IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミドリ安全株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空調衣服用バッテリ収納ケース 図1
  • 特開-空調衣服用バッテリ収納ケース 図2
  • 特開-空調衣服用バッテリ収納ケース 図3
  • 特開-空調衣服用バッテリ収納ケース 図4
  • 特開-空調衣服用バッテリ収納ケース 図5
  • 特開-空調衣服用バッテリ収納ケース 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007879
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】空調衣服用バッテリ収納ケース
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20230112BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230112BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A41D13/002 105
H05K5/02 C
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110995
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 元
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼輝
(72)【発明者】
【氏名】高梨 智史
【テーマコード(参考)】
3B011
4E360
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
4E360AB02
4E360AB12
4E360AB33
4E360AB34
4E360AB42
4E360AB44
4E360AB54
4E360BA08
4E360BB22
4E360ED02
4E360FA08
4E360FA12
4E360FA17
4E360GA26
4E360GA29
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC08
(57)【要約】
【課題】バッテリ部から電解液等の液漏れが生じても、制御回路部に浸水することのない空調衣服用バッテリ収納ケースを提供する。
【解決手段】基部2を上蓋部3により密閉することで、第1の仕切壁2aの凹部2cと第2の仕切壁の凹部から形成される矩形孔内には、密封性の高い立方体状のシール部材7が嵌入されている。シール部材7は略中央に電力線5a又は電力線5bを挿通する貫通孔7aと、この貫通孔7aの周囲を取り囲むように立方体状の側面に凹設した溝部7bとを備えている。シール部材7を第1、第2の仕切壁2a、3aに嵌合することで、筐体部4の内部空間をバッテリ部5が収納される第1の空間と、制御回路部6が収納される第2の空間に密閉して分離することができる。バッテリ部5から電解液等の液漏れが生じても、第1の空間から第2の空間に電解液等が浸水することはない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を解放した箱状の基部と、該基部を上方から被せて密閉する上蓋部とから成る筐体部の内部を、バッテリ部を収納する第1の空間と、該バッテリ部と電力線を介して接続される制御回路部を収納する第2の空間とに区分する空調衣服用バッテリ収納ケースであって、
前記基部は前記第1、第2の空間を区分する第1の仕切壁を有し、
前記上蓋部は前記基部の前記第1の仕切壁に先端縁同士が接し、前記第1、第2の空間を区分する第2の仕切壁を有し、
前記第1の仕切壁及び前記第2の仕切壁の少なくとも一方に凹部を設け、該凹部に筒状の弾力性を有するシール部材が嵌入可能であり、
前記シール部材は、略中央に前記電力線を挿通する貫通孔と、該貫通孔の周囲を取り囲むように凹設した溝部とを備え、前記凹部の周辺の前記仕切壁を、前記シール部材の前記溝部に押し込むことで、前記第1、第2の空間を密閉して分離することを特徴とする空調衣服用バッテリ収納ケース。
【請求項2】
前記凹部、前記シール部材及び前記電力線は、それぞれ1組づつ配置していることを特徴とする請求項1に記載の空調衣服用バッテリ収納ケース。
【請求項3】
前記凹部以外の前記第1の仕切壁の先端縁及び第2の仕切壁の先端縁の少なくとも一方にシール膜を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の空調衣服用バッテリ収納ケース。
【請求項4】
前記貫通孔の径は、挿通する前記電力線の径よりも若干小さく、前記溝部の溝幅は前記第1、第2の仕切壁の壁厚よりも若干小さいことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の空調衣服用バッテリ収納ケース。
【請求項5】
前記制御回路部は、IC部品を実装したプリント回路基板アセンブリであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の空調衣服用バッテリ収納ケース。
【請求項6】
前記シール部材はシリコン樹脂から成ることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の空調衣服用バッテリ収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置付き衣服等に着脱可能な空調衣服用バッテリ収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、高温環境下での作業時等に作業者が着用し、取り付けられたファンにより衣服内に外気を吸入する空調衣服が知られている。この空調衣服は、石油精製・石油化学・化学合成プラント等において可燃性のガスや液体から成る可燃性物質の蒸気が存在する爆発性雰囲気内で、着用することもある。
【0003】
特許文献1に示すような通常の空調衣服では、バッテリ収納ケース内に、ファンを駆動するためのバッテリと、ファンの動作を制御する制御回路部とを内蔵し、バッテリの出力が制御回路部、ケーブルを介してファンに接続されている。このバッテリ収納ケースは空調衣服のポケット等に入れることによって、空調衣服に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-65861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、バッテリ収納ケース内のバッテリにリチウムイオン電池を採用した場合には、リチウムイオン電池の不具合によって電解液の液漏れが発生することがある。
【0006】
この液漏れが発生すると、バッテリ近傍に配置した制御回路部のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)に電解液が浸入し、回路素子の暴走や回路の短絡を引き起こすので、上述の可燃性物質の蒸気が存在する爆発性雰囲気内で使用した場合には、可燃性物質に着火する火花が発生する虞れがある。
【0007】
また、プリント回路基板アセンブリに電解液が浸った際に、可燃性物質への着火はなかったとしても、部分的に異常に発熱することがあり、着用者が火傷をすることもある。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、バッテリ収納ケースに内蔵されたバッテリの不具合によって液漏れ等が発生しても、液漏れによる液体等がプリント回路基板アセンブリ等の制御回路部に浸水することのない空調衣服用バッテリ収納ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る空調衣服用バッテリ収納ケースは、上面を解放した箱状の基部と、該基部を上方から被せて密閉する上蓋部とから成る筐体部の内部を、バッテリ部を収納する第1の空間と、該バッテリ部と電力線を介して接続される制御回路部を収納する第2の空間とに区分する空調衣服用バッテリ収納ケースであって、前記基部は前記第1、第2の空間を区分する第1の仕切壁を有し、前記上蓋部は前記基部の前記第1の仕切壁に先端縁同士が接し、前記第1、第2の空間を区分する第2の仕切壁を有し、前記第1の仕切壁及び前記第2の仕切壁の少なくとも一方に凹部を設け、該凹部に筒状の弾力性を有するシール部材が嵌入可能であり、前記シール部材は、略中央に前記電力線を挿通する貫通孔と、該貫通孔の周囲を取り囲むように凹設した溝部とを備え、前記凹部の周辺の前記仕切壁を、前記シール部材の前記溝部に押し込むことで、前記第1、第2の空間を密閉して分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る空調衣服用バッテリ収納ケースによれば、筐体部の内部空間をバッテリ部が収納される空間と、プリント回路基板アセンブリから成る制御回路部が収納される空間とを密閉して分離することができるので、バッテリからの液漏れが発生しても、液漏れによる液体等が制御回路部を浸水することはない。従って、可燃性物質の蒸気が存在する爆発性雰囲気内で使用しても、制御回路部の異常による出力によって、可燃性物質に着火する原因となる火花が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空調衣服を背面から見た説明図である。
図2】衣服用空調装置のブロック回路構成図である。
図3】空調衣服用バッテリ収納ケースの斜視図である。
図4】空調衣服用バッテリ収納ケースの分解斜視図である。
図5】制御回路部の分解斜視図である。
図6】電流制限部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は空調衣服Wの背面から見た説明図である。空調衣服Wは、前面に開閉用のジッパーW1を備えた上着W2に、衣服用空調装置Mが取り付けられている。
【0013】
衣服用空調装置Mは、上着W2の背面に設けた図示しない取付孔に固定した複数個の例えば2個のファン部Fと、上着W2の内ポケット等に収納する空調衣服用バッテリ収納ケース1と、各ファン部F及び空調衣服用バッテリ収納ケース1を接続する複数の接続ケーブルCとから構成されている。
【0014】
円盤状のファン部Fは、上着W2に対して左右対称になるように配置されており、ハウジング内に羽根部F1が収納されている。この羽根部F1を回転させるモータに対して接続ケーブルCを介して電力供給を行い、羽根部F1を高速に回転させることで、外気を上着W2内に吸入する。ジッパーW1を閉じた状態の上着W2内では、矢印の方向に気流Kが発生し、上着W2内の空気は首や手首の隙間を介して、外部に排出される。
【0015】
このようにファン部Fのモータの駆動により、上着W2内は涼しい状態が維持される。なお、ファン部Fは直流で動作する軸流ファン以外に、遠心ファン等の適宜のファンを採用することも可能である。
【0016】
ファン部Fのハウジングは本体部と固定枠部とから成り、これらで上着W2の取付孔を挟持することで固定されている。ファン部Fの故障時等には、本体部から固定枠部を分離することで、容易に上着W2からファン部Fを取り外すことが可能である。
【0017】
ファン部F毎に独立して配線される接続ケーブルCの一方の端部には、接続端子部C1が設けられている。接続ケーブルCの他方の端部は、ファン部Fと連結しているように図示しているが、接続端子部C1と同様に接続端子部を設け、ファン部Fにこの接続端子部を挿入する端子用接続部を設けて、取り外し可能としてもよい。
【0018】
図3は空調衣服用バッテリ収納ケース1の斜視図であり、図4は収納ケース1の分解斜視図である。収納ケース1は、上面を開放した箱状の基部2と、基部2の上方から被せて密閉する上蓋部3とから成る筐体部4内に、例えばリチウムイオン電池等の電池から成るバッテリ部5と、このバッテリ部5と電力線5a、5bを介して接続される制御回路部6とが収納されている。また、基部2、上蓋部3の材料として、例えば耐熱性の合成樹脂材が採用されている。
【0019】
筐体部4はバッテリ部5が収納される第1の空間と、制御回路部6が収納される第2の空間とに区分され、基部2には、第1の空間と、第2の空間とに区分する第1の仕切壁2aと、上蓋部3を位置決めする位置決め部2bが立設している。
【0020】
この位置決め部2bは、例えば図4に示すように基部2の左右側面部から、上方に突出した一対の略円錐形状で形成することが望ましい。そして、第1の仕切壁2aの両端には、バッテリ部5のプラス極、マイナス極の電力線5a、5bを制御回路部6側に配線するための1対の凹部2cが設けられている。
【0021】
基部2の外表面には、ファン部Fに対する電力供給をオン・オフする電源スイッチ操作部2dと、バッテリ部5の残量を表示する残量表示部2eと、接続ケーブルCの接続端子部C1を挿入する端子用挿入部2fと、商用電源等から充電ケーブルを介して、バッテリ部5に充電可能な充電用挿入部2gとが設けられている。
【0022】
上蓋部3には基部2の第1の仕切壁2aに先端縁同士が接し、前記第1、第2の空間を区分する第2の仕切壁3aと、接続ケーブルCの接続端子部C1を挿入する端子挿入部3bが設けられている。なお、基部2の第1の仕切壁2aの先端縁2hと図示しない上蓋部3の第2の仕切壁3aの先端縁との少なくとも何れか一方には、仕切壁2a、3aの先端縁同士の防水性を高めるためにゴム製等のシール膜が設けられている。
【0023】
また、上蓋部3の第2の仕切壁3aには、基部2の第1の仕切壁2aの凹部2cと同様に、凹部2cと対向する位置に凹部3cが設けられ、上蓋部3の左右側面部には、基部2の一対の位置決め部2bの先端を挿入する図示しない一対の被位置決め部が設けられている。なお、バッテリ部5のプラス極、マイナス極が一方の側面に共に設けられ、そこから電力線5a、5bが引き出されている場合には、凹部2c及び3cを1個所にまとめて設けてもよく、バッテリ部5の電極の位置に応じて、適宜の複数位置に凹部2c及び3cを設けることもできる。なお、凹部2c、3cは第1、第2の仕切壁2a、3aの何れか一方のみに設ける構造としてもよく、この場合の一方のみの凹部の大きさは、上述の矩形孔と同じ大きさとなる。
【0024】
基部2を上蓋部3との仕切壁2a、3aの上端縁同士を、シール膜を介して密閉し、第1の仕切壁2aの凹部2cと第2の仕切壁3aの凹部3cから形成される矩形孔内には、シリコン樹脂材から成る強い弾力性を有する密封性の高い筒状の例えば角筒状のシール部材7が嵌入されている。また、丸筒状のシール部材7を使用する場合には凹部2c、3cは半円形とすればよい。
【0025】
シール部材7は中央に電力線5a又は5bを挿通する貫通孔7aが設けられ、この貫通孔7aの周囲を取り囲むように溝部7bが周設されている。
【0026】
また、円形の貫通孔7aの直径は、挿入する電力線の直径よりも若干小さく、溝部7bの溝幅は第1、第2の仕切壁2a、3aの壁厚よりも若干小さくされている。このようにすることで、電力線をシール部材7の貫通孔7aに挿入し、シール部材7の溝部7bに凹部2c、3cの周辺の第1、第2の仕切壁2a、3aを押し込んだ際に、貫通孔7a及び溝部7bが変形した状態で拡開し、密封性が増すことになる。
【0027】
凹部2c、3cの周辺の第1、第2の仕切壁2a、3aを、シール部材7の溝部7bに押し込んだ状態で、基部2を上蓋部3で閉止すると、シール部材7の側面は溝部7bに押し込まれた第1、第2の仕切壁2a、3aによって周囲が完全に取り囲まれ、シール部材7の弾力性によって溝部7bと凹部2c、3cの間は完全に密着されるので、筐体部4に衝撃を加えてもシール部材7が外れることはない。
【0028】
シール部材7を第1、第2の仕切壁2a、3aに嵌合することで、筐体部4の内部空間を、バッテリ部5が収納される第1の空間と、制御回路部6が収納される第2の空間とに密閉して分離することができる。このようにして、例えばリチウムイオン電池等の電池から成るバッテリ部5から電解液等の液漏れが生じても、バッテリ部5側の第1の空間から制御回路部6側の第2の空間に電解液が浸水することはない。
【0029】
なお、凹部2c、3c、シール部材7及び電力線5a、5bは、それぞれ図示するように左右に一組ずつ配置されているが、凹部2c、3c及びシール部材7を1個ずつ配置し、シール部材7に電力線5a、5bを挿通可能な貫通孔7aを設けるようにしてもよい。更には貫通孔7aが電力線5a、5bが短絡しないように、シール部材7に複数の貫通孔7aを設けるようにしてもよい。
【0030】
バッテリ部5としては、例えば公称電圧3.7V、定格容量1.88Ahのリチウムイオン電池を採用し、複数個を直列に連結して使用する。バッテリ部5には充電用挿入部2gを介して充電可能な充電池に代えて、使い捨ての乾電池を採用することも可能である。なお、乾電池を採用する場合には、充電用挿入部2gを設ける必要はない。
【0031】
図5は制御回路部6の分解斜視図であり、図6は電流制限部9の分解斜視図である。制御回路部6は、2枚のIC等の部品を実装した第1の基板8aと第2の基板8bとをL字形に配置した制御基板部8と、この制御基板部8と接続する複数の電流制限部9とから構成されたプリント回路基板アセンブリ(PCBA)が用いられる。なお、複数の電流制限部9の個数は、上着W2に取り付けたファン部Fの個数と同数である。
【0032】
制御基板部8は、第1の基板8aと第2の基板8bとが連結端子8cを介して接続されている。第1の基板8aには電流制限部9の電流制限素子9aの各端子9bを挿入する挿入孔部8dが設けられており、第2の基板8bには、電源スイッチ操作部2dのオン・オフ動作に従動するスイッチ端子8eと、筐体部4の端子用挿入部2f、3bと接続する出力端子8fと、基部2の残量表示部2eの裏面に配置された図示しないLED素子の端子部を接続する接続孔8gとが設けられている。なお、残量表示部2eにはバッテリ部5の残量に応じて、複数のLED素子が点灯するようにされている。
【0033】
図2に示すように、ファン部F毎に対応するように並列に配置された電流制限部9には、それぞれ過電流が発生しないように出力電流を制御する2個の電流制限素子9aが直列に配置されている。
【0034】
これらの電流制限素子9aは、例えばゲート部に印加するゲート電圧によってソース・ドレイン間の電流を制御する電界効果トランジスタ(FET素子)等の半導体スイッチ素子が採用され、適宜のゲート電圧を設定することで、制限電流値を超過しないように出力電流が制限される。電流制限素子9aのゲート、ソース、ドレインの各端子9bは、第1の基板8aの挿入孔部8dに挿入されている。
【0035】
電流制限素子9aの制限電流値は、羽根部F1が安定して回転駆動しているときの定格電流値Iaと同値、又は定格電流値Iaより若干高く設定されている。2個の電流制限素子9aを直列に接続して安全のために二重系とすることで、一方の電流制限素子9aが故障し、出力電流を制限できなくなったとしても、故障していない他方の電流制限素子9aにより、制限電流値を超過しないように維持できる。
【0036】
直列に配線された複数の電流制限素子9aは、熱伝導率が高い金属から成る1個のヒートシンク材9cの平面状の主面部9dに、それぞれの伝熱板9eを介して、横並びに取り付けられている。これらの熱伝導性の良い絶縁材料から成る伝熱板9eの両面には、伝導率の高いペースト状シリコン材等の粘着層を設けてもよく、更には伝熱板9eを設けずに、上述のペースト状シリコン材をヒートシンク材9cの主面部9dと、電流制限素子9aとの間に配置してもよい。
【0037】
図6に示すように、ねじ9fを電流制限素子9a、伝熱板9e及びヒートシンク材9cのそれぞれのねじ孔9gに挿通させて、電流制限素子9aの平面部9hがヒートシンク材9cの主面部9dに伝熱板9eを介して、載置するように取り付けられている。このように取り付けることで、電流制限素子9aが発熱した際に熱がヒートシンク材9cに効率良く伝達することになる。
【0038】
ヒートシンク材9cの主面部9dの裏面には、主面部9dに対して直交して複数の放熱板9iが平行に並設されている。このように多数の放熱板9iを配置することで表面積が大きくなり、放熱効率を高めることができる。
【0039】
また、電流制限素子9aの各端子9bを第1の基板8aの挿入孔部8dに挿入して固定した際に、ヒートシンク材9cの第1の基板8a側の側面9jと、第1の基板8aとの間に隙間が生じ離間している。
【0040】
このように、ヒートシンク材9cの側面9jと、第1の基板8aとの間に隙間を設けることで、通常では基板に設置されたヒートシンク材によりIC等の実装部品の配置が制限されるのに対して、第1の基板8aの上下面に、実装部品をヒートシンク材9cにより制限されることなく、効率的に配置することができる。
【0041】
また、ヒートシンク材9cの第1の基板8a側の側面9jの一部を、IC等の実装部品の配置を制限しない範囲で、第1の基板8aに接するようにしてもよい。この場合は、第1の基板8aとヒートシンク材9cとが接することで、ヒートシンク材9cの熱が第1の基板8aに伝わり、放熱性を高めることができる。また、ヒートシンク材9cの放熱板9iの先端部を筐体部4の内側面に接触させることで、更に放熱性を高めることが可能である。
【0042】
なお、本実施例では2個の電流制限素子9aを配置しているが、更に安全性を高めるために、電流制限部9の電流制限素子9aは3個以上の複数個を直列に配置してもよく、制限電流値を超過しないように出力電流を制限することができれば、電流制限素子9aの個数は適宜に決めることができる。
【0043】
図3の状態において、電源スイッチ操作部2dを押圧すると電源が入り、ファン部Fの定格電流値Ia、及びファン部Fを駆動させるために印加する電圧である定格電圧に基づくモータの回転により、羽根部F1から適度な風量が発生する。この適度な風量が得られる羽根部F1の回転動作は、バッテリ部5から供給された電力を、制御回路部6によって適切に制御してファン部Fに送電することによってなされる。これにより、空調衣服W内にファン部Fから外部の雰囲気が吸入され、空調衣服内の暖気が排出されて、着用者は程良い冷感を得ることができる。
【0044】
冷感を継続して得るために、着用中はファン部Fから常に適度な風量が吸入されるように、継続してバッテリ部5からの給電と制御回路部6による電流制限を行うため、動作時間の増大や厳しい環境下での動作の繰り返しがなされる。このため、バッテリ部5や制御回路部6は徐々に機能低下し、不具合が発生することがある。特に、継続使用によってバッテリ部5が機能低下すると、例えばリチウムイオン電池であれば電解液の液漏れが発生するなど、バッテリ部5の種類に応じた液漏れ等が発生する。
【0045】
バッテリ部5及び制御回路部6を収納した空調衣服用バッテリ収納ケース1は、バッテリ部5が収納される第1の空間の密封性の確保から、一旦組み立てた後は上蓋部3を基部2から取り外せないように嵌め殺し構造を採用することが好ましい。
【0046】
このような構造を採用した場合には、バッテリ部5に液漏れ等の不具合が発生しても、着用者が空調衣服用バッテリ収納ケース1の上蓋部3を開けて、基部2内のバッテリ部5の状態を確認することができない。
【0047】
着用者はリチウムイオン電池から大量の電解液が液漏れした場合は、電池機能が損傷し、ファン部Fに対して電力供給ができなくなるので不具合に気付くが、少量の電解液の液漏れの場合は、バッテリ部5の不具合の発生に気付くことなく、空調衣服用バッテリ収納ケース1を使用し続けることになる。
【0048】
このように、バッテリ部5から電解液等の液体の液漏れが発生しても、バッテリ部5を収納する第1の空間と制御回路部6を収納する第2の空間は、第1及び第2の仕切壁2a、3aによって密閉して分離されているため、バッテリ部5から漏れた電解液が制御回路部6に浸水することはない。
【0049】
特に、電力線5a、5bを挿通するために凹部2c、3cから成る第1及び第2の仕切壁2a、3aに形成された矩形孔に、シール部材7を配置し、強い弾力性を有するシール部材7の溝部7bに、凹部2c、3cの周囲の第1及び第2の仕切壁2a、3aを押し込むことによって密封されるので、バッテリ部5から漏れた電解液が凹部2c、3cを通って制御回路部6に到達することもない。つまり、制御回路部6がバッテリ部5から漏れた電解液によって浸水することはないので、制御回路部6を構成するプリント回路基板アセンブリに短絡や破損が発生することがない。
【0050】
従って、空調衣服Wの着用者は、バッテリ部5に液漏れ等の不具合が発生しても、液漏れ等の不具合によって制御回路部6が短絡や破損することがないので、安全・安心を確保した状態で空調衣服用バッテリ収納ケース1とそれを備えた衣服用空調装置Mを使用し続けることができる。バッテリ部5の給電機能がなくなるまで、制御回路部6を破損することなく動作させることができるので、空調衣服用バッテリ収納ケース1の使用寿命を延ばすこともでき、コスト低減や省資源にもつながる。
【0051】
また、空調衣服Wを可燃性物質の蒸気が存在する爆発性雰囲気内で着用しても、バッテリ部5から漏れた電解液等によって、制御回路部6のプリント回路基板アセンブリが短絡等を誘因することがないので、制御回路部6から可燃性物質に着火する原因となる火花が発生することもない。つまり着用者は、爆発性雰囲気内でもバッテリ部5の液漏れ等の不具合や、それによって引き起こされる火花の発生や着火を心配することなく、安全・安心に空調衣服用バッテリ収納ケース1とそれを備えた衣服用空調装置Mを使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 空調衣服用バッテリ収納ケース
2 基部
2a 第1の仕切壁
2b 位置決め部
2c 凹部
3 上蓋部
3a 第2の仕切壁
3c 凹部
4 筐体部
5 バッテリ部
5a、5b 電力線
6 制御回路部
7 シール部材
7a 貫通孔
7b 溝部
C 接続ケーブル
F ファン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6