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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078804
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/22 20060101AFI20230531BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
H02K9/22 Z
H02K9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192087
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】平手 利昌
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 弘明
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP05
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR02
5H609RR63
(57)【要約】
【課題】冷却性能の低下を招くことなくフレーム本体の剛性を高め、重量の増大や大型化を招くことなく騒音の低減が図られる回転機を提供する。
【解決手段】本実施形態の回転機10は、フレーム本体11、および複数の冷却フィン13を備える。フレーム本体11は、筒状である。冷却フィン13は、前記フレーム本体11から径方向外側へ突出するとともに、前記フレーム本体11の軸方向へ伸びて設けられ、前記フレーム本体11の軸に対して傾斜し、前記フレーム本体11の外周側における空気の流れを案内する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフレーム本体と、
前記フレーム本体から径方向外側へ突出するとともに、前記フレーム本体の軸方向へ伸びて設けられ、前記フレーム本体の軸に対して傾斜し、前記フレーム本体の外周側における空気の流れを案内する複数の冷却フィンと、
を備える回転機。
【請求項2】
前記冷却フィンは、前記フレーム本体にらせん状に設けられている請求項1記載の回転機。
【請求項3】
前記冷却フィンは、前記フレーム本体の軸方向で2つ以上のフィン片に分割されている請求項1または2記載の回転機。
【請求項4】
前記フィン片は、前記フレーム本体の軸方向の位置ごとに、前記フレーム本体の軸に対する傾斜角度が異なる請求項3記載の回転機。
【請求項5】
前記フィン片は、前記フレーム本体の軸方向の位置ごとに、前記フレーム本体の周方向における枚数が異なる請求項3記載の回転機。
【請求項6】
前記フィン片は、前記フレーム本体の軸方向における中央部における枚数が、両端部よりも多い請求項5記載の回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるモータや発電機などの回転機は、運転時の冷却のためにフレーム本体にフィンを備えている。フィンは、フレーム本体から径方向外側へ突出し、送風機から送られた空気の流れを案内する。これにより、回転機は、フィンによって表面積を拡大し、冷却を促している。
従来の回転機は、冷却性能の確保のために、フレーム本体の軸方向へ板状に伸びるフィンを有している。この従来の回転機のフィンは、フレーム本体から放射状またはフレーム本体の軸と平行に設けられている。
【0003】
しかしながら、このような従来の回転機の場合、フィンは、送風機から送られる空気の整流に寄与するものの、フレーム本体の剛性の向上に寄与しない。そのため、フレーム本体の剛性を確保して回転機から発生する騒音を低減するには、フレーム本体の高剛性化が必要となり、重量の増大および大型化を招く。一方、フレーム本体の剛性を高めるために、フレーム本体の周方向へフィンや支柱を形成すると、空気の流れを阻害し、冷却性能の低下を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-332166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、冷却性能の低下を招くことなくフレーム本体の剛性を高め、重量の増大や大型化を招くことなく騒音の低減が図られる回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の回転機は、フレーム本体、および複数の冷却フィンを備える。フレーム本体は、筒状である。冷却フィンは、前記フレーム本体から径方向外側へ突出するとともに、前記フレーム本体の軸方向へ伸びて設けられ、前記フレーム本体の軸に対して傾斜し、前記フレーム本体の外周側における空気の流れを案内する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による回転機のフレーム本体および冷却フィンを示す概略斜視図
図2】回転機における共振周波数および電磁騒音の周波数と振動との関係を示す概略図
図3】フレーム本体の歪みによる変形を説明するための模式図
図4】第2実施形態による回転機のフレーム本体および冷却フィンを示す概略斜視図
図5】第3実施形態による回転機のフレーム本体および冷却フィンを示す概略斜視図
図6】第4実施形態による回転機のフレーム本体および冷却フィンを示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、回転機の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示す第1実施形態による回転機10は、例えば発電機やモータなどであり、フレーム本体11に加え、図示しない回転子などを備えている。フレーム本体11は、例えば鉄やアルミニウムなどの金属またはこれらの合金などで形成されている。フレーム本体11は、筒状に形成されている。これにより、フレーム本体11は、軸方向に貫く筒状の空間12に図示しない回転子を収容する。また、回転機10は、例えば外扇型とする場合、フレーム本体11の軸方向における延長線上に図示しない送風ファンを備えていてもよい。
【0009】
回転機10は、フレーム本体11に加え、複数の冷却フィン13を備えている。冷却フィン13は、フレーム本体11から径方向外側へ突出している。冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向の一端側から他端側へ伸びている。第1実施形態の場合、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜している。すなわち、冷却フィン13は、図1に示すようにフレーム本体11の軸Aに対して平行に伸びておらず、この軸Aに対して角度を形成している。これにより、第1実施形態の場合、冷却フィン13は、フレーム本体11において、らせん状に設けられている。また、第1実施形態では、隣り合う冷却フィン13は、間隔が一定に設定されている。つまり、隣り合う冷却フィン13は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜しつつ、互いに平行に設けられている。なお、隣り合う冷却フィン13の間の距離は、一定でなくてもよい。
【0010】
このように、第1実施形態では、回転機10は、フレーム本体11に、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜する複数の冷却フィン13を備えている。そのため、図示しない送風ファンから送られた空気は、冷却フィン13に案内されつつフレーム本体11の外周を流れる。冷却フィン13は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜しているものの、らせん状であることから、冷却のための空気の流れを妨げることなく案内する。これにより、回転機10の運転によって生じる熱は、フレーム本体11および冷却フィン13を通して、フレーム本体11の外周を流れる空気に放出される。第1実施形態のように軸Aに対して傾斜する冷却フィン13は、例えば3Dプリンタなどを用いることにより、フレーム本体11と一体かつ自由度が高く形成することができる。また、冷却フィン13は、例えば接着や溶接などによってフレーム本体11と接合することにより、軸Aに対して傾斜する形状とすることもできる。このように、軸Aに対して傾斜する冷却フィン13は、任意の製造方法によってフレーム本体11とともに形成される。
【0011】
次に、第1実施形態による回転機10から発生する騒音の軽減について説明する。
発電機やモータなどの回転機10の騒音は、フレーム本体11の振動特性に相関する。また、騒音は、人間の可聴域にあるときに感じられる。すなわち、騒音が可聴域である1kHz~5kHzの帯域にあるとき、人間は回転機10から発生する音を騒音と感じることになる。一方、一般的な回転機10は、図2に示すように3kHz(3,000Hz)以下の帯域において、構造に起因する複数の共振点を有している。フレーム本体11は、真円の筒状となることはなく、運転時に様々な力によってわずかな歪みが生じる。つまり、フレーム本体11は、図3(A)に示すようにいびつな楕円の筒状、図3(B)に示すような三角形の筒状に近い形状に歪んだ筒状、または図3(C)に示すような四角形の筒状に近い形状に歪んだ筒状などに変形する。フレーム本体11の楕円の筒状への変形は、2直径節モードと称される。また、フレーム本体11の三角形の筒状の変形は3直径節モード、同じく四角形の筒状の変形は4直径節モードと称される。
【0012】
例えば、フレーム本体11は、図3(A)に示すような楕円の筒状に変形した場合、共振周波数が図2の「M1」に示すように200Hz程度となる。同様に、フレーム本体11は、図3(B)に示すような三角形の筒状に変形した場合、共振周波数が図2の「M2」に示すように500Hz程度となる。さらに、フレーム本体11は、図3(C)に示すような四角形の筒状に変形した場合、共振周波数が図2の「M3」に示すように1000Hz程度となる。そのため、特に三角形の筒状に近い形状、または四角形の筒状に近い形状に変形した場合、共振周波数は人間の可聴域であるM2またはM3にあり、騒音が大きくなりやすい。
【0013】
一方、回転機10は、電磁振動による加振力に起因して電磁騒音が発生する。例えば、回転機10の電磁騒音の周波数は、図2の「X1」、「X2」および「X3」に示すように800~900Hz、1100~1200Hz、2300~2400Hz付近である。このフレーム本体11の共振周波数と電磁騒音の周波数とが近接すると、回転機10から発生する騒音は増大する。また、フレーム本体11の共振周波数と電磁騒音の周波数とが近接していなくても、互いの周波数を可能な限り遠ざけるいわゆる離調を図ることにより、回転機10から発生する騒音は低減することができる。つまり、回転機10から発生する騒音を低減するためには、フレーム本体11の共振周波数と電磁騒音の周波数とを離調することが望ましい。しかし、電磁騒音の周波数は、回転機10の仕様に基づく電気的な設計で決定されることから変更が困難である。そこで、第1実施形態では、フレーム本体11の共振周波数を制御することにより、共振周波数と電磁騒音の周波数との離調を図り、回転機10から発生する騒音の低減を図っている。
【0014】
第1実施形態では、フレーム本体11から突出する冷却フィン13の形状を変更することにより、フレーム本体11の共振周波数を決定する要因となるフレーム本体11の剛性を変更し、フレーム本体11の固有振動数を変更している。具体的には、フレーム本体11の共振周波数は、冷却フィン13の枚数、および冷却フィン13の角度を変更することにより変化する。冷却フィン13の角度とは、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜する冷却フィン13の取り付け角度である。第1実施形態のように、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜している。そのため、この軸Aに対する冷却フィン13の角度を変更することにより、筒状のフレーム本体11は、例えば図3に示すような歪みが生じにくくなる。つまり、第1実施形態のように冷却フィン13がフレーム本体11の軸Aに対して傾斜することにより、軸Aに垂直な方向に対する剛性が向上し、フレーム本体11の歪みによる変形は小さくなる。これにより、フレーム本体11の固有振動数が変化し、電磁騒音の周波数との離調が図られる。このような第1実施形態の場合、冷却フィン13の枚数および角度は、フレーム本体11に要求される剛性に基づいて任意に設定される。
【0015】
以上説明したように、第1実施形態では、フレーム本体11から突出する冷却フィン13は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜している。そのため、フレーム本体11は、軸Aに対して斜めに傾斜して取り付けられている冷却フィン13によって剛性が高められる。これにより、フレーム本体11は、変形が低減され、冷却フィン13の枚数および取り付け角度を調整することにより、固有振動数が変更される。その結果、回転機10の仕様として決定された電磁騒音の周波数に基づいて、冷却フィン13の枚数および取り付け角度を調整することにより、電磁騒音の周波数とフレーム本体11の共振周波数との離調が図られる。したがって、重量の増大や大型化を招くことなく騒音の低減を図ることができる。
【0016】
また、第1実施形態の場合、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜しているものの空気の流れを妨げない。つまり、フレーム本体11の周方向へ複数設けられている冷却フィン13は、相互に離れており、これらの間に空気が流れる通路を形成する。また、複数の冷却フィン13が相互の間を塞ぐこともない。したがって、冷却性能の低下を招くことなく、フレーム本体11の剛性を高め、騒音の軽減を図ることができる。
【0017】
(第2実施形態)
第2実施形態による回転機を図4に示す。
第2実施形態では、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向において2つ以上のフィン片21、22、23に分割されている。第2実施形態の場合、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向において3つのフィン片21、22、23に分割されている。そして、分割されたフィン片21、22、23は、フレーム本体11の軸方向における位置ごとにフレーム本体11の軸Aに対する傾斜角度が設定されている。
【0018】
第2実施形態の場合、冷却フィン13は、軸方向へフィン片21、フィン片22およびフィン片23に分割されている。これら3つに分割されたフィン片21、22、23のうち、フレーム本体11の軸方向において、両端部に位置する2つのフィン片21およびフィン片23は、中間部に位置する1つのフィン片22よりも、軸Aに対する傾斜角度が大きく設定されている。
【0019】
第2実施形態では、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向へ3つのフィン片21、22、23に分割されている。そして、分割されたフィン片21、22、23は、フレーム本体11の軸Aに対する傾斜角度がそれぞれ設定されている。これにより、フレーム本体11は、軸方向の位置によって剛性が異なる。そのため、フレーム本体11の固有振動数は、より精密に調整される。したがって、重量の増大や大型化を招くことなく騒音の低減を図ることができる。
【0020】
なお、第2実施形態では、フィン片21およびフィン片23の軸Aに対する傾斜角度を同一に設定する例について説明した。しかし、3つに分割したフィン片21、フィン片22およびフィン片23の軸Aに対する傾斜角度は、すべて同一でもよく、すべて異なっていてもよく、同じ角度と異なる角度とを組み合わせるなど、任意に設定することができる。また、冷却フィン13は、3つに限らず、フレーム本体11の軸方向へ2つまたは4つ以上に分割してもよい。
【0021】
(第3実施形態)
第3実施形態による回転機を図5に示す。
第3実施形態では、回転機10は、フレーム本体11の軸Aと平行に伸びる冷却フィン31と、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜する冷却フィン13とを備えている。
このように、回転機10は、フレーム本体11の軸Aに対して傾斜する冷却フィン13に加え、周方向の一部に従来のように軸Aと平行に伸びる冷却フィン31を設ける構成としてもよい。第3実施形態の場合も、他の実施形態と同様に、フレーム本体11の剛性は容易に調整される。これにより、フレーム本体11は、歪みや変形が低減され、固有振動数が変更される。したがって、重量の増大や大型化を招くことなく騒音の低減を図ることができる。
【0022】
(第4実施形態)
第4実施形態による回転機を図6に示す。
第4実施形態では、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向において2つ以上のフィン片41、42、43に分割されている。第4実施形態の場合、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向において3つのフィン片41、フィン片42およびフィン片43に分割されている。そして、分割されたフィン片41、42、43は、フレーム本体11の軸方向における位置ごとにフレーム本体11の周方向へ設けられる枚数が異なっている。
【0023】
第4実施形態の場合、冷却フィン13は、軸方向へフィン片41、フィン片42およびフィン片43に分割されている。これら3つに分割されたフィン片41、42、43のうち、フレーム本体11の軸方向において、両端部に位置する2つのフィン片41およびフィン片43は、中間部に位置する1つのフィン片42よりも、周方向における互いの間隔が大きく、枚数が少なく設定されている。これにより、フレーム本体11は、軸方向の中間部において、剛性がより大きく設定される。
【0024】
第4実施形態では、冷却フィン13は、フレーム本体11の軸方向へ3つのフィン片41、42、43に分割されている。そして、分割されたフィン片41、42、43は、フレーム本体11の周方向の枚数が異なっている。これにより、フレーム本体11は、軸方向の位置によって剛性が異なる。そのため、フレーム本体11の固有振動数は、より精密に調整することができ、卓越周波数の変更が容易となる。したがって、重量の増大や大型化を招くことなく騒音の低減を図ることができる。
【0025】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、上述の第1実施形態から第4実施形態は、回転機10に対して個別に適用するのではなく、回転機10に対して複数の実施形態を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
図面中、10は回転機、11はフレーム本体、13は冷却フィン、21、22、23、41、42、43はフィン片を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6