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特開2023-78801顕微鏡システム、及び、顕微鏡制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078801
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】顕微鏡システム、及び、顕微鏡制御装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20230531BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230531BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20230531BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20230531BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20230531BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20230531BHJP
   H04N 23/67 20230101ALI20230531BHJP
   H04N 23/74 20230101ALI20230531BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20230531BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
G02B7/34
G02B7/36
G03B15/02 V
G03B15/05
H04N5/232 120
H04N5/235 400
G02B7/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192084
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】今関 広二
(72)【発明者】
【氏名】本田 進
【テーマコード(参考)】
2H052
2H053
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H052AC33
2H052AD08
2H052AD09
2H052AD18
2H052AD20
2H052AF14
2H052AF25
2H053BA25
2H151AA11
2H151BA14
2H151BA44
2H151BA47
2H151BA52
2H151CB20
5C122DA30
5C122EA40
5C122EA41
5C122EA68
5C122FA08
5C122FA17
5C122FB03
5C122FB13
5C122FC02
5C122FC03
5C122FD01
5C122FD05
5C122FD08
5C122FD09
5C122FF01
5C122FF11
5C122FF17
5C122GG17
5C122GG24
5C122GG29
5C122HA82
5C122HB02
(57)【要約】
【課題】画質とスループットを高いレベルで両立するスキャン技術を提供する。
【解決手段】顕微鏡システム1は、光源101と、対物レンズ104と、ステージ103と、ステージ103に置かれた標本Sの像を撮像する2次元撮像素子170と、対物レンズ104とステージ103の間の距離を変更する焦準部150と、制御回路と、を備える。制御回路は、対物レンズ104の光軸と直交する方向にステージ103が移動している移動期間中に、その移動期間内で検出した合焦評価情報に基づいて焦準部150を制御する合焦制御と、2次元撮像素子170の露光期間を制御する露光制御と、を実行し、露光期間中と合焦評価情報を検出する合焦評価期間中とで異なる発光強度で光源101を発光させる発光制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
対物レンズと、
ステージと、
前記ステージに置かれた標本の像を撮像する2次元撮像素子と、
前記対物レンズと前記ステージの間の距離を変更する焦準装置と、
制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記対物レンズの光軸と直交する方向に前記ステージが移動している移動期間中に、当該移動期間内で検出した合焦評価情報に基づいて前記焦準装置を制御する合焦制御と、前記2次元撮像素子の露光期間を制御する露光制御と、を実行し、
前記露光期間中と前記合焦評価情報を検出する合焦評価期間中とで異なる発光強度で前記光源を発光させる発光制御を実行する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、
前記ステージの位置情報に基づいて、前記光源の発光強度を、前記合焦評価期間中の第1の発光強度よりも大きな第2の発光強度に変更し、
前記光源が前記第2の発光強度で発光している期間内に、前記露光期間を設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項3】
請求項2に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、前記露光期間の終了に合わせて前記発光強度を前記第2の発光強度から前記第1の発光強度へ調光する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項4】
請求項3に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記第1の発光強度は、前記第2の発光強度の1/10以下である
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、前記露光期間の長さである露光時間を、前記露光期間中の前記ステージの移動速度に基づいて設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、前記露光期間の長さである露光時間を、前記露光期間中の前記ステージの移動速度と前記第2の発光強度とに基づいて設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、前記露光時間を、前記露光期間中の前記ステージの移動量が前記ステージ上に投影された前記2次元撮像素子の像における1/3画素よりも小さくなるように、設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、それぞれ前記露光期間であって時間方向に隣り合う第1の露光期間と第2の露光期間の間に、少なくとも1回前記合焦評価期間を設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項9】
請求項8に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記合焦評価期間は、所定のサンプリング周期で設定され、
前記所定のサンプリング周期は、前記露光期間の長さである露光時間の10倍以上である
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御回路は、前記露光期間と重ならないように前記合焦評価期間を設定する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、さらに、
前記対物レンズの前側焦点位置と光学的に共役な位置よりも前側にある第1の位置で光を検出する第1のセンサと、前記前側焦点位置と光学的に共役な位置よりも後側にある第2の位置で光を検出する第2のセンサと、を含むアレイセンサを含み、
前記対物レンズと前記2次元撮像素子の間の光路上に配置され、入射した光の少なくとも一部を前記アレイセンサへ向かう光路へ導く光路分割素子と、を含み、
前記合焦評価情報は、前記第1のセンサから出力される前記第1の位置に対応する信号と前記第1のセンサから出力される前記第2の位置に対応する信号とに基づいて算出された情報を含む
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項12】
請求項11に記載の顕微鏡システムにおいて、
複数の画素を有するラインセンサであり、
前記複数の画素が前記標本を走査する方向であって前記露光期間中の前記ステージの移動方向と直交する方向である主走査方向に対応する方向に整列するように、配置される
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項13】
請求項12に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記アレイセンサは、光軸と交差するように配置される
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項14】
請求項12に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記アレイセンサは、前記標本を走査する方向であって前記露光期間中の前記ステージの移動方向である副走査方向に対応する方向に光軸から逸れた位置に配置される
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項15】
請求項14に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記アレイセンサは、前記光軸を挟んで配置された第1のアレイセンサと第2のアレイセンサを含む
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項16】
請求項11に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記アレイセンサは、前記露光期間中の前記ステージの移動方向に対して傾いた方向に対応する方向に整列した複数の画素を有するラインセンサである
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項17】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記2次元撮像素子は、像面位相差検出用の画素を含み、
前記合焦評価情報は、前記像面位相差検出用の画素からの出力信号に基づいて算出された情報を含む
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項18】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記2次元撮像素子は、像面位相差検出用の複数の画素を含み、
前記合焦評価情報は、前記ステージの移動方向に応じて前記像面位相差検出用の複数の画素の中から選択された画素からの出力信号に基づいて算出された情報を含む
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、さらに、
それぞれ異なる露光期間に対応する、前記2次元撮像素子で撮像した前記標本の複数の像を合成する画像処理装置を備える
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項20】
光源と、対物レンズと、ステージと、前記ステージに置かれた標本の像を撮像する2次元撮像素子と、前記対物レンズと前記ステージの間の距離を変更する焦準装置と、を備える顕微鏡を制御する顕微鏡制御装置であって、
制御回路を備え、
前記制御回路は、
前記対物レンズの光軸と直交する方向に前記ステージが移動している移動期間中に、当該移動期間内で検出した合焦評価情報に基づいて前記焦準装置を制御する合焦制御と、前記2次元撮像素子の露光期間を制御する露光制御と、を実行し、
前記露光期間中と前記合焦評価情報を検出する合焦評価期間中とで異なる発光強度で前記光源を発光させる発光制御を実行する
ことを特徴とする顕微鏡制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、顕微鏡システム、及び、顕微鏡制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病理診断における病理医の負担を軽減する技術の一つとして、Whole Slide Imagingが注目されている。Whole Slide Imagingとはスライドガラス上の検体全域をスキャンしてデジタル画像を作成する技術であり、複数の画像を取得してタイリングすることで顕微鏡の視野よりも広い領域を高い解像力で画像化することができる。
【0003】
Whole Slide Imagingのスループットの向上には、ステージを停止することなく各撮影位置で撮影を行うノンストップ方式が有効である。その一方で、ステージを移動しながら撮影が行われると画像にブレを生じてしまう。このような技術的な課題に関連する技術は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、露光期間内において瞬間的に光源を発光することで画像のブレを抑える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6154291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、オートフォーカスを実行する余地がないため、フォーカスがあった状態で検体を撮影できるとは限らない。予め合焦位置を求めておくことで検体へのフォーカシングが可能となるが、スキャン前に行われる合焦位置を求める工程は、スループットの向上を妨げてしまう。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、画質とスループットを高いレベルで両立するスキャン技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る顕微鏡システムは、光源と、対物レンズと、ステージと、前記ステージに置かれた標本の像を撮像する2次元撮像素子と、前記対物レンズと前記ステージの間の距離を変更する焦準装置と、制御回路と、を備える。前記制御回路は、前記対物レンズの光軸と直交する方向に前記ステージが移動している移動期間中に、当該移動期間内で検出した合焦評価情報に基づいて前記焦準装置を制御する合焦制御と、前記2次元撮像素子の露光期間を制御する露光制御と、を実行し、前記露光期間中と前記合焦評価情報を検出する合焦評価期間中とで異なる発光強度で前記光源を発光させる発光制御を実行する。
【0008】
本発明の一態様に係る顕微鏡制御装置は、光源と、対物レンズと、ステージと、前記ステージに置かれた標本の像を撮像する2次元撮像素子と、前記対物レンズと前記ステージの間の距離を変更する焦準装置と、を備える顕微鏡を制御する。前記顕微鏡制御装置は、制御回路を備え、前記制御回路は、前記対物レンズの光軸と直交する方向に前記ステージが移動している移動期間中に、当該移動期間内で検出した合焦評価情報に基づいて前記焦準装置を制御する合焦制御と、前記2次元撮像素子の露光期間を制御する露光制御と、を実行し、前記露光期間中と前記合焦評価情報を検出する合焦評価期間中とで異なる発光強度で前記光源を発光させる発光制御を実行する。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、画質とスループットを高いレベルで両立するスキャン技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る顕微鏡システムの構成の一例を示した図である。
図2】Whole Slide Imagingについて説明するための図である。
図3】顕微鏡システムで行われる処理のタイミングチャートの一例を示した図である。
図4】ステージの移動速度の時間変化の一例を示した図である。
図5】合焦評価情報の一例について説明するための図である。
図6】AF用のセンサの配置の一例について説明するための図である。
図7】AF用のセンサに含まれる前ピン用センサ領域と後ピン用センサ領域の配置について説明するための図である。
図8】AF用のセンサの配置の別の例について説明するための図である。
図9】AF用のセンサの配置の更に別の例について説明するための図である。
図10】第2の実施形態に係る顕微鏡システムの構成の一例を示した図である。
図11】ステージの移動方向と像面位相差検出用画素を有効化する領域の関係の一例を示した図である。
図12】第3の実施形態に係る顕微鏡システムの構成の一例を示した図である。
図13】顕微鏡装置及び顕微鏡制御装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る顕微鏡システムの構成の一例を示した図である。図2は、Whole Slide Imagingについて説明するための図である。図1に示す顕微鏡システム1は、第1の実施形態に係る顕微鏡システムの一例であり、WSI(Whole Slide Images)を生成するWhole Slide Imaging装置である。以下、図1及び図2を参照しながら、顕微鏡システム1の構成について説明する。
【0012】
顕微鏡システム1は、図1に示すように、顕微鏡装置100と画像処理装置200を備えている。顕微鏡装置100は、実視野よりも広い標本を高い開口数を有する対物レンズ104を用いてスキャンして、標本Sの複数の像を画像処理装置200へ出力する。例えば、図2に示すような、スライドガラスSGとカバーガラスCGに挟まれた標本S全体を画像化してWSIを生成する場合であれば、標本Sに対して実視野10を移動させながら撮像を繰り返すことで、標本S全体をスキャンする。このとき、撮像位置は、各撮像で得られる標本Sの像が隣接する撮像位置で撮像された像の一部(図2における貼り合わせシロ参照)と重なるように設定される。
【0013】
画像処理装置200は、顕微鏡装置100から出力された標本Sの複数の像を合成して、貼り合わせ画像を生成する。具体的には、画像処理装置200は、隣接した撮像位置で撮像された像の重複部分を貼り合わせシロとして利用して複数の像を貼り合わせることで、WSIを生成する。これにより、複数の像の相対位置を精度良く特定して貼り合わせを行うことができる。
【0014】
顕微鏡システム1によれば、Whole Slide Imaging技術を用いて、顕微鏡装置100の実視野10よりも広い範囲の情報を高い解像度を有する1枚の画像(WSI)としてユーザに提供することができる。
【0015】
なお、本明細書では、貼り合わせ画像の一例として病理診断などの分野で使用されるWSIを例示したが、各実施形態の顕微鏡システムで生成される貼り合わせ画像はWSIに限らず、工業製品の検査などの用途で用いられる画像であってもよい。
【0016】
顕微鏡装置100は、図1に示すように、少なくとも、光源101と、対物レンズ104と、ステージ103と、2次元撮像素子170と、焦準部150と、制御部180と、を備えている。制御部180は、1つ以上の制御回路を含んでいればよい。制御部180は、顕微鏡制御部110と光源制御部120とステージ制御部130と合焦制御部140を含んでもよく、さらに、それぞれが1つ以上の制御回路(制御回路111、制御回路121、制御回路131、制御回路141)を含んでもよい。
【0017】
光源101は、例えば、発光ダイオードである。ただし、光源101は、発光期間や発光強度を細かく制御できるものであればよく、発光ダイオードに特に限定されない。光源101は、光源制御部120からの入力に従って発光するように構成されている。
【0018】
対物レンズ104は、例えば、20倍対物レンズである。ただし、対物レンズ104は、ユーザが貼り合わせ画像に要求する解像度を実現可能な開口数を有していればよく、対物レンズ104の倍率は、20倍に限らない。対物レンズ104は、焦準部150の動作によって光軸方向へ移動する。
【0019】
ステージ103は、少なくとも対物レンズ104の光軸と直交するXY方向に移動するXYステージを含んでいる。ステージ103は、さらに、光軸方向へ移動するZステージを含んでもよい。ステージ103は、ステージ制御部130からの入力に従って移動するように構成されている。ステージ103は、例えば、図示しないステッピングモータとボールねじを含むアクチュエータを含んでもよく、例えば、オープンループ方式でアクチュエータが制御されることで、ステージ103の位置が制御されてもよい。
【0020】
2次元撮像素子170は、例えば、CMOSイメージセンサであり、ステージ103に置かれた標本Sの像を撮像する。2次元撮像素子170は、ローリングシャッターやグローバルシャッターなどの電子シャッターを有している。2次元撮像素子170は、顕微鏡制御部110からの制御信号に従って少なくとも露光開始のタイミングが制御されるように構成されている。
【0021】
より具体的には、2次元撮像素子170では、例えば、制御信号のパルス幅によって露光開始と露光終了のタイミングが制御されてもよく、又は、制御信号で特定された露光開始のタイミングから2次元撮像素子170に予め設定された時間経過後に露光が終了してもよい。即ち、顕微鏡制御部110は、2次元撮像素子170の露光期間を制御する露光制御を実行するように構成されている。
【0022】
焦準部150は、対物レンズ104とステージ103の間の距離を変更する焦準装置である。焦準部150は、合焦制御部140からの入力に従って対物レンズ104を光軸方向へ動かすように構成されている。合焦制御部140は、例えば、顕微鏡制御部110からリアルタイムAFの実行を指示されると、標本S上にフォーカスが合うように、例えば、所定のサンプリング周期で焦準部150を制御する合焦制御を実行するように構成されている。より具体的には、合焦制御部140は、後述する合焦ユニット160から出力された合焦評価情報に基づいて焦準部150を制御する。
【0023】
以上のように構成された顕微鏡システム1では、顕微鏡装置100は、撮像位置でステージ103を停止することなしに標本Sの像を撮像して対象範囲をスキャンする。つまり、ステージ103の光軸と直交する方向に対物レンズ104が移動している移動期間中に、制御部180に含まれる制御回路が2次元撮像素子170の露光期間を制御する露光制御を実行する。これにより、各撮像位置でステージ103を停止して標本Sの像を撮像する場合に比べて、スキャン開始から終了までのスキャンに要するリードタイムを短縮することができる。
【0024】
また、顕微鏡システム1では、顕微鏡装置100は、スキャン中にリアルタイムで自動焦点(オートフォーカス)を実行する。つまり、ステージ103の光軸と直交する方向に対物レンズ104が移動している移動期間中に、制御部180に含まれる制御回路が移動期間内で検出した合焦評価情報に基づいて焦準部150を制御する合焦制御を実行する。より詳細には、合焦評価情報が検出される合焦評価期間が所定のサンプリング周期で設定されることで、制御回路が所定のサンプリング周期で合焦制御を実行する。これにより、各撮像位置でのフォーカスずれを抑制することができるため、高画質なWSIの生成が可能となる。また、スキャン開始前に予めスキャン範囲内の合焦位置の情報(マップ情報)を求めて保持し、スキャン中に予め求めておいたスキャン範囲内の合焦位置の情報(マップ情報)を用いてフォーカシングを行う場合と比較すると、マップ情報をスキャン前に求める工程を省略することができる。このため、ユーザの負担軽減と作業時間の短縮を実現することができる。
【0025】
さらに、顕微鏡システム1では、顕微鏡装置100は、ステージ103の光軸と直交する方向に対物レンズ104が移動している移動期間中に、上述した合焦制御と露光制御に加えて、発光制御を実行する。具体的には、制御部180に含まれる制御回路が露光期間中と合焦評価情報を検出する合焦評価期間中とで異なる発光強度で光源101を発光させる発光制御を実行する。これにより、期間毎に異なる必要光量に合わせた発光制御が可能となるため、照明によって標本Sが受けるダメージを抑えることができる。また、露光期間外に2次元撮像素子170に入射した光に起因するノイズの影響も抑制することができる。
【0026】
従って、顕微鏡システム1によれば、画質とスループットを高いレベルで両立することが可能であり、高画質のWSIを短時間で得ることができる。
【0027】
図3は、顕微鏡システムで行われる処理のタイミングチャートの一例を示した図である。以下、図3を参照しながら、合焦制御と発光制御と露光制御とそれらの関係についてさらに詳細に説明する。
【0028】
まず、合焦制御に関しては、図3に示すように、ステージ103がスキャン開始位置から移動を開始して移動期間が始まると、制御部180は、移動期間の開始に合わせてリアルタイムAFを開始する。リアルタイムAF開始時には、対物レンズ104は焦準部150によってフォーカス基準位置に位置付けられている。
【0029】
リアルタイムAFが実行されている期間中、合焦制御部140は、所定のサンプリング周期で合焦ユニット160から出力される合焦評価情報に基づいて、焦準部150を制御する合焦制御を実行する。また、制御部180は、移動期間中、ステージ103が最後の撮像位置を通過すると、リアルタイムAFを終了する。リアルタイムAF終了後、焦準部150は、対物レンズ104を最終フォーカス位置で維持する。
【0030】
なお、所定のサンプリング周期は、後述する露光制御において制御される露光期間の長さ(露光時間)よりも十分に長い時間間隔であればよく、例えば、露光時間の10倍以上であることが望ましい。これにより、露光期間とサンプリング周期毎に発生する合焦評価期間とが時間的に重なってしまうことを容易に回避することができるため、露光期間中と合焦評価期間中で光源101の発光強度を異ならせる発光制御を実現することができる。換言すると、制御部180は、露光期間と重ならないように合焦評価期間を設定することが望ましい。
【0031】
ただし、ステージ103がある撮像位置から次の撮像位置へ移動中に少なくとも1回は合焦評価情報を検出してフォーカシングを行うことが望ましい。つまり、制御部180は、時間方向に隣り合う第1の露光期間と第2の露光期間の間に、少なくとも1回合焦評価期間を設定することが望ましい。これにより、撮像位置毎にフォーカシングが行われることになるため、フォーカスずれの抑制が期待できる。第1の露光期間と第2の露光期間の間に、少なくとも1回合焦評価期間が設けるためには、所定のサンプリング周期は、露光期間のインターバル、つまり、フレームレートに対応する周期(フレーム周期)よりも短いことが望ましい。
【0032】
フォーカスずれを十分に抑制するために撮像位置間で行われるべきサンプリング回数は、発生するフォーカスずれの大きさや焦準部150のフォーカス速度などに依存する。このため、これらを考慮したサンプリング回数、又は、サンプリング周期が設定されることが望ましく、制御部180は、設定されたサンプリング回数、又は、サンプリング周期でフォーカシングを行うことが望ましい。例えば、撮像位置間で30回のサンプリング、又は、1ms毎のサンプリングが行われてもよい。
【0033】
なお、サンプリング回数、又は、サンプリング周期は、フォーカス方式毎に設定されてもよく、後述する光路長差方式と像面位相差方式で異なる設定が採用されてもよい。例えば、光路長差方式では、30回のサンプリング、又は、1ms毎のサンプリングが行われるように設定される一方で、像面位相差方式では、光路長差方式よりも少ないサンプリング回数、又は、長いサンプリング周期が設定されてもよい。このような設定は、例えば、像面位相差方式が光路長差方式よりもより正確な測距が実現可能な場合に有効である。
【0034】
一方、発光制御と露光制御は、ステージ103の位置情報に基づいて実行される。ステージ103の位置情報は、例えば、ステージ制御部130からステージ103のステッピングモータへ出力されるパルス信号である。ただし、ステージ103の位置情報は、ステージの位置に換算可能なステージ103の移動開始からの経過時間の情報であってもよく、また、ステージ103に設けられたエンコーダからの出力信号であってもよい。図3には、ステージ103が各撮像位置に達すると、これらの位置情報に基づいて、撮像位置を示す撮像位置信号が出力される様子が示されている。
【0035】
撮像位置信号がONになると、制御部180は、撮像のために、光源101の発光強度を一時的に強くする。即ち、制御部180は、ステージ103の位置情報に基づいて、光源101の発光強度を、合焦評価期間中の発光強度(以降、第1の発光強度と記す。)よりも大きな発光強度(以降、第2の発光強度と記す。)に変更する。さらに、制御部180は、光源101が第2の発光強度で発光している期間内に、露光期間を設定する。より具体的には、制御部180は、光源101の発光強度が第2の発光強度に変更され、変更後の発光強度が安定した頃に露光期間を開始する。
【0036】
このように、ステージ103の位置情報に基づいて発光制御と露光制御を行うことで、撮像用に大きな強度で照明されている期間(撮像用照明期間)中に標本Sの像を撮像することができるため、明るいWSIを得ることができる。特に、発光強度が安定してから露光期間を開始することで露光期間中の照明状態が安定するため、撮像毎の照明状態の差を抑えることができる。これにより、画像領域全体にムラの少なくWSIを得ることができる。
【0037】
なお、露光期間の長さである露光時間が短すぎると、露光期間中に2次元撮像素子170に入射する光が少なくなりすぎて明るい像が得られないが、露光時間が長すぎると、露光期間中に実視野に対して標本Sが大きく移動することになるため、像ブレが生じてしまう。
【0038】
露光期間中の標本Sの像の移動量が画素ピッチに対して十分に小さければ像ブレの影響を小さく抑えることができる。このため、制御部180は、露光時間を露光期間中のステージ103の移動速度に基づいて設定することが望ましい。具体的には、制御部180は、露光時間を、露光期間中のステージ103の移動量がステージ103上に投影された2次元撮像素子170の像における1/3画素よりも小さくなるように、設定することが望ましい。これにより、像ブレの影響を実質的に排除することができる。露光時間は、例えば、5μs以下である。
【0039】
また、制御部180は、露光期間の終了に合わせて発光強度を第2の発光強度から第1の発光強度へ調光する。このとき、第1の発光強度は、第2の発光強度の、例えば、1/10以下であることが望ましい。これは、スキャン中にリアルタイムAFを行う場合、撮像素子では、露光期間終了後の読み出し転送期間中に入射した光がリークしてノイズになり得るためである。より具体的には、例えば、ライン毎に電荷が読み出される場合であれば、読み出し順が後のラインほどリークの影響が大きくなり、ライン間で色ムラなどが生じてしまう。この点については、露光期間の終了に合わせて発光強度を下げることで、読み出し転送期間中に2次元撮像素子170に入射した光に起因するノイズの影響を大幅に抑制することができる。特に、発光強度を1/10以下に抑えることで、ノイズの影響を1階調未満まで抑えることが可能となり、実質的な影響を排除することができる。
【0040】
また、制御部180は、露光時間を、ステージ103の移動速度と第2の発光強度とに基づいて設定することがより望ましい。ステージ103の移動速度に加えて第2の発光強度を考慮することで、露光時間が及ぼす像ブレへの影響に加えて像の明るさへの影響についても考慮することができる。このため、像ブレ抑制と像の明るさ確保を高いレベルでバランスした露光時間を設定することが可能となる。なお、第2の発光強度が強いほど短い露光時間で多くの露光量を稼ぐことができるため、像ブレ抑制と像の明るさ確保を両立することが容易になる。このため、第2の発光強度は、光源101の最大発光強度であることが望ましい。なお、露光時間を短くすることにも発光強度を高めることにもそれぞれ限界があるため、これらの両方を適切に調整することが望ましい。
【0041】
以下、顕微鏡システム1の更に望ましい設定について説明する。図4は、ステージの移動速度の時間変化の一例を示した図である。図4を参照しながら、ステージ103の移動範囲に関する望ましい設定を説明する。
【0042】
例えば、図2に示すように副走査方向に往復で標本Sをスキャンする場合、1ライン毎にステージ103の始動と停止が必要である。このようなスキャンでは、ステージ103は、1ライン毎に、画像化の対象範囲の外側から移動を開始して、その対象範囲内を通って、その対象範囲の外側まで移動することが望ましい。ステージ103の移動速度は、図4に示すように、一定の目標速度を目指して加速が開始されてから目標速度に安定するまでにある程度の時間を要する。この点を考慮して、ステージ103の移動開始位置は、ステージ103が少なくとも対象範囲を目標速度で等速移動するように、助走距離だけ対象範囲から離れた位置に決定されることが望ましい。これにより、所定のフレームレートで標本Sの像を空間的に等間隔に取得することができる。また、ステージ103の振動に起因する画質の劣化も抑制することができる。
【0043】
図5は、合焦評価情報の一例について説明するための図である。図6は、AF用のセンサの配置の一例について説明するための図である。図7は、AF用のセンサに含まれる前ピン用センサ領域と後ピン用センサ領域の配置について説明するための図である。図1及び図5から図7を参照しながら、合焦ユニット160に含まれるAF用のセンサ163の望ましい配置について説明する。
【0044】
合焦ユニット160は、所謂、前ピンセンサと後ピンセンサを用いて光路長差方式で合焦位置を検出するユニットであり、前ピンセンサと後ピンセンサのそれぞれで検出したコントラストの差分である差分コントラストを含む合焦評価情報を出力する。光路長差方式は、合焦位置が存在する向きを把握することが可能であり、対物レンズ104の位置(z位置)をどの向きに動かすべきか特定可能なため、素早くフォーカスを合わせることができるという点で、移動期間中に行われるリアルタイムAFでの使用に好適である。
【0045】
合焦ユニット160の構成について説明する。図1に示すように、合焦ユニット160は、集光レンズ161と、スプリッタ162と、センサ163と、合焦認識部164を備えている。合焦ユニット160は、スプリッタ105によって対物レンズ104と2次元撮像素子170の間の光路から分岐したオートフォーカス用の光路上に設けられている。
【0046】
なお、スプリッタ105は、対物レンズ104と2次元撮像素子170の間の光路上に配置された光路分割素子の一例である。スプリッタ105は、入射した光の少なくとも一部をセンサ163へ向かうオートフォーカス用の光路へ導けばよく、例えば、ハーフミラーであってもよい。
【0047】
集光レンズ161は、対物レンズ104と2次元撮像素子170の間に配置された結像レンズ106に相当するレンズであり、標本Sの像をオートフォーカス用の光路上に結像する。スプリッタ162は、集光レンズ161とセンサ163の間に配置されたハーフミラーであり、集光レンズ161を通過した光を2つに分割する。
【0048】
センサ163は、例えば、複数の画素が並んだアレイセンサである。スプリッタ162で分割された2つの光は、互いに標本Sから異なる光路長を経て、センサ163の異なる領域に入射する。より詳細には、センサ163の異なる2領域の一方が、対物レンズ104の前側焦点位置と光学的に共役な位置(つまり、合焦位置)よりも前側で一方の光を検出し、センサ163の異なる2領域の他方が、対物レンズ104の前側焦点位置と光学的に共役な位置よりも後側で他方の光を検出すればよい。即ち、センサ163は、対物レンズ104の前側焦点位置と光学的に共役な位置よりも前側にある第1の位置(前ピン位置)で光を検出する第1のセンサ(前ピンセンサ)と、対物レンズ104の前側焦点位置と光学的に共役な位置よりも後側にある第2の位置(後ピン位置)で光を検出する第2のセンサ(後ピンセンサ)を含んでいる。
【0049】
合焦認識部164は、センサ163からの出力信号に基づいて、合焦状態を検出するための合焦評価情報を生成する。具体的には、合焦認識部164は、図5に示すように、第1のセンサ(前ピンセンサ)と第2のセンサ(後ピンセンサ)のそれぞれからの出力信号に基づいてコントラストを算出し、算出したコントラストの差分である差分コントラストを含む合焦評価情報を合焦制御部140へ出力する。即ち、合焦評価情報は、第1のセンサから出力される第1の位置に対応する信号と第1のセンサから出力される第2の位置に対応する信号とに基づいて算出された情報(差分コントラスト)を含んでいる。
【0050】
合焦ユニット160を以上のように構成することで、合焦制御部140は、差分コントラストの符号(正負)によって合焦位置が存在する向きを特定することができる。このため、合焦制御部140は、差分コントラストの符号で対物レンズ104を動かす向きを決定し、さらに、差分コントラストの絶対値で対物レンズ104を動かす距離と速度を決定することができる。従って、高速なフォーカス合わせを実現することができる。
【0051】
センサ163は、特に限定しないが、例えば、一定方向に複数の画素が整列したラインセンサであってもよい。センサ163がラインセンサである場合、図6に示すように、センサ163が有する複数の画素Pが主走査方向(Y方向)に対応する方向(y方向)に整列するように、配置されることが望ましい。ラインセンサの画素Pの形状は、一般的に整列方向に短辺を有する矩形である。このため、図6に示すように配置することで、画素Pが移動方向(副走査方向)に長い形状を有することになるため、像ブレの影響を抑えることができる。これは1画素に投影される標本S上の領域に占める露光期間中に画素を跨って投影される領域の割合が小さくなるからである。
【0052】
また、図6に示すようにセンサ163を配置することで、図7に示すように、センサ163のy方向に離間した2つの領域(領域163aと領域163b)で2つの領域の間の距離だけ光路長の異なる光を検出することが可能となる。つまり、y方向を標本S上における光軸方向(Z方向)に対応する方向(z方向)としても利用することができる。その結果、図7に示すように、ラインセンサ単独で、上述した第1のセンサと第2のセンサの両方の役割を担うことが可能となる。
【0053】
なお、図6に示す実視野投影範囲20は、センサ163が配置される面上における実視野10が投影される領域を示している。主走査方向(Y方向)は、標本Sを走査する方向であって露光期間中のステージ103の移動方向(X方向。副走査方向ともいう)と直交する方向である。また、図7に示す領域163aは、前ピン用センサ領域を示し、領域163bは、後ピン用センサ領域を示している。
【0054】
図8及び図9は、それぞれAF用のセンサの配置の別の例について説明するための図である。合焦ユニット160は、センサ163の代わりに、図8に示すセンサ165及びセンサ166を含んでもよく、図9に示すセンサ167を含んでもよい。
【0055】
図6及び図7では、センサ163が光軸AXと交差するように配置される例を示したが、合焦ユニット160は、図8に示すように、光軸AXから逸れた位置に配置されたAF用のセンサ(センサ165、センサ166)を備えてもよい。センサ165は、第1のアレイセンサの一例であり、センサ166は、第2のアレイセンサの一例である。
【0056】
より詳細には、センサ165とセンサ166は、それぞれ副走査方向に対応する方向(x方向)に光軸AXから逸れた位置に配置されていて、さらに、光軸AXを挟んで光軸AXから等距離に配置されている。また、センサ165とセンサ166は、それぞれのセンサに含まれる複数の画素が主走査方向に対応する方向(y方向)に整列するように配置される点は、センサ163と同様である。なお、センサ165とセンサ166もセンサ163と同様にy方向に離間した2つの領域が前ピンセンサと後ピンセンサとして機能する。図8に示す領域165aと領域166aはそれぞれ前ピン用センサ領域を示している。
【0057】
合焦ユニット160は、ステージ103が副走査方向を正向きに移動している往路では、センサ166をAF用センサとして使用し、ステージ103が副走査方向を負向きに移動している復路では、センサ165をAF用センサとして使用する。これにより、合焦評価期間中にAF用センサに投影される像に対応する標本S上の領域が、合焦評価期間に対して時間方向に遅れた露光期間中に、実視野10の中心付近に位置することになる。このため、往復走査が行われる場合であっても、フォーカスがあった領域の像が実視野投影範囲20の中心付近に投影され、フォーカスずれの抑制されたWSIを得ることができる。
【0058】
一方、光軸AX上に配置されたセンサ163は、ステージ103が副走査方向へ移動する往路と復路のどちらで撮像が行われる場合でも、1つのセンサだけで、同じ条件でフォーカスを合わせることができる。
【0059】
また、図6及び図7では、センサ163に含まれる複数の画素がステージ103の移動方向に対応する方向に整列するように配置される例を示したが、合焦ユニット160は、図9に示すように、ステージ103の移動方向に対して傾いた方向に対応する方向に整列した複数の画素を有するラインセンサ(センサ167)を備えてもよい。センサを斜めに配置することで、ライン単位に標本Sを走査するラスタスキャンだけではなく、渦巻き状に標本Sを走査するトルネードスキャンでも、像ブレの影響を抑えることができる。
【0060】
<第2の実施形態>
図10は、本実施形態に係る顕微鏡システムの構成の一例を示した図である。図10に示す顕微鏡システム2は、第1の実施形態に係る顕微鏡システムの一例であり、顕微鏡システム1と同様に、WSI(Whole Slide Images)を生成するWhole Slide Imaging装置である。
【0061】
顕微鏡システム2は、顕微鏡装置100の代わりに顕微鏡装置300を備えている。顕微鏡装置300は、光路長差方式で合焦位置を検出する代わりに像面位相差方式で合焦位置を検出する点が顕微鏡装置100と異なる。顕微鏡装置300は、2次元撮像素子170及び合焦ユニット160の代わりに2次元撮像素子310を備えている。2次元撮像素子310は、像面位相差検出用画素320を有する撮像素子である。顕微鏡システム2では、合焦制御部140は、像面位相差検出用画素320らの出力信号に基づいて算出された情報を含む合焦評価情報に基づいて合焦制御を実行する。
【0062】
なお、像面位相差方式でも光路長差方式と同様に、合焦位置が存在する向きを把握することが可能であり、高速なフォーカス合わせを実現することができる。また、像面位相差検出用画素320を用いた位相差検出と、像面位相差検出用画素320以外の通常の画素を用いたコントラスト検出を組み合わせることで、高速かつ高精度なフォーカス合わせを行うことができる。
【0063】
顕微鏡システム2でも、制御部180は、図3に示すシーケンスで、合焦制御と露光制御と発光制御を実行する。これにより、顕微鏡システム2によっても、顕微鏡システム1と同様の効果を得ることができる。即ち、画質とスループットを高いレベルで両立することが可能であり、高画質のWSIを短時間で得ることができる。
【0064】
図11は、ステージの移動方向と像面位相差検出用画素を有効化する領域の関係の一例を示した図である。2次元撮像素子310内には、複数の像面位相差検出用画素320が散りばめられているが、制御部180は、これらの画素の中から合焦制御に使用する画素を、ステージ103の移動方向に応じて選択してもよい。具体的には、光軸AXに対してステージ103の進行方向の下流側に対応する2次元撮像素子310上の領域に配置された像面位相差検出用画素320を選択することが望ましい。即ち、合焦制御部140が合焦制御に用いる合焦評価情報は、ステージ103の移動方向に応じて複数の像面位相差検出用画素320の中から選択された像面位相差検出用画素320からの出力信号に基づいて算出された情報を含んでもよい。
【0065】
例えば、ステージ103がX方向(負向き)に移動している場合には、図11(a)に示すように、光軸AXに対してx方向のマイナス側の領域311に配置された像面位相差検出用画素320を選択することが望ましい。ステージ103がX方向(正向き)に移動している場合には、図11(b)に示すように、光軸AXに対してx方向のプラス側の領域312に配置された像面位相差検出用画素320を選択することが望ましい。ステージ103がY方向(負向き)に移動している場合には、図11(c)に示すように、光軸AXに対してy方向のマイナス側の領域313に配置された像面位相差検出用画素320を選択することが望ましい。ステージ103がY方向(正向き)に移動している場合には、図11(d)に示すように、光軸AXからy方向のプラス側の領域314に配置された像面位相差検出用画素320を選択することが望ましい。
【0066】
ステージ103の移動方向に応じて使用する2次元撮像素子310上の領域を変更することで、合焦評価期間に対して時間方向に遅れた露光期間中において、実視野10の中心付近の領域にフォーカスを合わせることができる。従って、フォーカスずれの抑制されたWSIを得ることができる。
【0067】
<第3の実施形態>
図12は、本実施形態に係る顕微鏡システムの構成の一例を示した図である。図12に示す顕微鏡システム3は、第3の実施形態に係る顕微鏡システムの一例であり、顕微鏡システム1と同様に、WSI(Whole Slide Images)を生成するWhole Slide Imaging装置である。
【0068】
顕微鏡システム3は、図12に示すように、顕微鏡装置400と顕微鏡制御装置500と画像処理装置200を含んでいる。顕微鏡システム3は、顕微鏡装置400から独立した顕微鏡制御装置500を含む点が、顕微鏡システム1とは異なっている。顕微鏡制御装置500は、図1に示す顕微鏡装置100の制御部180に相当する構成を顕微鏡装置100から独立させたものであり、顕微鏡装置400は、顕微鏡装置100から制御部180に相当する構成を除いたものである。
【0069】
顕微鏡システム3では、顕微鏡制御装置500が、図3に示すシーケンスで、合焦制御と露光制御と発光制御を実行する。これにより、顕微鏡システム3によっても、顕微鏡システム1と同様の効果を得ることができる。即ち、画質とスループットを高いレベルで両立することが可能であり、高画質のWSIを短時間で得ることができる。
【0070】
図13は、上述した顕微鏡装置100、顕微鏡装置300、及び顕微鏡制御装置500を実現するためのコンピュータ600のハードウェア構成を例示した図である。図13に示すハードウェア構成は、例えば、プロセッサ601、メモリ602、記憶装置603、読取装置604、通信インタフェース606、及び入出力インタフェース607を備える。なお、プロセッサ601、メモリ602、記憶装置603、読取装置604、通信インタフェース606、及び入出力インタフェース607は、例えば、バス608を介して互いに接続されている。
【0071】
プロセッサ601は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサ601は、記憶装置603に格納されているプログラムを読み出して実行することで、上述した顕微鏡制御部110、光源制御部120、ステージ制御部130、及び、合焦制御部140として動作する。
【0072】
メモリ602は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置603は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。
【0073】
読取装置604は、例えば、プロセッサ601の指示に従って記憶媒体605にアクセスする。記憶媒体605は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。
【0074】
通信インタフェース606は、例えば、プロセッサ601の指示に従って、他の装置と通信する。入出力インタフェース607は、例えば、入力装置および出力装置との間のインタフェースである。入力装置は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどのデバイスである。出力装置は、例えばディスプレイなどの表示装置、およびスピーカなどの音声装置である。
【0075】
プロセッサ601が実行するプログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータ600に提供される。
(1)記憶装置603に予めインストールされている。
(2)記憶媒体605により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0076】
なお、図13を参照して述べた顕微鏡装置、及び、顕微鏡制御装置を実現するためのコンピュータ600のハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の電気回路の一部または全部の機能がFPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)などによるハードウェアとして実装されてもよい。
【0077】
コンピュータの各種制御を行う構成の一例としては、例えば、モーターや光源などの電流制御と合焦制御などのハードウェアに近い部分は、マイコン(ファームウェア)で制御してもよい。また、タイミングの制御は、FPGAで制御してもよい。さらに、スライドガラスのスキャン範囲、スキャンした画像の貼り合わせとその管理、露光時間及び光源強度の決定は、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータで行われてもよい。
【0078】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の顕微鏡システム及び顕微鏡制御装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0079】
上述した実施形態では、焦準部150が対物レンズ104を光軸方向へ動かす例を示したが、焦準部150は、対物レンズ104とステージ103の間の距離を変更できればよく、顕微鏡装置100は、例えば、ステージ103に含まれるZステージを焦準部150として含んでもよい。また、焦準部150は、手動操作に対応してもよく、例えば、図示しないハンドルの操作に応じてステージ103を光軸方向へ動かしてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、顕微鏡装置が正立顕微鏡を含む例を示したが、顕微鏡装置は、正立顕微鏡に限らず倒立顕微鏡であってもよい。また、顕微鏡装置は、2次元撮像素子を含んでいればよく、観察法に関しては特に限定しない。顕微鏡装置は、明視野観察法、位相差観察法、微分干渉観察法、蛍光観察法などを行ってもよく、ライトシート顕微鏡法など観察方向と照明方向が異なる観察法が採用されてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、スキャン中に光源101が常時発光している例を示したが、光源101は適宜消灯してもよい。制御部180は、合焦評価期間と露光期間を避けて光源101を消灯してもよい。
【0082】
上述した実施形態では、スキャン中はリアルタイムAFを継続して、所定のサンプリング周期で合焦制御を実行する例を示したが、リアルタイムAFは適宜停止してもよい。制御部180は、露光期間中にリアルタイムAFを停止して、露光期間と合焦評価期間が重なることを積極的に防止してもよい。
【0083】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味し、さらに、“少なくともAに部分的に基づいて”をも意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよく、Aの一部に基づいてよい。
【符号の説明】
【0084】
1、2、3 顕微鏡システム
10 実視野
20 実視野投影範囲
100、300、400 顕微鏡装置
101 光源
102 照明光学系
103 ステージ
104 対物レンズ
105 スプリッタ
106 結像レンズ
110 顕微鏡制御部
111、121、131、141 制御回路
120 光源制御部
130 ステージ制御部
140 合焦制御部
150 焦準部
160 合焦ユニット
161 集光レンズ
162 スプリッタ
163、165、166、167 センサ
163a、163b、165a、166a、311-314 領域
164 合焦認識部
170、310 2次元撮像素子
180 制御部
200 画像処理装置
320 像面位相差検出用画素
500 顕微鏡制御装置
600 コンピュータ
601 プロセッサ
602 メモリ
603 記憶装置
604 読取装置
605 記憶媒体
606 通信インタフェース
607 入出力インタフェース
608 バス
AX 光軸
CG カバーガラス
P 画素
S 標本
SG スライドガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13