(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000790
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】センシング方法、タッチパネル駆動装置、タッチパネル装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20221222BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/041 560
G06F3/044 120
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101803
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正規
(57)【要約】
【課題】指によるタッチとグローブタッチのいずれにも対応して適正なタッチ位置検出ができるようにする。
【解決手段】タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択する走査を行うとともに、一対の受信信号線による受信信号感度として、第1モードと、この第1モードより高感度とされた第2モードが選択可能なタッチパネル駆動装置のセンシング方法である。第1手順として、第2モードの設定において走査を行って第1モード、第2モードのモード選択を行う。第2手順として、第1手順で選択したモードの設定状態で走査を行ってタッチ検出を行い、タッチされた位置を示す情報を生成する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択する走査を行うとともに、一対の受信信号線による受信信号感度として、第1モードと、前記第1モードより高感度とされた第2モードが選択可能なタッチパネル駆動装置のセンシング方法であって、
前記第2モードの設定において前記走査を行って前記第1モード、前記第2モードのモード選択を行う第1手順と、
前記第1手順で選択したモードの設定状態で前記走査を行ってタッチ検出を行い、タッチされた位置を示す情報を生成する第2手順と、
が行われるセンシング方法。
【請求項2】
前記第1手順では、前記第2モードの設定における前記走査の際に検出されたタッチ信号強度を閾値と比較した結果に基づいて、前記モード選択を行う
請求項1に記載のセンシング方法。
【請求項3】
前記第1手順では、
前記第2モードの設定における前記走査の際に検出されたタッチ信号強度を第1閾値と比較した結果に基づいて、前記第1モードに対応するタッチであるか否かを判定し、
前記タッチ信号強度を、前記第1閾値より低信号強度の値とされた第2閾値と比較した結果に基づいて、前記第2モードに対応するタッチであるかノータッチであるか否かを判定し、
前記第1モードに対応するタッチ又は前記第2モードに対応するタッチと判定された場合に、前記モード選択を行う
請求項1に記載のセンシング方法。
【請求項4】
タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択する走査を行うタッチパネル駆動装置であって、
一対の受信信号線による受信信号感度として、第1モードと、前記第1モードより高感度とされた第2モードが選択可能な受信回路と、
前記第2モードの設定において前記走査を行って前記第1モード、前記第2モードのモード選択を行うモード制御部と、
前記モード制御部が選択したモードの設定状態で行った前記走査の際に、タッチされた位置を示す情報を生成する検出演算部と、を備える
タッチパネル駆動装置。
【請求項5】
タッチパネルと、
前記タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択する走査を行うタッチパネル駆動装置を備え、
前記タッチパネル駆動装置は、
一対の受信信号線による受信信号感度として、第1モードと、前記第1モードより高感度とされた第2モードが選択可能な受信回路と、
前記第2モードの設定において前記走査を行って前記第1モード、前記第2モードのモード選択を行うモード制御部と、
前記モード制御部が選択したモードの設定状態で行った前記走査の際に、タッチされた位置を示す情報を生成する検出演算部と、を備える
タッチパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネルのセンシング方法、タッチパネルを駆動するタッチパネル駆動装置、及びタッチパネルとその駆動装置を有するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルに関して各種の技術が知られており、下記特許文献1には同時に2組(一対の送信信号線と一対の受信信号線)の信号線(電極)のセンシングを行ってタッチ操作位置の検出を行うことで解像度を向上させるセンシング技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タッチパネルは、通常、指が直接パネル面に触れることを検出するように設計されている。そのため手にグローブを装着した状態でタッチパネルを操作した場合、グローブの厚みや材質によって指でタッチした場合と比較してタッチ感度が低下してしまい、タッチパネルで所望の操作を行うことが困難となる。
【0005】
グローブ装着状態でタッチパネルを操作するためには、タッチパネルを高感度化する必要がある。感度設定を変更することで、グローブ装着状態でのタッチ信号を増幅して検出することが可能となりタッチ操作が可能となる。
一方で、このように感度設定を変更すると、指でタッチした場合にタッチ感度が高すぎるためタッチ信号がレンジオーバーとなってしまい、正確なタッチ信号が検出できず、これがタッチ位置の座標計算の精度低下をもたらす原因となる。
【0006】
このように、指とグローブのようにタッチする対象によってタッチ信号強度に大きな差が生じると一つの感度設定で全てのタッチ対象に対応することが困難となる。
ところが実際、タッチパネルが搭載される製品や用途、或いはタッチパネル操作環境は様々であり、ユーザが通常、指で操作できる状況だけでなく、グローブを装着したままの状態で操作したい状況がある。例えば通常の感度設定とすると、グローブを装着して作業を行う作業現場では、タッチパネル操作のたびにグローブを外す必要があり極めて面倒である。逆に感度を上げた設定とすると、指でのタッチに正確に対応できない。
さらに、タッチ操作を行おうとする人が一々感度設定を切り替えるというのも不便である。
【0007】
そこで本発明では、タッチパネルに対して指による直接行うタッチ(以下「フィンガータッチ」ともいう)であっても、手にグローブをはめたままで行うタッチ(以下「グローブタッチ」ともいう)であっても、適切にタッチ検出できるようにする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセンシング方法は、タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択する走査を行うとともに、一対の受信信号線による受信信号感度として、第1モードと、前記第1モードより高感度とされた第2モードが選択可能なタッチパネル駆動装置のセンシング方法であって、前記第2モードの設定において前記走査を行って前記第1モード、前記第2モードのモード選択を行う第1手順と、前記第1手順で選択したモードの設定状態で前記走査を行ってタッチ検出を行い、タッチされた位置を示す情報を生成する第2手順と、が行われる。
すなわち、受信感度を高感度にした状態での走査により感度設定についてのモード選択を行う。その後、選択したモードの状態で、実際のタッチ位置のセンシングを行うようにする。
【0009】
本発明に係るタッチパネル駆動装置、タッチパネル装置は、上記のセンシング方法を実行する装置であり、一対の受信信号線による受信信号感度として、第1モードと、前記第1モードより高感度とされた第2モードが選択可能な受信回路と、前記第2モードの設定において前記走査を行って前記第1モード、前記第2モードのモード選択を行うモード制御部と、前記モード制御部が選択したモードの設定状態で行った前記走査の際に、タッチされた位置を示す情報を生成する検出演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タッチに応じて第1モードと第2モードの切り替えが自動的に行われることになるため、ユーザがフィンガータッチを行った場合でもグローブタッチを行った場合でも、適切にタッチ位置検出を行うことができる。これによりタッチパネルが使用しやすいものとなり、またタッチパネルを多様な機器や使用環境で用いることに好適となる。ユーザにとっては、指やグローブといった状態を気にすることなくタッチ操作が可能となるため、効率的、かつストレスない操作環境を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態のタッチパネル及びタッチパネル駆動装置の構成のブロック図である。
【
図2】実施の形態のタッチパネルのセンシングのための構成の説明図である。
【
図3】実施の形態のタッチパネル駆動装置の送信回路及び受信回路の説明図である。
【
図4】実施の形態の受信回路の容量切り替えの構成の説明図である。
【
図5】実施の形態の走査に応じたタッチ信号検出の単位のブロックの説明図である。
【
図6】実施の形態の一対の信号線の組に対するタッチ位置の説明図である。
【
図7】実施の形態のブロックにおける検出パターンの説明図である。
【
図8】第1の実施の形態のセンシング処理のフローチャートである。
【
図9】第2の実施の形態のセンシング処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.タッチパネル装置の構成>
<2.第1の実施の形態の処理>
<3.第2の実施の形態の処理>
<4.実施の形態の効果及び変形例>
【0013】
<1.タッチパネル装置の構成>
実施の形態のタッチパネル装置1の構成例を
図1に示す。
タッチパネル装置1は、各種機器においてユーザインターフェース装置として装着される。ここで各種機器とは、例えば電子機器、通信機器、情報処理装置、製造設備機器、工作機械、車両、航空機、建物設備機器、その他非常に多様な分野の機器が想定される。タッチパネル装置1は、これらの多様な機器製品においてユーザの操作入力に用いる操作入力デバイスとして採用される。
図1ではタッチパネル装置1と製品側MCU(Micro Control Unit)90を示しているが、製品側MCU90とは、タッチパネル装置1が装着される機器における制御装置を示しているものである。タッチパネル装置1は製品側MCU90に対してユーザのタッチパネル操作の情報を供給する動作を行うことになる。
【0014】
タッチパネル装置1は、タッチパネル2と、タッチパネル駆動装置3を有する。
タッチパネル駆動装置3はセンサIC(Integrated Circuit)4とMCU5を有する。
このタッチパネル駆動装置3は、タッチパネル側接続端子部31を介してタッチパネル2と接続される。この接続を介してタッチパネル駆動装置3はタッチパネル2の駆動(センシング)を行う。
また操作入力デバイスとして機器に搭載される際には、タッチパネル駆動装置3は製品側接続端子部32を介して製品側MCU90と接続される。この接続によりタッチパネル駆動装置3は製品側MCU90にセンシングした操作情報を送信する。
【0015】
タッチパネル駆動装置3におけるセンサIC4は、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43、インターフェース・レジスタ回路44、電源回路45を有する。
【0016】
センサIC4の送信回路41は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子に対して送信信号を出力する。また受信回路42は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子から信号を受信し、必要な比較処理等を行う。
【0017】
図2に、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43とタッチパネル2の接続状態を模式的に示す。
タッチパネル2は、タッチ面を形成するパネル平面に、送信側の電極としてのn本の送信信号線21-1から21-nが配設される。
また同じくパネル平面に、受信側の電極としてのm本の受信信号線22-1から22-mが配設される。
なお送信信号線21-1・・・21-n、受信信号線22-1・・・22-mを特に区別しない場合は、総称として「送信信号線21」「受信信号線22」と表記する。
【0018】
送信信号線21-1・・・21-nと、受信信号線22-1・・・22-mは、図示するように交差して配設される場合もあれば、いわゆるシングルレイヤ構造として、交差が生じないように配設される場合もある。いずれにしても送信信号線21と受信信号線22が配設される範囲内でタッチ操作面が形成され、タッチ操作時の容量変化により操作位置が検出される構造となる。
図2では送信信号線21と受信信号線22の間で生じる容量を一部のみ例示している(容量C22,C23,C32,C33)が、タッチ操作面の全体に、送信信号線21と受信信号線22の間で生じる容量(例えば交差位置における容量)が存在し、タッチ操作により容量変化が生じた位置が受信回路42により検出されることとなる。
【0019】
送信回路41は、マルチプレクサ43により選択された送信信号線21-1・・・21-nに対して送信信号を出力する。本実施の形態では、マルチプレクサ43が各タイミングで2本ずつ隣接する送信信号線21を選択していく走査を行う。
受信回路42は、マルチプレクサ43により選択された受信信号線22-1・・・22-mからの受信信号を受信する。本実施の形態では、マルチプレクサ43が各タイミングで2本ずつ隣接する受信信号線22を選択していく。
送信回路41、受信回路42によるセンシング動作については後述する。
【0020】
図1に戻って説明する。センサIC4のインターフェース・レジスタ回路44には、送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45に対する各種の設定情報がMCU5によって書き込まれる。
送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45は、それぞれインターフェース・レジスタ回路44に記憶された設定情報によって動作が制御される。
またインターフェース・レジスタ回路44には、受信回路42により検出された検出値(説明上「RAW値」ともいう)を記憶し、MCU5が取得できるようにしている。
【0021】
電源回路45は、駆動電圧AVCC等を生成し、送信回路41、受信回路42に供給する。後述するが、送信回路41は駆動電圧AVCC等を用いたパルスをマルチプレクサ43によって選択された送信信号線21に印加する。
また受信回路42は、センシング動作の際に、マルチプレクサ43によって選択された受信信号線22に対して駆動電圧AVCC等を印加することも行う。
なお、
図1で例示する駆動電圧AVCCとは、後述する駆動電圧AVCC1,AVCC2,AVCC3,AVCC4等の総称としている。
【0022】
MCU5はセンサIC4の設定、制御を行う。具体的にはMCU5はインターフェース・レジスタ回路44に対して必要な設定情報を書き込むことで、センサIC4の各部の動作を制御する。
またMCU5は受信回路42からのRAW値をインターフェース・レジスタ回路44から読み出すことで取得する。そしてMCU5は、RAW値を用いて座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を製品側MCU90に送信する処理を行う。
【0023】
図1ではMCU5におけるメモリ5Mとして、RAM領域、ROM領域、不揮発性記憶領域などを総括して示している。このメモリ5Mはインターフェース・レジスタ回路44に与える設定情報の記憶に用いられる。またメモリ5Mは、検出されたRAW値やそれに応じたタッチ操作位置情報としての座標値を一時的な記憶領域としても用いられる。
【0024】
また
図1では、MCU5においてモード制御部5a、検出演算部5bを示している。これらはMCU5においてプログラム(ファームウェア等)により実現される処理機能の一部であり、特に本実施の形態の処理のために設けられる機能を示している。
【0025】
モード制御部5aとは、高感度モードの設定において走査を行ってノーマルモードと高感度モードのモード選択を行う処理機能である。
ここでいうノーマルモード、高感度モードとは、受信回路42で設定されるタッチ信号強度に対するゲイン設定のモードであり、ノーマルモードとはノーマル感度としてのゲイン設定のモード、高感度モードとは高感度ゲイン設定のモードである。ノーマルモードは高感度モードよりも感度が低いものとされる。
モード制御部5aは、タッチ操作に際して、いずれのモードが適切かを判定して選択制御する機能といえる。
【0026】
検出演算部5bは、モード制御部5aが選択したモードの設定状態で行った走査により得られたRAW値に基づいて、タッチされた位置を示す情報を生成する処理機能である。すなわちRAW値を用いて座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を求める処理を行う。
【0027】
これらモード制御部5a及び検出演算部5bの機能により、後述の
図8,
図9のような処理が行われる。
【0028】
以上の構成のタッチパネル装置1によるセンシング動作について説明する。
まず
図3によりタッチパネル2に対する送信回路41,受信回路42の動作を説明する。図ではタッチパネル2において2つの送信信号線21-2、21-3と、2つの受信信号線22-2、22-3を示している。
本実施の形態の場合、先の
図2に示したような送信信号線21、受信信号線22に対して、送信回路41と受信回路42が、それぞれ隣接する2本ずつ送信、受信を行っていくことでタッチ操作の検出を行うものとなる。つまり一対の送信信号線21と一対の受信信号線22の2本×2本を基本セルとして、順次セル単位で検出走査を行う。
図3では、その1つのセルの部分を示していることになる。
【0029】
送信回路41は、2本の送信信号線21(図の場合では21-2,21-3)に対して、ドライバ411,412から駆動電圧AVCC1を出力する。つまりドライバ411,412の出力である送信信号T+、T-がマルチプレクサ43によって選択された送信信号線21-2,21-3に供給される。
なお駆動電圧AVCC1は、
図1の電源回路45が生成する電圧である。
この場合、送信回路41は、ドライバ411からの送信信号T+を図示のように、アイドル(Idle)期間をロウレベル(以下「Lレベル」と表記)とする。例えば0Vとする。そして続くアクティブ(Active)期間にはハイレベル(以下「Hレベル」と表記)とする。この場合、Hレベルの信号として具体的には駆動電圧AVCC1の印加を行う。
また送信回路41は、もう一つのドライバ412からの送信信号T-は、アイドル期間をHレベル(駆動電圧AVCC1の印加)とし、続くアクティブ期間はLレベルとする。
ここで、アイドル期間は受信信号R+、R-の電位を安定させる期間であり、アクティブ期間は受信信号R+、R-の電位変化をセンシングする期間となる。
【0030】
このアイドル期間、アクティブ期間において、受信回路42はマルチプレクサ43によって選択された2つの受信信号線22(図の場合では22-3,22-2)からの受信信号R+、R-を受信する。
受信回路42は、コンパレータ421、基準容量部422、スイッチ423,425、計測用容量部424、演算制御部426、電圧選択部427,428を備えている。
2つの受信信号線22からの受信信号R+、R-はコンパレータ421で受信される。コンパレータ421は、受信信号R+、R-の電位を比較して、その比較結果をHレベル又はLレベルで演算制御部426に出力する。
【0031】
基準容量部422を構成するコンデンサの一端には、電圧選択部427を介して、駆動電圧VSS、AVCC4、AVCC3、AVCC2のいずれかが印加される。これらの駆動電圧は、
図1の電源回路45が生成する。
基準容量部422を構成するコンデンサの他端はスイッチ423の端子Taを介してコンパレータ421の+入力端子に接続されている。
【0032】
計測用容量部424を構成するコンデンサの一端には電圧選択部428を介して、駆動電圧VSS、AVCC4、AVCC3、AVCC2のいずれかが印加される。なお電圧選択部428では、電圧選択部428と同じ電圧が選択される。
計測用容量部424を構成するコンデンサの他端はスイッチ425の端子Taを介してコンパレータ421の-入力端子に接続されている。
【0033】
スイッチ423、425は、アイドル期間には端子Tiが選択される。従ってアイドル期間にはコンパレータ421の+入力端子(受信信号線22-3)、-入力端子(受信信号線22-2)がグランド接続され、受信信号R+、R-はグランド電位となる。
スイッチ423、425は、アクティブ期間には端子Taが選択される。従ってアクティブ期間にはコンパレータ421の+入力端子(受信信号線22-3)、-入力端子(受信信号線22-2)に駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)が印加される。
【0034】
図3では当該セルが非タッチ状態の場合の受信信号R+、R-の波形を実線で示している。アイドル期間ではスイッチ423、425が端子Tiを選択していることで、受信信号R+、R-は、或る電位(グランド電位)で安定されている。
アクティブ期間となるとスイッチ423、425が端子Taを選択することで、受信信号線22-3,22-2に駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)が印加される。これにより受信信号R+、R-の電位がΔV上昇する。非タッチの状態では、このΔVの電位上昇は、受信信号R+、R-共に発生する。
【0035】
一方、送信回路41側では、アクティブ期間となると、上述のように送信信号T+が立ち上がり、送信信号T-が立ち下がる。これにより、タッチ操作があった場合には、受信信号R+、R-の電位上昇の程度が変化する。
仮に容量C22に影響を与えるA1位置がタッチされた場合、受信信号R-の電位がアクティブ期間において破線で示すようにΔVHだけ上昇する。
また仮に容量C32が変化するA2位置がタッチされた場合、受信信号R-の電位がアクティブ期間において破線で示すΔVLだけ上昇する。
これらのように当該セルに対するタッチ操作位置に応じて、受信信号R-の電位変化量が受信信号R+の電位変化量(ΔV)よりも大きくなったり小さくなったりする。
コンパレータ421はこのような受信信号R+、R-を比較することになる。
【0036】
なお、このように変化する受信信号R+、R-の電位差分自体をRAW値(検出結果)として出力するようにしてもよいが、本実施の形態では受信回路42は、演算制御部426が受信信号R+、R-の電圧バランスがとれるように計測用容量部424の容量値の設定変更を行い、RAW値を得るようにしている。
【0037】
演算制御部426はスイッチ423,425のオン/オフ制御を行う。
また演算制御部426はビット信号BSにより計測用容量部424の容量値の切り替え制御を行う。
また演算制御部426はモード制御信号SSにより基準容量部422の容量値の切り替え制御を行うことで、タッチ信号の検出感度のモード設定を行うことができる。基準容量部422の容量は、走査時には固定値であるが、感度のモードの変更として切り替えが行われる。
これら演算制御部426の処理は、インターフェース・レジスタ回路44に書き込まれた設定情報に従って行われる。即ちMCU5による動作設定に基づいて行われる。
また演算制御部426は、コンパレータ421の出力を監視し、RAW値を算出する。演算制御部426で算出されたRAW値はインターフェース・レジスタ回路44に書き込まれることでMCU5が取得可能とされる。
【0038】
以上の
図3において可変容量コンデンサの記号で示した計測用容量部424は、例えば
図4のように複数、この例では11個のコンデンサCM(コンデンサCM0からコンデンサCM10)と、11個のスイッチSW(スイッチSW0からスイッチSW10)を有して構成されている。また基準容量部422も、計測用容量部424と同様に11個のコンデンサCM(コンデンサCM20からコンデンサCM30)と、11個のスイッチSW(スイッチSW20からスイッチSW30)を有している。
なお「コンデンサCM」「スイッチSW」という表記は、これらのコンデンサ(CM0・・・CM30)やスイッチ(SW0・・・SW30)を総称する場合に用いる。
【0039】
この
図4は、
図3に示したスイッチ423,425が端子Taに接続された状態(アクティブ期間)での等価回路として示しており、スイッチ423,425の図示は省略している。
【0040】
計測用容量部424におけるコンデンサCM0とスイッチSW0、コンデンサCM1とスイッチSW1・・・コンデンサCM10とスイッチSW10はそれぞれ直列接続される。そして直列接続された11個のコンデンサCMとスイッチSWの組は、駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)の電位とコンパレータ421の-入力端子の間に並列に接続されている。
従って、スイッチSW0からスイッチSW10のオン/オフにより、受信信号R-に影響を与える計測用容量部424の容量値を変更できる。この計測用容量部424における各スイッチSWのオン/オフはビット信号BSにより制御される。
またスイッチSW0からスイッチSW10は、それぞれ例えばFET(Field effect transistor)等のスイッチ素子を用いて構成されるが、1つのスイッチSWとして複数のスイッチ素子が設けられる場合もある。
【0041】
基準容量部422におけるコンデンサCM20とスイッチSW20、コンデンサCM21とスイッチSW21・・・コンデンサCM30とスイッチSW30も、それぞれ直列接続される。そして直列接続された11個のコンデンサCMとスイッチSWの組は、駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)の電位とコンパレータ421の+入力端子の間に並列に接続されている。
従って、スイッチSW10からスイッチSW30のオン/オフにより、基準容量部422の容量値を変更できる構成である。この基準容量部422における各スイッチSWのオン/オフはモード制御信号SSにより制御される。スイッチSW20からスイッチSW30も、例えばFET等のスイッチ素子を用いて構成される。
【0042】
ここで、走査の際に、計測用容量部424では11ビットのビット信号BSのうちの8ビットにより容量値を256段階に変化させる例を考える。
図4の例では、計測用容量部424は11個のコンデンサCMとスイッチSWの組を備えている例としているが、例えば容量値を256段階に変化させる場合、8個の組があればよい。例えばビット信号BSの各ビットに対応して、スイッチSW0からスイッチSW7のそれぞれがオン/オフされるようにすれば、計測用容量部424における容量値を256段階に変化させることができる。ここで、11個の組を備えるのは、受信感度のモードを変更できるようにしたためである。
【0043】
また、基準容量部422は、256段階の中央値とした固定の容量値、例えば「128」に相当する容量値でよいため、1つのコンデンサCMで構成することが可能である。ところが図のように計測用容量部424と同様に11個の組を備えている目的の1つは、受信感度のモードの変更のためである。
【0044】
図4の上部に、ゲイン設定G0,G1,G2,G3を表記した。
ゲイン設定G0では、コンデンサCM20からコンデンサCM27が用いられる。
ゲイン設定G1では、コンデンサCM21からコンデンサCM28が用いられる。
ゲイン設定G2では、コンデンサCM22からコンデンサCM29が用いられる。
ゲイン設定G3では、コンデンサCM23からコンデンサCM30が用いられる。
【0045】
つまりゲイン設定G0,G1,G2,G3を変更することで、受信信号感度のモードを4段階に変更できる。
例えばゲイン設定G0では、基準容量部422はコンデンサCM20からコンデンサCM27を用いて「128」に相当する容量値を設定する。
実際にはモード制御信号SSとしては、スイッチSW20からスイッチSW30に対応する11ビットの信号であることが想定されるが、ゲイン設定G0の場合、モード制御信号SSにおけるスイッチSW28,SW29,SW30については常にオフ制御する論理値となる。そしてスイッチSW20からスイッチSW27に対応する各ビットが所定値に設定されることで、コンデンサCM20からコンデンサCM27を用いて「128」に相当する容量値とされる。なお、8個のコンデンサCMを用いることで、基準容量部422における容量値、即ち「128」に相当する容量値を調整することができる。
【0046】
同様に、例えばゲイン設定G1では、基準容量部422はコンデンサCM21からコンデンサCM28を用いて「128」に相当する容量値を設定する。またゲイン設定G2では、基準容量部422はコンデンサCM22からコンデンサCM29を用いて「128」に相当する容量値を設定し、ゲイン設定G3では、基準容量部422はコンデンサCM23からコンデンサCM30を用いて「128」に相当する容量値を設定する。
【0047】
このように受信感度を変更する各ゲイン設定に応じて、計測用容量部424も、コンデンサCMが次のように用いられる。
ゲイン設定G0のときはコンデンサCM0からコンデンサCM7が用いられる。
ゲイン設定G1のときはコンデンサCM1からコンデンサCM8が用いられる。
ゲイン設定G2のときはコンデンサCM2からコンデンサCM9が用いられる。
ゲイン設定G3のときはコンデンサCM3からコンデンサCM10が用いられる。
【0048】
例えばゲイン設定G0のときは、計測用容量部424はコンデンサCM0からコンデンサCM7を用いて容量値を256段階に変化させる。
実際にはビット信号BSは、スイッチSW0からスイッチSW10に対応する11ビットの信号であることが想定されるが、ゲイン設定G0の場合、ビット信号BSにおけるスイッチSW8,SW9,SW10に対応するビットは常にオフ制御する論理値となる。そしてスイッチSW0からスイッチSW7に対応する各ビットを変化させることで、コンデンサCM0からコンデンサCM7を用いて容量値を256段階に可変する。
【0049】
基準容量部422及び計測用容量部424における各コンデンサの容量値は、例えば次のようにされている。
コンデンサCM0,CM20は2fF(フェムトファラッド)、コンデンサCM1,CM21は4fF、コンデンサCM2,CM22は8fF、コンデンサCM3,CM23は16fF、コンデンサCM4,CM24は32fF、コンデンサCM5,CM25は64fF、コンデンサCM6,CM26は128fF、コンデンサCM7,CM27は256fF、コンデンサCM8,CM28は512fF、コンデンサCM9,CM29は1024fF、コンデンサCM10,CM30は2048fFである。
【0050】
なお
図4では各コンデンサCMはそれぞれ1つのコンデンサにより構成しているが、コンデンサCMの全部又は一部は、複数のコンデンサにより構成され、合成容量が上記の容量値となるようにしてもよい。
【0051】
例えばゲイン設定G0の場合、コンデンサCM0からコンデンサCM7は、ビット信号BSの11ビットのうちで、ビット“0”からビット“7”の8ビットの値で選択される。コンデンサCM0及びスイッチSW0がビット“0”、コンデンサCM1及びスイッチSW1がビット“1”、・・・コンデンサCM7及びスイッチSW7がビット“7”として機能する。
そして、この8ビットの値として0(=「00000000」)から255(=「11111111」)の容量設定値が与えられる。容量設定値はMCU5がインターフェース・レジスタ回路44に書き込む設定情報の一つである。
受信回路42では、この8ビットの容量設定値に応じてスイッチSW0~SW7がオン/オフされる。即ちスイッチSW0~SW7は対応するビットが「0」であればオフ、「1」であればオンとなる。これにより計測用容量部424の全体の容量値が0fF~510fFの範囲で256段階に可変されることになる。
【0052】
一方、受信信号R+側の基準容量部422のコンデンサCM20からコンデンサCM27により設定される容量値、即ち「128」に相当する容量値は例えば256fFとされる。
【0053】
上述のように受信信号R-は、タッチの有無及び位置によってアクティブ期間の波形の電位上昇の程度が変わる。受信信号R+の波形上昇程度(ΔV)より大きくなったり小さくなったりする。
図4の構成では、計測用容量部424の容量設定値を変更していくことで受信信号R-の波形の電位上昇程度を変化させることができ、例えば受信信号R+と同等となる計測用容量部424の容量設定値を見つけ出すことができる。
【0054】
例えば
図4の受信信号R-の破線で示す波形Sg1が初期状態であったとしたときに、計測用容量部424の容量を小さくすれば受信信号R-は波形Sg2のように波形Sg1より小さくなる。また、計測用容量部424の容量を大きくすれば受信信号R-は波形Sg3のように波形Sg1より大きくなる。
つまり、コンパレータ421で受信信号R+、R-の電圧レベルが同等となったときの計測用容量部424の容量設定値は、タッチによる受信信号R-の電圧変化に相当する値と等価となる。
【0055】
従って、コンパレータ421の出力をみながら計測用容量部424の容量設定値を順次変化させていき、受信信号R+、R-のアクティブ期間の電圧が同等となる容量設定値を探索する。すると探索された容量設定値を、タッチ操作のセンシング情報としてのRAW値とすることができる。
【0056】
以上はゲイン設定G0の例で説明したが、他のゲイン設定の場合もRAW値の検出方式を同様に考えることができる。つまり基準容量部422で「128」に相当する容量値の設定に用いる8個のコンデンサCMと、計測用容量部424で256段階の容量値変化に用いる8個のコンデンサCMが、ゲイン設定毎に上述のように異なるものとされる。
【0057】
ゲイン設定については、ゲイン設定G3、G2、G1、G0の順に従ってタッチ信号の検出を高感度化することができる。具体的には、ゲイン設定G3、G2、G1、G0の順に従って選択されるコンデンサCMの容量値は小さくなるため、1分解能当たりの電圧を細かく検出することができるようになる。そのため、より微小な静電容量(電圧)の変化を大きなRAW値の変化量として増幅して検出することが可能となる。例えば
図4の例の場合、ゲイン設定を1段階、高感度側に切り替えると、RAW値の変化量としては2倍に増幅して検出できる。
【0058】
<2.第1の実施の形態の処理>
以上のような構成において、本実施の形態では、特にフィンガータッチとグローブタッチのいずれであっても精度のよいタッチ検出ができるようにする。このために、ゲイン設定による受信感度モードを自動的に最適な状態に切り替えるようにする。
【0059】
直接指でタッチするフィンガータッチの場合と、グローブをはめた状態でタッチするグローブタッチの場合とでは、タッチ信号強度に差が生じ、また、グローブでも種類、例えば布製や革製などの違いによってタッチ信号強度が大小異なる場合がある。このため、グローブタッチやフィンガータッチによって、適切な感度(ゲイン設定)が異なる。
【0060】
そのため、タッチ信号強度に閾値を設けて、閾値以上の場合はノーマル感度のゲイン設定のモード(以下「ノーマルモード」という)を選択し、閾値未満の場合には高感度のゲイン設定のモード(以下「高感度モード」という)を選択するようにする。
【0061】
そして、この閾値による判定に用いる信号としては高感度モード設定の走査で得られるRAW値から算出した、下記のタッチ信号強度Zとする。高感度モード設定で走査した信号値を用いることで、非タッチとグローブタッチとフィンガータッチの3つの状態のレベル差を明確に識別することができる。
なおノーマルモードの設定では、グローブタッチの場合のタッチ信号強度Zが非常に微弱になるため、ノイズの影響も受けやすく非タッチとグローブタッチを識別することが困難となり正確な状態判定と感度選択が難しい。
【0062】
タッチ信号強度Zについて説明する。
図5A、
図5B、
図5Cにおけるマス目の1つは、上述のセル、即ち2つの送信信号線21と2つの受信信号線22の組を示している。
4×4の16個のセルを1つのブロックBKとして示しているが、ブロックBKの各セルのRAW値を
図5Dのように「a」から「p」で表すこととする。この「a」から「p」は、それぞれ各セルを走査したときのRAW値である。例えば、
図5AのブロックBKについていえば、「a」は斜線を付したセルのRAW値となる。
【0063】
受信回路42においては、各セルについて、上述のように256段階の分解能でRAW値を検出する走査を行うが、MCU5では、各セルのRAW値から、タッチ位置座標を求める。
その場合、このブロックBKとする16個のセルの選択を
図5A、
図5B、
図5Cのように順次切り替えながら、RAW値のパターンを判定する。
【0064】
図6には或る1つのセルと、そのセルに対するタッチ位置を「A」「B」「C」「D」として示している。
タッチ位置が「A」の場合、当該セルを含む16セルのブロックBKにおいて、
図7のAパターンのRAW値が得られる。「+」はRAW値が「128」より大きい値、「-」はRAW値が「128」より小さい値となることを示している。
同様にタッチ位置が
図6の「B」「C」「D」のそれぞれの場合、当該セルを含むブロックBKにおけるRAW値のパターンが、
図7のBパターン、Cパターン、Dパターンとなる。
このようなパターンを検出することで、MCU5では、セルサイズよりも細かい分解能でタッチ位置座標を求めることができる。
【0065】
タッチ信号強度Zは、例えばこのようなブロックBK毎の各セルのRAW値から、次のように求めることができる。
タッチ信号強度Z=
(a+b+e+f)+(k+l+o+p)-(c+d+g+h)-(i+j+m+n)
【0066】
このようなタッチ信号強度Zを用いて適切なモードを判定し、受信信号感度のモードを自動的に切り替える第1の実施の形態の処理例を
図8で説明する。
【0067】
図8はMCU5においてモード制御部5a、検出演算部5bの機能により実行される処理例である。
図8及び後述の
図9の処理は、タッチパネル2による操作検出の終了(例えば電源オフ)となるまで繰り返される。
【0068】
なお、一例として、高感度モードとはゲイン設定G0のモード、ノーマルモードはゲイン設定G2のモードなどと考えることができる。
【0069】
ステップS101でMCU5は、高感度モードで走査制御を行う。即ちMCU5は受信回路42に高感度モードを指示して走査を実行させる。受信回路42はこれに応じて、例えばゲイン設定G0のモードで各セルの走査を行う。これによりMCU5は走査の結果として、各セルのRAW値を取得する。
MCU5は取得した各セルのRAW値により、ブロックBK単位でタッチ信号強度Zを算出できる。タッチ信号強度Zが最も高いブロックBKを判定することで、タッチに応じたタッチ信号強度Zを判定できる。
【0070】
ステップS102でMCU5は、モード判定として、タッチ信号強度Zと閾値th1を比較し、Z>th1であるか否かを判定する。
これは、タッチ信号強度Zがフィンガータッチを想定した比較的大きい値であるか、グローブタッチを想定した比較的小さい値であるかを判定する処理である。
【0071】
Z>th1であれば、MCU5は、フィンガータッチが行われたと判定してステップS103に進み、受信回路42にノーマルモードによる走査を実行させる。受信回路42はこれに応じて、例えばゲイン設定G2のモードで各セルの走査を行う。これは実際のタッチ位置判定のための走査となる。この走査の結果としてMCU5は各セルのRAW値を取得する。
【0072】
一方ステップS102でZ>th1ではないと判定された場合は、MCU5は、グローブタッチが行われたと判定してステップS104に進み、受信回路42に高感度モードによる走査を実行させる。受信回路42はこれに応じて、例えばゲイン設定G0のモードで各セルの走査を行う。実際のタッチ位置判定のための走査である。この走査の結果としてMCU5は各セルのRAW値を取得する。
【0073】
ステップS103又はステップS104の走査による各セルについてRAW値を取得したら、MCU5はステップS105でタッチ位置検出を行うか否かを判定する。このため、ステップS103又はステップS104の走査で得られた各セルのRAW値からにタッチ信号強度Zを求め、そのタッチ信号強度Zを閾値th2と比較する。閾値th2はタッチ位置検出を行うか否かを判定する閾値であり、例えば閾値th1より小さい値である。例えば閾値th2は、ノイズなどによるタッチ誤検出を防ぐ値に設定される。
【0074】
タッチ信号強度Zが微少で、Z>th2でなければ、ステップS101に戻る。
Z>th2であればMCU5はステップS106に進み、座標演算処理を行う。そしてMCU5はタッチ位置としての座標値を求めたら、ステップS107で座標リポートとして出力する。つまり
図1の製品側MCU90に通知する。そしてステップS101に戻る。
【0075】
以上の処理により、タッチ操作が行われた際に、自動的にノーマルモードと高感度モードのうちで適切なモードを選択し、選択したモードによりタッチ位置検出が行われる。
【0076】
<3.第2の実施の形態の処理>
第2の実施の形態の処理例を
図9に示す。これはモード判定において、フィンガータッチ、グローブタッチ、及びタッチされていないこと(以下「ノータッチ」という)を判定するようにした処理例である。
なお
図8と同一の処理については同一のステップ番号を付して詳細な説明を避ける。この
図9では、モード判定としてステップS201,S202が行われることが
図8と異なる。
【0077】
MCU5はステップS101で受信回路42での高感度モードでの走査を指示した後、ステップS201では、タッチ信号強度Zと第1閾値th11を比較する。
第1閾値th11は、高感度モードにおいてタッチ信号強度Zがかなり高くなるフィンガータッチを判定するための閾値である。
Z>th11であれば、MCU5はフィンガータッチであると判定してステップS102に進む。
【0078】
Z>th11でなければ、MCU5はフィンガータッチではないと判定してステップS202に進み、タッチ信号強度Zと第2閾値th12を比較する。
第2閾値th12は、第1閾値th11より低い値であり、グローブタッチとノータッチを判定する閾値とされる。例えばグローブタッチであってもグローブの種別によってタッチ信号強度Zの大小が異なるが、通常使用されるグローブのうちで、もっともタッチ信号強度Zが低くなるときの値に応じて、それをグローブタッチと判定できるレベルに第2閾値th12を設定することが考えられる。
【0079】
MCU5は、Z>th12であれば、グローブタッチであると判定してステップS104に進む。Z>th12でなければ、MCU5はノータッチであると判定してステップS101に戻る。
【0080】
以上の処理により、フィンガータッチ、グローブタッチ、ノータッチが判定されるとともに、フィンガータッチ又はグローブタッチとしてタッチ操作が行われた際に、自動的にノーマルモードと高感度モードのうちで適切なモードを選択し、選択したモードによりタッチ位置検出が行われることになる。
【0081】
<4.実施の形態の効果及び変形例>
以上の実施の形態で説明したタッチパネル装置1、タッチパネル駆動装置3において行われるセンシング方法によれば、次のような効果が得られる。
【0082】
実施の形態では、タッチパネル2に対し、タッチパネル駆動装置3は、順次、隣接する一対の送信信号線21と隣接する一対の受信信号線22を選択する走査を行うとともに、一対の受信信号線22による受信信号感度として、ノーマルモード(第1モードの一例)と、ノーマルモードより高感度とされた高感度モード(第2モードの一例)が選択可能とされている。
そしてセンシング方法として、モード制御部5aの制御による第1手順と、検出演算部5bの制御による第2手順を行う。
第1手順は、高感度モードの設定において走査を行ってノーマルモード、高感度モードのモード選択を行う。即ち
図8のステップS101、S102や、
図9のステップS101、S201、S202の制御による動作である。
第2手順では、第1手順で選択したモードの設定状態で走査を行ってタッチ検出を行い、タッチされた位置を示す情報を生成する。即ち
図8及び
図9のステップS103からS107の制御による動作である。
【0083】
このように、低ゲイン設定と高ゲイン設定の2つの感度設定を一つのファームウェアの中に構築し、タッチしたときの信号状況に応じて低ゲイン設定と高ゲイン設定を自動で選択し、切り替える構成とする。
そしてタッチに応じてノーマルモードと高感度モードのいずれが適切かを自動判定して選択することで、フィンガータッチ、グローブタッチのいずれの場合でも適切なタッチ検出ができるようになる。つまり指とグローブのタッチ操作の両立化を実現できる。
ユーザにとっては、フィンガータッチかグローブタッチかを気にしなくてもよい。またモードを手動で切り替えるなどの操作も不要である。これにより極めて使用性がよく、またストレスのない操作を実現するタッチパネルを提供できることになる。
【0084】
第1の実施の形態としての
図8の処理例では、上記の第1手順として、高感度モードの設定における走査の際に検出されたタッチ信号強度Zを閾値th1と比較した結果に基づいてモード選択を行うものとした。
高感度モードとしてタッチ信号強度を検出し、閾値th1と比較することで、検出されるタッチが、高感度モードとすべきタッチであるかノーマルモードとすべきタッチであるかを判定できる。グローブタッチではある程度のタッチ信号強度が得られ、フィンガータッチでは、通常より高いタッチ信号強度が得られるためである。これにより現在のタッチ操作に対して適切なモードを正確に判定できる。
【0085】
なお、実施の形態では、例えばゲイン設定G2をノーマルモードとし、ゲイン設定G0を高感度モードとして、自動選択を行う例で説明したが、
図4の構成の場合、ゲイン設定G0,G1,G2,G3の4段階の感度のモードが選択可能である。このうちのいずれの2つをノーマルモードと高感度モードとしてもよいし、3つのモード或いは4つのモードが自動的に切り替えられるようにしてもよい。例えば高感度モードでの走査のときに検出したタッチ信号強度Zの値を、複数の閾値により3段階又は4段階に分類することで、3つのモード或いは4つのモードを自動的に選択するようにすることができる。
【0086】
第2の実施の形態としての
図9の処理例では、第1手順において、高感度モードの設定における走査の際に検出されたタッチ信号強度Zを第1閾値th11と比較した結果に基づいて、ノーマルモードに対応するタッチであるか否かを判定し、またタッチ信号強度Zを、第1閾値th11より低信号強度の値とされた第2閾値th12と比較した結果に基づいて、高感度モードに対応するタッチであるかノータッチであるか否かを判定するものとした。そしてノーマルモード又は高感度モードに対応するタッチと判定された場合に、モード選択を行って実際のタッチ検出のための走査(ステップS103,S104)を実行させるものとした。
これによりノーマルモード、高感度モードを適切に選択できる。加えて、タッチが検出されないノータッチの期間は、モード切り替え処理が行われない。これにより処理負荷の軽減ができる。またノータッチの期間は、ステップS101の走査が繰り返されることになり、タッチが生じたときに即座にモード判定を行って、タッチ位置検出のための走査を実行できるため、タッチ検出の応答性の点でも有利となる。
【0087】
ところで実施の形態で説明したようにモード切り替えにおいて、ゲイン設定だけを切り替える構造とすると、寄生容量やICのADコンバータの特性のバラツキにより、走査の際のRAW値のバランスがうまくとれない状態が発生することがある。特に高ゲイン設定の場合である。そこで、受信信号感度のモード切り替えでは、基準容量部422及び計測用容量部424によるゲイン設定の切り替えだけでなく、スキャンパタン条件、例えば充放電時間やエッジチューニングの調整条件なども切り換えられるようにすることが考えられる。
例えばスキャンパタン条件は、スキャンパタンファイルで設定し、低ゲイン設定と高ゲイン設定にそれぞれ独立して調整されたスキャンパタンファイルを構築して、ファームウェア内に保持する。そしてモード切り替えの際には、各ゲイン設定に対応したスキャンパタン条件を選択することで実現できる。
【0088】
なお実施の形態のタッチパネル装置1では、実際にパネル面に触れるタッチ操作を行うものとして説明したが、本発明はタッチと同等の操作を行う、いわゆるホバーセンシング(非接触近接操作)に対応するタッチパネル装置も含むものであり、その場合も、上記同様のセンシング手法を適用できる。即ち本発明及び実施の形態でいう「タッチ」とは、非接触近接操作状態も含む。
【符号の説明】
【0089】
1 タッチパネル装置
2 タッチパネル
3 タッチパネル駆動装置
4 センサIC
5 MCU
5a モード制御部
5b 検出演算部
5M メモリ
21 送信信号線、
22 受信信号線、
41 送信回路、
42 受信回路、
43 マルチプレクサ、
44 インターフェース・レジスタ回路、
45 電源回路、
421 コンパレータ、
422 基準容量部、
424 計測用容量部、