IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078818
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230531BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192109
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 俊樹
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB13
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH07
5E316HH33
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB02
5E338BB13
5E338CC01
5E338CD02
5E338EE27
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】平坦性に優れた、微細配線を有する配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板は、第1導体層11と第1導体層11を覆う第1層間絶縁層13と第2導体層21と第1層間絶縁層13を貫通して第1導体層11と第2導体層21とを接続する第1ビア導体14とを有し、第1層間絶縁層13は、第1絶縁層101と第2絶縁層102とを含み、第1絶縁層101は、第2絶縁層102と対向する面側に部分的に形成されている配線部110を含み、配線部110は、第1絶縁層101に形成される溝101bを充填する埋込配線層を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体層と、
前記第1導体層を覆う第1層間絶縁層と、
前記第1層間絶縁層の上に形成されている第2導体層と、
前記第1層間絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する第1ビア導体と
を備える配線基板であって、
前記第1層間絶縁層は、その厚さ方向に積層された第1絶縁層と第2絶縁層とを含み、
前記第1絶縁層は、前記第1導体層の下面に接する面側と反対側の前記第2絶縁層と対向する面側に部分的に形成されている配線部を含み、
前記配線部は、前記第1絶縁層に形成される溝を充填する埋込配線層を含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記埋込配線層に含まれる配線の最も小さい線幅は、第1導体層および第2導体層に含まれる配線の最も小さい線幅より小さい。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記埋込配線層は、信号搬送用の配線を含んでいる。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1絶縁層は、前記第1導体層と前記埋込配線層とを接続する第2ビア導体を含み、
前記第2絶縁層は、前記第2導体層と前記埋込配線層とを接続する第3ビア導体を含んでいる。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記埋込配線層に含まれる配線のアスペクト比は、2.0以上、かつ、6.0以下であり、前記第1導体層および前記第2導体層に含まれる配線のアスペクト比は、1.0以上、かつ、2.0以下である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記埋込配線層において最も近接する配線同士の配線間距離は、第1導体層および第2導体層において最も近接する配線同士の配線間距離より小さい。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1層間絶縁層と前記第2導体層とにより構成される表面は、少なくとも1つの部品搭載領域を有する配線基板の部品搭載面である。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記配線部は、前記部品搭載領域と平面視で少なくとも部分的に重なっている。
【請求項9】
請求項7記載の配線基板であって、
前記第2導体層は、前記部品搭載領域内に配置される接続パッドを含み、
前記第2絶縁層は、前記第2導体層と前記埋込配線層とを接続する第3ビア導体を含み、前記埋込配線層は、前記第3ビア導体を介して前記接続パッドに接続されている。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1導体層は、第2層間絶縁層の上に形成されており、
前記第2層間絶縁層は、第3導体層の上に形成され、前記第3導体層と前記第1導体層とを接続する第4ビア導体を含み、
前記第1ビア導体の長さと前記第4ビア導体の長さとが略等しい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微細パターン層が上部面に形成されている絶縁層と微細パターン層よりも大きいパターンピッチを有する回路パターン層が上部面に形成されている絶縁層とを含む多層基板が開示されている。回路パターン層が上部面に形成されている絶縁層は、微細パターン層が上部面に形成されている絶縁層とは異なる、剛性が強い材料で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-131017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の多層基板では、回路パターン層が上部面に形成されている絶縁層は剛性が強い材料で形成し、微細パターン層が上部面に形成される絶縁層は、微細パターンの形成を可能にするためにその表面粗さが小さくなるような材料で形成されている。微細パターン層および微細パターン層が上部面に形成されている絶縁層の平坦性が十分でない場合がある。回路内の接続不良などの問題が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1導体層と、前記第1導体層を覆う第1層間絶縁層と、前記第1層間絶縁層の上に形成されている第2導体層と、前記第1層間絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する第1ビア導体とを有している。そして、前記第1層間絶縁層は、その厚さ方向に積層された第1絶縁層と第2絶縁層とを含み、前記第1絶縁層は、前記第1導体層の下面に接する面側と反対側の前記第2絶縁層と対向する面側に部分的に形成されている配線部を含み、前記配線部は、前記第1絶縁層に形成される溝を充填する埋込配線層を含んでいる。
【0006】
本発明の実施形態によれば、必要とされる部分のみに、絶縁層内に埋め込まれる形態を有する配線部を含む配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2A】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2B】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2C】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2D】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2E】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2F】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2G】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2H】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
図2I】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板の製造方法が図面を参照しながら説明される。なお、以下、参照される図面においては、各構成要素の正確な比率を示すことは意図されておらず、本発明の特徴が理解され易いように描かれている。図1には、一実施形態の配線基板が有し得る構造の一例として、配線基板1の断面図が示されている。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、絶縁層(コア絶縁層)2と、コア絶縁層2におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(第1面2Fおよび第2面2B)それぞれに形成されている2つの導体層(第3導体層31および第4導体層41)と、を含んでいる。コア絶縁層2、第3導体層31および第4導体層41によって配線基板1のコア基板10が構成されている。第3導体層31はコア絶縁層2の第1面2F上に形成されており、第4導体層41は第2面2B上に形成されている。コア絶縁層2は、コア絶縁層2を貫通し、第3導体層31と第4導体層41とを接続するスルーホール導体3を含んでいる。
【0010】
コア基板10の第1面2Fの上には、第1面2F側から順に、第2層間絶縁層23、第1導体層11、第1層間絶縁層13、第2導体層21が順に積層されている。一方、コア基板10の第2面2Bの上には、2つの層間絶縁層40それぞれと2つの導体層42それぞれとが交互に積層されている。図に示される例では、第1層間絶縁層13および第2導体層21で構成される表面が、配線基板1の第1面1Fを形成している。また、最も外側の層間絶縁層40および導体層42で構成される表面が、配線基板1の第2面1Bを形成している。
【0011】
なお、実施形態の説明では、配線基板1の厚さ方向においてコア絶縁層2から遠い側は「上側」若しくは「外側」、「上方」、または単に「上」とも称され、コア絶縁層2に近い側は「下側」若しくは「内側」、「下方」、または単に「下」とも称される。さらに、各導体層および各層間絶縁層において、コア絶縁層2と反対側を向く表面は「上面」とも称され、コア絶縁層2側を向く表面は「下面」とも称される。
【0012】
各層間絶縁層13、23および40には、各層間絶縁層を貫通し、各層間絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続する接続導体(ビア導体)が形成されている。第2層間絶縁層23には、第3導体層31と第1導体層11とを接続する第4ビア導体44が形成されている。第1層間絶縁層13には、第1導体層11と第2導体層21とを接続する第1ビア導体14が形成されている。本実施形態では、第1ビア導体14の長さと第4ビア導体44の長さとは略等しい。すなわち、第1層間絶縁層13の厚さと第2層間絶縁層23の厚さは略等しい。層間絶縁層40には、導体層42同士または第4導体層41と導体層42とを接続するビア導体43が形成されている。
【0013】
スルーホール導体3は、コア絶縁層2の貫通孔2a内に、貫通孔2aの内部を完全に埋めずに貫通孔2aの内壁上で所定の厚さを有するように形成されている。すなわち、スルーホール導体3は、スルーホール導体3をコア絶縁層2の厚さ方向に貫く空洞3aを有しており、全体として貫通孔2aの内壁に沿う筒状の形体を有している。スルーホール導体3は例えば、金属膜体で構成され得る。
【0014】
空洞3aは、好ましくは樹脂4によって略完全に埋められている。樹脂4の材料は、空洞3aを満たし得るものであれば特に限定されない。樹脂4は非導電性であっても導電性であってもよい。樹脂4は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、若しくはフェノール樹脂などの絶縁性樹脂、または、銀粒子などの導電性粒子とエポキシ樹脂などとを含む導電性ペースト若しくは導電性インクであり得る。樹脂4として、コア絶縁層2が有する熱膨張率と近い熱膨張率を有する樹脂などが選択されてもよい。コア絶縁層2内に生じる熱応力が軽減され得る場合がある。
【0015】
第1導体層11、第2導体層21、第3導体層31、第4導体層41および導体層42、ならびに、第1ビア導体14、第4ビア導体44、ビア導体43およびスルーホール導体3は、銅またはニッケルなどの任意の金属を用いて形成され得る。第1導体層11、第2導体層21、導体層42、第1ビア導体14、第4ビア導体44、およびビア導体43は、図1の例では2層構造を有しているが、単層構造または任意の層数の積層構造を有し得る。図1の例では、導体層11、21、42およびビア導体14、44、43それぞれは、例えば無電解めっきまたはスパッタリングなどによって形成される金属膜と、金属膜を給電層として用いる電解めっきによって金属膜上に形成されるめっき膜とを含んでいる。第1ビア導体14は第2導体層21と一体的に形成されている。第4ビア導体44は第1導体層11と一体的に形成されている。そして、ビア導体43は、導体層42と一体的に形成されている。
【0016】
図1の例では、スルーホール導体3は、第1めっき膜2eにより、貫通孔2aの内壁上に、内壁を覆うように形成されている。すなわち、第1めっき膜2eは、コア絶縁層2の厚さ方向を軸方向として有する筒状の形状で形成されている。第1めっき膜2eは、例えば、貫通孔2aの内壁上に形成されている無電解めっき膜と、無電解めっき膜を給電層として用いて、貫通孔2aにおいて無電解めっき膜の内側に無電解めっき膜を覆うように形成される電解めっき膜とで形成され得る。しかし、スルーホール導体3は、1以上の任意の数の層数のめっき膜で形成され得る。なお、図1では、第1めっき膜2eは、金属膜体として単層で示されている。
【0017】
第3導体層31および第4導体層41は、それぞれ、3層以下の層数を有する積層構造を有している。図1の例では、第3導体層31および第4導体層41それぞれが有する積層構造は、3層構造である。3層構造は、例えば、コア絶縁層2の第1面2F上および第2面2B上それぞれに積層された金属箔2c、金属箔2c上の第1めっき膜2e、および第1めっき膜2e上の第2めっき膜2fを含んでいる。第2めっき膜2fは、図1では、金属膜体として1層構造の単層で示されているが、第1めっき膜2eと同様に、無電解めっき膜と、無電解めっき膜を給電層として用いる電解めっきによって無電解めっき膜上に形成される電解めっき膜とで形成され得る。
【0018】
金属箔2cは、任意の金属で形成され得、例えば銅箔やニッケル箔などの箔体である。金属箔2cは、例えば、熱圧着によってコア絶縁層2に接合されている銅箔である。第1めっき膜2eおよび第2めっき膜2fは、例えば銅またはニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。第1めっき膜2eおよび第2めっき膜2fは、無電解めっき膜の代わりに、スパッタリングによって形成されるスパッタリング膜などの金属膜を含んでいてもよい。
【0019】
しかし、第3導体層31および第4導体層41は、3層構造の代わりに、例えば、金属箔2cと金属箔2c上に形成されている厚い第1めっき膜2eとを含む2層構造で形成されていてもよい。
【0020】
各導体層11、21、31、41、42は、それぞれ、任意の導体パターンを含み得る。図1の例では、第3導体層31および第4導体層41は、平面視でスルーホール導体3と重なる位置に設けられている導体パッド5を含んでいる。なお「平面視」は、実施形態の配線基板をその厚さ方向に沿う視線で見ることを意味している。
【0021】
すなわち、導体パッド5は、スルーホール導体3の所謂スルーホールパッドの機能を有している。導体パッド5は、また、平面視で貫通孔2aおよび空洞3aと重なる位置に設けられている。導体パッド5は、貫通孔2aおよび空洞3aを塞いでいる。したがって、導体パッド5は、スルーホール導体3の所謂蓋パッドでもある。貫通孔2aおよび空洞3aは、第3導体層31が有する導体パッド5と第4導体層41が有する導体パッド5とに挟まれている。このような蓋パッドである導体パッド5が設けられていると、図1に示されているように、配線基板1の第4ビア導体44やビア導体43がスルーホール導体3の直上に設けられ得る。
【0022】
本実施形態では、第1層間絶縁層13は、2層構造を有している。2層構造は、第2層間絶縁層23および第1導体層11上に積層されている第1絶縁層101と、第1絶縁層101の上の第2絶縁層102とを含んでいる。第1絶縁層101は、第2絶縁層102と対向する面側に部分的に形成されている配線部110を含んでいる。すなわち、配線部110は、第1絶縁層101の外側の表面から内側に向かって埋没する形態を有する埋込配線層として形成され、比較的微細なパターンに形成されている微細配線FWを有するように形成されている。なお、図1には、2つの層間絶縁層40のうち外側の層間絶縁層40が絶縁層401および絶縁層402で構成される2層構造を有している例が示されているが、層間絶縁層40は1層構造であってもよい。層間絶縁層40が2層構造である場合、導体層42同士を接続するビア導体43は、図1に示されているように、2層を同時に貫通するように形成される。
【0023】
コア絶縁層2、第2層間絶縁層23、層間絶縁層40、ならびに第1層間絶縁層13すなわち第1絶縁層101および第2絶縁層102は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)またはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が例示される。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO2)、アルミナ、またはムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含んでいてもよい。図1の例では、コア絶縁層2は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)2dを含んでいる。
【0024】
図1の例においては、配線部110は、金属膜層(無電解めっき膜層)111および電解めっき膜層112の2層構造で構成されている。第1絶縁層101に形成されている溝101bの内面が金属膜層111によって被覆されている。溝101b内における金属膜層111の内側が、電解めっき膜層112によって充填されている。
【0025】
微細配線FWは、その線幅および配線間距離が比較的小さい配線パターンに形成されている。例えば、微細配線FWにおいては、最も小さい線幅および配線間距離が0.5μm~3.0μm程度である。好ましくは、埋込配線層に含まれる微細配線FWの最も小さい線幅は、第1導体層11および第2導体層21に含まれる配線の最も小さい線幅より小さく形成されている。また、埋込配線層に含まれる微細配線FWは、最も近接する配線同士の配線間距離が、第1導体層11および第2導体層21において最も近接する配線同士の配線間距離より小さくなるように形成され得る。
【0026】
微細配線FWのアスペクト比は、第1導体層11および第2導体層21に含まれる配線のアスペクト比よりも大きい。例えば、微細配線FWのアスペクト比は、2.0以上、かつ、6.0以下とされ得る。一方、第1導体層11および第2導体層21に含まれる配線のアスペクト比は、1.0以上、かつ、2.0以下であり得る。
【0027】
配線部110の埋込配線層は、第2ビア導体24を介して第1導体層11と接続されている。すなわち、第1絶縁層101には、埋込配線層と第1導体層11とを接続する第2ビア導体24が形成されている。また、配線部110の埋込配線層は、第3ビア導体34を介して第2導体層21と接続されている。すなわち、第2絶縁層102には、埋込配線層と第2導体層21とを接続する第3ビア導体34が形成されている。
【0028】
第2導体層21の導体パターンは接続パッド21pを含んでいる。接続パッド21pは、配線基板1の使用時において配線基板1に実装される部品(図示せず)を載置し得るように形成されている。すなわち、接続パッド21pは外部の部品が配線基板1に搭載される際の接続部として使用される部品実装パッドであり、配線基板1の第1面1Fは部品が搭載され得る少なくとも1つの部品搭載領域Aを有する部品実装面であり得る。部品実装パッド(接続パッド)21pには、例えば、はんだなどの接合材(図示せず)を介して電子部品の電極が電気的および機械的に接続され得る。配線基板1に搭載され得る部品としては、例えば、半導体集積回路装置やトランジスタなどの能動部品のような電子部品が例示される。
【0029】
配線基板1の第2面1Bは、外部の配線基板、例えば任意の電気機器のマザーボードなどの外部要素に配線基板1自体が実装される場合に、外部要素に接続される接続面であり得る。また、第2面1Bは、第1面1Fと同様に、半導体集積回路装置のような電子部品が実装される部品実装面であってもよい。第2面1Bを構成する接続パッド42pは、これらに限定されない任意の基板、電気部品、または機構部品などと接続され得る。
【0030】
図1に示される例においては、配線部(埋込配線層)110は、第3ビア導体34を介して第2導体層21の部品実装パッド(接続パッド)21pに接続されている。配線部(埋込配線層)110は、配線基板1の部品実装面側のみに形成され得る。さらに、配線部(埋込配線層)110は、配線基板1の部品搭載領域Aの下方のみに、部分的に形成され得る。例えば、配線部(埋込配線層)110は、部品搭載領域Aと平面視で少なくとも部分的に重なるように形成され得る。すなわち、本実施形態では、第1絶縁層101の表面の全面ではなく、所定の領域にのみ埋込配線層が形成されている。埋込配線層が形成されていない領域においては、第1導体層11と第2導体層21とを接続する第1ビア導体14が、図1に示されるように、第1絶縁層101および第2絶縁層102の2層を貫通するように形成されている。所定の位置にのみ埋込配線層を形成することにより、微細配線FWを含む埋込配線層および第1絶縁層101の表面の平坦性が良好に保持され得る。微細配線FW間での短絡や埋込配線層と導体層の間の接続不良などの不良が引き起こされる虞がない。配線基板1の製造歩留まりが向上すると考えられる。
【0031】
第2ビア導体24および第3ビア導体34は、第1ビア導体14や第4ビア導体44、およびビア導体43と同様の材料および構造で形成され得る。すなわち、第2ビア導体24および第3ビア導体34は、銅またはニッケルなどの任意の金属を用いて形成されてよい。第2ビア導体24および第3ビア導体34は、例えば、それぞれ、無電解めっきまたはスパッタリングなどによって形成される金属膜と、金属膜を給電層として用いる電解めっきによって形成されるめっき膜とで形成されてよい。第2ビア導体24は配線部(埋込配線層)110と一体的に形成されている。第3ビア導体34は第2導体層21と一体的に形成されている。
【0032】
第2ビア導体24および第3ビア導体34それぞれのビア径は、第1ビア導体14、第4ビア導体44およびビア導体43のビア径よりも小さい。すなわち、第1層間絶縁層13は、少なくとも2種類の異なるビア径をもつビア導体を含んでいる。なお、ここで「ビア径」とは、各ビア導体のトップ径(ビア導体における、配線基板1の表面側の端面の直径)であり、該端面の外周に属する2点間の距離の内の最大の値を意味している。
【0033】
微細配線FWは信号搬送用の配線である場合があり、その信号は高周波信号であり得る。従って、配線部(埋込配線層)110が埋め込まれている第1絶縁層101は高周波特性に優れていることが好ましい。配線に接する絶縁層が、比較的高い値の誘電率、誘電正接を有する場合、配線で伝送される高周波信号の誘電損失(伝送損失)が比較的大きい。誘電損失は、信号の周波数が高ければ大きくなる傾向にあり、特に、マイクロ波、ミリ波領域の高周波信号が伝送される場合には、誘電損失が顕著になり得る。従って、配線部(埋込配線層)110が埋め込まれている第1絶縁層101は、比較的、誘電率および誘電正接の小さい材料が使用されることが好ましく、例えば、周波数1GHzにおける比誘電率が3.3以下、かつ、誘電正接が0.03以下であることが好ましい。
【0034】
上述の、絶縁層の比誘電率および誘電正接について、配線部(埋込配線層)110直上の第2絶縁層102も同様に周波数1GHzにおける比誘電率が3.3以下、かつ、誘電正接が0.03以下であることがさらに好ましい。配線部(埋込配線層)110が接する絶縁層が全て高周波特性に優れたものであることで、配線部(埋込配線層)110はさらに優れた信号伝送品質を有し得る。
【0035】
図2A図2Iを参照して、図1に示される配線基板1が製造される場合を例に、製造方法が説明される。なお、以下に説明される製造方法において形成される各構成要素は、特に異なる記載が無い限り、図1の配線基板1の説明において対応する構成要素の材料として例示された材料を用いて形成され得る。
【0036】
先ず、コア絶縁層2とコア絶縁層2の両面に積層されている金属箔2cとを備える基板(出発基板)が用意される。コア絶縁層2は、例えばエポキシ樹脂、BT樹脂、またはフェノール樹脂などの任意の絶縁性樹脂によって形成されている。図2Aに示されるように、コア絶縁層2は芯材2dを含んでいる。しかし、コア絶縁層2は芯材2dを含んでいなくてもよい。金属箔2cは、例えば銅やニッケルなどの任意の金属から形成されている。金属箔2cは、例えば熱圧着などの任意の方法でコア絶縁層2の両面それぞれに接合されている。例えば、出発基板として、両面銅張積層板が用意されてもよい。
【0037】
次いで、コア絶縁層2および金属箔2cを貫く貫通孔2aが形成される。貫通孔2aは、例えば、炭酸ガスレーザー光などのレーザー光を、コア絶縁層2の第1面2F側および/または第2面2B側から照射することによって形成され得る。貫通孔2aはまた、ドリル加工によって形成されてもよい。貫通孔2aは任意の形成方法を用いて形成されてよい。
【0038】
次いで、金属箔2cにおけるコア絶縁層2と反対側の表面の全面および貫通孔2aを向いて露出する端面、ならびに貫通孔2aの内壁に、第1めっき膜2eが形成される。第1めっき膜2eは、例えば、無電解めっき膜と電解めっき膜とで形成される。無電解めっきによって銅またはニッケルなどの任意の金属からなる無電解めっき膜が形成された後、この無電解めっき膜を給電層として用いる電解めっきによって、無電解めっき膜上に電解めっき膜が形成される。無電解めっき膜の代わりに、スパッタリングによって形成されるスパッタリング膜などの金属膜が形成されてもよい。第1めっき膜2eは、単層のめっき膜で形成されていてもよい。所望の厚さを有する第1めっき膜2eが形成される。
【0039】
金属箔2cの貫通孔2aに露出している端面上および貫通孔2aの内壁上への第1めっき膜2eの形成により、貫通孔2a内に、第1めっき膜2eによって構成されていて空洞3aを中央部に有するスルーホール導体3が形成される。コア絶縁層2の第1面2Fおよび第2面2B上には、それぞれ、金属箔2cおよび第1めっき膜2eが順に積層される。樹脂4が空洞3a内へ充填され、固化された後、コア絶縁層2の第1面2F側および第2面2B側の表面全面に第2めっき膜2fが形成される。第2めっき膜2fは、第1めっき膜2eと同様に、無電解めっき膜と電解めっき膜とで形成され得る。例えば、コア絶縁層2の第1面2F側および第2面2B側の表面全面に無電解めっき膜が形成され、この無電解めっき膜を給電層として用いて無電解めっき膜上に電解めっき膜が形成されて、これら2層で第2めっき膜2fが構成され得る。
【0040】
この結果、金属箔2cと第1めっき膜2eと第2めっき膜2fとから構成される第3導体層31および第4導体層41が、コア絶縁層2の第1面2F側および第2面2B側それぞれに形成される。サブトラクティブ法によって第3導体層31および第4導体層41をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板10が得られる。第3導体層31および第4導体層41は、貫通孔2aおよび空洞3aを塞ぐ導体パッド5を含んでいる。
【0041】
図2Bに示されるように、コア絶縁層2の第1面2F側に第2層間絶縁層23および第1導体層11が形成され、コア絶縁層2の第2面2B側に層間絶縁層40および導体層42が形成される。第2層間絶縁層23および層間絶縁層40の形成では、コア絶縁層2の第1面2Fおよび第3導体層31の上、ならびに、コア絶縁層2の第2面2Bおよび第4導体層41の上に、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が積層され、加熱および加圧される。その結果、第2層間絶縁層23および層間絶縁層40が形成される。第2層間絶縁層23には第4ビア導体44を形成するための貫通孔23aが、および、層間絶縁層40にはビア導体43を形成するための貫通孔40aが例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
【0042】
第1導体層11および導体層42は、それぞれ、例えばセミアディティブ法によって形成される。すなわち、第2層間絶縁層23および層間絶縁層40の表面、および貫通孔23a、40a内に無電解めっきやスパッタリングによって金属膜が形成される。その金属膜を給電層として用いる電解めっきを含むパターンめっきによってめっき膜が形成される。その後、金属膜の不要部分が例えばエッチングなどで除去される。その結果、所定の導体パターンを含む、第1導体層11および導体層42が形成される。貫通孔23a内には第4ビア導体44が形成され、貫通孔40a内にはビア導体43が形成される。
【0043】
次いで、図2Cに示されるように、図2Bを参照して説明された方法と同様の方法で、コア絶縁層2の第1面2F側に第1絶縁層101が形成され、コア絶縁層2の第2面2B側に絶縁層401が形成される。
【0044】
次いで、図2Dに示されるように、第1絶縁層101に、レーザー加工により貫通孔101aが形成される。貫通孔101aは第1絶縁層101を貫通する第2ビア導体24(図1参照)が形成されるべき位置に形成される。貫通孔101aの形成には、10μm程度の比較的長い波長の炭酸ガスレーザーが用いられ得る。また、比較的波長が短く、絶縁層の加工において比較的優れた直進性を有するエキシマレーザーなどを利用した加工によって、溝101bが形成される。しかし、貫通孔101aと溝101bとが一緒にエキシマレーザーによって形成されてもよい。溝101bは、第1絶縁層101に埋め込まれる埋込配線層の形態の配線部110が有するべき配線パターンに従って形成される。
【0045】
次いで、図2Eに示されるように、第1絶縁層101の上側の面全体(貫通孔101aの内部、溝101bの内部、および、第1絶縁層101の上面)を被覆するように金属膜層111が形成される。例えば、第1絶縁層101の上側の面全体に、無電解めっきまたはスパッタリングなどによって金属膜層111が形成される。金属膜層111は貫通孔101a、および、溝101bの内面、ならびに、第1絶縁層101の上面の全域を被覆する。
【0046】
次いで、図2Fに示されるように、この金属膜層111をシード層として電解めっきが施されて電解めっき膜層112が形成される。電解めっき膜層112は、貫通孔101a、溝101bの金属膜層111の内側を充填すると共に、第1絶縁層101の上面全域を覆っている。
【0047】
次いで、図2Gに示されるように、金属膜層111および電解めっき膜層112の、第1絶縁層101の上面より上の部分が研磨により除去される。第1絶縁層101の上面が露出した状態となり、微細配線FWを有する配線部110の、第2ビア導体24と一体化された形成が完了する。金属膜層111および電解めっき膜層112の研磨は、例えば化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により実施され得る。
【0048】
次いで、図2Hに示されるように、図2Bを参照して説明された方法と同様の方法で、コア絶縁層2の第1面2F側に第2絶縁層102が形成され、コア絶縁層2の第2面2B側に絶縁層402が形成される。
【0049】
その後、図2Iに示されるように、第3ビア導体34を形成するための貫通孔102aが第2絶縁層102に、および、第1ビア導体14を形成するための貫通孔13aが第2絶縁層102および第1絶縁層101を貫通して、すなわち第1層間絶縁層13に、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。また、ビア導体43を形成するための貫通孔40aが絶縁層402および絶縁層401を貫通して、すなわち層間絶縁層40に、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。次いで、図2Bを参照して説明された方法と同様の方法で、コア絶縁層2の第1面2F側で第2導体層21が第1ビア導体14および第3ビア導体34と一体的に形成され、コア絶縁層2の第2面2B側で導体層42がビア導体43と一体的に形成される。第2導体層21は、部品実装用の接続パッド21pを含む導体パターンに形成される。導体層42は、外部要素との接続用の接続パッド42pを含むパターンに形成される。以上の工程を経ることによって図1の例の配線基板1が完成する。
【0050】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、ならびに、本明細書において例示される構造、形状、および材料を備えるものに限定されない。例えば、微細配線を有する配線部は、配線基板を構成する導体層の内の任意の単数または複数の導体層に部分的に形成されていてもよい。配線基板は、コア基板の両面側において任意の層数の絶縁層および導体層を有し得る。また、配線基板の最外側の導体層および絶縁層の上にソルダーレジストが形成されていてもよい。配線基板の最外側の絶縁層上に露出する接続パッド21p、42pの表面には、保護膜(図示せず)が形成されてもよい。例えば、Ni/Au、Ni/Pd/Au、またはSnなどからなる保護膜がめっき法により形成され得る。有機材の吹き付けによりOSP膜が形成されてもよい。
【0051】
本実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されず、その条件や順序等は適宜変更されてよい。現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 配線基板
2 コア絶縁層
2a コア絶縁層の貫通孔
2c 金属箔
2e 第1めっき膜
2f 第2めっき膜
3 スルーホール導体
3a 空洞
4 樹脂
5 導体パッド
10 コア基板
11 第1導体層
13 第1層間絶縁層
14 第1ビア導体
21 第2導体層
21p 接続パッド
23 第2層間絶縁層
24 第2ビア導体
31 第3導体層
34 第3ビア導体
40 層間絶縁層
42 導体層
42p 接続パッド
43 ビア導体
44 第4ビア導体
101 第1絶縁層
102 第2絶縁層
110 配線部
A 部品搭載領域
FW 微細配線
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I