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特開2023-79013衛生洗浄装置、ノズル、および断続水流生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079013
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置、ノズル、および断続水流生成方法
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20230531BHJP
   B05B 1/08 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
E03D9/08 D
B05B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192397
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】本多 俊博
(72)【発明者】
【氏名】川濱 悠
【テーマコード(参考)】
2D038
4F033
【Fターム(参考)】
2D038JA02
2D038JA03
2D038JB01
2D038JH02
2D038JH12
4F033AA04
4F033BA04
4F033CA11
4F033DA01
4F033EA01
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】空間中での断続的な水流の生成。
【解決手段】加熱装置140と、温水を吐出するノズル110と、を備える衛生洗浄装置100であって、ノズル110は、第一水301が吐出される第一吐出口119を有する第一流路111と、第二水302が噴射される噴射口112と、噴射口112から噴射された第二水302の流れる方向を変更して第三水303とする方向変更部114と、第二水302と第三水303とが交差するように配置された戻りループ流路吐出口113を端部に有する戻りループ流路115と、戻り吐出口113から吐出された第三水303により流れる方向が変更された第二水302と第三水303とが混ざりあった第四水304を第一吐出口119から吐出される第一水301と合流するように吐出する第二吐出口120を備える第二流路116と、を備える衛生洗浄装置100。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズルを具備する衛生洗浄装置であって、
前記ノズルは、
前記ノズルに供給される水が通過する入水口と、
前記ノズルの内部に設けられた主流路と、
前記ノズルの内部に設けられた分岐部と、
前記ノズルの内部に設けられた第一流路と、
前記ノズルの内部に設けられた第一吐出口と、
前記ノズルの内部に設けられた流入口と、
前記ノズルの内部に設けられた分岐水路と、
前記ノズルの内部に設けられた噴射口と、
前記ノズルの内部に設けられた戻りループ流路と、
前記ノズルの内部に設けられた噴射空間部と、
前記ノズルの内部に設けられた受け入れ口と、
前記ノズルの内部に設けられた第二流路と、
前記ノズルの内部に設けられた第二吐出口と、を備え、
前記主流路の第一端に前記入水口が設けられており、
前記主流路の第二端に前記分岐部が位置しており、
前記第一流路の第一端に前記分岐部が位置しており、
前記第一流路の第二端に前記第一吐出口が位置しており、
前記分岐水路の第一端に前記流入口および前記分岐部が位置しており、
前記分岐水路の第二端に前記噴射口が位置しており、
前記第二流路の第一端に前記受け入れ口が位置しており、
前記第二流路の第二端に前記第二吐出口が位置しており、
前記戻りループ流路は、戻りループ流路入口および戻りループ流路吐出口を有しており、
前記噴射口の吐出面の法線は、前記戻りループ流路入口の入口面と交差しており、
前記噴射口および前記戻りループ流路入口を互いに結ぶ第一仮想線は、前記戻りループ流路吐出口および前記受け入れ口を互いに結ぶ第二仮想線と交差する
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記第一流路は、
前記分岐部から前記第一吐出口に向かう方向に断面積が減少している第一絞り部を備える
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記第二流路では、
前記受け入れ口から前記第二吐出口に向けて断面積が増加する断面積増加部を備える
請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記流入口は、
前記分岐部から前記分岐水路に向かう方向に断面積が減少している第二絞り部を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記第一吐出口および前記第二吐出口と連通する合流吐出口を備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記戻りループ流路は、
方向変更部を具備し、
前記方向変更部は、前記噴射口から噴出された水の流れの方向が前記方向変更部によってなめらかに変更されるするように湾曲している
請求項1から5のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
ノズルに供給される水が通過する入水口と、
前記ノズルの内部に設けられた主流路と、
前記ノズルの内部に設けられた分岐部と、
前記ノズルの内部に設けられた第一流路と、
前記ノズルの内部に設けられた第一吐出口と、
前記ノズルの内部に設けられた流入口と、
前記ノズルの内部に設けられた分岐水路と、
前記ノズルの内部に設けられた噴射口と、
前記ノズルの内部に設けられた戻りループ流路と、
前記ノズルの内部に設けられた噴射空間部と、
前記ノズルの内部に設けられた受け入れ口と、
前記ノズルの内部に設けられた第二流路と、
前記ノズルの内部に設けられた第二吐出口と、を備え、
前記主流路の第一端に前記入水口が設けられており、
前記主流路の第二端に前記分岐部が位置しており、
前記第一流路の第一端に前記分岐部が位置しており、
前記第一流路の第二端に前記第一吐出口が位置しており、
前記分岐水路の第一端に前記流入口および前記分岐部が位置しており、
前記分岐水路の第二端に前記噴射口が位置しており、
前記第二流路の第一端に前記受け入れ口が位置しており、
前記第二流路の第二端に前記第二吐出口が位置しており、
前記戻りループ流路は、戻りループ流路入口および戻りループ流路吐出口を有しており、
前記噴射口の吐出面の法線は、前記戻りループ流路入口の入口面と交差しており、
前記噴射口および前記戻りループ流路入口を互いに結ぶ第一仮想線は、前記戻りループ流路吐出口および前記受け入れ口を互いに結ぶ第二仮想線と交差する
ノズル。
【請求項8】
第一流路の端部に設けられる第一吐出口から第一水を吐出し、
第二水を噴射口から噴射し、
前記噴射口から噴射された前記第二水を方向変更部に衝突させて流れる方向を変更して第三水とし、
前記第二水と前記第三水とが交差するように配置された戻り吐出口まで前記第三水を戻りループ流路に案内させ、
前記戻り吐出口から吐出される前記第三水の流れの方向において、前記方向変更部の下流側に配置される受け入れ口が前記戻り吐出口から吐出された前記第三水により流れる方向が変更された前記第二水と前記第三水とが混ざりあった第四水を受け入れ、
前記受け入れ口に受け入れられた前記第四水を第二流路で案内し、第二流路の端部に設けられた第二吐出口から前記第一水と合流するように前記第四水を吐出する
断続水流生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置、衛生洗浄装置などに設けられるノズル、および断続水流生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体局部を洗浄する衛生洗浄装置において、人体局部に連続的に温水を噴射するよりも断続的に噴射した方が比較的少ない温水量であってもしっかりと洗っている感覚であるいわゆる洗浄感を人体に付与できることが知られている。
【0003】
特許文献1には、衛生洗浄装置内において水を加圧して吐出するポンプを備え、当該ポンプにより断続的な温水を噴射する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-56566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ポンプによって断続的な噴射を実現するためには、衛生洗浄装置に回転駆動装置、減速機構、動作変換機構などが必要となる。このように衛生洗浄装置の部品点数が増加し構造も複雑になると、組み立て工数などが増加し、生産効率が低下するとともにコストアップとなる。また、衛生洗浄装置を使用するにあたっては、ポンプが動作することで発生する動作音や振動が使用者の快適性を低下させる要因ともなる。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ポンプなど機械的な動作を用いることなく空間中において断続的な水流を生成することができる衛生洗浄装置、ノズル、および断続水流生成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つである衛生洗浄装置は、着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズルを具備する衛生洗浄装置であって、前記ノズルは、前記ノズルに供給される水が通過する入水口と、前記ノズルの内部に設けられた主流路と、前記ノズルの内部に設けられた分岐部と、前記ノズルの内部に設けられた第一流路と、前記ノズルの内部に設けられた第一吐出口と、前記ノズルの内部に設けられた流入口と、前記ノズルの内部に設けられた分岐水路と、前記ノズルの内部に設けられた噴射口と、前記ノズルの内部に設けられた戻りループ流路と、前記ノズルの内部に設けられた噴射空間部と、前記ノズルの内部に設けられた受け入れ口と、前記ノズルの内部に設けられた第二流路と、前記ノズルの内部に設けられた第二吐出口と、を備え、前記主流路の第一端に前記入水口が設けられており、前記主流路の第二端に前記分岐部が位置しており、前記第一流路の第一端に前記分岐部が位置しており、前記第一流路の第二端に前記第一吐出口が位置しており、前記分岐水路の第一端に前記流入口および前記分岐部が位置しており、前記分岐水路の第二端に前記噴射口が位置しており、前記第二流路の第一端に前記受け入れ口が位置しており、前記第二流路の第二端に前記第二吐出口が位置しており、前記戻りループ流路は、戻りループ流路入口および戻りループ流路吐出口を有しており、前記噴射口の吐出面の法線は、前記戻りループ流路入口の入口面と交差しており、前記噴射口および前記戻りループ流路入口を互いに結ぶ第一仮想線は、前記戻りループ流路吐出口および前記受け入れ口を互いに結ぶ第二仮想線と交差する衛生洗浄装置。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の1つであるノズルは、ノズルに供給される水が通過する入水口と、前記ノズルの内部に設けられた主流路と、前記ノズルの内部に設けられた分岐部と、前記ノズルの内部に設けられた第一流路と、前記ノズルの内部に設けられた第一吐出口と、前記ノズルの内部に設けられた流入口と、前記ノズルの内部に設けられた分岐水路と、前記ノズルの内部に設けられた噴射口と、前記ノズルの内部に設けられた戻りループ流路と、前記ノズルの内部に設けられた噴射空間部と、前記ノズルの内部に設けられた受け入れ口と、前記ノズルの内部に設けられた第二流路と、前記ノズルの内部に設けられた第二吐出口と、を備え、前記主流路の第一端に前記入水口が設けられており、前記主流路の第二端に前記分岐部が位置しており、前記第一流路の第一端に前記分岐部が位置しており、前記第一流路の第二端に前記第一吐出口が位置しており、前記分岐水路の第一端に前記流入口および前記分岐部が位置しており、前記分岐水路の第二端に前記噴射口が位置しており、前記第二流路の第一端に前記受け入れ口が位置しており、前記第二流路の第二端に前記第二吐出口が位置しており、前記戻りループ流路は、戻りループ流路入口および戻りループ流路吐出口を有しており、前記噴射口の吐出面の法線は、前記戻りループ流路入口の入口面と交差しており、前記噴射口および前記戻りループ流路入口を互いに結ぶ第一仮想線は、前記戻りループ流路吐出口および前記受け入れ口を互いに結ぶ第二仮想線と交差する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の1つである断続水流生成方法は、第一流路の端部に設けられる第一吐出口から第一水を吐出し、第二水を噴射口から噴射し、前記噴射口から噴射された前記第二水を方向変更部に衝突させて流れる方向を変更して第三水とし、前記第二水と前記第三水とが交差するように配置された戻り吐出口まで前記第三水を戻りループ流路に案内させ、前記戻り吐出口から吐出される前記第三水の流れの方向において、前記方向変更部の下流側に配置される受け入れ口が前記戻り吐出口から吐出された前記第三水により流れる方向が変更された前記第二水と前記第三水とが混ざりあった第四水を受け入れ、前記受け入れ口に受け入れられた前記第四水を第二流路で案内し、第二流路の端部に設けられた第二吐出口から前記第一水と合流するように前記第四水を吐出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポンプなどの機械的な動作を用いることなく断続的に空間中を飛ぶ水を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る便器に取り付けられた衛生洗浄装置を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る衛生洗浄装置が備える水回路を示す回路図である。
図3】ノズルの外観を示す斜視図である。
図4】ノズルを図3に示すA-A線で仮想的に切断した状態を示す断面図である。
図5】ノズルによって水が吐出される様子である第一段階を示す断面図である。
図6】ノズルによって水が吐出される様子である第一段階を示す断面図である。
図7】ノズルによって水が吐出される様子である第二段階を示す断面図である。
図8】ノズルによって水が吐出される様子である第三段階を示す断面図である。
図9】ノズルによって水が吐出される様子である第四段階を示す断面図である。
図10】ノズルから吐出された空間中の水流の第一状態を示す図である。
図11】ノズルから吐出された空間中の水流の第二状態を示す図である。
図12】本実施の形態には含まれないノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る衛生洗浄装置、ノズル、および断続水流生成方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0013】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0014】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る便器200に取り付けられた衛生洗浄装置100を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る衛生洗浄装置100が備える水回路180を示す回路図である。衛生洗浄装置100は、便器200に取り付けられ、便座190に着座した人の局部に加熱装置140によって生成された水をノズル110から吐出する装置である。なお、図1に示すように、衛生洗浄装置100は、便器200に対して開閉可能な便座190、便器200に対して開閉可能な便蓋(図示せず)と、ノズル110を具備するノズル本体500を出没させるノズル駆動部(図示せず)などを有している。また、本明細書、および特許請求の範囲において、「水」とは、温水を含む。ノズル110は、ノズル本体500の先端に設けられることが望ましい。
【0016】
衛生洗浄装置100が備える水回路180の構成は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、下記の構成となっている。水回路180は、上流から順に給水接続口181、ストレーナ182、止水電磁弁183、減圧弁184、バキュームブレーカ185、加熱装置140、流調弁186、分岐部材187を備えている。
【0017】
給水接続口181は、アダプタなどにより水道管に接続される部材であり、内部には、水道水に含まれるごみの流入を防止するストレーナ182が一体に組み込まれている。
【0018】
止水電磁弁183は、制御装置109からの制御により水道管からの水の流れを開閉することができる弁であり、止水電磁弁183を開放することによりノズル110から水を吐出させ、止水電磁弁183を閉ざすことによりノズル110からの水の吐出を停止させることができる。
【0019】
減圧弁184は、水道管から供給される水の水圧を減圧し一定に保つ弁である。
【0020】
バキュームブレーカ185は、断水などにより給水接続口181に接続される水道管が負圧になった時などに水回路180の内部の水が水道管に逆流することを防止する。バキュームブレーカ185は、通気管188に接続されている。通気管188は、便器200の便鉢まで配設されている。通気管188は、バキュームブレーカ185が作動したときに、吸気する外気の供給路であるとともに、作動時に瞬間的に放出される水を便器200内に放水する放水路の機能を兼ね備えている。
【0021】
加熱装置140は、水道管から供給される水道水を加熱して温水を生成する装置である。なお、加熱装置140の種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、加熱装置140は、水道管から供給される水道水を瞬時に加熱する熱交換器である。加熱装置140は、加熱装置140で加熱された水の温度を均一にするバッファータンク141を一体に備えている。
【0022】
流調弁186は、制御装置109によってノズル110への水の供給量を制御する弁である。
【0023】
図3は、ノズル110の外観を示す斜視図である。図4は、ノズル110を図3に示すA-A線で仮想的に切断した状態を示す断面図である。ノズル110は、便座190に着座した人体の局部に向かって加熱装置140によって加熱された温水を吐出するノズルであって、第一流路111と、噴射口112と、方向変更部114と、戻りループ流路115と、第二流路116と、を備えている。
【0024】
主流路121の上流側の第一端に位置する入水口118を通ってノズルの内部に水が供給され主流路121を流れて下流側の第二端に位置する分岐部117に到達した水は、分岐部117で分岐され第一水301、第二水302となる。上流側の第一端に分岐部117が位置する第一流路111は、第一水301が流れる水路である。第一流路111の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態の場合、第一水301の流れの方向が略90度変わるように緩やかに湾曲している。第一水301の流れの方向を法線として有する断面における第一流路111の断面形状も、限定されるものでは無いが、本実施の形態の場合、矩形が採用されている。なお、断面形状は、円形などでも構わない。第一流路111および第二流路116を含め、本明細書において、水が流れる流路の断面形状は限定されない。一例として、当該断面形状は矩形または円形であってもよい。
【0025】
第一流路111の下流側の第二端に位置する第一吐出口119は、第一流路111を通過した第一水301が吐出される開口部である。第一吐出口119の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、第一流路111の断面形状を踏襲した矩形である。第一流路111は、分岐部117から第一吐出口119に向かう方向に断面積が減少している第一絞り部391を備える。具体的に第一絞り部391は、第一吐出口119の図中Y軸方向の長さを一定に維持する一方で、第一吐出口119の図中X軸方向の長さを第一吐出口119に向かって徐々に短くすることにより断面積を減少させている。第一絞り部391により、第一流路111を通過する際の第一水301の流速より第一吐出口119から吐出される際の第一水301の流速の方が速く(すなわち、大きく)なっている。また、第一吐出口119から吐出される際の流速は、後述の第二吐出口120から吐出される際の第四水304の流速よりも早い。
【0026】
噴射口112は、主流路121を通過して分岐部117で分岐された水の他方である第二水302が流れる分岐水路122の下流側の第二端に位置する開口であり、第二水302が噴射される噴射空間部123に向かって開口している。噴射口112の吐出面102の法線112n(すなわち、図4においてその一端に矢印を有する直線)は、戻りループ流路入口104の入口面105と交差している。分岐水路122の上流側の第一端には流入口126、および分岐部117が位置している。本実施の形態の場合、流入口126は、分岐部117から分岐水路122に向かう方向に断面積が減少している第二絞り部392を備える。第二絞り部392は、分岐水路122に連通しており、主流路121から分岐した第二水302の流速を早めている。
【0027】
噴射空間部123は、噴射口112から噴射された第二水302が飛ぶように流れる空間を形成する部分である。本実施の形態の場合、噴射空間部123は、幅方向(図中Y軸方向)に向かって配置される内面の少なくとも一方に噴射口112から噴射された第二水302が接触し、第二水302が噴射される方向に垂直な面において幅方向と垂直な方向には第二水302が接触せずに飛ぶことができる内面形状となっている。
【0028】
方向変更部114は、噴射口112から噴射され噴射空間部123内を飛ぶように流れた第二水302が衝突し、噴射空間部123内を流れる第二水302の方向を戻りループ流路115に向かう方向に変更して第三水303とする部分である。なお、第二水302と第三水303は流れる方向が異なるが、一連の水の流れである。本実施の形態の場合、方向変更部114は、第二水302が衝突する部分に対し戻りループ流路115側から衝突部分を超えて反対側に至るまで徐々に第二水302の上流側に向かうように湾曲、または傾斜している。本実施の形態の場合、方向変更部114は湾曲した板面状であり、湾曲面の接線が第二水302の流れの方向に対してわずかに傾くように配置されている。方向変更部114は、戻りループ流路115の反対側にエッジ部124を備えている。エッジ部124は、戻りループ流路115と第二流路116とを分ける境界部として機能している。
【0029】
戻りループ流路115は、噴射口112から噴射空間部123内に噴射されてから方向変更部114に衝突する前の第二水302と戻りループ流路115を通過した第三水303とが交差するように配置された戻りループ流路吐出口113を端部に有する水路である。本実施の形態の場合、戻りループ流路115は、流れる第三水303の流速が落ちないようになめらかに湾曲したトラック形状(すなわち、長円形状)となっている。戻りループ流路吐出口113は、噴射口112に接しているとみなせる程度の近傍に配置されている。なお、戻りループ流路115の形状は、楕円形、円形などでもかまわない。
【0030】
第二流路116は、戻りループ流路吐出口113から吐出された第三水303により戻りループ流路115から離れるように進路が変更された第二水302と第三水303とが混ざりあった第四水304が流れる水路である。戻りループ流路吐出口113から吐出される第三水303の流れの方向において、第二流路116は、方向変更部114の下流側に配置されている。第二流路116は、上流側の第一端に第四水304を受け入れる受け入れ口125を備え、下流側の第二端に第四水304を吐出する第二吐出口120を備えている。
【0031】
受け入れ口125は、方向変更部114のエッジ部124を挟んで戻りループ流路115と隣接して配置されている。分岐水路122の噴射口112および戻りループ流路入口104を互いに結ぶ第一仮想線331は、戻りループ流路吐出口113および受け入れ口125を互いに結ぶ第二仮想線332と交差している。
【0032】
本実施の形態においては、図4に示されるように、噴射口112の吐出面の法線112nは、戻りループ流路入口104の入口面105と交差している。図12は、本実施の形態には含まれないノズルの断面図である。図12では、噴射口112の吐出面の法線112nは、戻りループ流路入口104の入口面105と交差していない。そのため、図12に示される形態では、第二水302は、噴射口112を通過した後、戻りループ流路115に入らずに第二流路116に流れる。図12において示される入口面105の位置は、図4において示される入口面105の位置と異なることに留意せよ。
【0033】
第三水303によって飛翔方向が変更されていない第二水302の少なくとも一部(望ましくは当該第二水302のすべて)は、すべて方向変更部114に衝突する。これにより効率よく戻りループ流路115内に第二水302が進入する。
【0034】
第二吐出口120は、第一吐出口119から吐出される第一水301と第四水304とが合流するように第一吐出口119に隣接して配置されている。第二吐出口120は、第二流路116を通過する第四水304の下流に向かって(すなわち、後述される合流吐出口127に向けて)徐々に断面積が大きくなっている拡張部393を具備する。具体的には、拡張部393では、第二吐出口120の図中Y軸方向の長さは一定である一方で、第二吐出口120の図中X軸方向の長さが徐々に長くなっている。言い換えれば、拡張部393では、受け入れ口125から第二吐出口120に向けて徐々に断面積が大きくなっている。これにより、第二流路116を通過する際の第四水304の流速より第二吐出口120から吐出される際の第四水304の流速の方が遅くなっている。また、第二吐出口120から吐出される際の第四水304の流速は、第一吐出口119から吐出される際の第一水301の流速よりも遅い。
【0035】
本実施の形態の場合、ノズル110は、第一吐出口119から吐出される第一水301、および第二吐出口120から吐出される第四水304を合流させて吐出する合流吐出口127を備えている。これにより合流した第一水301と第四水304との吐出方向が安定する。
【0036】
次に、ノズル110から吐出される水によって空間中における断続的な水流が生成される様子を図5図9を用いて順を追って説明する。図5に示すように、第一段階においては、入水口118から入水した水は、分岐部117で分岐して第一水301となり、第一流路111を通過して連続的に第一吐出口119から加速されながら吐出される。
【0037】
一方、第一段階においては、分岐部117で分岐した第二水302は、図6に示すように、流入口126で加速しながら分岐水路122を通過し、噴射口112から噴射空間部123の内側に噴射される。
【0038】
次に、第二段階においては、方向変更部114に衝突した第二水302は、図7に示すように戻りループ流路115に入水し、第三水303が戻りループ流路115を満たしていく。さらに、第三段階においては、戻りループ流路115が満たされると、図8に示すように、噴射口112から噴射される第二水302は、戻りループ流路吐出口113から吐出される第三水303によって方向が変更され、第二水302と第三水303とが混ざりあった第四水304が受け入れ口125に入水する。
【0039】
最後に、第四段階においては、受け入れ口125から入水した第四水304は、図9に示すように第二吐出口120から第一吐出口119から吐出される第一水301よりも遅くなるように減速されながら吐出される。第四水304は、戻りループ流路115を満たしていた第三水303が無くなるまで吐出される。
【0040】
一方、戻りループ流路115を満たしていた第三水303が無くなると、図6に示されるように、噴射口112から噴射空間部123の内部に噴射された第二水302は、方向変更部114に衝突して方向を変え、第三水303として戻りループ流路115を満たしていく。
【0041】
以上の第一段階から第四段階までが繰り返されることにより、第一水301が合流吐出口127から吐出され、第四水304は吐出されない第一状態と、第一水301と第四水304とが共に合流吐出口127から吐出される第二状態とが交互に繰り返される。
【0042】
図10は、ノズルから吐出された空間中の水流の第一状態を示す図である。図11は、ノズルから吐出された空間中の水流の第二状態を示す図である。これらの図に示される第一飛翔水311は、第一水301のみが合流吐出口127から空気中に吐出された第一状態の水である。第二飛翔水312は、第一水301と第四水304とが共に合流吐出口127から吐出された第二状態の水である。第一飛翔水311の流速は、第二飛翔水312の流速よりも早い。これにより、図11に示すように、第一飛翔水311は後続の第二飛翔水312から離れ、先行する第二飛翔水312と合わさって水塊となり断続的な水流となる。
【0043】
上記実施の形態で説明したノズル110を備えた衛生洗浄装置100によれば、機械的動作を要することなく流速の異なる水を交互に吐出し、断続的に飛ぶ水滴を空間中で形成させることができる。これにより、水道水を連続的に加熱しながら人体の局部に適した温度の水を用い、ポンプを用いることなく断続的に水を局部に噴射することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0045】
例えば、各水路の断面形状、水路の端部に配置される開口の形状は、上記実施の形態において説明した形状に限定されるものではなく、円形などでもかまわない。
【0046】
また、1台の加熱装置140によって生成された温水を分岐部117によって分岐する場合を説明したが、複数台の加熱装置により別々に加熱された第一水301、第二水302を第一流路111と分岐水路122とに別々に供給しても構わない。
【0047】
また、ノズル110の成形方法は特に限定されるものではなく、射出成形や3Dプリンターによる成形などを例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかるノズル、および断続水流生成方法は、衛生洗浄装置に適用できるばかりでなく、断続的に飛翔する水を吐出する装置に利用可能である。
【0049】
上記の開示内容から導出される発明が、以下、記述される。
【0050】
1.着座した人体の局部に向けて水を吐出するノズル110を具備する衛生洗浄装置100であって、
前記ノズル110は、
前記ノズル110に供給される水が通過する入水口118、
前記ノズル110の内部に設けられた主流路121、
前記ノズル110の内部に設けられた分岐部117、
前記ノズル110の内部に設けられた第一流路111、
前記ノズルの内部に設けられた第一吐出口119、
前記ノズルの内部に設けられた流入口126、
前記ノズルの内部に設けられた分岐水路122、
前記ノズルの内部に設けられた噴射口112
前記ノズルの内部に設けられた戻りループ流路115、
前記ノズルの内部に設けられた噴射空間部123、
前記ノズルの内部に設けられた受け入れ口125、
前記ノズルの内部に設けられた第二流路116、
前記ノズルの内部に設けられた第二吐出口120、および
前記ノズルの外周面に設けられた合流吐出口127
を具備し、
前記主流路121の第一端に前記入水口118が設けられており、
前記主流路121の第二端に前記分岐部117が位置しており、
前記入水口118を通って前記ノズル110の内部に水が供給され、
前記入水口118を通過した水は、前記主流路121を流れ、前記分岐部117に到達し、
前記第一流路111の第一端に前記分岐部117が位置しており、
前記第一流路111の第二端に前記第一吐出口119が位置しており、
前記分岐部117に到達した水の一部は、第一水301として前記第一流路111に流れるように分岐し、
前記第一流路111は、前記分岐部117から前記第一吐出口119に向かう方向に断面積が減少している第一絞り部391を有しており、
前記第一水301の流速が、前記第一絞り部391により増加された状態で前記第一水301は前記第一吐出口119から吐出され、
前記分岐水路122の第一端に前記流入口126および前記分岐部117が位置しており、
前記分岐水路122の第二端に前記噴射口112が位置しており、
前記分岐部117に到達した水の一部は、第二水302として前記分岐水路122に流れるように分岐し、
前記流入口126は、前記分岐部117から噴射口112に向かう方向に断面積が減少している第二絞り部392を有しており、
前記第二水302の流速が前記第二絞り部392により増加された状態で前記第二水302は前記噴出口112から噴出され、
前記噴射空間部123は、前記戻りループ流路115と一体的に形成されており、
前記第二流路116の第一端に前記受け入れ口125が位置しており、
前記第二流路116の第二端に前記第二吐出口120が位置しており、
前記戻りループ流路115は、戻りループ流路入口104および戻りループ流路吐出口113を有しており、
前記噴射口112の吐出面の法線112nは前記戻りループ流路入口104の入口面と交差しており、
前記噴射口112および前記戻りループ流路入口104を互いに結ぶ第一仮想線331は、前記戻りループ流路吐出口113および前記受け入れ口125を互いに結ぶ第二仮想線332と交差し、
前記噴出口112から噴出された前記第二水は、前記噴射口112の吐出面の前記法線112nに平行な方向に進み、前記戻りループ流路入口104の入口面を通って前記戻りループ流路115に第三水303として入り、
前記戻りループ流路115に入った前記第三水303は、前記戻りループ流路吐出口113から前記噴射空間部123に吐出され、
前記前記戻りループ流路吐出口113から前記噴射空間部123に吐出された前記第三水303は、前記受け入れ口125を通って第四水304として前記第二流路116に流れ、
前記第二流路116は、前記受け入れ口125から前記第二吐出口120に向けて断面積が増加する拡張部393を有しており、
前記第四水304の流速が前記拡張部393により減少された状態で前記第四水304は前記第二吐出口120から吐出され、
前記第一吐出口119から吐出される前記第一水301の流速は、前記第二吐水口120から吐出される前記第四水304の流速よりも大きく、かつ
前記合流吐出口127は、前記第一吐出口119および前記第二吐出口120に連通しており、
前記衛生洗浄装置100では、動作中には、すなわち、水が前記入水口118を介して前記ノズル110に供給されている間には、
前記第一吐出口119から吐出された前記第一水301は前記合流吐出口127から吐出されるが、前記第四水304は吐出されない第一吐出状態、および
前記第一吐出口119から吐出された前記第一水301および前記第二吐出口120から吐出された前記第四水304が互いに合流し、一体的に前記合流吐出口127から吐出される第二吐出状態
が繰り返される。
【符号の説明】
【0051】
100 衛生洗浄装置
102 吐出面
104 戻りループ流路入口
105 入口面
109 制御装置
110 ノズル
111 第一流路
112 噴射口
112n 法線
113 戻りループ流路吐出口
114 方向変更部
115 戻りループ流路
116 第二流路
117 分岐部
118 入水口
119 第一吐出口
120 第二吐出口
121 主流路
122 分岐水路
123 噴射空間部
124 エッジ部
125 受け入れ口
126 流入口
127 合流吐出口
140 加熱装置
141 バッファータンク
180 水回路
181 給水接続口
182 ストレーナ
183 止水電磁弁
184 減圧弁
185 バキュームブレーカ
186 流調弁
187 分岐部材
188 通気管
190 便座
200 便器
301 第一水
302 第二水
303 第三水
304 第四水
311 第一飛翔水
312 第二飛翔水
331 第一仮想線
332 第二仮想線
391 第一絞り部
392 第二絞り部
393 拡張部
500 ノズル本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12