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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079122
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20230531BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230531BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230531BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
B62D1/06
C08L75/04
C08G18/00 L
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192593
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】百鬼 聡
(72)【発明者】
【氏名】大場 萌
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 和也
【テーマコード(参考)】
3D030
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D030CA01
3D030DA25
3D030DA35
3D030DA45
3D030DA47
4J002CK041
4J002EU077
4J002EU176
4J002FD047
4J002FD056
4J002GH01
4J002GH02
4J002GN00
4J034BA03
4J034CC01
4J034DG03
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034MA14
4J034NA00
4J034QB14
4J034RA07
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】発泡ポリウレタン被覆自体の耐光性を効率的に高めて、塗料による塗膜を無くし、もって塗膜形成に要する手間、時間及びコストを削減する。
【解決手段】ステアリングホイールの発泡ポリウレタン被覆1は、ベースポリオール91質量部に対して顔料が10~25質量部、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が1~3質量部、ヒンダードアミン系の光安定剤が0.8~2.5質量部、該紫外線吸収剤と該光安定剤との合計が2.7質量部以上であるように配合され、さらにポリイソシアネートが配合されたポリウレタン材料により発泡成形されたものである。同被覆1は、高発泡のコアフォーム2と低発泡のスキン層3とを含むインテグラルスキンフォームである。スキン層3は表面で無発泡であり、スキン層3の厚さは50μm以上であり、スキン層3の表面は、塗料による塗膜を備えず、前記顔料による色彩を呈する製品表面である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、芯金のリング部を被覆する発泡ポリウレタン被覆とを備えるステアリングホイールにおいて、
発泡ポリウレタン被覆は、ベースポリオール91質量部に対して顔料が10~25質量部、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が1~3質量部、ヒンダードアミン系の光安定剤が0.8~2.5質量部、該紫外線吸収剤と該光安定剤との合計が2.7質量部以上であるように配合され、さらにポリイソシアネートが配合されたポリウレタン材料により発泡成形されたものであり、
発泡ポリウレタン被覆は、高発泡のコアフォームと低発泡のスキン層とを含むインテグラルスキンフォームであり、
スキン層は、表面で無発泡であり、表面から深くなるにつれて発泡が増え、比重が表面での比重の90%に低下した深さまでがスキン層であり、スキン層の厚さは50μm以上であり、
スキン層の表面は、塗料による塗膜を備えず、前記顔料による色彩を呈する製品表面であることを特徴とするステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯金のリング部を被覆する発泡ポリウレタン被覆を備えたステアリングホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリングホイールの多くは、芯金のリング部を被覆する高分子被覆を備えている。高分子被覆には種々のものがあるが、近年では、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応射出成形(RIM)による発泡ポリウレタン被覆が主流である。ウレタン架橋されたポリウレタン被覆は、本来的には、耐久性、耐摩耗性などの諸特性に優れている。
【0003】
しかし、ポリウレタン被覆は耐光性が低く、特にステアリングホイールでは太陽光に晒されるため、紫外線により分解して変色を起こしやすい。また、発泡ポリウレタン被覆の表面には発泡による気泡穴が現れて、外観不良となる。そこで、紫外線遮断による変色の防止と気泡穴の隠蔽のために、発泡ポリウレタン被覆の表面に塗料による塗膜を形成する必要がある。この塗膜の形成方法として、予めキャビティ面に塗料を塗った金型に前記RIM成形を行い、ポリウレタン被覆の表面に塗料を移し取るインモールドコート法が行われる(特許文献1,2)。
【0004】
インモールドコート法は、成形後の塗装にかかる手間、時間及びコストを削減するが、成形前のキャビティ面に塗料を均一に塗る工程に手間、時間及びコストがかかる。また、金型の合わせ面に塗料バリが生じることもあり、それを除去する仕上工程にも手間、時間及びコストがかかる。
【0005】
なお、特許文献3には、熱可塑性エラストマーと発泡剤とからなる発泡性熱可塑性エラストマーを、金型キャビティー内に射出して発泡させて、RIM発泡ウレタンと同等のソフト感を有するステアリングホイールを製造する方法が記載されている。また、エラストマーに紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等)・光安定剤(ヒンダードアミン化合物)を加えるのが望ましいことも記載されているが、それらの添加量の記載はなく、それらを添加した実施例の記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-96563号号公報
【特許文献2】特開2001-138355号公報
【特許文献3】特開2001-191355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、ステアリングホイールの発泡ポリウレタン被覆自体の耐光性を効率的に高めて、塗料による塗膜を無くし、もって塗膜形成に要する手間、時間及びコストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、芯金と、芯金のリング部を被覆する発泡ポリウレタン被覆とを備えるステアリングホイールにおいて、
発泡ポリウレタン被覆は、ベースポリオール91質量部に対して顔料が10~25質量部、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が1~3質量部、ヒンダードアミン系の光安定剤が0.8~2.5質量部、該紫外線吸収剤と該光安定剤との合計が2.7質量部以上であるように配合され、さらにポリイソシアネートが配合されたポリウレタン材料により発泡成形されたものであり、
発泡ポリウレタン被覆は、高発泡のコアフォームと低発泡のスキン層とを含むインテグラルスキンフォームであり、
スキン層は、表面で無発泡であり、表面から深くなるにつれて発泡が増え、比重が表面での比重の90%に低下した深さまでがスキン層であり、スキン層の厚さは50μm以上であり、
スキン層の表面は、塗料による塗膜を備えず、前記顔料による色彩を呈する製品表面であることを特徴とするステアリングホイール。
【0009】
ここで、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の配合量の下限は、好ましくは1.5質量である。同配合量の上限は、好ましくは2.5質量部である。
【0010】
光安定剤の配合量の下限は、好ましくは1質量以上である。同配合量の上限は、好ましくは2質量部である。
【0011】
スキン層の厚さは、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは140μm以上である。同厚さの上限は、性能的には特にないが、敢えていえば1000μmである。
【0012】
[作用]
発泡ポリウレタン被覆は、発泡により低密度であるため、ポリウレタン材料に紫外線吸収剤と光安定剤を配合したとしてもそれらも低密度に分散してしまい、耐光性を高めることが難しい。そのため、開発当初は、ベースポリオール100質量部に対して紫外線吸収剤と光安定剤の各配合量を例えば6~10質量部程度といった多量にする必要があると考えられた。
【0013】
本発明では、発泡ポリウレタン被覆が、高発泡のコアフォームと低発泡のスキン層とを含むインテグラルスキンフォームであり、スキン層は、表面で無発泡であり、表面から深くなるにつれて発泡が増えて比重が低下し、表面での比重の90%に低下した深さまでがスキン層であり、スキン層の厚さは50μm以上であることにより、該スキン層は高密度である。そのため、ベースポリオール91質量部に対してベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が1~3質量部、光安定剤が0.8~2.5質量部、該紫外線吸収剤と該光安定剤との合計が2.7質量部以上という少量の配合であっても、これらは高密度のスキン層には高密度で存在する。
【0014】
このスキン層の紫外線吸収剤が紫外線を吸収してブロックし、スキン層及びその下のコアフォームを保護する。また、このスキン層の光安定剤が紫外線により変化して、発生ラジカルを補足し、傷を修復する。さらに、スキン層を通過してコアフォームに至った一部の紫外線は、コアフォームの紫外線吸収剤により吸収され、コアフォームの光安定剤が傷を修復する。
【0015】
さらに、ベースポリオール91質量部に対して顔料が10~25質量部配合され、スキン層の表面は前記顔料による色彩を呈する製品表面であるため、スキン層の顔料が紫外線を一部遮蔽する。また、スキン層は表面で無発泡であるから、前述したような気泡穴を隠蔽する塗膜は必要としない。
【0016】
以上の作用により、発泡ポリウレタン被覆自体の耐光性を少量の紫外線吸収剤及び光安定剤と適量の顔料により効率的に高めるとともに、気泡穴の隠蔽を不要にして、塗料による塗膜を無くすことができる。さらに、発泡ポリウレタン被覆は、高密度のスキン層があることにより耐摩耗性にも優れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のステアリングホイールによれば、発泡ポリウレタン被覆自体の耐光性を効率的に高めて、塗料による塗膜を無くし、もって塗膜形成に要する手間、時間及びコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は実施例のステアリングホイールを示し、(a)は正面図、(b)はIb-Ib断面図、(c)は発泡ポリウレタン被覆のIc矢示部の拡大図である。
図2図2は実施例の同発泡ポリウレタン被覆の表面からの深さと比重との関係を示すグラフ図である。
図3図3は同発泡ポリウレタン被覆の成形装置及び方法を示し、(a)は下型の平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1]ベースポリオール
ポリウレタン材料のベースポリオールとしては、特に限定されないが、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等)、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールを例示でき、これらの複数種を混合して用いてもよい。
【0020】
[2]ポリイソシアネート
ポリウレタン材料のポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、2個以上のイソシアネート基を有する公知の脂肪族、脂環族および芳香族の有機イソシアネート化合物を例示でき、これらの複数種を混合して用いてもよい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4-あるいは2,6-トリレンジイソシアネート(トルエンジイソシアネートあるいはトルイジンジイソシアネート:TDI)、2,2’-または2,4-あるいは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のようなアルキレンジイソシアネートあるいはアリーレンイソシアネート、ならびに公知のトリイソシアネートおよびポリメリックMDI等を例示でれる。
【0021】
[3]顔料
顔料としては、特に限定されないが、カーボンブラック、セラミック等を例示できる。
発泡ポリウレタン被覆内における顔料の直径(凝集径)は、特に限定されないが、250nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
【0022】
[4]ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、
・2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
・2-(2-ヒドロキシ-4,6-ジ-タートフェニル)ベンゾトリアゾール、
・2-(3-タートブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、
・3成分混合物((α-[3-[3-(2Hベンゾトリアゾール-2-yl)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-ヒドロキシポリ(オキソ-1,2-エタンジイル)、α-[3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-yl)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-[3-[3-(2Hベンゾトリアゾール-2-yl)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]poly(オキシ1,2-エタンジイル)、H(OCH2CH2)6-7OH)等を例示できる。
【0023】
[5]ヒンダードアミン系の光安定剤
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、特に限定されないが、
・ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジニル)-[[3,5-bis(1,1- ジメチルエチル )-4--ヒドロキシフェニル]メチル],
・2成分混合物(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート)等を例示できる。
【0024】
[6]その他の配合剤
ポリウレタン材料には、上記の成分の他に、触媒、整泡剤、老化防止剤、発泡剤等を配合することができ、必要に応じてさらに充填剤、難燃剤などを配合することもできる。
【0025】
[7]発泡
発泡ポリウレタン被覆の発泡の態様としては、特に限定されないが、減圧による発泡(ポリウレタン材料中に消極的に含まれていた吸蔵ガスが減圧下で突沸)、発泡剤による発泡、これらの組み合わせによる発泡等を例示できる。
発泡剤としては、特に限定されないが、水(水とイソシアネートとの反応が促進されてCO2 が発生)等を例示できる。
【実施例0026】
次に、本発明の実施例について比較例と共に説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0027】
実施例及び比較例のステアリングホイールは、図1に示すように、ボス部5とスポーク部6とリング部7とを備えた芯金4と、リング部7とスポーク部6の一部を被覆する発泡ポリウレタン被覆1と、ボス部5及びスポーク部6に配置されたパッド8とを含み構成されている。
【0028】
発泡ポリウレタン被覆1は、高発泡のコアフォーム2と低発泡のスキン層3とを含むインテグラルスキンフォームである。ここで、高発泡と低発泡は相対的概念である。スキン層3は、表面で無発泡であり、表面から深くなるにつれて発泡が増え、比重が表面での比重の90%に低下した深さまでがスキン層である。スキン層3の表面は、塗料による塗膜を備えず、前記顔料による色彩を呈する製品表面である。
【0029】
このポリウレタン被覆1は、以下説明する材料、成型装置及び方法によりRIM成形されたものである。
【0030】
次の表1に示す配合で、ポリウレタン被覆をRIM成形するための実施例1~4及び比較例1~5のポリウレタン材料(主剤液と硬化剤液)を調製した。
【0031】
【表1】
【0032】
[主剤液(ポリオール成分)]
・ベースポリオールは、PPGであり、平均分子量は5000である。
・架橋剤は、低分子量ジオールであり、硬度を調整するためのものである。
・触媒は、アミン触媒であり、反応性を高めるためのものである。
・整泡剤は、シリコーン整泡剤であり、気泡形成を整えるためのものである。
・紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系であり、BASFジャパン社の商品名「Tinuvin(チヌビン)213」を用いた。
・光安定剤は、ヒンダードアミン系であり、BASFジャパン社の商品名「Tinuvin(チヌビン)765」を用いた。
・酸化防止剤は、BASFジャパン社の商品名「Irganox(イルガノックス)1135」を用いた。
・顔料は、カーボンブラックを主成分としており、日本ピグメント社の製品「NRC-F7DT3」を用いた。
・発泡剤は、水である。
【0033】
[硬化剤液(ポリイソシアネート成分)]
・ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。
【0034】
使用した成形装置は、本出願人による特開2001-96544号公報に記載のものである。簡単に説明すると、図3に示すように、2つの分割型からなる成形用金型10と、該成形用金型10を内部に配置可能な真空箱14と、該真空箱14内を真空吸引する真空ポンプ15と、ポリウレタン材料を射出する材料射出装置16とから構成されている。成形用金型10は上11と下型12からなり、両型の対峙面には型閉じ時にリング状のキャビティ13を形成する凹所が形成されている。
【0035】
この成形用金型10に芯金4をセットし、材料射出装置16により主剤液と硬化剤液とを混合して、リング部7をセットしたキャビティ13に注入した。ポリウレタン材料は、左側のゲートからキャビティ4に注入されて二方向に分かれて流動し、発泡してキャビティ13に充満し、右側の最終充満位置Lで合流してベント孔から少し吹き出した。注入されたポリウレタン材料は、成形面から離れた部分は高発泡のコアフォームとなり、成形面に接した部分は低発泡のスキン層となり、ポリウレタン被覆を形成した。ポリウレタン材料がキュアされるのを待って、金型からステアリングホイールを取り出した。
【0036】
実施例1~3及び比較例1~3のポリウレタン被覆について、以下の物性測定を行った。
【0037】
[1]スキン層の厚さ
ポリウレタン被覆の表面部分と、表面から1.5mm、4.5mm、6mm、7.5mmの各深さの部分を切り出し、それぞれの部分の比重をJIS Z8807に準拠して測定した。実施例1の測定結果を図2のグラフに示す。同グラフに記載の近似式を有効と推定し、同近似式から、前述のとおり比重が表面での比重(1.1)の90%(1.0)に低下した深さまでをスキン層であり、すなわちスキン層の厚さは150μmであった。他の実施例2~3及び比較例1~3についても、ほぼ同様にスキン層の厚さは150μmであった。
【0038】
[2]引張強度
上記成形後の初期のポリウレタン被覆と、下記の耐光試験後のポリウレタン被覆のそれぞれについて、JIS K6251に準拠して、表面にスキン層を含んだ状態でダンベル1号の試験片を切り出し、引張強度を測定した。
耐光試験は、スガ試験機社の試験機「紫外線フェードメータU48B」を使用し、ポリウレタン被覆を10cm長にカットしたサンプルに、照射強度500W/mの紫外線を400時間照射して行った(試験機のバックパネル温度は83℃)。この試験条件は、市場で3年使用を想定したものである。試験後のサンプルからダンベル1号の試験片を切り出した。
測定した引張強度を上記表1に示す。耐光試験前後の引張強度の保持率は、53%以上を良(○)、53%未満を不可(△)と評価した(好ましくは55%以上)。
【0039】
[3]外観
上記耐光試験後のポリウレタン被覆の外観を観察し、次の基準で4等級以上を良(○)、3等級以下を不可(×)と評価した。結果を上記表1に示す。
1等級:異常がかなり著しい
2等級:異常がやや著しい
3等級:異常はわずかであるが、明らかに認められる
4等級:わずかに異常が認められるが、ほとんど目立たない
5等級:まったく異常が認められない
【0040】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 発泡ポリウレタン被覆
2 コアフォーム
3 スキン層
4 芯金
7 リング部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
ここで、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の配合量の下限は、好ましくは1.5質量である。同配合量の上限は、好ましくは2.5質量部である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
光安定剤の配合量の下限は、好ましくは1質量である。同配合量の上限は、好ましくは2質量部である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
このスキン層の紫外線吸収剤が紫外線を吸収してブロックし、スキン層及びその下のコアフォームを保護する。また、このスキン層の光安定剤が紫外線により変化して、発生ラジカルを捕捉し、傷を修復する。さらに、スキン層を通過してコアフォームに至った一部の紫外線は、コアフォームの紫外線吸収剤により吸収され、コアフォームの光安定剤が傷を修復する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
この成形用金型10に芯金4をセットし、材料射出装置16により主剤液と硬化剤液とを混合して、リング部7をセットしたキャビティ13に注入した。ポリウレタン材料は、左側のゲートからキャビティ13に注入されて二方向に分かれて流動し、発泡してキャビティ13に充満し、右側の最終充満位置Lで合流してベント孔から少し吹き出した。注入されたポリウレタン材料は、成形面から離れた部分は高発泡のコアフォームとなり、成形面に接した部分は低発泡のスキン層となり、ポリウレタン被覆を形成した。ポリウレタン材料がキュアされるのを待って、金型からステアリングホイールを取り出した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
実施例1~及び比較例1~のポリウレタン被覆について、以下の物性測定を行った。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
[1]スキン層の厚さ
ポリウレタン被覆の表面部分と、表面から1.5mm、4.5mm、6mm、7.5mmの各深さの部分を切り出し、それぞれの部分の比重をJIS Z8807に準拠して測定した。実施例1の測定結果を図2のグラフに示す。同グラフに記載の近似式を有効と推定し、同近似式から、前述のとおり比重が表面での比重(1.1)の90%(1.0)に低下した深さまでをスキン層であり、すなわちスキン層の厚さは150μmであった。他の実施例2~及び比較例1~についても、ほぼ同様にスキン層の厚さは150μmであった。