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特開2023-79185堅牢性を向上させたSICを基礎とする電子装置及びその電子装置を製造する方法
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  • 特開-堅牢性を向上させたSICを基礎とする電子装置及びその電子装置を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079185
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】堅牢性を向上させたSICを基礎とする電子装置及びその電子装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20230531BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20230531BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230531BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230531BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230531BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230531BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/91 F
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 658F
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/91 B
H01L29/86 301P
H01L29/91 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185338
(22)【出願日】2022-11-19
(31)【優先権主張番号】102021000029969
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ラスクーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリア プグリシ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ ベッロッキ
(57)【要約】
【課題】 堅牢性を向上させたSICを基礎とする電子装置及びその電子装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】 電子装置(50,100)が、シリコンカーバイドの半導体ボディ(53)と、該半導体ボディ(53)の第1表面(53a)上の電気的絶縁体又は誘電体特性を具備する第1物質の第1絶縁層(61)と、部分的に該半導体ボディ(53)の該第1表面(53a)上を且つ部分的に該第1絶縁層(61)上を延在している金属物質(58)の第1層と、金属物質(58)の該第1層上及び該第1絶縁層(61)上の該第1物質とは異なる第2物質のインターフェース層(63)と、該インターフェース層(63)上の前記第1物質のパッシベーション層(69)と、を有している。該第1物質はシリコン酸化物であり、且つ該第2物質はシリコン窒化物である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置(50;100)において、
シリコンカーバイドの半導体ボディ(53)、
該半導体ボディ(53)の第1表面(53a)上に設けられており電気的絶縁体又は誘電体特性を具備している第1物質の第1絶縁層(61)、
部分的に該半導体ボディ(53)の該第1表面(53a)上を且つ部分的に該第1絶縁層(61)上を延在している金属物質(58)の第1層、
金属物質(58)の該第1層の上及び該第1絶縁層(61)の上に設けられており、該第1物質とは異なる第2物質のインターフェース層(63)、及び
該インターフェース層(63)上の前記第1物質のパッシベーション層(69)、
を有している電子装置。
【請求項2】
該第1物質がシリコン酸化物又はTEOSである請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
該第2物質が窒化シリコンである請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
該インターフェース層(63)と、その下側の第1絶縁層(61)及び金属物質(58)の第1層と、の間に介在されている第2絶縁層(64)を更に有している先行する請求項の内のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
該第2絶縁層(64)が前記第1物質からなる請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
活性区域(54)を更に有しており、金属物質(58)の前記第1層が、該活性区域(54)において、該半導体ボディの該第1表面(53a)と少なくとも部分的に重畳して且つそれと電気的にコンタクトして延在している先行する請求項の内のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項7】
少なくとも部分的に該活性区域(54)を取り囲んでいる端部終端領域(60)を更に包含しており、該端部終端領域(60)が該第1表面(53a)において該半導体ボディ内に注入されている領域であり且つ該半導体ボディ(53)のものと反対の電気的導電型を有しており、該第1絶縁層(61)が、該活性区域(54)から或る距離において且つ該端部終端領域(60)と少なくとも部分的に重畳して該第1表面(53a)上を延在している請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
該半導体ボディ(53)の該第1表面(53a)と反対側の第2表面(53b)上に金属物質(57)の第2層を更に有しており、金属物質(58)の該第1層及び金属物質(57)の該第2層が該電子装置(50,100)の夫々の電気的導通端子を形成している請求項6又は7に記載の電子装置。
【請求項9】
該第1表面(53a)において、前記活性区域(54)内に一つ又はそれ以上の接合障壁ダイオード(59)及び/又はショットキーダイオードを更に有している先行する請求項の内のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項10】
ショットキーダイオード、PiNダイオード、PNダイオード、MPS装置、JBSダイオード、MOSFET、IGBT、パワー装置からなるグループから選択された先行する請求項の内のいずれか1項に記載された電子装置。
【請求項11】
電子装置(50,100)を製造する方法において、
シリコンカーバイドの半導体ボディ(53)の第1表面(53a)上に、電気的絶縁体又は誘電体特性を具備する第1物質の第1絶縁層(61)を形成するステップ、
部分的に該半導体ボディ(53)の該第1表面(53a)上に且つ部分的に該第1絶縁層(61)上に金属物質(58)の第1層を形成するステップ、
金属物質(58)の該第1層の上及び該第1絶縁層(61)の上に、該第1物質とは異なる第2物質のインターフェース層(63)を形成するステップ、及び
該インターフェース層(63)上に前記第1物質のパッシベーション層(69)を形成するステップ、
を有する方法。
【請求項12】
該第1物質がシリコン酸化物又はTEOSである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該第2物質がシリコンカーバイドである請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
該第1絶縁層(61)の上及び金属物質(58)の該第1層の上に第2絶縁層(64)を形成するステップを更に包含しており、該インターフェース層(63)を形成する該ステップが該第2絶縁層(64)上に該インターフェース層(63)を形成することを包含している請求項11乃至13の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該第2絶縁層(64)が前記第1物質からなる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
活性区域(54)を形成するステップを更に包含しており、金属物質(58)の前記第1層が、該活性区域(54)において、該半導体ボディの該第1表面(53a)と少なくとも部分的に重畳して且つそれと電気的にコンタクトして形成されている請求項11乃至15の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
該第1表面(53a)において且つ少なくとも部分的に該活性区域(54)を取り囲んで該半導体ボディ内に、該半導体ボディ(53)のものと反対の導電型を有するドーパント種を注入するステップを有しており、従って端部終端領域(60)を形成し、該第1絶縁層(61)が該活性区域(54)から或る距離において且つ少なくとも部分的に該端部終端領域(60)と重畳して該第1表面(53a)上に形成される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該半導体ボディ(53)の該第1表面(53a)と反対側の第2表面(53b)に金属物質(57)の第2層を形成するステップを更に有しており、金属物質(58)の該第1層と金属物質(57)の該第2層とが該電子装置(50,100)の夫々の電気的導通端子を形成している請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
該第1表面(53a)において前記活性区域(54)内に一つ又はそれ以上の接合障壁ダイオード(59)及び/又はショットキーダイオードを形成するステップを更に有している請求項16乃至18の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記電子装置が、ショットキーダイオード、PiNダイオード、PNダイオード、MPS装置、JBSダイオード、MOSFET、IGBT、パワー装置からなるグループから選択されるものである請求項11乃至19の内のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及び該電子装置を製造する方法に関するものである。特に、該電子装置はSICを基礎とした装置であり且つ向上された堅牢性を有している。
【背景技術】
【0002】
半導体業界は、特にパワー適用例に対してのダイオード又はトランジスタ等の電子部品を製造するためにシリコンカーバイド(SiC)にかなりの興味を示している。
【0003】
その異なるポリタイプ(例えば、3C-SiC,4H-SiC,6H-SiC)においてのシリコンカーバイド基板において形成された電子装置は、低オン状態出力抵抗、低リーク電流、高い動作温度及び高い動作周波数に対する耐久性などの多くの利点を有している。
【0004】
しかしながら、SiCを基礎とした電子装置の開発及び製造は、パッシベーション層(これらの電子装置に含まれており且つ、例えば、該電子装置のSiCの半導体ボディ上を延在している)の電気的及び機械的特性等の要因によって制限されている。特に、電子装置の高い動作温度に耐えることを可能とし且つ、例えば、400kV/mmより一層高い高絶縁強度を提供することを可能とするポリマー物質(例えば、ポリイミド)を使用することによって該パッシベーション層を得ることが知られている。詳細には、ポリマー物質の高絶縁強度は、そのパッシベーション層が高電界に耐え、且つ、その結果、電気的破壊を生じること無しに、従って、導電性となること無しに、該高電界を横断しての高い電位差に耐えることを保証する。
【0005】
しかしながら、ポリマー物質は、高い熱膨張率(CTE)(例えば、ポリベンゾオキサゾール、即ちPIX、物質に対してはCTE=43e-61/K)を有しており、そのことが、より低い熱膨張係数を有しているSiCパッシベーション層(CTE=3.8e-61/K)の接着問題を発生させる。
【0006】
特に、パッシベーション層とSiCとの間の接着問題は、熱サイクルテスト(例えば、約-50℃と約+150℃との間で行われる)の期間中、又は高温度スイング(例えば、約200℃に等しいか又はそれより一層高い動作温度差に露呈される)に露呈される電子装置の使用期間中に、発生する場合がある。パッシベーション層とSiCとの間のCTEにおける大きな差異のために、これらの高温スイングは、パッシベーション層とSiCとの間の界面において機械的応力を発生し、それはSiC半導体ボディに対してパッシベーション層の剥離(少なくとも部分的に)となる場合がある。
【0007】
この剥離が十分に広範なものである場合(例えば、パッシベーション層のどの部分も異なる電位に設定されている電子装置の2つのメタリゼーション間に介在しておらず、従って空気のみによって互いに分離されている)には、前記界面において電気放電が発生し、その結果、電子装置自身の損傷となる場合がある。特に、電子装置の損傷の危険性は、それが逆バイアス条件で使用される場合には、耐えるべき高い電圧差(例えば、1000Vよりも一層高い)のために、増加する。
【0008】
この問題に対処する既知の解決手段は、SiC半導体ボディとの界面においての機械的応力を制限すべく設計されたパッシベーションマルチ層を形成するために互いに異なる物質(例えば、窒化シリコン、シリコン酸化物及びポリイミドを互いに連続して)からなる複数個の誘電体層を使用することを包含している。
【0009】
図1は、軸X,Y,Zの(3軸)カーテシアン座標系における横断面図において、既知のタイプの電子装置1(ここでは、例示として、JBS、即ちジャンクションバリアショットキーダイオード)の一部を示している。
【0010】
該JBS装置1は、表面3bと反対側に表面3aを有するN型のSiCからなる半導体ボディ3を有している。該半導体ボディは、例えば、基板と、夫々の値のドーピング濃度を有しており且つN型の該基板上にエピタキシャル的に成長させた1個又はそれ以上の領域とを包含している。該JBS装置1は、更に、上部表面3aに面しており且つ各々が半導体ボディ3におけるP型の夫々の注入領域と半導体ボディ3の上部表面3aのレベルにおいて該注入領域上のオーミックコンタクトを包含している、該半導体ボディ3内に複数の接合障壁(JB)要素9を有している。JBS装置1は、更に、第1メタリゼーション8を有しており、それは、夫々のオーミックコンタクトを介して接合障壁要素9と電気的にコンタクトして上部表面3a上を延在している。JBS装置1は、更に、端部終端領域(又は保護リング)10、特にP型の注入領域、を有しており、それは該JB要素9を完全に取り囲んでいる。
【0011】
ショットキーダイオード12が、半導体-金属ショットキー接合が形成されている箇所においてアノードメタリゼーション8と半導体ボディ3との間の界面において形成されている。JB要素9とショットキーダイオード12とを包含しているMPS装置1の領域(即ち、保護リング10内に包含されている領域)が、JBS装置1の活性区域4である。
【0012】
JBS装置1は、更に、第2メタリゼーション6を包含しており、それは、底部表面3b上を延在している。第1及び第2メタリゼーション8,6は、夫々、電気的アノード及びカソード端子を形成しており、それらはJBS装置1の使用期間中にバイアスさせることが可能である。
【0013】
端部終端領域10の外側には電気的に受動的な領域16が延在している。
【0014】
端部終端領域10上を、絶縁性又は誘電体物質、特にシリコン酸化物(SiO)、からなる絶縁層18が部分的に延在している。
【0015】
第1メタリゼーション8は、端部終端領域10が絶縁層18によって被覆されていない箇所において端部終端領域10の一部と電気的にコンタクトしており、且つ該絶縁層18上を部分的に延在している。ここでは窒化シリコン(SiN)からなるインターフェース層20が、第1メタリゼーション8及び絶縁層18上を延在している。更に、JBS装置1は、特にポリイミドからなるパッシベーション層22を有しており、それは、インターフェース層20上を延在している。即ち、インターフェース層20は、パッシベーション層22と下側の層、ここでは第1メタリゼーション8及び絶縁層18、との間のインターフェースとして作用する。インターフェース層20は省略することが可能であるが、本発明者等が知得したところでは、インターフェース層20は、パッシベーション層22とその下側の層との間の付着性を改善するものである。
【0016】
ベークライト等の樹脂からなる保護層24が、パッシベーション層22上を延在しており、パッケージ(不図示)内に挿入された場合にJBS装置1を保護する。
【0017】
しかしながら、上述したように、インターフェース層22はパッシベーション層22とその下側の層との間の付着性を改善するものであるが、JBS装置1の使用又はテストの幾つかの臨界的条件(例えば、熱-機械的又は熱応力)がパッシベーション層22のインターフェース層20からの剥離又は部分的な分離を発生させる場合がある。このことは、特に、高温(例えば、150℃を超えるもの)の使用によって発生される応力条件において発生する。この影響は、JBS装置1を構造的に脆性のものとさせることに加えて、JBS装置1の電気的動作に影響を与える不所望の電気的放電を発生させることに寄与する原因である場合がある。実際に、本発明者等が知得したところでは、例えば組立期間中における機械的応力の現象が、第1金属層8においてこれらの電気的放電の原因であるその厚さ全体にわたって局所的な亀裂を発生させるような応力をインターフェース層20内に発生させる場合がある。これらの問題は、電子装置1が高い熱スイングに及び逆バイアス条件においての高い電圧差に露呈される場合にはより一層顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解消し、堅牢性を向上させたSICを基礎とする電子装置及びその電子装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義した如き、電子装置及び電子装置を製造する方法が提供される。
【0020】
本発明を一層良く理解するために、添付の図面を参照して、純粋に非制限的な例としての本発明の好適実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】既知のタイプの電子装置を例示した断面図。
図2】本発明の1実施例に基づく電子装置を例示した断面図。
図3A】本発明の1実施例に基づいて図2の電子装置を製造する方法の或るステップにおける状態を示した断面図。
図3B】本発明の1実施例に基づいて図2の電子装置を製造する方法の或るステップにおける状態を示した断面図。
図3C】本発明の1実施例に基づいて図2の電子装置を製造する方法の或るステップにおける状態を示した断面図。
図3D】本発明の1実施例に基づいて図2の電子装置を製造する方法の或るステップにおける状態を示した断面図。
図4】本発明の別の実施例に基づく電子装置を例示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2は、本発明の一つの側面に基づく電子装置50を、図1の軸X,Y,Zからなる同じ(3軸)カーテシアン座標系における横断面図で示している。特に、装置50は、図1を参照して説明したものと同様のJBSダイオードであるが、本発明は、この装置のみに制限されるものでは無く、MOSFET、IGBT、MPS、ショットキーダイオード、PNダイオード、PiNダイオード等の特にパワー装置においてのその他のタイプの電子装置にも適用可能である。
【0023】
電子装置50は、図2を参照して例示される以下に説明する要素を有している。
【0024】
N又はPタイプ(以下の説明においては、N型のドーピングを例として使用する)にドーピングされておりSiCからなる半導体ボディ(即ち、基板と、オプションとして、その上に成長された一つ又はそれ以上のエピタキシャル層とを包含している)53は、軸Z方向において表面52aと反対側の表面53bとが設けられている。半導体ボディ53は、本例においては、その上にドリフト層(エピタキシャル層)53”が成長されている基板53’を包含しており、それは、N型のSiC(特に、4H-SiCであるが、これらに限定するわけではないが2H-SiC、3C-SiC、及び6H-SiCなどのその他のポリタイプを使用することも可能)から構成されている。例えば、該基板は、1×1019at/cmと1×1022at/cmとの間のN型ドーパントの濃度を有しており、且つ表面53aと53bとの間で軸Zに沿って測定した厚さが300μmと450μmとの間で、特に約360μmに等しい値を有している。該ドリフト層は、該基板のドーパント濃度よりも一層低いドーパント濃度及び例えば5μmと15μmとの間の厚さを有している。
【0025】
オーミックコンタクト層56(例えば、ニッケルシリサイドからなる)が、基板53の表面53b上を延在しており、且つ、例えばTi/NiV/Ag又はTi/NiV/Auからなる本例においてはカソードメタリゼーションであるメタリゼーション57がオーミックコンタクト領域56上を延在している。
【0026】
P型の一つ又はそれ以上のドープ領域59’が上部表面53aと面して半導体ボディ53(特に、該ドリフト層において)内に延在しており、各ドープ領域59’は、各ドープ領域59’が夫々の接合障壁(JB)要素59を形成するように夫々のオーミックコンタクト(不図示であり且つ既知のタイプのもの)を収容している。端部終端領域60、即ち保護リングであって特にP型の更なるドープ領域、が該ドリフト層内を延在しており、上部表面53aに面しており且つJB要素59を完全に取り囲んでいる(平面図において、軸X及びYによって定義される面XYにおいて)。端部終端領域60は省略することが可能である。
【0027】
絶縁層61(絶縁性又は誘電体物質、即ちシリコン酸化物又はTEOSからなる)が、JB要素59を完全に取り囲み(面XY内において)且つ保護リング60(存在する場合に)と部分的に重畳するように上部表面53a上を延在している。
【0028】
メタリゼーション58,本例においては、例えばTi/AlSiCu又はNi/AlSiCuからなるアノードメタリゼーション、が、絶縁層61によって外側が区画化された上部表面53aの一部の上(即ち、JB要素59/活性区域54において)、及び、部分的に、絶縁層61の上を延在している。
【0029】
一つ又はそれ以上のショットキーダイオード62が、ドープ領域59’に沿って、半導体ボディ53とアノードメタリゼーション58との間の界面に形成されている。特に、(半導体-金属)ショットキー接合が、アノードメタリゼーション58の夫々の部分と直接的に電気的コンタクトしている半導体層53の部分によって形成されている。
【0030】
更に、夫々のドープ領域59’内に延在する各オーミックコンタクトは、それを収容しているドープ領域59’の電気的固有抵抗の値よりも一層低い電気的固有抵抗の値を有している電気的接続を提供している。従って、JB要素59はPiNダイオードである。
【0031】
JB要素59とショットキーダイオード62とを包含する電子装置50の領域(即ち、保護リング60によって区画化される領域)は、電子装置50の活性区域54である。
【0032】
活性区域54の外側、即ち端部終端領域60を越えて、半導体ボディ53の横表面53cが存在しており、それは、例えば、上部表面53aに対して実質的に直交して延在している。横表面53cは、複数個の電子装置50が得られるSiCウエハのダイシング即ち個別化ステップによって形成される。そのダイシングステップは、同一のウエハの一つの電子装置50を別の装置50から分離する機能を有している。ダイシングは、それから電子装置50が得られるSiCウエハのスクライブライン(不図示)において行われ、このスクライブラインは、面XYにおいて少し離れて、活性区域54と、保護リング60と、絶縁層61とを取り囲む。
【0033】
例えばベークライト等の樹脂からなる保護層74が、パッシベーション層69上を延在しており、パッケージ(不図示)内に挿入された場合に、電子装置50を保護する。
【0034】
特に誘電体又は絶縁性物質(例えば、シリコン酸化物又はTEOS等の絶縁層61に使用するものと同じ物質)からなる更なる絶縁層64が、アノードメタリゼーション58及びアノードメタリゼーション58に沿って露出されている絶縁層61上を延在している。
【0035】
絶縁層61は、例えば、軸Zに沿って、0.5μmと2μmとの間の厚さを有しており、絶縁層64は、例えば、軸Zに沿って、0.5μmと2μmとの間の厚さを有している。
【0036】
ここでは窒化シリコン(SiN)からなるインターフェース層63が絶縁層64上を延在している。
【0037】
パッシベーション層69がインターフェース層63上を延在している。インターフェース層63は、パッシベーション層69とその下側の層、ここでは絶縁層64、との間のインターフェースとして作用する。
【0038】
本発明の一つの側面によれば、パッシベーション層69は、絶縁性又は誘電体物質で、特に絶縁層64のものと同じ物質、からなる。この様に、使用又はテスト期間中に装置50が露呈されるどのような潜在的な熱応力も、インターフェース層63上に、応力の点で、顕著な影響を与えるものではなく、従って、亀裂が発生する可能性はより少ない。パッシベーション層69は、例えば、シリコン酸化物又はTEOSからなる。
【0039】
図2の電子装置50を製造するステップについて図3A-3Dを参照して以下に説明するが、本発明を理解するために有用である製造ステップに制限されている。図3A-3Dは図2のものと同じ3軸系で示されている。
【0040】
図3Aを参照すると、前述し(従って、ここでは更なる説明を割愛する)且つ同じ参照番号で識別した電子装置50の要素を形成する構成とされた製造ステップ後の、SiC半導体ボディ53を包含しているウエハが提供される。
【0041】
図3Aを参照すると、絶縁層61及びアノードメタリゼーション58を形成した後に、絶縁層64を形成するための絶縁性又は誘電体物質の付着ステップを実施する。このステップは、例えば、CVD又はLPCVDプロセスによって実施される。絶縁層61は、該ウエハの全表面上に形成され且つ、特に、アノードメタリゼーション58と絶縁層61とを完全に被覆する。
【0042】
次いで、図3Bを参照すると、絶縁層64を形成した後に、例えば、窒化シリコンのCVDタイプの付着によって、絶縁層63を形成する。該ウエハの全表面上にインターフェース層63を形成し、且つ、特に、絶縁層64を完全に被覆させる。
【0043】
次いで、図3Cを参照すると、パッシベーション層69を形成する。このステップは、CVD又はLPCVD技術を使用して付着させた、例えばシリコン酸化物又はTEOSなどの絶縁物質の付着を目論むものである。パッシベーション層69は、例えば、1μmと10μmとの間の範囲内で選択される厚さを有している。
【0044】
パッシベーション層69は、インターフェース層63を完全に被覆し、且つ、必要に応じて、パターン形成させることが可能である(例えば、リソグラフィ及びエッチングステップによって)。
【0045】
本製造プロセスはにおいては、次いで、電子装置50の更なる要素を形成するためのその後のステップが続いて行われるが、ここでの詳細な説明は割愛する(例えば、オーミックコンタクト層56及びカソードメタリゼーション57の形成等)。
【0046】
図4は、本発明の更なる実施例に基づく電子装置100を例示している。電子装置100は、図1及び2のものと同じ軸X,Y,Zからなる同じ(3軸)カーテシアン座標系で示されている。特に、電子装置100は、図1及び2を参照して説明してきたものと同様のJBSダイオードであるが、この場合にも、本発明は、JBS装置のみに制限されるべきものではなく、MOSFET、IGBT、MPS、ショットキーダイオード、PNダイオード、PiNダイオード等の特にパワー装置において、その他のタイプの電子装置においても適用可能なものである。
【0047】
図2の電子装置50と共通の電子装置100の要素には同じ参照番号を付しており、それらの更なる説明は割愛する。
【0048】
特に、電子装置100は、絶縁層64を包含していない。従って、本実施例においては、インターフェース層63が、アノードメタリゼーション58と、及び絶縁層61との上を直接延在すると共にそれらとコンタクトしている。
【0049】
前述したタイプのパッシベーション層69がインターフェース層63上を延在しており且つアノードメタリゼーション58及び絶縁層61からインターフェース層63によって物理的に離隔されている。電子装置100を製造するステップは、図3A-3Dを参照して説明したものと同様であるが、絶縁層64の形成に関するステップが異なっている。
【0050】
本発明に関する本開示の特性を検討することから、本発明から得られる利点は明らかである。
【0051】
特に、本発明に基づいて得られるパッシベーション層は、特に堅牢であり且つ電子装置の熱応力テスト期間中に信頼性がある。更に、それは、インターフェース層63の亀裂を発生させる応力の伝播を減少させる。
【0052】
換言すると、本発明(ポリマー物質からなるパッシベーション層69を設ける必要性を回避している)は、電子装置50,100の高い電気的性能を保証し、且つ、同時に、ポリマーパッシベーション層の起こりえる剥離とリンクされている(例えば、電子装置50,100の熱サイクル又は使用サイクルの後に続く)構造的問題を解消している。
【0053】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施の態様に制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変更及び修正を行うことが可能であることは勿論である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4