(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079007
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】制振材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230531BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230531BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
F16F15/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192389
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小助川 陽太
(72)【発明者】
【氏名】中島 友則
【テーマコード(参考)】
3J048
4F100
【Fターム(参考)】
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4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】制振性に優れ、かつ、曲面に対する追従性に優れた制振材を提供すること。
【解決手段】1以上の粘着層(1)と、1以上の樹脂層(2)と、最外層として粘着層(1)または樹脂層(2)のいずれか一方に接するように設けられた拘束層(3)とを備え、樹脂層(2)が、動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあるオレフィン系重合体(A)を含み、粘着層(1)が、オレフィン系重合体(A)および軟化材(B)を含み、粘着層(1)の1つと樹脂層(2)の1つとが少なくとも接している、制振材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の粘着層(1)と、1以上の樹脂層(2)と、最外層として前記粘着層(1)または前記樹脂層(2)のいずれか一方に接するように設けられた拘束層(3)とを備え、
前記樹脂層(2)が、動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあるオレフィン系重合体(A)を含み、
前記粘着層(1)が、前記オレフィン系重合体(A)および軟化材(B)を含み、
前記粘着層(1)の1つと前記樹脂層(2)の1つとが少なくとも接している、制振材。
【請求項2】
前記粘着層(1)の1つは、前記拘束層(3)と反対側の最外層である、請求項1に記載の制振材。
【請求項3】
前記粘着層(1)と前記樹脂層(2)とが交互に接し積層されており、前記粘着層(1)と前記樹脂層(2)との合計数が、2~10である、請求項1または請求項2に記載の制振材。
【請求項4】
前記樹脂層(2)の室温における貯蔵弾性率が1×106Pa以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の制振材。
【請求項5】
前記粘着層(1)の室温における貯蔵弾性率が1×106Pa未満である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の制振材。
【請求項6】
制振材の厚みが0.5mm~10mmである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の制振材。
【請求項7】
前記拘束層(3)が、金属箔、金属板、金属メッシュ、繊維強化樹脂層、およびガラスクロスからなる群より選ばれる1つである、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の制振材。
【請求項8】
前記拘束層(3)の厚みが、0.06mm~10mmである、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の制振材。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の制振材と、基材と、を備える制振材付き基材。
【請求項10】
前記基材が曲面を有する、請求項9に記載の制振材付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、船舶、鉄道車両、航空機、家庭電化機器、OA機器、AV機器、事務機器、建築・住宅設備、工作機械、産業機械などの分野に用いられる部品および筐体には、その運転時に振動や騒音を生じやすく、振動および騒音の発生を抑制すべく制振性が要求される。前述の部品および筐体の制振性を向上させるために、部品および筐体に制振材を貼付することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、母材と母材の双極子モーメント量を増大させる活性成分とからなるシート状の制振層と、ブチル系ゴムからなる粘着層とを備え、上記制振層及び粘着層はそれぞれ複数層から構成されるとともに、制振層と粘着層が交互に積層されている積層成形物からなることを特徴とする制振成形物が記載されている。
また、特許文献2には、互いにガラス転移温度が異なる複数の樹脂組成物から形成される樹脂層と、上記樹脂層に積層される拘束層とを備えていることを特徴とする、制振シートが記載されている。
特許文献3には、2枚の拘束板間にゴム粘弾性体を積層して構成する拘束型制振材において、ゴム粘弾性体は、個々の層の厚さが0.03~1.00mmの複数のゴム層から構成され、ゴム層相互およびゴム層と拘束板とが、弾性率が拘束板より小さく、ゴム粘弾性体より大きく、かつ1×107(N/m2)~1×1011(N/m2)である接着剤で接着されていることを特徴とする制振材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-278832号公報
【特許文献2】特開2011-89547号公報
【特許文献3】特公平7-39160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載の制振材においては、制振対象が曲面である場合の制振性までは検討しておらず、優れた制振性を有し、かつ、曲面に対する追従性にも優れる制振材についての更なる開発が求められている。
本発明に係る一実施形態が解決しようとする課題は、制振性に優れ、かつ、曲面に対する追従性に優れた制振材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 1以上の粘着層(1)と、1以上の樹脂層(2)と、最外層として前記粘着層(1)または前記樹脂層(2)のいずれか一方に接するように設けられた拘束層(3)とを備え、
前記樹脂層(2)が、動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあるオレフィン系重合体(A)を含み、
前記粘着層(1)が、前記オレフィン系重合体(A)および軟化材(B)を含み、
前記粘着層(1)の1つと前記樹脂層(2)の1つとが少なくとも接している、制振材。
<2> 前記粘着層(1)の1つは、前記拘束層(3)と反対側の最外層である、<1>に記載の制振材。
<3> 前記粘着層(1)と前記樹脂層(2)とが交互に接し積層されており、前記粘着層(1)と前記樹脂層(2)との合計数が、2~10である、<1>または<2>に記載の制振材。
<4> 前記樹脂層(2)の室温における貯蔵弾性率が1×106Pa以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の制振材。
<5> 前記粘着層(1)の室温における貯蔵弾性率が1×106Pa未満である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の制振材。
<6> 制振材の厚みが0.5mm~10mmである、<1>~<5>のいずれか1つに記載の制振材。
<7> 前記拘束層(3)が、金属箔、金属板、金属メッシュ、繊維強化樹脂層、およびガラスクロスからなる群より選ばれる1つである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の制振材。
<8> 前記拘束層(3)の厚みが、0.06mm~10mmである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の制振材。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の制振材と、基材と、を備える制振材付き基材。
<10> 前記基材が曲面を有する、<9>に記載の制振材付き基材。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る一実施形態によれば、制振性に優れ、かつ、曲面に対する追従性に優れた制振材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の内容の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
本明細書において、「重合体」とは、単独重合体および共重合体を含む概念である。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後いずれか一方に記載される単位は、特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
(制振材)
本発明に係る制振材は、1以上の粘着層(1)と、1以上の樹脂層(2)と、最外層として上記粘着層(1)または上記樹脂層(2)のいずれか一方に接するように設けられた拘束層(3)とを備え、
上記樹脂層(2)が、動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあるオレフィン系重合体(A)を含み、
上記粘着層(1)が、上記オレフィン系重合体(A)および軟化材(B)を含み、
上記粘着層(1)の1つと上記樹脂層(2)の1つとが少なくとも接している。
発明者らが鋭意検討した結果、本発明に係る制振材が上記構成を有することで、制振性に優れ、かつ、曲面に対する追従性に優れることを見出した。この理由は明らかではないが以下のように推定される。
樹脂層(2)に含まれるオレフィン系重合体(A)は、tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあるので、上記温度範囲に相当する周波数帯での振動エネルギーの吸収が効果的に働き、優れた制振性を発揮することができ、また、上記粘着層(1)は、上記オレフィン系重合体(A)と軟化材を含むので、優れた制振性を発揮しつつ、柔軟性にも優れるので、本発明に係る制振材はこのような樹脂層と粘着層とが組み合わされた構造を有することで、曲面等の複雑な形状に対しても追従性に優れ、かつ、制振性にも優れると推定している。
以下、制振材の各構成について詳細に説明する。
【0010】
<樹脂層(2)>
本発明に係る制振材は、1以上の樹脂層(2)を備え、樹脂層(2)は、動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあるオレフィン系重合体(A)を含む。
制振材が備える樹脂層(2)の数の上限は、特に制限はないが、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。
制振材が備える樹脂層(2)の数としては、制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、1以上15以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上8以下が更に好ましく、1以上6以下が特に好ましい。
【0011】
樹脂層(2)の厚みとしては、制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、0.1mm以上10mm以下であり、好ましくは0.1mm以上6.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上5.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上5.0mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以上4.0mm以下である。
【0012】
<<オレフィン系重合体(A)>>
オレフィン系重合体(A)は、動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲内にあれば特に制限されない。
【0013】
上記動的粘弾性測定により求められる損失正接tanδは、以下の方法により求められる。オレフィン系重合体(A)からなる試料を、雰囲気温度を連続的に変化させながら動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(G')、および、損失弾性率(G")を測定し、G"/G'で与えられる損失正接tanδにより求められる。温度と損失正接tanδとの関係をみると、損失正接tanδは一般に特定の温度においてピークを有する。そのピークが現れる温度は一般にガラス転移温度(以下「tanδ-Tg」ともいう)と呼ばれる。損失正接tanδのピークが現れる温度(以下、「tanδピーク温度」ともいう)は、実施例において記した動的粘弾性測定に基づき求めることができる。
制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、tanδピーク温度は、10℃~40℃であることが好ましい。
【0014】
得られる制振材の制振性をより高める観点から、オレフィン系重合体(A)は、tanδのピークを10℃以上40℃の温度範囲に1つ以上有することが好ましい。
0℃以上40℃以下の温度範囲におけるtanδのピークの有無は、0℃以上40℃以下の温度範囲にtanδのピークの頂点が存在するか否かにより判断される。
また、樹脂層(2)のtanδと後述する粘着層(1)のtanδとが異なる場合、tanδピーク周波数が異なるので、粘着層(1)と樹脂層(2)とが交互に接し積層されることによって広範囲の周波数域において優れた制振性を発揮し得る。
【0015】
tanδのピーク温度が0℃~40℃の範囲にあるオレフィン系重合体(A)は、オレフィン系重合体(A)の後述する構成単位(i)~(iii)の組成比の調整によって得ることができる。
【0016】
オレフィン系重合体(A)の135℃デカリン中の極限粘度[η]は、加工性の観点から、好ましくは0.5~5.0dL/g、より好ましくは0.6~4.0dL/g、さらに好ましくは0.7~3.5dL/gである。極限粘度[η]の調製方法は特に制限されないが、重合中に水素分子を併用しオレフィン系重合体(A)の分子量を調製することで、極限粘度[η]を調整することができる。
【0017】
オレフィン系重合体(A)の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、得られる制振材の機械特性および加工性の観点から、好ましくは1.0~3.5、より好ましくは1.2~3.0、さらに好ましくは1.5~2.5である。MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算法により得られる。
【0018】
オレフィン系重合体(A)は、1種または2種以上のオレフィンから形成される重合体であってもよく、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。オレフィンとしては、特に制限はなく、例えば、α-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0019】
α-オレフィンとしては、例えば、直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられ、α-オレフィンの炭素数は特に限定されないが、通常は2~20である。
直鎖状α-オレフィンの炭素数としては、通常は2~20であり、好ましくは2~15であり、より好ましくは2~10である。直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられ、これらの中でも、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、および、1-オクテンである。
【0020】
分岐状α-オレフィンの炭素数は、通常は5~20であり、好ましくは5~15である。分岐状α-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンが挙げられ、これらの中でも、好ましくは4-メチル-1-ペンテンである。
【0021】
環状オレフィンの炭素数は、通常は3~20、好ましくは5~15である。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0022】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノまたはポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0023】
官能基を有するビニル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸などの不飽和カルボン酸;アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミンなどの不飽和アミン;(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、上記不飽和カルボン酸から得られた無水物などの不飽和カルボン酸無水物;4-エポキシ-1-ブテン、5-エポキシ-1-ペンテン、6-エポキシ-1-ヘキセン、7-エポキシ-1-ヘプテン、8-エポキシ-1-オクテン、9-エポキシ-1-ノネン、10-エポキシ-1-デセン、11-エポキシ-1-ウンデセン等の不飽和エポキシ化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物;水酸基含有オレフィンなどが挙げられる。
【0024】
水酸基含有オレフィンとしては、例えば、末端水酸基化オレフィンが挙げられる。末端水酸基化オレフィンとしては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化-1-ブテン、水酸化-1-ペンテン、水酸化-1-ヘキセン、水酸化-1-オクテン、水酸化-1-デセン、水酸化-1-ウンデセン、水酸化-1-ドデセン、水酸化-1-テトラデセン、水酸化-1-ヘキサデセン、水酸化-1-オクタデセン、水酸化-1-エイコセン等の炭素数2~20、好ましくは炭素数2~15の直鎖状の水酸化-α-オレフィン;水酸化-3-メチル-1-ブテン、水酸化-3-メチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ペンテン、水酸化-3-エチル-1-ペンテン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ペンテン、水酸化-4-メチル-1-ヘキセン、水酸化-4,4-ジメチル-1-ヘキセン、水酸化-4-エチル-1-ヘキセン、水酸化-3-エチル-1-ヘキセン等の炭素数5~20、好ましくは炭素数5~15の分岐状の水酸化-α-オレフィンが挙げられる。
【0025】
オレフィン系重合体(A)を形成するモノマーとしては、前述したオレフィンとともに、非共役ポリエンおよび共役ジエンから選ばれる少なくとも1種を用いることもできる。
非共役ポリエンの炭素数は、通常は5~20、好ましくは5~10である。非共役ポリエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどが挙げられる。
【0026】
共役ジエンの炭素数は、通常は4~20、好ましくは4~10である。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどが挙げられる。
オレフィン系重合体(A)は、制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位(i)と、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構成単位(ii)とを有する共重合体(A-1)を含むことが好ましい。
【0027】
共重合体(A-1)における構成単位(ii)に含まれる炭素数2~20のα-オレフィンとしては、制振性、曲面に対する追従性などの点から、炭素数2~10の直鎖状α-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンがより好ましく、エチレンおよびプロピレンが更に好ましく、プロピレンが特に好ましい。
共重合体(A-1)における構成単位(ii)は、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0028】
共重合体(A-1)は、必要に応じて、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を有していてもよい。共重合体(A-1)における構成単位(iii)は、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0029】
共重合体(A-1)は、本発明の目的を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンを除く炭素数2~20のα-オレフィンおよび非共役ポリエン以外成分(以下、「その他の共重合成分」ともいう)に由来する構成単位を有していてもよい。その他の共重合成分としては、例えば、前述した、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、官能基化ビニル化合物、共役ジエンなどが挙げられる。
【0030】
共重合体(A-1)において、構成単位(i)、(ii)および(iii)の含有割合の合計を100モル%として、構成単位(i)の含有割合が16~95モル%であり、構成単位(ii)の含有割合が5~84モル%であり、かつ、構成単位(iii)の含有割合が0~10モル%であることが好ましく、構成単位(i)の含有割合が26~90モル%であり、構成単位(ii)の含有割合が10~74モル%であり、かつ、構成単位(iii)の含有割合が0~7モル%であることがより好ましく、構成単位(i)の含有割合が61~85モル%であり、構成単位(ii)の含有割合が15~39モル%であり、かつ、構成単位(iii)の含有割合が0~5モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(i)~(iii)の含有割合は、13C-NMRの測定により求められる。
樹脂層(2)は、オレフィン系重合体(A)を1種含んでいてもよいし、または2種以上を含んでいてもよい。
【0031】
上記オレフィン系重合体(A)において0℃以上40℃以下の温度範囲における損失正接tanδ(以下、「オレフィン系重合体(A)のtanδ」ともいう。)のピーク値としては、制振性に優れる観点から、0.5~4.0であることが好ましく、1.0~3.5であることがより好ましく、2.0~3.0であることが更に好ましい。
オレフィン系重合体(A)のtanδは、後述する実施例における動的粘弾性の測定方法に記載の測定方法および測定条件により求められる。
また、オレフィン系重合体(A)のtanδは、オレフィン系重合体(A)の組成比、具体的には、上記構成単位(i)~(iii)の組成比を調整することで所望の値に調整し得る。
【0032】
樹脂層(2)は、オレフィン系重合体(A)および後述の軟化材(B)以外の成分(以下、「(A)および(B)以外のその他の成分」ともいう。)を必要に応じて更に含んでいてもよい。(A)および(B)その他の成分としては、例えば、補強材、充填材、加工助剤、オレフィン系重合体(A)以外の重合体、活性剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、吸湿剤、酸化防止剤、粘着付与剤、防カビ剤、潤滑剤、難燃剤、受酸剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、発泡剤、磁性紛が挙げられる。
樹脂層(2)の成分は、制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、後述の粘着層(1)の成分と異なることが好ましい。
【0033】
制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、樹脂層(2)の室温(25℃)における貯蔵弾性率は、1×106Pa以上であることが好ましく、5×106~2×108Paであることがより好ましく、1×107~1×108Paであることが更に好ましい。
貯蔵弾性率は、実施例に記載の測定方法により求められる。
【0034】
樹脂層(2)において0℃以上40℃以下の温度範囲における損失正接tanδ(以下、「樹脂層(2)のtanδ」ともいう。)のピーク値としては、制振性に優れる観点から、0.5~4.0であることが好ましく、1.0~3.5であることがより好ましく、2.0~3.0であることが更に好ましい。
樹脂層(2)のtanδは、後述する実施例における動的粘弾性の測定方法に記載の測定方法および測定条件により求められる。
また、樹脂層(2)のtanδは、樹脂層(2)の組成比を調整することで所望の値に調整し得る。
【0035】
<粘着層(1)>
本発明に係る制振材は、1以上の粘着層(1)を備え、粘着層(1)は、上記オレフィン系重合体(A)を含む。粘着層(1)は、上記オレフィン系重合体(A)および軟化材(B)を含むので、柔軟性に優れるので、得られる制振材は曲面などの複雑な形状に対する追従性に優れる。
制振材が備える樹脂層(2)の数の上限は、特に制限はないが、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。
制振材が備える粘着層(1)の数としては、制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、1以上15以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上8以下が更に好ましく、1以上6以下が特に好ましい。
【0036】
粘着層(1)の厚みとしては、制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、0.1mm以上10mm以下であり、好ましくは0.1mm以上6.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上5.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上5.0mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以上4.0mm以下である。
【0037】
粘着層(1)に含まれるオレフィン系重合体(A)としては、樹脂層(2)におけるオレフィン系重合体(A)と同義であり、好ましい態様も同様である。
粘着層(1)に含まれるオレフィン系重合体(A)は、樹脂層(2)に含まれるオレフィン系重合体(A)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。制振性および曲面に対する追従性に優れる観点からは、粘着層(1)に含まれるオレフィン系重合体(A)は、樹脂層(2)に含まれるオレフィン系重合体(A)と同一であることが好ましい。
また、粘着層(1)に含まれるオレフィン系重合体(A)は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上を含まれていてもよい。
【0038】
制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、粘着層(1)の室温(25℃)における貯蔵弾性率が1×106Pa未満であることが好ましく、1×103以上1×106Pa未満であることがより好ましく、1×104~5×105Paであることが更に好ましい。
貯蔵弾性率は、実施例に記載の測定方法により求められる。
【0039】
<<軟化材(B)>>
粘着層(1)は、軟化材(B)を含む。軟化材(B)としては、例えば、パラフィンオイル等のプロセスオイル、潤滑油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化材;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化材;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化材;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化材;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)などが挙げられる。
これらの中でも、軟化材(B)としては、石油系軟化材が好ましく、プロセスオイルがより好ましく、パラフィンオイルが更に好ましい。
【0040】
軟化材(B)としてのパラフィンオイルは、40℃における動粘度が2000mm2/s以下の範囲にある化合物であることが好ましく、10~500mm2/sの範囲にある化合物であることがより好ましい。軟化剤(B)としてのパラフィンオイルの動粘度は、JIS K2283:2000に準拠し測定することができる。
【0041】
粘着層(1)における軟化材(B)の含有量は、上記オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、10~80質量部であることがより好ましく、15~50質量部であることが更に好ましい。軟化材(B)の含有量を上記範囲とすることで、得られる制振材の制振性を向上させ、かつ、曲面に対する追従性に優れる。
軟化材(B)は、1種単独であってもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0042】
粘着層(1)におけるオレフィン系重合体(A)および軟化材(B)の含有割合の合計は、粘着層(1)に含まれる成分の全質量に対して、通常は30質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0043】
〔その他の成分〕
粘着層(1)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記オレフィン系重合体(A)および軟化材(B)以外の成分(以下、単に「その他の成分」ともいう。)をさらに含有することができる。その他の成分としては、例えば、補強材、充填材、加工助剤、オレフィン系重合体(A)以外の重合体、活性剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、吸湿剤、酸化防止剤、粘着付与剤、防カビ剤、潤滑剤、難燃剤、受酸剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、発泡剤、磁性紛が挙げられる。
その他の成分の含有量としては、粘着層(1)に含まれる成分の全質量に対して、0質量%~30質量%であることが好ましく、0質量%~20質量%であることがより好ましく、0質量%~10質量%であることが更に好ましく、0質量%~5質量%であることが特に好ましく、0質量%~1質量%であることが最も好ましい。
【0044】
粘着層(1)は、上記成分を混合することにより得ることができる。上記混合方法特に限定されないが、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダーなどの密閉式混練機、一軸押出機、二軸押出機などの押出機、オープンロールなどで混練することで調製できる。混練においては単独の装置を使用しても、複数種の装置を併用してもよい。
【0045】
粘着層(1)における0℃以上40℃以下の温度範囲における損失正接tanδ(以下、「粘着層(1)のtanδ」ともいう。)のピーク値としては、制振性に優れる観点から、1.0~5.0であることが好ましく、2.0~4.0であることがより好ましく、2.5~3.5であることが更に好ましい。粘着層(1)のtanδは、後述する実施例における動的粘弾性の測定方法に記載の測定方法および測定条件により求められる。
また、粘着層(1)のtanδは、粘着層(1)の組成比を調整することで所望の値に調整し得る。
また、広範囲の周波数域での制振性に優れる観点から、上記粘着層(1)のtanδと上記樹脂層(2)のtanδとはそれぞれ異なっていることが好ましい。
【0046】
制振材において、粘着層(1)および樹脂層(2)の少なくとも一方が、後述する拘束層(3)と反対側の最外層であればよい。取り扱いの観点から、上記粘着層(1)の1つは、後述する拘束層(3)と反対側の最外層であることが好ましい。
【0047】
制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、上記粘着層(1)と上記樹脂層(2)とが交互に接し積層されており、上記粘着層(1)と上記樹脂層(2)との合計数が、2~16であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~8であることが更に好ましく、2~6であることが特に好ましい。
例えば、tanδがそれぞれ異なる上記粘着層(1)と上記樹脂層(2)とが交互に接し積層されている場合、tanδがそれぞれ異なることで広範囲の周波数または温度域において振動エネルギーを吸収することができ、広範囲の周波数または温度域において制振性を保持することが可能となると推定している。
【0048】
<拘束層(3)>
本発明に係る制振材は、最外層として上記粘着層(1)または上記樹脂層(2)のいずれか一方に接するように設けられた拘束層(3)とを備える。
制振材が拘束層(3)を備えることで、樹脂層(2)を拘束し、樹脂層(2)に靭性を付与し得る。
拘束層(3)は、制振材としての効果をより高める観点から、樹脂層(2)に接するように設けられていることが好ましい。拘束層(3)は、例えば、シート状で、樹脂層(2)に密着一体化できる層であることが好ましい。
【0049】
拘束層(3)としては、例えば、金属箔、金属メッシュ、上記樹脂層(2)以外の樹脂層、繊維強化樹脂層、ガラスクロスなどが挙げられる。
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、スチール箔、ステンレス箔、ニッケル箔、銅箔などが挙げられる。
【0050】
金属メッシュとは、金属材料を平織、綾織、平畳織、綾畳織などにしたものを指し、例えば、ステンレスメッシュ(ステンレス金網)が挙げられる。また金属メッシュは、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸された、樹脂含浸金属メッシュであってもよい。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)、各種ポリアミド樹脂、各種ポリオレフィン系樹脂、各種ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記樹脂層(2)以外の樹脂層を形成するための樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの各種ポリエステル、ナイロン6(ポリアミド6)などの各種ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの各種(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。また上記樹脂は、発泡体であってもよい。発泡体として、例えば、熱可塑性樹脂の発泡体である、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン-酢酸ビニル共重合体や、熱硬化性樹脂の発泡体であるウレタンフォームが挙げられる。
【0052】
繊維強化樹脂層を形成するための繊維強化樹脂としては、公知の繊維強化樹脂が挙げられ、例えば、各種のガラス繊維強化樹脂(FRP)、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などが挙げられる。
【0053】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。またガラスクロスは、表面に粘着剤が付着されたものであってもよい。またガラスクロスは、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸された、樹脂含浸ガラスクロスであってもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)、各種ポリアミド樹脂、各種ポリオレフィン系樹脂、各種ポリエステル系樹脂が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂はそれぞれ1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
拘束層(3)の中では、制振性、加工性およびコストの観点から、金属箔、金属板、金属メッシュ、繊維強化樹脂層、およびガラスクロスからなる群より選ばれる1つであることが好ましく、金属箔、繊維強化樹脂層、およびガラスクロスからなる群より選ばれる1種であることがより好ましく、金属箔であることが更に好ましい。
【0055】
拘束層(3)の厚さは、0.06mm以上1mm以下であることが好ましく、0.08mm以上0.8mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることが更に好ましく、0.15mm以上0.5mm以下であることが特に好ましい。
拘束層(3)の厚さが0.06mm以上であると、制振性により優れる傾向にあり、厚さが1mm以内であると、作業性または曲面に対する追従性により優れる傾向にある。
【0056】
〔他の層〕
制振材は、粘着層(1)、樹脂層(2)および拘束層(3)以外の層(以下単に「その他の層」ともいう。)を備えていてもよい。
制振材は、拘束層(3)とは反対側の面上に、必要に応じて、公知の離型紙または離型フィルムを有してもよい。その場合は、離型紙または離型フィルムは、粘着層(1)をシート化するときに、粘着層(1)の上に形成することが好ましい。
【0057】
制振性および曲面に対する追従性に優れる観点から、制振材の厚みは、0.5mm~10mmであることが好ましく、1.0mm~8mmであることがより好ましく、1.0mm~6mmであることが更に好ましい。
【0058】
〔制振材の製造方法〕
制振材は、種々公知の製造方法、例えば、プレス機や押出機等の装置を用いて上記成分を含む組成物から所望の厚さを有するシート状の粘着層(1)または樹脂層(2)を得た後、粘着層(1)および樹脂層(2)のすくなくとも一方に拘束層(3)を圧着または熱圧着する方法、あるいは、拘束層(3)面に上記成分を含む組成物を押出機等の装置を用いて押出しラミネートして、拘束層(3)上に粘着層(1)および樹脂層(2)を形成する方法が挙げられる。
【0059】
-制振材の用途-
本発明に係る制振材は、制振対象となる基材(例えば部品または筐体)に貼付され、その部品または筐体を制振する。本発明の制振材は、上述した粘着層(1)、樹脂層(2)および拘束層(3)を備えることから、制振性および曲面に対する追従性に優れる。
【0060】
<制振材付き基材>
本発明に係る制振材付き基材は、上記制振材と、基材と、を備えることが好ましい。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。追従性をより発揮し得る観点からは、基材としては、曲面を有することが好ましい。曲面を有する形状としては、特に制限はなく、例えば、球面状、円柱状、円筒状等であってもよいし、平面の一部が曲面状であってもよい。これらの中でも、追従性をより発揮し得る観点からは、円筒状であることがより好ましい。
基材の材質としては、特に制限はなく、アルミニウム、チタン、鉛、ステンレス鋼等の金属またはこれらを含む合金、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル樹脂等の樹脂、コンクリート、木材などが挙げられる。
【0061】
制振材は、自動車、船舶、鉄道車両、航空機、家庭電化機器、OA機器、AV機器、事務機器、建築・住宅設備、工作機械、産業機械などの、振動が発生する様々な用途における基材に対して使用することができる。
【0062】
例えば、上記制振材が粘着層(1)の表面に離型紙または離型フィルムを備える場合には、使用時には粘着層(1)の表面から離型紙または離型フィルムを剥がして、次いで、その粘着層(1)の表面を、被着体である制振対象(各種部品、筐体など)に貼着する。樹脂層(2)と制振対象とする基材とを、例えば、圧着または熱圧着(焼き付け)等することにより、上記制振材を基材に貼付することができる。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の記載において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0064】
<測定方法および評価方法>
以下の重合例、実施例および比較例において、測定および評価は以下の方法で行った。
<<重合体の分析>>
〔組成〕
下記で得られたオレフィン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびその他のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合(モル%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECP500型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン、積算回数:1万回以上にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0065】
〔極限粘度〕
オレフィン系重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。具体的には、約20mgの粉末状の重合体をデカリン25mLに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定した。このデカリン溶液にデカリン5mLを加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηSPを測定した。この希釈操作を2回繰り返し、重合体の濃度(C)を0に外挿したときのηSP/Cの値を極限粘度[η](単位:dL/g)として求めた(下記式1参照)。
[η]=lim(ηSP/C) (C→0) ・・・式1
【0066】
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)〕
オレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)、および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレン換算法により算出した。測定条件は、下記の通りである。
測定装置 :GPC(ALC/GPC 150-C plus型、
示差屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム :GMH6-HT2本、およびGMH-HTL2本を直列に接続
(いずれも東ソー(株)製)
溶離液 :o-ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量 :1.0mL/min
【0067】
〔動的粘弾性:tanδピーク温度及びtanδピーク値及び貯蔵弾性率〕
下記で得られたオレフィン系重合体を厚さ2mmのプレスシートに成型し、試験片有効サイズを、長さ20mm×幅10mm×厚さ2mmで測定するため短冊片を切り出した。粘弾性測定装置ARES(TA Instrumens JAPAN Inc.社製)を用いて、下記測定条件で上記オレフィン系重合体の動的粘弾性の温度依存性を測定した。
当該測定で、貯蔵弾性率(G')を温度に対してプロットし、室温(25℃)における貯蔵弾性率(G’)の値を得た。また、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G")との比(G"/G':損失正接)をtanδとし、tanδを温度に対してプロットすると、上に凸の曲線すなわちピークが得られ、そのピーク温度(tanδピーク温度)をガラス転移温度、すなわちtanδ-Tgとし、その温度における極大値を測定し、tanδピーク値とした。
-測定条件-
Frequency :1.0Hz
Temperature:-70℃~100℃
Ramp Rate :4.0℃/分
Strain :0.1%
【0068】
<制振性>
幅100mm×長さ100mmに裁断した後述で作製した制振材と、基材として外径28mm、長さ1000mm、厚さ1mmのステンレス製の中空パイプ(被着体)とを準備した。この基材の外側の中心部分に、上記制振材の粘着層側を重ね合わせて圧着し、試験片とした。インパクトハンマー(PCB社製)で上記試験片を加振し、加速度ピックアップ(PCB社製)で加速度を検出し、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)アナライザ(OROS社製)で計測することで、試験片の振動加速度レベルを測定した。得られた周波数応答関数(アクセレランス:A/F)の共振周波数において、4500Hz付近の振動加速度レベルのピーク値を、被着体のみを測定した場合のピーク値と比較し、低減した量を求め、下記の評価基準に従い制振性の評価を行った。振動加速度レベルのピーク値の低減量が大きいほど制振性に優れるといえる。
-評価基準-
0dB以上20dB未満減少 = 1点
20~25dB減少 = 2点
25dBを超えて減少 = 3点
【0069】
<曲面に対する追従性>
幅100mm×長さ100mmに裁断した後述で作製した制振材と、基材として外径28mm、長さ1000mm、厚さ1mmのステンレス製の中空パイプ(被着体)とを準備した。この基材の外側の中心部分に、上記制振材の粘着層側を重ね合わせて圧着し、試験片とした。その後、被着体からの制振材の剥がれの有無を目視で確認し、以下の評価基準に従い評価を行った。
-評価基準-
A:被着体からの剥がれ部分なし
B:被着体からの剥がれ部分あり
【0070】
〔重合例1〕
充分に窒素置換された容量1.5リットルの撹拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300mL(乾燥窒素雰囲気下で、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテン450mLを装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液を0.75mL装入し、撹拌機を回した。
【0071】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mLを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを撹拌しながら注いだ。
【0072】
得られた溶媒を含む重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥することで4-メチル-1-ペンテン共重合体を得た。これを190℃でペレタイズして得たペレットを4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)とした。4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)中の4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位の含有量は72モル%、プロピレンに由来する構成単位の含有量は28モル%であった。また上記共重合体(A-1-1)の135℃デカリン中の極限粘度[η]は1.5dL/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1、tanδピーク温度は28℃、tanδピーク値は2.7であった。
なお、極限粘度[η]、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、tanδピーク温度およびtanδピーク値は、上記の方法により測定した。
【0073】
(実施例1)
上記重合例で合成された4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)100部、およびパラフィンオイル(商品名:ダイアナプロセオイルPW90、出光興産(株)製、動粘度(40℃):95.54mm2/s)30部をバッチ式混練機(製品名:ラボプラストミル、(株)東洋精機製作所製)を用い、150℃で混練し、重合体組成物を得た。上記重合体組成物を、加熱プレスを用い、190℃で5分加熱後、冷却プレスをし、厚さ2mmのシート状粘着層(粘着層(1))を得た。
このシート状粘着層の片面に樹脂層(樹脂層(2))として厚さ1.0mmのシート状の上記重合例で合成された4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1-1)を重ね、この樹脂層の上に拘束層(拘束層(3))として厚さ0.2mmのアルミニウム箔を重ねた後圧着して貼り付け、粘着層と樹脂層と拘束層の3層からなる合計厚みが2.2mmの制振材を得た。
得られた制振材について、上記の評価方法に従い制振性および曲面に対する追従性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2)
粘着層、および、樹脂層を厚さ2.0mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして制振材を作製し、得られた制振材を用いて制振性および曲面に対する追従性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例3)
厚さ1.0mmのシート状粘着層、および、厚さ1.0mmのシート状の樹脂層(4-メチル-1-ペンテン共重合体)を実施例1と同様に作製した。これらの粘着層および樹脂層を交互に積層して4層(粘着層/樹脂層/粘着層/樹脂層)とし、拘束層として厚さ0.2mmのアルミニウム箔を、樹脂層の上に圧着して貼り付け、合計厚さが4.2mmの5層(粘着層/樹脂層/粘着層/樹脂層/拘束層)からなる制振材を得た。得られた制振材を用いて制振性および曲面に対する追従性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
実施例1において、厚さ2.0mmのシート状粘着層の上に拘束層として厚さ0.2mmのアルミニウム箔を圧着して貼り付け、合計厚さ2.2mmの2層(粘着層/拘束層)とした以外は実施例1と同様の方法により制振材を作製した。得られた制振材を用いて上記制振性および曲面に対する追従性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
実施例1において、厚さ2.0mmのシート状粘着層の代わりに、厚さ2.0mmの樹脂層(4-メチル-1-ペンテン共重合体)のシートの上に、拘束層として厚さ0.2mmのアルミニウム箔を重ねた後圧着して貼り付け、合計厚さ2.2mmの2層(樹脂層/拘束層)とした以外は実施例1と同様の方法により制振材を作製した。得られた制振材を用いて上記制振性および曲面に対する追従性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(比較例3)
粘着層として厚さ1.0mmのEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製シートを用い、樹脂層として厚さ1.0mmのポリプロピレン製シートを用いた以外は、実施例1と同様の方法により制振材を作製した。得られた制振材を用いて上記制振性および曲面に対する追従性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
表1中、「-」は該当する成分を含まないことを意味する。
【0081】
本発明に係る実施例1~3の制振材は、比較例1~3の制振材に比べて、曲面に対する追従性および制振性に優れることが分かる。