IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河村電器産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換システム 図1
  • 特開-電力変換システム 図2
  • 特開-電力変換システム 図3
  • 特開-電力変換システム 図4
  • 特開-電力変換システム 図5
  • 特開-電力変換システム 図6
  • 特開-電力変換システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007893
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H02M7/12 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111018
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 智成
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006DA03
5H006DB01
5H006DC03
(57)【要約】
【課題】 電力変換効率を低下させないよう複数の電力変換器を備えた構成としても、特定の電力変換器に稼働が集中することがない。
【解決手段】 交流電力を直流電力に変換する電力変換器2が複数並列に接続されており、変換した直流電力の供給先から送信される要求電力情報を基に、電力変換器2の稼働台数を決定して稼働を制御する制御ユニット3と、個々の電力変換器2の稼働時間及び稼働時毎の負荷率を記憶する記憶する稼働時間記憶部22と、電力変換器2の稼働時間に負荷率を乗算した数値を劣化度として、制御ユニットCPU23は電力変換器2の稼働優先順位を劣化度を基に設定し、要求電力情報を受けて決定した数の電力変換器2を設定した優先順位に従って上位から選択して稼働させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する電力変換器を複数備えて、それらが並列に接続された電力変換システムであって、
変換した直流電力の供給先から送信される要求電力情報を基に、前記電力変換器の稼働台数を決定して稼働を制御する稼働制御手段と、
個々の前記電力変換器の稼働時間、及び稼働時毎の負荷率を記憶する稼働時間記憶部と、
前記電力変換器の稼働時間に前記負荷率を乗算した数値を劣化度として、前記電力変換器の稼働優先順位を設定する優先順位設定手段とを有し、
前記稼働制御手段は、前記要求電力情報を受けて決定した数の前記電力変換器を、前記優先順位設定手段が設定した優先順位に従って、上位から選択して稼働させることを特徴とする電力変換システム。
【請求項2】
前記劣化度の算出に使用する前記負荷率は、前記電力変換器が稼働を開始してから現在に至るまでの稼働時毎の負荷率全体の中央値であり、
前記優先順位設定手段は、算出した前記中央値を全稼働時間に乗算して劣化度とすることを特徴とする請求項1記載の電力変換システム。
【請求項3】
交流電力を直流電力に変換する電力変換器を複数備えて、それらが並列に接続された電力変換システムであって、
変換した直流電力の供給先から送信される要求電力情報を基に、前記電力変換器の稼働台数を決定して稼働を制御する稼働制御手段と、
個々の前記電力変換器の稼働時間を記憶する稼働時間記憶部と、
前記稼働時間を劣化度として、前記電力変換器の稼働優先順位を設定する優先順位設定手段とを有し、
前記稼働制御手段は、前記要求電力情報を受けて決定した数の前記電力変換器を、前記優先順位設定手段が設定した優先順位に従って、上位から選択して稼働させることを特徴とする電力変換システム。
【請求項4】
前記稼働制御手段は、稼働する前記電力変換器が定格出力或いは定格に近い出力動作をするよう稼働台数を決定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記電力変換器の点検/交換時期を記憶するメンテナンス情報記憶部と、
前記メンテナンス情報記憶部の情報及び前記優先順位設定手段が算出した劣化度から、電力変換器の点検/交換時期を判断するメンテナンス判断手段と、
メンテナンス情報を報知する報知部とを有し、
前記メンテナンス判断手段が、点検/交換時期に至った前記電力変換器が発生したと判断したら、前記報知部がそれを報知することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記稼働制御手段は、点検/交換時期に達した前記電力変換器が発生したら、劣化度の数値にかかわらず、稼働させる優先順位を最下位とすることを特徴とする請求項5記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記稼働制御手段は、点検/交換時期に達した前記電力変換器が複数存在する場合、後から点検/交換時期に達した前記電力変換器の優先順位を、既に点検/交換時期に達した前記電力変換器の直上に配置することを特徴とする請求項6記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を直流電力に変換して負荷に供給する電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力を直流電力に変換して負荷に供給する電力変換システムにおいて、変換効率を上げるために複数の電力変換器を並列配置して、出力側の要求する電力に応じて稼働させる電力変換器の数を変更する稼働形態がある。
ところが、このような動作をさせた場合、稼働時間にばらつきが発生して特定の電力変換器の稼働時間が長くなる問題があった。このような場合、稼働時間の長い特定の電力変換器に故障が集中した。
そのため、例えば特許文献1では、電力変換器毎の内部デバイスの温度を計測し、温度情報を基に電力変換する電流を機器毎に調整することで、頻繁な故障が発生しない構成とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-42355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度で判断して変換電流を調整する上記特許文献1の技術は、個々の電力変換器の稼働時間そのものを考慮してはいないため、稼働時間が平均化されずに故障し易い機器が発生する問題が引き続き存在した。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、電力変換効率を低下させないよう複数の電力変換器を備えた構成としても、特定の電力変換器に稼働が集中することがない電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、交流電力を直流電力に変換する電力変換器を複数備えて、それらが並列に接続された電力変換システムであって、変換した直流電力の供給先から送信される要求電力情報を基に、電力変換器の稼働台数を決定して稼働を制御する稼働制御手段と、個々の電力変換器の稼働時間、及び稼働時毎の負荷率を記憶する稼働時間記憶部と、電力変換器の稼働時間に負荷率を乗算した数値を劣化度として、電力変換器の稼働優先順位を設定する優先順位設定手段とを有し、稼働制御手段は、要求電力情報を受けて決定した数の電力変換器を、優先順位設定手段が設定した優先順位に従って、上位から選択して稼働させることを特徴とする。
この構成によれば、稼働時間と負荷率を加味した劣化度を監視して、劣化度の小さい電力変換器から優先して稼働させるため、特定の電力変換器が長時間稼働して劣化が進むようなことが無い。結果、頻繁に故障が発生することを防止できる。また、負荷率を加味した稼働時間で劣化度を判定するため、精度の高い劣化度判定ができる。そして、稼働させる電力変換器の数を直流電力供給先の要求電力情報に応じて変動させるため、稼働する電力変換器は高効率での稼働が可能となる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、劣化度の算出に使用する負荷率は、電力変換器が稼働を開始してから現在に至るまでの稼働時毎の負荷率全体の中央値であり、優先順位設定手段は、算出した中央値を全稼働時間に乗算して劣化度とすることを特徴とする。
この構成によれば、簡易な演算で劣化度を算出できるし、実際の稼働状態に即して劣化度を判断できる。
【0008】
請求項3の発明は、交流電力を直流電力に変換する電力変換器を複数備えて、それらが並列に接続された電力変換システムであって、変換した直流電力の供給先から送信される要求電力情報を基に、電力変換器の稼働台数を決定して稼働を制御する稼働制御手段と、個々の電力変換器の稼働時間を記憶する稼働時間記憶部と、稼働時間を劣化度として、電力変換器の稼働優先順位を設定する優先順位設定手段とを有し、稼働制御手段は、要求電力情報を受けて決定した数の電力変換器を、優先順位設定手段が設定した優先順位に従って、上位から選択して稼働させることを特徴する。
この構成によれば、稼働時間に基づく劣化度を監視して、劣化度の小さい電力変換器から優先して稼働させるため、特定の電力変換器が長時間稼働して劣化が進むようなことが無い。結果、頻繁に故障が発生することを防止できる。そして、稼働させる電力変換器の数を直流電力供給先の要求電力情報に応じて変動させるため、稼働する電力変換器は高効率での稼働が可能となる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、稼働制御手段は、稼働する電力変換器が定格出力或いは定格に近い出力動作をするよう稼働台数を決定することを特徴とする。
この構成によれば、稼働する電力変換器は、定格出力或いはそれに近い電力を出力するため、高い負荷率即ち高効率で運転できる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、電力変換器の点検/交換時期を記憶するメンテナンス情報記憶部と、メンテナンス情報記憶部の情報及び優先順位設定手段が算出した劣化度から、電力変換器の点検/交換時期を判断するメンテナンス判断手段と、メンテナンス情報を報知する報知部とを有し、メンテナンス判断手段が、点検/交換時期に至った電力変換器が発生したと判断したら、報知部がそれを報知することを特徴とする。
この構成によれば、点検/交換時期が来たらそれが報知されるため、管理者は点検/交換時期を気にする必要がない。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の構成において、稼働制御手段は、点検/交換時期に達した電力変換器が発生したら、劣化度の数値にかかわらず、稼働させる優先順位を最下位とすることを特徴とする。
この構成によれば、点検/交換時期に達した電力変換器の優先順位は最下位となるため、稼働時間が比較的短くても点検/交換時期に達した電力変換器の稼働率は最低になる。結果、点検/交換時期が比較的短い電力変換器が存在しても、故障する確率を低減できる。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の構成において、稼働制御手段は、点検/交換時期に達した電力変換器が複数存在する場合、後から点検/交換時期に達した電力変換器の優先順位を、既に点検/交換時期に達した電力変換器の直上に配置することを特徴とする。
この構成によれば、新たに点検/交換時期に達した電力変換器の優先順位は、既に点検/交換時期に達した電力変換器より優先順位上位に配置される。よって、先に点検/交換時期に達した電力変換器は引き続き稼働率を低くでき、故障する確率を低減できるし、新たに点検/交換時期に達した電力変換器は稼働率が低下するため故障する確率が低下する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、稼働時間に負荷率を加味した劣化度を監視して、或いは稼働時間を劣化度として監視して、劣化度の小さい電力変換器から優先して稼働させるため、特定の電力変換器が長時間稼働して劣化が進むようなことが無い。結果、頻繁に故障が発生することを防止できる。そして、稼働させる電力変換器の数を直流電力供給先の要求電力情報に応じて変動させるため、稼働する電力変換器は高効率での稼働が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る電力変換システムの一例を示す構成図である。
図2】電力変換器のブロック図である。
図3】制御ユニットのブロック図である。
図4】優先順位設定のフローチャートである。
図5】電力変換動作の流れを示すフローチャートである。
図6】負荷率中央値を算出する説明図であり、特定の電力変換器の負荷率の平均値と中央値を関係を示す表図である。
図7図6の電力変換器の負荷率中央値を求めるために、負荷率をソートして並べ替えた表図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る電力変換システムの一例を示す構成図である。電力変換システム1は、交流を直流に変換する複数の電力変換器2と、この電力変換器2を制御する稼働制御手段としての制御ユニット3とで構成されている。各電力変換器2は並列に接続され、直流電力を分担して生成するよう構成されている。
尚、ここでは電力変換器2を4台備えた構成を示し、電力供給先は電動車両(車両)5を充電する充電器6としている。また、8は太陽光発電装置、風力発電装置等の分散電源、9は分散電源8、電力変換システム1に対して要求電力情報を出力する電力調整部、10は商用電源(商用電力系統)である。
【0016】
図2は電力変換器2のブロック図を示している。電力変換器2は、図2に示すように、整流回路21に加えて、稼働時間を負荷率と共に記憶する稼働時間記憶部22、電力変換器2を制御する電力変換器CPU23、制御ユニット3と通信する通信部24等を備えている。尚、負荷率とは、電力変換器2の定格出力電力に対する実際の出力電力の割合である。
【0017】
図3は制御ユニット3のブロック図を示している。制御ユニット3は、図3に示すように、個々の電力変換器2と通信する第1通信部31、要求電力情報を受信するための第2通信部32、電力変換器2の点検限度時間及び交換限度時間を記憶するメンテナンス情報記憶部33、メンテナンス情報等を報知する報知部34、個々の電力変換器2を制御すると共に、制御ユニット3を制御する制御ユニットCPU35等を備えている。ここで、点検限度時間とは定期点検を必要とするまでの設定された稼働時間の長さ、交換限度時間とは機器の交換を必要とするまでの設定された累積稼働時間の長さである。
【0018】
制御ユニットCPU35は、電力変換器2の稼働時間及び負荷率の情報を基に、劣化度を算出して稼働させる優先順位付けをする優先順位設定手段として動作し、稼働させる電力変換器2の数の決定及び稼働させる電力変換器2の選択を行う。更に、制御ユニットCPU35は、メンテナンス判断手段として動作し、個々の電力変換器2の点検時期/交換時期を監視する。
【0019】
尚、劣化度は、電力変換器2の点検時期/交換時期を判断する1基準で有り、稼働時間に負荷率が乗算された値である。この劣化度が設定された交換時期である稼働限度時間に達したら劣化率100%となり、制御ユニットCPU35は交換時期が来たと判断する。メンテナンス情報記憶部33には、電力変換器2の点検限度時間及び稼働限度時間が記憶されており、制御ユニットCPU35により設定された時間に達したかどうか判断される。
【0020】
このように構成された電力変換システム1は以下のように動作する。制御ユニット3は、電力調整部9から要求電力情報を受けて、電力変換器2に制御信号を出力する。このとき、高効率運転を実施するために稼働させる電力変換器2の数が設定される。
尚、電力調整部9は、車両5が接続された充電器6から要求電力情報を入手する一方で、分散電源8の発電電力情報を入手し、電力変換システム1に要求電力情報を出力して、商用電力系統へ逆潮流が発生しないよう制御が成される。
【0021】
図4,5は電力変換システム1の動作フローを示し、このフローを参照して説明する。図4は稼働させる電力変換器2の優先順位設定の流れを示している。優先順位は、劣化度を算出して劣化度が小さい機器を最上位としてソートして順位を設定する。
まず、個々の電力変換器2から、稼働時間、負荷率を入手(S11)し、累積稼働時間と負荷率の中央値を算出する(S12)。そして、求めた負荷率中央値と累積稼働時間とを乗算して劣化度を算出する(S13)。劣化度が算出されたら、劣化度が小さい電力変換器2を上位に配置するソートを実施する(S14)。こうして、稼働させる際の優先順位が設定され、劣化度の小さい優先順位上位の電力変換器2が選択されて稼働制御が行われる(S15)。
【0022】
ここで、劣化度と劣化率を説明する。例えば、常に負荷率1.0(100%)で稼働したら劣化度は稼働時間に等しい。一方、負荷率の中央値が50%であれば、累積稼働時間が設定された稼働限度時間に達しても、劣化率は50%と判断されて実質稼働時間は稼働限度時間の2分の1と判断され、交換限度時間に達しないと判断される。
そして、累積稼働時間と負荷率中央値の乗算値が設定された稼働限度時間に達したら劣化率100%となり交換時期に達する。こうして、優先順位の設定は、総稼働時間と負荷率中間値の乗算値である劣化度で判断される。
尚、設定された優先順位の適用は、稼働限度時間に達しても交換されない機器があれば、その電力変換器2に対しても適用される。
【0023】
図5は電力変換器2の稼働制御の流れを示し、制御ユニット3は要求電力情報を受けたら(S21)、要求電力情報から電力変換器2の稼働数を決定する(S22)。
この稼働数は、要求電力/電力変換器2の定格出力で決定され、端数は切り上げられる。例えば、1台あたりの定格が30kWで50kW要求の場合、50/30=1.66であるため、稼働台数は2台となる。尚、この場合、按分(ここでは同一定格値の電力変換器として均等)に出力が分担されるため、それぞれ25kW出力で、負荷率は2台とも0.83となる。
こうして、稼働する電力変換器の数を決定するため、稼働する電力変換器2は、定格出力或いはそれに近い電力を出力することができ、高い負荷率即ち高効率で運転できる。
【0024】
次に、全ての電力変換器2の稼働が必要であれば(S23でNo)、全ての電力変換器2を稼働させる(S24)。この場合、停止させておく機器は無い。
一方、稼働台数が設置数より少ない場合(S23でYes)は、先に設定された優先順位に基づいて、優先順位上位の機器から決定した台数を選択して稼働させ(S25)、優先順位の低い機器は稼働させないよう制御する。また、稼働する電力変換器2は、上述したように出力を按分或いは等分して負荷率が均等になるよう制御される。
【0025】
但し、制御ユニットCPU35は、点検/交換時期に達した電力変換器2が発生したら、報知部34からメンテナンス情報を報知させる。そして、優先順位を最下位に設定する。具体的に、報知部34は図示しない報音部、LEDを有し、「ナンバー2の機器が交換時期を迎えました」等が報音部からアナウンスされる。また、LEDが点検/交換を促す点灯動作を実施する。
そして、劣化度の順位にかかわらず、点検/交換時期に達した電力変換器2の稼働させる優先順位を最下位に変更する。但し、この順位の設定は、点検/交換時期に達した電力変換器2が複数存在する場合は、後から点検/交換時期に達した電力変換器2は、既に点検/交換時期に達した電力変換器2の上位に配置される。
【0026】
このように、点検/交換時期に達した電力変換器2の優先順位は最下位となるため、稼働時間が比較的短くても点検/交換時期に達した電力変換器の稼働率は最低になる。結果、点検/交換時期が比較的短い電力変換器が存在しても、故障する確率を低減できる。
また、点検/交換時期に達した電力変換器2が複数発生した場合は、新たに発生した電力変換器2の優先順位は、既に点検/交換時期に達した電力変換器2より上位に配置されるため、先に検/交換時期に達した電力変換器2は引き続き稼働率を低くでき、故障する確率を低減できるし、新たに点検/交換時期に達した電力変換器2も稼働率が低下して故障する確率が低下する。
【0027】
ここで、負荷率の中央値と平均値を説明する。図6,7は負荷率の説明図であり、図6は特定の電力変換器2の平均値と中央値の関係を示している。図7は、図6の電力変換器2の中央値を求めるために、負荷率を小さい順にソートして並べ替えた表図である。尚、ここでは、電力変換器2の定格出力を10kWとしている。
図6に示すように、負荷率の平均値は全ての負荷率を加算して、データ数で除算した数字であるが、負荷率中央値は図7に示すように、負荷率を小さい順に並べて、中央の2値或いは3値を平均した数字である。図7に示すように、中央の3値(太枠内)を平均した結果中央値は67%となる。
【0028】
平均値は、おおよその中間値を把握できるが、図6に示すような場合負荷率0%や3%があるため58%であり、実際の稼働状態と一致しない場合が発生するが、中央値は67%であり実際の稼働状態にあった値となる。
【0029】
このように、稼働時間と負荷率を加味した劣化度を監視して、劣化度の小さい電力変換器2から優先して稼働させるため、特定の電力変換器2が長時間稼働して劣化が進むようなことが無い。結果、頻繁に故障が発生することを防止できる。また、負荷率を加味した稼働時間で劣化度を判定するため、精度の高い劣化度判定ができる。そして、稼働させる電力変換器2の数を直流電力供給先の要求電力情報に応じて変動させるため、稼働する電力変換器は、定格出力或いはそれに近い電力を出力させることができ、高い負荷率即ち高効率で運転できる。
更に、電力変換器2が点検/交換時期に達したら、それが報知されるため、管理者は点検/交換時期を気にする必要がない。
また、点検/交換時期に達した電力変換器2が交換されない状態でも、必要に応じて稼働させるため実際の電力供給に支障をきたさない。
また、負荷率の中央値を使用して、累積稼働時間にこの中央値を乗算する簡易な演算で劣化度を算出することで、実際の稼働状態に即して且つ簡易な演算で劣化度を判断できる。
【0030】
尚、上記実施形態は直流電力の供給先を車両5を充電する充電器6としているが、本発明の電力変換システム1は充電器6への供給に限定するものでは無く、家庭用の蓄電池等の充電に対しても好適である。
また、劣化度を稼働時間と負荷率との双方を加味して算出しているが、稼働時間のみで劣化度を決定しても良く、稼働させる電力変換器2の負荷率を高いレベルとすることで、上記形態に近い効果を得ることができる。
更に、稼働時間と負荷率を記憶する稼働時間記憶部22を個々の電力変換器2に設けているが、制御ユニット3に一括して設けても良い。
また、点検/交換時期に達したら通知する制御を行っているが、点検/交換時期に近づいた段階で通知しても良い。例えば、劣化率が点検/交換時期の90%に達したその時点で通知しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1・・電力変換システム、2・・電力変換器、3・・制御ユニット(稼働制御手段)、6・・充電器、10・・商用電源、21・・整流回路、22・・稼働時間記憶部、23・・電力変換器CPU、33・・メンテナンス情報記憶部、34・・報知部、35・・制御ユニットCPU(優先順位設定手段、メンテナンス判断手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7