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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079116
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】LCA環境影響評価方法。
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0633 20230101AFI20230531BHJP
【FI】
G06Q10/06 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192581
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】716004512
【氏名又は名称】一般社団法人サステイナビリティ技術設計機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147740
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 俊
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA07
(57)【要約】
【課題】LCAの簡単で迅速な環境影響評価方法を提供する。
【解決手段】本発明は、複数のプロセスから構成されるシステムバンダリにおいて、プロセス流れ図を作成する手段、各プロセスにおけるインベントリ量を求める手段(インベントリ量算出手段)、前記インベントリ量算出手段で求めたインベントリ量を用いて各プロセスの単位稼働度あたりの環境ストレス因子量を求める手段(プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段)、各プロセスにおける入力および出力をもとにプロセス稼働度を求める手段(プロセス稼働度算出手段)、および前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段により求めたプロセス単位稼働度環境ストレス因子量と前記稼働度算出手段により求めたプロセス稼働度とを用いてシステムバンダリにおける環境ストレス因子量を求める手段(システムバンダリ内環境ストレス因子量算出手段)を含むLCA環境影響評価方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロセスから構成されるシステムバンダリにおいて、
プロセス流れ図を作成する手段、各プロセスにおけるインベントリ量を求める手段(インベントリ量算出手段という)、前記インベントリ量算出手段で求めたインベントリ量を用いて各プロセスの単位稼働度あたりの環境ストレス因子量を求める手段(プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段という)、各プロセスにおける入力および出力をもとにプロセス稼働度を求める手段(プロセス稼働度算出手段という)、および前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段により求めたプロセス単位稼働度環境ストレス因子量と前記稼働度算出手段により求めたプロセス稼働度とを用いてシステムバンダリにおける環境ストレス因子量を求める手段(システムバンダリ内環境ストレス因子量算出手段という)を含むLCA環境影響評価方法。
【請求項2】
前記プロセス流れ図はシステムバンダリのすべてのプロセスの前後関係を明確にすることにより作成されたものであり、前記インベントリ量算出手段におけるインベントリ量は各プロセスにおける単位稼働度あたりのインベントリ量(プロセス単位稼働度インベントリ量という)であり、
前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段において、各プロセスにおける前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量は前記単位稼働度インベントリ量の関数値の総和であり、ここで、前記関数とは、インベントリ量が環境ストレス因子量へ変換するときの換算関数であることを特徴とする、請求項1に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項3】
前記プロセス稼働度算出手段は、正方行列を作成する手段、プロセス稼働度を変数とする列ベクトルと前記正方行列との積がシステム基準量を含む定数ベクトルとなる連立方程式を作成する手段、前記正方行列が正則である場合に前記正方行列の逆行列を求める手段を含み、前記プロセス稼働度は前記逆行列と前記定数ベクトルの積から求められることを特徴とする、請求項1または2に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項4】
前記正方行列を作成する手段は、システムバンダリにおいて、各プロセスにおける入出力フローの数(m)を行数とし、プロセスの数(n)を列数とするm×nの行列を作成する手段(A手段という)、プロセス流れ図からループを探索しループがあればループ処理を行なう手段(B手段という)、プロセス流れ図から結節を探索し結節があれば結節処理を行なう手段(C手段という)を含むことを特徴とする、請求項3に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項5】
A手段による行列は、各プロセスの入出力単位稼働量を係数とする係数行列であり、ここで前記プロセスの入出力単位稼働量とは、プロセス単位稼働度におけるプロセスの入出力であることを特徴とする、請求項4に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項6】
B手段におけるループは併進および/または循環であり、B手段におけるループ処理は、ループがG個あればA手段による行列においてG個の列を増やすことを特徴とする、請求項4または5に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項7】
C手段における結節は分岐および/または合流であり、C手段における結節処理は、結節に関与するプロセスの数がH個あればA手段による行列においてH―1個の行を増やす処理であることを特徴とする、請求項4~6のいずれかの項に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項8】
前記システムバンダリ内環境ストレス因子量算出手段において、
システムバンダリ内環境ストレス因子量は、各プロセスにおける環境ストレス因子量の全プロセスについての総和であり、前記各プロセスにおける環境ストレス因子量は各プロセスのプロセス単位稼働度環境ストレス因子量に各プロセスのプロセス稼働度を乗じたものであることを特徴とする、請求項1~7のいずれかの項に記載のLCA環境影響評価方法。
【請求項9】
複数製品を生産するシステムバンダリにおけるアロケーションによるLCA環境影響評価方法であって、
各製品のシステムバンダリ内環境ストレス因子量は、各製品単独で生産した場合の請求項8に記載のシステムバンダリ内環境ストレス因子量に重みづけ係数を乗じたものであり、
複数製品を生産するシステムバンダリにおけるシステムバンダリ内環境ストレス因子量は、前記各製品のシステムバンダリ内環境ストレス因子量の総和であることを特徴とするLCA環境影響評価方法。
【請求項10】
前記重みづけ係数は、複数製品を生産するシステムバンダリにおけるシステムバンダリ内環境ストレス因子量が複数製品を生産した場合の請求項8に記載のシステムバンダリ内環境ストレス因子量でもあることから、等式が成立するように求めることができることを特徴とする、請求項9に記載のLCA環境影響評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCAの環境影響評価の定量化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。LCAは、製品・サービスのライフサイクル全体での環境負荷を明らかにすることにより、より環境に配慮した製品・サービスを検討するための有用なデータを提供する。近年、地球温暖化が差し迫った問題になりつつあり、温暖化をもたらす原因の大きなものとして人間の諸活動で発生する二酸化炭素(CO)の削減が喫緊の課題となっており、LCAを用いて製品・サービスのCO削減を行なう試みが活発に行われている。
【0003】
たとえば、図11は、FAX(機械)のライフサイクル(LC)システムを表すプロセス流れ図である。何らかの処理を行なう工程をプロセスと呼びTi(i=1、2,・・・)で示す。FAXのライフサイクルでは14のプロセス(T1~T14)がある。これらのプロセスのそれぞれにインベントリ(Ii:材料、部品、電力等)の入出力があり、図11では代表的な16個のインベントリ(I1~I16)を示すが、他のインベントリも多数入出力する。プロセスの流れの一部を説明する。プロセスT3のプリント配線基板プロセスでは、前プロセスT2で作製されたプリント板に前プロセスT1で作製されたICが搭載される。次工程のT8のFAX組み立てプロセスでは、前プロセスで作製されたプリント配線基板、線材、筐体樹脂成形品を組み立ててFAX機械(製品)を作製する。FAX製品はT9の流通プロセスで流通し販売される。FAX製品を購入したユーザーはT10の使用プロセスで使用する。使用済みのFAX製品はT11の処分プロセスで処分されるが、ここでは廃棄せずにT12のリサイクルプロセスでリサイクルし、一部はT13の鉄スクラッププロセスに入り、他はT14のPS(プラスチック)再生プロセスに入り、FAX組み立てプロセス(T8)の前段プロセスである筐体樹脂成形プロセスで完全リサイクルされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(非特許文献1)一般社団法人日本電機工業会(LC-CO2)排出量簡易算出手法。URL:www.jema-net.or.jp/Japanese/env/02_LCA_tools/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のLCAの定量化は、たとえば製品製造段階のCO排出量の算出に関して、システム全体で使用・排出されるインベントリを調べて、CO排出量に換算し製造された生産数で割って、対象製品1台あたりのCO2排出量として計算する。(非特許文献1)しかし、この方法では、図11に示すような多数のプロセスからなる製品の製造の場合は、個別の製造プロセスがどの程度COを排出しているか自明でないため、効果的なCO排出量の低減ができない。そこで、従来のLCAでは次のステップとして製造段階における個々のプロセスについてインベントリを調べていき、個々のプロセスにおけるCO排出量を計算するということを行なっている。しかし、この方法では、プロセスの前後関係のみを考えてプロセスのCO2排出量を求めるので、計算が煩雑であるとともに、これらの総和とシステム全体のCO2排出量との相違が大きくなり、全体の整合性が取れないことも多い。そのため何度も計算し直したりして多大な時間を要し、最後は都合よくデータを合わせるということも行なわれている。本発明は、対象とするシステム内のフォアグラウンドデータを基にして、LCAの環境影響評価は複雑で正確でないという考え方を転換する手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、システムバンダリ(システム境界、LCAを対象とする範囲)におけるプロセス間およびプロセス全体のマテリアルフローを考慮してLCAを行なう簡便で迅速に実行できる手段を提供する。すなわち、本発明は、対象とするシステムバンダリにおけるすべてのプロセスの流れを明確にし、個々のプロセス稼働度を変数とした行列を用いた連立方程式を解くことにより、すべてのプロセス稼働度を一挙に求めて、その得られたプロセス稼働度から環境負荷を定量化する。具体的には、以下の特徴を有する。
(1)本発明は、複数のプロセスから構成されるシステムバンダリにおいて、プロセス流れ図を作成する手段、各プロセスにおけるインベントリ量を求める手段(インベントリ量算出手段という)、前記インベントリ量算出手段で求めたインベントリ量を用いて各プロセスの単位稼働度あたりの環境ストレス因子量を求める手段(プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段という)、各プロセスにおける入力および出力をもとにプロセス稼働度を求める手段(プロセス稼働度算出手段という)、および前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段により求めたプロセス単位稼働度環境ストレス因子量と前記稼働度算出手段により求めたプロセス稼働度とを用いてシステムバンダリにおける環境ストレス因子量を求める手段(システムバンダリ内環境ストレス因子量算出手段という)を含むLCA環境影響評価方法である。
【0007】
(2)本発明は、(1)に加えて、前記プロセス流れ図はシステムバンダリのすべてのプロセスの前後関係を明確にすることにより作成されたものであり、前記インベントリ量算出手段におけるインベントリ量は各プロセスにおける単位稼働度あたりのインベントリ量(プロセス単位稼働度インベントリ量という)であり、前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量算出手段において、各プロセスにおける前記プロセス単位稼働度環境ストレス因子量は前記単位稼働度インベントリ量の関数値の総和であり、ここで、前記関数とは、インベントリ量が環境ストレス因子量へ変換するときの換算関数であることを特徴とする。
【0008】
(3)本発明は、(1)および/または(2)に加えて、前記プロセス稼働度算出手段は、正方行列を作成する手段、プロセス稼働度を変数とする列ベクトルと前記正方行列との積がシステム基準量を含む定数ベクトルとなる連立方程式を作成する手段、前記正方行列が正則である場合に前記正方行列の逆行列を求める手段を含み、前記プロセス稼働度は前記逆行列と前記定数ベクトルの積から求められることを特徴とし、また前記正方行列を作成する手段は、システムバンダリにおいて、各プロセスにおける入出力フローの数(m)を行数とし、プロセスの数(n)を列数とするm×nの行列を作成する手段(A手段という)、プロセス流れ図からループを探索しループがあればループ処理を行なう手段(B手段という)、プロセス流れ図から結節を探索し結節があれば結節処理を行なう手段(C手段という)を含むことを特徴とし、またA手段による行列は、各プロセスの入出力単位稼働量を係数とする係数行列であり、ここで前記プロセスの入出力単位稼働量とは、プロセス単位稼働度におけるプロセスの入出力であり、B手段におけるループは併進および/または循環であり、B手段におけるループ処理は、ループがG個あればA手段による行列においてG個の列を増やすことを特徴とし、さらにC手段における結節は分岐および/または合流であり、C手段における結節処理は、結節に関与するプロセスの数がH個あればA手段による行列においてH―1個の行を増やす処理であることを特徴とする。
【0009】
(4)本発明は、(1)~(3)に加えて、前記システムバンダリ内環境ストレス因子量算出手段において、
システムバンダリ内環境ストレス因子量は、各プロセスにおける環境ストレス因子量の全プロセスについての総和であり、前記各プロセスにおける環境ストレス因子量は各プロセスのプロセス単位稼働度環境ストレス因子量に各プロセスのプロセス稼働度を乗じたものであることを特徴とする。
(5)本発明は、複数製品を生産するシステムバンダリにおけるアロケーションによるLCA環境影響評価方法であって、各製品のシステムバンダリ内環境ストレス因子量は、各製品単独で生産した場合の(4)に記載のシステムバンダリ内環境ストレス因子量に重みづけ係数を乗じたものであり、複数製品を生産するシステムバンダリにおけるシステムバンダリ内環境ストレス因子量は、前記各製品のシステムバンダリ内環境ストレス因子量の総和であることを特徴とするLCA環境影響評価方法であり、前記重みづけ係数は、複数製品を生産するシステムバンダリにおけるシステムバンダリ内環境ストレス因子量が複数製品を生産した場合の(4)に記載のシステムバンダリ内環境ストレス因子量でもあることから、等式が成立するように求めることができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、行列を用いた連立方程式を作成してその解をシステムバンダリ内の各プロセスの稼働度として求めて、環境負荷を環境ストレス因子量として定量化する手法なので、簡便でしかも一挙に環境負荷を見積もることができる。従って、迅速にLCAによる環境影響を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のライフサイクルアセスメント(LCA)の環境ストレス因子量を求める手段・方法を示す流れ図である。
図2図2は、2つのプロセスがシリアルにつながった簡単なプロセス流れ図とそれに基づいて作成される行列を示す図である。
図3図3は、結節の例を示すプロセス流れ図である。
図4図4は、結節(分岐、合流)がある場合の結節検索・処理の方法を示す図である。
図5図5は、ループの例を示すプロセスの流れ図とループ探索・処理を示す図である。
図6図6は、ループ(循環、併進)の他の例を示す図である。
図7図7は結節とループが含まれるプロセス流れ図の他の例を示す図である。
図8図8は、製品作成の工程手順(プロセス流れ図)の一例を示したものである。
図9図9は、プロセスTiにおけるインベントリ量xijの入出力状態を模式的に示した図である。
図10図10は、図8に示すプロセス流れ図における係数行列を用いた連立方程式を示す図である。
図11図11は、FAX(機械)のライフサイクル(LC)を表すプロセス流れ図である。
図12図12は、環境ストレス因子量を求めるデータシート(1)を示す図である。
図13図13は、環境ストレス因子量を求めるデータシート(2)を示す図である。
図14図14は、環境ストレス因子量の結果を示す図である。
図15図15は、2製品が生産されるときに環境負荷のアロケーションする場合における本発明の適用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ライフサイクルアセスメト(LCA:Life Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。環境負荷は環境に影響を及ぼすものを意味するが、環境に影響を与えるものは種々の物質((例:CO2、NOx、SOx)やエネルギーなどがあり、それらを本願では環境ストレス因子または環境負荷因子とも呼ぶ。本発明は、対象とするシステムバンダリ(システム境界)内における環境に影響を及ぼす環境ストレス因子の量(環境ストレス因子量と呼ぶ)を簡便にしかも一挙に求める手段を提供するものである。環境ストレス因子量は、たとえばシステムバンダリ内で発生するCO2量やNOx量であり、環境負荷の程度(環境負荷量)と考えても良い。
【0013】
図8は、製品作成の工程手順(プロセス流れ図)の一例を示したものである。図8に示す工程手順は、5つの工程(プロセスという)からなる。プロセスT3で作製した作製物(フロー物品入出力(量)d)、プロセスT4で作製した作製物(フロー物品入出力(量)e)、およびプロセスT5で作製した作製物(フロー物品入出力(量)f)を受け入れ、その一部をプロセスT1(フロー物品入出力(量)b)で処理して物品(フロー物品入出力(量)a)を作製し、M製品(物品量Q:システム基準量)として系外(または次プロセス)へ出す。システム基準量とは、システムの機能単位に相当する物品量である。また、他(残り)をプロセスT2(フロー物品入出力(量)c)で処理する。プロセスT3、T4およびT5で作製した作製物は同じ物品であり、プロセスT1およびT2へ入力する物品も同じものであるから、これをフロー(物品)m1とする。また、プロセスT1から出力されるものをフロー(物品)m0とする。すなわち、m0、m1とはプロセス間でやりとりされる物品を表す。ここで、物品とは、通常の製品等の物以外にエネルギーやサービスも含み、有償無償を問わず経済行為の対象となるものである。尚、物品には図8に示すようなプロセス間でやりとりされるもの以外に、図9に示すようなインベントリでそれぞれのプロセス毎にやりとりされるものがある。プロセスT1~T5におけるプロセス稼働度(単位稼働量に対してどの程度稼働したかを表す量)をそれぞれp1~p5とし、また、プロセスT1、T3、T4、T5における出力側の単位稼働度(たとえば、稼働度1に相当)あたりのフロー物品入出力(量)(プロセス単位稼働度入出力稼働量)をそれぞれα、δ、ε、φ、とし、プロセスT1およびT2における入力側の単位稼働度のフロー物品入出力(量)(プロセス単位稼働度入出力稼働量)をそれぞれβ、γとすると、a=α×p1、b=β×p1、c=γ×p2、d=δ×p3、e=ε×p4、f=φ×p5およびb+c=d+e+fとなる。またa=Qである。
【0014】
図9は、個々のプロセスTiにおけるインベントリ量xijの入出力状態を模式的に示した図である。図9は、中間製品1をプロセスTiで処理して中間製品2を製造する流れを示しており、そのプロセス処理において、そのプロセスへの環境負荷に関わる投入物インベントリ量xijが入出力する。ここでjはインベントリ(の種類)を示す。たとえば、jは資源、部品、エネルギー(電力、熱など)、材料などすべての投入物または排出物である。本願では、インベントリ量xijはインベントリjがプロセスTiの単位稼働度あたりに必要な(または、生じる)量(単位稼働度インベントリ量xijとも呼ぶ)である。たとえば、製品2を1単位(台、重量等)製造するのに必要な(または、生じる)インベントリ量である。あるいは、入力側からみても良い。たとえば、製品1を処理するのに必要な(または、生じる)インベントリ量である。プロセスTiが途中のプロセスである場合は、最終製品を1単位(台、重量等)製造するのに必要な(または、生じる)インベントリ量としても良い。あるいは、この単位稼働度インベントリ(量)は、工場全体が1つのプロセスと考えれば、工場等で使用または排出されたインベントリの総量を全生産量で割ることによって求められるものである。
【0015】
LCAでは、各インベントリは環境に影響を与えるもの(環境ストレス因子k)の量に変換する必要があるので、その換算関数(または変換関数)をfk(x)とすれば、インベントリjのプロセスTiにおける単位稼働度(たとえば、稼働度1)あたりの環境ストレス因子量は、fk(xij)となる。たとえば、プロセスTiの単位稼働度あたりのインベントリj(石炭)に関わる環境ストレス因子(たとえば、kはCO)量はfk(xij)であることを意味する。尚、換算関数は環境ストレス因子(の種類)により当然変化し、一般にfkとfk+i(kとk+iは異なる環境因子である)は異なる関数である。
【0016】
このプロセスTiにおける中間製品1の入力側の単位稼働度あたりのフロー物品入力(量)<これをプロセス単位稼働量(入力)という)>をπ、出力側の単位稼働度あたりのフロー物品出力(量)<これをプロセス単位稼働量(出力)という)>をσで表し、プロセスTiにおけるプロセス稼働度(単位稼働量に対してどの程度稼働したかを表す度合)をpiとする。このプロセスTi(i=1~5)におけるインベントリJの単位稼働度あたりのインベントリ量をxijとすると、そのインベントリjによる単位稼働度当たりの環境ストレス因子量は、単位稼働度インベントリ量xijの関数となる。たとえば、プロセスで使用されるインベントリjである材料Aを環境ストレス因子量(たとえばCO量)に換算するときの関数をfkj(インベントリjに関する関数)とすれば、インベントリjである材料Aの単位稼働度あたりのインベントリ量はxij{=x(材料A)}であり、インベントリjである材料Aの単位稼働度あたりの環境ストレス因子量(たとえばCO量)はfkj(xij)である。プロセスTiにおける他のインベントリjについても同様である。
【0017】
単位稼働度当たりのk環境ストレス因子量をbki(i=1~5)とすると(ここで、kは環境ストレス因子(の種類)を示す、たとえば、CO、SOx、NOx)、bkiはプロセスTiにおける単位稼働度当たりのインベントリ量(プロセス単位稼働度インベントリ量という)xijの関数値の総和となり、式1で与えられる。(ここで、jはインベントリの種類であり、プロセスTiにおけるすべての単位稼働度インベントリ量の関数値の和を取る。)尚、インベントリが異なると換算関数も異なるので、fkjとfk(j+1)などの関数は一般に同じではない。すなわち、式1は、bki=fk1(xi1)+fk2(xi2)+・・・・+fkn(xin)であり、fk1、fk2、・・・、fknは同じ関数ではない。
(式1)
【数1】
【0018】
このとき、プロセスTi(i=1~5)における環境ストレス因子量はbki×piとなり、図8に示す系(system boundary)全体の環境ストレス因子総量Zkは、式2で与えられる。プロセスがn個あるシステムバンダリではn個についての和となる。
(式2)
【数2】
LCAを行なうには、上記のZkを求めれば良い。すなわち、あるシステム(バンダリ)内におけるある環境ストレス因子k(たとえば、CO)による環境ストレス因子(総)量Zkが分かれば、そのシステムバンダリがたとえば地球温暖化にどの程度影響を与えているかを定量的に把握できる。また、物理量であるから、他のシステム(バンダリ)との比較も可能であり、最終製品が同じ(システム基準量Qが同じ)であれば、どちらのシステムを使用すれば地球温暖化により良い効果を与えるか(たとえば、COを少なくできるか)も知ることができる。
【0019】
上記の式において、未知数なのはプロセス稼働度piである。他の値(α、β、・・・、xij)は各プロセスの基本的なデータとして事前に得られたものであり、Qはそのシテム全体のアウトプット(出力(量))として得られる。Qはシステム基準量であり、システム(バンダリ)の機能単位に相当する物理量である。また、bkiも事前に計算できている。あるプロセスの入出力(量)(a、b、・・・)が分かれば、前述した式(たとえば、a=αpi、・・・)から個別に稼働率を出すことはできるが、各プロセス毎に行なう必要があり、時間もかかり煩雑である。本発明は、コンピュータを使って、係数行列を用いた連立方程式から一挙にシステムバンダリ内のすべてのプロセス稼働度piを求めることができる。
【0020】
図1は、本発明のライフサイクルアセスメント(LCA)の(環境ストレス因子量を求める)手段・方法を示す流れ図である。本発明では、最初に本発明のLCAを行なう範囲(システムバンダリ)を定める。製品の原料採掘から廃棄・リサイクルまでの全体を対象にするか、あるいは特定の範囲、たとえば、部品・材料の調達から製品出荷までの範囲で行うかなどを決定し、そのシステムバンダリ内におけるすべてのプロセスをリストアップして、それぞれのプロセスについてすべてのインベントリを明確にする。そして図11に示すようなプロセスの流れ図(プロセス流れ図)を作成する。個別プロセスの前後関係を明確にすれば、自動的にプロセスの流れ図とインベントリの入出力の関係を表現することもできる。手動で作製することもできるが、プロセスの数が多い場合は複雑で面倒であるから、自動計算をコード化してもちいるのが良い。
【0021】
各プロセスにおけるインベントリ(各プロセスへの環境負荷に関わる投入物・排出物:原材料、素材、エネルギー、部品、製品等)を量的に取得して、インベントリ項目を入力し、各プロセスのプロセス単位稼働度あたりの環境ストレス因子量(環境に影響を及ぼす種目(環境ストレス因子k:CO、NOX、SOX、TMR、各種排出物、各種廃棄物など)の量)を求める。たとえば、環境ストレス因子kに関して、プロセスTiにおいて、各種(j)のインベントリ(プロセス単位稼働度インベントリ量xij)のプロセス単位稼働度あたりの環境ストレス因子量(bki)は、(式1)で示したように、xijの関数の総和{bki=Σfkj(xij)(jについての総和)}となる。
【0022】
次に、プロセス間でやり取りされる物品(フローという)について、各プロセスのプロセス単位稼働度ごとのフローの入出力(量)をデータ取得する。プロセス(Ti)の数(Timax)とフロー物品(mL)の数(mLmax)とシステムバンダリにおけるシステムの機能単位に相当する出力(物品量、またはサービス量)(システム基準量:Q)を基にして、各プロセス(Ti)におけるプロセス稼働度(pi)を変数としたシステムバンダリ内全体の連立方程式を作る。たとえば、プロセス間フロー物品(mL:L=1,2、3・・・)ごとに、プロセス稼働度piとプロセスTiのプロセス単位稼働度当たりの入出力(α、β、γ、・・・)の関係を示した連立方程式を作ると、その係数行列は[A]で示され、各プロセス稼働度piから構成される変数列ベクトル(p)およびシステム基準量Qから構成される定数ベクトル(Q)の関係式は、[A](p)=(Q)で表される。この連立方程式の係数は(mLmax行×Timax列)の係数行列となる。行(mLに対応)と列(piに対応)が等しく、行列の階数がiの数と等しい場合には、[A]は正方行列で<[A]の行列式|A|≠0>であれば正則となり、piを行列の計算で得ることができる。すなわち、[A]の逆行列を[A-1]とすれば、(p)=[A-1](Q)となる。コンピュータにデータを与えれば、行列[A]は自動的に作成されるので、行列[A]が正方行列になるかどうか、行列[A]が正則であるかどうかもコンピュータで容易に表現し判別でき、行列[A]が正則であれば逆行列[A-1]も容易に求まり、(p)も簡単に求められる。
【0023】
正則行列の必要な条件として正方行列である必要があり、行列[A]が正方行列でなければ、次にプロセス流れ図にループや結節があるかどうか調べる。すなわち、システムバンダリ全体のプロセス流れ図を俯瞰してループを探索し、ループがあればループ処理する。たとえば、ループが1個あれば係数行列の列を1個増やし、n個のループがあれば係数行列の列をn個増やす(列の拡張)。次にシステムバンダリ全体のプロセス流れ図を俯瞰して結節を探索し、結節があれば結節処理をする。たとえば、結節が1個ある場合、その結節に関与するプロセスの数をn個あるとすると、係数行列の行をn-1個増やす(行の拡張)。複数の結節があればそれぞれの結節に関与するプロセスの数を調べて同様に行の拡張を行なう。これらのループ探索・ループ処理や結節探索・結節処理はコンピュータを使えば短時間で実行できる。
【0024】
これらの探索および処理により係数行列として正方行列([A])を得ることができる。一般に<[A]の行列式|A|≠0>であるから、[A]の行列式の逆行列([A-1])が存在する([A]は正則行列である)ので、連立方程式<[A](p)=(Q)>は解けて<(p)=[A-1](Q)>、このように、各プロセスの稼働度(p)を一挙に求めることができる。環境ストレス因子kに関して、各プロセスのインベントリによるプロセス単位稼働度あたりの環境ストレス因子量(bki)のシステムバンダリ内のプロセス全体の総和(Zk)(プロセス全体の環境ストレス因子量)は、式2に示すようにZk=Σbki×pi(iに関する総和)で求めることができる。
【0025】
次に、具体的な例を示す。図2は、2つのプロセスがシリアルにつながった簡単なプロセス流れ図とそれに基づいて作成される行列を示す図である。図2(a)から分かるように、プロセスT1からのアウトプット(出力)したフロー物品m1はプロセスT2へ入力(インプット)し、プロセスT2で処理されてアウトプット(出力)し、フロー物品m0としてシステム基準量Qを得る。逆にシステム基準量Qとなるm0、m1と考えることもできる。p1、p2はプロセスT1,T2のプロセス稼働度であり、α、β、γはプロセス単位稼働度当たりのフロー物品入出力(量)である。図1に示す流れ図に従うと、プロセスTiの数(Timax)は2、フロー物品mLの数(mLmax)は2であるから、係数行列[A]として図2(b)に示すように2行2列の正方行列が得られる。一般には行列式|A|≠0であるから、プロセス稼働度(p1、p2)を求めることができる。ここで、図1の流れ図に示す手順は終了となる。尚、このシステムバンダリではループ、結節はないから、先に手順を進めても同じことである。これから、環境負荷(環境ストレス因子)kに対して図2に示すシステムバンダリ内の総環境ストレス因子(環境負荷)量Zkを得ることができる。
【0026】
図3は、結節の例を示すプロセス流れ図である。結節には、合流および分岐がある。図3(a)はプロセス(Ti)がシリアルに接続する単純な流れ図であり、結節はない。図2で示したもののプロセスを多数続けた場合である。すなわち、プロセスから次のプロセスへの入力および出力が1つの場合であり、mの数とpiの数は等しく、正方(正則)行列を作ることができるので、常に解くことができる。
【0027】
図3(b)は結節(分岐)が1つある例で、1つのプロセスからのフローが2つのプロセスへ分岐する。たとえば、プロセスT1で製作した部品を分けて(分岐して)次の2つのプロセス(T2、T3)で使用(処理)する場合である。mの数は2(mLmax=2)、プロセスの数は3(Timax=3)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は2行3列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。
【0028】
図3(c)は結節(分岐)が2つある例で、2つのプロセスへ分岐するものが2つ接続する例である。mの数は3(mLmax=3)、プロセスの数は5(Timax=5)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は3行5列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。
【0029】
図3(d)は結節(分岐)が1つであるが、3つのプロセスへ分岐する例である。mの数は2(mLmax=2)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は2行4列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。
【0030】
図3(e)は結節(合流)が1つある例で、2つのプロセスからの出力が合流する。たとえば、プロセスT1で作製した部品と同じ部品をプロセスT3でも作製して一緒にしてプロセスT2で使用する場合である。mの数は2(mLmax=2)、プロセスの数は3(Timax=3)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は2行3列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。
【0031】
以上の例で示されるように、結節には分岐と合流がある。図3(f)は結節のようであるが、実は結節でないものの例である。たとえば、プロセスT1で作製した部品Aとその際の副産物Bがあり、部品Aは次のプロセスT2で使用し、また副産物Bは次のプロセスT3で使用する場合である。mの数は3(mLmax=3)、プロセスの数は3(Timax=3)であり、等しい(mLmax=Timax)から、[A]は3行3列の正方行列となるので([A]の行列式|A|≠0として)、この段階で(p)の解を得ることができる。
【0032】
図4は、結節(分岐、合流)がある場合の結節検索・処理の方法を示す図である。プロセスT1、T2、T3の稼働度(単位稼働量の何倍稼働したかの程度)をそれぞれp1、p2、p3で示す。ギリシャ文字(α、β、γ、δ、ε)はプロセス稼働基準(単位稼働度)当りのフロー物品の入出力(量)((プロセス)単位(入出力)稼働量という)を表す。英文字(a、b、c、d、e)はプロセス間のフロー物品ごとの入出力である。たとえば、a=α×p1、b=β×p2、c=γ×p1、d=δ×p2、e=ε×p3となる。
【0033】
図4(a)は、図3(e)と同じプロセス流れ図で、合流する場合である。結節探索前の行列は、図4(a)の左側の連立方程式で示すように、2行3列の行列となる。これを結節検索・処理すると、結節が1つで、そこに合流するプロセスが2つあるので、図4(a)の右側の連立方程式で示すように、行列[A]は3行目を増やす。すなわち、1行を増やす。ここで、フロー物品入出力のバランスから、δe=δ×e、εd=ε×dが得られる。このようにプロ物品入出力のバランス関係を使って、結節検索・処理をすることによって、行列[A]は3行3列の正方(正則)行列になるので、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。
【0034】
図4(b)は、図3(b)と同じプロセス流れ図で、分岐する場合である。結節探索前の行列は、図4(b)の左側の連立方程式で示すように、2行3列の行列となる。これを結節検索・処理すると、結節が1つで、そこから分岐するプロセスが2つあるので、図4(b)の右側の連立方程式で示すように、行列[A]は3行目を増やす。すなわち、1行を増やす。ここで、γd=γ×d、δc=δ×cである。このように、結節検索・処理をすることによって、行列[A]は3行3列の正方(正則)行列になるので、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。
【0035】
以上のように、結節(分岐、合流)があった場合、結節するプロセスTiの数n個に対して、n-1個の行を付加する。連立方程式の方程式をn-1個増やすと言っても良い。結節が複数個あれば同じように行を増やす操作を行なう。この結節検索・処理により、行列[A]は正方(正則)行列になるので、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。尚、図4の場合は、ループがないので、結節検索・処理だけを行なえば良い。
【0036】
図5は、ループの例を示すプロセス流れ図とループ探索・処理を示す図である。ループには、循環および併進がある。図5に示すプロセスフローは、すべて4つのプロセス(T1、T2、T3、T4)から構成される。図5(a)はループ(併進)の例である。プロセスT1からのフローは2通り存在し、1つはプロセスT2に入り、T2からのフローはT3に入る。もう1つはプロセスT4に入り、T4からのフローはT3に入る。ただし、T2からのフローとT4からのフローは合流せずT3に入る。すなわち、ループ(併進)は複数のプロセス(図5(a)ではT2、T3)が前プロセス(図5(a)ではT1)から出て、後ろプロセス(図5(a)ではT3)に入るようなルートであり、プロセスと後ろプロセスの間(図5(a)ではT2とT3、T4とT3の間)に別の1個または複数のプロセスが介在しても良い。
【0037】
の数は5(mLmax=5)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は5行4列の行列(図5(c)で示す矢印で示す5列目のないもの)となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。各プロセスTi(i=1~4)にプロセス稼働基準(稼働度1)当りの物品の入出力(プロセス単位稼働量という)α、β、γ、δ、ε、μ、φ、η、λおよびシステム基準量Qを図5(b)に示すように割り当てると、上述したように[A]は5行4列の行列(図5(c)で示す行列の矢印で示す5列目のないもの)となる。ここで併進ループのマテリアルフローの間にストックS(ストック量s)があるものとして行列[A]に列を1つ加える。このとき、sは列ベクトル(p)の最後の行にくるが、これに対応する行の最後の列を1とする。(図4(c)では5行5列目)これにより、[A]は図5(c)で示す5行5列の正方(正則)行列となるから、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。
【0038】
図5(d)はループ(循環)の例である。プロセスT2へ入るフローはプロセスT1およびT4の2通りある。プロセスT2から出るフローは2通りあり、1つはプロセスT3に入り、もう1つはT4に入る。プロセスT4からプロセスT2へ入り、プロセスT2からプロセスT4へ入るルートは循環しておりループを形成する。この場合、ループ(循環)のフローは他のフローと分岐も合流もしない。尚、プロセスT2とプロセスT4の間やプロセスT4とプロセスT2の間に別の1つまたは複数のプロセスが介在しても良い。
【0039】
の数は5(mLmax=5)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は5行4列の行列(図5(f)で示す行列の矢印で示す5列目のないもの)となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。
【0040】
各プロセスTi(i=1~4)にプロセス稼働基準(稼働度1)当りの物品の入出力(プロセス単位稼働量という)α、β、γ、δ、ε、μ、φ、η、λおよびシステム基準量Qを図5(e)に示すように割り当てると、上述したように[A]は5行4列の行列(図5(c)で示す行列の矢印で示す5列目のないもの)となる。ここで循環ループのマテリアルフローの間(ここでは、T4とT2の間)にストックS(ストック量s)があるものとして行列[A]に列を1つ加える。このとき、sは列ベクトル(p)の最後の行にくるが、これに対応する行の最後の列を1とする。(図5(f)では5行5列目)これにより、[A]は図5(f)に示す5行5列の正方(正則)行列となるから、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。
【0041】
図6は、ループ(循環、併進)の他の例を示す図である。図6(a)はループ(併進)を示す図で、図5(a)と類似するが、プロセスT1から出たフローが分岐してプロセスT4に入り、プロセスT4から出たフローとプロセスT2から出たフローと合流してプロセスT3へ入力する。すなわち、ループ(併進)の中に結節(分岐、合流)が含まれる。mの数は3(mLmax=3)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は3行4列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。
【0042】
図5(c)で示す行列と比べると結節(分岐、合流)があるのでmの数が2つ(行列の行が2行)少ない。ここで、図1に示す手順に従って、ループ探索・処理(ループが1つあるので列を1つ増やす)と結節探索・処理(結節が2つあり、それぞれ2つのプロセスが関与するので行を2つ増やす)をすることにより、[A]は5行5列の正方(正則)行列となるので、(p)の解を得ることができる。
【0043】
図6(b)はループ(循環)を示す図で、図5(b)と類似するが、プロセスT2から出たフローが分岐してプロセスT4に入り、プロセスT4から出たフローはT1から出たフローと合流してプロセスT2へ入力する。mの数は3(mLmax=3)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は3行4列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。図5(f)で示す行列と比べると結節(分岐、合流)があるのでmの数が2つ(行列の行が2行)少ない。ここで、図1に示す手順に従って、ループ検索・処理(ループが1つあるので列を1つ増やす)と結節検索・処理(結節が2つあり、それぞれ2つのプロセスが関与するので行を2つ増やす)をすることにより、[A]は5行5列の正方(正則)行列となるので、(p)の解を得ることができる。
【0044】
図6(c)はループ(併進)を示す図で、図5(a)と類似するが、プロセスT4から出たフローがプロセスT2から出たフローと合流してプロセスT3へ入力する。この場合、mの数は4(mLmax=4)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、等しい(mLmax=Timax)から、[A]は4行4列の正方(正則)行列となるので、この段階で(p)の解を得ることができる。図5(c)で示す行列と比べると結節(合流)があるのでmの数が1つ(行列の行が1行)少ない。この段階で行列[A]は正方(正則)行列となるので、ループ検索・処理および結節検索・処理は行なう必要はないが、敢えて図1に示す手順に従って、ループ検索・処理(ループが1つあるので列を1つ増やす)と結節検索・処理(結節が1つあり、2つのプロセスが関与するので行を1つ増やす)をすることにより、[A]は5行5列の正方(正則)行列となるので、同様に(p)の解を得ることができる。すなわち、この場合も図1で示す手順が成立する。
【0045】
図6(d)はループ(循環)を示す図で、図5(b)と類似するが、プロセスT4から出たフローがプロセスT1から出たフローと合流してプロセスT2へ入力する。この場合、mの数は4(mLmax=4)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、等しい(mLmax=Timax)から、[A]は4行4列の正方(正則)行列となるので、この段階で(p)の解を得ることができる。図5(f)で示す行列と比べると結節(合流)があるのでmの数が1つ(行列の行が1行)少ない。この段階で行列[A]は正方(正則)行列となるので、ループ検索・処理および結節検索・処理は行なう必要はないが、敢えて図1に示す手順に従って、ループ検索・処理(ループが1つあるので列を1つ増やす)と結節検索・処理(結節が1つあり、2つのプロセスが関与するので行を1つ増やす)をすることにより、[A]は5行5列の正方(正則)行列となるので、同様に(p)の解を得ることができる。すなわち、この場合も図1で示す手順が成立する。
【0046】
図6(e)はループ(併進)を示す図で、図5(a)と類似するが、プロセスT1から出たフローが分岐してプロセスT2とT4へ入力する。この場合、mの数は4(mLmax=4)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、等しい(mLmax=Timax)から、[A]は4行4列の正方(正則)行列となるので、この段階で(p)の解を得ることができる。図5(c)で示す行列と比べると結節(分岐)があるのでmの数が1つ(行列の行が1行)少ない。この段階で行列[A]は正方(正則)行列となるので、ループ検索・処理および結節検索・処理は行なう必要はないが、敢えて図1に示す手順に従って、ループ検索・処理(ループが1つあるので列を1つ増やす)と結節検索・処理(結節が1つあり、2つのプロセスが関与するので行を1つ増やす)をすることにより、[A]は5行5列の正方(正則)行列となるので、同様に(p)の解を得ることができる。すなわち、この場合も図1で示す手順が成立する。
【0047】
図6(f)はループ(循環)を示す図で、図5(b)と類似するが、プロセスT2から出たフローが分岐してプロセスT3とT4へ入力する。この場合、mの数は4(mLmax=4)、プロセスの数は4(Timax=4)であり、等しい(mLmax=Timax)から、[A]は4行4列の正方(正則)行列となるので、この段階で(p)の解を得ることができる。図5(f)で示す行列と比べると結節(分岐)があるのでmの数が1つ(行列の行が1行)少ない。この段階で行列[A]は正方(正則)行列となるので、ループ検索・処理および結節検索・処理は行なう必要はないが、敢えて図1に示す手順に従って、ループ検索・処理(ループが1つあるので列を1つ増やす)と結節検索・処理(結節が1つあり、2つのプロセスが関与するので行を1つ増やす)をすることにより、[A]は正方(正則)5行5列の行列となるので、同様に(p)の解を得ることができる。すなわち、この場合も図1で示す手順が成立する。
【0048】
図6(c)、(d)、(e)および(f)のように、ループ(循環、併進)の中に結節(分岐、合流)を含むと、mの数(階数に相当)とプロセスの数(変数に相当)が一致して、正則になる場合が生じることがある。この場合は、この段階で(p)の解を得ることができる。もちろん、上記したように図1で示す手順に従って、ループ検索・ループ処理、および結節探索・結節処理を行なっても良い。
【0049】
図7は結節とループが含まれるプロセス流れ図の他の例を示す図である。プロセスTiは5つ(i=1~5)ある。プロセスT3、T4およびT5から出たフローの一部はT1に、その他はT2に入力し、プロセスT1から出力したフローがシステム基準量(Q)となる。またプロセスT2からの出力はプロセスT5へ入力する。図7(a)に示すプロセス流れ図では、m(m0、m1、m2)の数は3(mLmax=3)、プロセスの数は4(Timax=5)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、[A]は3行5列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。各プロセスTi(i=1~5)にプロセス稼働基準(稼働度1)当りの物品の入出力(プロセス単位稼働量という)α、β、γ、δ、ε、μ、φ、η、およびシステム基準量Qを図7(a)または図7(c)に示すように割り当てると、この3行5列の行列は、図7(b)に示すものとなる。
【0050】
図7(a)のプロセス流れ図は図7(c)のプロセス流れ図に示すように、結節(ノード)が1つ存在する。しかし、この結節は合流(T3、T4、T5からのフロー)と分岐(T1、T2へのフロー)を含むので、結節は2つと数えることができる。この合流は3つのプロセスからのフローの合流であるから、それぞれからのフローの関係(比率)を考える必要があるが、2つの関係が分かれば残りは自ずと分かる(結節に関係するプロセスが3つある)ので、mLに関係する行を2つ増やす。また、分岐の方は、2つのプロセスへの分岐であるから、一方のフローが分かれば他方のフローは分かる(結節に関係するプロセスが2つある)ので、mLに関係する行を1つ増やす。一般には、n個のプロセスからのフローが合流する場合は、n-1個の行を増やし、フローがn個のプロセスへ分岐する場合も、n-1個の行を増やす操作を行なう。これが結節処理である。図7の場合には、図7(b)の行列に対して、3つの行を増やす。すなわち、図7(d)に示すように、Vで示した枠内の行を増やす。
【0051】
図7に示すプロセス流れ図では、ループはプロセスT2からのフローがプロセスT5へ入力するルートであり循環になり、ループの数は1つである。従って、列を1つ(1列)増やす。すなわち、循環ループのマテリアルフローの間にストック(ストック量s2)があるものとして行列[A]に列を1つ加える。すなわち、図7(d)に示すように、Uで示した枠内の列を増やす。このとき、s2は列ベクトル(p)の最後の行にくるが、これに対応する行の最後の列を1とする。(図7(d)では3行6列目)これにより、[A]は6行6列の正方(正則)行列となるから、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。一般には、n個のループがある場合は、n個の列を増やす操作を行なう。これがループ処理である。尚、δe=δ×d、εe=ε×e、фf=ф×f、βb=β×b、γc=γ×cである。
【0052】
図10は、図8に示すプロセス流れ図における係数行列を用いた連立方程式を示す図である。図7のプロセス流れ図でループがない場合、すなわち前述した図8に示すプロセス流れ図において、ループ探索・処理および結節検索・処理前の係数行列は図10(a)に示すように、mの数は2(mLmax=2)、プロセスの数は5(Timax=5)であり、異なる(mLmax≠Timax)から、行列[A]は2行5列の行列となるので、この段階では(p)の解を得ることはできない。ここで、図1に示す手順に従って、ループ探索・処理(ループはないので列は増えない)と結節探索・処理(結節が2つあり、1つの結節(合流)では3つのプロセスが関与するので行を2つ増やし、1つの結節(分岐)では2つのプロセスが関与するので行を1つ増やす)をすることにより、[A]は図10(b)に示す5行5列の正方(正則)行列となるので、(p)の解を得ることができる。
【0053】
図11のFAX(機械)のプロセス流れ図では、プロセスが14(T1~T14)で、mLが14(m1~m14)であるから、この段階で[A]は14行14列の正方(正則)行列となるので、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、(p)の解を得ることができる。しかし、ループ(循環)が1つある(ループ探索により、m14のループがある)ので列を1つ増やし(ループ処理)、また結節が1つある(結節探索により、m5で2つのプロセス(T4、T5)が合流)ので行を1つ増やす(結節処理)。従って、[A]は15行15列の正方(正則)行列となるので、[A](p)=(Q)の連立方程式は解けて、ループ検索・処理および結節検索・処理を行なっても(p)の解を得ることができる。15行15列の高次行列でもコンピュータを使えば短時間に逆行列を求めることができる。このように本発明は多数のプロセスからなるシステムバンダリにおいても簡単に(p)を求めることができ、環境負荷(環境ストレス因子)kに対してその環境負荷量(総環境ストレス因子量)Zkを得ることができる。
【0054】
図12図13および図14は、図11に示すFAX(機械)のライフサイクル(LC)を表すプロセス流れ図をもとにして、本発明を用いて環境ストレス因子量を求めた結果を示す図(表)である。図12および図13は各プロセスにおけるインベントリ量等を示すデータシートの記載例である。たとえば、プリント配線板組立工程(図11における<プリント配線基板>工程)では、2つのプロセス(IC製造工程、プリント板製造工程)から入力する。それぞれのプロセスからの製品名(物品・役務名)とその数量(単位稼働度当たり)をデータシートに記載する。また、このプリント配線板組立工程におけるすべてのインベントリ名とその数量(単位稼働度当たり)をデータシートに記載する。また、このプリント配線板組立工程の出力は、製品組み立て工程(図11における<FAX組み立て>工程)に入るが、この製品名(物品・役務名)と数量(単位稼働度当たり)をデータシートに記載する。他のプロセスについても同様である。これらのデータを記載(入力)してコンピュータで計算すると、図14に示すような環境ストレス因子量をプロセス毎に求めることができる。ここでは、環境ストレス因子量としてCO量とTMR量(Total Material Requirement:関与物質総量)について示されている。このように、各プロセスにおける基本データとプロセス間の関連性が分かれば、本発明を用いて簡単に環境ストレス因子量を求めることができる。
【0055】
本発明は、対象とするシステムバンダリ内で複数の製品が出力されるときにアロケーションする場合にも適用できる。図15は、2製品aとbが生産されるときに環境負荷のアロケーションする場合における本発明の適用の一例を示す図である。図15(a)は、そのプロセス流れ図である。最終プロセスT1(プロセス単位稼働度当たりのフロー物品入出力(量)α)から製品a(入出力量ma)が生産され、最終プロセスT2(プロセス単位稼働度当たりのフロー物品入出力(量)β)から製品b(入出力量mb)が生産され、これらの製品を受け入れたシステム基準量はmである。また、最終プロセスT1およびT2の前段プロセスは1つまたは複数存在するが、それらをまとめてプロセス群<B>としている。
【0056】
図15(b)は、システム全体の行列(行列[A]とする)を用いた連立方程式を示す図である。p1、p2、・・・は各プロセスT1、T2、・・・のプロセス稼働度であり、またプロセス群<B>の行列は[B]で示す。この行列[A]が正方行列で正則であれば、前述したように逆行列が存在するので、列ベクトル(pi)の解を得ることができる。この行列が正方行列でない場合でも、結節処理やループ処理を行なうことにより、正方行列に変換できるので、その正方行列が正則であれば、やはり列ベクトル(pi)の解を得ることができる。すなわち、各プロセスT1、T2、・・・のプロセス稼働度pi(i=1,2,・・・)を求めることができる。従って、このシステムバンダリ内の全環境負荷(環境ストレス因子)(量)Zkは、Zk=Σ(bki・pi)となる。<(式1)を参照)>
【0057】
2製品a、bが生産される場合、全環境負荷Zkは、製品aだけにかかわる環境負荷Zkaと製品bだけにかかわる環境負荷Zkbにアロケーション(配分)することができる。すなわち、Zk=Wa・Zka+Wb・Zkbである。ここで、WaおよびWbは、それぞれa製品およびb製品に関する重みづけ係数である。本発明を適用すれば、以下に示すようにZkaやZkbも求めることができる。
【0058】
システムバンダリ内の各プロセスにおいて、製品aだけを生産する場合の行列を用いた連立方程式は図15(c)で示される。ここで、piは、プロセスTiにおける製品aだけを生産する場合のプロセス稼働度である。この連立方程式は解くことができて、列ベクトル(pi)の解を得ることができる。同様に、システムバンダリ内の各プロセスにおいて、製品bだけを生産する場合の行列を用いた連立方程式は図15(d)で示される。ここで、piは、プロセスTiにおける製品bだけを生産する場合のプロセス稼働度である。この連立方程式は解くことができて、列ベクトル(pbi)の解を得ることができる。
【0059】
これらの結果から、製品a(だけ)を生産する場合の全環境負荷Zkaは、Zka=Σ(bki・pi)である。また製品b(だけ)を生産する場合の全環境負荷Zkbは、Zkb=Σ(bki・pi)である。従って、システムバンダリの全環境負荷Zkは、Zk=Wa・Σ(bki・p )+Wb・Σ(bki・p i)で表すことができる。尚、この重みづけ係数Wa、Wbは、LCAの評価目的に応じて決めることができ、たとえば物理的パラメータにより決めたり、経済的価値(たとえば、売上)に基づいて決めたりすることができる。また、重みづけ係数WaおよびWbはZk=Σ(bki・pi)=Wa・Zka+Wb・Zkb=Wa・Σ(bki・pi)+Wb・Σ(bki・pi)が成立するように決めることができる。すなわち、Wa={Σ(bki・pi)-Wb・Σ(bki・pi)}/{Σ(bki・pi)}である。
【0060】
以上まとめると、システムバンダリ内の複数製品の産出においてLCAのアロケーションをする場合、各製品を単独で生産した場合の各プロセスにおける稼働度を列ベクトルとして行列を用いた連立方程式を作成して、各製品の各プロセスにおける稼働度を求め、求められた各製品の稼働度を用いて各プロセスの環境負荷(環境ストレス因子量)を算出する。この各プロセスの環境負荷の総和が各製品を単独で生産した場合の環境負荷(各製品単独の環境負荷)である。システムバンダリ内の全環境負荷は、各製品単独の環境負荷に各製品に重みづけをしたものの総和となる。(図15(c)、(d))一方、システムバンダリ内の全環境負荷は、複数製品を生産した場合の各プロセスにおける稼働度を列ベクトルとして行列を用いた連立方程式を作成して、各プロセスにおける稼働度を求め、求められた稼働度を用いて各プロセスの環境負荷を算出し、その各プロセスの環境負荷の総和としても与えられる。(図15(b))
【0061】
以上のように、システム全体の環境負荷は、システムバンダリ内の各製品の環境負荷にアロケーションする(重みづけする)ことにより、求めることができる。尚、上記および図15では2製品についてLCAのアロケーションを説明したが、本発明は、3製品以上の製品が生産される場合も同様に、各製品のLCAのアロケーションにも適用できることは言うまでもない。
【0062】
本発明によれば、システムバンダリ内における各プロセスについてプロセス稼働度という概念を入れると、各プロセスにおける環境因子量を求めることができ、システムバンダリ内環境負荷量(総環境ストレス因子量)は各プロセスにおける環境因子量の総和で求められる。各プロセスの単位稼働度あたりの入出力を係数とした係数行列と各プロセスの稼働度を変数とする列ベクトルの積は、システムの機能単位に相当する物品量であるシステム基準量を含む定数ベクトルとなる。従って、係数行列が正方正則行列であれば、各プロセス稼働度は、この係数行列の逆行列とシステム基準量を含む定数ベクトルの積になる。係数行列が正方行列でなければ、正方正則行列になる操作をすることができるので、結局各プロセス稼働度を求めることができる。各プロセスの単位稼働度あたりの入出力はデータとして取得できるものである。これらのデータとシステム基準量を入力すれば、コンピュータを使用することによって、係数行列は容易に作成でき、この係数行列の正方正則化も容易に実行できるから、各プロセスの稼働度は一挙に求められる。その結果、環境負荷量も分かるので、LCAの環境影響評価を迅速にしかも正確に進めることが可能となる。尚、本明細書において、明細書のある部分に記載し説明した内容について記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。さらに、前記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のLCAの環境影響評価方法は、事業者の原料調達・製造・物流・販売・廃棄など一連の流れ全体(サプライチェーン)についても適用できる。
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