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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079034
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】工具システム及びマーカホルダ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/15 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
B25B23/15
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192432
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 尚武
(72)【発明者】
【氏名】江川 正人
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 新三
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC04
3C038DA07
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】被締付部材へのマーキングを容易にする。
【解決手段】工具システム1は、出力軸26と、マーカホルダ4と、を備えている。出力軸26は、先端工具3を回転させる。先端工具3は、被締付部材を覆った状態で被締付部材を締め付ける。マーカホルダ4は、工具離間機構5と、マーカ保持機構7と、を有している。工具離間機構5は、出力軸26の軸方向に沿って先端工具3を被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている。マーカ保持機構7は、軸方向に対して傾斜する方向に沿ってマーカ9が第1位置と第2位置との間で移動可能なようにマーカ9を保持している。第1位置はマーカ9の先端部が締付完了後の被締付部材に接触しない位置である。第2位置はマーカ9の先端部が締付完了後の被締付部材に接触する位置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締付部材を覆った状態で被締付部材を締め付ける先端工具を、動力源からの動力によって回転させる出力軸と、
マーカを保持するマーカホルダと、
を備え、
前記マーカホルダは、
前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている工具離間機構と、
前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持しているマーカ保持機構と、
を有し、
前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置であり、前記第2位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置である、
工具システム。
【請求項2】
前記マーカホルダは、前記被締付部材を覆うように構成されており、
前記工具離間機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っているときに、前記軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されており、
前記マーカ保持機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っている状態で前記マーカが前記第1位置から前記第2位置に移動可能なように前記マーカを保持している、
請求項1に記載の工具システム。
【請求項3】
前記マーカ保持機構は、前記マーカが前記第2位置から前記第1位置へ向かう向きの力を、前記マーカに加えた状態で前記マーカを保持している、
請求項1又は2に記載の工具システム。
【請求項4】
前記マーカ保持機構は、
前記マーカが前記第1位置から前記第2位置へ向かう向きの力を、前記マーカに加える付勢部と、
ロック状態において前記力に逆らって前記マーカを保持し、非ロック状態において前記マーカを開放するロック部と、
を有する、
請求項1又は2に記載の工具システム。
【請求項5】
前記マーカホルダは、前記被締付部材が締め付けられる作業対象の一部を把持する把持部を更に有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の工具システム。
【請求項6】
前記被締付部材は、ねじ軸と嵌合するナットである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の工具システム。
【請求項7】
前記マーカホルダは、前記先端工具が前記ねじ軸の軸方向に沿って移動可能な状態で前記先端工具の少なくとも一部を収容する収容部を更に有し、
前記収容部は、前記ねじ軸の前記軸方向に沿って中空であり、前記先端工具による前記ナットの締付時には前記ナットを覆い、
前記第2位置は、前記マーカホルダが前記ナットから前記ねじ軸の前記軸方向に沿って離れる際に、前記ナットから前記ねじ軸にかけて線状に前記マーカの前記先端部が前記ナット及び前記ねじ軸と接触する位置である、
請求項6に記載の工具システム。
【請求項8】
被締付部材を覆った状態で被締付部材を締め付ける先端工具を動力源からの動力によって回転させる出力軸を備える工具に設けられ、マーカを保持するマーカホルダであって、
前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている工具離間機構と、
前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持しているマーカ保持機構と、
を有し、
前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置であり、前記第2位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置である、
マーカホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に工具システム及びマーカホルダに関し、より詳細には、出力軸を備える工具システム及び工具に設けられるマーカホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被締付部材に締付済みのマークを施すためのマーカと、マーカを設定トルクの解放時に被締付部材に押し付ける駆動装置と、を備えたトルクレンチが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたトルクレンチでは、被締付部材の締付トルクが設定トルクに至ると、駆動装置に駆動信号が送られることにより駆動装置が駆動し、マーカが押し下げられて被締付部材に目印が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-217460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたトルクレンチは、被締付部材(六角穴付きボルト)を覆うことなく締め付ける先端工具(六角ねじ)を用いることを前提としている。特許文献1に記載されたトルクレンチでは、例えば被締付部材を覆って締め付けるソケットビット等の先端工具を用いた場合には、被締付部材が先端工具に覆われているため、被締付部材にマーキングをすることが困難であるという問題があった。
【0006】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、被締付部材を覆う先端工具を用いた場合であっても被締付部材へのマーキングを容易にすることができる工具システム及びマーカホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る工具システムは、出力軸と、マーカホルダと、を備えている。前記出力軸は、先端工具を、動力源からの動力によって回転させる。前記先端工具は、被締付部材を覆った状態で前記被締付部材を締め付ける。前記マーカホルダは、マーカを保持する。前記マーカホルダは、工具離間機構と、マーカ保持機構と、を有している。前記工具離間機構は、前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている。前記マーカ保持機構は、前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持している。前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置である。前記第2位置は前記マーカの前記先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置である。
【0008】
本開示の一態様に係るマーカホルダは、工具に設けられる。前記工具は、出力軸を備える。前記出力軸は、先端工具を動力源からの動力によって回転させる。前記先端工具は、被締付部材を覆った状態で前記被締付部材を締め付ける。前記マーカホルダは、マーカを保持する。前記マーカホルダは、工具離間機構と、マーカ保持機構と、を有している。前記工具離間機構は、前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている。前記マーカ保持機構は、前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持している。前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置である。前記第2位置は前記マーカの前記先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被締付部材を覆う先端工具を用いた場合であっても被締付部材へのマーキングが容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る工具システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、同上の工具システムの要部を示す斜視図である。
図3図3は、同上のマーカホルダを示す斜視図である。
図4図4は、同上の工具システムの一態様を示す断面図である。
図5図5は、同上の工具システムの別の態様を示す断面図である。
図6図6は、同上の工具システムの更に別の態様を示す断面図である。
図7図7は、同上の工具システムの更に別の態様を示す断面図である。
図8図8は、同上の工具システムによるマーキング跡を示す概略図である。
図9図9は、実施形態2に係るマーカホルダの一態様を示す断面図である。
図10図10は、同上のマーカホルダの別の態様を示す断面図である。
図11図11は、同上のマーカホルダの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、図面中の各方向を示す矢印は一例であり、工具システム1の使用時の方向を規定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0012】
なお、本開示でいう「直交」は、二者間の角度が厳密に90度である状態だけでなく、二者がある程度の誤差の範囲内で略直交する状態も含む意味である。つまり、直交する二者間の角度は、90度に対してある程度の誤差(一例として10度以下)の範囲内に収まる。本開示でいう「平行」についても同様に、厳密に二者が交わらない状態だけでなく、二者がある程度の誤差の範囲内で略平行する状態も含む意味である。例えば、本開示でいう「平行」は、一方に対する他方の傾きが10度以下であることを含む。
【0013】
(実施形態1)
(1)概要
まず、実施形態1に係る工具システム1の概要について、図1図2図6、及び図7を参照して説明する。以下の説明では、出力軸26の軸方向に沿う方向を前後方向と規定し、工具2からマーカホルダ4に向かう向きを「前方」と規定し、マーカホルダ4から工具2に向かう向きを「後方」と規定する。また、以下の説明では、後述する胴体部21と装着部23とが並んでいる方向を上下方向と規定し、装着部23から胴体部21に向かう向きを「上方」とし、胴体部21から装着部23に向かう向きを「下方」とする。また、以下の説明では、前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向と規定する。
【0014】
工具システム1は、工具2と、工具2に取り付けられる先端工具3と、工具2に取り付けられるマーカホルダ4と、を備えている。
【0015】
工具2は、モータ24と、伝達機構25と、出力軸26とを備えている。工具2は、例えば電池パック29等の動力源からの動力(電力)によって動作する電動工具である。具体的には、電池パック29から電力が供給されたモータ24のモータ軸が回転し、伝達機構25を介して出力軸26に回転駆動力が伝達される。出力軸26には、被締付部材X1(図2参照)を覆った状態で締め付けるソケットビット等の先端工具3が取り付けられる。出力軸26が回転すると先端工具3も回転する。すなわち、出力軸26は、動力源からの動力によって先端工具3を回転させる。この出力軸26に先端工具3が取り付けられている場合、工具2は、例えば作業対象X0(図2参照)のねじ軸X2(図2参照)に被締付部材X1(図2参照)を取り付けることができる。
【0016】
実施形態1では、被締付部材X1がナットである場合を想定している。また、本開示でいう「作業対象」は、「第1作業対象」と「第2作業対象」とを含み得る。「第1作業対象」は、被締付部材X1と嵌合するねじ軸又はねじ穴を有する部材である。「第2作業対象」は、被締付部材X1によって第1作業対象に取り付けられる第1作業対象とは異なる部材である。つまり、実施形態1の作業対象X0は第1作業対象の一例である作業対象X0は、例えば分電盤である。
【0017】
マーカホルダ4は、マーカ9を保持している。マーカホルダ4は、工具離間機構5と、マーカ保持機構7と、を有している。
【0018】
工具離間機構5は、工具2の出力軸26の軸方向(前後方向)に沿って先端工具3を被締付部材X1から一定以上離間させることが可能に構成されている。
【0019】
マーカ保持機構7は、出力軸26の軸方向に対して傾斜する方向に沿ってマーカ9が第1位置と第2位置との間で移動可能なようにマーカ9を保持している。ここで、第1位置は、マーカ9の先端部91が締付完了後の被締付部材X1に接触しない位置である(図6参照)。また、第2位置は、マーカ9の先端部91が締付完了後の被締付部材X1に接触する位置である(図7参照)。
【0020】
実施形態1の工具システム1によれば、被締付部材X1の締付後に、工具離間機構5によって先端工具3を被締付部材X1から離間させて、マーカ9を第2位置に移動させることで、被締付部材X1にマーキングを行うことができる。すなわち、実施形態1の工具システム1によれば、ナット等の被締付部材X1を覆うソケットビット等の先端工具3を用いた場合であっても被締付部材X1にマーキングをすることが容易になる。
【0021】
(2)詳細
以下、実施形態1に係る工具システム1の詳細な構成について、図1図8を参照して説明する。
【0022】
(2.1)工具システムの構成
図1に示すように、工具システム1は、工具2と、工具2に取り付けられる先端工具3と、工具2に取り付けられるマーカホルダ4と、を備えている。なお、工具システム1が先端工具3を備えることは必須ではない。
【0023】
(2.2)先端工具の構成
図5に示すように、先端工具3は、被締付部材X1(ナット)を覆った状態で被締付部材X1を締め付ける工具である。先端工具3は、工具2の出力軸26に取り付けられている。実施形態1は、先端工具3が出力軸26の軸方向に沿って前方に突出するソケットビットである場合を想定している。
【0024】
なお、実施形態1は、被締付部材X1が、作業対象X0が有するねじ軸X2に嵌合するナットである場合を想定している。さらに、図2に示すように、実施形態1の被締付部材X1は、電線X4と電気的及び機械的に接続されたO型端子X3を、作業対象X0に対して電気的及び機械的に接続するための部材である。なお、O型端子X3及び電線X4は、第2作業対象の一例である。先端工具3が被締付部材X1を覆っている状態のとき、先端工具3の軸方向と、ねじ軸X2の軸方向と、出力軸26の軸方向とは、概ね一致する。
【0025】
(2.3)工具の構成
図1に示すように、工具2は、作業者が片手で把持可能な可搬型の電動工具である。工具2は、ハウジング20と、モータ24と、伝達機構25と、出力軸26と、固定機構27と、を備えている。
【0026】
ハウジング20は、胴体部21と、グリップ部22と、装着部23とを有している。
【0027】
胴体部21の形状は、後端が有底の筒状である。胴体部21は、モータ24及び伝達機構25を収容している。また、実施形態1の胴体部21は先端部211を有している。先端部211は、胴体部21の先端(前端)から前方に突出しており、筒状である。
【0028】
図1に示すように、グリップ部22は、胴体部21から下方に突出している。装着部23は、電池パック29が取り外し可能に装着されるように構成されている。実施形態1では、装着部23は、グリップ部22の先端部(下端部)に設けられている。言い換えれば、胴体部21と装着部23とが、グリップ部22にて連結されている。
【0029】
工具2には、充電式の電池パック29が着脱可能に取り付けられる。実施形態1の工具2は、電池パック29を電源として動作する電動工具である。すなわち、電池パック29は、モータ24を駆動する電流を供給する電源(動力源)である。電池パック29は、工具2の構成要素ではない。ただし、工具2は、電池パック29を備えていてもよい。電池パック29は、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を直列接続して構成された組電池と、組電池を収容したケースと、を備えている。
【0030】
トリガ28は、グリップ部22から突出している。トリガ28は、モータ24の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガ28を引く操作により、モータ24のオンオフを切替え可能である。また、トリガ28を引く操作の引込み量で、モータ24の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きい程、モータ24の回転速度が速くなる。
【0031】
モータ24は、例えばインナーロータ型のブラシレスモータである。モータ24はモータ軸を有している。モータ24は、電池パック29から供給される電力をモータ軸の回転駆動力に変換する。
【0032】
実施形態1の伝達機構25は、モータ24の前方に配置されている。伝達機構25は、モータ24のモータ軸から伝達される回転駆動力を、出力軸26に伝達する機構である。なお、実施形態1の伝達機構25は、アンビルに回転打撃を加えることで大きな締付トルクを発生させるインパクト機構を含んでいる。すなわち、実施形態1の工具2はインパクト回転工具である。
【0033】
出力軸26は、その中心軸が前後方向に沿うように、伝達機構25の前方に配置されている。出力軸26は、例えばソケットビット等の先端工具3を保持する部分である。具体的には、出力軸26には、先端工具3が着脱できる。出力軸26が回転するのに伴い、出力軸26に取り付けられた先端工具3が回転する。例えば、ソケットビットが出力軸26に取り付けられている場合、ソケットビットが被締付部材X1(ナット)にセットされた状態でソケットビットが回転することにより、被締付部材X1を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。
【0034】
固定機構27は、出力軸26に保持されたソケットビット等の先端工具3を固定するための機構である。固定機構27は、ビットホルダ271を有している。ビットホルダ271は、中心軸が出力軸26の軸方向に沿った筒状に形成されている。ビットホルダ271は、出力軸26の先端部の外周を覆っている。
【0035】
(2.4)マーカホルダの構成
次に、マーカホルダ4の詳細な構成について図1図8を参照して説明する。
【0036】
図1に示すように、マーカホルダ4は工具2に設けられている。マーカホルダ4は、マーカ9を保持している。また、図5に示すように、実施形態1のマーカホルダ4は、被締付部材X1を覆うように構成されている。また、実施形態1のマーカホルダ4は、工具2に対して着脱可能に構成されている。
【0037】
実施形態1のマーカホルダ4は、工具離間機構5と、収容部6と、マーカ保持機構7と、把持部8と、を有している。
【0038】
(2.4.1)工具離間機構の構成
まず、工具離間機構5の構成について説明する。工具離間機構5は、工具2の出力軸26(図1参照)の軸方向に沿って先端工具3(工具2)を被締付部材X1から一定以上離間させることが可能に構成されている。また、実施形態1の工具離間機構5は、工具2に対する取付部としての機能も有している。
【0039】
図3に示すように、実施形態1の工具離間機構5は、取付部51と、一対のスライド軸52と、一対の軸受け53と、ばね54と、を有している。
【0040】
取付部51は、基部511と、一対の突出部512と、一対の支持部514と、を有している。
【0041】
基部511は、中心軸が出力軸26の軸方向(前後方向)に沿った筒状に形成されている。より具体的には、基部511は、周方向の一部が非連続の筒状である。つまり、基部511は、出力軸26の軸方向に沿った平面視において、C字状である。実施形態1の基部511は、工具2における胴体部21の先端部211の周囲を囲んでいる。
【0042】
一対の突出部512は、出力軸26の軸方向に沿って形成されており、板状である。一対の突出部512は、基部511の周方向の一部が非連続となる一対の端部から出力軸26の径方向に沿って突出している。図3の例では、一対の突出部512は、基部511の一対の端部から下方に突出している。一対の突出部512は、出力軸26の周方向(図3の例では左右方向)において互いに対向している。
【0043】
実施形態1の一対の突出部512の各々には、出力軸26の周方向(図3の例では左右方向)に沿って一対の突出部512の各々を貫通するねじ孔513が形成されている。一対の突出部512に形成されている一対のねじ孔513は、出力軸の周方向において互いに対向する。一対のねじ孔513にねじが通され、ねじがナットと嵌合することにより、取付部51が工具2の先端部211に対して固定される。
【0044】
一対の支持部514は、中心軸が出力軸26の軸方向に沿った円柱状に形成されている。一対の支持部514は、基部511から前方に突出している。言い換えると、一対の支持部514は、基部511から一対の軸受53に向かって突出している。実施形態1の一対の支持部514は、互いに出力軸26を挟むようにして、基部511の上下方向における中央付近に形成されている。一対の支持部514は、一対のスライド軸52を支持している。
【0045】
また、基部511及び一対の支持部514には、基部511の径方向に沿って基部511及び一対の支持部514を貫通する一対のねじ孔515が形成されている。一対のねじ孔515の各々は、基部511の中心軸を挟んで対向する位置に設けられている。以下の説明において、一対のねじ孔515の各々を区別しない場合は、一対のねじ孔515の各々のことをねじ孔515という。ねじ孔515には例えばねじが挿入される。
【0046】
ここで、図4に示すように、工具2の先端部211の外周部には、先端部211の周方向に沿って円環状に形成された溝部212が形成されている。また、溝部212の上下左右端の各々には凹部213が形成されている。すなわち、実施形態1の溝部212には4つの凹部213が形成されている。4つの凹部213は、先端部211の周方向において等間隔に形成されている。
【0047】
出力軸26の径方向からの平面視において、取付部51の一対のねじ孔515と、先端部211の溝部212とは重なっている。一対のねじの各々が外側からねじ孔515を貫通し、一対のねじの各々の先端が基部511の内周面より内側に突出している状態において、取付部51は先端部211に対して回転可能である。一対のねじの各々の先端が基部511の内周面より内側に突出している状態において取付部51が先端部211に対して回転する場合、一対のねじの各々の先端は溝部212に沿って回転する。一対のねじの各々の先端が上下端の一対の凹部213と対向する位置、又は、一対のねじの各々の先端が左右端の一対の凹部213と対向する位置において、一対のねじが更に締められることにより、凹部213にねじの先端が嵌まる。凹部213にねじの先端が嵌まることにより、取付部51が工具2の先端部211に対して固定される。
【0048】
具体的には、取付部51は、工具2の先端部211の周方向における第1位置から第4位置までのいずれかの位置で、先端部211に固定される。言い換えると、マーカホルダ4は、工具2に対する4つの向きのいずれかの向きで、工具2に固定される。実施形態1のマーカホルダ4は、一対の突出部512(マーカ保持機構7)が下方に突出する位置である第1位置(第1向き)、一対の突出部512が左方に突出する位置である第2位置(第2向き)、一対の突出部512が上方に突出する位置である第3位置(第3向き)、一対の突出部512が右方に突出する位置である第4位置(第4向き)のいずれかの位置で先端部211に固定される。
【0049】
実施形態1の工具システム1によれば、作業対象X0の構造(例えば分電盤の中の端子台の向き)等に応じて、工具2に対するマーカホルダ4の向きを4つの向きの中から適宜選択することができるため、作業者の利便性の向上を図ることができる。
【0050】
図3に示すように、一対のスライド軸52は、中心軸が出力軸26の軸方向に沿った円柱状に形成されている。一対のスライド軸52は、一対の支持部514の先端(前端)から前方に突出している。言い換えると、一対のスライド軸52は、一対の支持部514の先端から一対の軸受53に向かって突出している。
【0051】
一対の軸受53は、中心軸が出力軸26の軸方向に沿った筒状に形成されている。一対の軸受53の内周部には、一対のスライド軸52が通される。すなわち、一対の軸受53は、一対のスライド軸52の軸受として機能する。実施形態1の一対の軸受53は、収容部6の一対の側面部604の後端に設けられている。すなわち、工具離間機構5の一対の軸受53は、収容部6の一部でもある。一対の軸受53は、収容部6の一対の側面部604の後端から後方に突出している。言い換えると、一対の軸受53は、収容部6の一対の側面部604の後端から一対の支持部514に向かって突出している。一対の軸受53は、収容部6の一対の側面部604の上下方向における中央付近に形成されている。
【0052】
図4に示すように、ばね54は、中心軸が出力軸26の軸方向に沿った螺旋状に形成されている。ばね54は、工具2の先端からマーカホルダ4の収容部6の後端にかけて、先端工具3の外周を囲んでいる。出力軸26の軸方向に沿って工具2の先端を見たとき、ばね54は、先端工具3の外周端より外側、かつ、ビットホルダ271の内周端より内側に位置している(図3参照)。また、出力軸26の軸方向に沿ってマーカホルダ4の収容部6の後端を見たとき、ばね54は、先端工具3の外周端より外側、かつ、収容部6の後述する突出部64の内周端より内側に位置している(図2参照)。また、ばね54の先端(前端)は、マーカホルダ4の収容部6の後述する後面部603と接触している。
【0053】
ばね54は、マーカホルダ4の収容部6から離れる向き(後向き)の力を、工具2(先端工具3)に加える付勢部である。作業者が例えば工具2を前方に押し付ける等して、ばね54の弾性に逆らう方向の力をばね54に加えると、ばね54は変形して(縮んで)、例えば図5に示すような状態となる。図5に示す縮んだ状態のばね54は、復元力(弾性力)で、工具2に対して後向きの力を加える。作業者が工具2を前方に押し付ける力を弱めると、ばね54は復元して工具2を後方に移動させる。工具2が移動することにより、工具2の出力軸26に固定された先端工具3が後方に移動する。すなわち、工具離間機構5は、ばね54の復元力によって、出力軸26の軸方向に沿って、先端工具3を被締付部材X1(マーカホルダ4の収容部6)から一定以上離間させることが可能に構成されている。言い換えると、工具離間機構5は、マーカホルダ4が被締付部材X1を覆っているときに、出力軸26の軸方向に沿って先端工具3を被締付部材X1から一定以上離間させることが可能に構成されている。
【0054】
(2.4.2)収容部の構成
次に、収容部6の構成について説明する。図4及び図5に示すように、収容部6は、基部60と、突出部64と、を有している。
【0055】
図3に示すように、基部60は、ねじ軸X2(図2参照)の軸方向に沿って中空である矩形の箱状に形成されている。言い換えると、基部60は、ねじ軸X2の軸方向に沿った内部空間Sp1を有している。基部60は、前面部601と、下面部602と、後面部603(図2参照)と、一対の側面部604と、を有している。
【0056】
前面部601には、第1開口部61が形成されている。第1開口部61は、工具2の出力軸26の軸方向に沿って前面部601を貫通している。第1開口部61は円形状の孔である。第1開口部61の直径は、少なくとも被締付部材X1(図2参照)の直径より大きい。図5に示すように、先端工具3が被締付部材X1を締め付ける際に、被締付部材X1は第1開口部61を通って基部60の内部空間Sp1に収容される。言い換えると、基部60は、先端工具3による被締付部材X1の締付時には、被締付部材X1を覆うように構成されている。
【0057】
下面部602には、第2開口部62が形成されている。第2開口部62は、マーカ保持機構7の後述する本体部70の軸方向に沿って下面部602を貫通している。第2開口部62は円形状の孔である。第2開口部62の直径は、少なくともマーカ9の先端部91の直径より大きい。図7に示すように、被締付部材X1に対するマーキングの際に、マーカ9の先端部91は第2開口部62を通って基部60の内部空間Sp1に収容される。言い換えると、基部60は、マーカ9による被締付部材X1のマーキング時には、マーカ9の先端部91を覆うように構成されている。
【0058】
図5に示すように、後面部603には、第3開口部63が形成されている。第3開口部63は、工具2の出力軸26の軸方向に沿って後面部603を貫通している。第3開口部63は円形状の孔である。第3開口部63の直径は、少なくとも先端工具3の一部の直径より大きい。第3開口部63には先端工具3が通されている。図4及び図5に示すように、基部60は、先端工具3がねじ軸X2の軸方向に沿って移動可能な状態で、先端工具3の少なくとも一部を収容している。
【0059】
突出部64は、中心軸が出力軸26の軸方向に沿った筒状に形成されている(図2参照)。突出部64は、基部60の後面部603から後方に突出している。言い換えると、突出部64は、出力軸26の軸方向に沿って、後面部603から工具2に向かって突出している。突出部64の内径は、第3開口部63の直径及びばね54の外径より大きい。
【0060】
(2.4.3)マーカ保持機構の構成
次にマーカ保持機構7の構成について説明する。図4に示すように、マーカ保持機構7は、マーカ9を保持している。上述のように、マーカ保持機構7は、工具2の出力軸26の軸方向に対して傾斜する方向に沿って、マーカ9が第1位置と第2位置との間で移動可能なようにマーカ9を保持している。第1位置はマーカ9の先端部91が締付完了後の被締付部材X1に接触しない位置であり(図6参照)、第2位置はマーカ9の先端部91が締付完了後の被締付部材X1に接触する位置である(図7参照)。
【0061】
マーカ保持機構7は、本体部70と、段差部71と、ばね72と、ストッパ部73と、ガイド孔74と、を有している。
【0062】
本体部70は、筒状に形成されている。より具体的には、マーカ9がマーカ保持機構7によって保持された状態において、本体部70の軸方向はマーカ9の軸方向に沿うように形成されている。本体部70の第1端(一端)は、収容部6の第2開口部62と接続されている。すなわち、本体部70の内部空間Sp2、及び、収容部6の内部空間Sp1は、第2開口部62を介して連続している。また、本体部70の第2端(他端)の内周部には、ねじ溝(ねじ山)が形成されている。
【0063】
本体部70は、マーカ9の先端部91を内部空間Sp2に収容している。言い換えると、本体部70は、マーカ9の少なくとも一部を内部空間Sp2に収容している。また、実施形態1の本体部70は、図6及び図7に示すように、収容部6が被締付部材X1を覆っている状態でマーカ9が第1位置から第2位置に移動可能なようにマーカ9を保持している。
【0064】
段差部71は、本体部70の内周部に形成されている。段差部71の形状は、本体部70の内周部から本体部70の軸心に向かって突出する円環状である。段差部71は、本体部70と同心状に形成されている。実施形態1の段差部71は、本体部70の軸方向において本体部70の中央付近に形成されている。
【0065】
ばね72は、中心軸が本体部70の軸方向に沿った螺旋状に形成されている。ばね72は、本体部70の内部空間Sp2において、マーカ9の後述する本体部90の外周を囲んでいる。すなわち、ばね72の外径は、本体部70の内径より小さく、マーカ9の本体部90の外径より大きい。ばね72は、本体部70の軸方向に沿って、マーカ保持機構7の段差部71からマーカ9の後述するリング部93までの範囲でマーカ9の本体部90の外周を囲んでいる。
【0066】
マーカ9がマーカ保持機構7に保持された状態において、段差部71、ばね72、及びマーカ9のリング部93は、本体部70の軸方向に沿って並んでいる。具体的には、マーカ9の先端部91の側から、マーカ保持機構7の段差部71、マーカ保持機構7のばね72、マーカ9のリング部93の順に並んでいる。つまり、実施形態1のばね72は、マーカ9が第2位置から第1位置へ向かう向きの力を、マーカ9に加える付勢部である。本開示では、マーカ9が第1位置から第2位置へ向かう向きを「第1向きD1」といい、マーカ9が第2位置から第1位置へ向かう向きを「第2向きD2」という。なお、第1向きD1及び第2向きD2は、本体部70の軸方向に沿った向きであり、工具2の出力軸26の軸方向に対して傾斜する向きである。実施形態1のマーカ保持機構7は、ばね72を有することにより、マーカ9が第2位置から第1位置へ向かう向きの力を、マーカ9に加えた状態でマーカ9を保持している。
【0067】
ストッパ部73は、中心軸が本体部70の軸方向に沿った筒状に形成されている。ストッパ部73は、本体部70の第2端に設けられている。ストッパ部73は、基部730と、ねじ部731とを有している。
【0068】
基部730は、中心軸が本体部70の軸方向に沿った筒状に形成されている。基部730の内径は、本体部70の内径より小さい。また、基部730の外径は、本体部70の外径より大きい。基部730の内周部にはマーカ9が通される。
【0069】
ねじ部731は、中心軸が本体部70の軸方向に沿った筒状に形成されている。ねじ部731は、基部730から第1向きD1に突出している。ねじ部731は、本体部70の軸方向に沿って、基部730とマーカ9のリング部93との間に配置されている。
【0070】
本体部70の軸方向に沿った平面視において、ねじ部731の内周端と基部730の内周端とは一致している。また、ねじ部731及び基部730の内周端は、マーカ9の本体部90の外周端と概ね一致している。ねじ部731の外周部にはねじ山(ねじ溝)が形成されており、本体部70の第2端の内周部に形成されているねじ溝(ねじ山)と嵌合する。
【0071】
ガイド孔74は、本体部70の軸方向に沿って本体部70に形成された孔である。より具体的には、実施形態1のガイド孔74は、本体部70の第2端から第1向きD1に沿って本体部70に形成された長尺の孔である。ガイド孔74には、マーカ9の突出部931が挿入される。ガイド孔74は、マーカ9の突出部931のガイドとして機能する。
【0072】
(2.4.4)把持部の構成
把持部8は、被締付部材X1が締め付けられる作業対象(第1作業対象及び第2作業対象の少なくとも一方)の一部を把持する。実施形態1の把持部8は、被締付部材X1によって作業対象X0に取り付けられるO型端子X3を把持する。なお、把持部8は、電線X4を把持する構成であっても構わない。
【0073】
実施形態1のO型端子X3は、例えば金属で形成されている。図2に示すようにO型端子X3は、第1接続部X31と第2接続部X32とを有している。第1接続部X31は、ねじ軸X2の軸方向(前後方向)に沿った貫通孔を有する平板状に形成されている。第1接続部X31の貫通孔にはねじ軸X2が通される。第2接続部X32は、第1接続部X31と一体的に形成されており、ねじ軸X2の軸方向と直交する方向(上下方向)に沿った筒状に形成されている。第2接続部X32に電線X4が挿入された状態で圧着固定されることにより、O型端子X3と電線X4とが電気的及び機械的に接続されている。
【0074】
把持部8は、中心軸が上下方向に沿った筒状に形成されている。より具体的には、把持部8は、周方向の一部が非連続の筒状である。把持部8は、上下方向に沿った平面視において、C字状である。例えば、把持部8の周方向の第1端と把持部8の周方向の第2端との間の隙間は、O型端子X3の第2接続部X32の外径より小さい。また、把持部8の内径は、O型端子X3の第2接続部X32の外径と概ね一致する。つまり、把持部8の周方向の第1端と把持部8の周方向の第2端との間の隙間から第2接続部X32がねじ込まれることにより、把持部8が第2接続部X32の周囲を保持した状態となる。
【0075】
(2.4.5)マーカの構成
図4に示すマーカ9は、被締付部材X1にマーキングを行うためのマーカである。実施形態1のマーカ9は、例えば油性インクを被締付部材X1に塗布する油性ペンである。実施形態1のマーカ9は、本体部90と、先端部91と、後端部92と、リング部93と、を有している。
【0076】
本体部90は、円柱状に形成されている。マーカ9がマーカ保持機構7に保持された状態において、本体部90の軸方向はマーカ保持機構7の本体部70の軸方向に沿う。
【0077】
先端部91は、本体部90の第1端(一端)から第1向きD1に突出している。先端部91は言い換えるとペン先であり、被締付部材X1に油性インクを塗布する部位である。実施形態1の先端部91は、左右方向からの平面視において矩形状である。より具体的には、先端部91は、作業対象X0が有するねじ軸X2の軸方向に平行な面911を有する形状である。
【0078】
後端部92は、本体部90の第2端(他端)から第2向きD2に突出している。後端部92は、例えば円柱状である。
【0079】
リング部93は、本体部90の径方向に沿って、本体部90の外周面から突出している。リング部93は、本体部90に対して固定されている。リング部93は、ばね72から第2向きD2の力を受ける。リング部93は、基部930と、突出部931とを有している。
【0080】
基部930の形状は、本体部90の外周を囲う円環状である。基部930の内周端と本体部90の外周端とは概ね一致する。基部930は、本体部90と同心状に形成されている。
【0081】
突出部931は、本体部90の径方向に沿って基部930の一部から突出している。突出部931の形状は、矩形の板状である。突出部931は、マーカ保持機構7のガイド孔74に挿入されている。
【0082】
(3)工具システムの動作
次に、図4図8を参照して工具システム1の動作について説明する。
【0083】
図4に示す工具システム1の状態は、作業者によって工具システム1が被締付部材X1にセットされた状態である。本開示でいう「工具システムが被締付部材にセットされた状態」は、把持部8がO型端子X3の第2接続部X32を保持し、収容部6が被締付部材X1を覆っている状態を含み得る。
【0084】
作業者が、ばね54の弾性力に逆らって工具システム1を前方に押し付けることにより、ばね54が縮み、先端工具3が被締付部材X1にセットされた状態になる。本開示でいう「先端工具が被締付部材にセットされた状態」は、先端工具3が被締付部材X1を覆い、さらにその先端工具3を収容部6が覆っている状態を含み得る。先端工具3が被締付部材X1にセットされた状態においてトリガ28(図1参照)が作業者によって引かれる(操作される)ことにより、先端工具3は、被締付部材X1を締め付ける。図5は、先端工具3が被締付部材X1を締め付ける際の状態を示している。そして、工具システム1を前方に押し付ける力を作業者が弱めると、ばね54の復元力によって、先端工具3は被締付部材X1から一定以上離間される(図6参照)。
【0085】
上述のように、実施形態1のマーカ保持機構7は、収容部6が被締付部材X1を覆っている状態でマーカ9が第1位置から第2位置に移動可能なようにマーカ9を保持している。すなわち、例えば作業者がマーカ9の後端部92を第1向きD1に押すことで、マーカ9が第1位置から第2位置に移動する。図7に示すように、マーカ9が第1位置から第2位置移動することにより、マーカ9の先端部91が被締付部材X1に接触した状態となる。なお、実施形態1のマーカ9の先端部91は、ねじ軸X2の軸方向に平行な面911を有するため、マーカ9の先端部91は被締付部材X1からねじ軸X2にかけて線状に接触している。すなわち、実施形態1のマーカ9は、被締付部材X1からねじ軸X2にかけて線状のマーキングを行うことが可能である。
【0086】
実施形態1の工具システム1によれば、ソケットビット等の被締付部材X1(ナット)を覆う先端工具3を用いた場合であってもナットにマーキングをすることが可能となる。また、工具システム1によれば、収容部6(マーカホルダ4)が被締付部材X1を覆った状態で被締付部材X1にマーキングを行うことが可能であるため、誤って作業者の手にマーキングしてしまうことを抑制することができる。
【0087】
また、実施形態1のマーカ保持機構7は、マーカ9が第2位置から第1位置へ向かう向き(第2向きD2)の力を、マーカ9に加えた状態でマーカ9を保持している。これにより、被締付部材X1の締付時にマーカ9が第2位置に移動して先端工具3等に接触する可能性を低減することができる。また、作業者がマーカ保持機構7(ばね72)の力に逆らってマーカ9を第1位置から第2位置に移動させることで、例えば被締付部材X1を締め付けた後等の作業者の任意のタイミングで被締付部材X1にマーキングを行うことができる。
【0088】
また、実施形態1のマーカホルダ4は、把持部8を有しているため、作業者が工具システム1を前方に押し付ける力を弱めた状態であっても、被締付部材X1に対するマーカホルダ4の位置を固定することができる。被締付部材X1に対するマーカホルダ4の位置を固定することで、被締付部材X1のマーキングの際に、マーカホルダ4が被締付部材X1から離れることによりマーキングに失敗してしまうことを抑制することができる。
【0089】
図7に示す工具システム1の状態から、作業者が工具システム1をねじ軸X2の軸方向に沿って(後方)に移動させることで、工具システム1と被締付部材X1とが離れた状態となる。実施形態1の工具システム1におけるマーカ9の第2位置は、マーカホルダ4がナットである被締付部材X1から後方に離れる際に、被締付部材X1からねじ軸X2にかけて線状にマーカ9の先端部91が被締付部材X1及びねじ軸X2と接触する位置である。
【0090】
図8は、工具システム1が被締付部材X1から離れた後の被締付部材X1に残るマーキング跡M1及びねじ軸X2に残るマーキング跡M2を例示している。図8に示すように、マーキング跡M1とマーキング跡M2とは、被締付部材X1の後面X11からねじ軸X2の周面X21において線状に続いている。言い換えると、実施形態1のマーカホルダ4は、被締付部材X1からねじ軸X2にかけて線状のマーキングをすることができる。マーカホルダ4が線状のマーキングが可能なことにより、例えば締付箇所の定期点検等において、作業者は、線状のマーキングを確認することで、ナットである被締付部材X1が緩んでいるか否かを容易に判断することができる。すなわち、被締付部材X1のマーキング跡M1と、ねじ軸X2のマーキング跡M2とが線状に続いていない場合、作業者は、被締付部材X1が緩んでいることを容易に認知できる。
【0091】
(4)変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下の説明する変形例は、実施形態1と適宜組み合わせて適用可能である。
【0092】
モータ24は、インナーロータ型のブラシレスモータに限られない。例えば、モータ24は、アウターロータ型のブラシレスモータや、ブラシ付きモータであってもよい。
【0093】
実施形態1では、工具2がインパクトレンチである場合を説明したが、工具2はインパクトレンチに限らず、例えば、ナットランナ又はオイルパルスレンチ等であってもよい。さらに、工具2は、電池パック29を動力源とする構成に限らず、交流電源(商用電源)を動力源とする構成であってもよい。また、工具2は、電動工具に限らず、エアコンプレッサから供給される圧縮空気を動力源として動作するエアモータを有するエア工具であってもよい。
【0094】
また、実施形態1の工具2は、先端工具3を用途に応じて交換可能であるが、先端工具3が交換可能であることは必須ではない。例えば、工具2は、ソケットビット等の特定の先端工具3のみ用いることができる工具であってもよい。
【0095】
工具システム1において、マーカホルダ4が工具2に着脱可能であることは必須ではない。すなわち、マーカホルダ4は、工具2と一体的に構成されて工具2から取り外すことができない構成であってもよい。
【0096】
マーカ9は、水性インクを被締付部材X1に塗布する水性ペンであってもよい。また、マーカ9は、被締付部材X1に対してシール状の物質を張り付けるマーキング、又は、被締付部材X1に対して傷をつけるマーキング等を行ってもよい。
【0097】
被締付部材X1は、ソケットビット等の先端工具3に覆われて締め付けられる部材であればよい。例えば、被締付部材X1は、ボルトであってもよい。
【0098】
(実施形態2)
図9図11を参照して実施形態2に係るマーカホルダ4aについて説明する。
【0099】
図9に示すように、実施形態2に係るマーカホルダ4aは、マーカ保持機構7aを備える点で、実施形態1に係るマーカホルダ4と相違する。マーカ保持機構7aは、本体部70と、段差部71と、ばね72と、ストッパ部73と、ガイド孔74と、に加えて、ロック部75を更に有している。
【0100】
実施形態2のばね72は、本体部70の軸方向に沿った方向において、ストッパ部73とマーカ9のリング部93との間に配置されている。具体的には、マーカ9の先端部91の側から、マーカ9のリング部93、マーカ保持機構7aのばね72、マーカ保持機構7aのストッパ部73の順に並んでいる。つまり、実施形態2のばね72は、マーカ9が第1位置から第2位置へ向かう向き(第1向きD1)の力を、マーカ9に加える付勢部である。
【0101】
図11に示すように、実施形態2の本体部70は、一対の取付部701を更に有している。一対の取付部701は、本体部70の周方向(例えば左右方向)において並んでいる。なお、以下の説明において一対の取付部701の各々を区別しない場合は、一対の取付部701の各々のことを単に取付部701という。取付部701は、本体部70の軸方向に沿った板状に形成されている。取付部701は、本体部70の外周面から、マーカ9の径方向に沿って突出している。取付部701は、本体部70の周方向(図11の例では左右方向)に沿って取付部701を貫通する孔702を有している。一対の取付部701の各々の孔702と、ロック部75の後述する支点部752とに軸が挿入されることにより、取付部701に、回転可能な状態でロック部75が取り付けられている。
【0102】
ロック部75は、ロック状態においてばね72の復元力(弾性力)による第1向きD1の力に逆らってマーカ9を保持する(図9参照)。また、ロック部75は、非ロック状態において、マーカ9を開放する(図10参照)。マーカ9の径方向に沿った平面視において、ロック部75と、ガイド孔74の一部及び一対の取付部701間の隙間と、は重なっている。
【0103】
ロック部75は、操作部751と、支点部752と、鉤部753と、を有している。操作部751、支点部752、及び鉤部753は、本体部70の軸方向に沿って並んでいる。マーカ9の先端部91側から、鉤部753、支点部752、操作部751の順に並んでいる。実施形態2の操作部751、支点部752、及び鉤部753は、一体的に形成されている。
【0104】
操作部751は、本体部70の軸方向に沿って長尺の板状に形成されている。
【0105】
支点部752は、操作部751と鉤部753との間に形成されている。支点部752は、中心軸が例えば左右方向に沿った筒状に形成されている。一対の取付部701における各々の孔702と、支点部752の内周部に軸が挿入されることによって、ロック部75は本体部70に取り付けられている。
【0106】
鉤部753は、支点部752から第1向きD1に突出している。鉤部753は、鉤状に形成されている。鉤部753の先端は、本体部70の径方向に沿って内向きに突出している。鉤部753の先端は、ガイド孔74から外側に突出しているマーカ9の突出部931に引っかかるように構成されている。
【0107】
鉤部753の先端がマーカ9の突出部931に引っかかっている状態が、ロック部75のロック状態である。すなわち、鉤部753の先端がマーカ9の突出部931に引っかかることにより、ロック部75は、ばね72の復元力による第1向きD1の力に逆らってマーカ9を保持している。
【0108】
一方で、鉤部753の先端がマーカ9の突出部931に引っかかっていない状態が、ロック部75の非ロック状態である。作業者によって操作部751が操作されることにより、ロック部75はロック状態から非ロック状態に移行する。ロック部75がロック状態から非ロック状態に移行すると、図10に示すように、マーカ9の先端部91が被締付部材X1に接触する。
【0109】
実施形態2のマーカ保持機構7aによれば、作業者がロック部75の状態をロック状態から非ロック状態にすることで、作業者の任意のタイミングで、被締付部材X1にマーキングを行うことができる。作業者がマーカ9を、ばね72の復元力に逆らって第1向きD1に押し込む必要もないため被締付部材X1に対するマーキングが容易になる。
【0110】
また、図10に示すように、実施形態2のマーカ9の先端部91の形状は、先細り状である。すなわち、実施形態2の先端部91は、面911を有していない。そのため、マーカ9の先端部91が被締付部材X1に接触したタイミングでは、マーカ9の先端部91と、被締付部材X1及びねじ軸X2との接触箇所は線状でない。ここで、実施形態2のマーカ保持機構7の状態が非ロック状態である場合、マーカ9の位置は第2位置となる。実施形態1と同様に、実施形態2におけるマーカ9の第2位置は、マーカホルダ4がナットである被締付部材X1から後方に離れる際に、被締付部材X1からねじ軸X2にかけて線状にマーカ9の先端部91が被締付部材X1及びねじ軸X2と接触する位置である。実施形態2のマーカ保持機構7aによれば、作業者が工具システム1を後方に移動させて工具システム1と被締付部材X1とを離すだけで、被締付部材X1からねじ軸X2にかけて線状のマーキングをすることができる。
【0111】
実施形態2は、本開示の様々な実施形態の一例に過ぎない。実施形態2は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0112】
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0113】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る工具システム(1)は、出力軸(26)と、マーカホルダ(4;4a)と、を備えている。出力軸(26)は、先端工具(3)を、動力源(電池パック29)からの動力によって回転させる。先端工具(3)は、被締付部材(X1)を覆った状態で被締付部材(X1)を締め付ける。マーカホルダ(4;4a)は、マーカ(9)を保持する。マーカホルダ(4;4a)は、工具離間機構(5)と、マーカ保持機構(7;7a)と、を有している。工具離間機構(5)は、出力軸(26)の軸方向に沿って先端工具(3)を被締付部材(X1)から一定以上離間させることが可能に構成されている。マーカ保持機構(7;7a)は、軸方向に対して傾斜する方向に沿ってマーカ(9)が第1位置と第2位置との間で移動可能なようにマーカ(9)を保持している。第1位置はマーカ(9)の先端部(91)が締付完了後の被締付部材(X1)に接触しない位置である。第2位置はマーカ(9)の先端部(91)が締付完了後の被締付部材(X1)に接触する位置である。
【0114】
この態様によれば、例えば、被締付部材(X1)の締付後に、工具離間機構(5)によって先端工具(3)を被締付部材(X1)から離間させて、マーカ(9)を第2位置に移動させることで、被締付部材(X1)にマーキングを行うことができる。すなわち、この態様によれば、ナット等の被締付部材(X1)を覆うソケットビット等の先端工具(3)を用いた場合であっても被締付部材(X1)にマーキングをすることが容易になる。
【0115】
第2の態様に係る工具システム(1)では、第1の態様において、マーカホルダ(4;4a)は、被締付部材(X1)を覆うように構成されている。工具離間機構(5)は、マーカホルダ(4;4a)が被締付部材(X1)を覆っているときに、軸方向に沿って先端工具(3)を被締付部材(X1)から一定以上離間させることが可能に構成されている。マーカ保持機構(7;7a)は、マーカホルダ(4;4a)が被締付部材(X1)を覆っている状態でマーカ(9)が第1位置から第2位置に移動可能なようにマーカ(9)を保持している。
【0116】
この態様によれば、マーカホルダ(4;4a)が被締付部材(X1)を覆った状態で被締付部材(X1)にマーキングを行うことが可能であるため、誤って作業者の手にマーキングしてしまうことを抑制することができる。
【0117】
第3の態様に係る工具システム(1)では、第1又は第2の態様において、マーカ保持機構(7)は、マーカ(9)が第2位置から第1位置へ向かう向き(第2向きD2)の力を、マーカ(9)に加えた状態でマーカ(9)を保持している。
【0118】
この態様によれば、被締付部材(X1)の締付時等にマーカ(9)が第2位置に移動して、誤って先端工具(3)等に接触する可能性を低減することができる。
【0119】
第4の態様に係る工具システム(1)では、第1又は第2の態様において、マーカ保持機構(7a)は、付勢部(ばね72)と、ロック部(75)と、を有している。付勢部は、マーカ(9)が第1位置から第2位置へ向かう向き(第1向きD1)の力を、マーカ(9)に加える。ロック部(75)は、ロック状態において力に逆らってマーカ(9)を保持し、非ロック状態においてマーカ(9)を開放する。
【0120】
この態様によれば、工具システム(1)の使用者がロック部(75)の状態をロック状態から非ロック状態にすることで、例えば被締付部材(X1)を締め付けた後等の使用者の任意のタイミングで被締付部材(X1)にマーキングを行うことができる。
【0121】
第5の態様に係る工具システム(1)では、第1から第4のいずれかの態様において、マーカホルダ(4;4a)は、把持部(8)を更に有している。把持部(8)は、被締付部材(X1)が締め付けられる作業対象の一部(O型端子X3)を把持する把持部(8)を更に有している。
【0122】
この態様によれば、把持部(8)が作業対象の一部(O型端子X3)を把持することで、被締付部材(X1)に対するマーカホルダ(4;4a)の位置を固定することができる。被締付部材(X1)に対するマーカホルダ(4;4a)の位置を固定することで、被締付部材(X1)のマーキングの際に、マーカホルダ(4;4a)が被締付部材(X1)から離れることによりマーキングに失敗してしまうことを抑制することができる。
【0123】
第6の態様に係る工具システム(1)では、第1から第5のいずれかの態様において、被締付部材(X1)は、ねじ軸(X2)と嵌合するナットである。
【0124】
この態様によれば、ソケットビット等のナット(被締付部材X1)を覆う先端工具(3)を用いた場合であってもナットにマーキングをすることが可能になる。
【0125】
第7の態様に係る工具システム(1)では、第6の態様において、マーカホルダ(4;4a)は、収容部(6)を更に有している。収容部(6)は、先端工具(3)がねじ軸(X2)の軸方向に沿って移動可能な状態で先端工具(3)の少なくとも一部を収容する。収容部(6)は、ねじ軸(X2)の軸方向に沿って中空であり、先端工具(3)によるナットの締付時にはナットを覆う。第2位置は、マーカホルダ(4;4a)がナットからねじ軸(X2)の軸方向に沿って離れる際に、ナットからねじ軸(X2)にかけて線状にマーカ(9)の先端部(91)がナット及びねじ軸(X2)と接触する位置である。
【0126】
この態様によれば、ねじ軸(X2)にナットが嵌合した後に、マーカ(9)を第2位置に移動させて先端工具(3)をナットから離すことで、ナットからねじ軸(X2)にかけて線状のマーキングをすることができる。例えば、締付箇所の定期点検等において、作業者は、線状のマーキングを確認することで、ナットが緩んでいるか否かを容易に判断することができる。
【0127】
第1の態様以外の構成については、工具システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0128】
第8の態様に係るマーカホルダ(4;4a)は、工具に設けられる。工具は、出力軸(26)を備える。出力軸(26)は、先端工具(3)を動力源(電池パック29)からの動力によって回転させる。先端工具(3)は、被締付部材(X1)を覆った状態で被締付部材(X1)を締め付ける。マーカホルダ(4;4a)は、マーカ(9)を保持する。マーカホルダ(4;4a)は、工具離間機構(5)と、マーカ保持機構(7;7a)と、を有している。工具離間機構(5)は、出力軸(26)の軸方向に沿って先端工具(3)を被締付部材(X1)から一定以上離間させることが可能に構成されている。マーカ保持機構(7;7a)は、軸方向に対して傾斜する方向に沿ってマーカ(9)が第1位置と第2位置との間で移動可能なようにマーカ(9)を保持している。第1位置はマーカ(9)の先端部(91)が締付完了後の被締付部材(X1)に接触しない位置である。第2位置はマーカ(9)の先端部(91)が締付完了後の被締付部材(X1)に接触する位置である。
【0129】
この態様によれば、例えば、ソケットビット等の先端工具(3)で被締付部材(X1)を締め付けた後に、工具離間機構(5)によって先端工具(3)を被締付部材(X1)から離間させてマーカ(9)を第2位置に移動させることで、被締付部材(X1)にマーキングを行うことができる。すなわち、この態様によれば、ナット等の被締付部材(X1)を覆うソケットビット等の先端工具(3)を用いた場合であっても被締付部材(X1)にマーキングをすることが容易になる。
【符号の説明】
【0130】
1 工具システム
26 出力軸
29 電池パック(動力源)
3 先端工具
4 マーカホルダ
5 工具離間機構
6 収容部
7 マーカ保持機構
8 把持部
9 マーカ
91 先端部
D1 第1向き(第1位置から第2位置に向かう向き)
D2 第2向き(第2位置から第1位置に向かう向き)
X1 被締付部材(ナット)
X2 ねじ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付部材を締め付ける先端工具を、動力源からの動力によって回転させる出力軸と、
マーカを保持するマーカホルダと、
を備え、
前記先端工具は、前記被締付部材を覆った状態で前記被締付部材を締め付けるものであり、
前記マーカホルダは、
前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている工具離間機構と、
前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持しているマーカ保持機構と、
を有し、
前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置であり、前記第2位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置であ
前記マーカホルダは、前記被締付部材を覆うように構成されており、
前記工具離間機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っているときに、前記軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させる向きの力を加える付勢部を有しており、
前記マーカ保持機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っている状態で、前記マーカが作業者の操作に応じて前記第1位置から前記第2位置に移動可能なように前記マーカを保持している、
工具システム。
【請求項2】
前記マーカ保持機構は、前記マーカが前記第2位置から前記第1位置へ向かう向きの力を、前記マーカに加えた状態で前記マーカを保持している、
請求項1に記載の工具システム。
【請求項3】
前記マーカ保持機構は、
前記マーカが前記第1位置から前記第2位置へ向かう向きの力を、前記マーカに加える付勢部と、
ロック状態において前記力に逆らって前記マーカを保持し、非ロック状態において前記マーカを開放するロック部と、
を有する、
請求項1に記載の工具システム。
【請求項4】
前記マーカホルダは、前記被締付部材が締め付けられる作業対象の一部を把持する把持部を更に有している、
請求項1から3のいずれか1項に記載の工具システム。
【請求項5】
前記被締付部材は、ねじ軸と嵌合するナットである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の工具システム。
【請求項6】
前記マーカホルダは、前記先端工具が前記ねじ軸の軸方向に沿って移動可能な状態で前記先端工具の少なくとも一部を収容する収容部を更に有し、
前記収容部は、前記ねじ軸の前記軸方向に沿って中空であり、前記先端工具による前記ナットの締付時には前記ナットを覆い、
前記第2位置は、前記マーカホルダが前記ナットから前記ねじ軸の前記軸方向に沿って離れる際に、前記ナットから前記ねじ軸にかけて線状に前記マーカの前記先端部が前記ナット及び前記ねじ軸と接触する位置である、
請求項5に記載の工具システム。
【請求項7】
被締付部材を締め付ける先端工具を動力源からの動力によって回転させる出力軸を備える工具に設けられ、マーカを保持するマーカホルダであって、
前記被締付部材を覆うように構成されており、
前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている工具離間機構と、
前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持しているマーカ保持機構と、
を有し、
前記先端工具は、前記被締付部材を覆った状態で前記被締付部材を締め付けるものであり、
前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置であり、前記第2位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置であり、
前記工具離間機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っているときに、前記軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させる向きの力を加える付勢部を有しており、
前記マーカ保持機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っている状態で、前記マーカが作業者の操作に応じて前記第1位置から前記第2位置に移動可能なように前記マーカを保持している、
マーカホルダ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示の一態様に係る工具システムは、出力軸と、マーカホルダと、を備えている。前記出力軸は、先端工具を、動力源からの動力によって回転させる。前記先端工具は、被締付部材を締め付ける。前記マーカホルダは、マーカを保持する。前記先端工具は、前記被締付部材を覆った状態で前記被締付部材を締め付けるものである。前記マーカホルダは、工具離間機構と、マーカ保持機構と、を有している。前記工具離間機構は、前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている。前記マーカ保持機構は、前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持している。前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置である。前記第2位置は前記マーカの前記先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置である。前記マーカホルダは、前記被締付部材を覆うように構成されている。前記工具離間機構は、付勢部を有している。前記付勢部は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っているときに、前記軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させる向きの力を加える。前記マーカ保持機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っている状態で、前記マーカが作業者の操作に応じて前記第1位置から前記第2位置に移動可能なように前記マーカを保持している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示の一態様に係るマーカホルダは、工具に設けられる。前記工具は、出力軸を備える。前記出力軸は、先端工具を動力源からの動力によって回転させる。前記先端工具は、被締付部材を締め付ける。前記マーカホルダは、マーカを保持する。前記マーカホルダは、前記被締付部材を覆うように構成されている。前記マーカホルダは、工具離間機構と、マーカ保持機構と、を有している。前記工具離間機構は、前記出力軸の軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させることが可能に構成されている。前記マーカ保持機構は、前記軸方向に対して傾斜する方向に沿って前記マーカが第1位置と第2位置との間で移動可能なように前記マーカを保持している。前記先端工具は、前記被締付部材を覆った状態で前記被締付部材を締め付けるものである。前記第1位置は前記マーカの先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触しない位置である。前記第2位置は前記マーカの前記先端部が締付完了後の前記被締付部材に接触する位置である。前記工具離間機構は、付勢部を有している。前記付勢部は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っているときに、前記軸方向に沿って前記先端工具を前記被締付部材から一定以上離間させる向きの力を加える。前記マーカ保持機構は、前記マーカホルダが前記被締付部材を覆っている状態で、前記マーカが作業者の操作に応じて前記第1位置から前記第2位置に移動可能なように前記マーカを保持している。