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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078854
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】セル評価用ホルダ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/12 20160101AFI20230531BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230531BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20230531BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20230531BHJP
【FI】
H01M8/12 101
H01M8/04 Z
H01M8/1213
H01M8/02
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192161
(22)【出願日】2021-11-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/超高効率プロトン伝導セラミック燃料電池デバイスの研究開発(WP2 高効率・高出力密度セルの開発)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】布尾 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】見神 祐一
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 智宏
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC13
5H127BA02
5H127BB02
(57)【要約】
【課題】セルの電気的評価の精度の向上に適した構造を有するセル評価用ホルダを提供する。
【解決手段】本開示におけるセル評価用ホルダ10は、第1極部材1、セル21を固定するためのセル固定部材2、および第2極部材3をこの順に備える。第1極部材1および第2極部材3からなる群から選択される少なくとも1つは、極端板およびセル固定部材2と極端板との間に配置された少なくとも1つの第1集電板を含む。極端板は、セル21への反応ガスの導入経路である第1ガス経路およびセル21から排出されたオフガスの回収経路である第2ガス経路を有する。第1集電板は、導電性を有し、かつ、第1ガス経路の開口部に面している第3ガス経路と、第2ガス経路の開口部に面している第4ガス経路と、を有する。第1集電板がセル21の電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極部材、セルを固定するためのセル固定部材、および第2極部材をこの順に備え、
前記第1極部材および前記第2極部材からなる群から選択される少なくとも1つは、極端板と、前記セル固定部材と前記極端板との間に配置された少なくとも1つの第1集電板と、を含み、
前記極端板は、前記セルへの反応ガスの導入経路である第1ガス経路および前記セルから排出されたオフガスの回収経路である第2ガス経路を有し、
前記第1集電板は、導電性を有し、かつ、前記第1ガス経路の開口部に面している第3ガス経路と、前記第2ガス経路の開口部に面している第4ガス経路と、を有し、
前記第1集電板が前記セルの電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねている、
セル評価用ホルダ。
【請求項2】
前記第1集電板は、前記第1ガス経路の前記開口部に面する位置に配置されたガス透過性の第1集電体と、前記集電体の周囲において前記第2ガス経路の前記開口部に面している前記第4ガス経路と、前記第1集電体に接続されるとともに前記第1集電体および前記第4ガス経路を包囲して前記オフガスを遮断する導電性のシール部と、をさらに有し、
前記第1集電体が前記第3ガス経路を含み、
前記シール部が前記第1取り出し端子を兼ねている、
請求項1に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項3】
前記第1集電体が前記セルの電極に面接触する、
請求項2に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項4】
前記シール部は、前記第1集電体に接続された接続部を有する、
請求項2または3に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項5】
前記シール部は、前記第1集電体を包囲する環状部と、前記第1取り出し端子として前記環状部の周囲に設けられた第1突出部とを有する、
請求項4に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項6】
前記第1集電板は、Pt、Ag、Pd、およびAuからなる群から選択される少なくとも1つを含む、
請求項2から5のいずれか一項に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項7】
前記第1極部材および前記第2極部材からなる群から選択される少なくとも1つは、前記少なくとも1つの第1集電板と前記極端板との間に配置された第2集電板をさらに含み、
前記第2集電板は、導電性を有し、かつ、前記第1ガス経路の開口部に面している第5ガス経路と、前記第2ガス経路の開口部に面している第6ガス経路と、を有し、
前記第2集電板が前記セルの電気的評価のための第2取り出し端子を兼ねている、
請求項2から6のいずれか一項に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項8】
前記第2集電板に前記第1集電板の前記集電体が面接触する、
請求項7に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項9】
前記第2集電板は、前記第2取り出し端子として前記第2集電板の周囲に設けられた第2突出部を有する、
請求項7または8に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1集電板は、複数の前記第1集電板を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項11】
前記第1極部材と前記セル固定部材との間に配置された絶縁性の第1面シール部材と、
前記セル固定部材と前記第2極部材との間に配置された絶縁性の第2面シール部材と、
をさらに備える、
請求項1から10のいずれか一項に記載のセル評価用ホルダ。
【請求項12】
前記第1面シール部材および前記第2面シール部材は、サーミキュライトおよびマイカからなる群から選択される少なくとも1つを含む、
請求項11に記載のセル評価用ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セル評価用ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物からなる電解質材料を用いた電気化学デバイスとして、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、固体酸化物形水蒸気電解セル(SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell)、およびプロトン伝導型セラミック燃料電池(PCFC:Protonic Ceramic Fuel Cell)などが知られている。SOFCおよびSOECの電解質材料には、一般に、安定化ジルコニアに代表される酸化物イオン伝導性を有する電解質材料が広く用いられている。PCFCの電解質材料には、例えば、SrCeO3およびBaZrO3などのペロブスカイト型酸化物など、プロトン伝導性を有する電解質材料が用いられている。
【0003】
上述のような電気化学デバイスのセルとして、大別して円筒型のセルおよび平板型のセルが知られている。円筒型のセルは、電流経路が長いため抵抗損失が大きい。そのため、より高出力を得るために、平板型のセルの開発が進められている。
【0004】
特許文献1は、平板型のセルを有するSOFCの性能特性を評価するための電気化学セル評価用ホルダを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-147122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、セルの電気的評価の精度の向上に適した構造を有するセル評価用ホルダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示におけるセル評価用ホルダは、
第1極部材、セルを固定するためのセル固定部材、および第2極部材をこの順に備え、
前記第1極部材および前記第2極部材からなる群から選択される少なくとも1つは、極端板と、前記セル固定部材と前記極端板との間に配置された少なくとも1つの第1集電板と、を含み、
前記極端板は、前記セルへの反応ガスの導入経路である第1ガス経路および前記セルから排出されたオフガスの回収経路である第2ガス経路を有し、
前記第1集電板は、導電性を有し、かつ、前記第1ガス経路の開口部に面している第3ガス経路と、前記第2ガス経路の開口部に面している第4ガス経路と、を有し、
前記第1集電板が前記セルの電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、セルの電気的評価の精度の向上に適した構造を有するセル評価用ホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態によるセル評価用ホルダの分解斜視図を示す。
図2図2は、第1極部材およびセル固定部材の拡大図を示す。
図3図3は、セル評価用ホルダの組み立て時の断面図を示す。
図4図4は、セル評価用ホルダの組み立て時の別の断面図を示す。
図5図5は、変形例によるセル評価用ホルダの分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の一形態を得るに至った経緯)
特許文献1に開示のセル評価用ホルダでは、各電極の集電体に接続し、ガス導入管の内部に通したリード線を外部端子に接続することで、セルの電圧および電流の計測を行っていると推測される。特許文献1では、電極、集電体、リード線の順に電子が伝導していくと推測される。そのため、セルの抵抗が小さい場合、集電体の抵抗は無視できない値となると推測される。したがって、特許文献1に開示のセル評価用ホルダでは、集電体の抵抗損失が影響し、セルの電圧および電流を正確に計測できないおそれがある。
【0011】
そこで、本発明者らは、セルの電気的評価の精度の向上に適した構造について鋭意研究した。その結果、本開示のセル評価用ホルダを想到するに至った。
【0012】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係るセル評価用ホルダは、
第1極部材、セルを固定するためのセル固定部材、および第2極部材をこの順に備え、
前記第1極部材および前記第2極部材からなる群から選択される少なくとも1つは、極端板と、前記セル固定部材と前記極端板との間に配置された少なくとも1つの第1集電板と、を含み、
前記極端板は、前記セルへの反応ガスの導入経路である第1ガス経路および前記セルから排出されたオフガスの回収経路である第2ガス経路を有し、
前記第1集電板は、導電性を有し、かつ、前記第1ガス経路の開口部に面している第3ガス経路と、前記第2ガス経路の開口部に面している第4ガス経路と、を有し、
前記第1集電板が前記セルの電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねている。
【0013】
第1態様に係るセル評価用ホルダによれば、少なくとも1つの第1集電板がセルの電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねているので、電極、集電体、リード線の順に電子が伝導していく従来のセル評価用ホルダに比べて、抵抗損失を低減することができる。そのため、セルの電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。このように、第1態様に係るセル評価用ホルダは、セルの電気的評価の精度の向上に適した構造を有している。
【0014】
第2態様において、例えば、第1態様に係るセル評価用ホルダでは、前記第1集電板は、前記第1ガス経路の前記開口部に面する位置に配置されたガス透過性の第1集電体と、前記集電体の周囲において前記第2ガス経路の前記開口部に面している前記第4ガス経路と、前記第1集電体に接続されるとともに前記第1集電体および前記第4ガス経路を包囲して前記オフガスを遮断する導電性のシール部と、をさらに有していてもよく、前記第1集電体が前記第3ガス経路を含んでいてもよく、前記シール部が前記第1取り出し端子を兼ねていでもよい。
【0015】
第2態様に係るセル評価用ホルダによれば、セルの電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。
【0016】
第3態様において、例えば、第2態様に係るセル評価用ホルダでは、前記第1集電体が前記セルの電極に面接触してもよい。
【0017】
第3態様に係るセル評価用ホルダによれば、第1集電体がセルの電極に面接触することにより、第1集電体の抵抗損失を低減できる。したがって、セルの電気的評価の精度を向上させることができる。
【0018】
第4態様において、例えば、第2または第3態様に係るセル評価用ホルダでは、前記シール部は、前記第1集電体に接続された接続部を有していてもよい。
【0019】
第4態様に係るセル評価用ホルダによれば、接続部によって、第4ガス経路を確保しつつ、第1集電体とシール部とを導通させることができる。
【0020】
第5態様において、例えば、第4態様に係るセル評価用ホルダでは、前記シール部は、前記第1集電体を包囲する環状部と、前記第1取り出し端子として前記環状部の周囲に設けられた第1突出部とをさらに有していてもよい。
【0021】
第5態様に係るセル評価用ホルダによれば、シール部の第1突出部を用いて効率的にセルの電気的評価を行うことができる。
【0022】
第6態様において、例えば、第2から第5態様のいずれか1つに係るセル評価用ホルダでは、前記第1集電板は、Pt、Ag、Pd、およびAuからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0023】
第6態様に係るセル評価用ホルダによれば、第1集電板が電気伝導性の高い金属材料で製造されているので、セルの電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。
【0024】
第7態様において、例えば、第2から第6態様のいずれか1つに係るセル評価用ホルダでは、前記第1極部材および前記第2極部材からなる群から選択される少なくとも1つは、前記少なくとも1つの第1集電板と前記極端板との間に配置された第2集電板をさらに含んでいてもよく、前記第2集電板は、導電性を有し、かつ、前記第1ガス経路の開口部に面している第5ガス経路と、前記第2ガス経路の開口部に面している第6ガス経路と、を有していてもよく、前記第2集電板が前記セルの電気的評価のための第2取り出し端子を兼ねていてもよい。
【0025】
第7態様に係るセル評価用ホルダによれば、セルの電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。また、第1集電板と第2集電板とで計測対象を分けることもできる。例えば、第1集電板を電圧計測用とし、第2集電板を電流計測用とすることもできる。
【0026】
第8態様において、例えば、第7態様に係るセル評価用ホルダでは、前記第2集電板が前記第1集電体に面接触していてもよい。
【0027】
第8態様に係るセル評価用ホルダによれば、第2集電板が第1集電体に面接触することにより、第2集電板の抵抗損失を低減できる。したがって、セルの電気的評価の精度を向上させることができる。
【0028】
第9態様において、例えば、第7または第8態様に係るセル評価用ホルダでは、前記第2集電板は、前記第2取り出し端子として前記第2集電板の周囲に設けられた第2突出部を有していてもよい。
【0029】
第9態様に係るセル評価用ホルダによれば、第2集電板の第2突出部を用いて効率的にセルの電気的評価を行うことができる。
【0030】
第10態様において、例えば、第1から第9態様のいずれか1つに係るセル評価用ホルダでは、前記少なくとも1つの第1集電板は、複数の前記第1集電板を含んでいてもよい。
【0031】
セルの面積が大きい場合、例えば、燃料ガスの消費、酸化剤ガスの消費、および水蒸気の生成などにより、セルの面内ではガス濃度に違いが生じる。これに伴い、セルの面内では電圧および電流の分布に差異が生じることが知られている。第10態様に係るセル評価用ホルダによれば、セルの面積が大きい場合でも、複数の第1集電板により、セルの面内における複数個所について電気的評価を行うことができるので、電圧および電流の分布を評価することができる。
【0032】
第11態様において、例えば、第1から第10態様のいずれか1つに係るセル評価用ホルダは、前記第1極部材と前記セル固定部材との間に配置された絶縁性の第1面シール部材と、前記セル固定部材と前記第2極部材との間に配置された絶縁性の第2面シール部材と、をさらに備えていてもよい。
【0033】
第11態様に係るセル評価用ホルダによれば、第1面シール部材および第2面シール部材によって外部へのガス漏れが防止される。したがって、セルの電気的評価の精度をより向上させることができる。
【0034】
第12態様において、例えば、第11態様に係るセル評価用ホルダでは、前記第1面シール部材および前記第2面シール部材は、サーミキュライトおよびマイカからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0035】
第12態様に係るセル評価用ホルダによれば、第1面シール部材および第2面シール部材によって外部へのガス漏れを防止できる。
【0036】
(実施形態)
以下、本開示の一実施形態が、図面を参照しながら詳細に説明される。
【0037】
図1は、本実施形態のセル評価用ホルダ10の分解斜視図を示す。
【0038】
セル評価用ホルダ10は、第1極部材1、セル21を固定するためのセル固定部材2、および第2極部材3をこの順に備える。第1極部材1と第2極部材3との間にセル固定部材2が位置している。第1極部材1は、極端板11および第1集電板12を含む。第1集電板12は、セル固定部材2と極端板11との間に配置されている。第2極部材3は、極端板31および第1集電板32を含む。第1集電板32は、セル固定部材2と極端板31との間に配置されている。
【0039】
電気化学デバイスがSOFCまたはPCFCである場合、例えば、第1極部材1は燃料極(アノード)部材であり、第2極部材3は空気極(カソード)部材である。電気化学デバイスがSOECである場合、例えば、第1極部材1は水素極(アノード)部材であり、第2極部材3は酸素極(カソード)部材である。
【0040】
極端板11は、ガス経路11aおよびガス経路11b(図1では不図示)を有している。ガス経路11aは、セル21への反応ガスの導入経路である。ガス経路11aは、極端板11の中央に設けられた開口部11cまで延びている。ガス経路11bは、セル21から排出されたオフガスの回収経路である。ガス経路11bは、極端板11の周囲に設けられた開口部11dまで延びている。本実施形態では、ガス経路11aの入口とガス経路11bの出口とは、極端板11の側面に対称的に設けられている。
【0041】
セル21のアノードに供給される反応ガスおよびセル21のアノードから排出されるオフガスは、電気化学セルに応じて様々である。例えば、電気化学デバイスがSOFCまたはPCFCである場合、セル21のアノード(燃料極)に供給される反応ガスは、水素含有ガスなどの燃料ガスである。セル21のアノード(燃料極)から排出されるオフガスには、例えば、水素が含まれている。例えば、電気化学デバイスがSOECである場合、セル21のアノード(酸素極)に供給される反応ガスは、空気などの酸化剤ガスである。セル21のアノード(酸素極)から排出されるオフガスには、酸素が含まれている。
【0042】
極端板31は、ガス経路31aおよびガス経路31b(図1では不図示)を有している。ガス経路31aは、セル21への反応ガスの導入経路である。ガス経路31aは、極端板31の中央に設けられた開口部31c(図1では不図示)まで延びている。ガス経路31bは、セル21から排出されたオフガスの回収経路である。ガス経路31bは、極端板31の周囲に設けられた開口部31d(図1では不図示)まで延びている。本実施形態では、ガス経路31aの入口とガス経路31bの出口とは、極端板31の側面に対称的に設けられている。
【0043】
セル21のカソードに供給される反応ガスおよびセル21のカソードから排出されるオフガスは、電気化学セルに応じて様々である。例えば、電気化学デバイスがSOFCまたはPCFCである場合、セル21のカソード(空気極)に供給される反応ガスは、空気などの酸化剤ガスである。セル21のカソード(空気極)から排出されるオフガスには、例えば、酸素および水蒸気が含まれている。例えば、電気化学デバイスがSOECである場合、セル21のカソード(水素極)に供給される反応ガスは、高温水蒸気である。セル21のカソード(水素極)から排出されるオフガスには、水素および残余水蒸気が含まれている。
【0044】
本実施形態では、極端板11および極端板31の形状は、円形状である。しかし、極端板11および極端板31の形状はこれに限られない。極端板11および極端板31の形状は、例えば、矩形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0045】
極端板11および極端板31は、例えば、金属またはセラミックでできている。金属としては、ステンレス鋼が挙げられる。セラミックとしては、アルミナセラミックが挙げられる。以上の構成によれば、耐熱性に優れるとともに、組み立て時の荷重にも十分に耐えうる。極端板11の材料が極端板31の材料と異なっていてもよい。
【0046】
第1集電板12は、導電性を有する。第1集電板12は、開口部11cに面しているガス経路12aと、開口部11dに面しているガス経路12bとを有している。ガス経路12aは、セル21への反応ガスの導入経路であり、第1集電板12の中央に設けられている。ガス経路12bは、セル21から排出されたオフガスの回収経路であり、第1集電板12の周囲に設けられている。
【0047】
第1集電板32は、導電性を有する。第1集電板32は、開口部31cに面しているガス経路32aと、開口部31dに面しているガス経路32bとを有している。ガス経路32aは、セル21への反応ガスの導入経路であり、第1集電板32の中央に設けられている。ガス経路32bは、セル21から排出されたオフガスの回収経路であり、第1集電板32の周囲に設けられている。
【0048】
第1集電板12および第1集電板32のそれぞれが、セル21の電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねている。本実施形態において、電気的評価とは、セル21の電圧および電流を測定することを含む意味である。電気化学デバイスがSOFCまたはPCFCである場合、例えば、第1集電板12によってセル21の燃料極(アノード)の電気的評価が可能となり、第1集電板32によってセル21の空気極(カソード)の電気的評価が可能となる。電気化学デバイスがSOECである場合、例えば、第1集電板12によってセル21の酸素極(アノード)の電気的評価が可能となり、第1集電板32によってセル21の水素極(カソード)の電気的評価が可能となる。
【0049】
以上の構成によれば、第1集電板12および第1集電板32のそれぞれが、セル21の電気的評価のための第1取り出し端子を兼ねているので、電極、集電体、リード線の順に電子が伝導していく従来のセル評価用ホルダに比べて、抵抗損失を低減することができる。そのため、セル21の電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。このように、セル評価用ホルダ10は、セル21の電気的評価の精度の向上に適した構造を有している。
【0050】
過渡状態、安定作動状態でのセル21の電気的評価を行うことによって、セル21の性能および特性を調べることができる。電気的評価は、製品の出荷前の段階で行われてもよい。すなわち、セル21の製造工程にセル評価用ホルダ10による品質チェックの工程が含まれていてもよい。電気化学デバイス用のセル21を作製し、セル評価用ホルダ10を用いてセル21の電気的評価を行い、電気的評価の結果に基づいてセル21の良否判断を行ってもよい。
【0051】
第1集電板12は、第1集電体13、ガス経路12b、およびシール部14を有する。第1集電体13は、ガス透過性を有し、開口部11cに面する位置に配置されている。ガス経路12bは、第1集電体13の周囲において開口部11dに面している。シール部14は、第1集電体13に接続されるとともに、第1集電体13およびガス経路12bを包囲してオフガスを遮断する。シール部14も導電性を有する。第1集電体13はガス経路12aを含んでいる。シール部14は第1取り出し端子を兼ねている。
【0052】
第1集電板32は、第1集電体33、ガス経路32b、およびシール部34を有する。第1集電体33は、ガス透過性を有し、開口部31cに面する位置に配置されている。ガス経路32bは、第1集電体33の周囲において開口部31dに面している。シール部34は、第1集電体33に接続されるとともに、第1集電体33およびガス経路32bを包囲してオフガスを遮断する。シール部34も導電性を有する。第1集電体33はガス経路32aを含んでいる。シール部34はセル21の第1取り出し端子を兼ねている。
【0053】
以上の構成によれば、第1集電板12のシール部14および第1集電板32のシール部34のそれぞれから、セル21の電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。また、シール部14およびシール部34によって、外部へのガスの漏れが防止されうる。
【0054】
シール部14は、第1集電体13を包囲する環状部14aを有する。環状部14aにより第1集電体13が収容される収容孔が画定されている。この収容孔に第1集電体13が収容されることで、第1集電体13の周囲にガス経路12bが形成される。ガス経路12bは、環状部14aと第1集電体13との間に位置し、環状構造を有している。
【0055】
シール部34は、第1集電体33を包囲する環状部34aを有する。環状部34aにより第1集電体33が収容される収容孔が画定されている。この収容孔に第1集電体33が収容されることで、第1集電体33の周囲にガス経路32bが形成される。ガス経路32bは、環状部34aと第1集電体33との間に位置し、環状構造を有している。
【0056】
図1の例では、環状部14aおよび環状部34aの形状は、中央に円形状の収容孔を有する円形環状である。しかし、環状部14aおよび環状部34aの形状はこれに限られない。環状部14aおよび環状部34aの形状は、例えば、中央に矩形状の収容孔を有する矩形環状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0057】
図1の例では、第1集電体13および第1集電体33の形状は、円形状である。しかし、第1集電体13および第1集電体33の形状はこれに限られない。第1集電体13および第1集電体33の形状は、例えば、矩形状であってもよく、その他の形状であってもよい。シール部14およびシール部34の形状に応じて、第1集電体13および第1集電体33の形状が決められてもよい。
【0058】
第1集電板12および第1集電板32は、セル21の電圧計測用の集電板であってもよい。すなわち、第1集電板12のシール部14がセル21の電圧の第1取り出し端子を兼ねていてもよい。第1集電板32のシール部34がセル21の電圧の第1取り出し端子を兼ねていてもよい。
【0059】
第1集電板12および第1集電板32は、セル21の電流計測用の集電板であってもよい。すなわち、第1集電板12のシール部14がセル21の電流の第1取り出し端子を兼ねていてもよい。第1集電板32のシール部34がセル21の電流の第1取り出し端子を兼ねていてもよい。
【0060】
第1集電体13はセル21の電極に面接触する。すなわち、第1集電体13とセル21のアノードとは、セル評価用ホルダ10の組み立て時に面接触することで、電気的に導通する。
【0061】
第1集電体33はセル21の電極に面接触する。すなわち、第1集電体33とセル21のカソードとは、セル評価用ホルダ10の組み立て時に面接触することで、電気的に導通する。
【0062】
以上の構成によれば、第1集電体13がセル21の電極に面接触することにより、第1集電体13の抵抗損失を低減できる。また、第1集電体33がセル21の電極に面接触することにより、第1集電体33の抵抗損失を低減できる。したがって、セル21の電気的評価の精度を向上させることができる。
【0063】
第1集電体13はセル21の電極に直接接触してもよく、Agなどの導電性ペーストを介して接触してもよい。また、第1集電体33はセル21の電極に直接接触してもよく、Agなどの導電性ペーストを介して接触してもよい。
【0064】
第1集電板12および第1集電板32は、電気伝導性の高い金属材料で製造される。このような金属材料は、例えば、銀、白金および金などである。すなわち、第1集電板12および第1集電板32は、Pt、Ag、Pd、およびAuからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。第1集電板12および第1集電板32は、ステンレスなどの金属材料で成型した後、その表面を銀、白金および金などの金属材料でコートすることにより製造されてもよい。
【0065】
シール部14およびシール部34は、Pt、Ag、Pd、およびAuからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。シール部14およびシール部34は、ステンレスなどの金属材料で成型した後、その表面を銀、白金および金などの金属材料でコートすることにより製造されてもよい。
【0066】
第1集電体13および第1集電体33は、電気的な伝導性を有する金属材料によって、ガス透過性を有するように製造される。このような金属材料として、例えば、ニッケル、銀、白金、パラジウム、金などが挙げられる。このような金属材料をメッシュまたは多孔体形状に成型することで、ガス透過性を有する第1集電体13および第1集電体33を製造できる。
【0067】
本実施形態では、第1極部材1が、第1集電板12と極端板11との間に配置された第2集電板15をさらに含む。第2極部材3が、第1集電板32と極端板31との間に配置された第2集電板35をさらに含む。
【0068】
第2集電板15は、導電性を有する。第2集電板15は、開口部11cに面しているガス経路15aと、開口部11dに面しているガス経路15bとを有している。ガス経路15aは、セル21への反応ガスの導入経路であり、第2集電板15の中央に設けられている。ガス経路15aの直径は、開口部11cの直径に等しい。ガス経路15bは、セル21から排出されたオフガスの回収経路であり、第2集電板15の周囲に複数設けられている。図1では、8箇所にガス経路15bとしての孔が設けられている。各ガス経路15bの直径は、開口部11cの直径に等しい。
【0069】
第2集電板35は、導電性を有する。第2集電板35は、開口部31cに面しているガス経路35aと、開口部31dに面しているガス経路35bとを有している。ガス経路35aは、セル21への反応ガスの導入経路であり、第2集電板35の中央に設けられている。ガス経路35aの直径は、開口部31cの直径に等しい。ガス経路35bは、セル21から排出されたオフガスの回収経路であり、第2集電板35の周囲に複数設けられている。図1では、8箇所にガス経路35bとしての孔が設けられている。各ガス経路35bの直径は、開口部31cの直径に等しい。
【0070】
第2集電板15および第2集電板35のそれぞれが、セル21の電気的評価のための第2取り出し端子を兼ねている。
【0071】
以上の構成によれば、第2集電板15および第2集電板35のそれぞれが、セル21の電気的評価のための第2取り出し端子を兼ねているので、電極、集電体、リード線の順に電子が伝導していく従来のセル評価用ホルダに比べて、抵抗損失を低減することができる。そのため、セル21の電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。また、第1極部材1において、第1集電板12と第2集電板15とで計測対象を分けることもできる。例えば、第1集電板12を電圧計測用とし、第2集電板15を電流計測用とすることもできる。同様に、第2極部材3において、第1集電板32と第2集電板35とで計測対象を分けることもできる。例えば、第1集電板32を電圧計測用とし、第2集電板35を電流計測用とすることもできる。
【0072】
図1の例では、第2集電板15および第2集電板35の形状は円形状である。しかし、第2集電板15および第2集電板35の形状はこれに限られない。第2集電板15および第2集電板35の形状は、例えば、矩形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0073】
第2集電板15および第2集電板35は、セル21の電圧計測用の集電板であってもよい。すなわち、第2集電板15および第2集電板35のそれぞれがセル21の電圧の第2取り出し端子を兼ねていてもよい。
【0074】
第2集電板15および第2集電板35は、セル21の電流用の集電板であってもよい。すなわち、第2集電板15および第2集電板35のそれぞれがセル21の電流の第2取り出し端子を兼ねていてもよい。
【0075】
第2集電板15は第1集電体13に面接触する。すなわち、第2集電板15と第1集電体13とは、セル評価用ホルダ10の組み立て時に面接触することで、電気的に導通する。
【0076】
第2集電板35は第1集電体33に面接触する。すなわち、第2集電板35と第1集電体33とは、セル評価用ホルダ10の組み立て時に面接触することで、電気的に導通する。
【0077】
以上の構成によれば、第2集電板15が第1集電体13に面接触することにより、第2集電板15の抵抗損失を低減できる。また、第2集電板35が第1集電体33に面接触することにより、第2集電板35の抵抗損失を低減できる。したがって、セル21の電気的評価の精度を向上させることができる。
【0078】
第2集電板15は第1集電体13に直接接触していてもよく、Agなどの導電性ペーストを介して接触していてもよい。第2集電板35は第1集電体33に直接接触していてもよく、Agなどの導電性ペーストを介して接触していてもよい。
【0079】
第2集電板15および第2集電板35は、例えば、耐熱性および電気伝導性を有する金属材料で製造される。このような金属材料は、例えば、ステンレスである。
【0080】
次に、図2を用いて、第1極部材1およびセル固定部材2について詳説する。
【0081】
図2は、図1の第1極部材1およびセル固定部材2の拡大図を示す。図2では、セル固定部材2、第1集電板12および第2集電板15の構造を理解しやすくするため、極端板11などの部材の一部を省略している。また、図1から明らかなように、第2極部材3は、セル固定部材2を中心として第1極部材1と対称構造を有するため、図示を省略するとともに、詳説を省略することがある。
【0082】
第1集電板12において、シール部14は、第1集電体13に接続された接続部14bを有する。図1の例では、接続部14bは、環状部14aの内縁から延びた突起形状を有している。図1の例のように、環状部14aと接続部14bとは、一体的に形成されていてもよい。環状部14aに対して、接続部14bが後付けで取り付けられてもよい。
【0083】
以上の構成によれば、接続部14bによって、ガス経路12bを確保しつつ、第1集電体13とシール部14とを導通させることができる。
【0084】
接続部14bは第1集電体13に直接接触していてもよく、Agなどの導電性ペーストを介して接触していてもよい。
【0085】
第1集電体13は、シール部14に対して、後付けで接続させることができる。
【0086】
シール部14は、第1集電体13の周方向に沿って複数の接続部14bを有していてもよい。すなわち、シール部14と第1集電体13とが複数の接続部14bによって接触していてもよい。
【0087】
接続部14bの大きさおよび形状は特に限定されない。接続部14bの形状は、例えば、環状部14aの内縁から延びた板形状であってもよい。
【0088】
接続部14bは、第1集電板12および第1集電板32について説明した電気伝導性の高い金属材料で製造される。環状部14aおよび接続部14bは、典型的には、同じ金属材料で製造される。
【0089】
第1集電板12において、シール部14は、第1取り出し端子として、環状部14aの周囲に設けられた第1突出部14cを有する。
【0090】
以上の構成によれば、シール部14の第1突出部14cを用いて効率的にセル21の電気的評価を行うことができる。
【0091】
第1突出部14cは、接続部14bとの間の距離が最短であるように設けられてもよい。つまり、第1集電体13の周方向において、接続部14bが存在する角度範囲、第1突出部14cが存在する角度範囲と重複していてもよい。
【0092】
以上の構成によれば、セル21の電気的評価の精度をより向上させることができる。
【0093】
第1突出部14cには、電圧計測用の端子が接続されてもよく、電流計測用の端子が接続されてもよい。第1突出部14cには、電圧計測用の端子および電流計測用の端子の両方が接続されてもよい。
【0094】
シール部14は、複数の第1突出部14cを有していてもよい。すなわち、シール部14は、第1取り出し端子を複数有していてもよい。
【0095】
第1突出部14cの大きさおよび形状は特に限定されない。第1突出部14cの形状は、例えば、環状部14aの外縁から延びた板形状であってもよい。
【0096】
第2集電板15は、電気的評価のための第2取り出し端子として、第2集電板15の周囲に形成された第2突出部15cを有する。
【0097】
以上の構成によれば、第2集電板15の第2突出部15cを用いて効率的にセル21の電気的評価を行うことができる。
【0098】
第2突出部15cには、電流計測用の端子が接続されてもよく、電流計測用の端子が接続されてもよい。第2突出部15cには、電圧計測用の端子および電流計測用の端子の両方が接続されてもよい。
【0099】
第2集電板15は、複数の第2突出部15cを有していてもよい。すなわち、第2集電板15は、第2取り出し端子を複数有していてもよい。
【0100】
第2突出部15cの大きさおよび形状は特に限定されない。第2突出部15cの形状は、例えば、第2集電板15の外縁から延びた板形状であってもよい。
【0101】
図1に示すように、セル評価用ホルダ10は、絶縁性の第1面シール部材4、および縁性の第2面シール部材5をさらに備える。第1面シール部材4は、第1極部材1とセル固定部材2との間に配置される。第2面シール部材5は、セル固定部材2と第2極部材3との間に配置される。
【0102】
以上の構成によれば、例えば、反応ガスである燃料ガスと酸化剤ガスとの間に圧力差が生じる差圧条件下でセル評価試験を実施した場合であっても、第1面シール部材4および第2面シール部材5によって外部へのガスの漏れが防止される。したがって、セル21の電気的評価の精度をより向上させることができる。
【0103】
第1面シール部材4は、第1極部材1を構成する各部材の間に配置される。図1の例では、第1面シール部材4は、極端板11と第2集電板15との間、第2集電板15と第1集電板12との間、および第1集電板12とセル固定部材2との間に配置される。また、第2面シール部材5は、第2極部材3を構成する各部材の間に配置される。図1の例では、第2面シール部材5は、極端板31と第2集電板35との間、第2集電板35と第1集電板32との間、および第1集電板32とセル固定部材2との間に配置される。
【0104】
第1極部材1において、第2集電板15と第1集電板12とは、第1集電体13を介して電気的に導通している。ただし、第1面シール部材4によって直接的には絶縁されている。第2極部材3における第2集電板35および第1集電板32についても同様である。
【0105】
第1極部材1において、第2集電板15と第1集電板12との間に配置された第1面シール部材4、および第1集電板12とセル固定部材2との間に配置された第1面シール部材4は、シール部14の収容孔と等しい大きさの貫通孔41を有する。また、第2極部材3において、第2集電板35と第1集電板32との間に配置された第1面シール部材4、および第1集電板32とセル固定部材2との間に配置された第2面シール部材5は、シール部34の収容孔と等しい大きさの貫通孔51を有する。
【0106】
以上の構成によれば、第2集電板15と第1集電板12との間、および第1集電板12とセル固定部材2との間において、第1面シール部材4によって反応ガスの流れが妨げられない。ここでの反応ガスは、例えば、水素含有ガスなどの燃料ガスである。また、第2集電板35と第1集電板32との間、および第1集電板32とセル固定部材2との間において、第2面シール部材5によって反応ガスの流れが妨げられない。ここでの反応ガスは、例えば、空気などの酸化剤ガスである。
【0107】
第1極部材1において、第2集電板15と極端板11との間に配置された第1面シールは、開口部11cに対応する貫通孔42および開口部11dに対応する貫通孔43を有する。また、第2極部材3において、第2集電板35と極端板31との間に配置された第2面シール部材5は、開口部31cに対応する貫通孔52および開口部31dに対応する貫通孔53を有する。
【0108】
以上の構成によれば、外部へのガス漏れが防止される。
【0109】
図1および図2の例では、第1面シール部材4および第2面シール部材5の形状は、円形状または円形環状である。しかし、第1面シール部材4および第2面シール部材5の形状はこれに限られない。第1面シール部材4および第2面シール部材5の形状は、例えば、矩形状または矩形環状であってもよく、その他の形状であってもよい。シールする部材の形状に応じて、第1面シール部材4および第2面シール部材5の形状が決められてもよい。
【0110】
第1面シール部材4および第2面シール部材5は、サーミキュライトおよびマイカからなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0111】
以上の構成によれば、第1面シール部材4および第2面シール部材5によって外部へのガス漏れを防止できる。
【0112】
図2に示すように、セル固定部材2は、セル21が固定されるべき収容孔22aが形成された金属セパレータ22を有する。セル21は、ガラスシール23によって金属セパレータ22の収容孔22aの周囲と接合される。すなわち、ガラスシール23は、セル21と金属セパレータ22との間に形成される。ガラスシール23は、セル21のアノードの表面およびカソードの表面には存在していない。
【0113】
以上の構成によれば、ガラスシール23によって外部へのガス漏れを防止できる。ガラスシール23によってセル21のアノードとセル21のカソードとが隔てられ、これにより、ガスの混合が防止される。
【0114】
セル評価用ホルダ10は、さらに締結部材を備える。図1の例では、締結部材は、8組のネジ61、セラミックスブッシュ62、セラミックスバネ63、およびナット64で構成されている。セル評価用ホルダ10は、極端板11、第2集電板15、第1集電板12、セル固定部材2、第1集電板32、第2集電板35、および極端板31のそれぞれが、第1面シール部材4および第2面シール部材5を介して積層された後、締結部材により上下から締め付けて組み立ててから使用される。
【0115】
セル評価用ホルダ10は、アルミナ管、またはアルミナヤーンなどの耐熱性を有する材料に被覆された貴金属線、例えば、Ag線などにより外部の制御装置に接続される。
【0116】
図1および図2に示すように、セル評価用ホルダ10を構成する各部材には、ネジ61を通す挿入孔が形成されている。詳細には、第1極部材1において、極端板11には、開口部11dよりも外側の周囲に、複数の挿入孔11eが設けられている。第2集電板15には、ガス経路15bよりも外側の周囲に、複数の挿入孔15eが設けられている。第1集電板12のシール部14の周囲には、複数の挿入孔12eが設けられている。第2極部材3を構成する各部材にも同様に複数の挿入孔が設けられている。セル固定部材2の金属セパレータ22の周囲には、複数の挿入孔2eが設けられている。第1面シール部材4および第2面シール部材5の周囲にも、複数の挿入孔4eが設けられている。図1および図2では、セル評価用ホルダ10を構成する各部材には、8つの挿入孔が設けられている。
【0117】
本実施形態では、第1集電板12および第2集電板32がセル21の電気的評価のための取り出し端子を兼ねているので、セル21の電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができ、セル21の電気的評価を精度よく行うことができる。
【0118】
上記メカニズムについて、第1極部材1を例に挙げて説明する。第1集電板12において、シール部14が第1集電体13と導通するように構成されているので、第1集電体13の抵抗損失は少ない。そのため、例えば、第1集電板12の第1突出部14cで計測される電圧は、セル21の実際の電圧により近い値となる。
【0119】
仮に、セル評価用ホルダ10が、集電板として第2集電板15のみを備え、第1集電板12のシール部14を備えない場合には、電圧計測用の端子および電流計測用の端子は、ともに第2集電板15の第2突出部15cに接続される。そうすると、電圧および電流の計測値は、セル21、第1集電体13、および第2集電板15までの値となる。したがって、セル21の抵抗が小さいことにより、第2集電板15までの抵抗値が無視できない値となった場合には、第2集電板15までの距離の抵抗損失が影響し、電圧および電流の計測値は、実際のセル21の電圧および電流からずれることがある。
【0120】
また、特許文献1に開示のセル評価用ホルダのように、第1集電体13に直接、Ag線などのリード線を取り付けて外部に電圧および電流を取り出すことも考えられる。しかし、この場合には、セル21の抵抗が小さいことにより、セル21と外部端子とを接続する長いリード線の抵抗は無視できない値となる。そのため、リード線の抵抗損失が影響し、セル21の電圧および電流を正確に計測できないことがある。
【0121】
さらに、特許文献1に開示のセル評価用ホルダでは、リード線を外部に取り出さなければならないので、第1面シール部材4および第2面シール部材5によるガスシールとの両立が困難となる。
【0122】
次に、図3および図4を用いて、組み立て時のセル評価用ホルダ10におけるガスの流れを詳説する。
【0123】
図3および図4は、図1のセル評価用ホルダ10の組み立て時の断面図である。図3は、ガス経路11a、ガス経路11b、ガス経路31a、ガス経路31b、および図1に示した軸線Xを含む面で切断した断面図を示す。図4は、ネジ61を通す挿入孔および図1に示した軸線Xを含む面で切断した断面図を示す。図3および図4では、セル評価用ホルダ10の内部構造の理解を容易にするため、内部の空間に設置された第1集電体13および第1集電体33は省略している。
【0124】
反応ガスは、極端板11のガス経路11aから供給される。ここでの反応ガスは、例えば、水素含有ガスなどの燃料ガスである。供給された反応ガスは、極端板11の内部のガス経路11aを通って極端板11の中央まで流れる。その後、反応ガスは、第2集電板15のガス経路15aを通過し、第1集電板12の第1集電体13を透過した後、セル固定部材2のセル21の電極(例えば、アノード)の中心に供給される。セル21の中心に供給された反応ガスは中心から外側に向かって放射状に流れる。その後、反応ガスはオフガスとなって、第1集電板12のガス経路12b、および第2集電板15のガス経路15bを順に通過する。最後に、オフガスは、極端板11のガス経路11bを通じて外部に排出される。
【0125】
このとき、第1面シール部材4に加えて、第1集電板12のシール部14によっても、外部へのガス漏れが防止される。
【0126】
反応ガスは、極端板31のガス経路31aから供給される。ここでの反応ガスは、例えば、空気などの酸化剤ガスである。供給された反応ガスは、極端板31の内部のガス経路31aを通って極端板31の中央まで流れる。その後、反応ガスは、第2集電板35のガス経路35aを通過し、第1集電板32の第1集電体33を透過した後、セル固定部材2のセル21の電極(例えば、カソード)の中心に供給される。セル21の中心に供給された反応ガスは中心から外側に向かって放射状に流れる。その後、反応ガスはオフガスとなって、第1集電板32のガス経路32b、および第2集電板35のガス経路35bを順に通過する。最後に、オフガスは、極端板31のガス経路31bを通じて外部に排出される。
【0127】
このとき、第2面シール部材5に加えて、第1集電板32のシール部34によっても、外部へのガスの漏れが防止される。
【0128】
なお、ガスの流れは、上記で説明したものに限定されない。例えば、ガスは、セル評価用ホルダ10の中心から外側に向かってでなく、セル評価用ホルダ10の外側から中心に向かって流すことも可能である。また、ガスは、セル21の中心から外側に向かって放射状ではなく、一方向の並行流れで流すことも可能である。
【0129】
(変形例)
図5は、上記実施形態1の変形例によるセル評価用ホルダ20の分解斜視図を示す。図5では、上記実施形態1と同様の構造を有する部材については、同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0130】
セル評価用ホルダ20において、第1極部材1が、極端板11および2つの第1集電板121および122を含む。第2極部材3が、極端板31および2つの第1集電板321および322を含む。
【0131】
第1集電板121および第1集電板122の構造は、上記実施形態における第1集電板12の構造と同じである。第1集電板321および第1集電板322の構造は、上記実施形態における第1集電板32の構造と同じである。
【0132】
セル21の面積を大きくした場合、例えば、燃料ガスの消費、酸化剤ガスの消費、および水蒸気の生成などにより、セル21の面内ではガス濃度に違いが生じる。これに伴い、セル21の面内では電圧および電流の分布に差異が生じることが知られている。以上の構成によれば、セル21の面積が大きい場合でも、複数の第1集電板12および32により、セル21の面内における複数個所について電気的評価を行うことできる。したがって、電圧および電流の分布を評価することができる。図5の例では、セル21のアノードおよびカソードのそれぞれにおいて、2個所の電気的評価を行うことができる。
【0133】
第1集電板121の第1突出部141cおよび第1集電板122の第1突出部142cは、上記実施形態における第1集電板12の第1突出部14cに対応している。第1集電板321の第1突出部341cおよび第1集電板322の第1突出部342cは、上記実施形態における第1集電板32の第1突出部34cに対応している。
【0134】
第1集電板121の第1突出部141cは、第1集電板122の第1突出部142cと異なる方向を向いていてもよい。第1集電板321の第1突出部341cは、第1集電板322の第1突出部342cと異なる方向を向いていてもよい。
【0135】
以上の構成によれば、セル21のアノードおよびカソードのそれぞれにおいて、電圧および電流の分布をより精度よく評価することができる。
【0136】
図5の例では、第1極部材1が、2つの第1集電板121および122を含むとともに、第2極部材3が、2つの第1集電板321および322を含んでいる。しかし、第1極部材1および第2極部材3からなる群から選択される少なくとも1つが、複数の第1集電板12または32を含んでいてもよい。また、第1極部材1が含む第1集電板12の数は特に限定されない。第2極部材3が含む第1集電板32の数は特に限定されない。
【0137】
第1集電板121と第1集電板122との間には、第1面シール部材4が配置されている。第1集電板321と第1集電板322との間には、第2面シール部材5が配置されている。第1面シール部材4は、上記実施形態において、セル固定部材2と第1集電板12との間に配置される第1面シール部材4と同じ形状を有する。第2面シール部材5は、上記実施形態において、セル固定部材2と第1集電板32との間に配置される第2面シール部材5と同じ形状を有する。
【0138】
以上、本開示に係るセル評価用ホルダについて、実施の形態に基づいて説明したが、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0139】
例えば、上述の実施形態では、第1極部材1および第2極部材3のいずれもが、第1取り出し端子を兼ねる第1集電板12および32を含んでいる。しかし、第1極部材1および第2極部材3からなる群から選択される少なくとも1つが、第1取り出し端子を兼ねる第1集電板を含んでいてもよい。例えば、第1極部材1は第1集電板12を含むが、第2極部材3は第1集電板32を含んでいなくてもよい。この場合であっても、第1集電板12からセル21の電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。
【0140】
また、上述の実施形態では、第1極部材1および第2極部材3のいずれもが、第2取り出し端子を兼ねる第2集電板15および35を含んでいる。しかし、第1極部材1および第2極部材3からなる群から選択される少なくとも1つが、第2取り出し端子を兼ねる第2集電板を含んでいてもよい。例えば、第1極部材1は第2集電板15を含むが、第2極部材3は第2集電板35を含んでいなくてもよい。この場合であっても、第2集電板15からセル21の電圧および電流を精度よく外部に取り出すことができる。
【0141】
図1から図5に示したセル評価用ホルダ10および20を構成する各部材の形状は円形状である。しかし、各部材の形状はこれに限られない。各部材の形状は、例えば、矩形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0142】
図1および図5に示したセル評価用ホルダ10および20では、第2極部材3は、セル固定部材2を中心として、第1極部材1と対称構造を有している。しかし、第2極部材3は、第1極部材1と対称構造を有していなくてもよい。例えば、第1極部材1が少なくとも1つの第1集電板として第1集電板12を有する一方で、第2極部材3では、シール部34ではなく第1集電体33に直接リード線を取り付けて外部に電圧および電流を取り出す構造を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示に係るセル評価用ホルダは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、固体酸化物形水蒸気電解セル(SOEC)、およびプロトン伝導型セラミック燃料電池(PCFC)などの電気化学デバイスの発電評価のための評価ホルダとして利用できる。
【符号の説明】
【0144】
10,20 セル評価用ホルダ
1 第1極部材
11 極端板
11a ガス経路
11b ガス経路
11c 開口部
11d 開口部
11e 挿入孔
12,121,122 第1集電板
12a ガス経路
12b ガス経路
12e 挿入孔
13 第1集電体
14 シール部
14a 環状部
14b 接続部
14c,141c,142c 第1突出部
15 第2集電板
15a ガス経路
15b ガス経路
15c 第2突出部
15e 挿入孔
2 セル固定部材
2e 挿入孔
21 セル
22 金属セパレータ
22a 収容孔
23 ガラスシール
3 第2極部材
31 極端板
31a ガス経路
31b ガス経路
31c 開口部
31d 開口部
32,321,322 第1集電板
32a ガス経路
32b ガス経路
33 第1集電体
34 シール部
34a 環状部
34c,341c,342c 第1突出部
35 第2集電板
35a ガス経路
35b ガス経路
4 第1面シール部材
4e 挿入孔
41,42,43 貫通孔
5 第2面シール部材
51,52,53 貫通孔
61 ネジ
62 セラミックスブッシュ
63 セラミックスバネ
64 ナット
図1
図2
図3
図4
図5