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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079018
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】生体情報収集プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192406
(22)【出願日】2021-11-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靱化事業(術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発)」、「スマート治療室における患者情報統合モニター上にデータ表示可能な、外科医の指先や鏡視下手術鉗子ならびにロボットアーム先端に装着可能な小型組織オキシメーター温度センサーの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】592242257
【氏名又は名称】株式会社アステム
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】海野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】庭山 雅嗣
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KY01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、測定対象部位を透過した光を適切に受光することが可能な生体情報収集プローブを提供する。
【解決手段】 測定対象部位を透過した光を収集して生体情報を取得する際に用いられる生体情報収集プローブ1であって、光源部20と、第1受光部31と、光源部20と第1受光部31が並ぶ方向である配置方向に第1受光部31と並んで配置された第2受光部32と、装着面12を備えるとともに、光源部20、第1受光部31、及び第2受光部32を少なくとも収容する筐体部10を備え、筐体部10は、受光カバー部14を備え、受光カバー部14は、受光カバー部14の所定領域に入射した光が、所定領域と配置方向に隣接する他の領域から出射することを妨げる阻害部43を備えている生体情報収集プローブ1。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象部位を透過した光を収集して生体情報を取得する際に用いられる生体情報収集プローブであって、
前記測定対象部位に向かって光を照射する光源部と、
前記光源部から所定の距離だけ離れた位置に配置された第1受光部と、
前記光源部と前記第1受光部が並ぶ方向である配置方向に前記第1受光部と並んで配置された第2受光部と、
前記生体情報を収集する際に前記測定対象部位の側を向く装着面を備え、前記光源部、前記第1受光部、及び前記第2受光部を少なくとも収容する筐体部を備え、
前記筐体部は、
前記装着面の前記第1受光部と前記第2受光部に対応する位置に配置され、前記測定対象部位の側からの光の少なくとも一部を透過する受光カバー部を備え、
前記受光カバー部は、
前記受光カバー部の所定領域に入射した光が、前記所定領域と前記配置方向に隣接する他の領域に透過することを妨げる阻害部を備えている、
生体情報収集プローブ。
【請求項2】
前記阻害部は、
光の透過を妨げる複数の光透過阻害層から構成され、
前記光透過阻害層のそれぞれは、前記受光カバー部の前記装着面の側の表面と前記表面とは反対側の裏面との間を、前記表面、及び前記裏面と交わる方向に延びるとともに、前記配置方向と交わる方向に並んで延びている、
請求項1に記載の生体情報収集プローブ。
【請求項3】
前記光透過阻害層は、遮光素材から構成されている、
請求項2に記載の生体情報収集プローブ。
【請求項4】
前記受光カバー部は、所定の絶縁性能を備えた絶縁素材から構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の生体情報収集プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報の収集に用いて好適な生体情報収集プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、組織の代謝情報などを収集することを目的として、光源から照射され測定対象組織を透過した光を受光して、生体情報を収集する生体情報収集装置が知られている。また、特許文献1には、そのような生体情報収集装置を用いて、心筋などの組織の代謝情報を、心外膜側から直接測定することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-234737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近赤外線などの光を用いて生体情報を収集するプローブでは、光源部と、二つの受光部を備えた構成のプローブが知られている。このような構成のプローブにおいて、受光部は、光源部から所定の距離だけ離れた位置にそれぞれ配置されている。そして、この受光部が受光した光に関する情報に基づいて、生体情報が算出される。
【0005】
上記のように構成されたプローブを用いて例えば心筋などの患者の臓器の組織の生体情報を直接収集する場合には、プローブは、患者の血液や体液、あるいは粘膜などに直接触れることになる。このためプローブの外装は、血液などの液体がその内部に侵入することのないように密封されている必要がある。更に、電気的な安全性の観点から、この外装は、所定の絶縁性を備えている必要がある。即ちこの外装は、測定のために必要となる光を透過する部分を備える一方、この光を透過する部分を含む外装全体が、所定の絶縁強度を備えた素材にて構成されている必要がある。即ち、プローブの外装は、その全体が外側からの光の影響を防ぐ、絶縁性を有する遮光性の素材から構成されている一方、光源部や受光部に対応する部分には、光を透過する絶縁性のカバーが設けられている必要がある。
【0006】
一方、上記のような光を透過する絶縁性のカバーを受光部に対応する部分に配置した場合には、入射した光の一部が、カバーの内部にて散乱し、正確な測定が妨げられるという問題がある。具体的には、受光部に向かって入射された光の一部が、屈折や反射によってカバーの内部を散乱し、迷光として生体情報の収集に好ましくない影響を及ぼすという問題がある。即ち、受光部が、迷光によって不要な光を受光することになり、正確な生体情報を取得することが難しくなってしまうという問題がある。
近赤外線などの光を用いた生体情報の測定方法として、特許第5062698号に開示されているような方法(空間分解法)を利用すると精度のよい測定が可能となるが、このような測定方法の場合には、特に、迷光が問題となる。空間分解法では、空間的な光量の差異から光学特性値が算出されており、差異が小さくなれば小さな吸収係数として算出される。多重反射による迷光は光量の差異を減少させ、空間分解法での定量性に悪影響を及ぼすためである。
【0007】
本開示の一局面は、簡易な構成で、正確な生体情報の収集が可能な生体情報収集プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、以下の手段を提供する。
本開示の生体情報収集プローブは、測定対象部位を透過した光を収集して生体情報を取得する際に用いられる生体情報収集プローブであって、前記測定対象部位に向かって光を照射する光源部と、前記光源部から所定の距離だけ離れた位置に配置された第1受光部と、前記光源部と前記第1受光部が並ぶ方向である配置方向に前記第1受光部と並んで配置された第2受光部と、前記生体情報を収集する際に前記測定対象部位の側を向く装着面を備え、前記光源部、前記第1受光部、及び前記第2受光部を少なくとも収容する筐体部を備え、前記筐体部は、前記装着面の前記第1受光部と前記第2受光部に対応する位置に配置され、前記測定対象部位の側からの光の少なくとも一部を透過する受光カバー部を備え、前記受光カバー部は、前記受光カバー部の所定領域に入射した光が、前記所定領域と前記配置方向に隣接する他の領域に透過することを妨げる阻害部を備えている。
【0009】
上記の生体情報収集プローブによれば、装着面の第1受光部と第2受光部に対応する位置に配置された受光カバー部に阻害部が設けられている。この阻害部は、受光カバー部の所定の領域に入射した光が、配置方向に隣接する他の領域に透過することを阻害する。このため、受光カバー部における迷光の影響が抑制され、第1受光部、及び第2受光部は、それぞれに対応する箇所からの光を適切に受光できるようになる。
【0010】
上記の開示においては、前記阻害部は、光の透過を妨げる複数の光透過阻害層から構成され、前記光透過阻害層のそれぞれは、前記受光カバー部の前記装着面の側の表面と前記表面とは反対側の裏面との間を、前記表面、及び前記裏面と交わる方向に延びるとともに、前記配置方向と交わる方向に並んで延びていることが好ましい。
【0011】
このようにすることにより、受光カバー部の所定の領域に入射した光が、配置方向に隣接する他の領域に透過することが防がれる。このため、第1受光部、及び第2受光部は、それぞれに対応する箇所からの光をより適切に受光できるようになる。
【0012】
上記の開示においては、前記光透過阻害層は、遮光素材から構成されていることが好ましい。
このようにすることにより、受光カバー部の所定の領域に入射した光のうち、屈折や散乱して配置方向に隣接する他の領域に向かう光は、光透過阻害層によって遮光される。このため、受光カバー部の所定の領域に入射した光が、配置方向に隣接する他の領域に透過することが防がれ、第1受光部、及び第2受光部は、それぞれに対応する箇所からの光を適切に受光できるようになる。
【0013】
上記の開示においては、前記受光カバー部は、所定の絶縁性能を備えた絶縁素材から構成されていることが好ましい。
このようにすることにより、電気的な安全性の確保された生体情報収集プローブとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記の生体情報収集プローブによれば、簡易な構成で、測定対象部位を透過した光を適切に受光することが可能な生体情報収集プローブを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、生体情報プローブを、装着面とは反対の側から見た外観図である。図1(b)は、生体情報プローブを装着面の側から見た外観図である。
図2】生体情報プローブの装着面を説明する図である。
図3】生体情報プローブの構成を説明する図である。
図4】生体情報プローブの構成を説明する図である。
図5】従来の受光カバー部を説明する図である。
図6】試験の結果を説明する図である。
図7】生体情報プローブの他の外装の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この開示の生体情報収集プローブの一例について、主に図1から図7を参照しながら説明する。以降の説明において、前後、左右、上下の方向は、特に断りのない限りそれぞれ図中に示す方向とする。
【0017】
各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示は、各図に付された方向に限定されない。また、斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0018】
1.構成の説明
本開示の一例にかかる生体情報収集プローブ1は、生体の測定対象部位に近赤外線を照射して、測定対象部位を透過した光を受光して、生体情報の算出に用いられる信号を出力するものである。具体的に生体情報収集プローブ1は、患者の測定対象部位の組織酸素飽和度の測定に用いられるプローブである。生体情報収集プローブ1から出力された信号は、図示されていない生体情報収集装置に入力され、測定対象部位の組織酸素飽和度の算出に用いられる。なお生体情報収集プローブ1は、動物やその他の組織の酸素飽和度の測定に用いられてもよい。
【0019】
生体情報収集プローブ1は、筐体部10と、光源部20、及び光学情報取得部30を主に備えている。筐体部10は、光源部20、光学情報取得部30、及び図示されていない電池やその他の部品をその内側に収容する略直方形の外装である(図1(a)参照。)。以降において筐体部10の、光源部20や光学情報取得部30などの部品が収容されている側を「内側」と、その反対側を「外側」とも記載する。
【0020】
筐体部10は、ポリカーボネートなど、所定の絶縁性を有した非導電性素材であって、光を透過しない遮光性の素材から主にできている。生体情報の測定を行う際に測定対象部位の側を向く筐体部10の面が、装着面12である(図1(b)参照。)。筐体部10は、血液や体液などの液体がその内側に浸入することのないように密封されている。
【0021】
光源部20は、測定に用いられる所定の波長の光を照射する部分である(図2図3参照。)。なお、図3においては、説明のために実際とは異なる比率や間隔で図面を記載している。以降の図4、5等においても同様である。
【0022】
光学情報取得部30は、主に測定対象部位を透過した光を受光して、生体情報の測定に用いられる信号である光学情報を出力する部分である(図2図3参照。)。本実施形態において光学情報取得部30からの光学情報は、所定の規格に従った無線信号によって、図示されていない生体情報収集装置に送信される。なお、光学情報は、有線やその他の手段によって生体情報収集装置に送信されてもよい。
【0023】
光源部20と光学情報取得部30は、所定の間隔をあけて基板16の装着面12の側に配置されている。光源部20と光学情報取得部30の間には、遮光部材15が設けられており、光源部20から照射された光が、直接、光学情報取得部30に入射されることが防がれている(図3参照。)。
【0024】
光源部20は、近赤外線の光を発光するLED21を備えている。LED21は、光を発光する発光面22が、装着面12の側を向くようにして配置されている。光学情報取得部30は、その装着面12の側に、受光部31と受光部32が配置されている(図3参照。)。
【0025】
受光部31は、その受光面33に入射された光に応じた電気信号を出力するフォトダイオードである。受光部32は、その受光面34に入射された光に応じた電気信号を出力するフォトダイオードである。即ち受光部31,32は、受光した光に応じた信号を出力する受光素子である。受光部31,32は、受光した光に応じた信号を出力するその他の素子や部品などが用いられてもよい。
【0026】
受光部31は、LED21から所定の距離だけ離れた位置に配置されている。受光部32は、所定の間隔を空けて受光部31と並んで配置されている。具体的に説明を行うと、受光部32は、受光部31とLED21が並ぶ方向に、受光部31と並んで配置されている。以降において、受光部31とLED21が並ぶ方向、即ち受光部31と光源部20が並ぶ方向を、「配置方向」とも記載する(図2図3参照。)。
【0027】
換言すれば、光学情報取得部30は、受光部31と受光部32が、LED21と同一の線上に並ぶとともに、LED21と受光部31との間、及びLED21と受光部32との間のそれぞれが、所定の距離となるように配置され、基板16に固定されている。本実施形態において受光部32は、受光部31よりもLED21に近い側に配置されているが、受光部31よりもLED21から遠い側に配置されていてもよい。
【0028】
装着面12の、光源部20に対応する部分に、光源カバー部13が設けられている(図2図3参照。)。光源カバー部13は、所定の厚さの略長方形の板材であり、少なくともLED21の発光面22を覆うように、装着面12の光源部20に対応する部分に配置され、装着面12に固定されている。本実施形態では、装着面12の光源部20に対応する部分に、光源部20に対応する大きさの略長方形の穴が設けられ、その穴に光源カバー部13がはめ込まれて固定されている。光源カバー部13は他の手段によって装着面12に固定されていたり、あるいは装着面12に設けられていたりしてもよい。
【0029】
光源カバー部13は、LED21から照射される光を透過する性質を有すると共に、所定の絶縁性を備えた絶縁素材からできている。本実施形態では、光源カバー部13は、その厚さが約1[mm]の透明なポリカーボネート製の板材である。なお光源カバー部13は、測定に用いられる光を透過するとともに、所定の絶縁性を備えていれば、他の素材が用いられてもよく、その材質や厚さや形状が上記に限定される訳ではない。
【0030】
装着面12の、光学情報取得部30に対応する部分に、受光カバー部14が設けられている(図2図3参照。)。受光カバー部14は、絶縁素材から構成された薄板状の板材が、長方形に加工されたものであり、装着面12の光学情報取得部30の受光部31,32に対応する領域に、少なくとも受光部31,32の受光面33,34を覆うようにして配置されている。受光カバー部14は、所定の絶縁性を有するように、一定以上の厚さの板材が用いられている。本実施形態において受光カバー部14は、0.4[mm]以上の厚さを有する板材が用いられている。具体的には、約0.423[mm]の厚さの板材が用いられている。なお、所定の絶縁性を確保できれば、受光カバー部14の厚さは、上記に限定される訳ではない。
【0031】
本実施形態では、装着面12の光学情報取得部30に対応する部分に、光学情報取得部30に対応する大きさの長方形の穴が設けられ、受光カバー部14がはめ込まれて装着面12に固定されている。受光カバー部14は他の手段によって装着面12に固定されていたり、あるいは装着面12に設けられたりしてもよい。
【0032】
受光カバー部14は、光を透過する薄板状の複数の光透過部42と、受光カバー部14の内部の光の散乱によって生じる迷光を阻害する阻害部43を備えている。阻害部43は、光の透過を妨げる複数の光透過阻害層41から構成されており、光透過阻害層41は、光透過部42のそれぞれの間にスリット状に配置されている(図3図4参照。)。
【0033】
より具体的に説明を行うと、光透過部42は、光を透過する薄板状の素材からできており、それぞれが略同一の大きさの細長い長方形をしている。本実施形態において光透過部42は、透明なポリカーボネート素材からできている。光透過部42は、測定に用いられる光を透過する他の素材からできていてもよい。光透過部42は、それぞれの長手方向の辺が隣接するようにして配置方向と同じ向きに並んでいる。
【0034】
光透過阻害層41は、光の透過を阻害する薄膜であり、受光カバー部14の装着面12の側の表面と、内側の裏面のそれぞれの面と交わる向きで、光透過部42のそれぞれの間に配置されている。また光透過阻害層41は、光透過部42の長手方向、即ち配置方向と交わる方向に延びている。即ち、光透過阻害層41は、光透過部42のそれぞれの間に配置され、配置方向に交わる方向にスリット状に延びている(図3図4参照。)。
【0035】
換言すれば、受光カバー部14は、光透過部42が並ぶ方向が、配置方向と同じ向きになるようにして、装着面12に配置されている。即ち、光透過阻害層41が延びる向きが、配置方向と略直交するように受光カバー部14は配置されている。
【0036】
本実施形態において光透過阻害層41は、薄膜状に加工されたシリコン素材である。光透過阻害層41は、所定の光透過部42に入射した光が、隣接する他の光透過部42に透過することを阻害するものであれば、上記とは異なる素材からできた薄膜であってもよい。
【0037】
このように光透過阻害層41が光透過部42の間に配置されると、光透過阻害層41の一方の側の光透過部42に入射された光が、その反対の側の光透過部42に透過することが防がれる。即ち、光透過阻害層41の一方の側の光透過部42の表面から入射した光が、その反対の側に配置された光透過部42に透過して、その裏面から出射されてしまうことが防がれる。
【0038】
2.作用の説明
次に、上記のように構成された生体情報収集プローブ1の作用について、その使用方法に従って説明を行う。
【0039】
測定を行うために、使用者が生体情報収集プローブ1を測定対象部位の表面に配置する。具体的には、測定が行われる患者の組織の表面に、装着面12を接触させるようにして生体情報収集プローブ1を配置する。以降において、装着面12が接触する測定対象部位の面を「装着部位」とも記載する。
【0040】
測定が開始されると、図示されていない生体情報収集装置による制御に従って光源部20が近赤外線を照射する。具体的には、LED21が発光し、装着部位に向かって所定の波長の近赤外線を照射する。LED21の発光面22からの光は、光源カバー部13を透過し、装着部位から測定対象部位に向かって照射される。
【0041】
測定対象部位を透過した光は、装着部位から受光カバー部14を透過して受光部31、及び受光部32にそれぞれ入射される。具体的には、測定対象部位を透過して、装着部位の受光部31に対応する部分を透過した光が、受光部31の受光面33に入射される。また、装着部位の受光部32に対応する部分を透過した光が、受光部32の受光面34に入射される。以降において、受光部31,32に対応する位置の装着部位の部分から受光カバー部14の表面に略直交して受光面33,34に向かう光の向きを「受光方向」とも記載する。
【0042】
一方、装着部位の他の部分を透過した光も受光部31,32に向かって受光カバー部14に入射される。即ち、受光方向とは異なる向きの光も、受光カバー部14に入射される。そのような光の一部は、受光カバー部14に入射されると、屈折や反射によって、受光カバー部14の内部で散乱する。また、装着部位と装着面12の接触状況によっては、受光方向の光も、受光カバー部14にて屈折して受光カバー部14の内部で散乱することもある。例えば、装着部位と受光カバー部14との間に血液や体液などが挟まれていた場合には、受光部31や受光部32に対応する位置の装着部位からの受光方向の光も受光カバー部14にて屈折したり散乱したりする。
【0043】
この受光カバー部14に、通常の透明素材を用いた場合には、受光カバー部14の内部を散乱する迷光の影響により、正確な生体情報の収集が妨げられてしまう。具体的に説明すると、受光方向とは異なる向きで受光カバー部14に入射された光や、装着部位と受光カバー部14との接触状態によって受光カバー部14に屈折して入射された光の一部は、受光カバー部14の内部にて散乱して迷光となる。この迷光は、光学情報取得部30による光学情報の収集に悪影響を及ぼしてしまう(図5参照。)。即ち、上記のように生じた迷光によって、本来入射されるべきではない光が、受光面33,34に入射されることになるため、受光部31,32が、対応する位置の装着部位からの光を適切に受光することが難しくなってしまう。
【0044】
本実施形態の生体情報収集プローブ1では、上記のような迷光は、阻害部43によって遮光される。図4を参照して、受光部32を例に具体的に説明を行うと、特定の光透過部42bに入射された光のうち、受光方向の光は、そのまま光透過部42bを透過して、受光面34に入射する。
【0045】
一方、受光方向とは異なる向きで光透過部42bに入射された光や、光透過部42bに入射される際に屈折した光は、光透過部42bの両側の光透過阻害層41aや光透過阻害層41bにて遮光される。即ち、光透過部42bに入射される際に生じた迷光が、光透過部42bと隣接する光透過部42aや光透過部42cに透過して、それぞれの内側の面から出射されることが防がれる。換言すれば、光透過阻害層41によって特定の光透過部42に入射された光が、隣接する他の領域である他の光透過部42に透過することが阻害される。
【0046】
このため、受光カバー部14の内部にて散乱した迷光は、受光面33や受光面34に入射されなくなり、測定対象部位を透過した光を正確に受光できるようになって正確な組織酸素飽和度の測定が行えるようになる。
【0047】
3.試験の結果の説明
以降において、本実施形態の生体情報収集プローブ1と、阻害部43を備えていない通常の光透過性の素材からできたカバーにて光学情報取得部30が覆われたプローブの性能比較試験の結果を説明する。以降において、生体情報収集プローブ1の比較対象となる上記のプローブを「従来プローブ」とも記載する。
【0048】
本試験では、生体情報収集プローブ1と従来プローブを用いてファントムの測定を複数回行い、その測定値のばらつきを比較した。生体情報収集プローブ1は、異なる5つのプローブを用いて、それぞれ測定を5回ずつ行った。従来プローブは、単一のプローブによって、5回の測定を行った。
【0049】
測定の結果を図6(a)、図6(b)に示す。
図6(a)に示されているように、従来プローブでは、その測定値に大きな変動が見られた。具体的には、その測定値が理想的な値から5~10%低下した値となった測定が複数回存在した。
【0050】
一方、生体情報収集プローブ1では、図6(b)に示すように、何れのプローブによる測定も安定した測定値を示した。即ち、従来のプローブは、適切な測定値を安定的に得えられていない一方、生体情報収集プローブ1では、いずれも安定した測定値が得られている。
【0051】
このことから、従来のプローブでは、迷光の影響を受けて測定対象部位からの光を適切に受光することができていないと考えられる。一方、生体情報収集プローブ1では、そのような迷光の影響が阻害部43、即ち光透過阻害層41によって阻害されるため、測定対象部位からの光が適切に受光され、正確な測定が安定して行うことができると考えられる。
【0052】
4.効果の説明
上記の生体情報収集プローブ1によれば、受光カバー部14に設けられた阻害部43によって、受光カバー部14の所定領域に入射した光が、配置方向に隣接する他の領域に透過することが防がれる。例えば、受光部31に対応する位置にある装着部位から照射され、受光部31に入射される筈の光が、受光カバー部14の内部にて散乱し、迷光として受光部32に入射されてしまうことが防がれる。あるいは、受光部32に対応する位置にある装着部位から照射され、受光部32に入射される筈の光が、受光カバー部14の内部にて散乱し、迷光として受光部31に入射されてしまうことが防がれる。このため、測定対象部位からの光を正確に受光することができるようになり、正確な生体情報の収集を行うことができる。
【0053】
なお、受光部31と受光部32との間に遮光性のある素材から構成された遮光板を設けることでも、上記のような迷光の影響を防ぐことはできる。しかしながら、そのような遮光板を受光部31と受光部32との間に設けると、生体情報収集プローブ1の構成が複雑になるとともに、プローブを小型化することが難しくなってしまう。一方、本実施形態の生体情報収集プローブ1では、受光カバー部14の内部に阻害部43が設けられているため、その構成は簡易であり、その小型化も容易である。また、受光部31と受光部32の間隔が狭く、その間に遮光板を設けることが難しい場合でも、受光カバー部14の阻害部43によって、迷光の影響を防ぐことができる。
【0054】
また、筐体部10は、絶縁性を有した非導電性素材から構成され、液体がその内側に浸入することのないように密封されている。このため、例えば生体情報収集プローブ1を手術において用いたとしても、血液や体液などがその内部に侵入してしまうことが防がれ、故障や不具合の発生が防止される。また、患者に対する電気的な安全性が確保された状態で生体情報収集プローブ1を使用することができる。
【0055】
更に阻害部43は、平行に並んで配置された複数の光透過阻害層41から構成されている。このため、受光部31,32に対応する位置の装着部位からの光が、それぞれ正確に受光面33,34に入射される。即ち、受光部31,32は、対応する装着部位からの光を正確に受光することができるため、生体情報収集プローブ1は、正確な生体情報の収集を行うことができる。更に光透過阻害層41は薄膜状の板材であるため、受光部31と受光部32の間隔が狭い場合であっても、迷光の影響を有効に防ぐことができる。
【0056】
更に光透過阻害層41は、遮光素材から構成されている。このため、受光カバー部14の内部における迷光の影響がより一層低減され、受光部31,32に対応する位置の装着部位からの光がより正確に受光面33,34に入射される。このため、受光部31,32は対応する装着部位からの光を正確に受光することができるため、生体情報収集プローブ1は、正確な生体情報の収集を行うことができる。
【0057】
更に受光カバー部14は、所定の絶縁性能を備えた絶縁素材から構成されている。即ち、所定の電気的な安全性の要件を満たす生体情報収集プローブ1とすることができ、手術などにおいて生体情報の測定を行うために用いる場合であっても、患者に対する電気的な安全性を確保することができる。
【0058】
<変形例>
以降において、本実施形態の変形例について説明をおこなう。本変形例の生体情報収集プローブ1Aは、上記の実施形態とは筐体部10の形状が相違する。以降では、上記の実施形態と相違する部分について主に説明を行い、同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
本変形例の生体情報収集プローブ1Aは、内視鏡手術の際に、鉗子などの器具の先端に固定して、例えば腹腔の内部の組織の組織酸素飽和度の測定に用いられるものである。本実施形態の筐体部10Aは、図7に示すように略円筒形の形状をしている。筐体部10Aの円筒形の側面の一部は平面状に形成されている。この平面状の部分が、装着面12Aである。装着面12Aには、受光カバー部14、及び光源カバー部13が、筐体部10Aの長手方向に並んで配置されている。
【0060】
本実施形態の筐体部10Aは、その円筒形状の直径が、内視鏡手術に用いられるトロカールの内径よりも小さな寸法となるように形成されている。また、筐体部10Aの一方の端部には、鉗子などの器具50の先端部分が差し込まれて固定される取り付け穴17Aが設けられている。即ち、生体情報収集プローブ1Aは、鉗子などの器具50の先端に固定して、トロカールを介して体内に挿入され、体内の組織の生態情報の収集に用いることができるように構成されている。
【0061】
上記のように構成された生体情報収集プローブ1Aであれば、例えば内視鏡手術の際に、追加の切開等を行うことなく、生体情報収集プローブ1Aを用いて体内にある臓器などの組織の生態情報を収集することが可能となる。
【0062】
以上、上記の実施形態では受光カバー部14に、複数の光透過阻害層41がスリット状に設けられている例にいて説明を行ったが、本開示はこれに限定される訳ではない。例えば、受光部31と受光部32の間に相当する位置に、光透過阻害層41が一つだけ設けられた構成としてもよい。このように構成すれば、簡単な構成で、受光部31に対応する位置の装着部位からの光の一部が迷光として受光部32に入射されたり、受光部32に対応する位置の装着部位からの光の一部が迷光として受光部31に入射されたりすることを防ぐことができる。
【0063】
あるいは受光カバー部14に、格子状に配置された複数の光透過阻害層41を設けた構成としてもよい。このようにすれば、受光部31に対応する位置の装着部位からの受光方向の光だけが受光面33に入射され、受光部32に対応する位置の装着部位からの受光方向の光だけが受光面34に入射されるようになる。このようにすると、より正確な測定対象部位の光学情報を収集することができるようになる。
【0064】
また、上記の実施形態では光透過阻害層41が、遮光性を有している場合について説明を行ったが、光透過阻害層41は、一方の側からの光を、他方の側に透過するものでなければ、上記に限定される訳ではない。例えば、光透過阻害層41は、一方の側から入射された光を全反射する性能を有した構成であってもよい。例えば、そのような性能を有した素材から構成された薄膜状の部分であってもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では受光カバー部14が、光透過阻害層41と光透過部42から構成される場合について説明を行ったが、受光カバー部14の構成はこれに限定される訳ではない。たとえば、光透過部42の配置方向の側のそれぞれの側面が、その内部を透過する光が当該側面において光の透過を阻害するように加工されて構成されたものであってもよい。そして、そのように加工された光透過部42が、並んで配置されて受光カバー部14が構成されていてもよい。あるいは、受光カバー部14が所定の光を透過する板材から構成されており、その板材に幅の狭い複数の溝がスリット状に設けられ、当該溝の部分が光の透過を阻害するように加工されていてもよい。
【0066】
光透過阻害層としては、上記の実施例の他に、光学的特性値(屈折率や吸収係数)が異なる層状の材料が用いられてもよい。そして、受光カバー部14が、そのような光透過阻害層が用いられ、所定方向の光を受光面に透過させるように構成された素材が用いられたものであってもよい。このような素材には、例えば、数μmの光ファイバを束にした光学デバイスであるFOP(ファイバオプティックプレート)がある。このFOPのような素材が用いられて受光カバー部14が構成されてもよい。この例のように、「光透過阻害層」という用語には、「光学的特性値(屈折率や吸収係数)が異なる層」も含むものである。
【0067】
本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成もしくは符号を付して説明された構成のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1A…生体情報収集プローブ 10,10A…筐体部
12,12A…装着面 13…発光カバー部 14…受光カバー部
15…遮光部材 16…基板 17A…取り付け穴
20…光源部 21…LED 22…発光面
30…光学情報取得部 31,32…受光部 33,34…受光面
41,41a,41b…光透過阻害層
42,42a,42b,42c…光透過部 43…阻害部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7