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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079162
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20230531BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20230531BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230531BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20230531BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C08G73/00
C08L79/04 Z
C08K3/013
C08K3/016
C08K5/3445
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142615
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】110144104
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】魏 千凱
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM021
4J002DE077
4J002DE147
4J002DE187
4J002DE237
4J002DF017
4J002DH058
4J002DJ017
4J002DK007
4J002EU116
4J002EU188
4J002EW048
4J002EW138
4J002EW158
4J002FD017
4J002FD138
4J002FD156
4J002GF00
4J002GQ00
4J043PA15
4J043QC14
4J043QC24
4J043RA33
4J043RA41
4J043RA47
4J043SA13
4J043SB01
4J043TA73
4J043TB01
4J043XA03
4J043XA34
4J043XA36
4J043XB20
4J043ZA12
4J043ZA41
4J043ZA42
4J043ZA43
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂組成物からなる基材の耐熱性及び電気的性能を効果的に改善し得る樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂とイミダゾールとを含む樹脂組成物を提供する。樹脂はシアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含み、イミダゾールは酸性水素を有しない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂を含む樹脂と、
酸性水素を有しないイミダゾールと、
を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記イミダゾールは、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、チアベンダゾール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記イミダゾールは、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記イミダゾールは、2-エチル-4-メチルイミダゾールを含まない、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記イミダゾールの使用量は、前記樹脂の全100重量部に対して、0.1重量部から4重量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記イミダゾールの使用量は、1重量部である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂中の前記シアン酸エステル樹脂の割合は、10重量%から60重量%の間であり、前記樹脂中の前記ビスマレイミド樹脂の割合は、10重量%から50重量%の間である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
難燃剤及び無機充填剤の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記難燃剤の使用量は、前記樹脂の全100重量部に対して、5重量部から30重量部の間である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機充填剤の使用量は、前記樹脂の全100重量部に対して、80重量部から180重量部の間である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は組成物に関し、より詳細には、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂組成物は、架橋構造を有し、高い耐熱性又は寸法安定性を示すことから、電子機器分野及びその他の分野で広く使用される。さらにまた、熱硬化性樹脂中に使用されるシアン酸エステル(CE)樹脂は、難燃性及びガラス転移温度(Tg)が高いなどの特性を有する。しかしながら、反応性のため、樹脂からなる基材は、良好な耐熱性及び電気的性能を有しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
樹脂からなる基材は良好な耐熱性及び電気的性能を有しておらず、これを克服する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、樹脂組成物からなる基材の耐熱性及び電気的性能を効果的に改善し得る樹脂組成物を提供する。
【0005】
本開示の樹脂組成物は、樹脂とイミダゾールとを含む。樹脂はシアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含み、イミダゾールは酸性水素を有しない。
【0006】
本開示の一実施形態において、イミダゾールは、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、チアベンダゾール、又はこれらの組み合わせを含む。
【0007】
本開示の一実施形態において、イミダゾールは、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールである。
【0008】
本開示の一実施形態において、イミダゾールは、2-エチル-4-メチルイミダゾールを含まない。
【0009】
本開示の一実施形態において、イミダゾールの使用量は、樹脂の全100重量部に対して、0.1重量部から4重量部の間である。
【0010】
本開示の一実施形態において、イミダゾールの使用量は、1重量部である。
【0011】
本開示の一実施形態において、樹脂中で使用されるシアン酸エステル樹脂の割合は、10重量%から60重量%の間であり、樹脂中で使用されるビスマレイミド樹脂の割合は、10重量%から50重量%の間である。
【0012】
本開示の一実施形態において、樹脂組成物は、難燃剤及び無機充填剤のうちの少なくとも1種をさらに含む。
【0013】
本開示の一実施形態において、難燃剤の使用量は、樹脂の全100重量部に対して、5重量部から30重量部の間である。
【0014】
本開示の一実施形態において、無機充填剤の使用量は、樹脂の全100重量部に対して、80重量部から180重量部の間である。
【発明の効果】
【0015】
上記に基づいて、本開示の樹脂組成物は、反応系に対して好適な選択性を有し、酸性水素を有しないイミダゾールを触媒として選択して、シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含む樹脂の反応性を改善するため、本樹脂組成物からなる基材の耐熱性及び電気的性能を効果的に改善し得る。
【0016】
本開示の特徴及び利点をより理解しやすくするために、以下の実施形態を引用し、以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態において、樹脂組成物は、樹脂を含み、樹脂は、シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド(BMI)樹脂とを含む。さらに、本実施形態の樹脂組成物は、酸性水素を有しないイミダゾールを含み、反応系に対して好適な選択性を有し酸性水素を有しないイミダゾールを触媒として選択してシアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含む樹脂の反応性を改善するため、樹脂組成物からなる基材の耐熱性及び電気的性能を効果的に改善し得る。さらにまた、選択された触媒が酸性水素を有する場合、酸性水素は、後続のプレート中に水分を含有させ、解離後の導電率を上昇させ、さらに関連する性能(電気的性能など)に影響を与える可能性が高い。したがって、本実施形態における樹脂組成物は、触媒として酸性水素を有しないイミダゾールを使用し、これによって後続のプレートに水分が過剰に含まれる問題を解決し、低い熱膨張係数(CTE)を維持し得る。
【0018】
一実施形態において、反応系に好適な選択性を有するイミダゾールは、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(2PZCN;CAS:23996-12-5;
【化1】
)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ;CAS:37734-89-7;
【化2】
)、チアベンダゾール(TBZ;CAS:7724-48-3;
【化3】
、又はこれらの組み合わせを含む。改善効果が最も高いイミダゾールは、例えば、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールであるが、これに限定されない。酸性水素を有しない他の適切なイミダゾールは、実際の設計要件に応じて選択され得る。
【0019】
一実施形態において、窒素上に酸性水素を有する構造は、極性官能基に属するため、電気的Dfレベルに影響を与える。したがって、イミダゾールは、後続して製造される基材の性能を維持するために、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ;2E4MZ;CAS:931-36-2;
【化4】
;NHに酸性水素を有する)を含まないが、本開示はこれに限定されない。
【0020】
一実施形態において、イミダゾールの使用量は、樹脂の全100重量部に対して0.1重量部から4重量部の間である。好ましくは、イミダゾールの使用量は1重量部であるが、本開示はこれに限定されない。
【0021】
一実施形態において、系の反応性を向上させるために、樹脂組成物は、過酸化物をさらに含み得、イミダゾール及び過酸化物は、促進剤とみなされ得る。さらに、過酸化物は、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド(DCP)、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、Lufであり得るが、本開示は上記例に限定されない。
【0022】
一実施形態において、過酸化物の使用量は、樹脂の全100重量部に対して、0.1重量%から3重量%であるが、本開示はこれに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、樹脂中のシアン酸エステル樹脂の重量割合は、10重量%から60重量%(例えば、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、又は10重量%から60重量%の範囲内の任意の値)であり、一方で、樹脂中のビスマレイミド樹脂の重量割合は、10重量%から50重量%の間(例えば、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、45重量%、50重量%、又は10重量%から50重量%の範囲内の任意の値)である。
【0024】
一実施形態において、シアン酸エステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100g/molから70000g/molの間である。例えば、シアン酸樹脂のMwは、100g/molから5000g/molの間であり、シアン酸樹脂のMwが100g/molから3000g/molの間であると好ましい効果が得られるが、本開示はこれに限定されない。さらに、シアン酸エステル樹脂の25℃での粘度は425mPa・sから475mPa・sであり得る。シアン酸樹脂のMw又は粘度が上記の範囲内であると、樹脂組成物の架橋特性は樹脂組成物全体の粘度及び加工性に悪影響を及ぼすことなく効果的に向上し得、その後の熱硬化性樹脂材料の適用が容易になる。
【0025】
一実施形態において、シアン酸エステル樹脂は、シアネート基を有する1つ以上の化合物又はポリマーを含み得る。別の実施形態において、シアン酸エステル樹脂は、平均2個以上のシアン酸エステル基を有する。さらなる別の実施形態において、シアン酸エステル樹脂は、対称構造であり、これはシアン酸エステル樹脂が以下の化学式「NCO-R-OCN」で表され得ることを意味する。例えばそれはビスフェノールAシアン酸エステル又はビスフェノールMシアン酸エステルであり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0026】
一実施形態において、ビスマレイミド樹脂は、ビスフェノールAを主構造とし、マレイミドで末端をキャップし、ビスフェノールAの主構造に炭素数1から5のアルキル基をグラフト化させたものを使用し得る。具体的には、ビスマレイミド樹脂の構造は以下の構造式で表され、Ra、Rb、Rc、Rdの各々は、炭素数1から5のアルキル基である。好ましくは、Ra、Rb、Rc及びRdの各々は、炭素数1から3のアルキル基である。別の実施形態において、Ra及びRcはメチル基であり、一方、Rb及びRdはエチル基であるが、本開示はこれに限定されない。
【化5】
【0027】
一実施形態において、ビスマレイミド樹脂は、ビフェニルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドであり得るが、本開示はそれに限定されない。
【0028】
一実施形態において、樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂、架橋剤及び液状ゴム樹脂のうちの1種以上をさらに含み得る。樹脂中のポリフェニレンエーテル樹脂の重量割合は、10重量%から30重量%の間(例えば、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、又は10重量%から30重量%内の範囲の任意の値)であり、樹脂中の架橋剤の重量割合は、0重量%から20重量%の間(例えば、0重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、又は0重量%から20重量%の範囲内の任意の値)であり、樹脂中の液状ゴム樹脂の重量割合は、0重量%から20重量%の間(例えば、0重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、又は0重量%から20重量%の範囲内の任意の値)である。
【0029】
一実施形態において、液状ゴム樹脂は、ポリブタジエンであり得、以下の構造を有し、ここで、n=15から25、好ましくはn=16から22である。
【化6】
【0030】
一実施形態において、液状ゴム樹脂は、ポリオレフィンであり得、スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼンターポリマー、スチレン-ブタジエン-無水マレイン酸ターポリマー、ビニル-ポリブタジエン-ウレタンオリゴマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、水素化スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、水素化スチレン-イソプレンコポリマー、水素化スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリブタジエン(ブタジエンのホモポリマー)、無水マレイン酸-スチレン-ブタジエンコポリマー、メチルスチレンコポリマー、又はこれらの組み合わせから形成される基を含むが、これらに限定されない。
【0031】
一実施形態において、液状ゴム樹脂は、10mol%から90mol%の1,2-ビニル及び0mol%から50mol%のスチレンを有し、Mwは、他の樹脂と効果的に架橋して相溶性を改善するために1000から5000であり得るが、本開示はそれに限定されない。
【0032】
一実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂であり、スチレンタイプのポリフェニレンエーテルと末端アクリルポリフェニレンエーテルとを有する末端基を有する組成物である。例えば、スチレンタイプのポリフェニレンエーテルの構造は、化学式(A):
【化7】
化学式(A)
で示される。
【0033】
化学式(A)中、R1からR8は、水素原子、アリル基、C1からC6アルキル基、又はこれらの基の1つ以上から選択され得、R1からR8のうちの2つは同一でも異なっていてもよく、Xは、単結合、O(酸素原子)、又は以下の連結基:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
又は
【化14】
であり得、P1は、スチリル
【化15】
であり得、mは、1から99の整数であり得る。
【0034】
末端アクリルポリフェニレンエーテルを有する構造は、化学式(B)で示される。
【化16】
【0035】
化学式(B)中、R9からR16は、水素原子、アリル基、C1からC6アルキル基、又はこれらの基の1つ以上から選択され得、R9からR16の2つは同一でも異なっていてもよく、Zは、単結合、O(酸素原子)、又は以下の連結基:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
又は
【化23】
であり得、P2は、
【化24】
又は
【化25】
であり得、qは、1から99までの整数であり得る。
【0036】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例は、ビスヒドロキシポリフェニレンエーテル樹脂(例えば、サウジ基礎産業公社又はSABIC製のSA-90)、ビニルベンジルポリフェニレンエーテル樹脂(例えば、三菱ガス化学製OPE-2st)、メタクリル酸ポリフェニレンエーテル樹脂(例えば、SABIC製SA-9000)、ビニルベンジル変性ビスフェノールAポリフェニレンエーテル樹脂、又はビニル伸びきり鎖ポリフェニレンエーテル樹脂を含むが、それらに限定されない。ポリフェニレンエーテルは、好ましくは、ビニルポリフェニレンエーテルである。
【0037】
一実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂のMwは、100g/molから6000g/molの間である。例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂のMwは、300g/molから5000g/molの間であり、ポリフェニレンエーテル樹脂のMwは、400g/molから2500g/molの間であると好ましい効果が得られるが、本開示はそれに限定されない。
【0038】
一実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、少なくとも1つの変性基をさらに有してもよく、変性基は、以下の分子基、すなわち、ヒドロキシル基、アミノ基、ビニル基、スチリル基、メタクリル基及びエポキシ基からなる群から選択され得る。ポリフェニレンエーテル樹脂の変性基は、不飽和結合を提供して架橋反応を促進し、高いガラス転移温度(Tg)と良好な耐熱性とを有する材料を形成し得る。この実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子構造の対向する2つの末端は、両方とも変性基を有し、2つの変性基は同一である。別の実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂上の変性基は、メタクリル酸基又はスチリル基である。さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂は、様々なポリフェニレンエーテル樹脂を含み得る。例えば、本開示のポリフェニレンエーテルは、第1のポリフェニレンエーテル樹脂及び第2のポリフェニレンエーテル樹脂を含み得る。第1のポリフェニレンエーテル樹脂及び第2のポリフェニレンエーテル樹脂の各分子末端は、少なくとも1つの変性基を有し、変性基は、以下の分子基、すなわち、ヒドロキシル基、アミノ基、ビニル基、スチリル基、メタクリル基及びエポキシ基からなる群から選択される。第1のポリフェニレンエーテル樹脂の変性基は、第2のポリフェニレンエーテル樹脂の変性基とは異なる。
【0039】
一実施形態において、架橋剤は、熱硬化性樹脂の架橋度を高め、基材の剛性及び靭性を調整し、加工性を調整するために使用される。使用する架橋剤の種類は、1,3,5-トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチルアリルイソシアヌレート(TMAIC)、フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、1,2,4-トリメリット酸トリアリル等、又はこれら複数の組み合わせであり得る。
【0040】
一実施形態において、樹脂組成物は、難燃剤及び無機充填剤のうちの少なくとも1種をさらに含む。樹脂の全100重量部に対して、難燃剤の使用量は、5重量部から30重量部の間(例えば、5重量部、10重量部、20重量部、30重量部、又は5重量部から30重量部の範囲内の任意の値)である。樹脂の全100重量部に対して、無機充填剤の使用量は、80重量部から180重量部の間(例えば、80重量部、90重量部、100重量部、120重量部、140重量部、160重量部、180重量部、又は80重量部から180重量部の間の範囲内の任意の値)である。
【0041】
一実施形態において、難燃剤は、ハロゲンフリー難燃剤でもよく、難燃剤の具体例は、リン系難燃剤でもよく、これは、TPP、RDP、BPAPP、BBC、CR-733S及びPX-200などのリン酸塩から選択されてもよく、SPB-100などのホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン(MPP)及びメラミンシアヌレートから選択されてもよく、DOPO(例えば、以下の化学式(C))、DOPO-HQ(例えば、以下の化学式(D))、二重DOPO誘導構造(例えば、以下の化学式(E))等のDOPO難燃剤、及びアルミニウム含有次亜リン酸塩(例えば、以下の化学式(F))の複数の組み合わせから選択されてもよい。
【化26】
【化27】
【化28】
ここでRは、
【化29】
【化30】
又は(CH
【化31】
であり得、rは、1から4の整数であり得る。
【化32】
【0042】
一実施形態において、無機充填剤の目的は主に、硬化後の樹脂組成物の機械的強度及び寸法安定性を向上させることである。無機充填剤の組成は、球状又は不定形のSiO、TiO、Al(OH)、Al、Mg(OH)、MgO、CaCO、B、CaO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、2MgO・TiO、CeO又はフュームシリカ、BN及びAlNの1種以上から選択される。無機充填剤の平均粒子径は、好ましくは0.01ミクロンから20ミクロンである。フュームシリカは、添加割合が0.1重量%から10重量%であり平均粒子径が1から100nmである多孔質のナノサイズシリカ粒子である。さらに、SiOは、溶融状態又は結晶状態であり得る。組成物の誘電特性を考慮すると、SiOは、Bao Lin製の525ARIなどの、溶融二酸化ケイ素であることが好ましい。
【0043】
上記に挙げた具体的な実施形態は、本開示を限定しないことに留意されたい。樹脂組成物の樹脂がシアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含み、触媒として酸性水素を有しないイミダゾールを使用している限り、本開示の保護範囲に含まれるものとする。さらに、上記構造式又は官能基のいくつかでは、分かり易くするために炭素上の水素を省略している。
【0044】
以下に、本開示の効果を説明するために実施例及び比較例を挙げるが、本開示の権利範囲は、実施例の範囲に限定されない。
【0045】
各実施例及び比較例で製造した銅クラッド積層体について、以下の方法に従って評価を行った。
【0046】
動的粘弾性測定(DMA)によってガラス転移温度(℃)を試験した。
【0047】
288℃のはんだ耐性及び耐熱性(秒):試料を圧力釜内で120℃、2atmで120分間加熱した後、288℃のはんだ炉内に試料を浸漬し、試料が離層するまでの時間を記録した。
【0048】
誘電率Dk:誘電率測定器HP Agilent E4991Aによって、周波数10GHzで誘電率Dkを測定した。
【0049】
誘電損失Df:誘電率測定器HP Agilent E4991Aによって、周波数10GHzで誘電損失Dfを測定した。
【0050】
銅箔の剥離強度(lb/in):銅箔と回路担体との間の剥離強度を試験した。
【0051】
<実施例1から実施例3、比較例1>
表1に示す樹脂組成物をトルエンと混合し、熱硬化性樹脂組成物のワニスを形成した。このワニスを南亜ファイバーガラスクロス(南亜プラスチックコーポレーション製のクロスタイプ2013)に室温で含浸させた。その後、130℃(含浸器)で数分間乾燥させた後、60重量%の樹脂含有率のプリプレグを得た。最後に、プリプレグ4片を厚さ35μmの2層の銅箔間に交互に積層した。圧力25kg/cm、温度85℃の条件下で、20分間一定温度を保った。その後、加熱速度3℃/分で185℃まで加熱した後、再び120分間一定温度を保った。その後、130℃まで徐冷し、厚さ0.5mmの銅クラッド積層体を得る。
【0052】
製造した銅クラッド積層体の物性を試験し、その結果を表1に示す。表1の実施例1から3と比較例1との結果を比較して、実施例1から3は、比較例1と比較して、樹脂組成物からなる基材の耐熱性及び電気的性能を効果的に改善し得るという結論を導くことができる。
【0053】
【表1】
【0054】
要約すると、本開示の樹脂組成物は、シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含む樹脂の反応性を向上させるために、反応系に好適な選択性を有し酸性水素を有しないイミダゾールを触媒として選択するため、樹脂組成物性の基材の耐熱性及び電気的性能を効果的に改善し得る。
【0055】
本開示を上記の実施形態で開示したが、実施形態は、本開示を限定しない。当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、いくつかの変更及び修正を行い得る。本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
樹脂組成物は、樹脂組成物の分野に適用し得る。
【外国語明細書】