(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078821
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】錠部材
(51)【国際特許分類】
E05C 1/00 20060101AFI20230531BHJP
E05C 19/16 20060101ALI20230531BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
E05C1/00 B
E05C19/16 Z
E05B65/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192115
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000147442
【氏名又は名称】株式会社WEST inx
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】西 康雄
(72)【発明者】
【氏名】森本 敦
(57)【要約】
【課題】意図しない錠ボルトの突出に起因する問題の発生を抑制可能な錠部材を提供する。
【解決手段】錠ケースと錠ボルト11を有し、錠ケースに対して錠ボルト11の一部が出退する錠部材において、突出規制部材85を有するものとする。また、突出規制部材85が突出規制位置に配されることで、突出規制部材85によって錠ボルト11の突出が規制される規制状態となるものとし、突出規制部材85が非規制位置に配されることで、突出規制部材85が錠ボルト11の突出を規制しない非規制状態となるものとする。そして、突出規制部材85は、戸が移動する際の遠心力によって非規制位置から突出規制位置に移動するものとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸に取り付けて使用するものであり、錠ケースと錠ボルトを有し、前記錠ケースに対して前記錠ボルトの一部が出退する錠部材であって、
突出規制部材を有し、前記突出規制部材が突出規制位置に配されることで、前記突出規制部材によって前記錠ボルトの突出が規制される規制状態となるものであり、
前記突出規制部材が非規制位置に配されることで、前記突出規制部材が前記錠ボルトの突出を規制しない非規制状態となるものであり、
前記突出規制部材は、前記戸が移動する際の遠心力によって前記非規制位置から前記突出規制位置に移動することを特徴とする錠部材。
【請求項2】
前記突出規制部材が自重によって下方に移動することで前記突出規制位置から前記非規制位置へ移動し、前記規制状態から前記非規制状態に移行することを特徴とする請求項1に記載の錠部材。
【請求項3】
前記突出規制部材は、前記戸が移動する際の遠心力が一定以上である場合に、重力に逆らって上方に移動し、前記非規制位置から前記突出規制位置に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の錠部材。
【請求項4】
前記錠ボルトは、ボルト側溝部を有し、
前記錠ケース、又は、前記錠ケースに収容される他部材には、ケース側溝部が設けられ、
前記錠ボルトが退入した状態において、前記ボルト側溝部と前記ケース側溝部が一連の連結溝を形成するものであり、
前記突出規制位置は、前記連結溝内の前記ボルト側溝部と前記ケース側溝部の境界となる位置を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の錠部材。
【請求項5】
前記突出規制部材は、球体であり、
前記連結溝は、少なくとも一部が上方に向かって延びた溝であり、
前記突出規制部材が前記突出規制位置から前記非規制位置へと移動するとき、前記突出規制部材は、少なくとも一部が前記連結溝内に位置した状態で、前記連結溝に沿って移動することを特徴とする請求項4に記載の錠部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠部材に関するものであり、特に、磁力でラッチを移動させるマグネットラッチ構造において好適に採用可能な錠部材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸に取り付けられるラッチ錠と、戸枠に取り付けられるラッチ受けを有し、戸を開状態から閉状態に移行させてラッチ錠がラッチ受けに近づくと、磁力によってラッチ錠の錠ケースからラッチ(ラッチボルト)が突出するマグネットラッチ構造が広く知られている。
このようなマグネットラッチ構造では、ラッチ錠側と、ラッチ受け側の一方に永久磁石を設ける。例えば、ラッチ受け側に永久磁石を設けた場合、戸がラッチ受けに近づくことによってラッチが磁力で吸着されて突出し、施錠(空締り)される。つまり、ラッチ錠側とラッチ受け側の一方に永久磁石を設けると共に、この永久磁石に吸着される部分を他方に設け、磁力によってラッチを動作させる構造となっている。
このようなマグネットラッチ構造(マグネットラッチ)として、例えば、特許文献1に開示されたマグネットラッチ錠がある。
【0003】
特許文献1のマグネットラッチ錠においても、戸を閉じていくことでラッチボルトが錠箱から突出し、ストライク側(ラッチ受け側)の筐体に形成された開口部分から筐体内にラッチボルトの一部が入り込むことで、戸が施錠された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のマグネットラッチ構造でドアが勢いよく閉められた場合、ドアが戸当たり等に当たってバウンドしてしまう(跳ね返ってしまう)場合があった。すなわち、ドアが閉じ方向に勢いよく移動し、ドアが閉じた状態の際に配される位置まで移動した後、間を置かずにドアが勢いよく開き方向に移動してしまうことがあった。
【0006】
このような場合、従来のマグネットラッチ構造では、ラッチが想定とは異なる場所で突出してしまうという問題が生じてしまう。例えば、ストライク(ラッチ受け)には、ラッチがドアを閉じた際に収容される孔(以下、収容孔とも称す)が設けられているが、この収容孔よりもドアの閉じ方向で上流側となる位置でラッチが突出してしまうことがある。この場合、ラッチがストライクの金属板(化粧板)等の部材に当接してしまい、意図しない大きな音(騒音)が生じてしまう場合がある。
【0007】
そこで本発明は、意図しない錠ボルトの突出に起因する問題の発生を抑制可能な錠部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、戸に取り付けて使用するものであり、錠ケースと錠ボルトを有し、前記錠ケースに対して前記錠ボルトの一部が出退する錠部材であって、突出規制部材を有し、前記突出規制部材が突出規制位置に配されることで、前記突出規制部材によって前記錠ボルトの突出が規制される規制状態となるものであり、前記突出規制部材が非規制位置に配されることで、前記突出規制部材が前記錠ボルトの突出を規制しない非規制状態となるものであり、前記突出規制部材は、前記戸が移動する際の遠心力によって前記非規制位置から前記突出規制位置に移動することを特徴とする錠部材である。
【0009】
本様相の錠部材によると、戸が勢いよく閉められるとその遠心力によって突出規制部材が移動し、突出規制部材によって錠ボルトの突出が規制される。すなわち、戸が勢いよく閉められても錠ボルトが意図しない位置で突出しないので、この意図しない錠ボルトの突出に起因する問題の発生を抑制できる。
また、本様相の錠部材によると、戸の閉じ速度を検知するセンサ等を使用することなく、安価に製造可能な簡易な構造で、意図しない錠ボルトの突出に起因する問題の発生を抑制できる。
【0010】
上記した様相は、前記突出規制部材が自重によって下方に移動することで前記突出規制位置から前記非規制位置へ移動し、前記規制状態から前記非規制状態に移行することが好ましい。
【0011】
係る様相によると、簡易な構造で規制状態から非規制状態への自動での移行が可能となる。
【0012】
上記した様相は、前記突出規制部材は、前記戸が移動する際の遠心力が一定以上である場合に、重力に逆らって上方に移動し、前記非規制位置から前記突出規制位置に移動することが好ましい。
【0013】
係る様相によると、戸が一定以上の勢いで閉められた場合のみ、錠ボルトの突出が規制されるので、より適切な錠ボルトの突出の規制が可能となる。
【0014】
上記した様相は、前記錠ボルトは、ボルト側溝部を有し、前記錠ケース、又は、前記錠ケースに収容される他部材には、ケース側溝部が設けられ、前記錠ボルトが退入した状態において、前記ボルト側溝部と前記ケース側溝部が一連の連結溝を形成するものであり、前記突出規制位置は、前記連結溝内の前記ボルト側溝部と前記ケース側溝部の境界となる位置を含むことが好ましい。
【0015】
係る様相によると、簡単な構造で錠ボルトの突出を適切に規制できる。
【0016】
上記した好ましい様相は、前記突出規制部材は、球体であり、前記連結溝は、少なくとも一部が上方に向かって延びた溝であり、前記突出規制部材が前記突出規制位置から前記非規制位置へと移動するとき、前記突出規制部材は、少なくとも一部が前記連結溝内に位置した状態で、前記連結溝に沿って移動することがより好ましい。
なお、ここでいう「球体」とは、必ずしも完全な球体に限るものではなく、連結溝と係合しつつ移動する際に円滑に移動可能な程度に球体の形態をしていればよく、例えば、表面上の微細な凹凸を許容するものとする。
【0017】
係る様相によると、規制状態から非規制状態へ円滑に移行させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、意図しない錠ボルトの突出に起因する問題の発生を抑制可能な錠部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るラッチ錠をドアに取り付ける様子を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1のラッチ錠を示す斜視図であり、錠ケースのケース本体から蓋部材を外した状態を示す。
【
図3】
図2のケース本体及びケース本体に収容された部材を示す正面図であり、規制部材が非規制位置に配されている状態を示す図であって、一部を拡大して示す。
【
図6】
図3のラッチボルトを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図である。
【
図7】
図1のラッチ錠を取り付けたドアを勢いよく閉めた際に規制部材が移動していく様子を示す説明図であり、上図はラッチ錠を取り付けたドアを示す図であり、下図はラッチ錠内部の規制部材周辺を示す図であって、(a)~(c)の順にドアと規制部材が移動する。
【
図8】
図2のケース本体及びケース本体に収容された部材を示す正面図であり、規制部材が規制位置に配されている状態を示す図であって、一部を拡大して示す。
【
図9】
図1とは異なる実施形態に係るラッチ錠を示す正面図であり、ケース本体から蓋体を外した状態を示す。
【
図10】
図9のケース本体及びラッチボルトをA-A面で切断した状態を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図9で示すラッチ錠を取り付けたドアを勢いよく閉めた際に規制部材が移動していく様子を示す説明図であり、(a)~(c)の順に規制部材が移動する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るラッチ錠1(錠部材)について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、前後方向、上下方向、左右方向については、
図3の状態を基準として説明する。すなわち、ラッチ錠1の幅方向を前後方向とし、ラッチボルト11の突出方向を左右方向において左方へ向かう方向とする。
【0021】
本実施形態のラッチ錠1は、
図1で示されるように、ドア2(扉部材であり、戸)に取り付けて使用する。
【0022】
ドア2は、ラッチ錠1が収容される取付用孔2aを有している。この取付用孔2aは、ドア2の端面に開口を有し、厚さ方向と直交する方向に窪んだ孔である。
また、ドア2は、厚さ方向の一方側と他方側にそれぞれハンドル取付用孔2bと操作片取付用孔2cを有する(いずれも他方側については図示しない)。これらはいずれも、ドアの主面に開口を有し、外部と取付用孔2aの内部を連通する孔である。
【0023】
ラッチ錠1を取り付ける際には、ドア2に形成された取付用孔2aにラッチ錠1を収容し、ねじ等の締結要素によってラッチ錠1をドア2に固定する
なお、ここでいう「締結要素」は、ネジ、釘、ボルト、ピン等の上位概念であり、被締結物を原則的に破壊せずに締結解除可能な機械構成要素である。
【0024】
そして、ドア2の厚さ方向の両側に対となるハンドル200,201を取り付ける。このとき、一対ハンドル200,201を連結するハンドル軸202(本実施形態では角芯)とラッチ錠1のハブ部材12(詳しくは後述する)を係合させる。詳細には、ラッチ錠1が取付用孔2aに収容された状態で、ハンドル軸202をハンドル取付用孔2bに挿通する。このことにより、ハンドル軸202は、ドア2の厚さ方向における片側主面の外側から、取付用孔2aの内部を経て、ドア2の厚さ方向における他方側主面の外側まで延びた状態となる。そして、ハンドル軸202は、一部が取付用孔2aの内部でハブ部材12のハンドル挿入孔75に挿入された状態となる。このため、ハンドル200,201を操作するとハブ部材12が動作する。
【0025】
また、ドア2の厚さ方向の両側に対となる操作片部材210,211を取り付ける。このとき、操作片部材210,211の一部を操作片取付用孔2cから取付用孔2aの内部に挿通し、施錠部材15と係合させる。このことにより、操作片部材210,211を操作すると施錠部材15が動作する。
【0026】
本実施形態のラッチ錠1は、図示しないラッチ受け部材(ストライク)と共にマグネットラッチを形成する。すなわち、ラッチ錠1とラッチ受け部材の一方(本実施形態ではラッチ受け部材)に磁石部材を設け、ドア2が開状態から閉状態に移行する等により、ラッチ錠1とラッチ受け部材が近づくと、磁力によってラッチボルト11が移動(突出)する。なお、本実施形態ではラッチ受け部材に永久磁石を設けたが、ラッチボルト11が永久磁石を有する構造としてもよい。
【0027】
ラッチ錠1は、
図2、
図3で示されるように、錠ケース10の内部にラッチボルト11(錠ボルト)、ハブ部材12、第一付勢部材13、第二付勢部材14、施錠部材15を収容したものである。また、ラッチ錠1は化粧板部材16を有する。
【0028】
錠ケース10は、
図2で示されるように、ケース本体部20と蓋部材21を有する。
ケース本体部20は、
図4、
図5で示されるように、上壁部30、下壁部31、左側壁部32、右側壁部33、底壁形成部34を有しており、正面となる錠ケース10の幅方向の一方側が解放された箱状部材である。すなわち、ケース本体部20は、六方(六面)のうちの五方(五面)を仕切る壁部分を有しており、残りの一方(一面)が開放された構造を有する。そして、ケース本体部20は、これら五方を仕切る壁部分(上壁部30、下壁部31、左側壁部32、右側壁部33、底壁形成部34)で囲まれた収容空間35を有する。
【0029】
上壁部30、下壁部31は、それぞれケース本体部20の上方及び下方を仕切る壁部分であり、それぞれ天面と下面を形成する部分である。すなわち、上壁部30は、天面形成部でもあり、下壁部31は、下面形成部でもある。
左側壁部32は、錠ケース10をドア2に取り付けた状態で最も外側に位置する側面部分を形成する。すなわち、外側の側面を形成する外側側面部でもある。右側壁部33は、錠ケース10をドア2に取り付けた状態で最も奥側に位置する側面部分を形成する。すなわち、奥側の側面を形成する奥側側面部でもある。左側壁部32と右側壁部33は、左右方向(ラッチボルト11の移動方向)で離間対向しており、左側壁部32が右側壁部33よりも上下方向の長さが長い。
【0030】
つまり、左側壁部32は、
図4で示されるように、右側壁部33、上壁部30よりも上方側に位置する部分と、右側壁部33、下壁部31よりも下方側に位置する部分を有している。そして、これらのそれぞれに取付用孔32aが設けられている。取付用孔32aは、左側壁部32を厚さ方向に貫通する孔である。
この左側壁部32は、ラッチ錠1をドア2に固定する際に固定部材として機能する(
図1参照)。すなわち、2つの取付用孔32aは、ドア2に当接した状態で締結要素が挿通される孔である(
図1参照)。
また、左側壁部32には、外部と収容空間35を連通するラッチ挿通孔32bが形成されている。具体的には、左側壁部32は、外側主面(左側主面)から外側に突出する突起部分であり、環状(四角環状)に連続する突起部32cを有している。そして、ラッチ挿通孔32bは、この突起部32cの内側と左側壁部32の本体部分に形成された貫通孔が連続して形成されている。このラッチ挿通孔32bは、ラッチボルト11が出退動作をするときに、ラッチボルト11の一部が内側を通過する孔である。
【0031】
底壁形成部34は、収容空間35の底部分を形成する壁部分であり、ケース本体部20と蓋部材21が装着されたとき(
図1等参照)、蓋部材21と対向する側面部分を形成する。すなわち、蓋部材21は、錠ケース10の幅方向の一方側の側面部を形成する幅方向片側側面部でもあり、底壁形成部34は、他方側の側面部を形成する幅方向他方側側面部でもある。
【0032】
ここで、本実施形態のケース本体部20は、
図4、
図5で示されるように、収容空間35内に第一塊状部45と、第二塊状部46と、立壁部47を有している。
第一塊状部45、第二塊状部46は、いずれも概形が略直方体状の部分であり、詳細な図示を省略するが、適宜肉抜きされた状態となっている。
【0033】
第一塊状部45は、上壁部30、左側壁部32、底壁形成部34と一体に形成されており、ケース本体部20の強度を向上させるためのリブ部(補強部)としても機能する。
第二塊状部46は、下壁部31、左側壁部32、底壁形成部34と一体に形成されており、ケース本体部20の強度を向上させるためのリブ部(補強部)としても機能する。
【0034】
第一塊状部45、第二塊状部46は上下方向に離れた位置にそれぞれ設けられている。そして、
図3等で示されるように、第一塊状部45と第二塊状部46の間にラッチボルト11の一部が配される。したがって、ラッチボルト11が出退動作をする際、ラッチボルト11の一部は、第一塊状部45と第二塊状部46の間で移動する。
【0035】
ここで、第一塊状部45の下側部分には、ケース側溝部50が形成されている。
詳細には、ケース側溝部50は、第一塊状部45の下側面(下面)から上方に窪んだ溝部分であり、本実施形態では、正面視した形状が略半円形で前後方向に延びている。言い換えると、本実施形態のケース側溝部50は、長さの短い溝であり、窪み部分であるともいえる。
【0036】
立壁部47は、底壁形成部34から前方に突出する略四角形板状の立板状部分を有する。この立壁部47は、
図3等で示されるように、第二付勢部材14の一端が当接する部分である。
【0037】
ラッチボルト11は、
図6で示されるように、突出方向で先端側(左側)に位置する先端側部60と、基端側(右側)に位置する基端側部61を有しており、これらが一体となって形成されている。
【0038】
先端側部60は、外形が略直方体状で左右方向に延びる先端側部本体60aと、上側突起部65と、下側突起部66を有する。
上側突起部65は、先端側部本体60aの基端側の上側部分に形成され、上方に向かって突出する略直方体状の部分である。このため、先端側部60では、先端側の上面と基端側の上面が段差を介して連続しており、先端側の上面よりも基端側の上面が上方に位置する。そして、先端側部60では、基端側の部分が先端側に比べて上下方向に長くなる。
【0039】
下側突起部66は、先端側部本体60aの基端側の下側部分に形成され、下方に向かって突出する略直方体状の突起であり、前後方向(ラッチボルト11の幅方向)で離れた位置に一つずつ形成されている(一方については図示しない)。
【0040】
基端側部61は、基端側部本体61aと、基端側係合部67を有している。
基端側部本体61aは、大部分が先端側部60よりも細く(ラッチボルトの幅方向における長さが短く)形成された部分であり、略直方体状で左右方向に延びている。なお、基端側の一部は、先端側に比べて上下方向の長さが短くなっている。
基端側係合部67は、基端側部本体61aの基端側端部周辺(右端周辺)に形成され、前後方向のそれぞれに張り出した張出部分を有する。この基端側係合部67は、ハブ部材12(
図3等参照)と係合する部分である。
【0041】
また、本実施形態のラッチボルト11には、
図6(a)等で示されるように、バネ配置部70と、ボルト側溝部71(規制部材配置部)が設けられている。
【0042】
バネ配置部70は、先端側部60の基端側部分に設けられており、開口形状が略横長長方形状で、ラッチボルト11を前後方向に貫通する貫通孔である。このバネ配置部70は、
図3等で示されるように、立壁部47と第二付勢部材14が配される部分である。つまり、ラッチボルト11は、内部に付勢部材を配置する付勢部材配置部を有する。
本実施形態では、バネ配置部70の内周面の一部が基端側部61の左端面(先端側の面)によって形成されている。
【0043】
ボルト側溝部71は、バネ配置部70の上側であり、先端側部本体60aと上側突起部65に跨って形成される溝であり、前方と上方に開口を有した溝である。また、ラッチボルト11の前端から後方に向かって窪んだ部分でもある。
ボルト側溝部71は、
図6(b)で示されるように、正面視において、右端側が丸みを帯びた形状となっている。言い換えると、ラッチボルト11の突出方向と交わる方向(直交する方向)を視線方向とした平面視で、ラッチボルト11の突出方向において基端側となる部分が丸みを帯びた形状となっている。
【0044】
そして、ボルト側溝部71は、同正面視で左側(ラッチボルト11の突出方向で先端側)に向かうにつれて、徐々に上方に向かって延びる溝部分となる。すなわち、ラッチボルト11の突出方向に沿う方向(左右方向)の成分と、ラッチボルト11の突出方向と交わる方向(上下方向)の成分を持つ方向に延びている。
ここで、ボルト側溝部71は、同正面視において、右側に位置する略半球状の基端側半球部71aと、左側に位置して左方上側に湾曲しつつ延びる先端側延設部71bを有する。そして、先端側延設部71bは、円弧状の軌跡を描きつつ延びている。
したがって、このボルト側溝部71の内側面には、その左側下方に、左側に向かうにつれて徐々に上方に向かう湾曲面部73を有する。また、ボルト側溝部71の上側開口は、
図6(c)で示されるように、略四角形状の開口となっている。
【0045】
ハブ部材12は、
図1、
図3等で示されるように、ハンドル200,201から受ける回転力をラッチボルト11の出退(出没)の駆動力に変換する部材である。すなわち、ハンドル200,201からの動力をラッチボルト11に伝達する動力伝達部材として機能する。つまり、ドア2が閉状態であり、施錠部材15によってラッチボルト11の移動が規制されていない状態でハブ部材12が動作すると、ラッチボルト11が出退する。
【0046】
ハブ部材12は、
図3で示されるように、ハブ本体部12aと、ハブ側係合部12bと、ハブ側受部12cを有する。
ハブ本体部12aは、略円柱状となる部分であり、その中央にハンドル挿入孔75が設けられている。
ハブ側係合部12bは、ラッチボルト11と係合可能な2つの腕部76(一方については図示しない)を備えている。この2つの腕部76は、ハンドル挿入孔75から離れる方向にハブ本体部12aから張り出した張り出し片であり、前後方向に間隔を空けて離間している。すなわち、2つの腕部76の間にラッチボルト11の一部(基端側部61)が挿通されることで、ハブ部材12とラッチボルト11が係合する。
ハブ側受部12cは、第一付勢部材13の長手方向の片側端部を収容可能な上方に窪んだ溝部(図示しない)と、右側に位置する被押圧板部77を有する。この被押圧板部77は、第一付勢部材13の端部と接触し、第一付勢部材13によって右方に押圧される部分である。
【0047】
第一付勢部材13は、
図3で示されるように、ハブ部材12(被押圧板部77)を常時右側に付勢する部材であり、本実施形態では、コイルバネを採用している。この第一付勢部材13は、長手方向の一端側が第二塊状部46と接触し、且つ、他端側がハブ部材12(被押圧板部77)と接触した状態で配される。
【0048】
第二付勢部材14は、
図3で示されるように、ラッチボルト11を常時右側(退入方向)に付勢する部材であり、本実施形態では、コイルバネを採用している。この第二付勢部材14は、長手方向の一端側が立壁部47と接触し、且つ、他端側がラッチボルト11と接触した状態で配される。
【0049】
施錠部材15は、
図3で示されるように、姿勢保持部材15aと、鍵受部材15bと、介在部材15cを有する。
【0050】
姿勢保持部材15aは、鍵受部材15bの姿勢を一定の姿勢に保持する部材であり、本実施形態ではトーションばねを採用している。
【0051】
鍵受部材15bは、操作片部材210,211(
図1参照)の一部が挿入される操作片挿入孔80を有する。すなわち、操作片部材210,211の一部が操作片挿入孔80に挿入されることで、操作片部材210,211と鍵受部材15bが互いに係合した状態となる。この状態で使用者が操作片部材210,211を操作すると、操作片部材210,211の回転動作に伴って介在部材15cに回転力が伝達される。すなわち、鍵受部材15bは、操作片部材210,211から受ける回転力を介在部材15cの駆動力に変換する部材である。
【0052】
すなわち、ラッチボルト11が突出した突出状態で、操作片部材210,211を操作すると、介在部材15cが下方に移動する。そして、ラッチボルト11の右端部分(退入方向における端部)と、錠ケース10の右側壁部33の間に介在部材15cが入り込むことで、ラッチボルト11が退入できない施錠状態となる。つまり、本実施形態のラッチボルト11は、操作片部材210,211が操作される(施錠部材15が動作する)ことで、デッドボルトとしても機能する。言い換えると、本実施形態のボルト部材(錠ボルト)は、ラッチボルトの機能に加え、デッドボルトの機能を有する。
【0053】
化粧板部材16は、
図1で示されるように、金属製の薄板状の部材であり、外形が縦長の略長方形板状となっている。
化粧板部材16は、2つの取付用孔16aと、ラッチ通過用孔16bを有する。これらはいずれも化粧板部材16を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
この化粧板部材16は、
図1、
図2で示されるように、ラッチ錠1の左側壁部32と厚さ方向が同方向(左右方向)となるように重ねた状態で配される。このとき、2つの取付用孔16aは、左側壁部32の2つ取付用孔32aとそれぞれ重なり、締結要素を挿通する連通孔を形成する。すなわち、ラッチ錠1をドア2に固定する際に締結要素が挿通される孔を形成する。一方で、上記した左側壁部32の突起部32cがラッチ通過用孔16bに内嵌される。化粧板部材16のラッチ通過用孔16bの内側に、左側壁部32のラッチ挿通孔32bの一部が位置した状態となり、ラッチボルト11が出退動作をするときに、ラッチボルト11の一部がこれらの内側を通過する。
【0054】
ここで、本実施形態のラッチ錠1は、
図3で示されるように、特徴的な構造として規制部材85(突出規制部材)を有している。
本実施形態の規制部材85は、樹脂製の球体であり、上記したボルト側溝部71の内部に移動自在な状態で配されている。すなわち、規制部材85は、ボルト側溝部71の内部に配したとき、ボルト側溝部71の内部で移動可能な大きさとなっている。
【0055】
続いて、本実施形態のラッチ錠1のラッチボルト11を退入状態とし、このラッチ錠1を取り付けたドア2を一定以上の速度となるように勢いよく閉めた場合の規制部材85の動作について詳細に説明する。
【0056】
本実施形態のラッチ錠1では、ラッチボルト11が退入した退入状態であるとき、
図3で示されるように、ラッチボルト11のボルト側溝部71と、錠ケース10(第一塊状部45)のケース側溝部50とが一連の連結溝87を形成する。
なお、ラッチボルト11が突出した突出状態であるときには、ボルト側溝部71の上側開口と、ケース側溝部50の下側開口とが左右方向でずれた位置となり(図示しない)、ボルト側溝部71とケース側溝部50が連続しない状態となる。つまり、連結溝87は、ラッチボルト11が突出状態であるときには形成されず、退入状態であるときに形成される溝である。
【0057】
連結溝87は、正面視において、長手方向の両端部分が丸みを帯びた形状となっている。また、連結溝87は、湾曲しつつ延びる溝であって、右方に向かうにつれて上方に延びた溝である。
【0058】
ここで、ドア2が移動していない状態では、
図3、
図7(a)で示されるように、規制部材85は、自重によって連結溝87の下方側の位置に配された状態となる。本実施形態では、この規制部材85が配される位置(以下、非規制位置とも称す)は、連結溝87の延設方向(長手方向)の片側端部周辺の位置であり、連結溝87のラッチボルト11側の端部周辺となる位置である。また、本実施形態の非規制位置は、連結溝87内における規制部材85の移動可能範囲のうちで最も下側となる位置でもある。
規制部材85が非規制位置に配されると、規制部材85の一部が連結溝87の一端側に形成された丸みを帯びた部分に入り込んだ状態となる。
【0059】
規制部材85が非規制位置に配されることで、規制部材85の全体がラッチボルト11の内部に位置し、規制部材85がラッチボルト11の移動を妨げない状態(以下、非規制状態とも称す)となる。すなわち、規制部材85がラッチボルト11の突出動作と退入動作を妨げない状態である。
【0060】
規制部材85が非規制位置に配された状態から、ドア2が勢いよく移動していくと、ドア2の回動に伴って、ドア2に一体に取り付けられたラッチ錠1もまた移動することとなる。このことにより、規制部材85は、
図7(b)、
図7(c)で示されるように、遠心力によって自重に逆らって上方に移動していく。具体的には、連結溝87の内部で、連結溝87の長手方向に沿って左方上側へ移動していく。
そして、
図7(c)、
図8で示されるように、規制部材85が連結溝87の上側の位置に配された状態となる。本実施形態では、この規制部材85が配される位置(以下、規制位置とも称す)は、連結溝87の延設方向(長手方向)の他方側端部周辺の位置であり、連結溝87の上端周辺(第一塊状部45側の端部周辺)となる位置である。
【0061】
規制部材85が規制位置に配されると、規制部材85の一部がボルト側溝部71の内部に配されると共に、他の一部がケース側溝部50の内部に配される。つまり、規制位置は、ボルト側溝部71とケース側溝部50の境界となる位置及びその周辺の位置であり、ボルト側溝部71とケース側溝部50の境界となる位置を含む位置である。
言い換えると、規制部材85が規制位置に配されることで、規制部材85は、一部がラッチボルト11の内部に位置し、他の一部がラッチボルト11から外部に突出した状態となる。そして、ラッチボルト11から外部に突出した部分が、ケース本体部20に形成されたケース側溝部50と係合する。
【0062】
そして、規制部材85が規制位置に配されることで、規制部材85がラッチボルト11の移動(突出動作)を規制する状態(規制状態)となる。
すなわち、
図8で示されるように、規制部材85が規制位置に配された状態でラッチボルト11が突出しようとすると(左方に移動しようとすると)、ラッチボルト11の一部が規制部材85に右側から当接する。このとき、規制部材85はラッチボルト11によって左方に押圧されるが、規制部材85の上側部分がケース側溝部50の内側面に右側から当接して左側への移動が阻止される。すなわち、規制部材85がケース側溝部50に引っ掛かることで、規制部材85及びラッチボルト11の左方への移動が阻止される。
【0063】
規制部材85が規制位置に配された状態で、ドア2の移動速度が遅くなる、又は、ドア2の移動が止まる等すると、規制部材85が自重により下方側へ移動する。すなわち、ドア2の回動に伴って規制部材85に作用する遠心力が一定未満となる、又は、無くなることで、規制部材85が連結溝87の内部で、連結溝87の長手方向に沿って右方下側へ移動していく。つまり、規制部材85が上記した上方への移動とは逆方向に移動していく。
本実施形態では、連結溝87が上記した湾曲面部73を有しており、規制部材85が球体であるため、規制部材85が下方に円滑に移動する。また、本実施形態によると、複雑な機構を設けることなく、ドア2の移動速度が一定以下となる等することで規制状態から非規制状態に自動で移行する。
【0064】
このように、本実施形態のラッチ錠1は、特徴的な構成として、規制部材85によるラッチボルト11の移動規制機構を有している。この移動規制機構は、人の手動での操作に伴うラッチボルト11の移動規制機構(上記した施錠部材15による移動規制)とは別途設けられ、自動で規制状態と非規制状態を切り替える機構である。
【0065】
上記したラッチ錠1では、連結溝87の長さや、湾曲しつつ延びる部分の曲率等、溝の形状を適宜変更できる。このことにより、規制状態となるドア2の移動速度、すなわち、ドア2がどの程度勢いよく閉められると規制部材85によるラッチボルト11の移動規制がなされるかを適宜変更することができる。つまり、より大きな遠心力が作用しないと規制部材85が規制位置まで移動しないようにすることや、逆に、より小さな遠心力でも規制位置まで移動させるといったことが可能となる。
【0066】
上記した実施形態では、錠ボルトがラッチボルトの機能と、デッドボルトの機能を有するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。本発明の錠ボルトは、デッドボルトの機能を有さないラッチボルトであってもかまわない。
【0067】
上記した実施形態では、第一塊状部45がケース本体部20の一部であり、ケース本体部20の壁部分(上壁部30、左側壁部32、底壁形成部34)と一体に形成された例について説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、ケース側溝部が形成される部材(塊状部)をケース本体部とは別途形成し、ねじ等の締結要素によってケース本体部に一体に固定してもよい。すなわち、ケース側溝部が形成される部材は、ケース本体部に収容された部材であって、ケース本体部や錠ボルトとは異なる部材(別体であり、他部材)であってもよい。錠ボルトが退入位置に配された状態で、錠ボルトに形成された溝と、錠ケース又は錠ケースに収容された部材に形成された溝によって連結が形成されればよい。
【0068】
続いて、上記した実施形態とは異なる実施形態にかかるラッチ錠301(錠部材)について説明する。なお、以下の説明において、上記したものと同様の部分については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
本実施形態のラッチ錠301は、
図9、
図10で示されるように、錠ケース310の底壁形成部334と、ラッチボルト311と、蓋部材(図示しない)が上記した実施形態と異なる。
【0070】
図10で示されるように、錠ケース310の底壁形成部334には外側に向かって窪んだ係合凹部350が形成されている。係合凹部350は、規制部材85の一部が略丁度嵌入可能な凹部である。
【0071】
本実施形態のラッチボルト311は、規制部材85を収容可能な内部空間である規制部材配置空間371を有している。この規制部材配置空間371は、内側底部372の上側に形成された空間である。
内側底部372は、2つの傾斜面を有している。すなわち、内側底部372は、ラッチボルト311の幅方向(前後方向)における中央側が最も低位置となり、中央側から前方側(
図10では右側)に向かうにつれて上り勾配となる傾斜面を有している。加えて、中央側から後方側(
図10では左側)に向かうにつれて上り勾配となる傾斜面を有している。すなわち、内側底部372は、ラッチボルト311を突出方向と直交する面で切断した断面視において、略V字状に連続する面を有している。
【0072】
また、規制部材配置空間371は、2つの開口部380,381を介して外部と連続している。開口部380,381は、ラッチボルト311の前側と後側にそれぞれ形成され、前後方向で対向するように形成されている。
【0073】
ここで、本実施形態のラッチ錠301は、ラッチボルト311が退入状態であるとき、一方の開口部381と係合凹部350が前後方向(
図10では左右方向)で並んだ状態となる。なお、図示を省略するが、もう一方の開口部380と蓋部材(図示しない)に設けられた係合凹部(図示しない)もまた、前後方向で並んだ状態となる。蓋部材に設けられた係合凹部(図示しない)は、上記した係合凹部350と同様に蓋部材の装着時に外側に窪んだ凹部であり、詳細な説明を省略する。
【0074】
続いて、本実施形態のラッチ錠301のラッチボルト311を退入状態とし、このラッチ錠1を取り付けたドアを一定以上の速度となるように勢いよく閉めた場合の規制部材85の動作について詳細に説明する。
この場合、
図11で示されるように、ドアの移動に伴う遠心力の作用により、規制部材85が内側底部372の傾斜面上を上方に移動していく。そして、規制部材85の一部が開口部381から外部に突出し、係合凹部350に入り込んだ状態となる。このとき、規制部材85の他の一部は、ラッチボルト311の内部に位置する。このことにより、ラッチボルト311の突出動作が規制される規制状態となる。
なお、ドアを閉める方向によっては、規制部材85がもう一方の傾斜面上を上方に移動していき、他方の開口部380から規制部材85の一部が外部に突出する。この場合、規制部材85の一部が蓋部材(図示しない)に形成された係合凹部に入り込んだ状態となり、他の一部がラッチボルト311の内部に位置する。このことにより、ラッチボルト311の突出動作が規制される規制状態となる。
【0075】
そして、ドアの移動が遅くなる、又は、ドアの移動が止まる等することで、規制部材85が自重により下方に移動する。すなわち、規制部材85が傾斜面上を転がり落ちていき、下方へと移動する。このことにより、規制状態から非規制状態に移行する。
すなわち、本実施形態においても、規制部材85は、全体がラッチボルト311の内部に位置する非規制位置と、一部がラッチボルト311の外部に突出すると共に他の一部がラッチボルト311の内部に位置する規制位置との間で移動する。そして、そのことにより、非規制状態と規制状態が切り替わる。
【0076】
以上のように、ラッチ錠が規制状態であるとき、規制部材85はラッチボルト11から上方に突出してもよく(
図8参照)、ラッチボルト311から前方又は後方に突出してもよい(
図11参照)。すなわち、ラッチボルト11が出退する際の移動方向と交わる方向に突出すればよい。
また、ラッチボルト11から突出する部分は、溝部分や凹部に入り込むだけでなく、何等かの部材や突起部分等に当接させてもよい。すなわち、ラッチボルトの移動が規制されればよい。しかしながら、ラッチボルトの移動をより確実に規制するという観点から、上記した溝部分や凹部に入り込む構造とすることが好ましい。
【0077】
上記した各実施形態では、ラッチボルト11が突出した突出状態であるとき、連結溝87(
図3等参照)が形成されない例や、係合凹部350と開口部381とが前後方向で重ならない例を示した。
つまり、上記した各実施形態では、ラッチボルトが退入した退入状態であるとき、規制部材が規制位置まで移動可能となる。言い換えると、退入状態であるとき、規制部材が規制位置まで移動する移動経路であり、規制位置を含んで形成される移動経路が形成される。その一方で、上記した各実施形態では、ラッチボルトが退入状態から突出方向に移動すると、規制位置を含んで形成される移動経路が形成されず、規制部材が規制位置に移動できない状態となる。このような構造によると、ラッチボルトが退入状態から突出方向に移動した状態では、規制部材がラッチボルトの移動を妨げない。このため、規制部材によるラッチボルトの移動規制が必要ない状態で、規制部材がラッチボルトの移動を規制してしまうことがない。
【0078】
上記した各実施形態では、規制状態となるとき、規制部材の一部がラッチボルト側からケース側に突出した例を示したが、逆に、ケース側からラッチボルト側に突出する構成とすることも考えられる。すなわち、錠ケースの一部又は錠ケースに収容される部材内に規制部材を配する規制部材配置部を設け、遠心力によって規制部材の一部が規制部材配置部の内部から突出する構造とする。そして、規制部材配置部から突出した規制部材の一部が、退入状態の錠ボルトの一部より、突出方向(錠ボルトの突出方向)で先端側となる位置であり、突出方向を視線方向とした平面視で重なる位置に配される構造とする、といった具合である。
【符号の説明】
【0079】
1,301 ラッチ錠(錠部材)
2 ドア(戸)
10,310 錠ケース
11,311 ラッチボルト(錠ボルト)
50 ケース側溝部
71 ボルト側溝部
85 規制部材(突出規制部材)
87 連結溝