(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079094
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】グラビア塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/08 20060101AFI20230531BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20230531BHJP
B41F 31/07 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B05C1/08
B41F9/00 Z
B41F31/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192545
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】595038198
【氏名又は名称】株式会社ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(72)【発明者】
【氏名】康井 義成
(72)【発明者】
【氏名】松本 充弘
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
4F040
【Fターム(参考)】
2C034AA21
2C250DC10
4F040AA22
4F040AB04
4F040AC01
4F040BA26
4F040BA28
4F040CB06
4F040CB11
4F040CB22
4F040CB33
4F040CB40
(57)【要約】
【課題】走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りする際に、基材の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができるグラビア塗工装置を提供すること。
【解決手段】塗工剤収容容器2内に供給される塗工剤10と塗工剤が供給される際に発生する塗工剤の泡70とを一緒にして、塗工剤収容容器内の塗工剤に浸漬しているグラビアロール6の回転によって発生される塗工剤のロール由来流れのグラビアロールより後流側に案内するように導入させて、泡が塗工剤収容容器内に散乱するのを抑止する泡散乱抑止部材30備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工剤収容容器内の塗工剤をグラビアロールおよびレードを用いて、走行している連続体状の薄い基材に対して均一な厚さでべた塗りするグラビア塗工装置であって、
前記塗工剤収容容器内に供給される前記塗工剤と前記塗工剤が供給される際に発生する前記塗工剤の泡とを一緒にして、前記塗工剤収容容器内の前記塗工剤に浸漬している前記グラビアロールの回転によって発生される前記塗工剤のロール由来流れの前記グラビアロールより後流側に案内するように導入させて、前記泡が前記塗工剤収容容器内に散乱するのを抑止する泡散乱抑止部材を前記塗工剤収容容器内に配置させたこと
を特徴とするグラビア塗工装置。
【請求項2】
前記泡散乱抑止部材は、前記塗工剤収容容器内に配置されており、前記塗工剤を前記塗工剤収容容器内へ供給する供給部の内側から前記塗工剤収容容器の内側面および底面を順に覆う泡通過領域および泡通過開口領域を有しており、前記塗工剤と泡とを一緒にして前記供給部から案内するとともに、前記泡通過開口領域を通して前記塗工剤の前記ロール由来流れの前記グラビアロールより後流側に向けて前記塗工剤収容容器内に導入させるように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のグラビア塗工装置。
【請求項3】
前記泡散乱抑止部材は、前記塗工剤収容容器内に保持されるために前記塗工剤収容容器の側面部の上縁部に掛けて取り付ける取付部を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグラビア塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアロールを用いて、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りすることができるグラビア塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア塗工装置は、グラビアロールを用いて、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りすることができる。通常、走行している連続体状の薄い基材は、塗工剤容器内の塗工剤をグラビアロールの表面に付着させてその塗工剤を連続体状の薄い基材の下面に塗工するようになっている。塗工剤は、フッ素系離型剤成分を含んでいる組成のものや、磁性材料を含んでいる組成のもの等の種々のものが対象とされる。なお、特許文献1には、グラビアロールを用いたグラビア塗工機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のグラビア塗工装置において、塗工剤がフッ素系離型剤成分を含んでいる組成のものを塗布対象として、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りしようとすると、フッ素系離型剤成分が塗工剤中に硬い泡を多数発生してしまうので、塗工剤が変質してしまう。この変質した塗工剤が、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工されると、基材の面には塗工スジが発生して塗工ムラが生じてしまい、塗工品質が著しく低下してしまう。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りする際に、基材の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができるグラビア塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解消するために、第1の態様のグラビア塗工装置は、塗工剤収容容器内の塗工剤をグラビアロールおよびレードを用いて、走行している連続体状の薄い基材に対して均一な厚さでべた塗りするグラビア塗工装置であって、前記塗工剤収容容器内に供給される前記塗工剤と前記塗工剤が供給される際に発生する前記塗工剤の泡とを一緒にして、前記塗工剤収容容器内の前記塗工剤に浸漬している前記グラビアロールの回転によって発生される前記塗工剤のロール由来流れの前記グラビアロールより後流側に案内するように導入させて、前記泡が前記塗工剤収容容器内に散乱するのを抑止する泡散乱抑止部材を前記塗工剤収容容器内に配置させたことを特徴とする。
【0007】
第1の態様のグラビア塗工装置によれば、前記塗工剤収容容器内に供給される前記塗工剤と前記塗工剤が供給される際に発生する前記塗工剤の泡とを一緒にして、前記塗工剤収容容器内の前記塗工剤に浸漬している前記グラビアロールの回転によって発生される前記塗工剤のロール由来流れの前記グラビアロールより後流側に案内するように導入させて、前記泡が前記塗工剤収容容器内に散乱するのを抑止する泡散乱抑止部材を備える。泡散乱抑止部材が設けられているので、多数の泡が発生しても、塗工剤収容容器内の塗工剤中に多数の泡が拡散されず、塗工剤に脈動を発生しないので、塗工剤が変質しない。このため、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りする際に、基材の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができる。
【0008】
第2の態様のグラビア塗工装置は、前記泡散乱抑止部材が、前記塗工剤収容容器内に配置されており、前記塗工剤を前記塗工剤収容容器内へ供給する供給部の内側から前記塗工剤収容容器の内側面および底面を順に覆う泡通過領域および泡通過開口領域を有しており、前記塗工剤と泡とを一緒にして前記供給部から案内するとともに、前記泡通過開口領域を通して前記塗工剤の前記ロール由来流れの前記グラビアロールより後流側に向けて前記塗工剤収容容器内に導入させるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
第2の態様のグラビア塗工装置によれば、泡散乱抑止部材により案内されてきた泡は、塗工剤収容容器内において、塗工剤のロール由来流れのグラビアロールより後流側に向けて案内される。このため、泡がグラビアロール側には近づかないので、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りする際に、基材の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができる。
【0010】
第3の態様のグラビア塗工装置は、前記泡散乱抑止部材は、前記塗工剤収容容器内に保持するために前記塗工剤収容容器の側面部の上縁部に掛けて取り付ける取付部を有することを特徴とする。
【0011】
第3の態様のグラビア塗工装置によれば、泡散乱抑止部材は、取付部を用いることで、塗工剤収容容器の側面部の上縁部に簡単に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りする際に、基材の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができるグラビア塗工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のグラビア塗工装置の実施形態を示す断面を有する正面図である。
【
図2】比較例として通常用いられているグラビア塗工装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0015】
<グラビア塗工装置の全体構成>
図1は、本発明のグラビア塗工装置の実施形態を示す断面を有する正面図である。
図1に示すグラビア塗工装置1は、マイクログラビア塗工装置ともいい、グラビアロールを用いて、走行している連続体状の薄い基材に対して塗工剤を均一な厚さでべた塗りする。
図1に示すように、グラビア塗工装置1は、塗工剤収容容器2と、基材100を走行させる展張ロール3,4と、塗工剤タンク5と、グラビアロール6を有する。
【0016】
<塗工剤収容容器2>
図1に示す塗工剤収容容器2の構造例を説明する。塗工剤収容容器2は、塗工剤10を収容している。塗工剤収容容器2は、好ましくは配管7を介して、塗工剤の供給部としての塗工剤タンク5に接続されている。塗工剤収容容器2は、塗工剤供給ノズル8を有し、この塗工剤供給ノズル8は、配管7の一端部に接続されている。配管7の他端部は、塗工剤タンク5に接続されている。これにより、塗工剤10は、塗工剤タンク5から配管7と塗工剤供給ノズル8を通じて、塗工剤収容容器2内に供給される。塗工剤供給ノズル8は、好ましくは開閉バルブ(図示せず)を有しており、制御部50の指令により開閉バルブを開ければ、塗工剤タンク5から塗工剤収容容器2へ塗工剤10を供給できる。
【0017】
塗工剤収容容器2は、内底部11と、内底部11から連続して形成されている4方の側面部12を有する上部が開口された直方体状に形成されており、大量の塗工剤10を収容することができる。
【0018】
<グラビアロール6>
図1に示すグラビアロール6は、図示しない軸受けを用いて、中心軸6Cを中心にして回転可能に支持されている。グラビアロール6は、制御部50がモータMを駆動することで、回転方向Rに沿って連続回転する。この回転方向Rは、
図1の例では、時計回りである。グラビアロール6は、展張ロール3,4の中間位置に配置されている。グラビアロール6が連続回転することで、グラビアロール6の外周面6Bに形成されている刻印部からなるグラビアパターンには、塗工剤収容容器2内の塗工剤10が付着収容されるようになっている。グラビアロール6の直径は、例えば20mmから50mm位の小径に形成されている。グラビアロール6が回転すると、その回転によって塗工剤10が回転方向Rに沿って同方向(矢印P4)に流れる塗工剤10のロール由来流れが発生される。
【0019】
<展張ロール3,4>
展張ロール3,4は、制御部50がモータM1を駆動することにより、同期して回転方向R1に回転することで、連続体状の薄い基材100をR2方向に走行させる。グラビアロール6の回転方向Rと、基材100が走行するR2方向は、反対であることにより、グラビアロール6は塗工剤10を、基材100の下面101側に均一にべた塗りすることができる。基材100は、図示しない巻き出しロールに巻かれており、展張ロール3,4により走行された基材100は、最後に図示しない巻き取りロールに巻き取られる。
【0020】
<ドクターブレード20>
ドクターブレード20は、基材100を送るR2方向に関して、グラビアロール6の下流側に配置されている。このドクターブレード20の先端部21は、グラビアロール6の所定の軸方向長さに亘って形成されているグラビアパターンの軸長方向の全幅を両側に越える幅に渡って設けられている。ドクターブレード20は、グラビアロール6のグラビアパターン内に全幅に渡って適正量の塗工剤10を計量して充填させるとともに、グラビアパターンの両端から外側部分の塗工剤10を拭き取ることができる機能を有する。これによりグラビアパターン内に充填された適正量の塗工剤10が基材100の上面がフリーな下面101側に供給されて塗工される。
【0021】
<泡散乱抑止部材30>
次に、
図1に示す泡散乱抑止部材30について、説明する。
【0022】
この泡散乱抑止部材30は、塗工剤収容容器2内に配置されている。泡散乱抑止部材30は、ステンレス鋼等の金属や樹脂等により作られた板部材であり、側面部12の内面12Dと底面部11の内面11Dに対向するようにして配置されている。泡散乱抑止部材30は、塗工剤タンク5から塗工剤収容容器2内に塗工剤10が供給される際に発生する塗工剤10中の多数の泡70を塗工剤10と一緒に案内することで、多数の泡70が塗工剤収容容器2内に散乱するのを抑止する機能を有する。即ち、泡散乱抑止部材30は、塗工剤10と泡70とを一緒にして、塗工剤収容容器2内の塗工剤10に浸漬しているグラビアロール6の回転によって発生される塗工剤10のロール由来流れのグラビアロール6より後流側に案内するように導入させて、泡70が塗工剤収容2に散乱するのを抑止するように形成されている。
【0023】
この泡散乱抑止部材30は、塗工剤収容容器2内の塗工剤10中に多数の泡70を拡散させずに、塗工剤10に脈動が発生するのを防止する脈動防止板である。このため、泡散乱抑止部材30は、脈動防止板ともいう。また、泡散乱抑止部材30は、多数の泡70が塗工剤収容容器2内の塗工剤10において、無秩序に散乱するのを邪魔するための邪魔板でもある。
【0024】
更に説明すると、
図1に示すように、泡散乱抑止部材30は、第1泡散乱抑止板31と、第2泡散乱抑止板32と、取付部33とを有する。第1泡散乱抑止板31は、塗工剤収容容器2の内底部11の内面11Dに対向して平行になるように間隔をおいて配置されており、内面11Dとの間には、泡通過領域81が形成されている。また、第2泡散乱抑止板32は、塗工剤収容容器2の側面部12の内面12Dに対向して平行になるように間隔をおいて配置されており、内面12Dとの間には、泡通過領域82が形成されている。第1泡散乱抑止板31の一端部31A(
図1における右端部)と第2泡散乱抑止板32の一端部32A(
図1における下端部)は連続しており、好ましくは直交している。第1泡散乱抑止板31の他端部31B(
図1における左端部)と、側面部12の内面12Fとの間には、泡通過開口領域80が形成されている。
【0025】
取付部33は、ほぼ断面U字型を有しており、そのU字型の一端部33A(
図1における左端部)は第2泡散乱抑止板32の他端部32B(
図1における上端部)に連続して形成されている。取付部33のU字型の他端部33Bは、塗工剤収容容器2の外側に露出している。取付部33は、塗工剤収容容器2の側面部12の上縁部19に掛けてあり、泡散乱抑止部材30を、塗工剤収容容器2内に保持している。塗工剤供給ノズル8は、上縁19の付近に配置されているとともに、第2泡散乱抑止板32の他端部32Bの上部に対面している。
【0026】
(動作例)
次に、上述したグラビア塗工装置1の動作例を、説明する。
【0027】
図1に示すように、塗工剤10は、塗工剤収容容器2内に所定の液レベルまで収容されている。展張ロール3,4は、制御部50がモータM1を駆動することにより、同期して回転方向R1に回転することで、連続体状の薄い基材100をR2方向に走行させる。グラビアロール6は、制御部50がモータMを駆動することで、回転方向Rに沿って連続回転する。これにより、グラビア塗工装置1のグラビアロール6の外周面6Bにおいては、付着された塗工剤10がドクターブレード20によって計量されて適正量の塗工剤10がグラビアパターン内に充填され、続いて走行している連続体状の薄い基材100の下面101に対して塗工剤10を均一な厚さでべた塗りされる。
【0028】
図1に示すように、塗工剤10が、塗工剤タンク5から配管7と塗工剤供給ノズル8を通じて、塗工剤収容容器2内に供給されると、塗工剤10には塗工剤供給ノズル8付近において、例えばフッ素系離型剤成分が硬い泡70を多数発生してしまう。多数の泡70が発生して、もし塗工剤収容容器2内の塗工剤10中に多数の泡70を拡散させてしまうと、塗工剤10に脈動を発生させてしまうので、塗工剤10が変質してしまう。この変質している塗工剤10が、走行している連続体状の薄い基材100に対して塗工されると、基材100の下面101には塗工スジが発生して塗工ムラが生じてしまい、塗工品質が著しく低下してしまう。
【0029】
そこで、本発明の実施形態においては、このような不都合を解消するために、泡散乱抑止部材30を設けている。この泡散乱抑止部材30は、発生した多数の泡70が塗工剤10中に拡散しないようにして、塗工剤10に脈動が発生しないようにする。すなわち、塗工剤供給ノズル8から塗工剤収容容器2内に塗工剤10と一緒に供給され多数の泡70は、泡散乱抑止部材30により塗工剤収容容器2内に仕切るようにして形成されている泡通過領域82、泡通過領域81および、泡通過開口領域80部分のみを、矢印P1、P2、P3に沿って順に塗工剤10と一緒に案内されて、塗工剤収容容器2内のグラビアロール6が浸漬している部分における塗工剤10のロール由来流れ(矢印P4参照)のグラビアロール6より後流側に到達に達する。この塗工剤収容容器2内のグラビアロール6の近傍においては、グラビアロール6の回転方向Rの回転により、塗工剤10の上面付近には矢印P4方向のロール由来流れが発生させられている。この矢印P4方向のロール由来流れが塗工剤収容容器2内の泡70をグラビアロール6に近づくことを阻止するので、塗工剤収容容器2内に到達した泡70はグラビアロール6に近づくことは無い。
【0030】
これにより、多数の泡70が発生しても、塗工剤収容容器2内の塗工剤10中に多数の泡70が拡散されず、塗工剤10に脈動を発生しないので、塗工剤10が変質しない。この変質しない塗工剤10が、走行している連続体状の薄い基材100に対して塗工されると、基材100の下面101には塗工スジが発生せずに塗工ムラが生じないので、塗工品質の低下を防ぐことができる。
【0031】
(比較例)
次に、
図1に示す本発明の実施形態における塗工剤収容容器2と、通常用いられている塗工剤収容容器と、を比較するために、比較例として通常用いられている従来のグラビア塗工装置200を、
図2に示す。なお、
図2に示す比較例のグラビア塗工装置200の構成要素が、
図1に示す本発明の実施形態のグラビア塗工装置1と同様の個所には、同じ符号を記して、その説明を省略する。
【0032】
図2に示すように、通常用いられているグラビア塗工装置200に用いられている塗工剤収容容器202では、部材210が塗工剤供給ノズル8の付近に配置されている。この部材210は、塗工剤収容容器2の上縁部19付近に伸びているだけであるので、塗工剤10と一緒に供給された泡70は、その浮力によって塗工剤10の上面付近に滞留するとともに、塗工剤供給ノズル8の付近から、回転方向Rに回転しているグラビアロール6の回転によって発生される矢印P4方向のロール由来流れに乗せられてグラビアロール6の付近を通過する。
【0033】
このため、多数の泡70が発生して、塗工剤収容容器2内の塗工剤10中に多数の泡70を拡散させてしまうと、塗工剤10に脈動を発生させてしまうので、塗工剤10が変質してしまう。この変質している塗工剤10が、走行している連続体状の薄い基材100に対して塗工されると、基材100の下面101には塗工スジが発生して塗工ムラが生じてしまい、塗工品質が著しく低下してしまうことになる。
【0034】
以上説明したように、本発明の実施形態では、グラビア塗工装置1は、グラビアロール6を用いて、走行している連続体状の薄い基材100に対して塗工剤10を均一な厚さでべた塗りすることができる。このグラビア塗工装置1は、底面部11と、底面部11に連続する側面部12と、塗工剤10を供給する供給部としての塗工剤タンク5とを有し、供給部から供給された塗工剤10を収容して、塗工剤10をグラビアロール6に付着させて、基材10の下面101にべた塗りするための塗工剤収容容器2と、塗工剤収容容器2内に配置されて、供給部から側面部12の内面12Dと底面部11の内面11Dに至るまで、供給部から塗工剤収容容器2内に塗工剤10が供給される際に発生する塗工剤の泡70を塗工剤10と一緒に案内して泡70が塗工剤収容容器2内に散乱するのを抑止する泡散乱抑止部材30を備えている。
【0035】
これにより、多数の泡70が発生しても、塗工剤収容容器2内の塗工剤10中に多数の泡70が拡散されず、塗工剤10に脈動を発生しないので、塗工剤10が変質しない。このため、走行している連続体状の薄い基材100に対して塗工剤10を均一な厚さでべた塗りする際に、基材100の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができる。
【0036】
泡散乱抑止部材30は、塗工剤収容容器2内に保持するために塗工剤収容容器2の側面部12の上縁部19に掛けて取り付ける取付部33を有する。これにより、泡散乱抑止部材30は、取付部33を用いることで、塗工剤収容容器2の側面部12の上縁部19に簡単に取り付けることができる。
【0037】
グラビアロール6の面から基材100の面に塗工剤をべた塗りする際に、基材100の面上の塗工剤10の厚みを均一にするドクターブレード20を有する。泡散乱抑止部材30により案内されてきた泡70は、塗工剤収容容器2内において、ドクターブレード20が配置されている側に案内される。これにより、泡70がグラビアロール6側には近づかないので、走行している連続体状の薄い基材100に対して塗工剤10を均一な厚さでべた塗りする際に、基材100の面には塗工ムラを発生させることがなく、塗工品質の低下を防ぐことができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されず、必要に応じて種々の変更を行うことができる。例えば、
図1に示すグラビア塗工装置1の泡散乱抑止部材30の形状は、図示例に限定されず、塗工剤収容容器2の形状に合わせて、任意に変更できる。
【符号の説明】
【0039】
1 グラビア塗工装置
2 塗工剤収容容器
3、4 展張ロール
5 塗工剤タンク(塗工剤の供給部)
6 グラビアロール
7 配管
8 塗工剤供給ノズル
10 塗工剤
11 内底部
12 側面部
20 ドクターブレード(ブレードの例)
30 泡散乱抑止部材
31 第1泡散乱抑止板
32 第2泡散乱抑止板
33 取付部
50 制御部
70 泡
80 泡通過開口領域
81 泡通過領域
82 泡通過領域
100 基材
M、M1 モータ