までの電池監視装置30における第2クロック信号の差分情報と、が重畳された第2重畳信号の差動信号を受信し、第2重畳信号を復元する。電池監視結果は、各電池監視装置30が電池監視ECU10から受け取った電池の監視情報により、電池の監視処理を実行した結果であり、前段までの監視した電池を特定する情報と、前段までの電池監視装置30において監視した電池の状態の測定結果を含んでいる。電池監視装置30の第2クロック信号の差分情報は、電池監視装置30の第2クロック信号の、その前段の装置のクロック信号の周波数に際する差分を示す情報である。第2クロック信号の差分情報については、後述する。接続部20は、接続部18と同様に、コンデンサを有しており、伝送路26と送受信部16とをコンデンサを介して接続している。接続部20は、差動信号の直流成分を伝送させず、交流成分のみを伝送させる。なお、接続部18、20は、コンデンサの他、トランスにより構成されていていてもよい。
【0019】
電池監視装置30は、電池監視IC40と、フィルタ60と、上述した接続部34、36を備える。電池監視IC40は、受信部42と、送信部44と、制御部48と、第2クロック生成部50と、周波数監視部53と、電池監視部54と、を備える。接続部34には受信部42が接続され、接続部36には送信部44が接続されている。受信部42と送信部44には、制御部48が接続されている。制御部48には、第2クロック生成部50と、周波数監視部53と、電池監視部54が接続されている。電池監視部54は、フィルタ60を介して電池に接続されている。
【0020】
1段目の電池監視装置30の受信部42は、接続部34、伝送路22、接続部18を介して電池監視ECU10の送受信部16に接続されている。2段目からm段目までの電池監視装置30の受信部42は、それぞれ、接続部34、伝送路24、25・・・、接続部36を介して、前段の電池監視装置30の送信部44に接続されている。m段目の電池監視装置30の送信部44は、接続部36、伝送路26、接続部20を介して、電池監視ECU10の送受信部16に接続されている。
【0021】
受信部42は、前段の装置から差動信号を受信し、差動信号から重畳信号を復元する。ここで、前段の装置は、制御部48が1段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視ECU10であり、制御部48が2段目からm段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視装置30である。ここで、重畳信号は、制御部48が1段目の電池監視装置30の制御部48であれば第1重畳信号であり、制御部48が2段目からm段目の電池監視装置30の制御部48であれば、前段の電池監視装置30が生成した第2重畳信号である。
【0022】
制御部48は、受信部42が受信した重畳信号のクロックを参照クロック信号として抽出するとともに、重畳信号から電池監視情報と、前段までの電池監視結果と、前段までの電池監視装置30の第2クロック信号の差分情報を復元、復号する。なお、制御部48が1段目の電池監視装置30の制御部48であれば、重畳信号は、電池監視ECU10の上位制御部14が生成した第1重畳信号であり、前段までの電池監視結果と、前段までの電池監視装置30の第2クロック信号の差分情報とは、重畳信号に含まれない。
【0023】
参照クロック信号は、受信した重畳信号から重畳前のクロック信号を復元したものである。したがって、1段目の電池監視装置30では、参照クロック信号の周波数は、第1クロック信号の周波数と同じであり、2段目からm段目の電池監視装置30では、参照クロック信号の周波数は、前段の電池監視装置30の第2クロック信号の周波数と同じである。
【0024】
制御部48は、電池監視情報と、当段までの電池監視結果と、当段までの電池監視装置30の第2クロック信号の差分情報を、第2クロック信号に重畳させて第2重畳信号を生成する。
【0025】
第2クロック生成部50は、自身の電池監視装置30の動作の基準となる第2クロック信号を発生させる。第2クロック生成部50は、第1クロック生成部12に用いられる水晶発振器に比べ簡易なLC発振器を用いて構成されている。そのため、第2クロック信号は、第1クロック信号と比較すれば低精度のクロック信号となる。第2クロック生成部50は、LC発振器を用いるので、制御部48からの補正指示により、LC発振器を構成するコンデンサの容量、あるいは、インダクタを構成するインダクタンスを変更することで、発振周波数を容易に変更・補正できる。
【0026】
周波数監視部53は、第2クロック生成部50が生成した第2クロック信号と、参照クロック信号とを監視し、第2クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数からどれだけズレているか、その差分を検出する。制御部48は、この差分を、第2クロック信号の差分情報として取得する。
【0027】
電池監視部54は、電池の状態を、第2クロック信号を用いた交流インピーダンス法により検出する。なお、制御部48は、電池監視部54に対し、常時、電池の状態を監視させておき、電池監視情報に、監視中の電池があった場合に、電池監視部54が検出しておいた当該電池の状態の測定結果を取得してもよい。
【0028】
送信部44は第2重畳信号から差動信号を生成し、後段の装置に送信する。ここで、後段の装置は、制御部48が1段目からm-1段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視装置30であり、制御部48がm段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視ECU10である。
【0029】
・・電池監視システム100の動作:
図2は、電池監視ECU10の上位制御部14が実行する処理フローチャートである。ステップS10では、電池監視ECU10の上位制御部14は、1段目の電池監視装置30に対して、電池監視情報を送信する具体的には、電池監視ECU10の上位制御部14は、第1クロック信号に電池監視情報を重畳して第1重畳信号を生成する。上位制御部14は、送受信部16に対し、第1重畳信号から差動信号を生成させ、1段目の電池監視装置30に伝送させる。この電池監視情報は、電池監視装置30の第2クロック信号の周波数を補正すべきか、否かを示す補正指示情報を含んでいる。なお、最初の電池の状態を取得すべき指示では、電池監視装置30の第2クロック信号の周波数を補正すべきとの補正指示は含まれていない。
【0030】
ステップS20では、電池監視ECU10の上位制御部14は、最終段であるm段目の電池監視装置30から、電池の状態を監視すべき指示に対する電池監視結果と、電池監視装置30の第2クロック信号の差分情報を受信する、なお、この結果は、第2重畳信号に重畳されている。ステップS20における判断結果が、上位制御部14が、第2重畳信号受信した真(T)の場合、上位制御部14は、処理をステップS30に移行する。一方、ステップS20における判断結果が、第2重畳信号を受信していない偽(F)の場合、上位制御部14は、第2重畳信号を受信した真(T)となるまで、ステップS20を繰り返す。
【0031】
ステップS30では、上位制御部14は、第2重畳信号から各段の電池監視装置30における電池の状態の監視結果と、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数の参照クロック信号の周波数からのズレである差分情報を復元する。
【0032】
ステップS40では、上位制御部14は、第1クロック信号の周波数と、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数の参照クロック信号の周波数と差分情報とを用いて、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数を算出し、取得する。
【0033】
ステップS50からステップS100までは、ループであり、上位制御部14は、各段の電池監視装置30について、処理を行う。ステップS60では、上位制御部14は、第1クロック信号の周波数と、第2クロック信号の周波数の差Δfと2つの閾値、第1閾値TH1と第2閾値TH2の大きさとの関係を判断する。第2閾値TH2は、第1閾値TH1よりも大きい。周波数の差Δfの絶対値|Δf|が第1閾値TH1以下の場合には、上位制御部14は、処理をステップS70に移行する。周波数の差Δfの絶対値|Δf|が第1閾値TH1よりも大きく、第2閾値TH2以下の場合には、上位制御部14は、処理をステップS80に移行する。周波数の差Δfの絶対値|Δf|が第2閾値TH2よりも大きい場合には、上位制御部14は、処理をステップS90に移行する。
【0034】
ステップS70では、上位制御部14は、第2重畳信号に重畳されている、電池監視装置30における電池の状態の監視結果をそのまま電池の状態の監視結果として取得する。その後処理をステップS100に移行する。
【0035】
ステップS80では、上位制御部14は、第2重畳信号に重畳されている、電池監視装置30における電池の状態の監視結果を、第1クロック信号の周波数と第2クロック信号の周波数の差を用いて補正し、電池の状態の監視結果として取得する。その後処理をステップS100に移行する。
【0036】
ステップS90では、上位制御部14は、第2クロック信号の周波数を補正すべきと判断する。その後処理をステップS100に移行する。
【0037】
ステップS110では、上位制御部14は、電池について、次サイクルの監視を行うか否かを判断する。電池監視装置30のうち、少なくとも1つの電池監視装置について、周波数の差Δfの絶対値|Δf|が第2閾値TH2よりも大きい場合には、上位制御部14は、電池について、次サイクルの監視をすると判断してもよい。ステップS110における判断が、次サイクルの監視をする真(T)の場合、上位制御部14は、処理をステップS10に移行し、上述の処理を繰り返す。なお、ステップS110からステップS10に戻った次サイクル以降のステップS10では、電池監視情報に、電池監視装置30の第2クロック信号の周波数を補正すべきとの補正指示が含まれている。そのため、この補正指示を受けた電池監視装置30において、第2クロック信号の周波数の補正が行われる。ステップS110における判断が、次サイクルの監視をしない偽(F)の場合、上位制御部14は、処理を終了する。
【0038】
図3は、電池監視装置30の制御部48が実行する動作フローチャートである。ステップS200では、制御部48は、受信部42を通して、前段の装置から重畳信号を受信する。ここで、前段の装置は、電池監視装置30が1段目の電池監視装置の場合は、電池監視ECU10であり、電池監視装置30が2段目からm段目の電池監視装置の場合は、電池監視装置30である。また、重畳信号は、電池監視装置30が1段目の電池監視装置の場合は、第1重畳信号であり、電池監視装置30が2段目からm段目の電池監視装置の場合は、第2重畳信号である。
【0039】
ステップS210では、制御部48は、重畳信号を復元、復号して、参照クロック信号を生成する。1段目の電池監視装置30では、重畳信号は、第1重畳信号である。そのため、制御部48は、第1クロック信号の周波数と同じ周波数の参照クロック信号を生成し、電池監視情報を取得する。2段目からm段目の電池監視装置30では、重畳信号は、第2重畳信号である。そのため、制御部48は、前段の第2クロック信号の周波数と同じ周波数の参照クロック信号を生成し、電池監視情報と、前段までの各段における電池の状態の監視結果(「電池監視結果」とも呼ぶ。)と、前段までの各段における参照クロック信号に対する第2クロック信号の周波数のズレを示す差分情報と、を取得する。
【0040】
ステップS220では、制御部48は、電池監視情報に、第2クロック信号の周波数を補正すべき補正指示が含まれるか否かを判断する。ステップS220における判断が、電池監視情報に第2クロック信号の周波数を補正すべき補正指示が含まれる真(T)の場合、制御部48は、処理をステップS230に移行する。一方、ステップS220における判断が、電池監視情報に第2クロック信号の周波数を補正すべき補正指示が含まれない偽(F)の場合、制御部48は、処理をステップS240に移行する。
【0041】
ステップS230では、制御部48は、第2クロック生成部50に対して第2クロック信号の周波数を補正するように指示する。補正指示を受けた第2クロック生成部50は、上述したように、LC発振器を構成するコンデンサの容量、あるいは、インダクタを構成するインダクタンスを変更することで、発振周波数を変更、補正する。
【0042】
ステップS240では、制御部48は、周波数監視部53から参照クロック信号の周波数と、第2クロック生成部50が生成した第2クロック信号の周波数と、の差分を取得する。
【0043】
ステップS250では、制御部48は、電池監視部54から、電池監視部54が第2クロック信号を用いて検出した監視対象の電池の状態を取得する。
【0044】
ステップS260では、制御部48は、電池監視情報と、当段までの各段における電池監視結果と、当段までの各段における参照クロック信号と第2クロック信号との周波数のズレを示す差分情報と、を第2クロック信号に重畳して、第2重畳信号を生成する。
【0045】
ステップS270では、制御部48は、送信部44に対し、第2重畳信号から差動信号を生成させて後段の装置に送信させる。後段の装置は、上述したように、制御部48が最終段であるm段目の電池監視装置30の場合は、電池監視ECU10であり、制御部48がm段目以外の電池監視装置30の場合は、電池監視装置30である。
【0046】
図4は、電池監視ECU10が送信する第1重畳信号と、電池監視装置30が送受信する第2重畳信号を示す説明図である。電池監視ECU10は、周波数f0の第1重畳信号を送信する。1段目の電池監視装置30の受信部42は、周波数f0の第1重畳信号を受信し、1段目の電池監視装置30の送信部44は、周波数f1の第2重畳信号を送信する。2段目の電池監視装置30の受信部42は、周波数f1の第2重畳信号を受信し、2段目の電池監視装置30の送信部44は、周波数f2の第2重畳信号を送信する。以下同様に、x段目の電池監視装置30の受信部42は、f(x-1)の第2重畳信号を受信し、x段目の電池監視装置30の送信部44は、周波数fxの第2重畳信号を送信する。
【0047】
1段目の電池監視装置30では、周波数f1-f0が参照クロック信号(第1クロック信号)の周波数と、1段目の第2クロック信号の周波数と、の相対的なズレである差分Δf1となる。2段目の電池監視装置30では、周波数f2-f1が参照クロック信号(第2クロック信号)の周波数と、2段目の第2クロック信号の周波数と、の相対的なズレである差分Δf2となる。以下同様に、x段目の電池監視装置30では、周波数fx-f(x-1)が参照クロック信号(第2クロック信号)の周波数と、x段目の第2クロック信号の周波数と、の相対的なズレである差分Δfxとなる。x段目の電池監視装置30では、制御部48は、第2重畳信号を生成する際に、x段目までの差分Δf1からΔfxを順次付加していく。すなわち、各段の電池監視装置30における周波数の差分Δf1からΔfmが第2重畳信号に付加されていく。
【0048】
電池監視ECU10は、第1クロック信号の周波数情報と、各段の電池監視装置30における周波数の差分Δf1からΔfmとを用いて、1段目の電池監視装置30から順に、第2クロック信号の周波数を算出する。すなわち、1段目の電池監視装置30の第2クロックの周波数f1は、f0+Δf1であり、2段目の電池監視装置30の第2クロックの周波数f2は、f1+Δf2=f0+Δf1+Δf2である。以下同様に、上位制御部14は、3段目からm段目の電池監視装置30の第2クロックの周波数f3からfmを算出できる。上位制御部14は、第1クロック信号の周波数f0と、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数f1からfmと、を比較することで、第1クロック信号の周波数f0に対する各段の第2クロック信号の絶対的な周波数の誤差を求めることができる。そして、上位制御部14は、どの段の電池監視装置30の周波数を、どの程度補正すべきか、について判断できる。
【0049】
以上、本実施形態によれば、電池監視装置30の制御部48は、第2クロック信号の周波数の監視結果を、後段に出力する。その結果、電池監視ECU10の上位制御部14は、各段における第2クロック信号の周波数の監視結果を用いて、各段における第2クロック信号の周波数を算出し、どの電池監視装置30の第2クロック信号を補正すべきか、判断できる。
【0050】
本実施形態では、電池監視ECU10の上位制御部14が電池監視装置30に対して補正指示を送信しているが、各段の電池監視装置30において、制御部48が前段からの重畳信号に含まれる初段から前段までの差分を取り出し、これらを考慮して、初段が電池監視ECUから受け取った第1クロック信号の周波数と、当段の第2クロック信号の周波数との周波数差を求め、この周波数差が、予め定めた閾値より大きい場合、当段の制御部48は、第2クロック生成部50に対し、周波数のずれに応じて第2クロック信号の周波数を補正させてもよい。次サイクルにおいて、第2クロック信号を補正すべき電池監視装置30の数を少なくできる。
【0051】
本実施形態によれば、上位制御部14は、電池監視装置30のそれぞれの段における差分情報を用いて、第1クロック信号の周波数に対する第2クロック信号の絶対的な周波数のズレを算出し、取得できる。
【0052】
本実施形態によれば、上位制御部14は、第1クロック信号に対する第2クロック信号の絶対的な周波数のズレを、電池の状態と合わせて取得できる。
【0053】
本実施形態によれば、上位制御部14は、第1クロック信号の周波数に対する電池監視装置30における第2クロック信号の周波数の差が、第1閾値TH1よりも大きく、かつ、第2閾値TH2以下である場合には、第1クロック信号と第2クロック信号の周波数の差を用いて、電池の状態を補正して取得できる。
【0054】
本実施形態によれば、当段の周波数監視部53が、前段の電池監視装置30から受信した重畳信号から抽出した参照クロック信号の周波数に対する第2クロック信号の周波数の相対的なずれが予め定めた閾値よりも大きいと判断した場合、当段の制御部48は、第2クロック生成部に対し、周波数のずれに応じて前記第2クロック信号の周波数を補正させることができる。
【0055】
・第2実施形態:
図5は、第2実施形態の電池監視システム101の概略構成図である。第2実施形態の電池監視システム101では、電池監視ECU11は、接続部20を備えておらず、送受信部16は、接続部18を介して伝送路22に接続されている。また、電池監視装置32は、受信部42と送信部44に変えて送受信部43を備えており、電池監視ECU10と、複数の電池監視装置32は、デイジーチェーン接続されている点で第1実施形態の電池監視システム100と相違する。電池監視装置32は、2つの接続部34、36を備えているが、最後段であるm段目の電池監視装置32の接続部36には、終端装置28が接続されている。なお、送受信部43の構成によっては、接続部36に、終端装置28が接続されていなくてもよい。第1実施形態では、接続部34が入力部、接続部36が出力部として用いられたが、第3実施形態では、接続部34が入力部、接続部36が出力部として機能するが、接続部36が入力部、接続部34が出力部としても機能するように切り替え可能である。最後段であるm段目からの第2重畳信号は、m段目の電池監視装置32から1段目の電池監視装置32に向けて逆向きに伝送される。
【0056】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、上位制御部14は、第1クロック信号の周波数f0と、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数f1からfmと、を比較することで、各段の第2クロック信号の周波数の誤差を求めることができる。そして、上位制御部14は、どの段の電池監視装置30の周波数を、どの程度補正すべきか、について判断できる。
【0057】
・第3実施形態:
図6は、第3実施形態の電池監視システム102の概略構成図である。第4実施形態の電池監視システム102では、電池監視ECU11に対し、複数の電池監視装置33がマルチドロップ接続されている。電池監視ECU11の送受信部16は、接続部20を備えておらず、接続部18を介して伝送路27に接続されている。各々の電池監視装置33は、接続部36を備えておらず、受信部42と送信部44は、1つの接続部34に接続されており、接続部34は、伝送路27に接続されている。
【0058】
第3実施形態の電池監視システム102においては、電池監視ECU11からの信号は、接続部18、伝送路27を介して1段目の電池監視ECU11の受信部42に伝えられる。1段目の電池監視ECU11から出力される信号は、送信部44から接続部34、伝送路27を介して次段である2段目の電池監視ECU11の受信部42に伝えられる。以下同様に、x段の電池監視ECU11から出力される信号は、送信部44から接続部34、伝送路27を介して次段である第(x+1)段の電池監視ECU11の受信部42に伝えられる。最終段のm段目の電池監視ECU11から出力される信号は、送信部44から接続部34、伝送路27を介して電池監視ECU11の送受信部16に伝えられる。この様に、各電池監視装置30は、同一の伝送路27を用いて重畳信号を順次伝送する。伝送に関しては、トークンを用いて、各電池監視装置30が順次伝送路27の使用権をもって、後段へ重畳信号を伝送する。
【0059】
第3実施形態においても、第1実施形態と動作は同じであり、第1実施形態と同様に、上位制御部14は、第1クロック信号の周波数f0と、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の周波数f1からfmと、を比較することで、各段の電池監視装置30における第2クロック信号の第1クロック信号に対する絶対的な周波数の誤差を求めることができる。そして、上位制御部14は、どの段の電池監視装置30の周波数を、どの程度補正すべきか、について判断できる。
【0060】
以上、第1実施形態から第4実施形態からわかるように、電池監視ECUと複数の電池監視装置の接続形態は、リング接続、デイジーチェーン接続、マルチドロップ接続など様々な接続形態が可能である。
【0061】
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10、11…電池監視ECU、12…第1クロック生成部、14…上位制御部、16…送受信部、18、20…接続部、22、24、25、26、27…伝送路、28…終端装置、30、32、33…電池監視装置、34、36…接続部、40…電池監視IC、42…受信部、43…送受信部、44…送信部、48…制御部、50…第2クロック生成部、53…周波数監視部、54…電池監視部、60…フィルタ、100、101、102…電池監視システム