(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007910
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】パッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20230112BHJP
A61L 2/07 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
F16J15/06 N
F16J15/06 A
A61L2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111045
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】390038999
【氏名又は名称】デンケン・ハイデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 勝久
【テーマコード(参考)】
3J040
4C058
【Fターム(参考)】
3J040AA11
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA01
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA06
3J040HA21
4C058AA12
4C058BB05
4C058EE01
4C058EE02
(57)【要約】
【課題】封止の対象となる容器の形状を簡素化することのできるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置を提供する。容器の内部空間を封止する機能を向上することのできるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置を提供する。
【解決手段】パッキン4は、内径側空間IR1と外径側空間IR2とに凹部32を区画する本体部41と、外径部42と、内径部43とを備える。本体部41は、内径側空間IR1と外径側空間IR2とを接続する接続部417を含む。外径部42は、蓋3に接触する面4212、4222、および4232と、外径側空間IR2に面する面4211、4221、および4231とを含む。内径部43は、本体部41から接触位置431まで延在し、かつ下方向で外部に面する面432と、面432の上方向に設けられ、上方向で内径側空間IR1に面する面434とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器および蓋で構成される内部空間を封止し、前記容器の縁と接触し、かつ前記蓋の凹部に取り付けられるパッキンであって、
前記内部空間に面する内径側空間と、前記内径側空間よりも外径側の外径側空間とに前記凹部を区画する本体部と、
前記本体部の外周面の一部から外径方向に突出する外径部と、
前記本体部の内周面から内径方向に突出する内径部とを備え、
前記本体部は、前記内径側空間と前記外径側空間とを接続する接続部を含み、
前記外径部は、
第1の方向で前記蓋に接触する第1の外径部面と、
外径方向で前記蓋に接触する第2の外径部面と、
前記第1の方向とは反対の方向である第2の方向で前記蓋に接触する第3の外径部面と、
前記外径側空間に面する第4の外径部面とを含み、
前記内径部は、
前記本体部から前記縁と接触する位置である接触位置まで延在し、かつ前記第1の方向で外部に面する第1の内径部面と、
前記第1の内径部面の前記第2の方向に設けられ、前記第2の方向で前記内径側空間に面する第2の内径部面とを含む、パッキン。
【請求項2】
前記外径部は、
前記本体部の外周面の一部から外径方向に突出した外径部下部であって、前記外径側空間に対して前記第2の方向で面する前記第4の外径部面の第1の部分と、前記第1の外径部面とを含む外径部下部と、
前記外径部下部の外径側端部から前記第2の方向に突出した外径部中央部であって、前記外径側空間に対して内径方向で面する前記第4の外径部面の第2の部分と、前記第2の外径部面とを含む外径部中央部と、
前記外径部中央部の前記第2の方向の端部から内径方向に突出した外径部上部であって、前記外径側空間に対して前記第1の方向で面する前記第4の外径部面の第3の部分と、前記第3の外径部面とを含む外径部上部とを含む、請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
前記パッキンの延在方向を法線とする断面で見た場合に、前記本体部の内周面と前記第2の内径部面との境界部は、曲面形状を有し、
前記外径部が突出した前記本体部の外周面の部分よりも前記第1の方向に存在する前記本体部の外周面の部分は、前記蓋と接触する、請求項1または2に記載のパッキン。
【請求項4】
前記第2の内径部面は、前記接触位置よりも内径方向の側まで延在する、請求項1~3のいずれかに記載のパッキン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のパッキンと、
前記蓋と、
前記容器とを備えた、高圧蒸気滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置に関する。より特定的には、本発明は、容器および蓋で構成される内部空間を封止し、容器の縁と接触し、かつ蓋の凹部に取り付けられるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
院内感染防止のため、歯科診療用の器具は高圧蒸気滅菌装置(オートクレーブ)を用いて滅菌される。高圧蒸気滅菌装置は、容器および蓋によって外部から隔てられた内部空間に高温高圧の飽和水蒸気を充填することにより、内部空間に配置された被処理物の滅菌処理を行う。容器と蓋との間には、内部空間を封止するためのパッキンが設けられる。
【0003】
従来の高圧蒸気滅菌装置用のパッキンは、たとえば下記特許文献1などに開示されている。下記特許文献1のパッキンは、径方向の断面で見た場合に略V字形状を有している。このパッキンは、蓋部の被嵌合部に嵌合する本体部と、密着片とを備えている。密着片は、本体部からチャンバー側に突出し、径方向内側に向けて屈曲し、チャンバーの開口部端面に密着する。また、下記特許文献1の高圧蒸気滅菌装置では、容器(チャンバー)の上縁に、パッキンと接触するためのフランジ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパッキンを使用する際には、容器からパッキンを外れにくくするために、容器の上縁をフランジ加工する必要があった。その結果、封止の対象となる容器の形状が煩雑であるという問題があった。また、特許文献1のパッキンには、容器の内部空間を封止する機能が低いという問題があった。これらの問題は、高圧蒸気滅菌装置用のパッキンにおいてのみ生じるものではなく、パッキン全般において生じうるものである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その一の目的は、封止の対象となる容器の形状を簡素化することのできるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、容器の内部空間を封止する機能を向上することのできるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に従うパッキンは、容器および蓋で構成される内部空間を封止し、容器の縁と接触し、かつ蓋の凹部に取り付けられるパッキンであって、内部空間に面する内径側空間と、内径側空間よりも外径側の外径側空間とに凹部を区画する本体部と、本体部の外周面の一部から外径方向に突出する外径部と、本体部の内周面から内径方向に突出する内径部とを備え、本体部は、内径側空間と外径側空間とを接続する接続部を含み、外径部は、第1の方向で蓋に接触する第1の外径部面と、外径方向で蓋に接触する第2の外径部面と、第1の方向とは反対の方向である第2の方向で蓋に接触する第3の外径部面と、外径側空間に面する第4の外径部面とを含み、内径部は、本体部から縁と接触する位置である接触位置まで延在し、かつ第1の方向で外部に面する第1の内径部面と、第1の内径部面の第2の方向に設けられ、第2の方向で内径側空間に面する第2の内径部面とを含む。
【0009】
上記パッキンにおいて好ましくは、外径部は、本体部の外周面の一部から外径方向に突出した外径部下部であって、外径側空間に対して第2の方向で面する第4の外径部面の第1の部分と、第1の外径部面とを含む外径部下部と、外径部下部の外径側端部から第2の方向に突出した外径部中央部であって、外径側空間に対して内径方向で面する第4の外径部面の第2の部分と、第2の外径部面とを含む外径部中央部と、外径部中央部の第2の方向の端部から内径方向に突出した外径部上部であって、外径側空間に対して第1の方向で面する第4の外径部面の第3の部分と、第3の外径部面とを含む外径部上部とを含む。
【0010】
上記パッキンにおいて好ましくは、パッキンの延在方向を法線とする断面で見た場合に、本体部の内周面と第2の内径部面との境界部は、曲面形状を有し、外径部が突出した本体部の外周面の部分よりも第1の方向に存在する本体部の外周面の部分は、蓋と接触する。
【0011】
上記パッキンにおいて好ましくは、第2の内径部面は、接触位置よりも内径方向の側まで延在する。
【0012】
本発明の他の局面に従う高圧蒸気滅菌装置は、上記パッキンと、蓋と、容器とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、封止の対象となる容器の形状を簡素化することのできるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置を提供することができる。また本発明によれば、容器の内部空間を封止する機能を向上することのできるパッキンおよびこれを備えた高圧蒸気滅菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態における高圧蒸気滅菌装置100の構成を示す斜視図である。
【
図2】閉状態の高圧蒸気滅菌装置100の部分断面図である。
【
図4】上方から見た場合のパッキン4の構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の効果を説明する図である。
【
図6】比較例の構造および作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、以降の説明では第1の方向を下方向としており、第1の方向とは反対の方向である第2の方向を上方向としている。第1および第2の方向の各々は任意の方向であればよい。
【0016】
[高圧蒸気滅菌装置の構成]
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態における高圧蒸気滅菌装置100の構成を示す斜視図である。
図2は、閉状態の高圧蒸気滅菌装置100の部分断面図である。
【0018】
図1および
図2を参照して、高圧蒸気滅菌装置100(高圧蒸気滅菌装置の一例)は、筐体1と、容器2(容器の一例)と、蓋3(蓋の一例)と、パッキン4とを備えている。
【0019】
筐体1は、下部筐体11と、操作表示部12と、管路131と、ヒーター14と、上部筐体15と、係合部161および162とを含んでいる。
【0020】
下部筐体11は、略直方体の形状を有している。下部筐体11は、上面111と、収容部112と、凹部113とを含んでいる。下部筐体11の上面111には、下部筐体11の収容部112および凹部113の各々が形成されている。下部筐体11の収容部112は、容器2を収容するための窪みである。下部筐体11の凹部113の内部には、棒状の係合部161が固定されている。
【0021】
操作表示部12は、下部筐体11の上面111に設けられている。操作表示部12は、高圧蒸気滅菌装置100に関する各種操作を受け付け、高圧蒸気滅菌装置100に関する各種情報を表示する。
【0022】
管路131は、下部筐体11の内部に形成されている。管路131は、筐体1の外部と収容部112の内部とを接続している。制御部(図示無し)は、管路131を開閉可能である。
【0023】
ヒーター14は、容器2(チャンバー)の内部の底部21付近に取り付けられている。ヒーター14は、容器2を加熱する。
【0024】
上部筐体15は、下部筐体11の上部に設けられている。上部筐体15はヒンジ(図示無し)によって、下部筐体11の上面111を覆った状態である閉状態と、下部筐体11の上面111を露出した状態である開状態との間で揺動する。上部筐体15は下面151を含んでいる。上部筐体15の下面151には、フック状の係合部162が設けられている。係合部162は、上部筐体15に支持された軸(図示なし)を中心として揺動可能である。
【0025】
容器2は、収容部112の内部に対して着脱可能に設けられる。容器2は、底部21と、側部22と、開口23と、上縁24(容器の縁の一例)と、接続孔251とを含んでいる。側部22は、底部21から上方へ向かって延在している。開口23は、側部22の上縁24によって構成されている。容器2の側部22は上方向に切り立った形状を有しており、上縁24にフランジは設けられていない。側部22には、管路131と容器2の内部とを接続する接続孔251が形成されている。容器2は、ステンレスなどの金属などよりなっている。
【0026】
蓋3は、上方向から見た場合に円形状を有しており、上部筐体15の下面151に取り付けられている。蓋3は、閉状態において開口23を上方向から覆う。これにより、容器2の内部は密閉される。容器2および蓋3によって、加熱および加圧される内部空間IR3(内部空間の一例)が構成される。蓋3は、下面31と、凹部32(蓋の凹部の一例)と、段差部33とを含んでいる。蓋3の凹部32は、蓋3の下面31に形成されている。蓋3は環状を有しており、アルミニウムなどの金属などよりなっている。
【0027】
パッキン4は、容器2および蓋3で構成される内部空間IR3を封止する。パッキン4は、上方向から見た場合にたとえば環状を有している。パッキン4は、蓋3の凹部32に対して、取り外し可能な状態で取り付けられる。なお、パッキン4は、開口23を構成する上縁24の少なくとも一部と接触するものであればよく、その形状は任意である。パッキン4は、環状以外の閉曲線の形状を有していてもよい。パッキン4は、シリコンゴムやフッ化ゴム(FKM)などの弾性体よりなっている。パッキン4は任意の材料よりなっていればよいが、耐熱性を有し、熱膨張係数の小さい材料よりなっていることが好ましい。
【0028】
閉状態では、蓋3は開口23を覆い、パッキン4は上縁24と接触する。閉状態で係合部162を手動にて揺動させると、係合部162は係合部161と係合する。係合部162と係合部161との係合により、蓋3は閉状態でロックされる。閉状態では、パッキン4は蓋3と上縁24とによって上下方向から押しつぶされる。
【0029】
内部空間IR3は、被処理物を配置した状態で、真空脱気式または陽圧脱気式などの方法を用いて高圧蒸気で充填され、容器2および蓋3の外部(大気圧)よりも高圧になるまで加圧される。これにより、被処理物が滅菌処理される。コスト面からは、陽圧脱気式の方法を用いることが好ましい。
【0030】
真空脱気式の滅菌処理の方法は次の通りである。被処理物を内部空間IR3に配置した状態で、閉状態で蓋3をロックし、管路131および接続孔251を通じて内部空間IR3の空気を外部に排出する。これにより、内部空間IR3が減圧雰囲気となる。次に、管路131を遮断し、内部空間IR3に供給した水をヒーター14で加熱する。これにより、内部空間IR3で水が蒸気に変化し、内部空間IR3が容器2および蓋3の外部よりも高圧になる。
【0031】
陽圧脱気式の滅菌処理の方法は次の通りである。被処理物を内部空間IR3に配置した状態で、閉状態で蓋3をロックする。次に、管路131を遮断し、内部空間IR3に供給した水をヒーター14で加熱する。これにより、供給した水が蒸発して蒸気となり、内部空間IR3が容器2および蓋3の外部よりも高圧になる。次に、管路131を開放し、管路131および接続孔251を通じて内部空間IR3の空気を外部に排出する。これにより、内部空間IR3の蒸気密度が増加される。
【0032】
なお、必要な場合には、閉状態で蓋3をロックし、管路131を開放し、管路131および接続孔251を通じて内部空間IR3の空気をポンプなどで外部に排出することにより、内部空間IR3が容器2および蓋3の外部よりも低圧になるまで減圧されてもよい。
【0033】
以降の説明において、加圧時とは、内部空間IR3が容器2および蓋3の外部よりも高圧である状態を意味している。減圧時とは、内部空間IR3が容器2および蓋3の外部よりも低圧である状態を意味している。
【0034】
[パッキンの構成]
【0035】
図3は、
図2のA部拡大図である。
図4は、上方から見た場合のパッキン4の構成を示す平面図である。
【0036】
図3および
図4を参照して、閉状態では、凹部32は内部空間IR3と接続される。このため、内部空間IR3の加圧または減圧とともに凹部32内も加圧または減圧される。凹部32は、内径側面321と、天井面322と、外径側面323とを含んでいる。また凹部32は、パッキン4によって内径側空間IR1(内径側空間の一例)および外径側空間IR2(外径側空間の一例)に区画される。
【0037】
凹部32の内径側面321は、凹部32内の内径側の面である。凹部32の内径側面321は、内径側空間IR1に対して外径方向で面する。
【0038】
凹部32の天井面322は、凹部32の内径側面321の上端部から外径方向に延在している。凹部32の天井面322は、内径側空間IR1および外径側空間IR2の各々に対して下方向で面する。
【0039】
凹部32の外径側面323は、凹部32内の外径側の面である。凹部32の外径側面323は、凹部32の天井面322の外径側端部から下方向に延在している。
【0040】
段差部33は、凹部32と蓋3の外部とを区画しており、凹部32の外径側面323から内径側に突出している。段差部33は、上面331と、側面332とを含んでいる。段差部33の上面331は、凹部32の外径側面323の下端部から内径方向に延在している。
【0041】
段差部33の側面332は、段差部33における突出した先端部の面であり、段差部33の上面331の内径側端部から下方向に延在している。
【0042】
パッキン4は、本体部41(本体部の一例)と、外径部42(外径部の一例)と、内径部43(内径部の一例)とを含んでいる。なお、パッキン4は一の材料で一体的に構成されているが、ここでは説明の便宜のため、径方向に沿って本体部41、外径部42、および内径部43という3つの部分に分けて説明する。
【0043】
本体部41は、凹部32を内径側空間IR1と外径側空間IR2とに区画する。内径側空間IR1は内部空間IR3に面している。外径側空間IR2は、内径側空間IR1よりも外径側に存在する。
【0044】
本体部41は、外周面411および412(本体部の外周面の一例)と、内周面413と、上面414と、下面415および416と、接続部417(接続部の一例)とを含んでいる。本体部41の外周面411は、外径側空間IR2に対して外径方向で面する。本体部41の外周面412は、本体部41の外周面411よりも下方かつ内径側に設けられている。本体部41の外周面412は、段差部33の側面332に対して外径方向で接触する。本体部41の内周面413は、内径側空間IR1に対して内径方向で面する。本体部41の上面414は、凹部32の天井面322に対して上方向で接触する。本体部41の下面415は、段差部33の上面331に対して下方向で接触する平面である。本体部41の下面416は、本体部41の下面415よりも下方かつ内径側に設けられている。本体部41の下面416は、容器2および蓋3の外部に対して下方向で面する平面である。
【0045】
本体部41の上面414は凹部32の天井面322を押圧し、本体部41の下面415は段差部33の上面331を押圧する。また、本体部41の外周面412および下面415は段差部33と係合する。このように、本体部41が上下方向で蓋3を押圧する力と、本体部41と段差部33との係合とにより、パッキン4は、凹部32内に安定的に取り付けられる。
【0046】
本体部41の接続部417は、内径側空間IR1と外径側空間IR2とを接続する管路の少なくとも一部を構成する。ここでは接続部417は、本体部41の上面414に設けられた溝である。この場合、接続部417は凹部32の天井面322とともに、内径側空間IR1と外径側空間IR2とを接続する管路を構成する。接続部417は、ここでは8つである。8つの接続部417の各々は、パッキン4の中心に関する周方向に沿って等間隔に設けられている。接続部417は、内径側空間IR1、外径側空間IR2、および内部空間IR3の各々の圧力差を小さくする(理想的には、圧力差をゼロにする)役割を果たす。
【0047】
なお、接続部417は孔であってもよい。接続部417の個数は任意である。接続部417が複数個設けられる場合、複数の接続部417の各々は、パッキン4の中心に関する周方向に沿って等間隔で設けられることが好ましい。
【0048】
外径部42は、下部421(外径部下部の一例)と、中央部422(外径部中央部の一例)と、上部423(外径部上部の一例)とを含んでいる。外径部42の下部421は、本体部41の外周面411の下部から外径方向に突出している。下部421は、上面4211(第4の外径部面の一例)と、下面4212(第1の外径部面の一例)とを含んでいる。下部421の上面4211は、外径側空間IR2に対して上方向で面する。下部421の下面4212は、段差部33の上面331に対して下方向で接触する平面である。
【0049】
中央部422は、下部421の外径側端部から上方向に突出している。中央部422は、内周面4221(第4の外径部面の一例)と、外周面4222(第2の外径部面の一例)とを含んでいる。中央部422の内周面4221は、外径側空間IR2に対して内径方向で面する。中央部422の外周面4222は、凹部32の外径側面323に対して外径方向で接触する平面である。
【0050】
上部423は、中央部422の上端部から内径方向に突出している。上部423は、下面4231(第4の外径部面の一例)と、上面4232(第3の外径部面の一例)とを含んでいる。上部423の下面4231は、外径側空間IR2に対して下方向で面する。上部423の上面4232は、凹部32の天井面322に対して上方向で接触する平面である。
【0051】
言い換えれば、外径部42は、外径側空間IR2に面する内部の面(下部421の上面4211、中央部422の内周面4221、および上部423の下面4231)と、蓋3に対して接触する外部の面(下部421の下面4212、中央部422の外周面4222、および上部423の上面4232)とを含んでいる。
【0052】
内径部43は、本体部41の内周面413から内径方向に突出している。内径部43は、接触位置431(接触位置の一例)と、下面432および433(第1の内径部面の一例)と、上面434(第2の内径部面の一例)と、内周面435とを含んでいる。
【0053】
内径部43の接触位置431は、パッキン4が容器2の上縁24と接触する位置である。
【0054】
内径部43の下面432は、本体部41の下面416から接触位置431まで延在しており、下方向で外部に面する。
【0055】
内径部43の下面433は、内径部43の接触位置431から内径方向に延在しており、内径側空間IR1に対して下方向で面する。本体部41の下面416と、内径部43の下面432および433とは同一平面を構成している。
【0056】
内径部43の上面434の少なくとも一部は、内径部43の下面432の鉛直方向上側に設けられている。内径部43の上面434は、内径側空間IR1に対して上方向で面する平面である。内径部43の上面434は、接触位置431よりも内径方向の側まで延在している。
図3の断面(パッキン4の延在方向を法線とする断面)で見た場合に、本体部41の内周面413と内径部43の上面434との境界部436(境界部の一例)は、曲面形状を有している。
【0057】
内径部43の内周面435は、内径側空間IR1に対して内径方向で面する。内径部43の内周面435と凹部32の内径側面321とにより径方向で挟まれた空間によって、内部空間IR3と凹部32とが接続される。
【0058】
[実施の形態の効果]
【0059】
図5は、本発明の一実施の形態の効果を説明する図である。
図6は、比較例の構造および作用を説明する図である。なお、
図5および
図6中の細線の矢印は、気体が押す力を示している。
【0060】
図5を参照して、加圧時には、内径側空間IR1の気体によって、パッキン4の内径部43の下面432は力F1で押される。この力F1により内径部43は弾性変形し、点線BLで示すように外部に向かって膨らむ(点線BLは実際よりも強調されて示されている)。この内径部43の上面434の膨らみによって容器2の上縁24の外周が取り囲まれ、蓋3およびパッキン4が容器2から外れにくくなる。その結果、本実施の形態によれば、蓋3およびパッキン4を保持するために容器2の上縁24をフランジ加工する必要がなくなり、容器2の形状を簡素化することができる。
【0061】
また本実施の形態によれば、蓋3とパッキン4との密着性を向上することができる。
図6を参照して、仮に比較例のように外径部42および外径側空間IR2が設けられない構造をパッキンが有する場合には、本体部41の内周面413は、加圧時の内径側空間IR1の気体によって力F11で押される。この力F11により、本体部41は外径方向に膨らみ、蓋3の凹部32の外径側面323を外径方向に押す。しかし、本体部41の径方向の幅(
図6中横方向の長さ)は大きいため、力F11による本体部41の膨らみ量は小さく、本体部41が凹部の外径側面323を押す力は小さい。このため、パッキンと蓋3の凹部の外径側面323との密着性は低い。ここで、本体部41が上下方向で蓋3を押圧する力によって、パッキンは凹部32内に安定的に取り付けられている。本体部41の径方向の幅が薄くなるとこの力が弱まるため、本体部41の径方向の幅を小さくすることはできない。
【0062】
一方、本実施の形態では、
図5に示すように外径部42の中央部422の内周面4221は、加圧時の外径側空間IR2の気体によって力F2で押される。この力F2により、外径部42は外径方向に膨らみ、蓋3の凹部の外径側面323を外径方向に押す。外径部42が本体部41とは別に設けられているため、本体部41によってパッキン4を凹部32内に安定的に取り付けつつ、外径部42の径方向の幅を小さくすることができる。力F2による外径部42の膨らみ量を大きくすることができ、外径部42が凹部32の外径側面323を押す力を大きくすることができる。その結果、パッキン4と蓋3の凹部32の外径側面323との密着性を向上することができる。
【0063】
また本実施の形態では、外径部42の上面4211、内周面4221、および下面4231は、加圧時の外径側空間IR2の気体によって力F3で押される。この力F3により、外径部42は外側に(外径側空間IR2の体積を増加させるように)膨らむ。外径部42の下面4212は段差部33の上面331を押し、外径部42の外周面4222は凹部32の外径側面323を押し、外径部42の上面4232は凹部32の天井面322を押す。これにより、外径部42の下面4212と段差部33の上面331との密着性、外径部42の外周面4222と凹部32の外径側面323との密着性、および外径部42の上面4232と凹部32の天井面322との密着性を向上することができる。
【0064】
また本実施の形態では、境界部436が加圧時の内部空間IR3の気体によって力F4で押される。この力F4により本体部41は段差部33に対して押しつけられる。その結果、本体部41の下面415と段差部33の側面332との密着性を向上することができる。
【0065】
なお、係合部162と係合部161との係合(
図1)により、パッキン4は蓋3と上縁24とによって上下方向から押しつぶされるため、パッキン4と容器2の上縁24との密着度は高い。このため、パッキン4と容器2の上縁24との間の経路LR2は、加圧時の内部空間IR3の気体が外部に漏れることが懸念される経路とはならない。加圧時の内部空間IR3の気体が外部に漏れることが懸念される経路は、蓋3とパッキン4との間の経路LR1である。また、経路LR2におけるパッキン4と容器2の上縁24との密着度が高いため、減圧時(たとえば内部空間IR3が10~30kPa程度)の外部から内部空間IR3への気体の流入を阻止することができる。
【0066】
本実施の形態によれば、上述のように加圧時の経路LR1における蓋3とパッキン4との密着性を向上することができる。これにより、容器2の内部空間IR3を封止する機能を向上することができる。
【0067】
また、内径部43の上面434が内径側空間IR1に対して上方向で面するため、蓋3を閉じる際に内径部43が上縁24から受ける上向きの力F5により、内径部43は上方に撓むことができる。これにより、蓋3を閉じる際に容器2の上縁24から受ける抵抗力を小さくすることができ、蓋3を閉じやすくすることができる。
【0068】
一例として、本実施の形態においては、パッキン4を用いることで、内部空間IR3を0.5MPa~0.7MPaまで加圧することが可能であり、内部空間IR3を50kPa~60kPaまで減圧することができる。
【0069】
[その他]
【0070】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 筐体
2 容器(容器の一例)
3 蓋(蓋の一例)
4 パッキン(パッキンの一例)
11 筐体の下部筐体
12 筐体の操作表示部
14 筐体のヒーター
15 筐体の上部筐体
21 容器の底部
22 容器の側部
23 容器の開口
24 容器の上縁(容器の縁の一例)
31 蓋の下面
32 蓋の凹部(蓋の凹部の一例)
33 蓋の段差部
41 パッキンの本体部(本体部の一例)
42 パッキンの外径部(外径部の一例)
43 パッキンの内径部(内径部の一例)
100 高圧蒸気滅菌装置(高圧蒸気滅菌装置の一例)
111 下部筐体の上面
112 下部筐体の収容部
113 下部筐体の凹部
131 筐体の管路
151 上部筐体の下面
161,162 筐体の係合部
251 容器の接続孔
321 凹部の内径側面
322 凹部の天井面
323 凹部の外径側面
331 段差部の上面
332 段差部の側面
411,412 本体部の外周面(本体部の外周面の一例)
413 本体部の内周面
414 本体部の上面
415,416 本体部の下面
417 本体部の接続部(接続部の一例)
421 外径部の下部(外径部下部の一例)
422 外径部の中央部(外径部中央部の一例)
423 外径部の上部(外径部上部の一例)
431 内径部の接触位置(接触位置の一例)
432,433 内径部の下面(第1の内径部面の一例)
434 内径部の上面(第2の内径部面の一例)
435 内径部の内周面
436 本体部の内周面と内径部の上面との境界部(境界部の一例)
4211 外径部の下部の上面(第4の外径部面の一例)
4212 外径部の下部の下面(第1の外径部面の一例)
4221 外径部の中央部の内周面(第4の外径部面の一例)
4222 外径部の中央部の外周面(第2の外径部面の一例)
4231 外径部の上部の下面(第4の外径部面の一例)
4232 外径部の上部の上面(第3の外径部面の一例)
F1,F2,F3,F4,F5,F11 パッキンに加わる力
IR1 内径側空間(内径側空間の一例)
IR2 外径側空間(外径側空間の一例)
IR3 内部空間(内部空間の一例)
LR1,LR2 経路