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  • 特開-漂流軽石利用法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078935
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】漂流軽石利用法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20230531BHJP
   C01B 33/023 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C01B33/035
C01B33/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192275
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211569
【氏名又は名称】中松 義郎
(72)【発明者】
【氏名】中松 義郎
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB01
4G072GG03
4G072HH36
4G072JJ09
4G072LL01
4G072LL03
4G072MM01
4G072MM02
4G072MM23
4G072MM26
4G072MM36
4G072NN14
4G072RR02
4G072RR04
4G072RR11
4G072RR13
4G072RR15
4G072UU01
4G072UU02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】省エネ、環境問題を考慮した、原料を漂流軽石とした高純度金属シリコンの製造方法を提供する。
【解決手段】海上を漂流した大量の多孔質軽石を原料に用いる為、粉砕処理と還元処理に特徴を持たせた発明であり、原料を漂流軽石とした高純度金属シリコンの製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料が、海上を漂流する軽石とすることを特徴とする漂流軽石利用金属シリコンの製造法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
海底火山等にて噴出した、漂流軽石の活用に関する。
【背景技術】
【0002】
海上の火山が噴火するとマグマが噴出し、急激冷却され多孔性の軽石として海上を漂う。特に2021年8月13日の6時20分頃に福徳岡ノ場の海底火山にて起こった噴火は、過去にない大量の軽石として海上を漂うこととなった。この為、潮流に乗って、海岸迄押し寄せた軽石が、船やボイラの冷却水の取り入れ口等から入り込み冷却を邪魔し、また回転部に絡みつき、正常に機能できない様にしてしまった。このため、海上や港に浮かぶ軽石は除去が必要となり、除去した軽石の処置を考える必要がある。
軽石即ち火山灰の活用において、特許文献1には、火山灰を多孔質セラミックス焼成体の材料とすることが記載されている。ただし火山灰の多孔質を利用した、保水性、放湿性を有する素材とする事を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008―001564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2021年9月ごろより、世界の大きなシェアを握る中国の金属シリコン製造会社の減産が実施され、金属シリコン全般で品不足と価格上昇が発生した。これは中国での電力規制によるもので、大量の電力を消費する金属シリコン製造は、原料である珪石等は地球上に大量にある原材料にもかかわらず、著しい生産減となった。
金属シリコン製造には、主に中国でアーク炉が用いられるが、アーク炉では電力消費は大きく、カーボンによる還元反応させるので大量のCO、CO2が排出されることとなり環境破壊になっていた。
このような、省エネ、環境破壊と相容れぬ金属シリコン製造の大量電力消費およびCO2排出を出来るだけ小さくし、安価に製造することは重要な課題であり、金属シリコン(1~2N程度の純度のシリコン)を金属シリコン原材料に用いる業界、すなわち半導体用(11N以上に高純度化される)、さらには半導体を用いる車載分野、ソーラー用(5~9N程度に高純度化される)、アルミ合金、等の分野にて、連鎖的供給ひっ迫を生み出さぬ様、省エネ、環境問題を考慮した製造方法とする事は大切な課題である。尚、例えば5Nとは、wt%で、9が5つ並ぶことを意味し、99.999%の事である。
【0005】
また、浮遊軽石を原料でアーク炉に用いると、ガスが抜け多孔質であるので、汚染物、ガス、空気が残留しやすく、軽いので溶融すると上方に行って浮かんでしまったりはねたりする不具合が生じ均一に溶融、加熱が出来難い。また、中国に比し、日本では電気代が高く、アーク炉を用いる金属シリコンの製造は国内ではほとんどなされていない。
大量に存在する噴火岩や漂流軽石を原料で用いることが出来るようにすることは、火山国日本での金属シリコン製造を促進し、国内生産で有ればコスト的にも有利であるので、その製造方法の確立が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
原料が、海上を漂流する軽石とすることを特徴とする漂流軽石利用金属シリコンの製造法を提供する。
具体的には、海上を漂流した大量の多孔質軽石を原料に用いる為、粉砕処理と還元処理に特徴を持たせた発明であり、原料を漂流軽石とした高純度金属シリコンの製造方法。
である
【発明の効果】
【0007】
大量に入手可能で、噴火等により発生した、海上で除去必要な軽石を、粉砕、汚染除去し還元熱処理する事で、アーク炉を用いず低温で日本国内で製造できる。日本国内に大量に存在する噴火岩や軽石を原材料とする金属シリコンを得る事で、材料費も抑えることが出来るという効果がある。
又、直接粉末で洗浄、汚染除去、金属除去や、還元するので、電力も削減出来、CO2排出も低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来の金属シリコンの製造工程
図2】本発明第1の金属シリコン製造工程
図3】本発明第2の金属シリコン製造工程
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、従来の金属シリコンの製造工程を示す。
原料は、Si02(2酸化シリコン)を99~98%含む、珪石 等が用いられる。中国等が多く産出を行っており、SiO2の純度の高い鉱物である。
アーク炉工程1(又はアークプラズマ炉工程)では、2000度以上の高温で珪石を融解する。そして、電極のカーボンやその他コークスおよび、木材等投入するカーボンにより、珪石中にある2酸化シリコンをシリコン(Si)金属とする還元反応をおこさせ、金属シリコンは冷却され固体で取り出される。これによりある程度の純度(98%程度)の金属シリコンが得られる。所謂2N純度の金属シリコンである。
塩化工程前の粉砕工程2では、金属シリコン塊を、粉砕する。
塩化工程にて均一な滞留となるようにミルサイズを統一する為、篩で分類する。
塩化工程3では、公知の方法であって、粉砕工程2で粉砕した金属シリコン粒(粉)を、流動床に充填し、加温し、反応容器の底部より塩素ガスを導入し、金属シリコン粒内を通過させる事で、金属シリコンを塩化物のガスとし反応器上部より取り出し、冷却してシリコンの塩化物の液体とする。つまり、テトラクロロシラン(SiCl4:四塩化ケイ素)、トリクロロシラン(SiHCl3:TCSと呼ぶ)の、塩化物を得る。この金属シリコンの塩化物は常温で液体である。また、その他の金属も塩化物として存在し、分離が必要となる。
蒸留工程4においては、公知の方法にて、沸点の違いにより、TCSを得ることが出来る。
多結晶CVD成長工程5は、いわゆるシーメンス法と呼ばれ、水素ガス雰囲気で前記TCSを還元させ、シリコンの種結晶にシリコンを1000~1100度程度の温度でCVD成長させる事で、高純度金属ポリシリコン(多結晶シリコン)を得る。
【0010】
この多結晶の高純度金属シリコンは、公知の方法により単結晶化で高純度化され、シリコンウェーハとなり表面近傍に、パターニングが施され酸化、窒化、P/N拡散、P/N/絶縁層の積層等が行われ、たとえば車用半導体デバイスとすることが出来る。
【0011】
以上の従来の製造方法での課題、問題点は、前述したが、その他にも、海上を漂流した大量の多孔質軽石を原料として用いる場合、軽石の2酸化シリコン(SiO2)純度は70%程度であるので、アーク炉で還元しても純度も上がらず、再度精製の必要が発生し、エネルギー効率やコスト効率が悪い。
更に、多孔質の軽石は、シリコンの活性エネルギが大きく、アーク炉でSiCとなってしまうリスクもある。
【0012】
図2に本発明の第1の製造方法を記載する。
破砕工程6では、海上を漂流した多孔質軽石を用いるための処理を行う。
不純物及び、海水によるNa、Cl等無機物や水の吸着分を除去する為、酸洗浄、アルカリ洗浄および、真空による吸着脱離を行う。
更に、軽石の多孔質で、高活性化エネルギで有る事を利用し、粉砕で自己昇温させ、雰囲気を酸性(フッ素、塩素、)雰囲気エッチングさせ、更にに還元物質(例えばアルミ粉末)を導入しておくことで、粉末軽石の内部まで還元物質を吸着浸透させておく。
砕いて高温で酸雰囲気とする事で軽石が持つ不純物を低減させることが出来る。
また、粉砕は、軽石は中が空洞に近いので、容易に粉砕でき、省エネとなる。
粉砕サイズは、細かくするほうが良い。粉体で浮遊してうまく吸着洗浄できない場合、20~100ミクロン程度の粉砕程度とすることが好ましい。
【0013】
還元工程7では加熱し金属触媒による還元処理を行う。
還元用金属(例えばアルミ、ニッケル、コバルト、マンガン等)を追加混合し、雰囲気は不活性ガスとし、加熱し、還元反応を行い、2酸化シリコンを金属シリコンとする。
温度は、2酸化シリコンの融点前後の温度までとする。
これにより、酸化を除去した、メタル(鉄等)やカルシウム等を含む、金属シリコンの物質が出来る事となるが、冷却時の金属析出の温度の違いにて固化分離処理を行い、金属シリコンを分離させ抽出し、固化させる。
全て粉体にて処理する為、消費電力は少なくて済む。
多孔質粉砕時点で還元剤を導入する事で、効率的に、金属シリコンを取り出すことが出来る。
【0014】
粉砕工程8では、得られた金属シリコンをさらに高純度とするため、再度粉砕を実施し、篩をかけてサイズを合わせ、酸洗浄、アルカリ洗浄を実施する。
酸洗浄は、塩酸及び熱濃硫酸洗浄を行い、メタル他を除去する。
ここで温度を熱濃硫酸は100度以上で、塩酸洗浄は50度以上で、表面、細孔の金属を除去する。
粉砕時に上記粉砕工程6と同様に塩化処理に先立ち還元剤導入処理を行う。
粉砕のサイズは流動床塩化工程で適正に流動する程度のサイズとする。
【0015】
塩化工程3、蒸留工程4、多結晶CVD成長工程5は、前述の通りである。
多孔質の軽石材質であるので、例えば、還元剤を事前に吸着させておくことが可能であるので、塩化工程3では、効率的に生産できる。
【0016】
以上により、多結晶の高純度金属シリコンを得ることが出来る。シリコンの純度は11Nとなり、火山噴出軽石は、高純度金属多結晶シリコンとなる。
日本にて調達可能な火山噴出軽石を用いて高純度金属多結晶シリコンとする事により、半導体基板製造、半導体デバイス製造、ひいては半導体製品を使用する車、PCその他多くの製品に安定な供給をもたらすことが出来る。
【0017】
図3に本発明の第2の製造方法を記載する。
粉砕工程6、及び還元工程7は、第1の製造方法と同様である。
還元工程7でできた金属シリコンは、純度は高くないがソーラ用ポリシリコン(多結晶シリコン)にも用いることが可能である。
【0018】
粉砕工程8では、
(1)還元工程7でできた金属シリコンをそのまま用いる場合
粉砕は、ソーラ用のポリシリコンとするためのサイズに合わせ砕かれる。そしてアルカリ洗浄又は酸洗浄が施される。
この工程にて、製造されたソーラ用のポリシリコンは工程が少なくコストメリットがある。また、国内製造が可能なので安定供給できる。設備スペースも従来より削減可能である。
(2)再度高純度化する処理を行う場合。
前記第1の製造方法の粉砕工程8と同様である。
得られた金属シリコンをさらに多結晶で固液分離処理で高純度とするため、再度粉砕を実施し、篩をかけてサイズを合わせ、酸洗浄、アルカリ洗浄を実施する。
酸洗浄は、塩酸及び熱濃硫酸洗浄を行い、メタル他を除去する。
ここで温度を熱濃硫酸は100度以上で、塩酸洗浄は50度以上で、表面、細孔の金属を除去する。
粉砕時にキャスト法再還元処理に先立ち還元剤導入処理を行う。
粉砕のサイズは細かくするほうが良い。粉体で浮遊してうまく吸着洗浄できない場合、20~100ミクロン程度の粉砕程度とすることが好ましい。ボロン、リンの含有は最低限とする必要があるので、ボロン、リン除去処理を実施ても良い。
キャスト法再還元工程9では、公知のソーラ用ポリシリコン製造で用いられるキャスト成長であるが、還元剤を導入し、溶融し、固液分離処理行う。ただし、出来るだけ効率よく、充填率を上げ行うために前記粉砕工程8で粉末物とする。
以上で、得られた金属シリコンは、軽石を原材料としたソーラ用のポリシリコンとして用いることが出来きる。
【0019】
以上により、本願第2の製造方法では、ソーラ用のポリシリコンを得ることが出来、このポリシリコンは、円形または角形に精製加工され、スライスされ、セル製造(テクスチャ付、PN接合形成、電極形成等)後、モジュール(プラスチックラミネート等)し、ソーラ製品とする。
【0020】
本発明は、軽石を原料とし、アーク炉による金属シリコン工程を用いず、軽石の特徴を利用し直接高純度化とする事で、工程短縮、効率的な製造が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
金属シリコンを用いる業界、特に車載用半導体製造業界の供給問題が解決が出来るという効果があり、非常に有用である。
【符号の説明】
【0022】
1 アーク炉を用いた炭素による還元処理工程
2 金属シリコンの粉砕工程
3 流動床塩化工程
4 蒸留処理工程
5 シーメンス法による多結晶CVD(chemical vaper deposition)成長工程
6 多孔質である軽石原料を用いた時の洗浄と還元処理を含んだ、粉砕工程
7 還元剤による還元工程
8 多孔質である軽石原料を用いた時の洗浄と還元処理を含んだ、粉砕工程
9 金属シリコン純度向上のためのキャスト法による再還元工程



図1
図2
図3