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特開2023-78890食用油脂用劣化臭抑制剤、該劣化臭抑制剤を含む食用油脂及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078890
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】食用油脂用劣化臭抑制剤、該劣化臭抑制剤を含む食用油脂及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/06 20060101AFI20230531BHJP
   A23G 1/42 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
A23D9/06
A23G1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192204
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 綾子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 敏弘
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG17
4B014GK10
4B014GP01
4B026DC01
4B026DC03
4B026DG04
4B026DG05
4B026DL09
4B026DP01
(57)【要約】
【課題】添加剤由来の色調の変化がなく、食用油脂本来の風味を損なうことなく、保存中や高温での長期使用時に発生する食用油脂の劣化臭を抑制することができる天然由来の食用油脂用劣化臭抑制剤、該劣化臭抑制剤を含む食用油脂及び、その製造方法の提供。
【解決手段】キノコ類の抽出物に含まれる固形分を前記食用油脂用劣化臭抑制剤全体中0.05~100重量%含む。前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分は、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10である混合物が、100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理された後、キノコ類の抽出残渣が除去された抽出物に含まれる固形分であり、前記混合物中のキノコ類は、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理されたものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂用劣化臭抑制剤であって、
キノコ類の抽出物に含まれる固形分を前記食用油脂用劣化臭抑制剤全体中0.05~100重量%含み、
前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分は、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10である混合物が、100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理された後、キノコ類の抽出残渣が除去された抽出物に含まれる固形分であり、
前記混合物中のキノコ類は、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理されたものである、食用油脂用劣化臭抑制剤。
【請求項2】
前記キノコ類が、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルームからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の食用油脂用劣化臭抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食用油脂用劣化臭抑制剤を含有し、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量が、食用油脂全体中0.00002~0.03重量%である、食用油脂。
【請求項4】
請求項3に記載の食用油脂が用いられた食品。
【請求項5】
キノコ類を、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理し、それから前記キノコ類とアルカリ水又は水を、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10となるように混ぜ合わせて混合物を得、該混合物を100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理した後、抽出残渣を除去することを特徴とする、食用油脂用劣化臭抑制剤の製造方法。
【請求項6】
キノコ類を、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理し、それから前記キノコ類とアルカリ水又は水を、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10となるように混ぜ合わせて混合物を得、該混合物を100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理した後、抽出残渣を除去して食用油脂用劣化臭抑制剤を得、
得られた該食用油脂用劣化臭抑制剤を、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量が、食用油脂全体中0.00002~0.03重量%となるように食用油脂と混合することを特徴とする、食用油脂用劣化臭抑制剤入り食用油脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油脂に対して用いられる、劣化臭抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油脂を高温下で使用し続けたり、光曝露下、酸素曝露下等で保存すると、揮発性アルデヒド等に由来する劣化臭が発生し、品質を大幅に低下させてしまう。例えば、揚げ物調理では、食用油脂を約180℃又はそれ以上の高温度に加熱した後、そこに、衣をまとった食材を投入することにより行なわれる。加熱調理時には、酸素、熱、食材の水分、食材から溶出する成分等の影響によって、油脂が着色したり、劣化臭が発生する。また近年は、ペットボトル等の無色透明容器が軽量で取り扱いやすいため、油脂製品の容器として用いられるようになってきたが、該容器はスーパー等の陳列棚の蛍光灯の光が透過する為、油脂が着色したり、劣化臭が発生することがある。
【0003】
従来、劣化臭を抑制する目的で、天然のトコフェロールが使用されているが、保存しているとトコフェロール自体が酸化して色が付いたり、油脂本来の風味を損ないやすく、特に光曝露下ではそれが顕著であるといった問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、油脂全量に水溶性抗酸化物質である茶ポリフェノールや茶抽出物、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物を特定量含有し、かつ該油脂中の乳化剤含有量が水溶性抗酸化物質含有量の2倍以下であり、油脂本来の風味が損なわれずに、優れた酸化安定性を有する食用油脂が開示されている。しかしながら、前記食用油脂は、茶ポリフェノールや茶抽出物、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物と乳化剤を必須成分として含有するために食用油脂本来の風味が損なわれるし、揚げ物調理に使用すると着色しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第13/172348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、添加剤由来の色調の変化がなく、食用油脂本来の風味を損なうことなく、保存中や高温での長期使用時に発生する食用油脂の劣化臭を抑制することができる天然由来の食用油脂用劣化臭抑制剤、該劣化臭抑制剤を含む食用油脂及び、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱水浸漬処理後のキノコ類から特定条件で抽出されたキノコ類の抽出物に含まれる固形分を食用油脂に特定量添加することにより、添加剤由来の色調の変化がなく、食用油脂本来の風味を損なうことなく、保存による食用油脂の劣化臭を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、食用油脂用劣化臭抑制剤であって、キノコ類の抽出物に含まれる固形分を前記食用油脂用劣化臭抑制剤全体中0.05~100重量%含み、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分は、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10である混合物が、100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理された後、キノコ類の抽出残渣が除去された抽出物に含まれる固形分であり、前記混合物中のキノコ類は、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理されたものである、食用油脂用劣化臭抑制剤に関する。
【0009】
前記食用油脂用劣化臭抑制剤において、前記キノコ類が、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルームからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明の第二は、前記食用油脂用劣化臭抑制剤を含有し、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量が、食用油脂全体中0.00002~0.03重量%である、食用油脂に関する。
【0011】
本発明の第三は、前記食用油脂が用いられた食品に関する。
【0012】
本発明の第四は、キノコ類を、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理し、それから前記キノコ類とアルカリ水又は水を、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10となるように混ぜ合わせて混合物を得、該混合物を100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理した後、抽出残渣を除去することを特徴とする、食用油脂用劣化臭抑制剤の製造方法に関する。
【0013】
本発明の第五は、キノコ類を、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理し、それから前記キノコ類とアルカリ水又は水を、キノコ類(湿重量)/アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10となるように混ぜ合わせて混合物を得、該混合物を100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間加熱処理した後、抽出残渣を除去して食用油脂用劣化臭抑制剤を得、得られた該食用油脂用劣化臭抑制剤を、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量が、食用油脂全体中0.00002~0.03重量%となるように食用油脂と混合することを特徴とする、食用油脂用劣化臭抑制剤入り食用油脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従えば、添加剤由来の色調の変化がなく、食用油脂本来の風味を損なうことなく、保存中や高温での長期使用時に発生する食用油脂の劣化臭を抑制することができる天然由来の食用油脂用劣化臭抑制剤、該劣化臭抑制剤を含む食用油脂及び、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係る食用油脂用劣化臭抑制剤は、食用油脂に対して用いられる添加剤である。当該食用油脂用劣化臭抑制剤を食用油脂に添加することにより、食用油脂の保存中に経時的に発生する劣化臭を抑制することができる。
【0016】
本実施形態に係る食用油脂用劣化臭抑制剤は、キノコ類とアルカリ水又は水を特定の混合比で含む混合物が、特定温度及び特定圧力で、特定時間をかけて加熱処理された後、抽出残渣が除去されたキノコ類の抽出物を含み、それは該劣化臭抑制剤が該キノコ類の抽出物に含まれる固形分を特定量含むことを意味する。
【0017】
前記キノコ類は、食用のキノコであれば特に限定されないが、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、マッシュルームが挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。食用油脂に対する劣化臭抑制効果、キノコの原材料費、及びキノコ自体の風味の観点から、エノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジがより好ましく、エノキタケ、舞茸、タモギタケが更に好ましく、エノキタケ、舞茸が特に好ましく、エノキタケが最も好ましい。
【0018】
前記エノキタケは、タマバリタケ科のキノコの一種であるFlammulina velutipes種のことをいう。例えば、人工的に栽培した白色かつもやし状の市販エノキタケ、野生種と栽培種の白色エノキタケをかけあわせたブラウン系エノキタケ、野生種等を使用することができる。前記市販エノキタケは、一般に食用とされており、容易に入手可能である。
【0019】
前記舞茸は、サルノコシカケ科マイタケ属に属するキノコの一種であるGrifola frondosa種のことをいう。舞茸の近縁種として、白舞茸も包含する。舞茸としては、子実体、菌糸体いずれも使用することができる。
【0020】
前記タモギタケは、ヒラタケ科のキノコの一種であるPleurotus cornucopiae var. citrinopileatus種のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0021】
前記シメジは、シメジ属に属するカクミノシメジ(Lyophyllum sykosporum種)、スミゾメシメジ(Lyophyllum semitale種)、シャカシメジ(Lyophyllum fumosum種)、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji種)、ハタケシメジ(Lyophyllum decastes種)、オシロイシメジ(Lyophyllum cnnatum種)、及び、シロタモギタケ属に属するブナシメジ(Hypsizigus marmoreus種)のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0022】
前記椎茸は、ハラタケ目キシメジ科シイタケ属のキノコの一種であるLentinula edodes種のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0023】
前記エリンギは、ヒラタケ科ヒラタケ属のキノコの一種であるPleurotus eryngii種のことをいう。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0024】
前記マッシュルームは、ハラタケ科ハラタケ属に属するキノコの一種である。マッシュルームの品種は特に限定されず、Agaricus bisporus種のホワイト種、オフホワイト種、クリーム種、ブラウン種、Agaricus bitorquis種などが例示され、いずれも好ましく使用することができる。天然のものや、人工的に栽培したものを使用することができる。
【0025】
前記キノコ類の抽出物を得るために使用する抽出溶媒は、アルカリ水又は水が好ましい。食用油脂に対する劣化臭抑制効果の観点から、アルカリ水がより好ましい。
【0026】
前記アルカリ水は、通常、電解アルカリ水、強アルカリ性水、強アルカリ性イオン水、超アルカリ水などの様々な名称で呼ばれているものをいう。該アルカリ水は、水道水や電解質含有水を電気分解する水電気分解法で製造することができる。また、既に数社より家庭用、工業用として市販されている酸性水製造機の副産物である電解アルカリ水を利用することもできる。
【0027】
前記アルカリ水のpHは、食用油脂に対する劣化臭抑制効果の観点から、8~14が好ましく、8.8~12がより好ましく、9.2~9.9が更に好ましい。
【0028】
前記アルカリ水又は水は、本発明の効果を損なわない限り、エタノールを含有しても良い。エタノールの含有量は、食用油脂に対する劣化臭抑制効果の観点から、アルカリ水又は水全体中、49重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましく、5重量%以下が更に好ましく、含まないことが特に好ましい。
【0029】
前記アルカリ水又は水の使用量は、前記キノコ類(湿重量)/前記アルカリ水又は水(重量比)が0.05~10となる量であることが好ましく、0.08~5がより好ましく、0.14~1が更に好ましい。前記重量比が0.05より小さいと、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、前記重量比が10を超えると、抽出効率が悪くなって前記食用油脂用劣化臭抑制剤の製造コストが上がる場合がある。ここで、前記キノコ類の重量は湿重量であるが、使用するキノコ類は生キノコ類でもよいし、乾燥したキノコ類でもよい。ただし、乾燥したキノコ類を用いる場合は、該乾燥キノコの重量ではなく、キノコ類が生の状態の時の湿重量を用いて、前記重量比を計算する。
【0030】
前記キノコ類の抽出物を得るには、前記キノコ類と前記アルカリ水又は水の混合物は、特定温度及び特定圧力で、特定時間をかけて加熱処理されることが好ましい。
【0031】
前記加熱処理の温度は、100~150℃であることが好ましく、110~140℃がより好ましく、120~135℃が更に好ましい。加熱処理温度が100℃より低いと、抽出効率が悪くなったり、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、加熱処理温度が150℃を超えると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。
【0032】
前記加熱処理の圧力は、0.05~0.3MPaであることが好ましく、0.1~0.3MPaがより好ましく、0.15~0.2MPaが更に好ましい。加熱処理圧力が0.05MPaより低いと、抽出効率が悪くなったり、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、加熱処理圧力が0.3MPaを超えると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。なお、前記圧力とは、ゲージ圧を意味し、大気圧をゼロとする相対的な圧力のことである。
【0033】
前記加熱処理の時間は、0.2~5時間であることが好ましく、1~3時間がより好ましく、1.5~2時間が更に好ましい。加熱処理時間が0.2時間より短いと、抽出効率が悪くなったり、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、加熱処理時間が5時間を超えると、抽出に時間を要するにも関わらず食用油脂に対する劣化臭抑制効果が頭打ちになってしまい、結果的に抽出効率が悪くなる場合がある。
【0034】
前記加熱処理が終了した後、キノコ類の抽出残渣を除去することで、液状の前記キノコ類の抽出物を得ることができ、そのまま食用油脂用劣化臭抑制剤として用いることができる。当該抽出残渣の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離、沈降分離、圧搾などが挙げられる。また、該キノコ類の抽出物は、濃縮した濃縮物又は希釈した希釈物であってもよい。前記希釈の際に用いる溶媒は、アルカリ水又は水であってもよいし、アルカリ水又は水以外の溶媒、即ちエタノールやプロピレングリコール等であってもよい。
【0035】
前記混合物中のキノコ類は、加熱処理前に70~100℃の熱水に、0.2~5時間浸漬処理することが好ましい。前記熱水の温度は、85~100℃がより好ましく、95~100℃が更に好ましい。温度が70℃よりも低いと、抽出効率が悪くなったり、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、温度が100℃を超えると、特殊な加圧設備が必要となるため、抽出方法が複雑になる場合がある。
【0036】
前記浸漬する時間は、0.2~3時間がより好ましく、0.5~2時間が更に好ましく、1~2時間が特に好ましい。浸漬処理時間が0.2時間より短いと、抽出効率が悪くなったり、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、浸漬処理時間が5時間を超えると、抽出に時間を要するにも関わらず食用油脂に対する劣化臭抑制効果が頭打ちになってしまい、結果的に抽出効率が悪くなる場合がある。
【0037】
また、前記食用油脂用劣化臭抑制剤の形態は前記抽出物を乾燥して得られる固形物であってもよい。前記固形物の形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、ブロック状等の形状であってもよい。前記固形物を得る際に使用できる賦形剤としては、例えば、デキストリン、乳糖、デンプン、白糖等が挙げられる。
【0038】
計量や取り扱いの容易さの観点からは、前記食用油脂用劣化臭抑制剤は、液状であることが好ましい。
【0039】
前記食用油脂用劣化臭抑制剤は、その形態に関わらず、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分、及び、アルカリ水又は水以外の他の成分を更に含有してもよい。そのような他の成分としては、発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、アルカリ水又は水以外の溶媒、酒類、動植物由来の抽出物(前記キノコ類の抽出物を除く)、糖類、油脂類、塩類、調味料、香辛料、香料、着色料、乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0040】
前記食用油脂用劣化臭抑制剤は、食用油脂に添加されることで、食用油脂の保存中に経時的に発生する劣化臭、具体的には、該食品中の油脂の酸化に起因する油脂の劣化臭を抑制することができる。前記食用油脂は、本発明の一態様を構成する。
【0041】
前記食用油脂用劣化臭抑制剤は、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分を含み、その含有量は、食用油脂に対する劣化臭抑制効果の観点から、前記食用油脂用劣化臭抑制剤全体中、0.05~100重量%であることが好ましく、0.1~60重量%がより好ましく、0.1~40重量%が更に好ましい。
【0042】
前記食用油脂の具体例としては特に限定されないが、例えば、フライ油、ショートニング、チョコレート用油脂(カカオバター、カカオバター代用油脂)等が挙げられる。なお、前記食用油脂全体中、水分を各食用油脂のJAS規格値以下であれば含んでいても構わない。
【0043】
前記食用油脂において、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量は、食用油脂全体中0.00002~0.03重量%であることが好ましく、0.00005~0.01重量%がより好ましく、0.00008~0.004重量%が更に好ましく、0.00015~0.002重量%が特に好ましい。前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量が0.00002重量%より少ないと、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が十分に得られない場合がある。また、0.03重量%より多いと、食用油脂に対する劣化臭抑制効果が頭打ちになったり、食用油脂用劣化臭抑制剤の原料であるキノコ類の風味が食用油脂に付与される場合がある。
【0044】
前記キノコ類の抽出物がエノキタケ抽出物である場合、前記エノキタケ抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00002~0.03重量%とすることが好ましく、0.00005~0.01重量%がより好ましく、0.00008~0.004重量%が更に好ましく、0.00015~0.002重量%が特に好ましく、0.0002~0.0015重量%が最も好ましい。
【0045】
前記キノコ類の抽出物が舞茸抽出物である場合、前記舞茸抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00003~0.02重量%とすることが好ましい。
【0046】
前記キノコ類の抽出物がタモギタケ抽出物である場合、前記タモギタケ抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00003~0.02重量%とすることが好ましい。
【0047】
前記キノコ類の抽出物がシメジ抽出物である場合、前記シメジ抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00003~0.02重量%とすることが好ましい。
【0048】
前記キノコ類の抽出物が椎茸抽出物である場合、前記椎茸抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00003~0.01重量%とすることが好ましい。
【0049】
前記キノコ類の抽出物がエリンギ抽出物である場合、前記エリンギ抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00004~0.02重量%とすることが好ましい。
【0050】
前記キノコ類の抽出物がマッシュルーム抽出物である場合、前記マッシュルーム抽出物に含まれる固形分の含有量を、食用油脂全体中、0.00003~0.01重量%とすることが好ましい。
【0051】
本発明の一態様は、前記食用油脂を原料として用いられた食品に関する。当該食品も、本発明の効果を享受することができる。前記食用油脂を原料として用いられた食品としては、例えば、フライ油で油ちょう調理したフライ食品、ショートニングを練り込んだり、トッピングして作製した菓子及びパン、並びにチョコレート用油脂を配合したチョコレート等が挙げられる。
【0052】
本発明の食用油脂用劣化臭抑制剤の製造方法を以下に例示する。まず、キノコ類と油脂を、キノコ類(湿重量)/油脂(重量比)が0.05~10となるように混ぜ合わせる。混ぜ合わせた混合物を、好適には100~150℃で、0.2~5時間加熱処理した後、キノコ類の抽出残渣を除去することで、キノコ類の抽出物を得ることができ、そのまま又は濃縮、希釈若しくは固化して、本発明の食用油脂用劣化臭抑制剤として使用できる。キノコ類の抽出残渣を除去する前後には、-40~50℃まで冷却することが好ましい。
【0053】
また抽出効率をより高める観点から、前記加熱処理時の圧力は、0.05~0.3MPaであることが好ましく、0.1~0.3MPaがより好ましく、0.15~0.2MPaが更に好ましい。加熱処理時の圧力が前記範囲を外れると、期待した程の抽出効率の向上効果が得られない場合がある。なお、前記圧力とは、ゲージ圧を意味し、大気圧をゼロとする相対的な圧力のことである。
【0054】
前記食用油脂用劣化臭抑制剤入り食用油脂の製造方法を以下に例示する。まずは前記食用油脂用劣化臭抑制剤を、前記キノコ類の抽出物に含まれる固形分の含有量が、食用油脂全体中0.00002~0.03重量%となるように食用油脂と混合すればよい。
【0055】
前記食用油脂を原料として食品に用いる方法としては特に限定されず、常法に従えばよい。例えば、前記食品の製造中又は製造後に、前記食用油脂を他の食品原料に添加し、混合すればよい。
【実施例0056】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0057】
実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)(株)カネカ製「菜種油」
2)(株)カネカ製「パームスーパーオレイン」(ヨウ素価:65)
3)(株)カネカ製「パームシングルオレイン」(ヨウ素価:57)
4)(株)Jオイルミルズ製「大豆油」
5)(株)カネカ製「脱臭カカオバター」
6)(株)カネカ製「シアステアリン」
7)(株)カネカ製「パーム中融点部」(ヨウ素価:45)
8)(株)カネカ製「パーム中融点部」(ヨウ素価:34)
9)(株)カネカ製「パームエステル交換中融点部」(ヨウ素価:31)
10)雪印メグミルク(株)製「全脂粉乳」
11)(株)徳倉製「NSP粉糖」
12)ADM社製「イェルキンTS」
【0058】
<食用油脂及び食用油脂を使用した食品の評価>
実施例及び比較例で得られた各食用油脂及び食用油脂を使用した食品を製造後、所定の条件で保存してから熟練した10人のパネラーが各評価を行い、その評価点の平均値を官能評価とした。その際の評価基準は以下の通りであった。
【0059】
(色調の変化)
食用油脂用劣化臭抑制剤が無添加で製造直後の食用油脂(参考例1~7)又は該食用油脂を使用した製造直後の食品(参考例8~10)との比較
5点:参考例と同等で、色調の変化が全くない
4点:参考例よりも僅かに劣るが、色調の変化が殆どない
3点:参考例よりも劣り、色調の変化が若干あるが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例よりも悪く、色調の変化がある
1点:参考例よりも非常に悪く、色調の変化が明らかにある
【0060】
(食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味)
食用油脂用劣化臭抑制剤が無添加で製造直後の食用油脂(参考例1~7)又は該食用油脂を使用した製造直後の食品(参考例8~10)との比較
5点:参考例と同等で、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味がしっかりと感じられる
4点:参考例よりも僅かに劣るが、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味が感じられる
3点:参考例よりも劣り、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味が若干弱く感じられるが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例よりも悪く、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味があまり感じられない
1点:参考例よりも非常に悪く、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味が全く感じられない
【0061】
(劣化臭)
食用油脂用劣化臭抑制剤が無添加で製造直後の食用油脂(参考例1~7)又は該食用油脂を使用した製造直後の食品(参考例8~10)との比較
5点:参考例と同等で、劣化臭が全く感じられない
4点:参考例よりも僅かに劣るが、劣化臭が感じられない
3点:参考例よりも劣り、劣化臭が僅かに感じられるが、商品品質上は問題ないレベルである
2点:参考例よりも悪く、劣化臭が感じられる
1点:参考例よりも非常に悪く、劣化臭が非常に強く感じられる
【0062】
(総合評価)
色調の変化、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭の評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:色調の変化、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭の評価が全て4.0点以上5.0点以下を満たしているもの
B:色調の変化、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭の評価が全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5点以上4.0点未満が少なくとも一つあるもの
C:色調の変化、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭の評価が全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0点以上3.5点未満が少なくとも一つあるもの
D:色調の変化、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭の評価が全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0点以上3.0点未満が少なくとも一つあるもの
E:色調の変化、食用油脂又は食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭の評価において、2.0点未満が少なくとも一つあるもの
【0063】
(製造例1) エステル交換油脂の作製
パーム核オレイン(株式会社カネカ製):26重量部、パーム油(株式会社カネカ製)69重量部、パームステアリン(株式会社カネカ製):5重量部を混合し、90℃、真空下で脱水を行った。そこへナトリウムメチラート(日本曹達株式会社製):0.30重量部を加え、90℃、窒素気流下で30分間ランダムエステル交換反応を行い、水を加えて反応停止後、水洗した。次に、活性白土(水澤化学工業株式会社製):3.0重量部を加え、減圧下で攪拌して20分後に全量濾過してエステル交換油脂を得た。
【0064】
(実施例1) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、市販のエノキタケ(子実体)14重量部を切断して、100℃の熱水100重量部に、2時間保持して浸漬処理した後、アルカリ水(飲料水:pH9.9)28重量部を加えたキノコ類(湿重量)/アルカリ水(重量比)が0.5の混合物を、127℃で0.2MPaの圧力をかけて1.7時間保持した後、抽出残渣を濾別して、濾液を75℃でパウチ包装し、その後チラー水槽に入れて5℃まで冷却し、エノキタケ抽出物を得た。該エノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.26重量%であった。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例2) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、キノコ類/アルカリ水(重量比)0.5を0.2に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.15重量%であった。
【0067】
(実施例3) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、キノコ類/アルカリ水(重量比)0.5を1.0に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.49重量%であった。
【0068】
(実施例4) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、キノコ類/アルカリ水(重量比)0.5を9.0に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は1.01重量%であった。
【0069】
(実施例5) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出温度:127℃を110℃に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.22重量%であった。
【0070】
(実施例6) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出温度:127℃を140℃に、抽出圧力:0.2MPaを0.25MPaに、抽出時間:1.7時間を1.5時間に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.33重量%であった。
【0071】
(実施例7) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出溶媒をアルカリ水から水に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.23重量%であった。
【0072】
(実施例8) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出溶媒:アルカリ水を20%エタノール(水79重量部と95%エタノール(甘糟化学産業(株)製「95%エタノール」)21重量部を混合し調製したもの)に、抽出温度:127℃を110℃に、抽出圧力:0.2MPaを0.3MPaに変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.25重量%であった。
【0073】
(実施例9) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、実施例1と同様にして得られたエノキタケ抽出物70重量部に、プロピレングリコール((株)ADEKA製「食品添加物プロピレングリコール」)30重量部を加え、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.18重量%であった。
【0074】
(実施例10) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、実施例1と同様にして得られたエノキタケ抽出物70重量部に、95%エタノール(甘糟化学産業(株)製「95%エタノール」)30重量部を加え、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.18重量%であった。
【0075】
(実施例11) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、実施例1と同様にして得られた抽出物80重量部に、デキストリン(松谷化学工業(株)製「マックス1000」)20重量部を加え、スプレードライにより乾燥させ、粉末状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は1.03重量%であった。
【0076】
(実施例12) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、エノキタケを市販の舞茸に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られた舞茸抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中の舞茸抽出物固形分の含有量は0.27重量%であった。
【0077】
(実施例13) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、エノキタケを市販のタモギタケに変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたタモギタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のタモギタケ抽出物固形分の含有量は0.25重量%であった。
【0078】
(実施例14) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、エノキタケを市販の椎茸に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られた椎茸抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中の椎茸抽出物固形分の含有量は0.23重量%であった。
【0079】
(実施例15) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、エノキタケを市販のエリンギに変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエリンギ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエリンギ抽出物固形分の含有量は0.22重量%であった。
【0080】
(実施例16) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、エノキタケを市販のホワイトマッシュルームに変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたマッシュルーム抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のマッシュルーム抽出物固形分の含有量は0.21重量%であった。
【0081】
(実施例17) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、エノキタケを市販のブナシメジに変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたシメジ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のシメジ抽出物固形分の含有量は0.21重量%であった。
【0082】
(比較例1) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出温度を127℃から80℃に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.10重量%であった。
【0083】
(比較例2) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出温度:127℃を100℃に、抽出圧力:0.2MPaを0MPaに変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.19重量%であった。
【0084】
(比較例3) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出時間:1.7時間を0.05時間に変更した以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は0.03重量%であった。
【0085】
(比較例4) 食用油脂用劣化臭抑制剤の作製
表1に従って、抽出前の熱水による時間浸漬処理しなかった以外は、実施例1と同様に抽出を行って、得られたエノキタケ抽出物そのものを、液状の食用油脂用劣化臭抑制剤として用いた。該食用油脂用劣化臭抑制剤全体中のエノキタケ抽出物固形分の含有量は1.21重量%であった。
【0086】
(実施例18) 食用油脂の作製
表2の配合に従い、菜種油:99.9重量部に、実施例1の食用油脂用劣化臭抑制剤:0.1重量部を添加し、調合した後、80℃で加熱しながら脱水処理を行い、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表2に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例19及び20) 食用油脂の作製
表2の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤の配合量0.1重量部を、0.01重量部(実施例19)、又は、1.5重量部(実施例20)に変更し、菜種油で全体量を調整した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表2に示した。
【0089】
(比較例5) 食用油脂の作製
表2の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を水に変更した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表2に示した。
【0090】
(実施例21~23) 食用油脂の作製
表2の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を、実施例2の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例21)、実施例3の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例22)、又は、実施例4の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例23)に変更した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表2に示した。
【0091】
(参考例1)
比較例5で得た食用油脂について、製造直後に官能評価を行った結果を参考例1として表2に示し、実施例18~23及び比較例5と比較検討した。
【0092】
表2から明らかなように、キノコ類抽出物固形分の含有量が食用油脂全体中0.00002~0.03重量%の範囲にある食用油脂(実施例18~23)は、いずれも50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。
【0093】
一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかった食用油脂(比較例5)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はEであった。
【0094】
また、キノコ類(エノキタケ)/溶媒(アルカリ水)の重量比が0.05~10の範囲にある混合物から得た食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18~23)は、いずれも50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。
【0095】
(実施例24及び25、比較例6~8) 食用油脂の作製
表3に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を、実施例5の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例24)、実施例6の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例25)、比較例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(比較例6)、比較例2の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(比較例7)、又は、比較例3の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(比較例8)に変更した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表3に示した。
【0096】
【表3】
【0097】
表3から明らかなように、抽出時の加熱処理条件が100~150℃で、0.05~0.3MPaの圧力で、0.2~5時間の範囲にある食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18、24及び25)は、いずれも50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。
【0098】
一方、抽出時の加熱温度が80℃と低い食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(比較例6)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はDであった。また、抽出時の圧力が0MPaと低い食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(比較例7)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はDであった。更に、抽出時の時間が0.05時間と短い食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(比較例8)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はDであった。
【0099】
(実施例26及び27) 食用油脂の作製
表3に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を、実施例7の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例26)、又は、実施例8の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例27)に変更した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表3に示した。
【0100】
表3から明らかなように、抽出時の溶媒としてアルカリ水、水又は20%エタノール水溶液を使用した食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18、26及び27)は、いずれも50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。特に、抽出時の溶媒としてエタノールを含まないアルカリ水を使用した食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18)は、総合評価がAで極めて良好であった。
【0101】
(実施例28~30、比較例9) 食用油脂の作製
表4に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を、実施例9の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例28)、実施例10の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例29)、実施例11の粉末状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例30)、又は、比較例4の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(比較例9)に変更した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表4に示した。
【0102】
【表4】
【0103】
表4から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤に含まれるキノコ類抽出物固形分以外の成分や、食用油脂用劣化臭抑制剤の性状に関わらず、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18、28~30)は、いずれも50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。
【0104】
一方、抽出前の熱水による浸漬処理を行わなかった食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(比較例9)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はDであった。
【0105】
(実施例31~36) 食用油脂の作製
表5に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を、実施例12の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例31)、実施例13の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例32)、実施例14の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例33)、実施例15の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例34)、実施例16の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例35)、又は、実施例17の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤(実施例36)に変更した以外は、実施例18と同様にして、食用油脂100重量部を得た。得られた食用油脂を50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表4に示した。
【0106】
【表5】
【0107】
表5から明らかなように、キノコ類がエノキタケ、舞茸、タモギタケ、シメジ、椎茸、エリンギ、及びマッシュルームからなる群から選ばれる1種から抽出した食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18、31~36)は、いずれも50℃で21日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。特に、エノキタケ又は、舞茸から抽出した食用油脂用劣化臭抑制剤を配合した食用油脂(実施例18、及び、31)は、総合評価がAで極めて良好であった。
【0108】
(実施例37) フライ油の作製
表6の配合に従い、パームスーパーオレイン:59.9重量部、パームシングルオレイン:40.0重量部に実施例1の食用油脂用劣化臭抑制剤:0.1重量部を添加して調合した後、80℃で加熱しながら脱水処理を行い、フライ油100重量部を得た。得られたフライ油を190℃で1日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表6に示した。
【0109】
【表6】
【0110】
(比較例10) フライ油の作製
表6に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を配合せず、水で全体量を調整した以外は、実施例37と同様にしてフライ油を得た。得られたフライ油を190℃で1日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表6に示した。
【0111】
(参考例2)
比較例10で得たフライ油について、製造直後に官能評価を行った結果を参考例2として表6に示し、実施例37及び比較例10と比較検討した。
【0112】
表6から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を添加したフライ油(実施例37)は、190℃で1日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったフライ油(比較例10)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はEであった。
【0113】
(実施例38) フライ油の作製
表7の配合に従い、菜種油:49.9重量部、大豆油:50.0重量部に実施例1の食用油脂用劣化臭抑制剤:0.1重量部を添加して調合した後、80℃で加熱しながら脱水処理を行い、フライ油100重量部を得た。得られたフライ油を190℃で1日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表7に示した。
【0114】
【表7】
【0115】
(比較例11) フライ油の作製
表7に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を配合せず、水で全体量を調整した以外は、実施例38と同様にしてフライ油を得た。得られたフライ油を190℃で1日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表7に示した。
【0116】
(参考例3)
比較例11で得たフライ油について、製造直後に官能評価を行った結果を参考例3として表7に示し、実施例38及び比較例11と比較検討した。
【0117】
表7から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を添加したフライ油(実施例38)は、190℃で1日間保存後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったフライ油(比較例11)は、保存後に色調が変化し、食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭が感じられ、総合評価はEであった。
【0118】
(実施例39) ショートニングの作製
表8の配合に従い、エステル交換油(製造例1):54.9重量部、パームシングルオレイン:10.0重量部、菜種油:35.0重量部に、実施例1の食用油脂用劣化臭抑制剤:0.1重量部を添加した後、80℃で加熱しながら脱水処理を行い、15℃まで急冷捏和して、ショートニング100重量部を得た。得られたショートニングを25℃で550日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表8に示した。
【0119】
【表8】
【0120】
(比較例12) ショートニングの作製
表8の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を配合せず、水で全体量を調整した以外は、実施例39と同様にして、ショートニング100重量部を得た。得られたショートニングを25℃で550日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表8に示した。
【0121】
(実施例40) ショートニングの作製
表8の条件に従い、実施例39で得られたショートニングの保存条件:25℃で550日間を5℃で240日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表8に示した。
【0122】
(比較例13) ショートニングの作製
表8の条件に従い、比較例12で得られたショートニングの保存条件:25℃で550日間を5℃で240日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表8に示した。
【0123】
(参考例4)
比較例12で得たショートニングについて、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例4として表8に示し、実施例39、40及び比較例12、13と比較検討した。
【0124】
表8から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したショートニング(実施例39)は、25℃で550日間保存した後も、色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったショートニング(比較例12)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0125】
また、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したショートニング(実施例40)は、5℃で240日間保存した後も、色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったショートニング(比較例13)は、保存後に食用油脂本来の風味が損なわれ、劣化臭も感じられて、総合評価はDであった。
【0126】
(実施例41) チョコレート用油脂の作製
表9の配合に従い、カカオバターに実施例1の食用油脂用劣化臭抑制剤を添加し、脱水処理を行い、チョコレート用油脂100重量部を得た。得られたチョコレート用油脂を、25℃で365日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表9に示した。
【0127】
【表9】
【0128】
(比較例14) チョコレート用油脂の作製
表9の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を水に変更した以外は、実施例41と同様にして、チョコレート用油脂100重量部を得た。得られたチョコレート用油脂を、25℃で365日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表9に示した。
【0129】
(参考例5)
比較例14で得たチョコレート用油脂について、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例5として表9に示し、実施例41及び比較例14と比較検討した。
【0130】
表9から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート用油脂(実施例41)は、25℃で365日間保存後も、色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート用油脂(比較例14)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0131】
(実施例42) チョコレート用油脂の作製
表9の配合に従い、カカオバター:99.67重量部を、カカオバター:73.11重量部、シアステアリン:13.28重量部、パーム中融点部(IV45):6.64重量部、パーム中融点部(IV34):6.64重量部の調合油に変更した以外は、実施例41と同様にして、チョコレート用油脂100重量部を得た。得られたチョコレートを、25℃で365日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表9に示した。
【0132】
(比較例15) チョコレート用油脂の作製
表9の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を水に変更した以外は、実施例42と同様にして、チョコレート用油脂100重量部を得た。得られたチョコレート用油脂を、25℃で365日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表9に示した。
【0133】
(参考例6)
比較例15で得たチョコレート用油脂について、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例6として表9に示し、実施例42及び比較例15と比較検討した。
【0134】
表9から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート用油脂(実施例42)は、25℃で365日間保存後も、色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート用油脂(比較例15)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0135】
(実施例43) チョコレート用油脂の作製
表9の配合に従い、カカオバターをパームエステル交換油脂の中融点部(IV31)に変更した以外は、実施例41と同様にして、チョコレート用油脂100重量部を得た。得られたチョコレート用油脂を、25℃で365日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表9に示した。
【0136】
(比較例16) チョコレート用油脂の作製
表9の配合に従い、実施例1の液状の食用油脂用劣化臭抑制剤を水に変更した以外は、実施例43と同様にして、チョコレート用油脂100重量部を得た。得られたチョコレート用油脂を、25℃で365日間保存した後の色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭について評価した結果を表9に示した。
【0137】
(参考例7)
比較例16で得たチョコレート用油脂について、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例7として表9に示し、実施例43及び比較例16と比較検討した。
【0138】
表9から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート用油脂(実施例43)は、25℃で365日間保存後も、色調の変化、食用油脂本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート用油脂(比較例16)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0139】
(実施例44) チョコレートの作製
表10の配合に従い、定法により全ての原材料を混合後、微粒化、コンチング、テンパリング、充填、冷却処理を行い、チョコレート100重量部を得た。得られたチョコレートを、光照射下(6000Lx)、25℃で2日間保存した後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表10に示した。
【0140】
【表10】
【0141】
(比較例17) チョコレートの作製
表10の配合に従い、実施例41のチョコレート用油脂を比較例14のチョコレート用油脂に変更した以外は、実施例44と同様にして、チョコレート100重量部を得た。得られたチョコレートを、光照射下、25℃で2日間保存した後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表10に示した。
【0142】
(実施例45) チョコレートの作製
表10の条件に従い、実施例44で得られたチョコレートの保存条件:光照射下、25℃で2日間を、遮光下、25℃で365日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表10に示した。
【0143】
(比較例18) チョコレートの作製
表10の条件に従い、比較例17で得られたチョコレートの保存条件:光照射下、25℃で2日間を、遮光下、25℃で365日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表10に示した。
【0144】
(参考例8)
比較例17で得たチョコレートについて、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例8として表10に示し、実施例44、45及び比較例17、18と比較検討した。
【0145】
表10から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート(実施例44)は、光照射下、25℃で2日間保存した後も、色調の変化、食用油脂を使用した食品(チョコレート)本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート(比較例17)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0146】
また、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート(実施例45)は、遮光下、25℃で365日間保存した後も、色調の変化、食用油脂を使用した食品(チョコレート)本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート(比較例18)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0147】
(実施例46) チョコレートの作製
表11の配合に従い、実施例40のチョコレート用油脂を、実施例42のチョコレート用油脂に変更した以外は、実施例44と同様にして、チョコレート100重量部を得た。得られたチョコレートを、光照射下、25℃で2日間保存した後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表11に示した。
【0148】
【表11】
【0149】
(比較例19) チョコレートの作製
表11の配合に従い、実施例42のチョコレート用油脂を比較例15のチョコレート用油脂に変更した以外は、実施例46と同様にして、チョコレート100重量部を得た。得られたチョコレートを、光照射下、25℃で2日間保存した後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表11に示した。
【0150】
(実施例47) チョコレートの作製
表11の条件に従い、実施例46で得られたチョコレートの保存条件:光照射下、25℃で2日間を、遮光下、25℃で365日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表11に示した。
【0151】
(比較例20) チョコレートの作製
表11の条件に従い、比較例19で得られたチョコレートの保存条件:光照射下、25℃で2日間を、遮光下、25℃で365日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表11に示した。
【0152】
(参考例9)
比較例19で得たチョコレートについて、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例9として表11に示し、実施例46、47及び比較例19、20と比較検討した。
【0153】
表11から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート(実施例46)は、光照射下、25℃で2日間保存した後も、色調の変化、食用油脂を使用した食品(チョコレート)本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート(比較例19)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0154】
また、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート(実施例47)は、遮光下、25℃で365日間保存した後も、色調の変化、食用油脂を使用した食品(チョコレート)本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート(比較例20)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0155】
(実施例48) チョコレートの作製
表12の配合に従い、実施例41のチョコレート用油脂を、実施例43のチョコレート用油脂に変更し、テンパリング処理を行わなかった以外は、実施例44と同様にして、チョコレート100重量部を得た。得られたチョコレートを、光照射下、25℃で2日間保存した後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表12に示した。
【0156】
【表12】
【0157】
(比較例21) チョコレートの作製
表12の配合に従い、実施例43のチョコレート用油脂を比較例16のチョコレート用油脂に変更した以外は、実施例48と同様にして、チョコレート100重量部を得た。得られたチョコレートを、光照射下、25℃で2日間保存した後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表12に示した。
【0158】
(実施例49) チョコレートの作製
表12の条件に従い、実施例48で得られたチョコレートの保存条件:光照射下、25℃で2日間を、遮光下、25℃で365日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表12に示した。
【0159】
(比較例22) チョコレートの作製
表12の条件に従い、比較例21で得られたチョコレートの保存条件:光照射下、25℃で2日間を、遮光下、25℃で365日間に変更し、保存後の色調の変化、食用油脂を使用した食品本来の風味、劣化臭について評価した結果を表12に示した。
【0160】
(参考例10)
比較例21で得たチョコレートについて、製造直後で保存前に官能評価を行った結果を参考例10として表12に示し、実施例48、49及び比較例21、22と比較検討した。
【0161】
表12から明らかなように、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート(実施例48)は、光照射下、25℃で2日間保存した後も、色調の変化、食用油脂を使用した食品(チョコレート)本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート(比較例21)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。
【0162】
また、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合したチョコレート(実施例49)は、遮光下、25℃で365日間保存した後も、色調の変化、食用油脂を使用した食品(チョコレート)本来の風味、劣化臭の評価は良好であった。一方、食用油脂用劣化臭抑制剤を配合しなかったチョコレート(比較例22)は、保存後に劣化臭が感じられて、総合評価はDであった。