(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079168
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレート及びその製造方法並びにこれを使用した表示パネル及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20230531BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230531BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20230531BHJP
G02B 5/02 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
G09F9/00 302
C03C15/00
C03C17/34 A
G02B5/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163970
(22)【出願日】2022-10-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】202111416842.1
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522400180
【氏名又は名称】▲賽▼▲徳▼半▲導▼体有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲漢▼培
(72)【発明者】
【氏名】金 俊昊
(72)【発明者】
【氏名】尹 ▲赫▼俊
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼春▲偉▼
【テーマコード(参考)】
2H042
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
2H042BA03
2H042BA12
2H042BA20
4G059AA01
4G059AA06
4G059AB11
4G059AC01
4G059AC09
4G059BB16
4G059FA07
4G059FB01
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA11
5G435BB05
5G435BB12
5G435HH05
5G435LL07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、カバー体の折り曲げ可能な領域に凹部を形成することにより、カバー体の折り曲げ性能を実現し、また、カバー体の上面に凹凸構造を形成することにより、凹部に起因する視認性の問題を低減できる、ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレート、その製造方法、このカバープレートを有する表示パネル及び表示装置を開示する。
【解決手段】カバープレートを構成するカバー体は、第1面及び第2面からなり、第2面には、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部が形成され、第1面には、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの第1凹凸構造が形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレートであって、
カバープレートは、第1面と第2面を有するカバー体からなり、
第1面は、折り曲げ可能な領域に、微細な複数の凹凸からなる第1凹凸構造が形成され、
第2面は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部が形成され、
凹部の表面は、第2凹凸構造が形成され、
第2凹凸構造における凹みの分布密度が、凹部の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなっている、
ことを特徴とする折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項2】
第2面は、少なくとも3つのフィルム層が形成されており、
フィルム層の屈折率は、第1面から第2面に向かう方向に、低屈折率と高屈折率とが順番に交互に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項3】
第2面の3つのフィルム層は、
屈折率が異なる第1フィルム層、第2フィルム層、第3フィルム層が積層されており、
第1フィルム層の屈折率は、カバー体の屈折率とほぼ同じであり、
第2フィルム層の屈折率は、第1フィルム層の屈折率より大きく、
第2フィルム層の屈折率は、第3フィルム層の屈折率より大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項4】
第1フィルム層は、
第2面に接触した状態で、第2面に形成された凹部を覆っている
ことを特徴とする請求項3に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項5】
第1凹凸構造は、
第1面上にランダムに形成され、第1凹凸構造の凹みの大きさは0.1~2μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項6】
カバー体を固定して装着する工程と、
カバー体の第2面の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部を形成する工程と、
凹部の表面に、粗加工した第2凹凸構造を形成する工程と、
第2凹凸構造の凹みの分布密度が、凹部の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなるように、
粗加工した第2凹凸構造に、
凹部の中央部では速い動きに制御して、分布密度の小さい凹凸を形成し、
凹部の両側部では遅い動きに制御して、分布密度の大きい凹凸を形成する工程と、
第1面の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートを製造する方法。
【請求項7】
ディスプレイモジュールと、
ディスプレイモジュール上に配置された請求項1から5のいずれか1項に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートと、
を備えていることを特徴とする表示パネル。
【請求項8】
請求項7の表示パネル
を備えていることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の技術分野に関し、具体的には、ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレート、その製造方法、表示パネル及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル有機EL技術の継続的な発展に伴い、携帯電話端末やその他の通信端末、タブレット端末に搭載されるフレキシブル有機ELディスプレイは、ますます広く使用されるようになった。
また、携帯電話端末やその他の通信端末、タブレット端末は、SF(固定曲率)からDF(フォルダブル)へと多様化し、折り畳み可能な製品の技術開発もますます進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、フレキシブルスクリーンを使用し、且つ、可視領域の割合が高いディスプレイモジュールに関する発明が開示されている。
この発明によれば、フレキシブルスクリーンが設けられた正面は、一定の曲率で窪むことができ、凹面あるいは凸面にすることができる。
【0004】
しかし、折り畳み可能な製品には、例えば、Colorless Polyimide(CPI)などの透明で柔軟な素材からなるカバープレートが用いられているものの、従来のカバープレートは、機械的強度が弱く、特に外付けの製品は、ディスプレイは本体表面にあることから、落下時にディスプレイが硬いものに衝突すると、いわゆるドット落ちと呼ばれる現象が生じるほか、GDS現象などの表示異常や損傷につながるという問題があった。
【0005】
また、特許文献1には、折り曲げ可能な領域の段差に起因する視差を解消する手段は、一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、カバープレートの剛性及び曲げ性能を満足し、折り曲げ可能な領域の段差に起因する視差を解消できるディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレート、その製造方法、表示パネル及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術における問題点を解決するために、本発明は、以下の技術的な解決策を講じている。
なお、本発明の説明において、「内」、「下」、「上」など方位と位置関係を指示する用語は、図面に示される方位や作業中によく置く方位、位置関係に基づくものである。
また、方向または位置関係は、本発明を説明し、説明を簡略化するためのものであり、参照されるデバイスまたは要素が特定の方向を有し、特定の方向で構築または操作されなければならないことを示したり示唆したりするものではない。
さらに、「第1」、「第2」などの用語は、説明を区別するためにのみ使用され、相対的な重要性を示したり、暗示することを意味するものではない。
【0009】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレートであって、
カバープレートは、第1面と第2面を有するカバー体からなり、
第1面は、折り曲げ可能な領域に、微細な複数の凹凸からなる第1凹凸構造が形成され、
第2面は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部が形成され、
凹部の表面は、第2凹凸構造が形成され、
第2凹凸構造における凹みの分布密度が、凹部の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなっている、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
上記の特徴に加え、
第2面は、少なくとも3つのフィルム層が形成されており、
フィルム層の屈折率は、第1面から第2面に向かう方向に、低屈折率と高屈折率とが順番に交互に設定されている、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
上記の特徴に加え、
第2面の3つのフィルム層は、
屈折率が異なる第1フィルム層、第2フィルム層、第3フィルム層が積層されており、
第1フィルム層の屈折率は、カバー体の屈折率とほぼ同じであり、
第2フィルム層の屈折率は、第1フィルム層の屈折率より大きく、
第2フィルム層の屈折率は、第3フィルム層の屈折率より大きい、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
上記の特徴に加え、
第1フィルム層は、
第2面に接触した状態で、第2面に形成された凹部を覆っている
ことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
上記の特徴に加え、
第1凹凸構造は、
第1面上にランダムに形成され、第1凹凸構造の凹みの大きさは0.1~2μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【0014】
上記の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートを製造する方法は、
カバー体を固定して装着する工程と、
カバー体の第2面の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部を形成する工程と、
凹部の表面に、粗加工した第2凹凸構造を形成する工程と、
第2凹凸構造の凹みの分布密度が、凹部の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなるように、
粗加工した第2凹凸構造に、
凹部の中央部では速い動きに制御して、分布密度の小さい凹凸を形成し、
凹部の両側部では遅い動きに制御して、分布密度の大きい凹凸を形成する工程と、
第1面の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる表示パネルは、
ディスプレイモジュールと、
上記の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートと、
を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる表示装置は、
上記の表示パネル
を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明にかかる折り曲げ可能なカバープレートは、カバー体の折り曲げ可能な領域に凹部を形成することにより、カバー体の折り曲げ性能を実現し、また、カバー体の上面に凹凸構造を形成することにより、凹部に起因する視認性の問題を低減し、パネルの表示性能を向上させ、ユーザーの満足度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの断面構造を示す切断部分の端面図
【
図3】折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートに入射する光の屈折と反射の方向を模式的に示す説明図
【
図4】実施例1の折り曲げ可能な領域の上面に有機被覆層が形成された折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの断面構造を示す切断部分の端面図
【
図5】実施例1の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの製造手順を示すフロー図
【
図6】実施例2の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの断面構造を示す切断部分の端面図
【
図7】実施例2の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの製造手順を示すフロー図
【
図8】実施例2の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートに凹部及び第2凹凸構造を形成する手順を示すフロー図
【
図9】実施例3の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの断面構造を示す切断部分の端面図
【
図10】フィルム層による光の屈折率の違いを模式的に示す説明図
【
図11】実施例3の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの製造手順を示すフロー図
【
図12】折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートに第1フィルム層を形成するために使用するスパッタリング装置の実施例を示す模式図
【
図13】実施例4の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの断面構造を示す切断部分の端面図
【
図14】実施例4の折り曲げ可能な領域を有するディスプレイ用カバープレートの製造手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の具体的な実施形態を、図面をもとに詳細に説明する。
【0020】
ディスプレイモジュールを覆う、折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図1に示すとおり、第1面101と第2面102を有するカバー体10からなる。
第2面102は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20が形成されている。
第1面101は、折り曲げ可能な領域に、第1凹凸構造50が形成されている。
【0021】
カバー体10の「第1面101」及び「上面」は、カバープレートをディスプレイモジュールに貼り合わせたとき、ディスプレイモジュールから遠い側の面をいう。
カバー体10の「第2面102」及び「下面」は、カバープレートをディスプレイモジュールに貼り合わせたとき、ディスプレイモジュールに近い側の面をいう。
つまり、「上」は、ディスプレイモジュールから遠い側、「下」は、ディスプレイモジュールに近い側を指す。
【0022】
本発明は、カバープレートを不等厚に設計し、折り曲げ可能な領域に凹部20を形成することで、非折り曲げ可能な領域のドット落ちと呼ばれる現象を防ぎ、ディスプレイモジュールの機械的特性を確保しつつ、折り曲げ可能な領域の屈曲性を確保した。
【0023】
しかし、カバープレートに凹部20を形成することで、凹部20周辺部との厚さの違い(段差)に起因する視差が発生し、画像が歪んでいるように見えてしまう視差の問題が生じる。
これは、凹部20とその周辺部では光の屈折角度が異なるためであると考えられる。
【0024】
屈折の法則によれば、光が2つの媒体を伝播するとき、例えば、
図2に示すように、入射光d1は、第1の界面Xから第2の界面Yに向かって入射し、第1の界面Xと第2の界面Yの接合部で、反射光d1'と屈折光d2とに分かれる。
【0025】
ここで、θ1とθ1'の間の角度は同じであり、光が光疎媒体から光密媒体に向けられるとき、θ2の角度はθ1の角度より小さくなり、その逆も同様である。
そこで、本発明では、第1面101に第1凹凸構造50を形成することで、視差の問題を解消した。
具体的には、第2面102の凹部20からカバープレート内部に入射した光は、そのままカバープレート内部を通過し、第1面101の第1凹凸構造50に入射すると、第1凹凸構造50の表面において、屈折と同時に反射が起こる。
【0026】
このとき、屈折した光の一部は上面側から放射されるが、屈折した光の一部と反射した光の一部が第1凹凸構造50内で屈折と反射を繰り返すことから、第1凹凸構造50から放射される光が均一になり、カバープレート内部を通過する光は、直線的に第1面101から放射されたように見える。
【0027】
詳細な原理は、
図3に示すとおりであり、ディスプレイモジュールからの光が第2面102から入射し、第1面101に到達すると、第1凹凸構造50の表面で屈折と反射が起こり、屈折した光は上面側から放射され、反射した光は第1凹凸構造50を形成する別の凹凸部分に照射されることで反射と屈折を繰り返し、さらに屈折した光は別の凹凸部分に照射されることで屈折と反射を繰り返す。
その結果、乱反射の効果を得られ、第1凹凸構造50から均一な光が放射される。
【0028】
<実施例1>
ディスプレイモジュールを覆う、折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図4に示すとおり、第1面101と第2面102を有するカバー体10からなる。
カバー体10は、例えば、石英ガラス、ハイシリカガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス又はホウケイ酸ガラスなどの柔軟なん極薄の各種ガラス素材を使用できる。
【0029】
第2面102は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20が形成されている。
第1面101は、折り曲げ可能な領域に、第1凹凸構造50が形成されている。
第1凹凸構造50は、第1面101上にランダムに形成され、第1凹凸構造50の凹みの大きさは、0.1~2μmである。
第1凹凸構造50は、微細な複数の凹凸が形成されており、不規則な凹凸のほか、規則的な凹凸を形成でき、その凹凸自体を、不規則に分布させたり、規則的に分布させることもできる。
凹凸の形状は、幾何学的形状であり、例えば、長方形、三角形、円、楕円などが挙げられる。
【0030】
第1凹凸構造50を形成する方法は、カバー体10がガラス素材からなる場合、例えば、エッチングにより不規則な凹凸を形成することが可能である。
エッチングによる方法では、エッチング液に酸性化合物を含むものを使用する。
カバー体10の主な化学組成はSiO2であるため、SiO2は酸性化合物と反応してケイ酸塩を形成し、カバー体10の表面に付着する。
酸性化合物は、カバー体10の表面のみを腐食させるから、カバー体10の表面に凹凸が形成される。
【0031】
本実施例では、カバー体10上面(第1面101)の折り曲げ可能な領域に、一定の粗さを有する第1凹凸構造50を形成するほか、カバー体10の第1面101にポリマー材料からなる有機被覆層40を形成する。
有機被覆層40によって、カバー体10上面(第1面101)の表面粗さを低減することが可能である。
また、有機被覆層40によって、カバープレートの弾性率、曲げ耐性、引張耐性などの機械的特性を向上させ、外観を改善し、使用感を向上させることが可能である。
【0032】
第1凹凸構造50は、大きさに制限はないが、大き過ぎると粗さが増し、使用感に影響するほか、半径方向の大きさが大き過ぎると視差を小さくする効果が弱くなってしまう。
凹部20は、形状に制限はなく、断面が矩形、三角形、円弧の形状にすることができる。
凹部20の凹みの深さは、任意に選択でき、例えば、折り曲げ可能な領域の曲げ半径に応じて決定することができる。
有機被覆層40の屈折率は、カバー体10の屈折率とほぼ同じである。
カバー体10に弾性率と硬度の高いUTG(Ultra Thin Glass)を用い、カバー体10上面(第1面101)に有機被覆層40を形成することで、機械的特性を向上させながら、低コストで、視差の問題も解決できる。
【0033】
ディスプレイモジュールを覆う、折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図5に示すとおり、次の手順で製造することができる。
【0034】
(S11)
カバー体10を処理装置に固定、装着する。
カバー体10はガラス製を用いることが好ましい。
【0035】
(S12)
カバー体10の第2面102の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20を形成する。
凹部20を形成する手段は、機械的切断、エッチングなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
(S13)
カバー体10の第1面101の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造50を形成する。
第1凹凸構造50を形成する手段は、エッチングによることが望ましいが、これに限定されない。
第1凹凸構造50を形成する工程では、非エッチング領域上にインク保護層を形成し、エッチングが完了した後に、インク保護層を除去する。
インク保護層は、インク保護領域を保護し、エッチング液が非エッチング領域に影響を与えることを防止できる。
インク保護層の材料は、従来技術である光硬化型インクや熱硬化型インクなどから選択できる。
本実施例では、インクの材料およびインクの除去方法は限定されず、カバー体10に損傷を与えなければ、自由に選択できる。
【0037】
(S14)
第1面101上に有機被覆層40を形成する。
有機被覆層40を形成する手段は、塗布法、蒸着法などが挙げられるが、これに限定されない。
有機被覆層40は、カバー体10上に有機被覆材料を、蒸着または塗布することによって製造される薄膜を意味する。
【0038】
インク保護層、有機被覆層40は、任意の方法によって堆積させ、コーティングさせることができる。
蒸着は、例えば、スパッタリング、蒸着、化学蒸着などの1以上から選択でき、コーティングは、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティングなどの1以上から選択できる。
【0039】
第1凹凸構造50は、カバー体10上面(第1面101)に位置するため、凹凸の形状が大き過ぎると、ざらつきを感じやすく使用感が悪いほか、製造工程中に欠陥が生じる可能性があるため、表面が滑らかな丸い粒子構造のような鈍い角部を有する微細な凹凸の形状をなしていることが好ましい。
【0040】
第1凹凸構造50を形成するためのエッチング液は、2~15wt%のフッ化水素酸、0.3~4wt%のフッ化アンモニウム、2~15wt%の無機酸、水を含む。
エッチング液中のフッ化水素酸は、非常に強い親電子性の粒子H+と中程度の親電子性の粒子F-を含み、ガラスに対する分解能力が強く、ガラス表面の酸化物と反応してフッ化ケイ酸塩を形成し、エッチング液に溶解されやすい。
【0041】
フッ化アンモニウムは、アルカリ性で、フッ化水素酸とともに緩衝溶液を形成し、エッチング速度を調節して微細な凹凸の形状を制御し、過剰なエッチングを回避できる。
無機酸は、H+を供給してエッチング速度を調整し、フッ化水素酸やフッ化アンモニウムと相乗的に作用して、表面が滑らかな丸い粒子構造のような鈍い角部を有する微細な凹凸を形成しやすくする。
【0042】
エッチング液による第1凹凸構造50層の形成は、ガラスの動的曲げ特性の大幅な改善を伴い、破壊に耐える曲げ半径の大幅な増加、すなわち曲げ強度を向上させることを実験的に確認した。
エッチング液によって、カバー体10の表面(第1面101)に0.1~2μmの凹凸を形成することができる。
【0043】
<実施例2>
本実施例にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図6に示すとおり、カバー体10を備えている。
カバー体10の第2面102には、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20が形成されている。
カバー体10の第1面101には、折り曲げ可能な領域に、第1凹凸構造50が形成されている。
凹部20の表面には、第2凹凸構造60が形成されている。
第2凹凸構造60における凹みの分布密度は、凹部20の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなっている。
【0044】
凹部20の中央部には緻密な凹凸が、両端部には疎な凹凸が形成されているため、屈折効果が高まり、凹部20に入射してカバー体10内部を通過する光の屈折または反射する方向を均一化(ばらつきを抑える)することができる。
【0045】
第2凹凸構造60は、微細な複数の凹凸が形成されており、不規則な凹凸のほか、規則的な凹凸を形成でき、その凹凸自体を、不規則に分布させたり、規則的に分布させることもできる。
凹凸の形状は、幾何学的形状であり、例えば、長方形、三角形、円、楕円などが挙げられる。
第2凹凸構造60を形成する方法は、カバー体10がガラス素材からなる場合、例えば、エッチングにより不規則な凹凸を形成することが可能である。
【0046】
エッチングによる方法では、エッチング液に酸性化合物を含むものを使用する。
カバー体10の主な化学組成はSiO2であるため、SiO2は酸性化合物と反応してケイ酸塩を形成し、カバー体10の表面に付着する。
酸性化合物は、カバー体10の表面のみを腐食させるから、カバー体10の表面に凹凸が形成される。
【0047】
本実施例では、カバー体10下面(第2面102)の折り曲げ可能な領域に、一定の粗さを有する第2凹凸構造60を形成するほか、カバー体10の第1面101に、高分子材料のフィルム層30を形成する。
フィルム層30によって、カバー体10上面(第1面101)の表面粗さを低減することが可能である。
また、フィルム層30によって、カバープレートの弾性率、曲げ耐性、耐伸縮性などの機械的特性を向上させ、表面粗さを低減し、外観を改善し、使用感を向上させることが可能である。
【0048】
カバー体10上面(第1面101)に形成されるフィルム層30の屈折率は、カバー体10の屈折率とほぼ同じであり、機械的特性を向上させながら、低コストで、視差の問題も解決できる。
ディスプレイモジュールを覆う、折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図7に示すとおり、次の手順で製造することができる。
【0049】
(S21)
カバー体10を処理装置に固定、装着する。
カバー体10はガラス製を用いることが好ましい。
【0050】
(S22)
カバー体10の第2面102の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20を形成する。
凹部20を形成する手段は、機械的な切削加工または化学的なエッチングを選択することができる。
【0051】
(S23)
凹部20の表面に、第2凹凸構造60を形成する。
第2凹凸構造60を形成する手段は、化学エッチングによって行われることが好ましい。
例えば、カバー体10に凹部20をレーザー加工あるいはエッチング等の成形加工により形成し、その後、凹部20の表面にエッチングにより第2凹凸構造60を形成する。
第2凹凸構造60の形成工程を、凹部20の形成工程と同一行程にすることで、加工手順の最適化、同時加工による効率の向上が可能となる。
【0052】
第2凹凸構造60の形成には、不規則な凹凸の分布が要求されるため、
図8に示すように、次の手順により、エッチング液を噴霧(スプレー)して、凹部20及び第2凹凸構造60を形成する。
【0053】
(S201)
凹部20を形成するエッチング工程では、エッチング速度とエッチング時間を制御し、スプレーガンを等速で移動させ、一定の深さの凹部20を形成させる。
カバー体10にエッチング液を噴霧する工程の好ましい条件は、エッチング液の温度25~30℃、噴霧圧力0.1~0.8 Pa、噴霧流量10~15sccm、噴霧時間5~10分である。
室内温度は20~22度に設定している。
【0054】
(S202)
凹部20の表面を粗面加工して、凹部20の表面の中央部に密度の低い凹凸を形成する。
エッチング工程では、エッチング液が噴霧(スプレー)されるが、中央部では、少量のエッチング液を小さい密度でスプレーする。
エッチング工程の好ましい条件は、エッチング液の温度25~30℃、噴霧圧力0.1~0.8 Pa、噴霧流量10~15sccm、噴霧時間3~8分である。
この工程では、スプレーガンを一定速度で移動させて、エッチング液を噴霧する。
【0055】
(S203)
凹部20の表面を深く加工し、凹部20の表面の両端部に、より緻密な凹凸を形成する。
エッチング工程では、エッチング液が噴霧(スプレー)されるが、両端部では、多量のエッチング液を大きい密度でスプレーする。
エッチング工程の好ましい条件は、エッチング液の温度25~30℃、噴霧圧力1~1.5 Pa、噴霧流量25~30sccm、噴霧時間3~5分である。
このように、S202とS203のエッチング工程では、スプレーガンを、凹部20の表面における中央部では速く動かし、両端部では遅く動かす。
【0056】
つまり、最初に、凹部20を、高い温度、圧力および流量で、高速に成形し、次に、第2凹凸構造60を、低い温度、圧力および流量で、粗加工を行う。
最後に、粗加工した第2凹凸構造60に、凹部20の中央部では速い動きに制御して、分布密度の小さい凹凸を完成させ、凹部20の両側部では遅い動きに制御して、分布密度の大きい凹凸を完成させる。
【0057】
(S24)
カバープレートの第1面101の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造50を形成する。
第1凹凸構造50を形成する手段は、エッチングによって行う。
第1凹凸構造50を形成する工程では、非エッチング領域上にインク保護層を形成し、エッチングが完了した後に、インク保護層を除去する。
インク保護層は、インク保護領域を保護し、エッチング液が非エッチング領域に影響を与えることを防止できる。
インク保護層の材料は、従来技術である光硬化型インクや熱硬化型インクなどから選択できる。
本実施例では、インクの材料およびインクの除去方法は限定されず、カバー体10に損傷を与えなければ、自由に選択できる。
【0058】
(S25)
第1面101上に第1フィルム層301を形成する。
第1フィルム層301を形成する手段は、コーティングまたは蒸着などが挙げられるが、これに限定されない。
フィルム層30は、カバー体10上に有機質材料または無機質材料を、蒸着または塗布することによって製造される薄膜を意味する。
第1フィルム層301、フィルム層30は、任意の方法によって堆積させ、コーティングさせることができる。
蒸着は、例えば、スパッタリング、蒸着、化学蒸着などの1以上から選択でき、コーティングは、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティングなどの1以上から選択できる。
【0059】
<実施例3>
本実施例にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図9に示すとおり、カバー体10を備えている。
カバー体10の第2面102には、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20が形成されている。
カバー体10の第1面101には、折り曲げ可能な領域に、第1凹凸構造50が形成されている。
第2面102には、少なくとも3つのフィルム層30が形成されている。
フィルム層30の屈折率は、第1面101から第2面102に向かう方向に、低屈折率と高屈折率とが順番に交互に設定されている。
【0060】
3つのフィルム層30は、例えば、順番に積層される第1フィルム層301、第2フィルム層302、第3フィルム層303からなる。
第1フィルム層301の屈折率は、カバー体10の屈折率とほぼ同じであり、第2フィルム層302の屈折率は、第1フィルム層301の屈折率より大きく、第2フィルム層302の屈折率は、第3フィルム層303の屈折率より大きい。
第1フィルム層301は第2面102に接触しており、第1フィルム層301が凹部20を覆っている。
【0061】
フィルム層30は、第2面102全体に形成され、これにより、カバープレートの柔軟性を高め、折り曲げ時に破損しにくくすることができる。
第1フィルム層301の材料は、有機材料、無機材料のいずれでもよい。
有機材料は、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリブチルアクリレート(PBA)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)及びこれらのコポリマーから選択することができる。
無機材料は、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)から選択でき、無機材料は屈折率が高く、同時にカバープレートの性能を向上させることができる。
【0062】
同じ基材でも調製プロセスや配合によって異なる特性を得ることができる。
例えば、PIの調製には10以上の既存の方法があり、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンをモノマーとする二段階合成法は、PIの工業生産に最もよく使われる方法で、そのプロセスは比較的成熟しており、PIモノマー二無水物とジアミンの調製には多くの種類があり、異なるモノマーの組み合わせで異なる特性を持つPIを得ることが可能である。
芳香族二無水物は、ホモフタル酸、エーテル二無水物、ケトン二無水物、ビフェニル二無水物、フッ素二無水物などが主な種類である。
【0063】
それぞれの層にそれぞれ異なる材料を選択することができ、または、全ての層に無機材料もしくは有機材料を用いることができるほか、有機層と無機層とで複数の層を用いることができる。
例えば、超薄型のカバープレートの場合、下層に無機材料層を積層することで、カバープレートの機械的特性を高めることが可能であり、無機層とカバープレートの間に有機層を形成することで、カバープレート全体の機械的特性をさらに最適化することができる。
【0064】
屈折率を調整する手段により、視差の問題をさらに改善することができる。
高屈折率と低屈折率を組み合わせて使用することで、反射光を相殺する効果を得ることができる。
異なる層間の屈折率の大きさに制限はなく、低屈折率層には同じ有機材料を、高屈折率層には同じ無機材料を使用することも可能である。
【0065】
また、調製方法を最適化し、調製効率を向上させることも可能である。
例えば、第1フィルム層301は、カバー体10と同様または同じ屈折率の材料を選択する場合、凹部20の表面領域で光が屈折しないため、第1領域と第2領域との屈折率差をなくし、良好な表示効果を得ることができる。
【0066】
第1フィルム層301とカバー体10との屈折率の差を-0.1~0.1とすることが好ましく、これにより、第1フィルム層301と凹部20表面の光の屈折を効果的に抑制し、厚さの違い(段差)に起因する視差の問題を低減させることができる。
【0067】
フィルム層30の材質や層の数は限定されず、使用されるデバイスや製造方法に応じて適宜選択できる。
フィルム層30の材質や層の数の違いは、カバープレートの機械的特性や段差による視差現象に直接影響を与える。
【0068】
屈折率の異なるフィルム層30で視認性の問題を改善した模式図を
図10に示す。
フィルム層30の透過、反射特性により、ディスプレイモジュールからの光をカバー体10とフィルム層30の間で反射させ、均一な配光効果を実現することができる。
【0069】
また、カバー体10とフィルム層30の境界では、複数の反射光が存在し、その光学領域の差が2nd=mλ- 1/(2λ)を満たせば、反射光は互いに打ち消し合い、透過率が向上する。
具体的には、フィルム層30に、微粒子、例えば無機微粒子や有機微粒子を使用することもでき、有機微粒子の溶液を調製することで蒸着やコーティングを行うことができる。
【0070】
ディスプレイモジュールからの光が凹部20の表面に到達すると、フィルム層30の微粒子を介して光散乱を実現できる一方、石英ガラス、高シリカガラス、ソーダ石灰ガラスなどからなるフィルム層30の屈折率はカバー体10と同じであるため、視差問題をさらに最適化することが可能である。
【0071】
折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図11に示す工程により、製造することができる。
【0072】
(S31)
カバー体10を処理装置に固定、装着する。
カバー体10はガラス製を用いることが好ましい。
【0073】
(S32)
カバー体10の第2面102の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20を形成する。
凹部20を形成する手段は、機械的な切削加工または化学的なエッチングを選択することができる。
【0074】
(S33)
カバー体10の第1面101の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造50を形成する。
第1凹凸構造50を形成する手段は、エッチングによって行う。
第1凹凸構造50を形成する工程では、非エッチング領域上にインク保護層を形成し、エッチングが完了した後に、インク保護層を除去する。
【0075】
(S34)
第2面102上に第1フィルム層301を形成する。
第1フィルム層301を形成する手段は、コーティングまたは蒸着などが挙げられるが、これに限定されない。
第1フィルム層301は、より良い視差相殺効果を得るために、凹部20にも完全に形成する必要がある。
【0076】
しかし、第1フィルム層301を形成する過程で、凹部20の表面に空隙が形成されることがあり、この場合の空隙部分は、第1フィルム層301が凹部20に完全に接触していない。
この場合、凹部20表面と第1フィルム層301の空隙に存在する空気の屈折率差により、視差が発生することになる。
【0077】
そのため、第1フィルム層301と凹部20表面の間に空気が入り込まないように、カバー体10の傾斜角度を調整し、凹部20に第1フィルム層301の材料が十分に充填されるようにする。
具体的には、水平にしたカバー体10を、凹部20の中央部を支点として天秤の要領でカバー体10の両端部を傾ける。
このようなカバー体10を傾斜させる動きによって、凹部20の表面全体に均一に第1フィルム層301を形成し、凹部20表面に空気が入り込まないようにできる。
【0078】
第1フィルム層301は、例えば、
図12に示すようなスパッタリング装置を用いて形成することができる。
スパッタリング装置は、カバー体10を保持し、中央部を支点として両端部がそれぞれ、天秤のように、
図12の上下方向に傾く保持部と、支店において保持部をチャンバー内の天井部に固定する回転支持部と、チャンバー内の天井部に一端が固定され、他端が当該保持部の支点よりも左側(
図12の左方向)で当該保持部に取り付けられるリンク部材と、からなり、当該リンク部材が、モーターなどの駆動力によって伸縮する構成において、リンク部材を伸縮させることで、これに合わせて保持部の左右の両端部を、
図12の上下方向に、交互に傾斜させることができる。
【0079】
S301(
図9または
図13)
カバー体10は、保持部に保持された状態で、チャンバー内の回転支持部に固定されている。
カバー体10は、リンク部材を伸縮させることで、これに合わせて、回転支持部を支点として、左右の両端部が、上下方向に交互に傾く。
例えば、凹部20の中心線を中心として、水平方向に対して45度、傾けることができる。
【0080】
S302(
図9または
図13)
ターゲットに有機高分子材料を用いる。
真空スパッタリングの条件は、例えば、次のとおりである。
RFパワー1~2KW、スパッタリングガス圧力0.6~1.0Pa、ベース真空圧5.0×10
-4Pa。
【0081】
S303(
図9または
図13)
スパッタリング工程では、カバー体10を保持する保持部の左右の両端部を、回転支持部を支点として等速で上下方向に傾けながら、カバー体10に第1フィルム層301を形成する。
【0082】
(S35)
第1フィルム層301上に第2フィルム層302、第3フィルム層303を順次形成する。
第2フィルム層302、第3フィルム層303の形成方法に限定はなく、塗布、蒸着などの方法を選択できるが、これに限定されない。
【0083】
<実施例4>
本実施例にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図13に示すとおり、カバー体10を備えている。
カバー体10の第2面102には、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20が形成されている。
カバー体10の第1面101には、折り曲げ可能な領域に、第1凹凸構造50が形成されている。
カバー体10の凹部20が形成されている箇所の断面は、
図13に示すように湾曲している。
湾曲面(凹部20の表面)には、第2凹凸構造60が形成されている。
【0084】
第2凹凸構造60の凹凸の分布密度は、凹部20の中央部から両端部に向かって、徐々に大きくなっている。
凹部20の中央部には緻密な凹凸が、凹部20の両端面には疎な凹凸がある。
そのため、両端部に対して中央部の屈折効果が高まり、凹部20に入射する光を均一化することができる。
【0085】
第1凹凸構造50及び第2凹凸構造60は、凹凸が形成されている。
凹凸の形状は、幾何学的形状であり、例えば、長方形、三角形、円、楕円などが挙げられる。
このような凹凸を不規則に、または、規則的に形成することができ、また、これらの凹凸を、不規則に、または、規則的に分布させることができる。
【0086】
第2面102には、第1フィルム層301が形成され、第1フィルム層301は、凹部20を覆っている。
第1フィルム層301は、有機高分子材料からなり、カバー体10と同様または同一の屈折率を有する材料を選択することで、凹部20の表面領域では光が屈折しないため、
図10の左側の反射光の進路が示された第1領域と、
図10の右側の反射光の進路が示された第2領域との屈折率差をなくし、良好な表示効果を得ることができる。
【0087】
折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図14に示す工程により、製造することができる。
【0088】
(S41)
カバー体10をエッチング装置に固定、装着する。
カバー体10はガラス製を用いることが好ましい。
【0089】
(S42)
カバー体10の第2面102の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20を形成する。
凹部20は、凹曲面であり、カバー体10の凹部20が形成されている箇所の断面は、湾曲している。
【0090】
(S401)
凹部20を形成するエッチングの工程では、エッチング速度とエッチング時間を制御し、スプレーガンを一定の速度で移動させ、一定の凹みの凹部20を形成する。
エッチング工程の好ましい条件は、エッチング液の温度25~30℃、噴霧圧力0.1~0.8 Pa、噴霧流量10~15sccm、噴霧時間5~10分である。
【0091】
(S43)
凹部20の表面に第2凹凸構造60を形成する。
第2凹凸構造60における凹みの分布密度は、凹部20の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなっている。
【0092】
第2凹凸構造60を形成するためのエッチング工程は、次のように実施する。
【0093】
(S402)
カバー体10にエッチング液を噴霧し、凹部20を粗面化する。
具体的には、凹部20の中央部でエッチング液の密度を低くして低流量で噴霧することで、凹部20の中央部に密度の低い凹凸を形成させる。
エッチング工程の好ましい条件は、エッチング液の温度25~30℃、噴霧圧力0.1~0.8 Pa、噴霧流量10~15sccm、噴霧時間3~8分である。
スプレーガンは一定の速度で移動させる。
【0094】
(S403)
カバー体10にエッチング液を噴霧し、凹部20の曲面をより深く形成する。
具体的には、凹部20の両端部でエッチング液の密度を大きくして高流量で噴霧することで、凹部20の両端部に緻密な凹凸を形成させる。
エッチング工程の好ましい条件は、エッチング液の温度25~30℃、噴霧圧力1~1.5Pa、噴霧流量25~30sccm、噴霧時間3~5分である。
スプレーガンは中央部では速く、両端部では遅く移動させる。
【0095】
折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、さらに、次の工程により、製造することができる。
【0096】
(S44)
カバープレートの第1面101の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造50を形成する。
第1凹凸構造50を形成する手段は、エッチングによって行う。
第1凹凸構造50を形成する工程では、非エッチング領域上にインク保護層を形成し、エッチングが完了した後に、インク保護層を除去する。
【0097】
(S45)
スパッタリング装置を用いて、第2面102上に第1フィルム層301を形成する。
【0098】
(S401)
カバー体10は、保持部に保持された状態で、チャンバー内の回転支持部に固定されている。
カバー体10は、リンク部材を伸縮させることで、これに合わせて、回転支持部を支点として、左右の両端部が、上下方向に交互に傾く。
例えば、凹部20の中心線を中心として、水平方向に対して45度、傾けることができる。
【0099】
(S402)
ターゲットに有機高分子材料を用いる。
真空スパッタリングの条件は、例えば、次のとおりである。
RFパワー1~2KW、スパッタリングガス圧力0.6~1.0Pa、ベース真空圧5.0×10-4Pa。
【0100】
(S403)
スパッタリング工程では、カバー体10を保持する保持部の左右の両端部を、回転支持部を支点として等速で上下方向に傾けながら、カバー体10に第1フィルム層301を形成する。
【0101】
本発明は、ディスプレイモジュールと、ディスプレイモジュール上に配置された折り曲げ可能な領域を有するカバープレートとを含む、折り曲げ可能な表示パネルを提供する。
表示パネルは、アクティブ発光表示パネルであってもよく、例えば、有機EL表示パネル、Active-Matrix Organic 発光ダイオード(AMOLED)ディスプレイパネル、パッシブマトリクス型有機ELディスプレイパネル、量子ドット発光ダイオード(QLED)ディスプレイパネル、などが挙げられる。
【0102】
表示パネルは、液晶表示パネルであればよく、表示パネルの種類を限定せず、Twisted Nematic(TN)型液晶表示パネル、Multi-domain Vertical Alignment(MVA)型液晶表示パネル等の垂直電界型液晶表示パネルでも良い。
MVA(アライメント)型液晶パネルやFFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型液晶パネル、IPS(インプレーン・スイッチング)型液晶パネルなどの水平電界型液晶パネルが挙げられる。
【0103】
本発明は、上記のような折り曲げ可能な表示パネルを備える表示装置を提供する。
本願の1つ以上の例示的な実施形態において、例えば、表示装置は、コンピュータモニター、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末(コンピュータ)、テレビ、パーソナルデジタルアシスタント機器、マルチメディアプレーヤー、ナビゲーションシステム装置、ゲーム機、テレビ電話端末などに適用することができる。
【0104】
「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「縦」、「横」、「内」、「外」などの用語は、添付図面に示した向きまたは位置関係を示し、本発明の説明を容易かつ簡略化することのみを目的としており、参照される装置または要素が特定の向きを有し、特定の向きで構築され、動作しなければならないことを示す、または暗示するものではなく、本発明を限定するものではない。
また、「第1」及び「第2」という用語は、説明の目的のみに使用されており、相対的な重要性を示す、あるいは暗黙のうちに示された技術的特徴の数を特定するものではない。
【0105】
したがって、「第1」及び「第2」で修飾された機能は、明示的または暗黙的に1以上の機能を含むことができる。
本発明の説明において、「複数」とは、明示的かつ具体的に定義されない限り、2以上を意味する。
本明細書で使用される技術用語および科学用語は、特に定義されない限り、本発明の技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じである。
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図していない。
本明細書で使用する「セット」の用語は、ある部品と他の部品が直接的に結合している場合と、ある部品と他の部品が中間部品によって結合している場合のいずれをも意味する。
ある実施形態において本明細書に記載された特徴は、その特徴がその他の実施形態において適用できないか、または他に指定されていない限り、単独でまたは他の特徴と組み合わせて他の実施形態に適用され得る。
以上、本発明を実施形態により説明したが、上述した実施形態は、例示および説明のためにのみ使用され、本発明を記載した実施形態の範囲に限定することを意図するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレートであって、
カバープレートは、第1面と第2面を有する極薄の各種ガラス素材のカバー体からなり、
第1面は、折り曲げ可能な領域に、微細な複数の凹凸からなる第1凹凸構造が形成され、
第2面は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部が形成され、
凹部の表面は、第2凹凸構造が形成され、
第2凹凸構造には、微細な複数の凹凸が、凹部の中央部は疎に、凹部の両側部は緻密に、形成されている
ことを特徴とする折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項2】
第2面は、少なくとも3つのフィルム層が形成されており、
フィルム層の屈折率は、第1面から第2面に向かう方向に、低屈折率と高屈折率とが順番に交互に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項3】
第2面の3つのフィルム層は、
屈折率が異なる第1フィルム層、第2フィルム層、第3フィルム層が積層されており、
第1フィルム層の屈折率は、カバー体の屈折率とほぼ同じであり、
第2フィルム層の屈折率は、第1フィルム層の屈折率より大きく、
第2フィルム層の屈折率は、第3フィルム層の屈折率より大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項4】
第1フィルム層は、
第2面に接触した状態で、第2面に形成された凹部を覆っている
ことを特徴とする請求項3に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項5】
第1凹凸構造は、
第1面上にランダムに形成され、第1凹凸構造の微細な複数の凹凸の大きさは0.1~2μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【請求項6】
カバー体を固定して装着する工程と、
カバー体の第2面の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部を形成する工程と、
凹部の表面に、粗加工した第2凹凸構造を形成する工程と、
第2凹凸構造の凹みの分布密度が、凹部の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなるように、
粗加工した第2凹凸構造に、
凹部の中央部ではエッチング液を噴霧するスプレーガンの移動速度を速くして、分布密度の小さい凹凸を形成し、
凹部の両側部ではエッチング液を噴霧するスプレーガンの移動速度を遅くして、分布密度の大きい凹凸を形成する工程と、
第1面の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートを製造する方法。
【請求項7】
ディスプレイモジュールと、
ディスプレイモジュール上に配置された請求項1から5のいずれか1項に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートと、
を備えていることを特徴とする表示パネル。
【請求項8】
請求項7の表示パネル
を備えていることを特徴とする表示装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
ディスプレイモジュールを覆うための折り曲げ可能な領域を有するカバープレートであって、
カバープレートは、第1面と第2面を有する極薄の各種ガラス素材のカバー体からなり、
第1面は、折り曲げ可能な領域に、微細な複数の凹凸からなる第1凹凸構造が形成され、
第2面は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部が形成され、
凹部の表面は、第2凹凸構造が形成され、
第2凹凸構造には、微細な複数の凹凸が、凹部の中央部は疎に、凹部の両側部は緻密に、形成されている
ことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
上記の特徴に加え、
第2面の3つのフィルム層は、
屈折率が異なる第1フィルム層、第2フィルム層、第3フィルム層が積層されており、
第1フィルム層の屈折率は、カバー体の屈折率とほぼ同じ同じであり、
第2フィルム層の屈折率は、第1フィルム層の屈折率より大きく、
第2フィルム層の屈折率は、第3フィルム層の屈折率より大きい、
ことを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明にかかる折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
上記の特徴に加え、
第1凹凸構造は、
第1面上にランダムに形成され、第1凹凸構造の微細な複数の凹凸凹みの大きさは0.1~2μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ可能な領域を有するカバープレート。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記の折り曲げ可能な領域を有するカバープレートを製造する方法は、
カバー体を固定して装着する工程と、
カバー体の第2面の折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部を形成する工程と、
凹部の表面に、粗加工した第2凹凸構造を形成する工程と、
第2凹凸構造の凹みの分布密度が、凹部の中央部から両端部に向かって徐々に大きくなるように、
粗加工した第2凹凸構造に、
凹部の中央部ではエッチング液を噴霧するスプレーガンの移動速度を速くして、分布密度の小さい凹凸を形成し、
凹部の両側部ではエッチング液を噴霧するスプレーガンの移動速度を遅くして、分布密度の大きい凹凸を形成する工程と、
第1面の折り曲げ可能な領域に第1凹凸構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
<実施例1>
ディスプレイモジュールを覆う、折り曲げ可能な領域を有するカバープレートは、
図4に示すとおり、第1面101と第2面102を有するカバー体10からなる。
カバー体10は、例えば、石英ガラス、ハイシリカガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス又はホウケイ酸ガラスなどの柔軟
な極薄の各種ガラス素材を使用できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
第2面102は、折り曲げ可能な領域に、少なくとも1つの凹部20が形成されている。
第1面101は、折り曲げ可能な領域に、第1凹凸構造50が形成されている。
第1凹凸構造50は、第1面101上にランダムに形成され、第1凹凸構造50の微細な複数の凹凸の大きさは、0.1~2μmである。
第1凹凸構造50は、微細な複数の凹凸が形成されており、不規則な凹凸のほか、規則的な凹凸を形成でき、その凹凸自体を、不規則に分布させたり、規則的に分布させることもできる。
凹凸の形状は、幾何学的形状であり、例えば、長方形、三角形、円、楕円などが挙げられる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
凹部20の中央部には疎な凹凸が、両端部には緻密な凹凸が形成されているため、屈折効果が高まり、凹部20に入射してカバー体10内部を通過する光の屈折または反射する方向を均一化(ばらつきを抑える)することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
第2凹凸構造60の凹凸の分布密度は、凹部20の中央部から両端部に向かって、徐々に大きくなっている。
凹部20の中央部には疎な凹凸が、凹部20の両端面には緻密な凹凸がある。
そのため、両端部に対して中央部の屈折効果が高まり、凹部20に入射する光を均一化することができる。