(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078988
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20230531BHJP
B65D 23/08 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 BSG
B65D23/08 Z BRL
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192357
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清都 弘光
(72)【発明者】
【氏名】門前 秀人
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠士
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA16
3E033DA03
3E033DB01
3E033DD05
3E033EA04
3E033EA05
3E033FA03
3E062AA09
3E062AC08
3E062JA01
3E062JA08
3E062JB07
3E062JB27
3E062JC02
3E062JD01
3E062JD10
(57)【要約】
【課題】剥離可能に積層された被覆層を備える合成樹脂製容器において、被覆層の摩擦による抵抗が大きいことに起因する不具合を回避する。
【解決手段】
口部2、肩部3、胴部4及び底部5を含む所定の容器形状に形成された容器本体1aと、容器本体1aの外周面側に剥離可能に積層された被覆層6と備える容器1において、被覆層6の表面の少なくとも一部を粗面化し、粗面化された当該表面の摩擦係数を1.0未満とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部及び底部を含む所定の容器形状に形成された容器本体と、前記容器本体の外周面側に剥離可能に積層された被覆層とを備える合成樹脂製容器であって、
前記被覆層の表面の少なくとも一部が粗面化され、粗面化された当該表面の摩擦係数が1.0未満とされたことを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記被覆層の粗面化された表面の算術平均高さRaが0.1以上、スキューネスRskが0.2以下である請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記被覆層が低密度ポリエチレンからなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記被覆層の粗面化された表面の算術平均高さRaと、スキューネスRskとの間に、
0.035/Ra+0.097×Rsk+0.2<1.0
なる関係が成り立つ請求項3に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離可能に積層された被覆層を備える合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて有底筒状に成形されたプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
この種の合成樹脂製容器は、近年、益々身近な存在となってきており、それに伴って様々な提案がなされている。このような近年の状況において、本出願人は、特許文献1において、ダブルモールドにより被覆材層が積層されたプリフォームを作製し、かかるプリフォームをブロー成形することによって、剥離可能に積層された被覆層を備える合成樹脂製容器を製造することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記の如き被覆層を備える合成樹脂製容器の改善点について鋭意検討を重ねてきたところ、被覆層の摩擦による抵抗が大きいと、これに起因する不具合が生じる虞があることを見いだした。そして、そのような不具合が生じないようにするべく、さらなる鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部、肩部、胴部及び底部を含む所定の容器形状に形成された容器本体と、前記容器本体の外周面側に剥離可能に積層された被覆層とを備える合成樹脂製容器であって、前記被覆層の表面の少なくとも一部が粗面化され、粗面化された当該表面の摩擦係数が1.0未満とされた構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剥離可能に積層された被覆層を備える合成樹脂製容器において、被覆層の摩擦による抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図であり、
図2は、同正面図ある。
【0010】
これらの図に示す容器1は、口部2、肩部3、胴部4及び底部5を含む所定の容器形状に成形された容器本体1aと、容器本体1aの外周面側に剥離可能に積層された被覆層6とを備えている。図示する例において、容器1(容器本体1a)は、胴部4が円筒状に形成された、一般に、丸形ボトルと称される容器形状を有しているが、容器1の形状は、これに限定されない。例えば、角形ボトルと称される容器形状としたり、胴部4の一部が部分的に大きく縮径して括れた形状としたりすることもできる。
【0011】
なお、
図2には、口部2及び肩部3の一部を切り欠いて、その断面を示しており、断面にあらわれる容器本体1a、被覆層6の肉厚を誇張して描写している。
【0012】
口部2は、内容物の注入出口となる円筒状の部位であり、口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのネジ山2aが設けられている。
また、口部2には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング2bが設けられている。そして、ネックリング2bの直下から、概ね同一径で円筒状に垂下する首下部2cを含めて口部2というものとする。
【0013】
このような口部2の下端は、胴部4に向かって拡径して口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3に連接している。図示する例において、肩部3は、丸みを帯びた円錐台状に形成されているが、肩部3の形状は、これに限定されない。例えば、いわゆるつる首状に形成したりすることもできる。
【0014】
また、胴部4は、容器1の高さ方向の多くを占める部位であり、上端が肩部3に連接し、下端が底部5に連接している。図示する例において、容器1は、炭酸飲料を内容物とする用途に適するように、いわゆるペタロイド形状に形成された底部5を備えているが、底部5の形状は、非炭酸飲料を内容物とする用途に適したその他の形状としてもよく、用途に応じて適宜変更することができる。
【0015】
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(
図2に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0016】
このような容器形状に成形された容器1において、被覆層6は、少なくとも胴部4を覆うように積層することができる。図示する例では、底部5の底面から胴部4の周面の全面が被覆層6で覆われているとともに、被覆層6の末端側が、口部2の下端側の首下部2cの全周を覆ってネックリング2bの直下に達するように積層されている。
【0017】
次に、本実施形態に係る合成樹脂製容器の製造方法について説明する。
図3は、前述した容器1をブロー成形するために用いる成形型100の一例を示しており、成形型100は、肩部3及び胴部4を成形する胴型104と、底部5を成形する底型105とを備えている。胴型104は、開閉可能に構成された一対の分割型からなり、
図3には、胴型104のパーティング面を含む面で成形型100を切り取った断面を簡略化して示している。
【0018】
また、
図4は、前述した容器1にブロー成形されるプリフォーム10の一例を示しており、プリフォーム10は、プリフォーム本体10aと、プリフォーム本体10aの外周面側に剥離可能に積層された被覆材層60とを備えている。
【0019】
プリフォーム本体10aは、後述するようにしてブロー成形する際に、その外観を概ね維持して容器本体1aの口部2となる口部形成領域20と、延伸されて容器本体1aの肩部3、胴部4及び底部5に成形される延伸領域30とを含む有底筒状に成形されている。そして、プリフォーム本体10aの口部形成領域20には、容器1に付された符号と同一の符号を以て示すネジ山2a、ネックリング2bが設けられており、口部形成領域20のネックリング2bの下側の部位が、容器本体1aの首下部2cとなる。
【0020】
ここで、
図4は、プリフォーム10の縦断面図であり、断面にあらわれるプリフォーム本体10a、被覆材層60の肉厚を誇張して描写している。
また、プリフォーム10の上下左右及び縦横の方向は、口部形成領域20側を上にした
図4に示す状態で規定するものとする。
【0021】
また、プリフォーム本体10aに積層される被覆材層60は、その末端側が、口部形成領域20の下端側を覆うように積層することができる。図示する例では、延伸領域30の全面が被覆材層60で覆われているとともに、被覆材層60の末端側が、口部形成領域20のネックリング2bの下側の部位(容器本体1aの首下部2cとなる部位)の全周を覆ってネックリング2bの直下に達するように積層されている。
【0022】
このようなプリフォーム10は、ダブルモールドなどと称される射出成形法により、次のようにして作製することができる。
【0023】
まず、プリフォーム本体10aの内周面及び上端面を成形するコア型400と、ネックリング2bの上面及び周端面を含むプリフォーム本体10aの上側の外周面を成形する上型401と、ネックリング2bの下面から底部に至るまでのプリフォーム本体10aの下側の外周面を成形する第一の下型402aとを型締めし、プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料を射出する(
図5参照)。これにより、口部形成領域20と延伸領域30とを含む有底筒状に成形されたプリフォーム本体10aを射出成形する(一次射出工程)。
【0024】
次いで、第一の下型402aに代えて、成形されたプリフォーム本体10aとの間に、被覆材層60を成形する空隙が形成されるように構成された第二の下型402bを用いて型締めし直してから、被覆材層60を形成する樹脂材料を射出する(
図6参照)。これにより、プリフォーム本体10aの外周面側に剥離可能に積層され、末端側が口部形成領域20の下端側(ネックリング2bの下側の部位)を覆う被覆材層60を射出成形する(二次射出工程)。
【0025】
なお、第一及び第二の下型402a,402bには、通常、プリフォーム10の底部側に相当する位置に、樹脂材料の射出口となるゲートが配設されるが、
図5及び
図6に示す例では、ゲートの図示を省略している。
【0026】
プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料(すなわち、容器本体1aを形成する樹脂材料)としては、容器1に求められるリサイクル性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを好ましく用いることができる。
【0027】
被覆材層60を形成する樹脂材料(すなわち、被覆層6を形成する樹脂材料)としては、被覆材層60(被覆層6)がプリフォーム本体10a(容器本体1a)に剥離可能に積層されるようにするという観点から、プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料と非相溶性の熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。例えば、プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料として、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを用いる場合、被覆材層60を形成する樹脂材料には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を用いるのが特に好ましいが、容器1にガスバリア性が要求される場合には、被覆材層60を形成する樹脂材料に、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。被覆材層60を形成する樹脂材料には、顔料や着色剤などを添加して、所望の色相に着色することで遮光性を付与したりすることもできる。装飾効果を高めるために、複数の顔料や着色剤を混ぜてマーブル模様となるように添加することもできる。被覆材層60を形成する樹脂材料には、容器1に求められるリサイクル性によって制限されずに、各種の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0028】
このようにして作製されたプリフォーム10は、加熱により軟化させてブロー成形が可能な状態とされてから、
図3に一点鎖線で示すようにして成形型100にセットされ、必要に応じて図示しない延伸ロッドにより軸方向(縦方向)に延伸されつつ、プリフォーム10内に吹き込まれたブローエアーによって軸方向及び周方向(横方向)に延伸される。
【0029】
プリフォーム10を加熱するに際しては、例えば、赤外線ヒータなどによりプリフォーム10を被覆材層60側から加熱するとともに、高周波誘導加熱により発熱させた棒状の高周波誘導発熱体をプリフォーム10内に挿通するなどして、プリフォーム本体10aの内面側からも加熱することにより、内外からの加熱温度を適宜調整するのが好ましい。
【0030】
このようにして、プリフォーム10をブロー成形することにより、プリフォーム本体10aの口部形成領域20は、その下端側の延伸領域30との接続部を除いて延伸されずに、その外観が概ね維持されて容器本体1aの口部2となる。そして、延伸領域30が延伸されて、成形型100のキャビティ面101の形状が転写されることによって、容器本体1aの肩部3、胴部4及び底部5に成形されるとともに、プリフォーム本体10aに積層された被覆材層60が、プリフォーム本体10aと一体に成形されて、容器本体1aに積層された被覆層6となる。
【0031】
以上のようにして、プリフォーム10をブロー成形することによって製造された容器1は、通常、充填工程に搬送され、内容物が充填密封された後に箱詰めされてから、トラックなどの荷台に積まれて出荷される。そのため、容器1には、輸送時の振動による影響を考慮した製品設計が求められるが、例えば、箱詰めされた状態で隣接する容器1どうしが、輸送時の振動によって擦れ合う際に、互いに接触する被覆層6の摩擦による抵抗が大きく、滑り難い状態にあると、被覆層6の表面に摩耗による損傷が生じ易くなってしまい、外観不良を招く虞があるため好ましくない。
また、容器1を製造した後の搬送工程や、充填工程にあっては、容器1を滑走させてライン上を搬送することもあり、被覆層6を備えることで容器1が滑り難くなっていると、搬送ラインの途中で容器1が転倒するなどして、搬送に支障をきたす虞もある。
【0032】
本実施形態にあっては、被覆層6の表面を粗面化し、粗面化された当該表面の摩擦係数が1.0未満となるように適宜調整することで、このような不具合を有効に回避できるようにしている。
なお、被覆層6の表面の摩擦係数は、JIS K 7125:1999「摩擦係数試験方法」に準拠して測定された、被覆層6どうしの静摩擦係数μsをいうものとする。
【0033】
また、被覆層6の表面を粗面化することによって、被覆層6の表面の摩擦係数を調整するにあたり、被覆層6の表面の摩擦係数と、表面粗さのパラメーターとの間の相関関係について、本発明者らが検討したところ、凹凸の高低差の指標となる算術平均高さRaとの相関は低いものの、算術平均高さRaの逆数1/Raとの相関がやや高い傾向にあり、凹凸の偏り具合の指標となるスキューネスRskについては、部分的な相関が認められるという知見が得られた。そこで、表面粗さのパラメーターとして、算術平均高さRaに加えて、凹凸の偏り具合の指標となるスキューネスRskを導入し、例えば、後述する実施例に基づいて、算術平均高さRaの逆数1/RaとスキューネスRskとを説明変数とし、被覆層6の表面の摩擦係数(静摩擦係数μs)を目的変数として重回帰分析してみたところ、次の回帰式が導かれ、R値+0.86の高い相関関係にあることが見いだされた。
回帰式:μs=0.035/Ra+0.097×Rsk+0.2
【0034】
このような相関関係は、被覆層6を形成する樹脂材料が低密度ポリエチレンの場合に特に強く認められることから、被覆層6を形成する樹脂材料が低密度ポリエチレンの場合には、0.035/Ra+0.097×Rsk+0.2<1.0を満たす範囲で、算術平均高さRaが大きく、スキューネスRskが小さくなるように、被覆層6の表面を粗面化するのが好ましい。
また、上記回帰式に示されるような相関関係は、係数や定数項の値に多少の違いがあるものの、被覆層6を形成する樹脂材料によらずに同様に認められる傾向にある。このことに鑑みると、被覆層6を形成する樹脂材料に関わらず、被覆層6の粗面化された表面の摩擦係数が1.0未満となるように調整する上で、算術平均高さRaは、0.1以上であるのが好ましく、より好ましくは1.8~10であり、スキューネスRskは、0.2以下であるのが好ましく、より好ましくは、-1.0~0である。
【0035】
被覆層6の表面を粗面化するには、前述したようにして、プリフォーム10をブロー成形するにあたり、延伸された延伸領域30を成形する成形型100のキャビティ面101に粗面化処理を施しておくことによって、当該キャビティ面101に密着して成形される被覆層6の表面に、粗面化処理が施されたキャビティ面101を転写するのが好ましい。
【0036】
また、成形型100は、通常、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの硬質素材を用いて形成されるが、そのような成形型100のキャビティ面101に粗面化処理を施すには、例えば、ガラスビーズ、ガラスパウダー、アルミナ、カーボランダムなどの投射材を用いたショットブラスト、レーザー照射によるレーザーブラストなどのブラスト処理によって粗面化することができる。ショットブラストにより粗面化する場合には、被覆層6の表面に転写される粗面の算術平均高さRa、スキューネスRskが所望の値となるように、投射材の粒度や吹き付け圧力などを適宜調整すればよいが、レーザーブラストによれば、被覆層6の表面に転写される粗面の算術平均高さRa、スキューネスRskをより容易に調整できるため好ましい。
【0037】
ここで、スキューネスRskが小さ過ぎても、大き過ぎても、キャビティ面101に粗面化処理を施す際の加工が困難となる傾向にある。算術平均高さRaが小さ過ぎると、離型不良が発生し易くなる傾向にあり、算術平均高さRaが大き過ぎると、被覆層6のヘーズが高まる傾向にある。これらのことを考慮して、被覆層6の表面に転写される粗面の算術平均高さRa、スキューネスRskが、前述した範囲となるように調整するのが好ましい。
【0038】
また、被覆層6の表面を粗面化するにあたっては、被覆層6の全面を粗面化するには限られない。例えば、箱詰めされた状態で隣接する容器1どうしが互いに接触する部位、搬送ラインを滑走させる際の底部5の摺動面、搬送ラインを滑走させる際に搬送ガイドに接触する部位など、前述の如き不具合を回避するために、被覆層6の摩擦による抵抗を低減することが求められる容器1の任意の部位に対応させて、被覆層6の表面の少なくとも一部を粗面化するようにしてもよい。
【実施例0039】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
[実施例1]
プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレートを用い、被覆材層60を形成する樹脂材料として、ポリエチレン(低密度ポリエチレン)を用いて、
図4に示すプリフォーム10をダブルモールドによって作製した。そして、かかるプリフォーム10を加熱により軟化させてブロー成形が可能な状態としてから、成形型100にセットしてブロー成形することによって、
図1及び
図2に示す容器1を評価に必要な数だけ製造した。
【0041】
成形型100のキャビティ面101には、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製:J70 GB705K)を投射材として、ショットブラストにより、その全面に粗面化処理を施した。その際、吹き付け圧力は、0.3MPaとした。このような粗面化処理が施されたキャビティ面101が転写され、粗面化された被覆層6の表面粗さを表面粗さ測定機により測定したところ、算術平均高さRaが1.8、スキューネスRskが-0.33であった。
【0042】
また、製造した容器1から任意に選択された、2本の容器1のそれぞれの被覆層6から試験片を切り出した。かかる試験片を用いて、JIS K 7125:1999「摩擦係数試験方法」に準拠して、被覆層6どうしの静摩擦係数μsを測定したところ、その値は、0.18であった。
【0043】
<振動試験>
製造した容器1から任意に選択された、12本の容器1のそれぞれに内容物を充填密封し、12(3×4)本入りカートンに箱詰めした。これを振動試験機の振動台に固定して、JIS Z 0232:2020「包装貨物-振動試験方法」に準拠したランダム振動試験を行った。試験条件は、振動方向:上下(縦)、平均加速度:5.8m/s2、振動数:10Hz、試験時間:90分とした。
【0044】
<評価>
試験終了後、カートンから取り出した12本の容器1のそれぞれについて、粉吹きキズの発生の有無を目視にして観察し、次の評価基準で評価した。
◎:外観に問題無し
〇:目視では判断が難しい、小レベルの粉吹きキズ
×:目視で明瞭に判断できる大レベルの粉吹きキズ
評価の結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
[実施例2]
ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製:J80 GB704K)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが1.6、スキューネスRskが-0.18であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.23であった。
【0047】
[実施例3]
ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製:J100 GB703K)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが1.2、スキューネスRskが-0.12であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.22であった。
【0048】
[実施例4]
ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製:J320 GB732)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが0.9、スキューネスRskが-0.25であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.21であった。
【0049】
[実施例5]
ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製:J400 GB731)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが0.4、スキューネスRskが-0.13であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.27であった。
【0050】
[実施例6]
アルミナ(昭和電工社製:モランダム(登録商標) F16)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが10.7、スキューネスRskが0.16であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.22であった。
【0051】
[実施例7]
アルミナ(昭和電工社製:モランダム(登録商標) F24)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが7.5、スキューネスRskが-0.02であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.20であった。
【0052】
[実施例8]
アルミナ(昭和電工社製:モランダム(登録商標) F36)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが6.2、スキューネスRskが-0.13であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.20であった。
【0053】
[実施例9]
アルミナ(昭和電工社製:モランダム(登録商標) F60)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが3.4、スキューネスRskが0.03であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.23であった。
【0054】
[実施例10]
カーボランダム(昭和電工社製:デンシック(登録商標)C F46)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが4.8、スキューネスRskが0.07であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.20であった。
【0055】
[実施例11]
カーボランダム(昭和電工社製:デンシック(登録商標)C F100)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが1.8、スキューネスRskが-0.09であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.21であった。
【0056】
[実施例12]
ガラスパウダー(ポッターズ・バロティーニ社製:GP250A)を投射材として、ショットブラストにより、キャビティ面101の全面に粗面化処理を施した以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本実施例において、表面粗さ測定機により粗面化された被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが3.7、スキューネスRskが-0.08であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、0.19であった。
【0057】
[比較例1]
キャビティ面101に粗面化処理を施すことなく、キャビティ面101を鏡面に仕上げた以外は、実施例1と同様にして容器1を製造して評価した。
本比較例において、表面粗さ測定機により被覆層6の表面粗さを測定したところ、算術平均高さRaが0.1未満、スキューネスRskが-0.96であった。
また、被覆層6どうしの静摩擦係数μsは、1.00であった。
【0058】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。