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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079100
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230531BHJP
【FI】
G02B7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192553
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】安田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 遼太朗
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AD01
(57)【要約】
【課題】ゴースト・フレアを低減する。
【解決手段】光学系10は第1の光学部分13と第2の光学部分14とを有する。第1の光学部分13は第1の境界に光軸oxの周囲に光軸oxに沿って延在する少なくとも1つの第1の溝g1を有する。第1の溝g1は入射光に対して反射光を減衰させる。第2の光学部分14は第2の境界に光軸oxの周囲に光軸oxに沿って延在する少なくとも1つの第2の溝g2を有する。第2の溝g2は入射光に対して反射光を減衰させる。第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、第1の光学部分13より第2の光学部分14側において第1の溝g1の少なくとも一部が覆われる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を通る光を含む光束を進行させうる領域と外部領域との第1の境界に、前記光軸の周囲に前記光軸に沿って延在し且つ前記光軸から外側に陥凹する形状であり且つ入射光に対して反射光を減衰させる少なくとも1つの第1の溝を有する第1の光学部分と、
前記光軸に沿って前記第1の光学部分と並んで位置し、前記光束を進行させうる領域と外部領域との第2の境界に、前記光軸の周囲に前記光軸に沿って延在し且つ前記光軸から外側に陥凹する形状であり且つ入射光に対して反射光を減衰させる少なくとも1つの第2の溝を有する第2の光学部分と、を備え、
前記第1の光学部分側から前記光軸に沿って見て、前記第1の光学部分より前記第2の光学部分側において、前記第1の溝の少なくとも一部が覆われる
光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の光学系において、
前記第1の光学部分及び前記第2の光学部分では、前記光軸を通る光を含む光束を進行させうる領域が中空であり、
前記第1の光学部分は、前記第1の境界を内周面として有し、
前記第2の光学部分は、前記第2の境界を内周面として有する
光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の光学系において、
前記光軸に沿って前記第1の光学部分側から見て、前記第1の光学部分より前記第2の光学部分側において、前記第1の溝の少なくとも一部は、前記第2の光学部分により覆われる
光学系。
【請求項4】
請求項3に記載の光学系において、
前記第1の溝に対して少なくとも1つの前記第2の溝は、前記光軸方向から見て位相がずれている
光学系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学系において、
前記第1の境界と、前記第2の境界とは、前記光軸から見た形状が異なる
光学系。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光学系において、
前記第2の溝の深さは、前記第1の溝の深さよりも浅い
光学系。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光学系において、
前記第1の光学部分は、複数の前記第1の溝を有し、
前記第2の光学部分は、複数の前記第2の溝を有する
光学系。
【請求項8】
請求項7に記載の光学系において、
前記第1の溝と、前記第2の溝との数が異なる
光学系。
【請求項9】
請求項8に記載の光学系において、
前記光軸に沿って前記第1の光学部分側から見て、前記光軸の周方向における、前記光軸を通り互いに交差する2直線の近傍の第1の溝は、該2直線からより離れた第1の溝よりも覆われる面積が大きい
光学系。
【請求項10】
請求項9に記載の光学系において、
前記光軸に沿って前記第1の光学部分側から見て、前記2直線における、より狭い角度範囲に位置する第1の溝は、より広い角度範囲に位置する第1の溝よりも覆われる面積が大きい
光学系。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の光学系と、
前記光学系を通過した光束の結像位置に位置し、前記光軸に沿って前記第1の光学部分側から見て前記2直線近傍に頂点を有する矩形の形状である撮像素子と、を備える
撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体像を形成する光学系においては、有効光束以外からの強い光が鏡筒内面、スペーサの内面に到達しうる。当該内面は黒色であって光を吸収するものの、反射光を完全に吸収することは難しく、当該反射光が結像面に到達する、ゴースト・フレアという現象が生じうる。
【0003】
ゴースト・フレア光の低減のために、光軸に垂直な断面において周期的な波形状である遮光構造をレンズ鏡筒の内周に設けることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009―025584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の遮光構造は、光軸に平行な光線を減衰させることができないため、ゴースト・フレアが発生し得る。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、ゴースト・フレアの発生を低減する光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による光学系は、
光軸を通る光を含む光束を進行させうる領域と外部領域との第1の境界に、前記光軸の周囲に前記光軸に沿って延在し且つ前記光軸から外側に陥凹する形状であり且つ入射光に対して反射光を減衰させる少なくとも1つの第1の溝を有する第1の光学部分と、
前記光軸に沿って前記第1の光学部分と並んで位置し、前記光束を進行させうる領域と外部領域との第2の境界に、前記光軸の周囲に前記光軸に沿って延在し且つ前記光軸から外側に陥凹する形状であり且つ入射光に対して反射光を減衰させる少なくとも1つの第2の溝を有する第2の光学部分と、を備え、
前記第1の光学部分側から前記光軸に沿って見て、前記第1の光学部分より前記第2の光学部分側において、前記第1の溝の少なくとも一部が覆われる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ゴースト・フレアが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る光学系を含むカメラの概略構成を示す構成図である。
図2】本実施形態の変形形態に係る光学系を含むカメラの概略構成を示す構成図である。
図3図1の第1の光学部分及び第2の光学部分のみを抜出した外観斜視図である。
図4図1の第1の光学部分のみを光軸方向から見た正面図である。
図5図2の第1の光学部分のみを光軸方向から見た正面図である。
図6図1の第2の光学部分のみを光軸方向から見た正面図である。
図7図6の第2の光学部分の変形例である。
図8図4の第1の光学部分及び図7の第2の光学部分を重ねて光軸方向から見た正面図である。
図9図2の第2の光学部分のみを光軸方向から見た正面図である。
図10図4の第1の光学部分及び図6の第2の光学部分を重ねて光軸方向から見た正面図である。
図11】第1の溝の数と第2の溝の数とが異なる第1の光学部分及び第2の光学部分を重ねて、撮像素子を配置した撮像装置を光軸方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0011】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る光学系10は、例えば、撮像装置11に適用される。光学系10は、被写体光束を受光面pssに結像させてよい。受光面pssには、例えば撮像素子12が配置されてよい。撮像素子12は、光学系10を通過した光束の結像位置に位置してよい。撮像素子12は、結像させた被写体像を撮像してよい。撮像素子12は、短辺及び長辺を有する矩形であってよい。
【0012】
光学系10は、第1の光学部分13及び第2の光学部分14を少なくとも含む。光学系10は、レンズ、曲面ミラー等の光束の結像作用を有する光学素子を含む。第1の光学部分13及び第2の光学部分14の両者ともに当該光学素子でない構成においては、光学系10は、少なくとも1つの当該光学素子15を含む。図2に示すように、第1の光学部分130及び第2の光学部分140の少なくとも1つが当該光学素子によって構成される場合は、光学系100は当該光学素子15を含まなくてよい。ただし、第1の光学部分130及び第2の光学部分140の少なくとも1つが当該光学素子である構成であっても、光学系100は、別の光学素子を更に含んでよい。
【0013】
以下の説明において、図1に示す、第1の光学部分13及び第2の光学部分14の両者が鏡筒16の内周の一部である構成を本実施形態と呼ぶこともある。また、図2に示す、第1の光学部分130及び第2の光学部分140の両者がレンズの一部である構成を本実施形態の変形例と呼ぶこともある。以下の説明において、本実施形態及び変形例の両者に共通する特徴を、本実施形態を用いて説明する。したがって、本実施形態の説明には、特に断りが無い限り、変形例の符号を参照することなく、変形例の説明も含まれる。また、変形例のみが有する特徴については、本実施形態とは別に変形例の特徴を説明する。
【0014】
本実施形態のみにおいて、光学系10は、アパーチャとして作用する第1の光学部分13及び第2の光学部分14を有してよい。又は、本実施形態及び変形例において、光学系10は、第1の光学部分13及び第2の光学部分14とは別にアパーチャを含んでよい。光学系10の構成要素は、鏡筒16、スペーサ、シート等を用いて保持されてよい。又は、後述するように、本実施形態のみにおいて、光学系10の構成要素である第1の光学部分13及び第2の光学部分14は、鏡筒16、スペーサ、シート等に一体化されてよい。
【0015】
後に詳細に説明するように、本実施形態のみにおいて、第1の光学部分13及び第2の光学部分14の少なくとも一方は、図1に示すように、鏡筒16の内周の一部分であってよい。又は、第1の光学部分13及び第2の光学部分14は、スペーサ、アパーチャ、シート等の鏡筒16とは別の光束を規制する部材であってよい。又は、変形例のみにおいて、図2に示すように、第1の光学部分130及び第2の光学部分140の少なくとも一方は、レンズ等であって、鏡筒160に支持されてよい。
【0016】
図3に示すように、光学系10は、光軸oxを有する。光学系10は、光学素子、スペーサ、アパーチャ、シート等の中心軸に対して、光軸oxに一致するように姿勢合わせが行われる。第1の光学部分13及び第2の光学部分14は、光学系10の光軸oxに沿って互いに並んで位置する。第1の光学部分13は、第2の光学部分14よりも対物側に配置されてよい。第2の光学部分14は、第1の光学部分13よりも撮像素子12側に配置されてよい。
【0017】
図4に示すように、第1の光学部分13は、第1の境界b1を有する。第1の境界b1は、光学系10の光軸oxを通る光を含む光束を進行させうる領域ltaと、当該領域ltaの外部領域oaとの境界である。第1の光学部分13は、第1の境界b1に、少なくとも1つの第1の溝g1を有する。より具体的には、第1の光学部分13は、複数の第1の溝g1を有する。
【0018】
図3に示すように、第1の溝g1は、光軸oxの周囲に、光軸oxに沿って、第1の境界b1上に延在する。図4に示すように、第1の溝g1は、光軸oxから外側に陥凹する形状である。第1の溝g1は、入射光に対して反射光を減衰させる。反射光は、入射した光が第1の溝g1で反射した光である。第1の溝g1は、例えば、黒色であることにより、反射光を減衰させてよい。
【0019】
光軸oxから見た第1の溝g1の形状は、楔型、言換えるとV字型であってよい。V字型の頂角は、60°以上90°以下であってよい。又は、光軸oxから見た第1の溝g1の形状は、放物線、双曲線、楕円、矩形、等脚台形、或いは扇形であってよい。
【0020】
複数の第1の溝g1は、光軸oxの軸回りに沿って均等に配置されていてよい。複数の第1の溝g1は光軸oxの周方向に沿って隙間なく均等に配置されてよい。したがって、光軸oxから見た第1の境界b1の形状は、星形多角形であってよい。星形多角性の内接円は、光線有効径より大きくてよい。
【0021】
本実施形態において、第1の光学部分13では、前述の光束を進行させうる領域ltaが中空である。外部領域oaは、光束を進行させる領域ltaを画定してよい。第1の光学部分13は、第1の境界b1を内周面として有してよい。第1の光学部分13は、例えば、円筒状、円環状等である。円筒状、円環状等である第1の光学部分13の中心軸と、光軸oxとは一致してよい。第1の光学部分13は、例えば、前述のように鏡筒16の軸方向における一部分であってよい。又は、第1の光学部分13は、スペーサ、アパーチャ及びシートのいずれかであってよい。第1の光学部分13は、鏡筒、スペーサ、又はアパーチャである構成において、アルミニウム合金又は樹脂により形成されてよい。
【0022】
又は、図5に示すように、変化例において、第1の光学部分130では、光束を進行させうる領域ltaは、光を透過する媒質である。第1の光学部分130は、第1の境界b1を外周面として有してよい。第1の光学部分130は、例えば星形であってよい。星形は、円状の媒質の端部から中心に向かって第1の溝g1が設けられる形状である。星形である第1の光学部分13の中心軸と、光軸oxとは一致してよい。
【0023】
図6に示すように、第2の光学部分14は、第2の境界b2を有する。第2の境界b2は、光学系10の光軸oxを通る光を含む光束を進行させうる領域ltaと、当該領域ltaの外部領域oaとの境界である。第2の光学部分14は、第2の境界b2に、少なくとも1つの第2の溝g2を有する。より具体的には、第2の光学部分14は、複数の第2の溝g2を有する。
【0024】
図3に示すように、第2の溝g2は、光軸oxの周囲に、光軸oxに沿って延在する。図6に示すように、第2の溝g2は、光軸oxから外側に陥凹する形状である。第2の溝g2は、入射光に対して反射光を減衰させる。第2の溝g2は、例えば、黒色であることにより、反射光を減衰させてよい。
【0025】
光軸oxから見た第2の溝g2の形状は、楔型、言換えるとV字型であってよい。V字型の頂角は、60°以上90°以下であってよい。又は、光軸oxから見た第2の溝g2の形状は、放物線、双曲線、楕円、矩形、等脚台形、或いは扇形であってよい。光軸oxから見た第2の溝g2の形状は、光軸oxから見た第1の溝g1の形状と同じであってよく、又は異なっていてよい。
【0026】
第2の溝g2の数は、第1の溝g1の数と同じであってよく、又は、異なっていてよい。第2の溝g2の深さは、第1の溝g1の深さと同じであってよく、又は、異なっていてよい。深さが異なる構成において、図7、8に示すように、第2の溝g2の深さd2は、好ましくは、第1の溝g1の深さd1(図4参照)より浅い。
【0027】
複数の第2の溝g2は、光軸oxの周方向に沿って均等に配置されていてよい。複数の第2の溝g2は光軸oxの周方向に沿って隙間なく均等に配置されてよい。したがって、第2の境界b2の光軸oxから見た形状は、星形多角形であってよい。星形多角性の内接円は、光線有効径より大きくてよい。第2の光学部分14における星形多角形の内接円は、第1の光学部分13における星形多角形の内接円と同じ大きさであってよい。
【0028】
図4、6に示すように、光軸oxから見た第2の境界b2の形状は、光軸oxから見た第1の境界b1の形状と同じであってよい。又は、図4、7に示すように、光軸oxから見た第2の境界b2の形状は、光軸oxから見た第1の境界b1の形状と異なっていてよい。図4、7において、形状の違いは、深さ及びV字型の頂角の違いによって生じているが、第1の溝g1及び第2の溝g2の数の違いにより生じてよい。
【0029】
本実施形態において、第2の光学部分14では、前述の光束を進行させうる領域ltaが中空である。外部領域oaは、光束を進行させる領域ltaを画定してよい。第2の光学部分14は、第2の境界b2を内周面として有してよい。第2の光学部分14は、円筒状、円環状等である。円筒状、円環状等である第2の光学部分14の中心軸と、光軸oxとは一致してよい。第2の光学部分14は、例えば、前述のように鏡筒16の軸方向における第1の光学部分13とは別の一部分であってよい。又は、第2の光学部分14は、スペーサ、アパーチャ、及びシートのいずれかであってよい。第2の光学部分14は、鏡筒、スペーサ、又はアパーチャである構成において、アルミニウム合金又は樹脂により形成されてよい。
【0030】
又は、図9に示すように、変形例において、第2の光学部分140では、光束を進行させうる領域ltaは、光を透過する媒質である。第2の光学部分140は、第2の境界b2を外周面として有してよい。第2の光学部分140は、円状であってよい。円状である第2の光学部分140の中心軸と、光軸oxとは一致してよい。
【0031】
図10に示すように、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、第1の光学部分13より第2の光学部分14側において、第1の溝g1の少なくとも一部が覆われる。第1の溝g1の少なくとも一部が覆われるとは、入射光を高い透過率で透過させる部材でなく反射及び減衰の少なくとも一方を生じさせる部材により覆われることを意味する。
【0032】
本実施形態において、第2の光学部分14が、鏡筒、スペーサ、アパーチャ等のように内部が中空である構成において、第1の溝g1の少なくとも一部は、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、第1の光学部分13より第2の光学部分14側で、第2の光学部分14の光軸方向における端面のうち、となり合う頂角に挟まれた部分により覆われてよい。第1の光学部分13と第2の光学部分14は、接して配置されてよい。変形例において、第2の光学部分140がレンズ等の透過性の材料である構成においては、第2の光学部分140における第1の溝g1を覆う部分が、黒色に着色されていてよい。又は、当該構成においては、第2の光学部分14を周方向から或いは光軸方向において保持する保持部分が黒色に着色されていてよい。
【0033】
第1の溝g1および第2の溝g2は周期的に配置されてよい。第1の溝g1に対して少なくとも1つの第2の溝g2は、光軸oxから見て位相がずれていてよい。言換えると、第1の溝g1に対して少なくとも1つの第2の溝g2は、周方向に沿ってずれていてよい。言い換えると、となり合う第1の溝g1の間にある凸部を第1の凸部、となり合う第2の溝g2の間にある凸部を第2の凸部とすると、第1の溝g1が第2の凸部で覆われていてよい。第2の溝g2が第1の凸部で覆われていてよい。位相がずれているとは、第1の溝g1および第2の溝g2が一致していないことである。
【0034】
第2の溝g2の数が、第1の溝g1の数と異なる構成においては、図11に示すように、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、光軸oxの周方向における、光軸oxを通り互いに交差する2直線sl1近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれは、当該2直線sl1からより離れた第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも大きくてよい。又は、当該2直線sl1近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれは、当該2直線sl1を2等分する2直線sl2近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも大きくてよい。直線sl1及び直線sl2は、任意に定められる仮想の直線である。直線sl1は、例えば、撮像装置11における光軸oxに沿って見て、適用される矩形の撮像素子12の対角線に合致してよい。又は直線sl1は、例えば、撮像装置11における光軸oxに沿って見て、矩形の撮像素子12の対角の頂点近傍を通る線であってよい。又は、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、撮像素子12の角近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれは、撮像素子12の短辺の中央近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも大きくてよい。第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、撮像素子12の角近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれは、撮像素子12の長辺の中央近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも大きくてよい。撮像素子12の角近傍は、撮像素子12の短辺の中央近傍及び撮像素子12の長辺の中央近傍よりも第1の溝g1及び第2の溝g2までの距離が近いため、反射光の影響を受けやすい。そこで、撮像素子12の短辺の中央近傍及び撮像素子12の長辺の中央近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも、撮像素子12の角近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれを大きくすることで、ゴースト・フレアの発生を低減し得る。位相のずれが大きいとは、光軸oxから見て第1の溝g1の隙間から第2の凸部が見える面積が、位相のずれが小さい箇所よりも大きいことである。位相のずれが大きいとは、第1の溝g1と第2の溝g2のずれが大きいことである。
【0035】
2直線sl1近傍の第1の溝g1と第2の溝g2とは、例えば、直線sl1から光軸oxを中心に所定の角度範囲内に位置する第1の溝g1及び第2の溝g2である。所定の角度範囲は、第1の溝g1及び第2の溝g2の頂角の大きさによって変動してよく、少なくとも1つの第1の溝g1及び第2の溝g2が当該所定の角度範囲に含まれるように定められてよい。より離れた第1の溝g1と第2の溝g2とは、2直線sl1近傍の第1の溝g1及び第2の溝g2を除く他の第1の溝g1及び第2の溝g2である。2直線sl1近傍の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれが、より離れた第1の溝g1よりも大きいとは、2直線sl1近傍の複数の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれの平均値が、より離れた複数の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれの平均値より大きいことを意味してよい。
【0036】
更に、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、2直線sl1における、より狭い角度範囲に位置する第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれは、より広い角度範囲に位置する第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも大きい。より狭い角度範囲に位置する第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれは、より広い角度範囲に位置する第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれよりも大きいとは、より狭い角度範囲に位置する複数の第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれの平均値は、より広い角度範囲に位置する第1の溝g1と第2の溝g2の位相のずれの平均値よりも大きいことを意味してよい。
【0037】
上述の2直線sl1に関する第1の溝g1を覆う面積の広狭を満たす構成において、矩形の撮像素子12は、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、当該2直線sl1近傍に矩形の頂点が位置してよい。
【0038】
本実施例において、第1の光学部分13及び第2の光学部分14は、分離した個別の部品であってよい。又は、第1の光学部分13及び第2の光学部分14は、一体成型される同じ部品であって、鏡筒、スペーサ、アパーチャ等の円筒状又は円環状の部品であってよい。
【0039】
以上のような構成の本実施形態の光学系10は、第1の境界b1に光軸oxの周囲に光軸oxに沿って延在し且つ光軸oxから外側に陥凹する形状であり且つ入射光に対して反射光を減衰させる少なくとも1つの第1の溝g1を有する第1の光学部分13と、光軸oxに沿って第1の光学部分13と並んで位置し、第2の境界b2に光軸oxの周囲に光軸oxに沿って延在し且つ光軸oxから外側に陥凹する形状であり且つ入射光に対して反射光を減衰させる少なくとも1つの第2の溝g2を有する第2の光学部分14と、を備え、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、第1の光学部分13より第2の光学部分14側において第1の溝g1の少なくとも一部が覆われる。このような構成により、光学系10は、有効光束以外の不要光線が第1の境界b1又は第2の境界b2に入射するとき、第1の溝g1又は第2の溝g2の内部で減衰させながら繰返し反射することにより、不要光線を大きく減衰させ得、更に光軸oxに平行で第1の溝g1に平行な不要光線を物体側に反射させ得る。したがって、光学系10は、ゴースト・フレアの発生を低減し得る。
【0040】
また、本実施形態の光学系10では、第1の光学部分13及び第2の光学部分14では、光軸oxを通る光を含む光束を進行させうる領域ltaが中空であり、第1の光学部分13は第1の境界b1を内周面として有し、第2の光学部分14は第2の境界b2を内周面として有する。このような構成の光学系10は、第1の光学部分13及び第2の光学部分14が、光軸oxに垂直な方向において同一の形状を有しているので、断面形状のダイスを利用したアルミ圧延引抜き加工により製造され得、又は、光軸oxに沿った両方向に引抜き可能な型を用いて樹脂により成形され得る。
【0041】
また、本実施形態の光学系10では、第2の溝g2の深さd2は、第1の溝g1の深さd1よりも浅い。このような構成により、光学系10は、図10に示すように同じ深さである構成に比べて、図8に示すように、第1の溝g1を覆う面積を拡大し得る。したがって、光学系10は、より多くの不要光線を遮光するので、ゴースト・フレアの発生を更に低減し得る。
【0042】
また、本実施形態の光学系10では、第1の光学部分13は複数の第1の溝g1を有し、第2の光学部分14は複数の第2の溝g2を有する。このような構成により、光学系10は、より多くの不要光線を減衰させるので、ゴースト・フレアの発生を更に低減し得る。
【0043】
また、本実施形態の光学系10では、第1の溝g1及び第2の溝g2の光軸oxから見た形状はV字型であり、当該V字型の頂角は60°以上90°以下である。このような構成により、光学系10は、第1の溝g1及び第2の溝g2が底面を有する形状および頂角が当該範囲外である構成に比べて、第1の溝g1及び第2の溝g2内部で不要光線を繰返し反射する可能性を高める。したがって、光学系10は、ゴースト・フレアの発生を更に低減し得る。また、当該V字型の頂角は60°以下であると、ゴースト遮蔽効果は高いが、製造が難しい。また、当該V字型の頂角は90°以上であると、製造は容易だが、ゴースト遮蔽効果が低い。したがってこのような構成により、光学系10の製造が容易化される。
【0044】
また、本実施形態の光学系10では、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、光軸oxの周方向における、光軸oxを通り互いに交差する2直線sl1の近傍の第1の溝g1は、当該2直線sl1からより離れた第1の溝g1よりも覆われる面積が大きい。ゴースト・フレアの影響は、第1の光学部分13及び第2の光学部分14における光束を進行させる領域ltaの外縁に近づくほど大きい。このような事象に対して、上述の構成を有する光学系10は、矩形の撮像素子12の各頂点を2直線sl1の近傍に位置させることにより、光束を進行させる領域ltaの外縁に最も近づく撮像素子12の部分における、大きなゴースト・フレアを低減させ得る。
【0045】
また、本実施形態の光学系10では、第1の光学部分13側から光軸oxに沿って見ると、2直線sl1における、より狭い角度範囲に位置する第1の溝g1は、より広い角度範囲に位置する第1の溝g1よりも覆われる面積が大きい。このような構成を有する光学系10は、長辺及び短辺を有する矩形の撮像素子12の短辺をより狭い角度範囲に位置させ且つ長辺をより広い角度範囲に位置させることにより、光束を進行させる領域ltaの外縁により近づく撮像素子12の短辺部分における、大きなゴースト・フレアを低減させ得る。
【0046】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0047】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0048】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。また、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0049】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0050】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の光学部分は、第2の光学部分と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0051】
10 光学系
11 撮像装置
12 撮像素子
13 第1の光学部分
14 第2の光学部分
15 光学素子
16 鏡筒
b1、b2 第1の境界、第2の境界
g1、g2 第1の溝、第2の溝
lta 光束を進行させうる領域
ox 光軸
pss 受光面
図1
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図11