(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078974
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】害獣捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01M 23/02 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
A01M23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192335
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(71)【出願人】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA13
2B121DA01
2B121DA12
2B121EA21
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】檻の外周を登ることができる害獣を捕獲し、捕獲後の害獣が檻から逃げ出すことを確実に防止しつつ、檻が破損する虞を低減した囲い罠を提供する。
【解決手段】本発明は、害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、捕獲空間を囲繞する側面部と、前記側面部の下端部から捕獲空間に向けて延設した下部折返し部と、前記側面部の上端部から捕獲空間に向けて斜め上方に延設した傾斜部と、前記傾斜部の上端部を繋ぎ合わせることで形成された開口部と、前記傾斜部の捕獲空間側に前記傾斜部から一定距離離間した位置に前記傾斜部と平行状に配設した通電部と、を有する害獣捕獲装置とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、
捕獲空間を囲繞する側面部と、
前記側面部の下端部から捕獲空間に向けて延設した下部折返し部と、
前記側面部の上端部から捕獲空間に向けて斜め上方に延設した傾斜部と、
前記傾斜部の上端部を繋ぎ合わせることで形成された開口部と、
前記傾斜部の捕獲空間側に前記傾斜部から一定距離離間した位置に前記傾斜部と平行状に配設した通電部と、
を有することを特徴とする害獣捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、害獣を捕獲するための害獣捕獲装置に関する。
【0002】
従来、害獣を捕獲するための害獣捕獲装置として囲い罠がある。囲い罠は、囲い状の構造物の中に複数の野生動物を閉じ込めて一度に大量に捕獲する罠のことであり、上方を開放状に形成されている。
【0003】
この囲い罠を利用して檻の外周を登ることができる害獣を捕獲しようとした場合、囲い罠の上部開口部から容易に害獣が侵入でき、一度に大量の害獣を捕獲できる反面、捕獲した害獣が囲い罠を構成する側壁を登って、捕獲空間の侵入口である上部開口部から逃走する虞があった。このように捕獲した害獣が囲い罠の開口部から逃走することを防止するための罠構造としては、特許文献1に記載の技術を備えたものがある。
【0004】
特許文献1に記載の囲い罠は、上方を開放状態として捕獲空間を囲むように連続して配置した側面部と、側面部の上端部から垂設した垂れ壁と、を有し、側面部は上部を捕獲空間側に傾斜状に形成され、垂れ壁は下端部が側面部に接触しないよう配設した構成が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の囲い罠は、上述した構成により、垂れ壁と側面部との間に閉塞空間を有する。この囲い罠は、捕獲空間に捕獲された害獣が囲い罠の上部開口部から脱出を試みて側面部を登ると閉塞空間に侵入することとなる。閉塞空間は、垂れ壁の上端部と側面部の上端部が接合されているため閉塞されている。したがって、閉塞空間に侵入した害獣は、閉塞空間の上端部から囲い罠の外部に逃走することができない。また、閉塞空間を構成する垂れ壁は、表面が平滑状に形成されている。そのため、害獣が閉塞空間に侵入せずに垂れ壁の外側をつたって囲い罠の上部開口部から逃走を図ろうとしても、垂れ壁に指を引掛ける部分がなく、垂れ壁の外側を登ることができない。
このように特許文献1に記載の囲い罠は、捕獲空間に害獣が侵入すると、側面部に垂設した垂れ壁の作用により、上部開口部から脱出できない装置構造を実現していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の害獣捕獲装置においては、害獣が捕獲空間に侵入しやすいように側面部を格子状の金網で構成し、側面部の上部を捕獲空間側に傾斜させた上方傾斜状に形成される。特に、側面部を格子状の金網で構成し、側面部の上部を傾斜状に形成し、側面部の上端部から垂れ壁を垂設した構成によれば、捕獲空間に害獣を捕獲した状態において、次のような問題がある。
【0008】
従来の害獣捕獲装置は、捕獲空間に害獣が侵入しやすいように側面部を格子状の金網で構成しており、かかる場合、害獣は、側面部の金網を登って害獣捕獲装置の上部に設けた開口部から捕獲空間に侵入する。捕獲空間に侵入した害獣は、捕獲空間内に設置された食物を食し、その後、侵入路である上部開口部から脱出しようとする。この際、害獣捕獲装置を形成する側面部が全て格子状の金網で形成されていることから、どの側面部も登ることができる。
すなわち、捕獲空間に侵入する害獣の数が増加すると、捕獲空間から脱出しようとして側面部に掴まる害獣の数が増加することとなり、害獣捕獲装置を構成する側面部への負荷が大きくなる。
【0009】
また、従来の害獣捕獲装置は、装置からの脱出を防止するための構成である垂れ壁に触れることができるため、捕獲空間に捕獲された害獣と、捕獲空間に侵入する前の害獣とが協力することで捕獲空間から脱出される虞があった。例えば、害獣が猿である場合、捕獲空間に侵入する前の猿同士が腰を掴んで連なって垂れ壁に沿った垂れ下がり形態を形成し、最下部に位置する猿の腕が垂れ壁の下端部の下側まで伸ばすことができれば、捕獲空間に捕獲された側の猿が、その腕を掴んで捕獲空間から脱出することができる。
【0010】
このように従来の害獣捕獲装置は、1つの装置で大量の害獣を捕獲できるとともに、捕獲した害獣が脱出することを防止できる構成を備えているものの、捕獲空間に捕獲される害獣の数が増加すると側面部への負荷が増大して、害獣捕獲装置が破損する虞があった。また、従来の捕獲装置は、捕獲した害獣が捕獲前の害獣と協力されると捕獲空間から脱出される虞があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、檻の外周を登ることができる害獣を捕獲し、捕獲後の害獣が檻から逃げ出すことを確実に防止しつつ、檻が破損する虞を低減した囲い罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、捕獲空間を囲繞する側面部と、前記側面部の下端部から捕獲空間に向けて延設した下部折返し部と、前記側面部の上端部から捕獲空間に向けて斜め上方に延設した傾斜部と、前記傾斜部の捕獲空間側に前記傾斜部から一定距離離間した位置に前記傾斜部と平行状に配設した通電部と、を有することを特徴とする害獣捕獲装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、捕獲空間を囲繞する側面部と、前記側面部の下端部から捕獲空間に向けて延設した下部折返し部と、前記側面部の上端部から捕獲空間に向けて斜め上方に延設した傾斜部と、前記傾斜部の捕獲空間側に前記傾斜部から一定距離離間した位置に前記傾斜部と平行状に配設し常時通電状態の通電部と、を有する構成のため、下部折返し部が地面と捕獲空間との間に介在することで捕獲空間に捕獲した害獣が捕獲空間の地面を掘って脱出を試みたとしても、捕獲空間の外部に到達するまでの穴の全長が長くなり、害獣の脱出に時間がかかることで当該捕獲空間から害獣が脱出を阻害する効果がある。
また、側面部の下端部から捕獲空間に向けて下部折返し部を延設した構成のため、害獣捕獲装置の地面に対する設置面積が増加して、側面部を安定した状態で地面に垂直に立設でき、側面部を害獣が登ったとしても側面部が破損する虞を低減できる効果がある。
また、傾斜部の捕獲空間側に前記傾斜部から一定距離離間した位置に前記傾斜部と平行状に通電部を配設した構成により、捕獲空間に侵入した害獣が側面部の内側面を登り、害獣捕獲装置の上端部に設けた開口部から逃走を図ろうとすると、必ず通電部を通過する。通電部は常時帯電状態であるため、害獣が捕獲空間から外部に脱出しようとすると通電部で感電して捕獲空間の外部に脱出することを防止できる効果がある。また、傾斜部の内側面側に通電部を配設する構成により、捕獲空間への害獣の侵入時には感電することなく傾斜部を登ることができ、捕獲空間に捕獲した害獣が捕獲空間の外部に脱出しようとした場合には、通電部を把持する必要性から容易には脱出することができない効果がある。また、通電部を配設した構成により、脱出しようとした害獣が感電したことを捕獲空間に捕獲された他の害獣が見ることで脱出できないことを学習させて他の害獣が側面部を登ることを抑制する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる害獣捕獲装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる側面部のパネルユニットを示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる側面部パネルユニットの支柱の構造を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【
図4】本発明の実施形態にかかる側面部パネルユニットの連結部材を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)はB-B線断面図である。
【
図5】本発明の実施形態にかかる側面部パネルユニットの支柱と連結部材との連結構造および支柱と連結部材と金網との係合を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態にかかる下部折返し部のパネルユニットを示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる下部折返し部の連結部材を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)はC-C線断面図である。
【
図9】本発明の実施形態にかかる傾斜部および通電部を示す図であり、(a)は傾斜部を示す正面図であり、(b)は傾斜部および通電部の連結構造を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施形態にかかる通電部の構成を示す図であり、(a)は支持部を示す正面図であり、(b)は碍子および電柵線を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態について
図1~
図10を参照して詳説する。なお、本実施形態の説明において、害獣捕獲装置100の前後左右の方向は、
図1に図示している通りであり、
図1において、左手前側を前方とし、右奥側を後方とし、右手前側を右方向とし、左奥側を左方向として説明する。また、
図1において、側面部10、下部折返し部20、傾斜部30には、それぞれ格子状の金網14が配設されているが、図が煩雑となるため、金網14の図示を省略している。
【0016】
本発明にかかる害獣捕獲装置100は、捕獲空間Sを形成して害獣を捕獲するための上部を開放状に形成した、いわゆる、囲い罠である。害獣捕獲装置100は、捕獲空間Sを囲うように地面に対して鉛直状に立設した側面部10と、側面部10の下端部から捕獲空間Sに向けて延設した下部折返し部20と、側面部10の上端部から捕獲空間S側に斜め上方に向けて延設した傾斜部30と、傾斜部30の捕獲空間S側に傾斜部30から一定距離離間した位置に傾斜部30と平行状に配設した通電部40と、を有する。
【0017】
側面部10は、
図1に示すように、捕獲空間Sの外周側面を形成するものであり、複数のパネルユニット11,11,11・・・を連結することで形成されている。側面部10は、複数のパネルユニット11,11,11・・・を平面視略方形状に配設している。
【0018】
パネルユニット11は、正面視略方形状のパネル部材であり、平行に配設した左右の支柱12,12と、左右の支柱12,12の上下端部間にそれぞれ架設した上下の連結部材13,13と,左右の支柱12,12および上下の連結部材13,13に張設した金網14とで構成している。
【0019】
支柱12は、方形平板状に形成された鋼板を短手方向略中央部から直交状に屈曲した断面略“L”字状に構成した鋼材であり、支柱フランジ12aと連結フランジ12bを有する。
【0020】
支柱フランジ12aは、長手方向に沿って一定間隔で設けられた表面から裏面まで貫通形成した複数の固定用孔部12a1,12a1・・・を有する。固定用孔部12a1は、
図2および
図3(a),(b)に示すように、支柱フランジ12aの上下両端部近傍を横長の略楕円形状に形成し、その間に位置する固定用孔部12a1を縦長の略楕円形状に形成している。支柱フランジ12aの上下両端部に位置する固定用孔部12a1,12a1は、連結部材13とボルト等で締結される際に利用され、締結後の連結部材13を水平状態に維持するために横長の孔形状としている。また、縦長に穿設した固定用孔部12a1には、固定金具16をボルト等で固定している。固定金具16は、金網14が左右方向に揺動することを規制するための棒状部材16aを挟持固定している。このように、棒状部材16aを挟持固定する固定金具16を縦長の略楕円形状に穿設した固定用孔部12a1にボルトで固定することにより、棒状部材16aの左右方向(または前後方向)への揺動を規制できる。
【0021】
連結フランジ12bは、
図5に示すように、長手方向に沿って一定間隔で設けられた表面から裏面まで貫通形成した複数の固定用孔部12b1,12b1・・・を有する。固定用孔部12b1は、支柱フランジ12aと同様に連結フランジ12bの上下両端部近傍を横長の略楕円形状に形成し、その間に位置する固定用孔部12b1を縦長の略楕円形状に形成している。これにより、連結フランジ12bは、上下両端部近傍に穿設した横長の固定用孔部12b1で連結された連結フランジ12b,12b同士の上下方向のズレを抑制することができ、また、縦長の固定用孔部12b1で左右(または前後)方向のズレを抑制することができる。
【0022】
このように形成した支柱12は、一定距離離間して地面に鉛直状に立設されている。この際、支柱12は、連結フランジ12bの内側面が対向するように配設される。各支柱12,12の上端部間および下端部間には、それぞれ連結部材13,13を架設している。
【0023】
連結部材13は、
図4(a),(b)に示すように、支柱12と略同一の構成であり、方形平板状に形成された鋼板の短手方向略中央部から直交状に屈曲した断面略“L”字状に構成した鋼材であり、支持フランジ13aと連結フランジ13bとを有する。
【0024】
支持フランジ13aは、左右両端部近傍の上部側に穿設した正面視略円形状の固定孔部13a1と、連結部材13の内側面に長手方向に沿って一定間隔で突設した複数の支持ブラケット13a2を有する。固定孔部13a1は、前述の支柱フランジ12aに穿設した横長の固定用孔部12a1における短軸の長さと略同一径に構成している。これにより、支柱12と連結部材13をボルト等で締結した際、締結したボルトの締め付け部の径と固定用孔部12a1と固定孔部13a1とが略同一径であることから、支柱12と連結部材13とが締結後に上下方向に揺動する虞を可及的に低減できる。
【0025】
支持ブラケット13a2は、
図4(a),(b)および
図5に示すように、支持フランジ13aに直交状に突設した支持部13a2´と、支持部13a2´の先端部から支持フランジ13aに向けて直交状に屈曲して延設した固定部13a2´´を有する。このように、支持ブラケット13a2は、支持フランジ13aの内側面と支持部13a2´と固定部13a2´´とで略“U”字形状の支持空間13Sを形成している。この支持空間13Sには、後述する補強材15が挿通されている。これにより、支持空間13Sに挿通された補強材15は、支持ブラケット13a2および支持フランジ13aの内側面により、揺動が規制される。また、補強材15には、金網14が係合しており、補強材15の揺動が規制されることで補強材15に係合した金網14の揺動も規制される。
【0026】
このように構成された支柱12と連結部材13とは、
図5に示すように、支柱12の上下両端部近傍に横長に形成した楕円形状の固定用孔部12a1と、連結部材13の正面視略円形状に形成した固定孔部13a1とをボルトを介して連結することで正面視略方形状のパネルユニット11の枠組みを形成している。パネルユニット11は、左右の支柱12,12と、左右の支柱12,12の上下端部に架設した上下の連結部材13,13とで囲まれた開口部11Sを有する。
【0027】
開口部11Sには、斜め格子状に編まれた金網14を配設している。金網14は、複数の金属線材14aを編むことで網状とした金属製品であり、織り合わせた網目を斜め格子状となるように構成している。金属線材14aは、所定の間隔で繰り返し折り曲げた複数の屈曲部14b,14b・・・を有する。金網14は、上下に隣接した金属線材14a,14aの屈曲部14b,14b同士を係合した係合部14cを形成することで一定の面積を有するパネル状に形成している。
【0028】
このように形成された金網14は、左右端部の係合部14cを棒状部材16aに係止しており、上下端部に位置する金属線材14aの屈曲部14bを補強材15に係止している。これにより、金網14は、左右の支柱12,12および上下の連結部材13,13に張設される。
【0029】
棒状部材16aは、
図5に示すように、水平断面が略円形状であり連結フランジ12bの縦長の略楕円形状に穿設した固定用孔部12a1に係合固定した固定金具16に挟持されている。これにより、棒状部材16aは、支柱12の連結フランジ12bに連結固定されている。
【0030】
補強材15は、
図4(a),(b)および
図5に示すように、鉛直断面が略方形状の板状部材であり、支持ブラケット13a2の支持空間13Sに挿通して支持部13a2´に支持されている。
【0031】
パネルユニット11は、上述した左右の支柱12,12と支柱12,12の上下端部に架設した連結部材13,13とで骨組みを形成し、支柱12および連結部材13で形成される開口部11Sに金網14を張設することで形成されている。
パネルユニット11は、害獣捕獲装置100の側面部10の左右において、3つのパネルユニット11を併設している。すなわち、一方のパネルユニット11を構成する連結フランジ12bの外側面と他方のパネルユニット11を構成する連結フランジ12bの外側面を接触して固定用孔部12b1,12b1を介してボルトで締結することで全体を一枚の横長のパネルに形成している。
【0032】
また、パネルユニット11は、害獣捕獲装置100の側面部10の前後において、2つのパネルユニット11を併設している。すなわち、一方のパネルユニット11を構成する連結フランジ12bの外側面と他方のパネルユニット11を構成する連結フランジ12bの外側面を接触して固定用孔部12b1,12b1を介してボルトで締結固定し、全体として一枚の横長のパネルに形成している。
【0033】
このように、害獣捕獲装置100の側面部10が各パネルユニット11を連結し、連結されたパネルユニット11があたかも一枚のパネルユニット11で形成されているかのように構成することで害獣がパネルユニット11を登った際にもパネルユニット11が揺動する蓋然性を低減し、害獣捕獲装置100を安定した状態に維持できる。
なお、本実施形態において、害獣捕獲装置100の左右および前後に配設した側面部10は、左右の側面部10を3枚のパネルユニット11,11,11を連設して構成し、前後の側面部10を2枚のパネルユニット11,11を連設することで構成している。これにより、平面視略方形状の側面部10を形成し、その内側の空間を捕獲空間Sとすることができる。
【0034】
このように構成された側面部10の下端部には、捕獲空間S側に向けて下部折返し部20を延設している。下部折返し部20は、平面視略方形状のパネル部材であり、捕獲空間Sの地面に敷設して、捕獲空間Sに捕獲した害獣が穴を掘って脱出することを防止するためのパネル部材である。
【0035】
下部折返し部20は、
図6に示すように、平面視略方形状の縁部に設けた連結部材21と、連結部材21に係合固定された金網22を有する。
連結部材21は、
図7(a),(b)に示すように、略平板形状で長手方向の両端部近傍に穿設した固定用孔部21aと、固定用孔部21aの間に連結部材21の長手方向に沿って一定間隔に穿設した係合ブラケット21bを有する。
【0036】
固定用孔部21aは、平面視略円形状に形成されており、側面部10のパネルユニット11を構成する連結フランジ13bの固定用孔部13b1にボルトを挿通することで一体に固定されている。これにより、側面部10と下部折返し部20が隙間なく一体に連結固定される。
【0037】
係合ブラケット21bは、連結部材13の支持ブラケット13a2と略同一の構成であり、連結部材21に直交状に突設した支持部21b´と、支持部21b´の先端部から直交状に屈曲して延設した固定部21b´´を有する。係合ブラケット21bは、連結部材21と支持部21b´と、固定部21b´´とで略“U”字形状の固定空間21Sを形成している。この固定空間21Sには、補強材15が挿通されている。補強材15は、係合ブラケット21bおよび連結部材21の表面で揺動が規制される。また、補強材15には、金網22が係合固定しており、補強材15の揺動規制とともに金網22の揺動も規制される。
【0038】
金網22は、側面部10に配設した金網14と略同一の構成であるため、その説明を省略する。金網22は、平面視略方形状に形成しており、平面視略中央部に略方形状の開口部22aを有する。また、金網22は、金網14と同様に屈曲部22bを有し、屈曲部22bを補強材15に係合することで捕獲空間Sの地面に固定されている。
【0039】
このように下部折返し部20は構成されており、側面部10から捕獲空間Sに向けて金網22を延設したことにより、捕獲空間Sに捕獲された害獣が地面を穿孔して脱出する際の穿孔距離が延び、害獣が捕獲空間Sから脱出することを抑制できる。
【0040】
また、側面部10の上端部には、捕獲空間S側に斜め上方に向けて傾斜部30を延設している。
傾斜部30は、
図8および
図9(a),(b)に示すように、パネルユニット11と類似した構成であり、左右の支柱31,31と、左右の支柱31,31の上下端部に連結した連結部材32,32と、支柱31および連結部材32とで囲まれた開口部30Sに張設した金網33とで構成している。
【0041】
支柱31、連結部材32、および金網33は、側面部10を構成する支柱12、連結部材13、および金網14と略同一の構成であるため、その説明を省略する。
なお、傾斜部30は、側面部10と異なり害獣捕獲装置100の前後左右に1枚ずつ配設された合計4枚のパネルユニットで構成している。これは、複数のパネルユニットを組合わせて傾斜部30を形成することにより、傾斜部30が重くなることを防止するためである。換言すると、傾斜部30を構成する部材の部品点数をできる限り減らすことにより軽量化を図り、側面部10への負荷を低減している。
【0042】
また、傾斜部30は、各側面部10に対する角度α(
図9(b)参照)を捕獲空間S側に斜め45度傾倒した状態で係止している。例えば、害獣捕獲装置100の前側の側面部10に延設した傾斜部30は、
図1に示すように、側面視において後側に45度傾斜しており、また、右側の側面部10に延設した傾斜部30は、正面視において左側に45度傾斜している。側面部10に対する傾斜部30の傾倒角度は、後側および左側においても同様である。
【0043】
また、傾斜部30は、前後左右のパネル部材における連結部材32の先端部を連結することにより、開口部34を形成している。開口部34は、平面視略方形状であり、捕獲空間Sへの害獣の侵入口として機能する。
【0044】
このように構成した傾斜部30の捕獲空間S側の面には、通電部40を配設している。
通電部40は、
図8、
図9(b)、および
図10(a),(b)に示すように傾斜部30の内側面に係止した支持部41と、支持部41に螺設した碍子42と、碍子42の先端部に巻回した電柵線43を有する。
【0045】
支持部41は、
図10(a)に示すように、平面視略方形状で平板状に形成された部材であり、傾斜部30の上下連結部材32,32に固定するための碍子固定孔41aと、碍子42を固定するための碍子固定孔41bを有する。碍子固定孔41aは、正面視において横長の略楕円形状に穿設されている。また、碍子固定孔41bは、正面視において略円形状に穿設しており、孔の内側にネジを固定するためのネジ溝を螺刻している。碍子固定孔41aには、碍子42を螺設している。
【0046】
碍子42は、電柵線43を係止するための碍子本体42aと、碍子本体42aの裏面に突設したネジ部42bを有する。
【0047】
碍子本体42aは、略円柱状に形成した碍子基部42a1と、同じく略円柱状に形成した碍子先端部42a2とを有し、碍子基部42a1と碍子先端部42a2との間に電柵線係止部42a3を有する。
【0048】
碍子基部42a1は、一定長に形成された円柱部分であり、支持部41から一定距離離間した位置に電柵線43を係止できるように構成している。碍子基部42a1の裏面側には、ネジ部42bを延設している。ネジ部42bは、支持部41に穿設した碍子固定孔41aに螺合している。これにより、碍子基部42a1の基端部が支持部41に当接して固定される。
【0049】
また、碍子先端部42a2は、略円柱状に形成されており、前後端部を平面状に形成している。碍子先端部42a2の平面部と、碍子基部42a1の前端部との間に電柵線係止部42a3を形成している。
【0050】
電柵線係止部42a3は、断面略円形状で周面に後述する電柵線43を係止している。 電柵線係止部42a3は、前端部側が碍子先端部42a2の平面部で閉塞されており、後端部側が碍子基部42a1の前端部で閉塞されている。これにより、電柵線係止部42a3の周面に巻回した電柵線43は、碍子基部42a1および碍子先端部42a2により前後への移動が規制される。すなわち、電柵線43は、害獣捕獲装置100を設置した状態において、切断される以外の手段で電柵線係止部42a3から外れる蓋然性を可及的に低減し、害獣が電柵線43を掴んだ際にも確実に位置固定されるように構成している。
【0051】
電柵線43は、支持部41に複数係止した碍子42のうち、隣接する支持部41の碍子42と略同一高さの碍子42に囲繞することで略水平状に形成される。電柵線43は、プラス側に帯電した陽極側の電柵線43aと、マイナス側に帯電した陰極側の電柵線43bを有する。電柵線43は、上側3本を電源部50の陽極側の線に接続されてプラスに帯電している。また、電柵線43は、下側3本を電源部50の陰極側の線に接続されてマイナスに帯電している。
【0052】
このように、通電部40に設置した電柵線43は、配設した6本のうち、上側3本をプラスに帯電し、下側3本をマイナスに帯電している。これにより、害獣捕獲装置100から脱出しようとする害獣は、通電部40に差し掛かると、プラスに帯電した電柵線43aとマイナスに帯電した電柵線43bの極性の異なる2つの電柵線43a,43bを掴むこととなり、その結果、感電して再度捕獲空間Sに落下することとなる。すなわち、プラス側に帯電した電柵線43aとマイナス側に帯電した電柵線43bを上下それぞれに固めて配置したことにより、捕獲空間から脱出する際、必ず極性の異なる電柵線43a、43bを同時に把持することとなり、感電を免れることができない。
なお、電柵線43の極性を上側3本をプラス側に帯電し、下側3本をマイナス側に帯電した構成を説明したが、本発明は、上述の構成に限定されず、上側3本をマイナス側に帯電し、下側3本をプラス側に帯電させる構成としてもよい。また、電柵線43は、プラス側の電柵線43aとマイナス側の電柵線43bを交互に配設した構成でもよい。
【0053】
電源部50は、
図1に示すように、捕獲空間Sを形成する側面部10から一定距離離間した地面に立設しており、発電するための発電部51と、発電部51で発電した電気を蓄電するための蓄電部52と、蓄電部52に蓄電された電気を通電部40の電柵線43に通電するためのリード線53を有する。
【0054】
発電部51は、太陽光や風力や水力や地熱などの自然エネルギーを利用して発電する発電機構である。本実施形態において、発電部51は、太陽光を利用した太陽光発電が可能なように太陽光パネルにて構成している。発電部51における太陽光パネルは、蓄電部52と図示しないリード線で接続されており、発電部51で発電された電気を蓄電部52で蓄電できるように構成している。
【0055】
蓄電部52は、発電部51で発電した電気を蓄え、必要に応じて通電部40の電柵線43に電気を供給できるように構成している。蓄電部52には、リード線53が接続されている。
【0056】
リード線53は、蓄電部52のプラス側に接続されたプラス側のリード線53aと、蓄電部52のマイナス側に接続されたマイナス側のリード線53bを有する。プラス側のリード線53aは、通電部40のプラス側の電柵線43aに接続されており、また、マイナス側のリード線53bは、通電部40のマイナス側の電柵線43bに接続されている。
【0057】
これにより通電部40の電柵線43は、プラス側のリード線53aに接続した線がプラスに帯電し、また、マイナス側のリード線53bに接続した線がマイナスに帯電する。このように、電柵線43aと電柵線43bの間に電位差を生起することにより、両方の電柵線43a、43bに害獣が触れた場合に感電するように構成している。
【0058】
このように電源部50を自然エネルギーを利用して発電可能に構成し、その発電した電気をいつでも利用できるように蓄電して使用する構成としたことにより、害獣捕獲装置100の設置場所が限定されることなく、任意の場所に設置することができるとともに、蓄電部52を有することで夜間においても通電できる。
【0059】
このように害獣捕獲装置100は構成されており、側面部10を金網14で構成したことで側面部10の外側面を害獣が容易に登ることができる。また、側面部10の上端部に到達した害獣は、側面部10と同様に金網状に形成された傾斜部30の傾斜面に沿って傾斜部30の先端部である開口部34まで容易に登ることができる。なお、傾斜部30は、通電部40の電柵線43が碍子42を介して一定距離離間して固定されているため、非通電状態に維持されている。
【0060】
また、開口部34に到達した害獣は、傾斜部30が捕獲空間S側に斜め45度傾斜した状態で形成されているため、傾斜部30の外側面で姿勢を安定させることができる。これにより、害獣は、傾斜部30の先端部で姿勢を整え、開口部34から捕獲空間Sにジャンプして侵入できる。
【0061】
仮に、傾斜部30の捕獲空間S側への傾斜角度を45度よりも小さくすると、捕獲空間Sの地面から開口部34までの距離が長くなるため、捕獲空間への侵入方法がジャンプによるものではなく、傾斜部30の内側面、および側面部10の内側面を伝って侵入しようとする。この際、害獣は、傾斜部30の内側面に配設した通電部40の電柵線43a,44bに接触することとなり、捕獲空間Sへの侵入時に感電することとなる。
このように、害獣が捕獲空間Sに侵入する前に他の仲間の感電を確認すると、他の害獣が捕獲空間Sに侵入することをためらい、警戒して侵入をやめる虞があり、罠として機能しなくなる虞がある。
【0062】
また、反対に傾斜部30の捕獲空間Sへの傾斜角度を45度よりも大きくすると、捕獲空間Sに侵入を試みようとする害獣が傾斜部30の外側面に乗った際に傾斜部30にかかる負荷が大きくなることで傾斜部30の側面部10との連結部が破損する虞がある。
また、傾斜部30の捕獲空間Sへの傾斜角度を45度よりも大きくすると、捕獲空間Sから害獣が逃走する場合において、隣接する電柵線43、43の水平方向の間隔dが広くなるとともに、通電部40が登り傾斜形態ではなくなるまたは緩やかな登り傾斜形態となることで隣接する電柵線43,43の隙間から傾斜部30の金網33を直接把持し、感電を回避しつつ開口部34まで到達して逃走される虞がある。
【0063】
このように、通電部40は、傾斜角度を45度とすることで、開口部34から害獣が侵入する際には、感電することなく容易に捕獲空間Sに侵入することができ、捕獲空間Sから害獣が逃走する際には、通電部40が登り傾斜状態となることにより、プラス側の電柵線43aとマイナス側の電柵線43bの両方の電柵線を確実に把持させることにより、逃走を図った害獣が確実に感電して捕獲空間Sから脱出できないよう構成している。
【0064】
また、捕獲空間Sから逃走しようとする害獣を電柵線43で感電して逃走できないようにすることで、同時期に捕獲空間Sに捕獲された他の害獣に対して側面部10を登り開口部34から逃走を図ると感電することを印象付けて、側面部10に登ることを抑制させる。これにより、捕獲空間Sに大量の害獣を捕獲した場合においても、大量の害獣が側面部10に掴まることを抑制して、害獣捕獲装置100が破損する虞を抑制できる。
【0065】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したリ組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0066】
10 側面部
11 パネルユニット
12 支柱
13 連結部材
14 金網
15 補強材
16 固定金具
20 下部折返し部
21 連結部材
22 金網
30 傾斜部
31 支柱
32 連結部材
33 金網
34 開口部
40 通電部
41 支持部
42 碍子
43 電柵線
50 電源部
51 発電部
52 蓄電部
53 リード線
100 害獣捕獲装置
S 捕獲空間
α 角度
d 間隔