(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078855
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】歯車機構及びロボット
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20230531BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20230531BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H57/04 G
B25J19/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192162
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】牧角 知祥
【テーマコード(参考)】
3C707
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CT05
3C707CX01
3C707CX03
3C707CY34
3C707HS27
3J027FA21
3J027FB31
3J027GB03
3J027GC02
3J027GE05
3J063AA25
3J063AB15
3J063AC01
3J063BA15
3J063CB41
3J063XC10
3J063XD02
3J063XH03
3J063XH13
(57)【要約】
【課題】内部の温度上昇を効率よく抑制できる歯車機構及びロボットを提供する。
【解決手段】実施形態の減速機構1Bは、ケース2及び内歯ピン6と、内歯ピン6に噛合わされる揺動歯車11,12と、揺動歯車11,12に回転力を伝達する入力クランクシャフト8、揺動歯車11,12の回転力が伝達される出力シャフト9と、を備える。各シャフト8,9のいずれかは、少なくとも一部にシャフト8,9の軸方向全体に渡って揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1歯車と、
前記第1歯車に噛合わされる第2歯車と、
前記第2歯車に挿入され、前記第2歯車に回転力を伝達、又は前記第2歯車の回転力が伝達されるシャフトと、
を備え、
前記シャフトは、少なくとも一部に前記シャフトの軸方向全体に渡って前記第2歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部を有する
歯車機構。
【請求項2】
前記シャフトは、
前記シャフトの軸方向全体に延びる管状部と、
前記管状部の内部に設けられ前記管状部の内周面に接する前記シャフト側高熱伝導部と、
を有し、
前記管状部の剛性は、前記シャフト側高熱伝導部の剛性よりも高い
請求項1に記載の歯車機構。
【請求項3】
前記シャフト側高熱伝導部の熱伝導率は、前記管状部の熱伝導率よりも高く、かつ100W/m・K以上である
請求項2に記載の歯車機構。
【請求項4】
前記シャフト側高熱伝導部は、ヒートパイプである
請求項2又は請求項3に記載の歯車機構。
【請求項5】
前記シャフトの軸方向端部を回転自在に支持する支持部を備え、
前記支持部は、前記シャフトの周囲に設けられ前記第2歯車及び前記支持部の熱伝導率よりも高い熱伝導率の支持部側高熱伝導部を有する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の歯車機構。
【請求項6】
前記支持部は、前記シャフトの周囲に形成された凹部を有し、
前記凹部に前記支持部側高熱伝導部が収納されている
請求項5に記載の歯車機構。
【請求項7】
前記支持部側高熱伝導部は、グリスである
請求項5に記載の歯車機構。
【請求項8】
前記支持部側高熱伝導部の熱伝導率は、5W/m・K以上である
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の歯車機構。
【請求項9】
前記支持部が取り付けられる相手部材を有し、
前記相手部材の熱伝導率は、前記シャフト側高熱伝導部の熱伝導率以上である
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の歯車機構。
【請求項10】
前記第1歯車は、内歯を有する内歯歯車であり、
前記第2歯車は、前記内歯歯車の前記内歯に噛合わされる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車であり、
前記シャフトは、前記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフト、及び前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトの少なくともいずれか一方である
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の歯車機構。
【請求項11】
前記内歯歯車は、
筒状のケースと、
前記ケースの内周面に周方向に沿って並ぶ複数の内歯ピンと、
を備え、
前記ケースの熱伝導率は、前記内歯ピンの熱伝導率及び前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い
請求項10に記載の歯車機構。
【請求項12】
前記内歯歯車は、
筒状のケースと、
前記ケースの内周面に周方向に沿って並ぶ複数の内歯ピンと、
を備え、
前記ケースの熱伝導率は、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高く、
かつ前記内歯ピンの熱伝導率は、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い
請求項10に記載の歯車機構。
【請求項13】
前記揺動歯車は、樹脂により形成されている
請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の歯車機構。
【請求項14】
内歯を有する内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記内歯に噛合わされる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車と、
前記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフトと、
前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され、前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトと、
前記出力シャフトの軸方向両端部を回転自在に支持する支持部と、
を備え、
前記入力クランクシャフト及び前記出力シャフトの少なくともいずれか一方は、
軸方向全体に延びる管状部と、
前記管状部の内部に設けられ、前記管状部の内周面に接するシャフト側高熱伝導部と、
を有し、
前記シャフト側高熱伝導部の熱伝導率は、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高く、
前記管状部の剛性は、前記シャフト側高熱伝導部の剛性よりも高く、
前記支持部は、前記支持部の前記出力シャフトの周囲に形成された凹部を有し、
前記凹部に前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率の支持部側高熱伝導部が収納されている
歯車機構。
【請求項15】
筒状のケースと、
前記ケースの内周面に周方向に沿って並ぶ複数の内歯ピンと、
前記内歯ピンに噛合わせる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車と、
記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフトと、
前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され、前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトと、
前記出力シャフトの軸方向両端部を回転自在に支持する支持部と、
を備え、
前記ケースの熱伝導率は、前記内歯ピンの熱伝導率及び前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い
歯車機構。
【請求項16】
第1部材及び第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記第1部材に対して前記第2部材を回転させる歯車機構と、
を備え、
前記歯車機構は、
前記第1部材に固定され、内歯を有する内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記内歯に噛合わされる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車と、
前記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフトと、
前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され、前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトと、
前記出力シャフトの軸方向両端部を回転自在に支持するとともに前記第2部材に固定される支持部と、
を備え、
前記入力クランクシャフト及び前記出力シャフトの少なくともいずれか一方は、少なくとも一部に軸方向全体に渡って設けられ、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部を有する
ロボット。
【請求項17】
前記入力クランクシャフト及び前記出力シャフトの少なくともいずれか一方は、
軸方向全体に延びる管状部と、
前記管状部の内部に設けられ前記管状部の内周面に接するシャフト側高熱伝導部と、
を有する
請求項16に記載のロボット。
【請求項18】
前記支持部は、前記支持部の前記出力シャフトの周囲に形成された凹部を有し、
前記凹部に前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率の支持部側高熱伝導部が収納されている
請求項16又は請求項17に記載のロボット。
【請求項19】
前記第2部材の熱伝導率は、前記出力シャフトの熱伝導率と同一以上である
請求項16から請求項18のいずれか一項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車機構及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットとして、作業者と作業空間を共有する協調ロボットが知られている。この種の協調ロボットのうち、例えば多関節協調ロボット等には、2つのアームが連結される関節部に歯車機構として減速機構が設けられ、さらに、減速機構に回転力を付与する電動モータ等が設けられている。電動モータの回転力を減速して出力することにより、2つのアームの一方に対して他方のアームに大きな出力トルクを付与することができる。
【0003】
減速機構としては、例えば回転位置精度や耐荷重性の高い偏心揺動型の減速機構が用いられる。この種の減速機構は、例えば内歯歯車と、内歯歯車に噛合わされる揺動歯車(外歯歯車)と、揺動歯車を揺動回転させるクランクシャフト(偏心体)と、を備える。
ところで、この種の減速機構は、内歯歯車と揺動歯車との噛合い位置が順次変更されることにより生じる摩擦熱によって、減速機構内の温度が上昇してしまう。減速機構内の温度が高温になると、焼き付き等が生じて製品寿命が短くなってしまう。このため、減速機構内の温度上昇を抑制するためのさまざまな技術が提案されている。
【0004】
例えば、揺動歯車を樹脂製にする技術が開示されている。内歯歯車を、樹脂製のケース(内歯歯車本体)と、ケースに設けられたピン溝に回転自在に配置され、ケースの熱伝導率よりも高い熱伝導率の素材で形成された内歯ピン(外ピン)と、により構成している技術が開示されている。このように構成することで、内歯歯車と揺動歯車との噛合いにより生じる熱を内歯ピンに伝達し、ケースや揺動歯車の温度上昇を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述のような歯車機構の内歯歯車では、ケースの体積と比較して内歯ピンの体積が極端に小さい。このため、内歯ピンに蓄えられる熱量が限られてしまうので、歯車機構内の温度上昇の抑制は、実際はケースの放熱性に依存することになる。この結果、歯車機構内の放熱が促進されずに熱が籠ってしまい、歯車機構内の温度上昇を効率よく抑制しにくいという課題があった。
【0007】
本発明は、内部の温度上昇を効率よく抑制できる歯車機構及びロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る歯車機構は、第1歯車と、前記第1歯車に噛合わされる第2歯車と、前記第2歯車に挿入され、前記第2歯車に回転力を伝達、又は前記第2歯車の回転力が伝達されるシャフトと、を備え、前記シャフトは、少なくとも一部に前記シャフトの軸方向全体に渡って前記第2歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部を有する。
【0009】
このように構成することで、第1歯車と第2歯車との噛合いにより生じる熱や第2歯車とシャフトとの間に生じる熱を積極的にシャフトに伝達することができる。シャフトの少なくとも一部に軸方向全体に渡ってシャフト側高熱伝導部が設けられているので、シャフトに伝達された熱は、シャフトの軸方向両端に行き渡る。このシャフトの軸方向両端から積極的に熱を放熱できる。このため、歯車機構の内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
【0010】
上記構成で、前記シャフトは、前記シャフトの軸方向全体に延びる管状部と、前記管状部の内部に設けられ前記管状部の内周面に接する前記シャフト側高熱伝導部と、を有し、前記管状部の剛性は、前記シャフト側高熱伝導部の剛性よりも高くてもよい。
【0011】
上記構成で、前記シャフト側高熱伝導部の熱伝導率は、前記管状部の熱伝導率よりも高く、かつ100W/m・K以上でもよい。
【0012】
上記構成で、前記シャフト側高熱伝導部は、ヒートパイプであってもよい。
【0013】
上記構成で、前記シャフトの軸方向端部を回転自在に支持する支持部を備え、前記支持部は、前記シャフトの周囲に設けられ前記第2歯車及び前記支持部の熱伝導率よりも高い熱伝導率の支持部側高熱伝導部を有してもよい。
【0014】
上記構成で、前記支持部は、前記シャフトの周囲に形成された凹部を有し、前記凹部に前記支持部側高熱伝導部が収納されてもよい。
【0015】
上記構成で、前記支持部側高熱伝導部は、グリスでもよい。
【0016】
上記構成で、前記支持部側高熱伝導部の熱伝導率は、5W/m・K以上でもよい。
【0017】
上記構成で、前記支持部が取り付けられる相手部材を有し、前記相手部材の熱伝導率は、前記シャフト側高熱伝導部の熱伝導率以上でもよい。
【0018】
上記構成で、記第1歯車は、内歯を有する内歯歯車であり、前記第2歯車は、前記内歯歯車の前記内歯に噛合わされる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車であり、前記シャフトは、前記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフト、及び前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトの少なくともいずれか一方でもよい。
【0019】
上記構成で、前記内歯歯車は、筒状のケースと、前記ケースの内周面に周方向に沿って並ぶ複数の内歯ピンと、を備え、前記ケースの熱伝導率は、前記内歯ピンの熱伝導率及び前記揺動歯車の熱伝導率よりも高くてもよい。
【0020】
上記構成で、前記内歯歯車は、筒状のケースと、前記ケースの内周面に周方向に沿って並ぶ複数の内歯ピンと、を備え、前記ケースの熱伝導率は、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高く、かつ前記内歯ピンの熱伝導率は、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高くてもよい。
【0021】
上記構成で、前記揺動歯車は、樹脂により形成されてもよい。
【0022】
本発明の他の態様に係る歯車機構は、内歯を有する内歯歯車と、前記内歯歯車の前記内歯に噛合わされる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車と、前記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフトと、前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され、前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトと、前記出力シャフトの軸方向両端部を回転自在に支持する支持部と、を備え、前記入力クランクシャフト及び前記出力シャフトの少なくともいずれか一方は、軸方向全体に延びる管状部と、前記管状部の内部に設けられ、前記管状部の内周面に接するシャフト側高熱伝導部と、を有し、前記シャフト側高熱伝導部の熱伝導率は、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高く、前記管状部の剛性は、前記シャフト側高熱伝導部の剛性よりも高く、前記支持部は、前記支持部の前記出力シャフトの周囲に形成された凹部を有し、前記凹部に前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率の支持部側高熱伝導部が収納されている。
【0023】
このように偏心揺動型の歯車機構で、内歯歯車と揺動歯車との噛合いにより生じる熱や揺動歯車とシャフトとの間に生じる熱を、入力クランクシャフト又は出力シャフトに積極的に伝達することができる。各シャフトの少なくとも一方に軸方向全体に渡ってシャフト側高熱伝導部が設けられているので、入力クランクシャフト又は出力シャフトに伝達された熱は、これらシャフトの軸方向両端に行き渡る。いずれかのシャフトの軸方向両端から積極的に熱を放熱できる。このため、歯車機構の内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
また、入力クランクシャフト及び出力シャフトの少なくともいずれか一方を、管状部とシャフト側高熱伝導部とにより構成することにより、いずれかのシャフトに熱伝導率の高いシャフト側高熱伝導部を用いてもシャフトの剛性を確保することができる。このため、信頼性の高い歯車機構を提供できる。
【0024】
本発明の他の態様に係る歯車機構は、筒状のケースと、前記ケースの内周面に周方向に沿って並ぶ複数の内歯ピンと、前記内歯ピンに噛合わせる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車と、記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフトと、前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され、前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトと、前記出力シャフトの軸方向両端部を回転自在に支持する支持部と、を備え、前記ケースの熱伝導率は、前記内歯ピンの熱伝導率及び前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い。
【0025】
このように偏心揺動型の歯車機構で、内歯歯車と揺動歯車との噛合いにより生じる熱や揺動歯車とシャフトとの間に生じる熱を、ケースに積極的に伝達することができる。このケースを介して効率よく放熱できるので、歯車機構の内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
【0026】
本発明の他の態様に係るロボットは、第1部材及び第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記第1部材に対して前記第2部材を回転させる歯車機構と、を備え、前記歯車機構は、前記第1部材に固定され、内歯を有する内歯歯車と、前記内歯歯車の前記内歯に噛合わされる外歯を有し、揺動回転される揺動歯車と、前記揺動歯車を回転自在に支持する偏心部を有するとともに、前記揺動歯車に回転力を伝達する入力クランクシャフトと、前記入力クランクシャフトの周囲に配置されるとともに前記揺動歯車に挿入され、前記揺動歯車の回転力が伝達される出力シャフトと、前記出力シャフトの軸方向両端部を回転自在に支持するとともに前記第2部材に固定される支持部と、を備え、前記入力クランクシャフト及び前記出力シャフトの少なくともいずれか一方は、少なくとも一部に軸方向全体に渡って設けられ、前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部を有する。
【0027】
このように偏心揺動型の歯車機構を用いたロボットで、歯車機構の内部の温度上昇を効率よく抑制できる。この結果、歯車機構の製品寿命を延命化でき、ロボットのメンテナンスコストも低減できる。
【0028】
上記構成で、前記入力クランクシャフト及び前記出力シャフトの少なくともいずれか一方は、軸方向全体に延びる管状部と、前記管状部の内部に設けられ前記管状部の内周面に接するシャフト側高熱伝導部と、を有してもよい。
【0029】
上記構成で、前記支持部は、前記支持部の前記出力シャフトの周囲に形成された凹部を有し、前記凹部に前記揺動歯車の熱伝導率よりも高い熱伝導率の支持部側高熱伝導部が収納されてもよい。
【0030】
上記構成で、前記第2部材の熱伝導率は、前記出力シャフトの熱伝導率以上でもよい。
【発明の効果】
【0031】
上述の歯車機構及びロボットは、内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態における協調ロボットの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における第2減速機構の概略構成図である。
【
図3】本発明の第2実施形態における減速機構の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
<協調ロボット>
図1は、協調ロボット100の概略構成図である。
以下の説明では、協調ロボット100の上下方向及び水平方向は、設置面Fに協調ロボット100を載置した状態で上下方向及び水平方向というものとする。
【0035】
図1に示すように、協調ロボット100は、設置面Fに載置されるベース部(請求項における第1部材又は第2部材の一例)101と、ベース部101上に設けられた回転ヘッド(請求項における第1部材又は第2部材の一例)102と、回転ヘッド(請求項における第1部材又は第2部材の一例)102の上部に回転自在に組み付けられたアームユニット(請求項における第1部材又は第2部材の一例)103(いずれも請求項における相手部材の一例でもある)と、これらベース部101、回転ヘッド102、及びアームユニット103の関節部106a,106b,106c(第1関節部106a、第2関節部106b、第3関節部106c)に組み付けられる減速機構1A,1B,1C(第1減速機構1A、第2減速機構1B、第3減速機構1C)と、駆動源としてのサーボモータ107,108,109(第1サーボモータ107、第2サーボモータ108、第3サーボモータ109)と、アームユニット103に取り付けられたエンドエフェクタ110と、を備える。
【0036】
回転ヘッド102は、ベース部101に対し第1回転軸線L1回りに回転自在に連結される。この連結された箇所が第1関節部106aであり、第1関節部106adに第1減速機構1A及び第1サーボモータ107が組み付けられる。
第1回転軸線L1は、例えば上下方向と一致している。回転ヘッド102には、第1減速機構1を介して第1サーボモータ107の回転が伝達される。これにより、ベース部101に対して回転ヘッド102が第1回転軸線L1回りに回転駆動される。
【0037】
アームユニット103は、例えば一方向に長い2つのアーム111,112(第1アーム111、第2アーム112)からなる。2つのアーム111,112のうち、第1アーム111の一端が、回転ヘッド102の上部に第2回転軸線L2回りに回転自在に連結される。この連結された箇所が第2関節部106bであり、第2関節部106bに第2減速機構1B及び第2サーボモータ108が組み付けられる。
【0038】
第2回転軸線L2は、例えば水平方向と一致している。第1アーム111には、第2減速機構1Bを介して第2サーボモータ108の回転が伝達される。これにより、回転ヘッド102に対して第1アーム111が第2回転軸線L2回りに回転駆動される。例えば第1アーム111は、ベース部101に対して前後方向に揺動駆動される。
【0039】
第1アーム111の他端には、2つのアーム111,112のうちの第2アーム112の一端が第3回転軸線L3回りに回転自在に連結される。この連結された箇所が第3関節部106cであり、第3関節部106cに第3減速機構1C及び第3サーボモータ109が組み付けられる。
第3回転軸線L3は、例えば水平方向と一致している。第2アーム112には、第3減速機構1Cを介して第3サーボモータ109の回転が伝達される。これにより、第1アーム111に対して第2アーム112が第3回転軸線L3回りに回転駆動される。例えば第2アーム112は、第1アーム111に対して上下方向に揺動駆動される。
【0040】
エンドエフェクタ110は、第2アーム112の他端に取り付けられている。回転ヘッド102、第1アーム111、及び第2アーム112を駆動させることにより、エンドエフェクタ110が3次元的に駆動される。
【0041】
また、このような協調ロボット100を構成するベース部101、回転ヘッド102、第1アーム111、及び第2アーム112は、例えばアルミ合金により形成されている。アルミ合金の熱伝導率は、201[W/m・K]程度である。その他、各々例えばマグネシウム合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、窒化ホウ素を含有して熱伝導率を高めた樹脂等により形成してもよい。マグネシウム合金の熱伝導率は、例えば51.2[W/m・K]程度である。
【0042】
[第1実施形態]
<減速機構>
次に、
図2に基づいて各減速機構1A~1Cについて説明する。
各減速機構1A~1Cの基本的構成は同一である。このため、以下の説明では、各減速機構1A~1Cのうちの第2減速機構1Bについてのみ説明し、第1減速機構1A及び第3減速機構1Cについての説明は省略する。
【0043】
図2は、第2減速機構1Bの概略構成図である。
図2に示すように、第2減速機構1Bは、いわゆる偏心揺動型の減速機構である。第2減速機構1Bは、円筒状のケース(請求項における第1歯車、内歯歯車の一例)2と、ケース2に回転自在に支持されたキャリア(請求項における支持部の一例)7と、キャリア7に回転自在に支持された入力クランクシャフト(センターシャフト;請求項におけるシャフト側高熱伝導部の一例)8、及び複数(例えば3つ)の出力シャフト(請求項におけるシャフト側高熱伝導部の一例)9と、入力クランクシャフト8に回転自在に支持された揺動歯車11,12(第1揺動歯車11、第2揺動歯車12;請求項における第2歯車の一例)と、を備える。
【0044】
ケース2の中心軸線C1は、第2回転軸線L2と一致している。以下の説明では、第2回転軸線L2と平行な方向を軸方向と称し、第2回転軸線L2回りを周方向と称し、軸方向及び周方向に直交する方向を径方向と称する場合がある。
【0045】
ケース2は、例えばアルミ合金により形成されている。その他、ケース2は、例えばマグネシウム合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、窒化ホウ素を含有して熱伝導率を高めた樹脂等により形成してもよい。ケース2の熱伝導率は、後述する内歯ピン6の熱伝導率よりも高いことが望ましい。
ケース2の外周面2aには、軸方向中央よりも一方寄り(
図2における左方寄り)に、径方向外側に張り出す外フランジ部4が一体成形されている。外フランジ部4は、軸方向に沿う断面が四角形状に形成されている。
【0046】
外フランジ部4には、軸方向に貫通する複数のボルト孔4aが周方向に等間隔で形成されている。外フランジ部4には、例えば軸方向外側から回転ヘッド102が重ねられる。そして、外フランジ部4の回転ヘッド102とは反対側からボルト孔4aにボルト5を挿入する。このボルト5を回転ヘッド102の雌ネジ部102aに締め付けることにより、回転ヘッド102にケース2が固定される。
【0047】
ケース2の内周面2bには、軸方向両側に、それぞれ段差部3c,3d(第1段差部3c、第2段差部3d)を介して拡径部3a,3b(第1拡径部3a、第2拡径部3b)が形成されている。各拡径部3a,3bの内径は、ケース2の内周面2bの内径よりも大きい。各拡径部3a,3bに、キャリア7が設けられている。
【0048】
また、ケース2の内周面2bには、2つの段差部3c,3dの間に、複数の内歯ピン(請求項における第1歯車、内歯歯車の一例)6が設けられている。内歯ピン6は、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料等で形成することが可能である。また、内歯ピン6は、カーボンナノチューブ(CNT)、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を配合させた樹脂でもよい。さらに、内歯ピン6は、軸受鋼等の鉄系金属で形成してもよい。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により内歯ピン6を形成してもよい。
【0049】
内歯ピン6は、円柱状に形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、内歯ピン6は、中空の部材でもよい。内歯ピン6は、芯材を表面材で包んだ多層構造の部材であってもよい。例えば、内歯ピン6は、芯材と表面材の一方が鉄系金属で、他方が銅系またはアルミニウム系の金属であってもよい。この場合、機械的特性と熱的特性との両立を図ることができる。また、別の一例として、内歯ピン6は、芯材と表面材の一方が金属で構成され、他方が樹脂で構成されてもよい。また、内歯ピン6は、焼結金属で形成されてもよい。
【0050】
内歯ピン6の軸方向は、ケース2の中心軸線C1と一致している。内歯ピン6は、周方向に等間隔で配置されている。内歯ピン6は、揺動歯車11,12に噛合わされる内歯として機能する。
【0051】
キャリア7は、ケース2に形成された2つの拡径部3a,3bのうち、回転ヘッド102側の第1拡径部3aに設けられた第1キャリア(シャフトフランジ)13と、第1拡径部3aとは軸方向で反対側の第2拡径部3bに設けられた第2キャリア(ホールドフランジ)14と、からなる。
各キャリア13,14は、円板状に形成されている。各キャリア13,14の外周面は、対応する拡径部3a,3bに摺動可能に嵌め合わされている。各キャリア13,14は、対応する段差部3c,3dに突き当たることにより、軸方向の位置決めが行われる。
【0052】
各キャリア13,14は、例えば樹脂により形成されている。例えば、各キャリア13,14は、POM(polyacetal:ポリアセタール)により形成することが可能である。また、各キャリア13,14は、PEEK(poly Ether Ether Ketone:ポリエーテルエーテルケトン)を代表とした、PAEK(Polyaryl Ether Ketones:ポリアリールエーテルケトン)類など、POMとは異なる樹脂により形成されてもよい。樹脂として、PPS(Poly Phenylene Sulfide;ポリフェニレンサルファイド)又はPPSを配合した樹脂でもよい。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により各キャリア13,14を形成してもよい。例えば、PPSの熱伝導率は、0.2[W/m・K]程度である。窒化ホウ素を含有したPPSの熱伝導率は、例えば2.6[W/m・K]程度である。
【0053】
各キャリア13,14の径方向中央には、軸方向に貫通する入力シャフト孔13a,14aが形成されている。これら入力シャフト孔13a,14aには、入力クランクシャフト8が挿入されている。
各入力シャフト孔13a,14aには、軸受15a,15b(第1軸受15a、第2軸受15bが設けられている。軸受15a,15bとしては、例えば玉軸受が用いられる。これら軸受15a,15bを介し、各キャリア13,14に入力クランクシャフト8が回転自在に支持されている。入力クランクシャフト8の回転軸線は、ケース2の中心軸線C1(第2回転軸線L2)と一致している。
【0054】
また、各キャリア13,14には、入力シャフト孔13a,14aの周囲に、複数(例えば3つ)の出力シャフト孔13b,14bが周方向に等間隔で形成されている。これら出力シャフト孔13b,14bに、出力シャフト9が挿入されている。
2つのキャリア13,14のうち、第2キャリア14の第1キャリア13とは反対側の一面14cには、出力シャフト孔14bと同軸上に凹部16が形成されている。凹部16は、一面14c側が開口されているとともに、出力シャフト孔14bに通じている。
【0055】
凹部16には、グリス(請求項における支持部側高熱伝導部の一例)17が充填されている。グリス17の熱伝導率は、揺動歯車11,12及び第2キャリア14の熱伝導率よりも高い支持部側高熱伝導部である。グリス17の熱伝導率は、5[W/m・K]以上である。
出力シャフト孔13b,14bに挿入された出力シャフト9は、例えばアルミ合金により形成されている。すなわち、出力シャフト9そのものが、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部により形成されている。
【0056】
出力シャフト9は、アルミ合金に限られるものではなく、ステンレスにより形成することも可能である。ステンレスの熱伝導率は、16.7[W/m・K]程度である。この他、出力シャフト9として例えば鉄系金属を用いることができる。鉄系金属としては、所望の特性に応じて炭素鋼、軸受鋼、などを用いることができる。例えば鉄としてS45Cの熱伝導率は、45[W/m・K]程度である。
【0057】
出力シャフト9の第1キャリア13側の第1端部9aは、第1キャリア13の第2キャリア14とは反対側の一面13cから若干突き出ている。出力シャフト9の第2キャリア14側の第2端部9bは、第2キャリア14の一面14cよりも若干下がった位置にある。すなわち、出力シャフト9の第2端部9bは、第2キャリア14の凹部16内に収まった状態になる。凹部16は、第2キャリア14のうち、出力シャフト9の周囲に形成された形になる。
【0058】
出力シャフト9の各端部9a,9bには、止め輪18が取り付けられている。止め輪18によって、各キャリア13,14に対する出力シャフト9の軸方向の移動が規制される。換言すれば、止め輪18によって、出力シャフト9からの各キャリア13,14の軸方向への抜けが規制される。これにより、各キャリア13,14は、各々対応するケース2の拡径部3a,3bに嵌め合わされた状態が維持される。また、各キャリア13,14と各出力シャフト9とが一体化される。さらに、出力シャフト9は、各キャリア13,14の出力シャフト孔13b,14bに挿入されていることから、入力クランクシャフト8の周囲に配置された状態になる。
【0059】
入力クランクシャフト8は、出力シャフト9と同様に、例えばアルミ合金により形成されている。すなわち、入力クランクシャフト8そのものが、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部により形成されている。
この他、入力クランクシャフト8として、出力シャフト9と同様に例えばステンレスやさまざまな鉄系金属を用いることができる。
【0060】
入力クランクシャフト8の第1キャリア13側の第1端部8aは、第1キャリア13に設けられた第1軸受15aを介して軸方向外側に突出されている。この第1端部8aに、第2サーボモータ108が連結される。入力クランクシャフト8に、第2サーボモータ108の回転が伝達される。
【0061】
入力クランクシャフト8の第2キャリア14側の第2端部8bは、第2キャリア14に設けられた第2軸受15bの第1キャリア13とは反対側の端面とほぼ同一面上に位置されている。
入力クランクシャフト8には、各キャリア13,14に設けられた各軸受15a,15bの間に、第1偏心部21a及び第2偏心部21bが軸方向で並んで形成されている。また、入力クランクシャフト8には、各偏心部21a,21bの間に、これら偏心部21a,21bよりも直径の大きい拡径部20が形成されている。
【0062】
第1偏心部21aは、第1キャリア13側に配置されている。第2偏心部21bは、第2キャリア14側に配置されている。各偏心部21a,21bは、第2回転軸線L2から偏心されている。各偏心部21a,21bは、互いに位相角がずれている。例えば、各偏心部21a,21bは、互いに180°位相角がずれている。
【0063】
各偏心部21a,21bには、それぞれ軸受15c,15d(第3軸受15c、第4軸受15d)が設けられている。これら軸受15c,15dも第1軸受15a、第2軸受15bと同様に、例えば玉軸受が用いられる。軸受15c,15dの軸方向の間隔は、これら軸受15c,15dの軸方向端面が拡径部20に突き当たることにより規制されている。このような各軸受15c,15dを介し、各偏心部21a,21bに、それぞれ揺動歯車11,12(第1揺動歯車11、第2揺動歯車12)が回転自在に支持されている。
【0064】
2つの揺動歯車11,12は、例えば樹脂により形成されている。例えば、揺動歯車11,12は、POM(polyacetal:ポリアセタール)により形成することが可能である。この他、揺動歯車11,12として、上記キャリア13,14を形成する材料と同様に、さまざまな樹脂を用いることができる。揺動歯車11,12は樹脂により形成されているので、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも出力シャフト9の熱伝導率及び入力クランクシャフト8の熱伝導率が高い。また、揺動歯車11,12の熱伝導率よりもケース2の熱伝導率が高い。さらに、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも内歯ピン6の熱伝導率が高い。
【0065】
2つの揺動歯車11,12は、2つのキャリア13,14の間に一定の間隔をあけて配置されている。2つの揺動歯車11,12の径方向中央には、厚さ方向に貫通され対応する軸受15c,15dの外周面が嵌め合わされるクランクシャフト挿入孔24a,24b(第1クランクシャフト挿入孔24a、第2クランクシャフト挿入孔24b)が形成されている。これにより、各軸受15c,15dを介し、各偏心部21a,21bにそれぞれ揺動歯車11,12が回転自在に支持される。偏心部21a,21bによって、揺動歯車11,12は揺動回転される。
【0066】
2つのキャリア13,14の外周部には、ケース2に設けられた内歯ピン6に噛合わされる外歯23a,23bが形成されている。各外歯23a,23bの歯数は、内歯ピン6の数よりも例えば1つだけ少ない。
また、2つの揺動歯車11,12には、出力シャフト9に対応する位置に、この出力シャフト9が挿入される出力シャフト挿入孔25a,25b(第1出力シャフト挿入孔25a、第2出力シャフト挿入孔25b)が形成されている。各出力シャフト挿入孔25a,25bの内径は、これら出力シャフト挿入孔25a,25bに出力シャフト9が挿入された状態で、揺動歯車11,12の揺動回転を許容できる大きさである。
【0067】
このように構成された第2減速機構1Bの2つのキャリア13,14のうち、第2キャリア14の第1キャリア13とは反対側の一面14cに、例えば第1アーム111が重ねられる。そして、第1キャリア13に、図示しないボルトによって第1アーム111が固定される。
第1アーム111には、第2キャリア14の入力シャフト孔14aに嵌め合わされる凸部111aが形成されている。これにより、第2キャリア14に対する第1アーム111の径方向の位置決めが行われる。凸部111aは、第2軸受15b及び入力クランクシャフト8の第2端部8bと微小隙間を介して対向する程度に突出されている。
【0068】
<第2減速機構の動作及び作用>
次に、第2減速機構1Bの動作及び作用について説明する。
第2サーボモータ108を駆動させることにより、入力クランクシャフト8が回転される。これにより、各偏心部21a,21bに回転自在に支持された各揺動歯車11,12が揺動回転される。すると、ケース2の内歯ピン6に、各揺動歯車11,12の外歯23a,23bの一部が噛合わされる。
【0069】
このとき、各外歯23a,23bの歯数は、内歯ピン6の数よりも例えば1つだけ少ないので、内歯ピン6(ケース2)に対して各外歯23a,23bの噛合い箇所が周方向に順次ずれるようにして揺動歯車11,12が自転される。この自転は、入力クランクシャフト8の回転に対して減速する。
【0070】
揺動歯車11,12の出力シャフト挿入孔25a,25bには、出力シャフト9が挿入されている。このため、揺動歯車11,12が自転されることにより、各出力シャフト9に揺動歯車11,12の自転方向の回転力が伝達される。さらに、各出力シャフト9は、各キャリア13,14によって回転自在に支持されている。このため、各キャリア13,14に揺動歯車11,12の回転力が伝達される。
【0071】
各キャリア13,14の外周面は、対応するケース2の拡径部3a,3bに摺動可能に嵌め合わされている。このため、ケース2に対して各キャリア13,14が回転される。すなわち、第2サーボモータ108による回転が、減速してキャリア7(第1キャリア13、第2キャリア14)に出力される。
ケース2には、回転ヘッド102が固定されている。一方、各キャリア13,14のうちの第2キャリア14には、第1アーム111が固定されている。このため、回転ヘッド102に対して第1アーム111が、第2回転軸線L2回りに回転される。
【0072】
ここで、例えば第1アーム111(第2キャリア14)の回転を規制した場合、第2サーボモータ108による回転は、減速してケース2に出力される。この場合、第1アーム111に対して回転ヘッド102が、第2回転軸線L2回りに回転される。すなわち、減速機構1A~1Cは、ケース2及びキャリア7のいずれか一方の回転を規制することにより、他方が各サーボモータ107~109に対する出力となる。このような動作原理は、第1減速機構1A、第3減速機構1Cも同様である。
【0073】
ところで、内歯ピン6と揺動歯車11,12との噛合い、ケース2と各キャリア13,14との摺動摩擦、各キャリア13,14と出力シャフト9との摺動摩擦、軸受15a~15dの摺動摩擦等により、各々の部材が発熱する。
ここで、入力クランクシャフト8や出力シャフト9は、例えばステンレスにより形成されている。入力クランクシャフト8や出力シャフト9の熱伝導率は、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い。
【0074】
このため、第2減速機構1Bの内部に籠る熱が、入力クランクシャフト8や出力シャフト9に積極的に伝達される。例えば、各軸受15a~15dの熱や揺動歯車11,12の熱が積極的に入力クランクシャフト8に伝達される。また、内歯ピン6や第3軸受15c、第4軸受15dによる揺動歯車11,12への熱の伝達や揺動歯車11,12自体の熱によって揺動歯車11,12に籠る熱が、積極的に出力シャフト9に伝達される。
【0075】
入力クランクシャフト8に伝達された熱は軸方向全体に渡って行き渡り、第1端部8aや第2端部8bに至るまで伝達される(
図2の矢印参照)。そして、各端部8a,8bを介して放熱される。第2端部8bは第1アーム111の凸部111aと微小隙間を介して対向しているので、第2端部8bの熱が第1アーム111にも伝達される。第1アーム111は例えばアルミ合金により形成されているので、入力クランクシャフト8や出力シャフト9の熱伝導率以上である。このため、入力クランクシャフト8から第1アーム111に伝達された熱が効果的に放熱される。
【0076】
一方、出力シャフト9に伝達された熱は軸方向全体に渡って行き渡り、第1端部9aや第2端部9bに至るまで伝達される(
図2の矢印参照)。そして、各端部9a,9bを介して放熱される。
ここで、第2キャリア14には、出力シャフト9の第2端部9bの周囲に、凹部16が形成されている。さらに、凹部16には、グリス17が充填されている。グリス17が充填された凹部16の開口を閉塞するように、つまり、第2キャリア14の一面14cに重なるように第1アーム111が配置されている。このため、グリス17を介し、第1アーム111に出力シャフト9の第2端部9bの熱が効率よく伝達される。よって、出力シャフト9から第1アーム111に伝達された熱が効果的に放熱される。
【0077】
また、ケース2は、例えばアルミ合金により形成されている。内歯ピン6は、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料等で形成することが可能である。揺動歯車11,12は、例えば樹脂により形成されている。そして、ケース2の熱伝導率は、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高く、かつ内歯ピン6の熱伝導率は、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い。このため、ケース2や内歯ピン6に、内歯ピン6と揺動歯車11,12との噛合いにより生じる熱を積極的に伝達できる。よって、第2減速機構1Bの内部に熱が籠ってしまうことが抑制される。
【0078】
なお、上記のような放熱作用については、第1減速機構1A、第3減速機構1Cも同様である。これら第1減速機構1Aや第3減速機構1Cの内部に籠る熱は、入力クランクシャフト8や出力シャフト9によって放熱される。また、入力クランクシャフト8や出力シャフト9を介して回転ヘッド102や第2アーム112等に伝達され、効果的に放熱される。さらに、ケース2や内歯ピン6によって、各減速機構1A,1Cの内部に熱が籠ってしまうことが抑制される。
【0079】
このように、上述の減速機構1A,1B,1Cは、ケース2(内歯ピン6)と、内歯ピン6に噛合わされる揺動歯車11,12と、揺動歯車11,12に回転力を伝達する入力クランクシャフト8と、揺動歯車11,12の回転力が伝達される出力シャフト9と、を備える。各シャフト8,9は、揺動歯車11,12よりも熱伝導率の高い、例えばアルミ合金により形成されている。このため、内歯ピン6、揺動歯車11,12、各キャリア13,14、及び軸受15a~15dの発熱を入力クランクシャフト8や出力シャフト9に積極的に伝達することができる。各シャフト8,9に伝達された熱は軸方向全体に行き渡り、各シャフト8,9の端部8a~9bから積極的に放熱させることができる。よって、減速機構1A,1B,1Cの内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
【0080】
第2キャリア14には、出力シャフト9の第2端部9bの周囲に、凹部16が形成されている。さらに、凹部16には、グリス17が充填されている。このため、グリス17を介し、回転ヘッド102や各アーム111,112に出力シャフト9の第2端部9bの熱を効率よく伝達することができる。また、簡素な構造で出力シャフト9の第2端部9bの熱を効率よく放熱させることができる。
【0081】
なお、凹部16にグリス17を充填しない場合、凹部16が形成されている箇所が空気層となって断熱効果を発生する。凹部16にグリス17を充填することにより、凹部16での熱伝導効率を各段に向上できる。
グリス17の熱伝導率は5[W/m・K]以上であるので、出力シャフト9の第2端部9bから効率よく第2キャリア14、回転ヘッド102、及び各アーム111,112に熱を伝達させて放熱させることができる。
【0082】
協調ロボット100を構成するベース部101、回転ヘッド102、第1アーム111、及び第2アーム112は、例えばアルミ合金により形成されている。すなわち、ベース部101、回転ヘッド102、第1アーム111、及び第2アーム112の熱伝導率は、例えばステンレスにより形成されている各シャフト8,9の熱伝導率以上である。このため、各シャフト8,9に伝達された熱を効率よく回転ヘッド102、第1アーム111、及び第2アーム112に伝達することができる。よって、各シャフト8,9に伝達された熱の放熱性をさらに高めることができ、減速機構1A,1B,1Cの内部の温度上昇をさらに効率よく抑制できる。
【0083】
上記のように偏心揺動型の減速機構(減速機構1A,1B,1C)で、入力クランクシャフト8や出力シャフト9を利用して、内歯ピン6、揺動歯車11,12、各キャリア13,14、及び軸受15a~15dの発熱を効率よく放熱できる。
ケース2は、例えばアルミ合金により形成されている。ケース2の熱伝導率を内歯ピン6及び揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高くすることにより、ケース2を用いて減速機構1A,1B,1Cの内部の熱を積極的に放熱できる。ケース2により、減速機構1A,1B,1Cの放熱面積を極力増大することができる。このため、減速機構1A,1B,1Cの内部の温度上昇をさらに効率よく抑制できる。
【0084】
ケース2が例えばアルミ合金により形成されていることに加え、内歯ピン6は、金属材料、高熱伝導性の樹脂、非金属材料等で形成することが可能である。揺動歯車11,12は、例えば樹脂により形成されている。そして、ケース2の熱伝導率は、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高く、かつ内歯ピン6の熱伝導率は、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い。このため、ケース2や内歯ピン6に、内歯ピン6と揺動歯車11,12との噛合いにより生じる熱を積極的に伝達できる。よって、第2減速機構1Bの内部に熱が籠ってしまうことを抑制できる。
【0085】
揺動歯車11,12が樹脂により形成されているので、揺動歯車11,12を成形しやすくでき、減速機構1A,1B,1Cの製造コストを低減できる。また、揺動歯車11,12への熱伝達を抑制することができ、この結果、ケース2や各シャフト8,9への熱伝達のムラを低減できる。このため、減速機構1A,1B,1Cの内部の熱を積極的に外部に放熱でき、減速機構1A,1B,1Cの内部の温度上昇をさらに効率よく抑制できる。
【0086】
また、協調ロボット100では、上記減速機構1A,1B,1Cを用いることにより、減速機構1A,1B,1Cの温度上昇を効率よく抑制することで、減速機構1A,1B,1Cの製品寿命を延命化できる。このため、協調ロボット100のメンテナンスコストも低減できる。
【0087】
上述の第1実施形態では、入力クランクシャフト8及び出力シャフト9そのものが、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部であるアルミ合金等で形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、入力クランクシャフト8及び出力シャフト9は、少なくとも一部に軸方向全体に渡ってシャフト側高熱伝導部(例えばアルミ合金)を有していればよい。例えば、樹脂シャフトの一部にアルミ合金をインサート成形してもよい。アルミ合金を軸方向全体に渡って配置することにより、各シャフト8,9の軸方向両端部8a~9bに熱が行き渡り、各端部9a,9bを介して放熱できる。
【0088】
また、入力クランクシャフト8及び出力シャフト9が全て同一構成である必要はない。入力クランクシャフト8及び出力シャフト9の少なくともいずれか1つが、少なくとも一部に軸方向全体に渡ってシャフト側高熱伝導部(例えばアルミ合金)を有していればよい。
【0089】
[第2実施形態]
<減速機構>
次に、
図1を援用し、
図3に基づいて、第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態の減速機構201の概略構成図である。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する。また、第2実施形態の説明中、第1実施形態と同一名称を用いて説明を省略する場合がある。
【0090】
図1に示すように、第2実施形態では、協調ロボット100に減速機構201が用いられる点は、前述の第1実施形態と同様である。
図2に示すように、第2実施形態の減速機構201は、いわゆる偏心揺動型の減速機構であり、ケース2と、キャリア7と、入力クランクシャフト(請求項におけるシャフト側高熱伝導部の一例)208と、出力シャフト(請求項におけるシャフト側高熱伝導部の一例)209と、揺動歯車11,12と、を備える点は、前述の第1実施形態の各減速機構1A,1B,1Cと同様である。
【0091】
前述の第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態の各シャフト8,9と、第2実施形態の各シャフト208,209と、が異なる点にある。
すなわち、出力シャフト209は、軸方向に延びる出力管状部31と、出力管状部31の内部に設けられた出力ヒートパイプ32と、を備える。
【0092】
出力管状部31の軸方向の長さは、前述の第1実施形態の出力シャフト9の軸方向の長さと同一である。出力管状部31は、軸方向全体が円筒状である。出力管状部31は、例えば前述の第1実施形態の出力シャフト9と同様にアルミ合金により形成されている。この他、出力管状部31として、出力シャフト9と同様に例えばステンレスやさまざまな鉄系金属を用いることができる。出力管状部31の軸方向両端部209a,209bに、止め輪18が取り付けられている。
【0093】
出力ヒートパイプ32は、出力管状部31内を埋めるように設けられ、出力管状部31の内周面に接している。出力ヒートパイプ32の熱伝導率は、30,000[W/m・K]程度である。出力管状部31はアルミ合金やステンレス、鉄系金属により形成されているので、出力管状部31の剛性は、出力ヒートパイプ32の剛性よりも高い。
【0094】
入力クランクシャフト208は、軸方向に延びる入力管状部34と、入力管状部34の内部に設けられた入力ヒートパイプ35と、を備える。入力管状部34の軸方向の長さは、前述の第1実施形態の入力クランクシャフト8の軸方向の長さと同一である。入力管状部34は、軸方向全体が円筒状である。入力管状部34は、例えば前述の第1実施形態の入力クランクシャフト8と同様にアルミ合金により形成されている。この他、入力管状部34として、入力クランクシャフト8と同様に例えばステンレスやさまざまな鉄系金属を用いることができる。
【0095】
入力管状部34には、各キャリア13,14に設けられた各軸受15a,15bの間に、第1偏心部21a及び第2偏心部21bが軸方向で並んで形成されている。また、入力管状部34には、各偏心部21a,21bの間に、これら偏心部21a,21bよりも直径の大きい拡径部20が形成されている。
入力ヒートパイプ35は、入力管状部34内を埋めるように設けられ、入力管状部34の内周面に接している。入力ヒートパイプ35の構成は、出力ヒートパイプ32の構成と同一である。このため、入力管状部34の剛性は、入力ヒートパイプ35の剛性よりも高い。
【0096】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。また、各シャフト208,209は、管状部31,34(出力管状部31、入力管状部34)と、管状部31,34の内部に設けられたヒートパイプ32,35(出力ヒートパイプ32、入力ヒートパイプ35)と、を備える。管状部31,34の剛性は、ヒートパイプ32,35の剛性よりも高い。このため、ヒートパイプ32,35のような熱伝導率の高い材料を用いて各シャフト208,209全体としての熱伝導率を高めつつ、各シャフト208,209の剛性も確保することができる。この結果、信頼性の高い減速機構201を提供できる。ヒートパイプ32,35を用いることで、簡素な構造で各シャフト208,209全体としての熱伝導率を効果的に高めることができる。
【0097】
ヒートパイプ32,35の熱伝導率は、管状部31,34の熱伝導率よりも高く、かつ100[W/m・K]以上であるので、各シャフト208,209に伝達された熱を、それぞれ軸方向両端部208a~209bに確実に、かつ効率よく行き渡らせることができる(
図3の矢印参照)。これら端部208a~209bから各シャフト208,209に伝達された熱を積極的に放熱できる。このため、減速機構201の内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
【0098】
上述の第2実施形態では、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高い熱伝導率のシャフト側高熱伝導部として、管状部31,34の内部に設けられたヒートパイプ32,35を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、シャフト側高熱伝導部は、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高ければよい。望ましくは、管状部31,34の熱伝導率よりも高く、かつ熱伝導率が100[W/m・K]以上であるとよい。
【0099】
例えばヒートパイプ32,35に代わって、銅、銀、サーマルグリスを用いることができる。銅の熱伝導率は、403[W/m・K]程度である。銀の熱伝導率は、428[W/m・K]程度である。
このように構成することで、各シャフト208,209に伝達された熱を、各シャフト208,209の軸方向両端部208a~209bに確実に、かつ効率よく行き渡らせることができる。各端部208a~209bから積極的に各シャフト208,209に伝達された熱を放熱できる。このため、減速機構201の内部の温度上昇を効率よく抑制できる。
【0100】
上述の第2実施形態では、各シャフト208,209を構成する管状部31,32は、軸方向全体が円筒状である場合について説明した。すなわち、管状部31,32は、孔(空洞)が軸方向に貫通形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、管状部31,32は、完全に孔(空洞)が軸方向全体に渡って形成されていなくてもよい。
【0101】
これについて、
図3の中心軸線C1よりも下部に、具体例を示す。
すなわち、
図3の中心軸線C1よりも下部に図示された出力シャフト210の出力管状部31は、中実シャフト33の軸方向中央に第2端部209bから第1端部209aの手前に至る間に凹部33aを形成した形でもよい。この凹部33aに、サーマルグリス等を充填すればよい。入力クランクシャフト208も同様の構成を採用できる。このような構成を採用する場合、管状部31,32の熱伝導率が、揺動歯車11,12の熱伝導率よりも高くなるように構成する。このように構成することで、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、さらに、各シャフト208,209,210の軸方向両端部208a~209bに熱を効率よく伝達することができる。
【0102】
減速機構201では、各出力シャフト209,210を組み合わせて使用してもよい。
また、上述の第2実施形態では、入力クランクシャフト208及び出力シャフト209は、管状部31,34とヒートパイプ32,35とにより構成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、入力クランクシャフト208及び出力シャフト209の少なくともいずれか1つが、管状部31,34とヒートパイプ32,35とにより構成されていればよい。
【0103】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ロボットとしての協調ロボット100に、減速機構1A~1C,201を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではない。2つの部材(第1部材、第2部材)を有し、2つの部材の間に減速機構1A~1C,201が設けられ、2つの部材のうち第1部材に対して第2部材が回転される構成のさまざまなロボットに、上述の実施形態の構成を採用できる。
【0104】
上述の実施形態では、歯車機構の一例として減速機構1A~1C,201について説明した。しかしながら歯車機構はこれらに限られるものではない。減速機構1A~1Cに代わって2つの歯車が噛合わされ、2つの歯車のうちの一方の歯車に回転力を伝達するか、又はその一方の歯車の回転力が伝達されるシャフトを有するさまざまな歯車機構に上述の実施形態の構成を採用できる。
【0105】
上述の実施形態では、減速機構1A~1C,201はいわゆる偏心揺動型の減速機構であり、ケース2の中心軸線C1と同軸の1つのセンタークランクシャフト(入力クランクシャフト8,208)を有する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、偏心揺動型の減速機構として、複数の入力クランクシャフト8,208を連動して回転させることにより、揺動歯車11,12を揺動回転させる構成でもよい。この場合、入力クランクシャフト8,208自体が中心軸線C1回りに公転しながら自転される。
【0106】
上述の協調ロボット100は、駆動源としてサーボモータ107,108,109を用いた場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、駆動源として、サーボモータに代わって他の電動モータ、油圧モータ、エンジン等、さまざまな駆動源を用いることができる。
【0107】
上述の実施形態では、第2キャリア14に形成された凹部16に、各揺動歯車11,12及び第2キャリア14の熱伝導率よりも高い支持部側高熱伝導部としてグリス17が充填されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、必ずしも凹部16に支持部側高熱伝導部としての部材を収納しなくてもよい。第2キャリア14に支持部側高熱伝導部を設ける場合、凹部16やグリス17で構成しなくてもよい。第2キャリア14の出力シャフト9の周囲に対応する箇所に、各揺動歯車11,12及び第2キャリア14の熱伝導率よりも高い支持部側高熱伝導部としての部材が設けられていればよい。支持部側高熱伝導部としては、5[W/m・K]以上であることが望ましい。
【0108】
上述の第1実施形態では、減速機構1A~1Cは、入力クランクシャフト8と出力シャフト9とを備える場合について説明した。上述の第2実施形態では、減速機構201は、入力クランクシャフト208と出力シャフト209とを備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、第1実施形態の各シャフト8,9と、第2実施形態の各シャフト208,209,210と、を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0110】
1A,1B,1C,201…減速機構(歯車機構)
2…ケース(第1歯車、内歯歯車)
6…内歯ピン(第1歯車、内歯歯車)
7…キャリア(支持部)
8…入力クランクシャフト(シャフト、シャフト側高熱伝導部)
9…出力シャフト(シャフト、シャフト側高熱伝導部)
11…第1揺動歯車(第2歯車、揺動歯車)
12…第2揺動歯車(第2歯車、揺動歯車)
13…第1キャリア(支持部)
14…第2キャリア(支持部)
16…凹部
17…グリス(支持部側高熱伝導部)
21a…第1偏心部(偏心部)
21b…第2偏心部(偏心部)
23a,23b…外歯
31…出力管状部(管状部)
32…出力ヒートパイプ(シャフト側高熱伝導部、ヒートパイプ)
33…中実シャフト(管状部)
33a…凹部(管状部)
34…入力管状部(管状部)
35…入力ヒートパイプ(シャフト側高熱伝導部、ヒートパイプ)
100…協調ロボット(ロボット)
101…ベース部(第1部材、第2部材、相手部材)
102…回転ヘッド(第1部材、第2部材、相手部材)
103…アームユニット(第1部材、第2部材、相手部材)
111…第1アーム(第1部材、第2部材、相手部材)
112…第2アーム(第1部材、第2部材、相手部材)
208…入力クランクシャフト(シャフト)
209,210…出力シャフト(シャフト)