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特開2023-79109連続繊維強化樹脂複合材料、その成形体及びその成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079109
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】連続繊維強化樹脂複合材料、その成形体及びその成形方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230531BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C08J5/04
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192565
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 悠介
(72)【発明者】
【氏名】田中 和人
【テーマコード(参考)】
4F072
4F206
【Fターム(参考)】
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AC06
4F072AC08
4F072AD04
4F072AD44
4F072AG03
4F072AH04
4F072AL02
4F072AL17
4F206AA11
4F206AA29
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD16
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB22
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、吸水特性、強度、弾性率及び成形後の射出樹脂との界面強度に優れる連続繊維強化樹脂複合材料を提供することにある。
【解決手段】本発明の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂を含み、前記連続繊維強化樹脂複合材料の領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であり、前記連続繊維強化樹脂複合材料の領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である、ことを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続強化繊維と熱可塑性樹脂を含む連続繊維強化樹脂複合材料であって、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の下記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であり、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の下記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である、
ことを特徴とする連続繊維強化樹脂複合材料。
領域A:一方の表面から厚み方向に、連続強化樹脂複合材料の全厚みの0%~((1/(連続強化繊維からなる基材の枚数×2))×100)%の領域
領域B:前記領域Aにおける前記表面から((1/(連続強化繊維からなる基材の枚数)×2)×100)%~51%の領域
【請求項2】
前記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂100体積%のうち、80体積%以上がポリプロピレン樹脂である、請求項1に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項3】
前記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂100体積%のうち、80体積%以上がポリアミド樹脂である、請求項1又は2に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料を含み、
前記領域Aに含まれる前記表面上に、23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%である熱可塑性樹脂が射出成形された、連続繊維強化樹脂複合材料成形体。
【請求項5】
連続強化繊維からなる基材と熱可塑性樹脂とを交互に積層した積層体を、プレス成形により、加熱及び冷却することを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
前記連続強化繊維がガラス繊維であり、
前記積層体の少なくとも一方の最外層に位置する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である、ことを特徴とする連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の連続繊維強化樹脂複合材料の成形方法であって、
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂とポリプロピレン樹脂とを含み、
前記熱可塑性樹脂のうち連続繊維強化樹脂複合材料内の占有体積が最も大きい熱可塑性樹脂の溶融温度以上に前記連続繊維強化樹脂複合材料を加熱した後に、前記連続繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面にポリプロピレン樹脂を射出成形で配置する、
ことを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維強化樹脂複合材料、その成形体及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械や自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等には、マトリックス樹脂材料にガラス繊維等の強化材が添加された複合材料成形体が使用されている。特に強度の観点から、強化繊維が連続繊維である連続繊維強化樹脂複合材料が望まれている。この連続繊維強化樹脂複合材料としては、強化繊維に添加する集束剤を工夫しているもの(例えば、以下の特許文献1参照)、融点と結晶化温度の差を工夫しているもの(例えば、以下の特許文献2参照)、樹脂材料に有機塩を加えているもの(例えば、以下の特許文献3参照)、成形前駆体の布帛を熱可塑性の樹脂で積層しているもの(例えば、以下の特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-238213号公報
【特許文献2】特許第5987335号公報
【特許文献3】特開2017-222859号公報
【特許文献4】特開2009-19202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、従来技術の連続繊維強化樹脂複合材料では、射出樹脂と組み合わせて成形した際に、射出樹脂との界面強度に優れるが吸水時の特性に劣る、または吸水時の特性に優れるが射出樹脂との界面強度に劣るため、界面強度と吸水時の特性を同時に達成することができないことを見出した。
【0005】
かかる従来技術の水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、吸水特性、強度、弾性率及び成形後の射出樹脂との界面強度に優れる連続繊維強化樹脂複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
連続強化繊維と熱可塑性樹脂を含む連続繊維強化樹脂複合材料であって、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の下記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であり、
前記連続繊維強化樹脂複合材料の下記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である、
ことを特徴とする連続繊維強化樹脂複合材料。
領域A:一方の表面から厚み方向に、連続強化樹脂複合材料の全厚みの0%~((1/(連続強化繊維からなる基材の枚数×2))×100)%の領域
領域B:前記領域Aにおける前記表面から((1/(連続強化繊維からなる基材の枚数)×2)×100)%~51%の領域
[2]
前記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂100体積%のうち、80体積%以上がポリプロピレン樹脂である、[1]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[3]
前記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂100体積%のうち、80体積%以上がポリアミド樹脂である、[1]又は[2]に記載の連続繊維強化樹脂複合材料。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料を含み、
前記領域Aに含まれる前記表面上に、23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%である熱可塑性樹脂が射出成形された、連続繊維強化樹脂複合材料成形体。
[5]
連続強化繊維からなる基材と熱可塑性樹脂とを交互に積層した積層体を、プレス成形により、加熱及び冷却することを含む[1]~[3]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
前記連続強化繊維がガラス繊維であり、
前記積層体の少なくとも一方の最外層に位置する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である、ことを特徴とする連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
[6]
[1]~[3]のいずれかに記載の連続繊維強化樹脂複合材料の成形方法であって、
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂とポリプロピレン樹脂とを含み、
前記熱可塑性樹脂のうち連続繊維強化樹脂複合材料内の占有体積が最も大きい熱可塑性樹脂の溶融温度以上に前記連続繊維強化樹脂複合材料を加熱した後に、前記連続繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面にポリプロピレン樹脂を射出成形で配置する、
ことを特徴とする、連続繊維強化樹脂複合材料の成形方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る連続繊維強化樹脂複合材料は、吸水特性、強度、弾性率、及び成形後の射出樹脂との界面強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
[連続繊維強化樹脂複合材料]
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む連続繊維強化樹脂複合材料であって、上記連続繊維強化樹脂複合材料の下記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であり、上記連続繊維強化樹脂複合材料の下記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である。
上記領域Aとは、一方の表面から厚み方向に連続繊維強化樹脂複合材料の全厚みの0%~((1/(連続強化繊維からなる基材の枚数×2))×100)%の範囲の領域である。上記領域Aは上記一方の表面を少なくとも含み、上記一方の表面から全厚みの((1/(連続強化繊維からなる基材の枚数×2))×100)%まで領域としてよい。
上記領域Bは、上記領域Aにおける上記表面から厚み方向に連続繊維強化樹脂複合材料の全厚みの((1/(連続強化繊維基材の枚数)×2)×100)%~51%の範囲の領域である。
【0010】
上記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の上記吸水率は、0.0050~0.35質量%であることが好ましく、0.01~0.30質量%であることがより好ましい。
上記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率が上記範囲であると、連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体の優れた吸水特性、並びに連続繊維強化樹脂複合材料と該連続繊維強化樹脂複合材料の表面に配置される熱可塑性樹脂との優れた接着性を発現することができる。
上記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率は、上記領域Aが含まれる表面と反対の表面側から研磨を行い、領域A以外の部分を削った後、得られた領域Aを真空乾燥により絶乾し、80℃の水に18時間浸漬させた後に、80℃57RH%で200時間静置したのち、23℃、50%RHで24時間静置した後の吸水率を測定し、得られた質量と絶乾時の質量から領域Aの吸水率を測定し、電気炉による領域Aの樹脂を飛ばした際に得られる領域Aに含まれる連続強化繊維の質量から、求めることができる。なお、領域Aに含まれる連続強化繊維は吸水しないものとして求めてよい。
上記領域Aに複数の熱可塑性樹脂が含まれる場合、少なくとも一部(例えば、領域Aに含まれる全熱可塑性樹脂100質量%に対して50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上)の熱可塑性樹脂)の熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことが好ましく、全ての熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことがより好ましい。
上記領域Aに複数の熱可塑性樹脂が含まれる場合、少なくとも一部(例えば、領域Aに含まれる全熱可塑性樹脂100体積%に対して50体積%超(好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、特に好ましくは90体積%以上)の熱可塑性樹脂)の熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことが好ましい。
【0011】
上記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率は、0.50~2.5質量%であることが好ましく、1.0~2.0質量%であることがより好ましい。
上記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率が上記範囲であると、上記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂と連続強化繊維の接着が良好になり、連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体がすぐれた強度及び弾性率を発現することができ、また、連続繊維強化樹脂複合材料の表面に配置された熱可塑性樹脂の根元部の強度が強くなるため、優れた強度を発現する連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得ることができる。
上記領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率は、上記領域Aに含まれる表面側及び上記領域Aに含まれる表面と反対の表面側から研磨を行い、領域B以外の部分を削った後、得られた領域Bを真空乾燥により絶乾し、80℃57RH%で200時間吸水させたのち、23℃、50%RHで24時間静置した後の質量を測定し、得られた質量と絶乾時の質量から領域Bの吸水率を測定し、電気炉による領域Bの樹脂を飛ばした際に得られる領域Bに含まれる連続強化繊維の質量から求めることができる。なお、領域Bに含まれる連続強化繊維は吸水しないものとして求めてよい。
上記領域Bに複数の熱可塑性樹脂が含まれる場合、少なくとも一部(例えば、領域Bに含まれる全熱可塑性樹脂100質量%に対して50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上)の熱可塑性樹脂)の熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことが好ましく、全ての熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことがより好ましい。
上記領域Bに複数の熱可塑性樹脂が含まれる場合、少なくとも一部(例えば、領域Bに含まれる全熱可塑性樹脂100体積%に対して50体積%超(好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、特に好ましくは90体積%以上)の熱可塑性樹脂)の熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことが好ましく、全ての熱可塑性樹脂が上記吸水率を満たすことがより好ましい。
【0012】
(連続繊維強化樹脂複合材料の形態)
連続繊維強化樹脂複合材料の形態は、特に制限されず、以下の種々の形態が挙げられる。例えば、連続強化繊維の織物や編み物、組紐、パイプ状のものと熱可塑性樹脂とを複合化した形態、一方向に引き揃えた連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを複合化した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を一方向に引き揃えて成形した形態、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる糸を織物や編み物、組紐、パイプ状にして成形した形態、が挙げられる。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、平板であってよく、連続強化繊維の層と熱可塑性樹脂との層を含む積層物であってよい。例えば、連続強化繊維の長さ方向が平板の表面に略平行に配置されていてもよい。なお連続強化繊維の層とは、連続強化繊維(例えば、連続強化繊維基材)を含む層であり、連続強化繊維の内部に熱可塑性樹脂が含浸している層であってよい。
連続繊維強化樹脂複合材料の製造前の中間材料の形態としては、連続強化繊維と樹脂繊維との混繊糸、連続強化繊維の束の周囲を樹脂で被覆したコーティング糸、連続強化繊維に予め樹脂を含浸させテープ状にしたもの、連続強化繊維(例えば、連続強化繊維基材)と熱可塑性樹脂フィルムを積層したもの、連続強化繊維を樹脂のフィルムで挟んだもの、連続強化繊維に樹脂パウダーを付着させたもの、連続強化繊維の束を芯材としてその周囲を樹脂繊維で組紐としたもの、強化繊維の間に予め樹脂を含浸させたもの等が挙げられる。
【0013】
(連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法)
連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法は、特に制限されず、以下の種々の方法が挙げられる。
例えば、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する基材(例えば、連続強化繊維からなる基材、熱可塑性樹脂からなる基材)を、所望の複合材料に合わせて裁断し、目的とする製品の厚みを考慮して必要枚数積層させ、金型形状に合わせてセットする。連続強化繊維基材と熱可塑性樹脂基材を積層させる際に、連続繊維強化樹脂複合材料の最外層にあたる熱可塑性樹脂基材が、黒色に着色されており、残りの熱可塑性樹脂基材が着色剤を含まないことが好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料の製造方法としては、連続強化繊維からなる基材と熱可塑性樹脂の層とを交互に積層した積層体を、プレス成形により、加熱及び冷却する製造方法が好ましい。上記方法において、連続強化繊維はガラス繊維であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の層は、熱可塑性樹脂フィルム等を用いてもよい。上記積層体は、少なくとも一方の最外層に位置する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であることが好ましく、両方の最外層に位置する熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であってよい。上記加熱及び冷却は、例えば、上記積層体を金型に入れ、該金型を特定温度まで上昇させる加熱と、その後室温まで戻す冷却であってよい。上記積層体は、少なくとも一方の最外層が熱可塑性樹脂の層であることが好ましく、両方の最外層が熱可塑性樹脂の層であることがより好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる連続強化繊維からなる基材の枚数としては、1枚であってもよいし、複数枚(例えば、2~75枚や3~50枚)であってもよい。上記連続強化繊維からなる基材は、連続強化繊維のみからなる基材であってよい。
【0014】
基材の裁断は、1枚ずつ行ってもよいし、所望の枚数を重ねてから行ってもよい。生産性の観点からは、重ねた状態で裁断することが好ましい。裁断する方法は任意の方法でよく、例えば、ウォータージェット、刃プレス機、熱刃プレス機、レーザー、プロッター等があげられる。断面形状にすぐれ、更に、複数を重ねて裁断する際に端面を溶着することで取扱い性がよくなる熱刃プレス機が好ましい。適切な裁断形状は、トライアンドエラーを繰り返すことでも調整できるが、金型の形状にあわせてCAE(computer Aided engineering)によるシミュレーションを行うことで設定することが好ましい。
【0015】
基材と熱可塑性樹脂との積層体を金型にセットした後に金型を閉じて圧縮する。そして、上記積層体に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度に金型を温調して熱可塑性樹脂を溶融させ賦型する。型締め圧力に特に規定はないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。また、ガス抜き等をするために一旦型締めをし、圧縮成形した後に一旦金型の型締め圧力を解除してもよい。圧縮成形の時間は、強度発現の観点からは、使用される熱可塑性樹脂が熱劣化しない範囲で長いほうが好ましいが、生産性の観点からは、好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内が適している。
【0016】
その他として、基材を金型に設置してダブルベルトプレス機により圧縮する成形方法や、連続プレス成形機により圧縮する成形方法、設置した基材の四方を囲むように型枠を設置し、ダブルベルトプレス機により加圧し成形する方法や、一つ又は複数の温度に設定した加熱用の圧縮成形機と、一つ又は複数の温度に設定した冷却用の圧縮成形機を用意し、基材を設置した金型を順番に、圧縮成形機に投入して成形する成形方法などが挙げられる。
【0017】
(連続強化繊維)
連続強化繊維としては、通常の連続繊維強化樹脂複合材料に使用されるものを用いてよい。
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維、アラミド繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いると、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂とポリアミド樹脂とを用いる場合、領域Bにおける熱可塑性樹脂との接着が一層良好になり、連続繊維強化樹脂複合材料の表面にハイブリッド成形等で配置された熱可塑性樹脂の根元部の強度を一層強くすることができる。
【0018】
連続強化繊維として、ガラス繊維を選択する場合、集束剤を用いてもよく、サイジング剤(集束剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましく、連続強化繊維の周りを被膜する樹脂と強い結合を作る集束剤であることにより、空隙率の少ない連続繊維強化樹脂複合材料を得ることができ、合成樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合には、集束剤は熱可塑性樹脂用の集束剤であることが好ましい。熱可塑性樹脂用の集束剤とは、例えば、ポリアミド樹脂を合成樹脂として選択する場合、シランカップリング剤として、ポリアミド樹脂の末端基であるカルボキシル基とアミノ基と結合しやすいものを選択する必要がある。具体的には例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシランやエポキシシランが挙げられる。結束剤としてはポリアミド樹脂と濡れ性のよい、又は表面張力の近い樹脂を用いる必要がある。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂のエマルジョンやポリアミド樹脂のエマルジョンやその変性体を選択することができる。潤滑剤としてはシランカップリング剤と結束剤を阻害しないものを用いる必要があり、例えば、カルナウバワックスが挙げられる。
【0019】
-シランカップリング剤-
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類、マレイン酸類等が挙げられる。合成樹脂としてポリアミドを用いる際には、アミノシラン類やマレイン酸類が好ましく、合成樹脂としてエポキシ樹脂を用いる際にはエポキシシラン類が好ましい。
【0020】
-潤滑剤-
潤滑剤は、ガラス繊維の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、目的に応じた通常の液体又は固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系又は鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0021】
-結束剤-
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m-キシリレンジイソシアナート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)及びイソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン系樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000~90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のホモポリマー及びコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20~90%とすることが好ましく、40~60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000~50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、複合成形体とした際の特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
【0022】
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。結束剤として用いられる熱可塑性樹脂は、連続強化繊維の周囲を被覆する樹脂と同種の熱可塑性樹脂及び/又は変性熱可塑性樹脂であると、複合材料となった後、ガラス繊維と熱可塑性樹脂の接着性が向上し、好ましい。
【0023】
更に、一層、連続強化繊維とそれを被覆する熱可塑性樹脂の接着性を向上させ、集束剤を水分散体としてガラス繊維に付着させる場合において、乳化剤成分の比率を低減、あるいは乳化剤不要とできる等の観点から、結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、変性熱可塑性樹脂が好ましい。
ここで、変性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の主鎖を形成し得るモノマー成分以外に、その熱可塑性樹脂の性状を変化させる目的で、異なるモノマー成分を共重合させ、親水性、結晶性、熱力学特性等を改質したものを意味する。
結束剤として用いられる変性熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリアミド系樹脂、変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
結束剤としての変性ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸等のオレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であり、公知の方法で製造できる。オレフィン系モノマーと不飽和カルボン酸とを共重合させたランダム共重合体でもよいし、オレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたグラフト共重合体でもよい。
【0024】
オレフィン系モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられ、これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
オレフィン系モノマーと、当該オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合比率としては、共重合の合計質量を100質量%として、オレフィン系モノマー60~95質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー5~40質量%であることが好ましく、オレフィン系モノマー70~85質量%、オレフィン系モノマーと共重合可能なモノマー15~30質量%であることがより好ましい。オレフィン系モノマーが60質量%以上であれば、マトリックスとの親和性が良好であり、また、オレフィン系モノマーの質量%が95質量%以下であれば、変性ポリオレフィン系樹脂の水分散性が良好で、連続強化繊維への均一付与が行いやすい。
【0025】
結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂は、共重合により導入したカルボキシル基等の変性基が、塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ類;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。結束剤として用いられる変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~200,000が好ましく、50,000~150,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から5,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から200,000以下が好ましい。
【0026】
結束剤として用いられる変性ポリアミド系樹脂とは、分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖や3級アミン成分等の親水基を導入した変性ポリアミド化合物であり、公知の方法で製造できる。
分子鎖中にポリアルキレンオキサイド鎖を導入する場合は、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の一部又は全部をジアミン又はジカルボン酸に変性したものを共重合して製造される。3級アミン成分を導入する場合は、例えばアミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、α-ジメチルアミノε-カプロラクタム等を共重合して製造される。
【0027】
結束剤として用いられる変性ポリエステル系樹脂とは、ポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合体で、かつ末端を含む分子骨格中に親水基を有する樹脂であり、公知の方法で製造できる。
親水基としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド基、スルホン酸塩、カルボキシル基、これらの中和塩等が挙げられる。ポリカルボン酸又はその無水物としては、芳香族ジカルボン酸、スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
スルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩、5-スルホオルトフタル酸塩等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
3官能以上のポリカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
これらの中で、変性ポリエステル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、全ポリカルボン酸成分の40~99モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。また、変性ポリエステル系樹脂を水分散液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0028】
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリオールとしては、ジオール、3官能以上のポリオール等が挙げられる。
ジオールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。3官能以上のポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0029】
変性ポリエステル系樹脂を構成するポリカルボン酸又はその無水物とポリオールとの共重合比率としては、共重合成分の合計質量を100質量%として、ポリカルボン酸又はその無水物40~60質量%、ポリオール40~60質量%であることが好ましく、ポリカルボン酸又はその無水物45~55質量%、ポリオール45~55質量%がより好ましい。
変性ポリエステル系樹脂の重量平均分子量としては、3,000~100,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、水分散性とする場合の乳化安定性の観点から100,000以下が好ましい。
【0030】
結束剤として用いる、ポリマー、熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結束剤の全量を100質量%として、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩より選択された1種以上のポリマーを50質量%以上、60質量%以上用いることがより好ましい。
【0031】
-ガラス繊維用の集束剤の組成-
連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、当該ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1~2質量%、潤滑剤を0.01~1質量%、結束剤を1~25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、0.1~2質量%が好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、更に好ましくは0.2~0.5質量%である。
【0032】
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、好ましくは1~25質量%、より好ましくは3~15質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
【0033】
-ガラス繊維用の集束剤の使用態様-
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調整してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する連続強化繊維としてのガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、更に好ましくは0.2~1質量%付与する。
ガラス繊維の集束性制御と界面接着強度向上の観点から、集束剤の付与量が、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として0.1質量%以上であることが好ましく、糸の取扱い性の観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0034】
尚、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合には、集束剤は、カップリング剤、潤滑剤、結束剤からなることが好ましい。カップリング剤としては炭素繊維の表面に存在する水酸基と相性の良いもの、結束剤としては選択した合成樹脂と、濡れ性が良いものや表面張力の近いもの、潤滑剤としてはカップリング剤と結束剤を阻害しないものを選択することができる。
【0035】
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、ガラス繊維、炭素繊維に用いる集束剤の種類、付与量を適宜選択すればよく、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
【0036】
-連続強化繊維の形状-
連続強化繊維は複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントであり、単糸数は、取扱い性の観点から30~15,000本であることが好ましい。連続強化繊維の単糸径は、強度の観点、及び、取り扱い性の観点から2~30μmであることが好ましく、4~25μmであることがより好ましく、6~20μmであることが更に好ましく、8~18μmであることが最も好ましい。
連続強化繊維の単糸径R(μm)と密度D(g/cm)の積RDは、連続強化繊維の取り扱い性と複合材料の強度の観点から、好ましくは5~100μm・g/cm、より好ましくは10~50μm・g/cm、更に好ましくは15~45μm・g/cm、より更に好ましくは20~45μm・g/cmである。
【0037】
密度Dは比重計により測定することができる。他方、単糸径(μm)は、密度(g/cm)と繊度(dtex)、単糸数(本)から、以下の式:
【数1】
により算出することができる。
【0038】
連続強化繊維の積RDを所定の範囲とするには、市販で入手可能な連続強化繊維について、連続強化繊維の有する密度に応じて、繊度(dtex)及び単糸数(本)を適宜選択すればよい。例えば、連続強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、密度が約2.5g/cmであるから、単糸径が2~40μmのものを選べばよい。具体的には、ガラス繊維の単糸径が9μmである場合、繊度660dtexで単糸数400本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、23となる。また、ガラス繊維の単糸径が17μmである場合、繊度11,500dtexで単糸数2,000本のガラス繊維を選択することにより、積RDは、43となる。連続強化繊維として炭素繊維を用いる場合、密度が約1.8g/cmであるから、単糸径が2.8~55μmのものを選べばよい。具体的には、炭素繊維の単糸径が7μmである場合、繊度2,000dtexで単糸数3,000本の炭素繊維を選択することにより、積RDは、13となる。連続強化繊維としてアラミド繊維を用いる場合、密度が約1.45g/cmであるから、単糸径が3.4~68μmのものを選べばよい。具体的には、アラミド繊維の単糸径が12μmである場合、繊度1,670dtexで単糸数1,000本のアラミド繊維を選択することにより、積RDは、17となる。
連続強化繊維、例えば、ガラス繊維は、原料ガラスを計量、混合し、溶融炉で溶融ガラスとし、これを紡糸してガラスフィラメントとし、集束剤を塗布し、紡糸機を経て、ダイレクトワインドロービング(DWR)、ケーキ、撚りを入れたヤーン等の巻き取り形態として製造される。連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、ヤーン、ケーキ、DWRに巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが最も好ましい。
【0039】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂は、連続繊維強化樹脂複合材料の領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であり、領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である。
領域Aに含まれている熱可塑性樹脂100体積%の内、23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%である熱可塑性樹脂が80体積%以上であることが好ましく、85体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。領域Aに含まれる熱可塑性樹脂は、1種であってもよいし複数種であってもよい。
領域Aに含まれている熱可塑性樹脂100体積%の内、ポリプロピレン樹脂が80体積%以上であることが好ましく、85体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。
領域Aに含まれる、23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%である熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、より好ましくはポリプロピレン樹脂である。
【0040】
領域Bに含まれている熱可塑性樹脂100体積%の内、23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である熱可塑性樹脂が80体積%以上であることが好ましく、85体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。領域Bに含まれる熱可塑性樹脂は、1種であってもよいし複数種であってもよい。
領域Bに含まれている熱可塑性樹脂100体積%の内、ポリアミド樹脂が80体積%以上であることが好ましく、85体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。
領域Bに含まれる、23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%である熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系樹脂;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂;及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0042】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びアクリル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がより更に好ましい。また、吸水特性、強度、弾性率、及び成形後の射出樹脂との界面強度に一層優れる観点からポリアミド樹脂とポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂とポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)とのみを用いることがより好ましい。
吸水特性、強度、弾性率、及び成形後の射出樹脂との界面強度に一層優れる観点から、領域Aに含まれる熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂とポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)のみであり、領域Aに含まれる熱可塑性樹脂100体積%に対してポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)の体積割合が80~99体積%であることが好ましく、より好ましくは85~97体積%、さらに好ましくは86~95体積%である。また、吸水特性、強度、弾性率、及び成形後の射出樹脂との界面強度に一層優れる観点から、領域Bに含まれる熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂とポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)のみであり、領域Bに含まれる熱可塑性樹脂100体積%に対してポリアミド樹脂の体積割合が80~99体積%であることが好ましく、より好ましくは85~98体積%、さらに好ましくは90~97体積%である。領域A及び領域Bに含まれるポリアミド樹脂とポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)とが、同じ樹脂であることが好ましい。領域A又は領域Bに含まれるポリアミド樹脂の23℃50RH%で測定される吸水率は、0.4~2.5質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0~2.0質量%、さらに好ましくは1.2~1.8質量%である。また、領域A又は領域Bに含まれるポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)の23℃50RH%で測定される吸水率は、0.005~0.33質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.29質量%、さらに好ましくは0.015~0.24質量%、よりさらに好ましくは0.018~0.10質量%である。
【0043】
-ポリエステル系樹脂-
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に-CO-O-(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0044】
-ポリアミド系樹脂-
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、脂肪族系ポリアミド、芳香族系ポリアミド、全芳香族系ポリアミド等があげられるが、連続強化繊維との親和性が高く連続強化繊維による補強効果が得られやすいという観点から脂肪族系ポリアミドが好ましい。
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。ω-アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタム又はω-アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2-メチルペンタンジアミンや2-エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p-フェニレンジアミンやm-フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
【0045】
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合体、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2-メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合体が挙げられる。
【0046】
-ポリオレフィン系樹脂-
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン、ポリエチレン、変性ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。中でもポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、及びそれらを混合物が好ましい。
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンに由来する構成単位を含む重合体が好ましく、ホモポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン1共重合体等のプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体等が挙げられる。
変性ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンに由来する構成単位を含む重合体を必要に応じ水素添加した重合体、環状オレフィンの付加(共)重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等α-オレフィンとのランダム共重合体、また、上記環状オレフィン開環(共)重合体または環状オレフィン開環(共)重合体およびそれらの水添物を、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいは、その無水物等の変性剤で変性したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0047】
(着色剤)
上記着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アルミ顔料、二酸化チタン、群青、シアニンブルー、シアニングリーン、キナクリドン、珪藻土、モノアゾ塩、ペリレン、ジスアゾ、縮合アゾ、イソインドリン、弁柄、ニッケルチタンイエロー、ジケトンピロロピロール、金属塩、ペリレンレッド、金属酸化物、バナジン酸ビスマス、コバルトグリーン、コバルトブルー、アンスラキノン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等が挙げられる。中でも、黒色の着色剤が好ましく、カーボンブラック、ニグロシンがより好ましい。
【0048】
(連続繊維強化樹脂複合材料成形体)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料成形体は、上述の本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を含む。
上記連続繊維強化樹脂複合材料成形体は、上記連続繊維強化樹脂複合材料の表面にハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物がハイブリッド成形されてなる成形体であってよい。
上記連続繊維強化樹脂複合材料の上記領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の上記吸水率が0.0010~0.39質量%であると、連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体の優れた吸水特性及び、連続繊維強化樹脂複合材料と上記連続繊維強化樹脂複合材料の表面に配置された熱可塑性樹脂(例えば、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂)との優れた接着性を発現することができる。
【0049】
(連続繊維強化樹脂複合材料の成形方法)
連続繊維強化樹脂複合材料を成形する方法としては、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填する方法が好ましい。ハイブリッド成形体の製造工程においては、金型内に基材、好ましくは加熱溶融した連続繊維強化樹脂複合材料をセットして金型を閉じ、加圧し、所定の時間後に、更に所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填して成形し、連続繊維強化樹脂複合材料の最外層に位置する熱可塑性樹脂と、所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物とを接合させることにより、ハイブリッド成形体を製造してもよい。
【0050】
ハイブリッド成形体の製造工程において、連続繊維強化樹脂複合材料の加熱溶融は、ヒーターや赤外線ヒーターで実施することが好ましい。加熱溶融の温度は表面に含まれる熱可塑性樹脂の内、最も占有体積が大きい熱可塑性樹脂の溶融温度~溶融温度+100℃であることが好ましく、溶融温度+20~溶融温度+60℃であることがより好ましい。
ハイブリッド成形体の製造工程において、連続繊維強化樹脂複合材料の賦形工程が含まれていても良い。賦形工程が含まれる場合、連続繊維強化樹脂複合材料の加熱溶融温度は、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂の内、最も溶融温度の高い熱可塑性樹脂の溶融温度~溶融温度+100℃であることが好ましく、溶融温度+20~溶融温度+60℃であることがより好ましい。
ハイブリッド成形体の製造工程における、連続繊維強化樹脂複合材料の加熱溶融工程は、連続繊維強化樹脂複合材料の温度を測定し、加熱溶融工程終了時から、熱可塑性樹脂の射出時まで溶融温度を下回らないような加熱条件で実施することが好ましい。
所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、両熱可塑性樹脂間の界面強度に大きく影響する。連続繊維強化樹脂複合材料をセットした金型を加圧した状態となってから所定のハイブリッド用熱可塑 性樹脂組成物を射出充填するまでの時間は、30秒以内が好ましく、15秒以内がより好ましく、5秒以内が更に好ましい。
所定のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物と接合する、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂の内、最も高い溶融温度を有する熱可塑性樹脂の溶融温度以下であることが好ましく、該溶融温度-25℃以下であることがより好ましく、溶融温度-50℃以下であることがさらに好ましく、溶融温度-100℃以下であることがよりさらに好ましく、溶融温度-150℃であることが特に好ましい。
連続繊維強化樹脂複合材料の成形方法としては、連続繊維強化樹脂複合材料がポリアミド樹脂及びポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)を少なくとも含み(好ましくはポリアミド樹脂及びポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂)のみを含み)、連続繊維強化樹脂複合材料(好ましくは連続繊維強化樹脂複合材料の表面)に含まれる上記熱可塑性樹脂(好ましくは上記ポリアミド樹脂及び上記ポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂))のうち占有体積(好ましくは連続繊維強化樹脂複合材料の表面上の占有面積)が最も大きい熱可塑性樹脂の溶融温度以上に連続繊維強化樹脂複合材料を加熱した後に、ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物(好ましくはポリプロピレン樹脂)を射出成形して、連続繊維強化樹脂複合材料の少なくとも一方の表面に上記ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物を配置することが好ましい。
【0051】
ハイブリッド成形体において、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂(例えば、連続繊維強化樹脂複合材料の最外層に位置する熱可塑性樹脂)と、射出成形により充填されたハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物とは、接合部分で互いに混じり合った構造となっていることが好ましい。
射出成形時の樹脂保圧を高く、例えば、1MPA以上とすることは界面強度を高める上で有効である。界面強度を高めるためには、保圧を5MPA以上とすることが好ましく、10MPA以上とすることがより好ましい。
保圧時間を長く、例えば5秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは金型温度が熱可塑性樹脂組成物の融点以下になるまでの間の時間保持することは、界面強度を高める観点から好ましい。
【0052】
(射出成形用の樹脂)
ハイブリッド成形体を製造するために用いる射出成形用のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物としては、23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であることが好ましい。
23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%である熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、全芳香族ポリエステル等の一種又は二種以上を混合した樹脂組成物が挙げられる。
吸水特性及び取り扱い性の観点からポリプロピレンが好ましい。
ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物としては、上記熱可塑性樹脂のみからなる組成物であってよい。ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、1種であってもよいし複数種であってもよい。ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、連続繊維強化樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂(好ましくは領域Aに含まれる上記吸水率が0.0010~0.39質量%である熱可塑性樹脂)と同じであることが好ましい。ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、連続繊維強化樹脂複合材料(好ましくは連続繊維強化樹脂複合材料の表面)に含まれる上記熱可塑性樹脂(好ましくは上記ポリアミド樹脂及び上記ポリオレフィン系樹脂(好ましくはポリプロピレン樹脂))のうち占有体積(好ましくは連続繊維強化樹脂複合材料の表面上の占有面積)が最も大きい熱可塑性樹脂であってよい。
【0053】
ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物には、各種充填材が配合されていてもよい。ハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物は、着色剤を含む、黒色の樹脂組成物としてよい。
各種充填材としては、上記連続強化繊維と同種の材料の不連続強化材料である短繊維、長繊維材料等が挙げられる。
不連続強化材料にガラス短繊維、長繊維を用いる場合、本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料を構成する上記連続強化繊維に塗布される集束剤と同様のもの用いてもよい。
サイジング剤(集束剤)は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。シランカップリング剤、潤滑剤、結束剤の種類に関しては、上記連続強化繊維の集束剤と同様のものが使用できる。
【0054】
射出成形に用いるハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、接合する熱可塑性樹脂との界面強度の観点から、連続繊維強化樹脂複合材料を構成する接合面の熱可塑性樹脂と類似のものが好ましく、同種類のものがより好ましい。具体的には、接合面の熱可塑性樹脂にポリプロピレンを用いた場合には、射出成形用のハイブリッド用熱可塑性樹脂組成物の樹脂材料は、ポリプロピレンが好ましい。
【0055】
(連続繊維強化樹脂複合材料の用途)
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、航空機、車、建設材料、ロボット等の構造材料用途に好適に使用することができる。
車用途においては、以下に限定されるものではないが、例えば、シャーシ/フレーム、足回り、駆動系部品、内装部品、外装部品、機能部品、その他部品に使用できる。
具体的には、ステアリング軸、マウント、サンルーフ、ステップ、スーフトリム、ドアトリム、トランク、ブートリッド、ボンネット、シートフレーム、シートバック、リトラクター、リタラクター支持ブラケット、クラッチ、ギア、プーリー、カム、アーゲー、弾性ビーム、バッフリング、ランプ、リフレクタ、グレージング、フロントエンドモジュール、バックドアインナー、ブレーキペダル、ハンドル、電装材、吸音材、ドア外装、内装パネル、インパネ、リアゲート、天井ハリ、シート、シート枠組み、ワイパー支柱、EPS(Electric Power Steering)、小型モーター、ヒートシンク、ECU(Engine Control Unit)ボックス、ECUハウジング、ステアリングギアボックスハウジング、プラスチックハウジング、EV(Electric Vehicle)モーター用筐体、ワイヤーハーネス、車載メーター、コンビネーションスイッチ、小型モーター、スプリング、ダンパー、ホイール、ホイールカバー、フレーム、サブフレーム、サイドフレーム、二輪フレーム、燃料タンク、オイルパン、インマニ、プロペラシャフト、駆動用モーター、モノコック、水素タンク、燃料電池の電極、パネル、フロアパネル、外板パネル、ドア、キャビン、ルーフ、フード、バルブ、EGR(ExhAust GAs RecirculAtion)バルブ、可変バルブタイミングユニット、コネクティングロッド、シリンダボア、メンバー(エンジンマウンティング、フロントフロアクロス、フットウェルクロス、シートクロス、インナーサイド、リヤクロス、サスペンション、ピラーリーンフォース、フロントサイド、フロントパネル、アッパー、ダッシュパネルクロス、ステアリング)、トンネル、締結インサート、クラッシュボックス、クラッシュレール、コルゲート、ルーフレール、アッパボディ、サイドレール、ブレーディング、ドアサラウンドアッセンブリー、エアバッグ用部材、ボディーピラー、ダッシュツゥピラーガセット、サスペンジョンタワー、バンパー、ボディーピラーロワー、フロントボディーピラー、レインフォースメント(インパネ、レール、ルーフ、フロントボディーピラー、ルーフレール、ルーフサイドレール、ロッカー、ドアベルトライン、フロントフロアアンダー、フロントボディーピラーアッパー、フロントボディーピラーロワー、センターピラー、センターピラーヒンジ、ドアアウトサイドパネル)、サイドアウターパネル、フロントドアウインドゥフレーム、MICS(Minimum Intrusion CABin System)バルク、トルクボックス、ラジエーターサポート、ラジエーターファン、ウォーターポンプ、燃料ポンプ、電子制御スロットルボディ、エンジン制御ECU、スターター、オルタネーター、マニホールド、トランスミッション、クラッチ、ダッシュパネル、ダッシュパネルインシュレータパッド、ドアサイドインパクトプロテクションビーム、バンパービーム、ドアビーム、バルクヘッド、アウタパッド、インナパッド、リヤシートロッド、ドアパネル、ドアトリムボドサブアッセンブリー、エネルギーアブソーバー(バンパー、衝撃吸収)、衝撃吸収体、衝撃吸収ガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、ルーフサイドインナーガーニッシュ、樹脂リブ、サイドレールフロントスペーサー、サイドレールリアスペーサー、シートベルトプリテンショナー、エアバッグセンサー、アーム(サスペンション、ロアー、フードヒンジ)、サスペンションリンク、衝撃吸収ブラケット、フェンダーブラケット、インバーターブラケット、インバーターモジュール、フードインナーパネル、フードパネル、カウルルーバー、カウルトップアウターフロントパネル、カウルトップアウターパネル、フロアサイレンサー、ダンプシート、フードインシュレーター、フェンダーサイドパネルプロテクター、カウルインシュレーター、カウルトップベンチレータールーパー、シリンダーヘッドカバー、タイヤディフレクター、フェンダーサポート、ストラットタワーバー、ミッションセンタートンネル、フロアトンネル、ラジコアサポート、ラゲッジパネル、ラゲッジフロア、アクセルペダル、アクセルペダルベース等の部品として好適に使用することができる。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
【0057】
まず、実施例、比較例で用いた測定方法等について説明する。
【0058】
[各領域に含まれる樹脂比率]
連続繊維強化樹脂複合材料の厚さ方向断面(連続強化繊維の長さ方向に直交する断面)を任意の5か所について切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、連続強化繊維が破損しないように注意しながら研磨を行った。
レーザーラマン顕微鏡(inViaQontor共焦点ラマンマイクロスコープ;株式会社レニショー)により該断面のマッピング画像を撮影し、得られた画像、スペクトルから、繊維強化樹脂に含まれる樹脂の種類を特定し、面積比から各領域における樹脂の体積比率を得た。
なお、本明細書において、領域中に含まれる熱可塑性樹脂等の体積割合は、任意の5つの断面の面積割合の平均を体積割合としてよい。
【0059】
[連続繊維強化樹脂複合材料と射出樹脂との界面強度測定]
連続繊維強化樹脂複合材料と射出樹脂との界面強度測定としてリブ根元引張試験を実施した。各実施例で成形した連続繊維強化樹脂複合材料成形体から中央にリブが立つように35mm×15mmの寸法で切り出したT字形状の試験片を、インストロン万能試験機にて、速度1.0mm/min、23℃、50%RH環境下で、リブ部を固定し、根元部を引っ張ることで、リブ根元部引張強度(MPA)を測定した。リブ根元部引張強度は、得られた最大荷重をリブ根元部の断面積で除した値とした。試験片は試験前に80℃の真空乾燥により24時間乾燥した。
ここで、根元部とは、射出した熱可塑性樹脂と連続繊維強化樹脂複合材料が接している部分をいう。
【0060】
[曲げ強度、曲げ弾性率]
連続繊維強化樹脂複合材料から長さ100mm、幅10mm、肉厚2mmの短冊状の試験片を切り出し、インストロン万能試験機にて、3点曲げ用の治具を用い、スパン間を32mmに設定して速度1mm/min、23℃、50%RH環境下で曲げ応力(MPA)、曲げ弾性率(GPA)を測定した。試験片は試験前に80℃の真空乾燥により24時間乾燥した。
【0061】
[吸水特性評価]
各実施例で得られた連続繊維強化樹脂複合材料または連続繊維強化樹脂複合材料成形体を、80℃の真空乾燥により24時間乾燥し、80℃57RH%で200時間吸水させたのち、23℃、50%RHで24時間静置して吸水試験片を得た。得られた吸水試験片のリブ根元引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率を測定し、乾燥時の各強度と弾性率に対する比率(%)を評価した。
【0062】
[吸水率]
各実施例で得られた連続繊維強化樹脂複合材料をバンドソーにより切削し、切削した試験片を、厚み方向の研磨ができるように、研磨機(小型精密試料作成システム IS-POLISHER ISPP-1000(株式会社池上精機))により、研磨面に125g/cmの力がかかるように研磨した。領域Aを得るために、研磨は耐水ペーパー番手#220を用い、連続繊維強化樹脂複合材料の厚みの(1/(連続強化繊維基材の枚数×2))×100%が残るように、研削する厚みを設定し試験片の領域Aを得た。
別の試験片で、同様の方法で連続繊維強化樹脂複合材料の厚みの1/2研削するように設定し研削した後、反対の表面から同様の方法で、元の連続繊維強化樹脂複合材料の(1/(連続強化繊維基材の枚数))×100%の厚みが残るように研削するように設定し試験片の領域Bを得た。
領域A及び領域Bを、80℃の真空乾燥により24時間乾燥し絶乾した後の質量を測定し、80℃の水に18時間浸漬した後、80℃57RH%で200時間静置したのち、23℃、50%RHで24時間静置した後の吸水時の質量を測定し、得られた質量と絶乾時の質量から領域A及び領域Bの吸水率(%)を測定した。
(領域Aの吸水率)={(領域Aの吸水時の質量)―(領域Aの絶乾時の質量)}/(領域Aの絶乾時の質量)×100
(領域Bの吸水率)={(領域Bの吸水時の質量)―(領域Bの絶乾時の質量)}/(領域Bの絶乾時の質量)×100
各試験片を電気炉に入れ、温度650℃で3時間加熱して、樹脂を焼き飛ばした。その後、室温まで自然冷却し、残されたガラス繊維の質量を測定することで、連続繊維強化樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂の質量を求め、その比率から各領域に含まれる熱可塑性樹脂の吸水率(%)を求めた。
(領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率)={(領域Aの吸水時の質量)―(領域Aの絶乾時の質量)}/(領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の質量)×100
(領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の吸水率)={(領域Bの吸水時の質量)―(領域Bの絶乾時の質量)}/(領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の質量)×100
【0063】
実施例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0064】
[連続強化繊維]
(ガラス繊維)
集束剤を0.45質量%付着させた、繊度11500dtexで単糸数2000本のガラス繊維を製造した。巻き取り形態はDWRであり、平均単糸径は約17μmとした。
ガラス繊維集束剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、アミノシラン)KBE-903(信越化学工業株式会社製)0.5質量%、カルナウバワックスを1質量%、ポリウレタン樹脂Y65-55(株式会社ADEKA製)2質量%、無水マレイン酸40質量%、アクリル酸メチル50質量%、及びメタクリル酸メチル10質量%を共重合させ、重量平均分子量が20000である共重合化合物が3質量%、となるように脱イオン水で調製することで作製した。
【0065】
[ガラスクロス]
レピア織機(織幅2m)を用い、上記ガラス繊維を経糸、緯糸として用いて製織することでガラスクロスを製造した。得られたガラスクロスの織形態は、平織、織密度は6.5本/25mm、目付は600g/mであった。
【0066】
[熱可塑性樹脂]
ポリアミド:ポリアミド6(1011FB(宇部興産(株)))23℃50RH%の吸水率:1.9質量%、溶融温度225℃
ポリプロピレンA:ポリプロピレン(J707EG((株)プライムポリマー))。23℃50RH%の吸水率:0.010質量%、溶融温度180℃
ポリプロピレンB:ポリプロピレンAとマレインサン変性ポリプロピレン(MG441-P、理研ビタミン(株))を95:5でドライブレンドした。23℃50RH%の吸水率:0.050質量%、溶融温度180℃
【0067】
[樹脂フィルム]
上記熱可塑性樹脂を、Tダイ押し出し成形機(株式会社創研製)を用いて成形することでフィルムを得た。フィルムの厚さは180μmであった。
【0068】
[実施例1]
ガラスクロス5枚とポリアミドのフィルム4枚とポリプロピレンAのフィルム2枚を、ポリプロピレンAのフィルムが表面となるようにガラスクロスと樹脂フィルムとを交互に重ねて成形を行い、連続繊維強化樹脂複合材料を得た。
プレス射出ハイブリッド成形機(STIP05-05、佐藤鉄工所)に設置した平板金型を用いて、260℃、無加圧で300秒保持した後、260℃、5.0MPaで300秒加熱プレスし、金型を急冷したのちに金型を開放し、連続繊維強化樹脂複合材料を取り出した。連続繊維強化樹脂複合材料の厚みは2mmであった。
得られた連続繊維強化樹脂複合材料を160×240mmの長方形に切り出し、ポリプロピレンAをプレス射出ハイブリッド成形することで、短辺160mm、長辺240mmで、各辺にポリプロピレンAによる高さ4mmの立壁及び、長辺と並行方向に、各短辺の半分の位置を結んだリブがある箱型形状の連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
連続繊維強化樹脂複合材料成形体の成形は、設定温度を220℃としたヒーター(TH-5,Leibrock)で480秒予備加熱したGFRTPを110℃に保った金型内に挿入し、プレス圧10MPaでプレスした後に、射出圧120MPa、射出温度220℃でポリプロピレンAを射出成形することで行った。
【0069】
[実施例2]
ポリプロピレンAのフィルムの代わりにポリプロピレンBのフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0070】
[比較例1]
樹脂フィルムをポリプロピレンAのフィルムのみ6枚にしたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0071】
[比較例2]
ポリプロピレンAのフィルムの代わりにポリプロピレンBのフィルムを用いたこと以外は比較例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0072】
[比較例3]
樹脂フィルムをポリアミドのフィルムのみ6枚にしたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料を得た。また呼び加熱時のヒーター温度を260℃、予備加熱時間を600秒としたこと以外は比較例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0073】
[比較例4]
ガラスクロス5枚とポリアミドのフィルム4枚とポリプロピレンAのフィルム2枚を、ポリプロピレンAのフィルムが厚み方向中央のガラスクロスを挟む位置となるようにガラスクロスと樹脂フィルムとを交互に重ねたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0074】
[比較例5]
ガラスクロス5枚とポリアミドのフィルム4枚とポリプロピレンAのフィルム2枚を、ポリプロピレンAのフィルムが表層のガラスクロスの1層内側に配置するようにガラスクロスと樹脂フィルムとを交互に重ねたこと以外は実施例1と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0075】
[比較例6]
ポリプロピレンAのフィルムの代わりにポリプロピレンBのフィルムを用いたこと以外は比較例4と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0076】
[比較例7]
ポリプロピレンAのフィルムの代わりにポリプロピレンBのフィルムを用いたこと以外は比較例5と同様にして連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
上記表1から、実施例1と2の連続繊維強化樹脂複合材料及び連続繊維強化樹脂複合材料成形体は、領域Aに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.0010~0.39質量%であり、領域Bに含まれる熱可塑性樹脂の23℃、50%RHでの吸水率が0.40~3.0質量%であることにより、高い強度や弾性率を発現しながら、高い吸水特性と高い成形後の射出樹脂との界面強度を発現した。
比較例1、2のように領域Bの熱可塑性樹脂の吸水率が上記範囲でないと、強度や弾性率に劣った。
比較例3のように領域Aの熱可塑性樹脂の吸水率が上記範囲でないと、吸水特性と成形後の射出樹脂との界面強度に劣った。
比較例4~7のように領域A及び領域Bの吸水率が上記範囲でないと、強度や弾性率、吸水特性と成形後の射出樹脂との界面強度に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本実施形態の連続繊維強化樹脂複合材料は、各種機械や自動車等の構造部品等、高レベルでの機械的物性が要求される材料の補強材として、また、熱可塑性樹脂組成物との複合成形体材料として、産業上の利用可能である。