(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078813
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ガイドレール及び対象物移動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20230531BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20230531BHJP
E05F 15/665 20150101ALN20230531BHJP
【FI】
E05F11/48 C
E05F11/48 Z
B60J1/17 B
E05F15/665
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192104
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】川村 貴宏
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
3D127BB01
3D127CB05
3D127DF15
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、端部の浮き上がりを抑制できるガイドレールを提供する。
【解決手段】ガイドレールは、第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを有するガイドレールであって、前記第1端部に設けられ、ケーブルを案内するプーリーの回転軸が挿入される軸孔を有する軸挿入部と、前記軸孔の周囲において、少なくとも前記第2端部の側にある前記軸孔の半円部分を囲むように180°を超えて延伸し、前記プーリーが取付けられる側の面とは反対側に突出した第1補強部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを有するガイドレールであって、
前記第1端部に設けられ、ケーブルを案内するプーリーの回転軸が挿入される軸孔を有する軸挿入部と、
前記軸孔の周囲において、少なくとも前記第2端部の側にある前記軸孔の半円部分を囲むように180°を超えて延伸し、前記プーリーが取付けられる側の面とは反対側に突出した第1補強部と、
を備えるガイドレール。
【請求項2】
前記第1補強部の2つの端部は、前記ガイドレールの端に近づくほど平行になるよう設けられている、請求項1に記載のガイドレール。
【請求項3】
前記第2端部の側から前記第1端部に向かって直線状に延伸し、前記第1補強部と同じ側に突出した第2補強部を、さらに備え、
前記第2補強部は、前記ガイドレールの延伸方向と直交する方向において、前記第1補強部から離れた位置に設けられている、請求項1又は2に記載のガイドレール。
【請求項4】
前記第2補強部は、前記第1端部の側から前記第2端部の側に向かって形状が末広がりとなる部分を有する、請求項3に記載のガイドレール。
【請求項5】
移動対象物を移動させるキャリアプレートと、請求項1から4の何れか一項に記載のガイドレールとを備える対象物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレール及び対象物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤを巻き取ることにより、ワイヤに接続されたウインドガラスをガイドレールに沿って昇降させるウインドレギュレータが開示されている。ガイドレールの上端部には、ワイヤをガイドするプーリーがピンを用いて取り付けられている。また、このピンが挿入されるガイドレールの孔に隣接して、ガイドレールの上端部から下端部に向かって直線状に延伸する補強ビードが設けられている。補強ビードを設けることにより、軽量化のためにガイドレールの厚さを薄くした場合でも、ガイドレールの上端部の剛性が向上する。このため、ワイヤが巻き取られる際に、ワイヤの張力によってプーリーが設けられたガイドレールの上端部が浮き上がる(折れ曲がる)ことを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される従来技術では、直線状の補強ビードが利用されているため、ピンが挿入される孔の周囲のガイドレールの剛性は依然として低い。このため、ガイドレールの端部の浮き上がりをより一層抑制する上で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、端部の浮き上がりを抑制できるガイドレール及び対象物移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガイドレールは、第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを有するガイドレールであって、前記第1端部に設けられ、ケーブルを案内するプーリーの回転軸が挿入される軸孔を有する軸挿入部と、前記軸孔の周囲において、少なくとも前記第2端部の側にある前記軸孔の半円部分を囲むように180°を超えて延伸し、前記プーリーが取付けられる側の面とは反対側に突出した第1補強部と、を備える。
【0007】
本発明の対象物移動装置は、移動対象物を移動させるキャリアプレートと、上記のガイドレールとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端部の浮き上がりを抑制できるガイドレール及び対象物移動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る対象物移動装置100の正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る対象物移動装置100の正面図である。対象物移動装置100は、例えば車両のドアのインナーパネルに取付けられており、キャリアプレート1を移動させることにより、キャリアプレート1に取付けられる窓ガラスを移動させるウインドレギュレータ等に適用される。
【0011】
本実施の形態では、移動対象物は、キャリアプレート1に取付けられる窓ガラスとしている。適用例がウインドレギュレータの場合、キャリアプレート1の移動方向は、移動対象物である窓ガラスの昇降方向、すなわち上下方向である。
【0012】
対象物移動装置100は、キャリアプレート1、ガイドレール2、プーリー3、ケーブル4、駆動部5及びケーブルガイド6を備えている。
【0013】
(キャリアプレート1)
キャリアプレート1は、窓ガラスを保持しながら、ガイドレール2上で窓ガラスを昇降移動させる部材である。キャリアプレート1の構成の詳細は後述する。
【0014】
(ガイドレール2)
ガイドレール2は、窓ガラスの移動方向に延伸し、キャリアプレート1の昇降を案内する部材である。ガイドレール2の材料は、めっき鋼板、ステンレススチール、アルミニウム合金、合成樹脂などである。ガイドレール2の第1端部21aにはプーリー3が取付けられ、ガイドレール2の第1端部21aとは反対側の第2端部21bにはケーブルガイド6が取付けられている。
【0015】
(プーリー3)
プーリー3は、ケーブル4の移動方向を転換する方向転換部の一例である。プーリー3の材料は、例えば合成樹脂である。プーリー3は、ガイドレール2の軸孔23aに回転可能に取付けられている。
【0016】
(ケーブル4)
ケーブル4は、駆動部5により発生した駆動力をキャリアプレート1に伝達することで、キャリアプレート1を牽引する牽引部材である。ケーブル4は、金属素線、樹脂繊維素線などを撚り合わせた可撓性を有するケーブルである。ケーブル4は、2本のケーブル4a、4bにより構成される。
【0017】
ケーブル4aの一端は、キャリアプレート1に接続されている。ケーブル4aは、キャリアプレート1からプーリー3に向かって伸びて、さらにこのプーリー3を経由して、駆動部5にまで伸びている。そして、ケーブル4aの他端は駆動部5の内部に設けられているケーブルドラムに接続されている。
【0018】
ケーブル4bの一端もまたキャリアプレート1に接続されている。ケーブル4bは、キャリアプレート1からケーブルガイド6に向かって伸びて、ケーブル4bの他端はケーブルドラムに接続されている。以下ではケーブル4a及びケーブル4bを区別しない場合「ケーブル4」と称する。
【0019】
(ケーブルガイド6)
ケーブルガイド6は、ケーブル4の移動方向を転換する方向転換部材の一例である。ケーブルガイド6は、例えば、ケーブル4を掛け渡して移動方向を転換する半円形状の部材を有し、駆動部5から一定距離隔ててガイドレール2の下端部に配置されている。
【0020】
(駆動部5)
駆動部5は、ケーブル4の巻き取りと繰り出しを行うことによって、キャリアプレート1を移動させる駆動装置である。駆動部5は、ハウジングと、ハウジングの内側に収納されるケーブルドラムと、ハウジングに設けられているモータと、ギアなどで構成されモータの回転をケーブルドラムに伝達する伝達部とを備えている。
【0021】
モータが順方向に回転すると、モータの回転運動が伝達部を介してケーブルドラムに伝達されることにより、ケーブルドラムが順方向に回転する。この場合、ケーブル4aがケーブルドラムに巻き取られて、ケーブル4bがケーブルドラムから繰り出される。これによりキャリアプレート1が上昇する。
【0022】
一方、モータが逆方向に回転すると、ケーブルドラムが逆方向に回転するため、ケーブル4bがケーブルドラムに巻き取られて、ケーブル4aがケーブルドラムから繰り出される。これによりキャリアプレート1が下降する。
【0023】
ここで、車両の軽量化のためにガイドレール2の厚さが薄くなると、ガイドレール2の端部の剛性が低下するため、ガイドレール2の端部に設けられているプーリー3に案内されるケーブル4の引張力によって、ガイドレール2の端部がプーリー3が取り付けられた位置から折れ曲がる場合がある。このようにガイドレール2の端部が折れ曲がるとプーリー3からケーブル4が外れる可能性がある。
【0024】
この対策として本実施の形態に係るガイドレール2は、以下に示すような形状を有する第1補強部24などを備えている。
図2、
図3A及び
図3Bを参照してガイドレール2の構成例を具体的に説明する。
【0025】
(ガイドレール2の構成)
図2はガイドレール2の端部の拡大図である。
図2には、プーリー3が取付けられる側の第1面2aとは反対側の第2面2b側から見たガイドレール2が示されている。
図3Aは
図1のA-A線に沿った断面図、
図3Bは
図1のB-B線に沿った断面図である。ガイドレール2は、軸挿入部23、第1補強部24、及び第2補強部25を備えている。
【0026】
(軸挿入部23)
軸挿入部23は、第1端部21aに設けられ、ケーブル4を案内するプーリー3の回転軸31が挿入される軸孔23aを有する。軸孔23aは、第1端部21a付近に形成されており、第1面2aから第2面2bに貫通している。第1面2a側に配置されたプーリー3の回転軸31を、ガイドレール2の軸孔23aを介して、第2面2b側からガイドレール2にリベットやネジ等を用いて締結することにより、プーリー3はガイドレール2に回転可能に支持される。
【0027】
(第1補強部24)
第1補強部24は、軸孔23aの周囲の領域を補強するリブ、ビードなどの凸形状を有する部分である。第1補強部24は、軸孔23aの周囲に少なくとも180°以上延伸する凸形状を有する。具体的には、第1補強部24は、軸孔23aの周囲において、軸孔23aの第2端部21bの側にある半円部分を囲むように180°を超えて延伸し、第2面2bの側に突出している。また、第1補強部24の2つの端部24aは、ガイドレール2の第1端部21aに近づくほどガイドレール2の延伸方向に平行になるよう設けられている。
【0028】
このような形状の第1補強部24を設けることにより、軸孔23a周囲の領域が補強されるため、プーリー3に案内されるケーブル4の引張力によって軸孔23aに挿入される回転軸31に曲げモーメントが加わった場合でも、回転軸31が挿入されている軸孔23a周囲の領域の歪みが抑制される。
【0029】
これにより、軸孔23aの周囲の領域に第2補強部25のみ形成されている場合に比べて、ガイドレール2の端部の浮き上がりをより一層抑制することができる。また第1補強部24を設けることにより、ガイドレール2の剛性が向上するため、ガイドレール2の厚さをより薄くして軽量化を図ることも可能である。
【0030】
(第2補強部25)
第2補強部25は、第2端部21bの側から第1端部21aに向かって直線状に延伸し、第1補強部24と同じ側に突出するリブ、ビードなどである。第2補強部25は、ガイドレール2の延伸方向D1と直交する方向D2において、第1補強部24から離れた位置に設けられている。
【0031】
このような形状の第2補強部25を設けることにより、第1補強部24の周囲の空き領域が補強され、軸孔23a周囲の領域の歪みがより一層抑制される。
【0032】
第2補強部25は、第1端部21aの側から第2端部21bの側に向かって形状が末広がりとなる拡張部分25aを有する。拡張部分25aを設けることにより、ガイドレール2の表面の内、第1補強部24が形成されている領域付近では第2補強部25の幅が狭くなり、当該領域以外の部分では第2補強部25の幅が広くなる。このため、第1補強部24を設ける領域を確保しつつ、第1補強部24の第2端部21bの側にあるガイドレール2の広い部分を補強できる。
【0033】
以上に説明したように、本開示の実施の形態に係るガイドレール2は、第1補強部24を備えることにより、軸孔23aの周囲領域が補強される。このため、プーリー3に案内されるケーブル4の引張力によって軸孔23aに挿入される回転軸31に曲げモーメントが加わった場合でも、回転軸31が挿入されている軸孔23a周囲の領域の歪みが抑制される。これにより、第1補強部24に代えて直線形状の補強部が設けられている場合に比べて、ガイドレール2の端部の浮き上がりをより一層抑制することができる。また第1補強部24を設けることにより、ガイドレール2の剛性が向上するため、ガイドレール2の厚さをより薄くして軽量化を図ることも可能である。
【0034】
(1)本開示のガイドレールは、第1端部と前記第1端部とは反対側の第2端部とを有するガイドレールであって、前記第1端部に設けられ、ケーブルを案内するプーリーの回転軸が挿入される軸孔を有する軸挿入部と、前記軸孔の周囲において、少なくとも前記第2端部の側にある前記軸孔の半円部分を囲むように180°を超えて延伸し、前記プーリーが取付けられる側の面とは反対側に突出した第1補強部と、を備える。
【0035】
(2)前記第1補強部の2つの端部は、前記ガイドレールの端に近づくほど平行になるよう設けられている。
【0036】
(3)前記第2端部の側から前記第1端部に向かって直線状に延伸し、前記第1補強部と同じ側に突出した第2補強部を、さらに備え、前記第2補強部は、前記ガイドレールの延伸方向と直交する方向において、前記第1補強部から離れた位置に設けられている。
【0037】
(4)前記第2補強部は、前記第1端部の側から前記第2端部の側に向かって形状が末広がりとなる部分を有する。
【0038】
(5)本開示の対象物移動装置は、移動対象物を移動させるキャリアプレートと、上記のガイドレールとを備える。
【0039】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等などの意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るガイドレール及び対象物移動装置は、端部の浮き上がりを抑制できる構造として有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 キャリアプレート
2 ガイドレール
2a 第1面
2b 第2面
3 プーリー
4 ケーブル
4a ケーブル
4b ケーブル
5 駆動部
6 ケーブルガイド
21a 第1端部
21b 第2端部
23 軸挿入部
23a 軸孔
24 第1補強部
24a 端部
25 第2補強部
25a 拡張部分
31 回転軸
53 ケーブルドラム
100 対象物移動装置
D1 延伸方向
D2 直交する方向