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特開2023-79058水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079058
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペン
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20230531BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C09D11/18
B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192475
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】三宅 充人
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350NA01
4J039AB01
4J039AB12
4J039AD01
4J039BA04
4J039BC09
4J039BC19
4J039BC20
4J039BC35
4J039BC52
4J039BC56
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE30
4J039CA06
4J039EA19
4J039EA44
4J039EA48
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、水性ボールペン用インキ組成物において、ボールとボールペンチップのボール座間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)におけるボール座の摩耗抑制と、書き味を良好にし、さらに点ムラを抑制して、筆記性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を得ることである。
【解決手段】本発明は、水、着色剤、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体を含んでなることを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、着色剤、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体を含んでなることを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレングリセリルエーテルのアルキレンオキサイド平均付加モル数が1~30であることを特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項3】
前記グアーガム誘導体の重量平均分子量が50万~500万であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項4】
前記水性ボールペン用インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項5】
前記水性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度が、20℃、剪断速度384sec-1において、70~1000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物を収容した収容筒と、前記収容筒の先端にボールペンチップとを有することを特徴とする水性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた水性ボールペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス鋼材などからなるチップ本体を用いたボールペンチップを具備したボールペンはよく知れている。これは、耐摩耗性、耐食性やコスト等を考慮して、ステンレス鋼材からなるチップ本体を用いている。また、筆感の向上や、筆跡のカスレ、線とびなどが発生しないように、特開2006-282870号公報「ボールペン用水性インキ組成物」、特開平7-62288号公報「水性ボールペン用インキ組成物」、特開2003-192972号「水性ボールペン用インキ」には、様々な潤滑剤などを含有する水性ボールペン用インキ組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】「特開2006-282870号公報」
【特許文献2】「特開平7-62288号公報」
【特許文献3】「特開2003-192972号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、イソプレンスルホン酸-アクリル酸共重合体を含有することで、インキが途切れることなく安定した吐出が行われるため、軽い書き味で筆記することができ、筆跡の線切れやカスレを抑制すること、特許文献2では、ジベンジリデンソルビトールを含有することで、ボールの回転によりインキが容易に流動する事によりスムーズに筆記が可能となり、カスレ等の筆記性能を向上することが開示されているが、特許文献3では、N-アシルアミノ酸、N-アシルメチルタウリンを含有することで、チップの受け座に吸着して筆記時のボールの回転においてボールとチップ受け座の摩擦を低減することで、書き味を向上することが開示されている。そのように、ある程度滑らかな筆感を得ることはできたが、ボール座の摩耗が促進してしまうため、改良の余地があった。
【0005】
さらに、近年では、ボールペンインキで、書き味を良好とするために、インキの低粘度化がすすんでおり、高筆圧で筆記する場合は(耐高筆圧筆記、筆記荷重300~500gf)、潤滑性に影響が出やすく、ボール座の摩耗がすすむことで、筆記性能に影響しやすい。そのため、筆記先端部と被筆記面との間で筆記抵抗をより低減するために、より潤滑性を向上して、耐高筆圧筆記の向上が求められている。
【0006】
本発明の目的は、上記のような問題を解決するもので、水性ボールペン用インキ組成物おいて、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)における潤滑性を向上して、ボール座の摩耗を抑制し、書き味を良好にし、さらに点ムラを抑制して、筆記性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.水、着色剤、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体を含んでなることを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。
2.前記ポリオキシアルキレングリセリルエーテルのアルキレンオキサイド平均付加モル数が1~30であることを特徴とする第1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
3.前記グアーガム誘導体の重量平均分子量が50万~500万であることを特徴とする第1項または第2項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
4.前記水性ボールペン用インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
5.前記水性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度が、20℃、剪断速度384sec-1において、70~1000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
6.第1項~第5項のいずれか1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物を収容した収容筒と、前記収容筒の先端にボールペンチップとを有することを特徴とする水性ボールペン。 」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、水性ボールペン用インキ組成物において、ボールとボールペンチップのボール座間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)におけるボール座の摩耗抑制と、書き味を良好にし、さらに点ムラを抑制して、筆記性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
【0010】
本発明の特徴は、水、着色剤、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体を含んでなることを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物とする。これらの各成分について説明すると以下の通りである。
【0011】
本発明では、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体を併用することで、ボールとボールペンチップのボール座間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)におけるボール座の摩耗抑制と、書き味を良好にし、さらに点ムラを抑制して、筆記性に優れることが可能となる。
【0012】
(ポリオキシアルキレングリセリルエーテル)
本発明で用いるポリオキシアルキレングリセリルエーテルは、グリセリンやポリグリセリンに酸化アルキレンを付加重合して得られるもので、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレントリグリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0013】
ポリオキシアルキレングリセリルエーテルについては、構造内に酸化アルキレンを有し、親水性、親油性を有する化合物である。構造内に極性が高い親水基を有することで、ボールペンチップの金属材に吸着しやすくなり、潤滑層を形成することで、潤滑性を向上し、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においてもボール座の摩耗の抑制と、書き味を向上することができる。
後述するグアーガム誘導体と、水と併用すると、インキ中で膨潤して、密度の高い3次元立体構造を形成することで、粘性を有するインキ流体潤滑層を形成されることで、ボールとボールペンチップのボール座間で適度な膜厚が形成され、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においてもボール座の摩耗の抑制と、書き味を向上することができる。さらに、筆跡の点ムラを抑制することで、筆記性に優れるものである。
【0014】
さらに、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルは一般的に揮発性が低いため、筆記先端部を大気中に放置した場合でも、書き出し性能を向上することができる。また、着色剤に顔料粒子や、樹脂粒子を用いる場合、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルの構造内の極性基が粒子表面に吸着し、インキ中で顔料粒子や、樹脂粒子を安定に分散することも可能となる。
【0015】
また、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルには、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルなどが包含される。このうち、ポリオキシエチレングリセリルエーテルエチレン基を有することで、親水性、親油性のバランスに優れており、水性インキ組成物と安定溶解することで、経時安定性が得られ、長期間安定的に、本発明の効果が得られやすく、好ましい。このため、ポリオキエチレングリセリルエーテルを用いることが好ましい。
【0016】
ポリオキシアルキレングリセリルエーテルは、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)におけるボール座の摩耗抑制と、書き味を向上し、筆記性、経時安定性をより向上することを考慮すれば、アルキレンオキサイド付加モル数の平均値(アルキレンオキサイド平均付加モル数)が1~30であることが好ましく、よりインキ吸湿による経時安定性を考慮すれば、アルキレンオキサイド平均付加モル数が1~30であることが好ましい。さらに高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制と、書き味を向上し、経時安定性を向上することを考慮すれば、アルキレン平均付加モル数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましい。
【0017】
特に、高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制を考慮すれば、エチレンオキサイド平均付加モル数が1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましく、2~8であることがより好ましく、3~7であることが特に好ましい。また、本発明の効果を発揮しやすいことを考慮すれば、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルの構造としては、下記式(化1)または(化2)で表される構造であることが好ましい。
【化1】
【化2】
式中、m、n、o、p、w、x、y、およびzはそれぞれ独立にアルキレンオキサイド付加数を示す数である。
ここで、m+n+o+pはプロピレンオキサイド平均付加モル数、w+x+y+zはエチレンオキサイド平均付加モル数である。
【0018】
これらのうち、(化2)で表されるポリオキシアルキレングリセリルエーテルは水性インキ中で溶解安定しやすいため、本発明の改良効果が大きいので好ましい。
【0019】
また、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルの重量平均分子量については、3,000以下であることが好ましい、これは、重量平均分子量が大きすぎると、経時安定性に影響が出やすく、さらにインキ組成物の粘度が高くなりやすく、書き味、筆記性に影響が出やすいためである。より経時安定性、書き味、筆記性を考慮すれば、重量平均分子量は1,500以下であることが好ましい。さらに、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)におけるボール座の摩耗抑制と、書き味を考慮すれば、重量平均分子量は1,000以下であることが好ましく、800以下であることが好ましく、より高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制を考慮すれば、500以下であることが好ましい。一方、重量平均分子量が小さすぎると、高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制、顔料分散性に影響が出やすいため、重量平均分子量は100以上であることが好ましく、より考慮すれば、重量平均分子量は200以上であることが好ましい。
重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いてポリスチレン換算で得られた値である。
【0020】
また、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルの含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%より少ないと、高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制と、書き味、筆記性、顔料分散性の効果が得られないおそれがあり、50質量%を越えると、経時安定性、書き味に影響するおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、1~50質量%が好ましく、5~45質量%がより好ましい。さらに、ボール座の摩耗抑制と、経時安定性のバランスを考慮すれば、10~40質量%が好ましく、15~40質量%であることが最も好ましい。
【0021】
(グアーガム誘導体)
本発明で用いるグアーガム誘導体については、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルのような極性溶剤に対しても、相溶し安定溶解することができるため、グアーガム誘導体と併用することができる。本発明では、水、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルと混合することで、インキ中で膨潤して、3次元立体構造を形成することができ、インキ増粘効果が得られるが、さらに、これらの成分によって、粘性を有するインキ流体潤滑層を形成することで、ボールとボールペンチップのボールの座間で適度な膜厚が形成され、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においてもボール座の摩耗の抑制と、書き味を向上することができる。さらに、ボールペンを用いた場合は、筆記時に強い剪断がかかりやすく、筆記時にボールの剪断などの衝撃により、一時的に3次元立体構造が解ける。このため、剪断によりインキ粘度が低くなり、書き味、筆跡の点ムラを抑制することで、筆記性を良好に保つことが可能となり、ボールペンにおいて、好適に用いることが可能である。
また、顔料粒子や樹脂粒子を用いる場合は、密度の高い3次元立体構造によって、顔料粒子や樹脂粒子が分散安定しやすく、前記粒子の分散安定性を保ちやすい。
【0022】
グアーガム誘導体は、ヒドロキシアルキルグアーガム、カルボキシメチルヒドロキシアルキルグアーガム、カチオン化グアーガム等が挙げられるが、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルとの相溶性を考慮し、本発明の効果を得られやすくするには、ヒドロキシアルキルグアーガムが好ましく、より考慮すれば、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0023】
ヒドロキシアルキルグアーガムについては、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルと相溶しやすいことで、インキ中で安定した膨潤作用が得られ、本発明の効果を得られやすくするには、グアーガムを原料に、水酸化ナトリウム及び酸化プロピレンを反応させ、ヒドロキシアルキルの置換度が0.1~2.0の範囲であることが好ましく、より考慮すれば、置換度が0.3~1.5の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、置換度が0.5~1.3の範囲である。
【0024】
グアーガム誘導体の重量平均分子量は、インキ中で膨潤して、3次元立体構造を安定的に形成しやすく、水、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルとの混合時の相溶安定性を考慮すれば、50万~500万であることが好ましく、より考慮すれば、重量平均分子量は100万~300万であることが好ましい。
【0025】
また、前記グアーガム誘導体の含有量については、インキ組成物全量に対し、0.1~3質量%がより好ましい。これは、上記範囲であると、インキ中で十分な膨潤作用が得られやすく、所望のボール座の摩耗抑制、書き味、筆記性を得られやすいためである。さらに、より考慮すれば、0.1~1.5質量%が好ましく、0.1~1質量%が好ましく、0.2~~0.7質量%が好ましい。
【0026】
(着色剤)
本発明に用いるに用いられる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料、顔料を併用しても良い。
【0027】
水性インキ組成物に用いる染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。
(a)直接染料としては、ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、同85、ダイレクトレッド1、同2、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、ダイレクトブルー1、同3、同15、同41、同71、同86、同106、同119、ダイレクトオレンジ6等、(b)酸性染料としては、アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、アシッドオレンジ56、アシッドイエロー3、同7、同17、同19、同23、同42、同49、同61、同92、アシッドレッド8、同9、同14、同18、同51、同52、同73、同87、同92、同94、アシッドブルー1、同7、同9、同22、同62、同90、同103、アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、アシッドバイオレット15、同17等、(c)塩基性染料としては、C.I.ベーシックイエロ-1、同2、同21、同7、同40、C.I.ベーシックオレンジ2、同14、同32、C.I.ベーシックレッド1、同1:1、同2、同9、同14、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同11:1、C.I.ベーシックブル-3、同7、同26、ベーシックグリ-ン4、C.I.ベーシックブラウン12、C.I.ベーシックブラック2、メチルバイオレット、ビクトリアブルーFB、マラカイトグリーン、ローダミンのシリーズ等、(d)その他の染料としては、ディスパーズイエロー82、同121、ディスパーズブルー7などの分散染料などが挙げられる。
【0028】
水性インキ組成物に用いる顔料としては、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
これらの染料や顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0029】
着色剤としては、顔料を用いることが好ましい、これは、顔料を用いることで、ボールペンの場合は、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働きやすく、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上し、書き味を向上し、ボール座の摩耗を抑制する効果が得られやすいため、顔料を用いることが好ましい。本発明のように、グアーガム誘導体を用いることで、インキを3次元立体構造とし、筆記時のインキ粘度が低粘度化するため、ボールとチップ本体の金属接触が起こりやすくなるため、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗が抑制できるため、顔料を用いることは好ましい。さらに、後述する界面活性剤による潤滑層と、顔料粒子とベアリング作用による相乗効果によって、潤滑性を保ちやすく、書き味を向上しやすいため、好ましい。
さらに、顔料粒子によって、ボールペンの場合はボールとチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こして、インキ漏れを抑制しやすいためである。また、顔料は、筆跡の堅牢性に優れ、特に耐光性に優れるため、好ましい。
【0030】
顔料について、カーボンブラックを含んでなることが好ましい、これは、顔料粒子自体がボールとボール座間で生じるベアリング効果が得られやすいためである。
さらに、カーボンブラックの中でも吸油量が50~300ml(/100g)であるカーボンブラックを用いることが、好ましい。これは、吸油量はカーボンブラックのつながりであるストラクチャーをあらわす代替特性であり、吸油量が大きいほどストラクチャーは大きくなる。吸油量が50~300ml(/100g)のカーボンブラックは、ボールとボール座間の隙間に適した大きさのストラクチャーであるため、効率的なベアリング効果が期待でき、ボール座の摩耗抑制を得られやすく、顔料分散安定性に適した大きさのストラクチャーとなるため顔料分散安定しやすく、さらに、カーボンブラック自体が、紙面上に残ることで、濃い鮮明な筆跡になりやすいため好ましい。さらに、ボール座の摩耗抑制、顔料分散性を考慮すれば、カーボンブラックの吸油量については、100~250ml(/100g)が好ましく、120~200ml(/100g)が好ましい。
カーボンブラックの吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーを示す特性であり、乾燥された一定量のカーボンブラックがDBP(ジブチルフタレート)を吸収する量をいいJIS K6221に規定される試験方法で測定される。
【0031】
顔料の平均粒子径については、顔料分散性を考慮すれば、1μm以下である顔料を用いることが好ましく、より考慮すれば、平均粒子径が0.5μm以下であることが好ましい。さらに、顔料粒子の形状については、球状、もしくは異形の形状のものなどが使用できるが、摩擦抵抗を低減することでボール座の摩耗抑制を考慮すれば、球状顔料粒子が好ましい。ここでいう球状顔料粒子とは、真球状に限定されるものではなく、略球状の顔料粒子や、略楕円球状の顔料粒子などでも良い。
また、顔料粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。
【0032】
着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1~30質量%が好ましい。これは1質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、30質量%を越えると、インキ中での溶解性や分散性に影響しやすいためで、より考慮すれば、3~20質量%が好ましく、さらに考慮すれば、5~15質量%である。
【0033】
(水)
本発明で用いる水としては、特に制限なく、例えば、イオン交換水、蒸留水、および水道水などの慣用の水を用いることができる。
【0034】
また、水溶性溶剤については、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を考慮し、水溶性溶剤を用いる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール溶剤、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。その中でも、本発明で用いるポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体との溶解安定性を考慮すれば、多価アルコール溶剤を用いることが好ましい。多価アルコール溶剤とは、二個以上の水酸基が脂肪族あるいは脂環式化合物の相異なる炭素原子に結合した化合物である溶剤であり、その中でも、2価または3価の水酸基を有する多価アルコールを少なくとも含有することが、好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0035】
水溶性溶剤の含有量については、溶解性、インキ漏れ、にじみ等を考慮すると、インキ組成物全量に対し、0.1~25質量%が好ましく、3~20質量が好ましい。
【0036】
(界面活性剤)
本発明では、潤滑性を向上して、ボール座の摩耗抑制、書き味を向上することを考慮すれば、界面活性剤を含んでなることが好ましい。前記界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸などが挙げられる。その中でも、脂肪酸またはリン酸エステル系界面活性剤を含んでなることが好ましい。これは、脂肪酸基、リン酸基を有するものは、金属類に対して吸着力があり、ボールやチップ本体などに対して吸着することで、潤滑効果があり、さらに、グアーガム誘導体、水と併用すると、インキ中で膨潤して、密度の高い3次元立体構造を形成することで、粘性を有するインキ流体潤滑層を形成されることで、ボールとボールペンチップのボールの座間で適度な膜厚が形成され、より潤滑効果の高い潤滑層が形成されるため、ボール座の摩耗抑制効果が得られやすいためである。
【0037】
また、脂肪酸の種類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩が挙げられる。脂肪酸は、炭素数が12~24であることが好ましい。これは、上記範囲であると、ボールの潤滑性が向上しやすく、ボール座の摩耗抑制、書き味を向上しやすく、より考慮すれば、炭素数が16~20であることが好ましく、より高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制を考慮すれば、リノール酸またはその塩が好ましい。
【0038】
リン酸エステル系界面活性剤の種類としては、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系、短鎖アルコール系などが上げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいため、高筆圧下におけるボール座の摩耗抑制、書き味を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤は、直鎖アルコール系のラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系を用いることが、好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
前記界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望のボール座の摩耗抑制、書き味の向上が得られづらく、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になるおそれがあるため、インキ組成物全量に対し、0.1~5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.5~3.0質量%が好ましい。
【0040】
前記した界面活性剤以外のものとしては、ポリエチレングリコール系界面活性剤を、含んでなることが好ましい。これは、顔料粒子表面や、顔料粒子周辺にポリエチレングリコール系界面活性剤が存在することで、ボールとボールペンチップのボール座間に顔料粒子が入り込んだ場合、潤滑層を形成しやすく、潤滑効果が得られ、ボール座の摩耗を抑制しやすくなる。さらに、顔料粒子表面や、顔料粒子周辺にポリエチレングリコール系界面活性剤が存在することで、顔料の分散安定性を維持することが可能である。
上記のように、顔料については、顔料粒子をポリエチレングリコール系界面活性剤、溶媒を用いた顔料分散体として用いることが好ましい。
【0041】
ポリエチレングリコール系界面活性剤の質量平均分子量は、5000以下であることが好ましい。これは、上記範囲であれば、インキ中で溶解安定しやすく、ボール座の摩耗抑制、顔料分散性を安定的に保ちやすく、より考慮すれば、質量平均分子量は4000以下であることが好ましく、質量平均分子量は3000以下が好ましい。さらに、質量平均分子量は、500以上であることが好ましい。これは、顔料粒子表面やボールとボールペンチップのボール座間に介在しやすく、ボール座の摩耗抑制、顔料分散性を良好にしやすいためで、より考慮すれば、質量平均分子量は1000以上であることが好ましい。
【0042】
ポリエチレングリコール系界面活性剤の含有量について、インキ組成物全量に対し、0.1~5質量%であることが好ましい。これは、上記範囲であると、ボール座の摩耗抑制や、顔料分散性に優れた効果が得られやすいためである。さらに、より考慮すれば、0.3~3質量%が好ましく、0.5~2質量%が好ましい。
【0043】
これらの顔料としては、顔料分散性を考慮して、顔料をポリエチレングリコール系界面活性剤、溶媒を用いて、顔料分散させた顔料分散体を用いることが好ましく、より考慮すれば、顔料をポリエチレングリコール系界面活性剤、水、多価アルコールを用いて、水性顔料分散体を用いることが好ましく、さらに、予め顔料をポリエチレングリコール系界面活性剤、水、多価アルコールを用いて、水性顔料分散体を用いることが好ましい。
【0044】
(樹脂粒子)
本発明では、樹脂粒子を含んでなることが好ましい。これは、樹脂粒子が、ボールとボール座間に存在することによって、クッション作用することで、相対的に硬い顔料粒子がボールまたはボール座と接触することを抑制しやすく、ボールとボール座間の摩擦を低減することが可能であり、ボール座の摩耗抑制することができる。さらに、樹脂粒子によってボールとチップ先端の内壁との間の隙間における組成物の流動を制御して、インキ漏れを抑制しやすいため、好ましい。このとき、樹脂粒子は、無機物と比較して硬度が低いことから、粒子同士が一部変形などして、お互い密着するので、比較的小さい樹脂粒子が相互に微弱な凝集構造を形成し、インキ漏れを抑制すると考えられる。
【0045】
このような効果を得ることができる樹脂粒子としては、オレフィン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、スチレン-ブタジエン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、酢酸ビニル系樹脂粒子、アミノ基を有する樹脂粒子などが挙げられ、このうち、ボール座の摩耗抑制と、ペン先のインキ漏れ抑制効果が高いので、オレフィン系樹脂粒子またはアミノ基を有する樹脂粒子が好ましい。
【0046】
オレフィン系樹脂粒子の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、ボール座の摩耗抑制、インキ漏れ抑制を向上することを考慮すれば、ポリエチレンを用いることが好ましく、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレン、変性高密度ポリエチレンなどが挙げられる。その中でもボール座の摩耗抑制、インキ漏れ抑制効果を考慮すれば、低密度ポリエチレン、低分子ポリエチレン、変性ポリエチレンが好ましく、特に低密度ポリエチレンは、他種のポリエチレンよりも融点が低く、低密度ポリエチレンは、柔らかい性質のため、ボールとボール座の間でのクッション効果が得られやすく、ボール座の摩耗抑制が得られるためで、さらに、柔らかいため、ポリエチレン粒子が密着しやすく、粒子間の隙間を生じづらく、インキ漏れしづらいため、好適に用いることが可能である。低密度とは、密度が0.90~0.94(g/cm3)の低密度のものをいい、よりボール座の摩耗抑制、インキ漏れ抑制を考慮すれば、ポリエチレンの密度が、0.91~0.93(g/cm3)であることが好ましい。
オレフィン系樹脂粒子は、必要に応じてポリオレフィン以外の材料を含んでいてもよい。
【0047】
前記オレフィン系樹脂粒子の形状については、球状、もしくは異形の形状のものなどが使用できるが、摩擦抵抗を低減することを考慮すれば、球状樹脂粒子が好ましい。ここでいう球状樹脂粒子とは、真球状に限定されるものではなく、略球状の樹脂粒子や、略楕円球状の樹脂粒子などでも良い。
【0048】
また、アミノ基を有する樹脂粒子として、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子などが挙げられる。これらの中でも、潤滑性やインキ漏れ抑制を考慮すれば、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、メラミン樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0049】
また、樹脂粒子の含有量は、ボール座の摩耗抑制、インキ漏れ抑制を考慮すれば、インキ組成物全量に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、より考慮すれば、0.1~3質量%であることがより好ましく、0.1~1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
前記樹脂粒子の平均粒子径については、平均粒子径が小さい方が、ボールの回転抵抗を緩和し、ボール座の摩耗抑制しやすく、さらに、お互い密着して、微弱な凝集構造をとりやすく、インキ漏れを抑制しやすいため、10μm以下が好ましく、さらに、8μm以下が好ましく、より考慮すれば、7μm以下がより好ましい。一方、平均粒子径が小さすぎると、ボール座の摩耗抑制、インキ漏れ抑制効果が劣りやすいため、平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、より好ましくは、1μm以上が好ましく、より好ましくは、3μm以上が好ましい。また、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法や、コールターカウンター法(コールター社製)を用いて測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)を測定することができる。
【0051】
また、グアーガム誘導体以外のインキ粘度調整剤として剪断減粘性付与剤を含んでなることが好ましい。剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル酸重合体、多糖類としては、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ-カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガム、酸化セルロースなどや、会合型増粘剤としては、会合性疎水性基によってポリエステル系、ポリエーテル系、ウレタン変性ポリエーテル系、ポリアミノプラスト系などやアルカリ膨潤会合型増粘剤、ノニオン会合型増粘剤などが挙げられ、これらの剪断減粘性付与剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0052】
pH調整剤は、pHを調整し、顔料分散安定性の改善や、水性インキが接触する金属部品の腐食を防ぐために用いられる。pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられる。これらのうち、塩基性有機化合物を用いることが好ましく、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。
【0053】
防腐剤、防錆剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0054】
その他の添加剤は、所望により添加剤を含有することができる、具体的には、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、スチレン-ブタジエン系樹脂エマルジョン、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などの定着剤、尿素、ソルビット等の保湿剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、気泡抑制剤、消泡剤などを添加することができる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
インキ粘度については、20℃環境下、剪断速度384 sec-1で、インキ粘度は、70~1000mPa・sが好ましい、これは、上記範囲であると、本発明では3次元立体構造を形成することで、インキ流体潤滑層を形成され、ボールとボールペンチップのボールの座間で適度な膜厚が形成されるが、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においてもボール座の摩耗の抑制と、書き味を向上するのに適したインキ流体潤滑層を形成できるためである。より考慮すれば、100~700mPa・sが好ましく、さらに好ましくは、150~500mPa・sが好ましい。
【0056】
本発明のように、水、着色剤、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、グアーガム誘導体を含んでなる場合は、粘性指数nの指標を用いることができ、粘性指数nは、S=αDで示される粘性式中のnを指す。なお、Sは剪断応力(dyn/cm=0.1Pa)、Dは剪断速度(s-1)、αは粘性係数を示す。粘性指数nは、20℃において、ブルックフィールド社製DV-II粘度計(CPE-42ローター)を用いて、20℃で剪断速度1.92sec-1(回転数0.5rpm)及び剪断速度384sec-1(回転数100rpm)で、インキ粘度を測定して、算出することができる。
粘性指数nについては、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においてもボール座の摩耗の抑制と、書き味、筆記性、顔料分散性を考慮すれば、粘性指数n=0.4~0.8とすることが好ましく、。ボール座の摩耗の抑制と、書き味、筆記性、顔料分散性のバランスを考慮すれば、粘性指数n=0.5~0.7とすることが好ましい。
【0057】
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化ケイ素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。
【0058】
ボール直径については、特に限定されないが、0.1~2.0mm程度のボールを用いる。ボール直径が0.5mm以下とした小径のボール径であると、ボールとボール座の接触面積が小さくなる傾向となり、一定荷重における単位面積あたりの荷重が大きくなる。さらに同一距離の筆記をする場合にボールの直径が小さいほどボールの回転数が多くなるので、ボール座の摩耗が激しくなりやすいため、本発明で用いる水性ボールペン用インキ組成を用いると効果的であり、さらに、ボール直径が0.4mm以下であるとボール座の摩耗が進みやすいため、より効果的であるため、好ましい。
【0059】
また、ボール座の摩耗抑制、および書き味向上のために、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)を0.1~10nmとすることが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が、この範囲を越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きくなりやすいため、書き味やボール座の摩耗に影響が出やすく、また、この範囲を下まわると、ボールの表面に十分に顔料が載らないため、筆跡カスレなど筆記性に影響が出やすい。そのため、ボール座の摩耗抑制、および書き味を向上し、さらに十分な筆記性を得るためには、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.1~10nmとすることが好ましく、0.1~8nmとすることがより好ましい。
【0060】
ボール表面の算術平均粗さについて、表面粗さ測定器(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)により測定された粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
【0061】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
顔料分散体(カーボンブラッ吸油量:170ml/100g、一次粒子径:21nm) 60.0質量部
(顔料分散体の主な含有物:カーボンブラック12質量部、ポリエチレングリコール系界面活性剤3質量部、多価アルコール6質量部)
水 6.2質量部
ポリオキシアルキレングリセリルエーテル((化2)、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル)30.0質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 2.0質量部
リン酸エステル系界面活性剤 1.0質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
グアーガム誘導体 0.33質量部
【0062】
実施例1の水性ボールペン用インキ組成物は、予め水、多価アルコール、顔料、ポリエチレングリコール系界面活性剤を添加し、分散機で分散させて、顔料分散体を作製した。その後、顔料分散体、水、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、pH調整剤、リン酸エステル系界面活性剤、防錆剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌等してベースインキを作成した。
【0063】
その後、上記作製したベースインキを加温しながらグアーガム誘導体を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌して、実施例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
尚、実施例1のインキ粘度は、ブルックフィールド社製DV-II粘度計(CPE-42ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度384sec-1(回転数100rpm)、剪断速度1.92sec-1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定したところ、それぞれ200mPa・s、1600mPa・sであった。
また、粘性指数nは、0.61であった。
【0064】
実施例2~15、比較例1~2
表に示すようにインキ成分、チップ仕様を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2~の水性ボールペン用インキ組成物および水性ボールペンレフィルを得た。表に、評価結果を示す。
尚、実施例2、3のインキ粘度は、ブルックフィールド社製DV-II粘度計(CPE-42ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度384sec-1(回転数100rpm)、剪断速度1.92sec-1(回転数0.5rpm)の条件にてインキ粘度を測定し、粘性指数nを算出したところ、以下のような結果となった。
実施例2:
剪断速度384sec-1 :300mPa・s
剪断速度1.92sec-1 :3200mPa・s
粘性指数n :0.55
実施例3:
剪断速度384sec-1 :360mPa・s
剪断速度1.92sec-1 :3400mPa・s
粘性指数n :0.58
実施例4:
剪断速度384sec-1 :150mPa・s
剪断速度1.92sec-1 :600mPa・s
粘性指数n :0.74
【表1】
【表2】
【0065】
試験および評価
実施例及び比較例で作製した水性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボールを回転自在に抱持したボールペンチップをチップホルダーに介して具備したインキ収容筒内(ポリプロピレン製)に充填したレフィル(1.0g)を(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G-knock)に装着して、以下の試験および評価を行った。尚、高筆圧下耐摩耗試験、書き味の評価は、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用い、以下のような試験方法で評価を行った。
【0066】
高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験):ボールペン組立1週間後に、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に、20℃で、荷重400gf、筆記角度65°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
【0067】
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
【0068】
筆記性試験:荷重100gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて、筆記試験後の筆跡を観察した。
筆跡に点ムラがない、または少ないもの ・・・◎
筆跡に点ムラが若干あるが、実用上問題ないレベルのもの ・・・○
筆跡に点ムラがあり、実用上に影響があるもの ・・・△
筆跡に点ムラが多いもの ・・・×
【0069】
顔料分散性試験: 実施例1~15、比較例1~2のインキ組成物を直径15mmの密開閉ガラス試験管に入れて、50℃、30日間放置した後、それぞれのインキ組成物をスライドガラスに採取し、光学顕微鏡を用いて観察し、下記評価基準でインキ組成物の顔料分散性を評価した。
凝集体が確認されず、均一に分散されている良好な状態。 ・・・◎
凝集体がわずかに確認されたが、実用上問題のないレベルであった。・・・○
凝集体が確認され、実用上懸念の残るレベルであった。 ・・・△
凝集体の沈降が見られた。 ・・・×
【0070】
表の結果より、実施例1~15では、高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験)、書き味、筆記性試験、顔料分散性試験ともに良好レベルの性能が得られた。
また、実施例1~15で、書き出し性能試験として、手書き筆記した後、チップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に24時間放置し、その後、手書き筆記したところ、カスレがほとんど無く、良好な結果となった。
【0071】
表の結果より、比較例1、2では、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルとグアーガム誘導体を併用しなかったため、高筆圧下耐摩耗試験が劣ってしまった。
【0072】
本発明では、実施例のようにインキ収容筒内に水性ボールペン用インキ組成物を充填したレフィルを軸筒に装着してボールペンとして用いているが、この形態に限定されるものではなく、前記インキ収容筒を軸筒として用いて水性ボールペン用インキ組成物を充填してそのままボールペンとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、水性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、キャップ式、出没式等の水性ボールペンなどとして、広く利用することができる。