(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079199
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230531BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187270
(22)【出願日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021191627
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513217311
【氏名又は名称】株式会社ジオクリエイツ
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】本田 司
(72)【発明者】
【氏名】染谷 朝幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】シミュレーション画像における臨場感を高める。
【解決手段】情報処理装置1は、建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末3に表示させるための装置である。情報処理装置1は、空間画像データが示す空間画像における情報端末3を使用する複数のユーザの複数の位置を特定する位置特定部132と、位置特定部132が特定した複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成する画像作成部133と、表示用画像データを複数の情報端末3に提供する画像提供部134と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末に表示させるための情報処理装置であって、
前記空間画像データが示す空間画像における前記情報端末を使用する複数のユーザの複数の位置を特定する位置特定部と、
前記空間画像データにおける前記位置特定部が特定した前記複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成する画像作成部と、
前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供する画像提供部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記画像作成部は、前記画像提供部が前記表示用画像データを提供する前記情報端末を使用するユーザの位置から所定範囲内に位置する他のユーザを示す前記ユーザ画像データを重ねた前記表示用画像データを作成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像提供部は、ユーザが移動可能な位置を示す移動先画像データを含む前記空間画像データを前記情報端末に提供し、
前記位置特定部は、前記情報端末において前記移動先画像データに基づく画像が選択されたことに応じて、前記ユーザの移動後の位置を特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記画像提供部は、前記位置特定部が前記位置を特定してから、特定された前記位置から所定範囲内のユーザの密度に対応する時間が経過した後に、新たな前記移動先画像データを含む前記表示用画像データを前記情報端末に提供する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像提供部は、前記位置特定部が前記位置を特定してから、特定された前記位置における通路の幅に対応する時間が経過した後に、新たな前記移動先画像データを含む前記表示用画像データを前記情報端末に提供する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記画像提供部は、前記位置特定部が前記位置を特定してから、特定された前記位置の先にある出口の幅に対応する時間が経過した後に、新たな前記移動先画像データを含む前記表示用画像データを前記情報端末に提供する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記画像提供部は、前記位置特定部が特定した前記位置に対応する前記表示用画像データを前記情報端末に提供する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記位置特定部は、地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す前記空間画像データを前記画像提供部が複数の前記情報端末に提供した後に、前記位置の特定を開始する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記空間画像データに重ねて表示させる重畳画像データの種別及び表示位置の設定を受け付ける設定受付部をさらに有し、
前記画像提供部は、前記空間画像データにおける前記設定受付部が受け付けた前記表示位置に、前記設定受付部が受け付けた種別の火災画像を重ねて表示させるように、複数の前記情報端末に火災画像データを提供する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す前記空間画像データを表示するための地震動作設定を受け付ける設定受付部をさらに有し、
前記画像提供部は、前記設定受付部が前記地震動作設定を受け付けた場合に、器物が損壊する状態を示す前記空間画像データを含む前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記複数のユーザそれぞれの位置と時刻とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記複数のユーザそれぞれの位置と時刻との関係に基づいて、前記複数のユーザのうち少なくとも一部のユーザが移動を開始してから所定の場所に到達するまでに要した時間を算出する分析部と、
をさらに有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記複数のユーザそれぞれの前記情報端末に表示された複数の前記表示用画像データにおける中心から所定の範囲内に出口に関する情報を含む物体が含まれているか否かを分析した結果を出力する分析部をさらに有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記画像作成部は、前記複数のユーザの数よりも多い数の前記ユーザ画像データを前記空間画像データに重ねた表示用画像データを作成する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記空間における位置に関連付けて前記画像作成部が作成した前記表示用画像データを記憶部に記憶させる記録部をさらに有し、
前記画像作成部は、前記記憶部に記憶された過去の前記表示用画像データに前記ユーザ画像データを重ねることにより、新たな前記表示用画像データを作成する、
請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記複数のユーザの少なくとも一部のユーザが発した音声に基づく音声データを取得し、前記音声を発したユーザから他のユーザまでの距離に対応する大きさで、前記他のユーザが使用する前記情報端末に前記音声データに基づく音声を出力させる音声処理部をさらに有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末に表示させるために用いられるコンピュータが実行する、
前記空間画像データが示す空間画像における前記情報端末を使用する複数のユーザの複数の位置を特定するステップと、
前記空間画像データにおける特定された前記複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成するステップと、
前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項17】
建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末に表示させるために用いられるコンピュータに、
前記空間画像データが示す空間画像における前記情報端末を使用する複数のユーザの複数の位置を特定するステップと、
前記空間画像データにおける特定された前記複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成するステップと、
前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータを用いて避難訓練をするためのシミュレーション装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。従来のシミュレーション装置は、避難訓練をする場所のレイアウト図に避難経路を表示することにより訓練参加者が避難経路を認識できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシミュレーション装置を用いて施設内の画像を見る場合、他の参加者を見ることができないので、臨場感が低いという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、シミュレーション画像における臨場感を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末に表示させるための情報処理装置であって、前記空間画像データが示す空間画像における前記情報端末を使用する複数のユーザの複数の位置を特定する位置特定部と、前記空間画像データにおける前記位置特定部が特定した前記複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成する画像作成部と、前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供する画像提供部と、を有する。
【0007】
前記画像作成部は、前記画像提供部が前記表示用画像データを提供する前記情報端末を使用するユーザの位置から所定範囲内に位置する他のユーザを示す前記ユーザ画像データを重ねた前記表示用画像データを作成してもよい。
【0008】
前記画像提供部は、ユーザが移動可能な位置を示す移動先画像データを含む前記空間画像データを前記情報端末に提供し、前記位置特定部は、前記情報端末において前記移動先画像データに基づく画像が選択されたことに応じて、前記ユーザの移動後の位置を特定してもよい。
【0009】
前記画像提供部は、前記位置特定部が前記位置を特定してから、特定された前記位置から所定範囲内のユーザの密度に対応する時間が経過した後に、新たな前記移動先画像データを含む前記表示用画像データを前記情報端末に提供してもよい。
【0010】
前記画像提供部は、前記位置特定部が前記位置を特定してから、特定された前記位置における通路の幅に対応する時間が経過した後に、新たな前記移動先画像データを含む前記表示用画像データを前記情報端末に提供してもよい。
【0011】
前記画像提供部は、前記位置特定部が前記位置を特定してから、特定された前記位置の先にある出口の幅に対応する時間が経過した後に、新たな前記移動先画像データを含む前記表示用画像データを前記情報端末に提供してもよい。
【0012】
前記画像提供部は、前記位置特定部が特定した前記位置に対応する前記表示用画像データを前記情報端末に提供してもよい。
【0013】
前記位置特定部は、地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す前記空間画像データを前記画像提供部が複数の前記情報端末に提供した後に、前記位置の特定を開始してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記空間画像データに重ねて表示させる重畳画像データの種別及び表示位置の設定を受け付ける設定受付部をさらに有し、前記画像提供部は、前記空間画像データにおける前記設定受付部が受け付けた前記表示位置に、前記設定受付部が受け付けた種別の火災画像を重ねて表示させるように、複数の前記情報端末に火災画像データを提供してもよい。
【0015】
前記情報処理装置は、地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す前記空間画像データを表示するための地震動作設定を受け付ける設定受付部をさらに有し、前記画像提供部は、前記設定受付部が前記地震動作設定を受け付けた場合に、器物が損壊する状態を示す前記空間画像データを含む前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供してもよい。
【0016】
前記情報処理装置は、前記複数のユーザそれぞれの位置と時刻とを関連付けて記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記複数のユーザそれぞれの位置と時刻との関係に基づいて、前記複数のユーザのうち少なくとも一部のユーザが移動を開始してから所定の場所に到達するまでに要した時間を算出する分析部と、をさらに有してもよい。
【0017】
前記情報処理装置は、前記複数のユーザそれぞれの前記情報端末に表示された複数の前記表示用画像データにおける中心から所定の範囲内に出口に関する情報を含む物体が含まれているか否かを分析した結果を出力する分析部をさらに有してもよい。
【0018】
前記画像作成部は、前記複数のユーザの数よりも多い数の前記ユーザ画像データを前記空間画像データに重ねた表示用画像データを作成してもよい。
【0019】
前記情報処理装置は、前記空間における位置に関連付けて前記画像作成部が作成した前記表示用画像データを記憶部に記憶させる記録部をさらに有し、前記画像作成部は、前記記憶部に記憶された過去の前記表示用画像データに前記ユーザ画像データを重ねることにより、新たな前記表示用画像データを作成してもよい。
【0020】
前記情報処理装置は、前記複数のユーザの少なくとも一部のユーザが発した音声に基づく音声データを取得し、前記音声を発したユーザから他のユーザまでの距離に対応する大きさで、前記他のユーザが使用する前記情報端末に前記音声データに基づく音声を出力させる音声処理部をさらに有してもよい。
【0021】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末に表示させるために用いられるコンピュータが実行する、前記空間画像データが示す空間画像における前記情報端末を使用する複数のユーザの複数の位置を特定するステップと、前記空間画像データにおける特定された前記複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成するステップと、前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供するステップと、を有する。
【0022】
本発明の第3の態様のプログラムは、建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間の画像を示す空間画像データを情報端末に表示させるために用いられるコンピュータに、前記空間画像データが示す空間画像における前記情報端末を使用する複数のユーザの複数の位置を特定するステップと、前記空間画像データにおける特定された前記複数の位置にユーザを示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成するステップと、前記表示用画像データを複数の前記情報端末に提供するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シミュレーション画像における臨場感が高まるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】情報処理システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】情報端末3の画面に表示された表示用画像の一例を示す図である。
【
図4】移動先画像を含む表示用画像の例を示す図である。
【
図5】情報処理システムSにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図6】情報処理装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第1変形例に係る情報処理装置1Aの構成を示す図である。
【
図8】経路を示す画像データの一例を示す図である。
【
図9】非常口を示す案内が表示された例を示す図である。
【
図10】第2変形例に係る情報処理装置1Bの構成を示す図である。
【
図11】第3変形例に係る情報処理装置1Cの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[情報処理システムSの概要]
図1は、情報処理システムSの概要を説明するための図である。情報処理システムSは、コンピュータを用いて避難訓練をするためのシステムである。情報処理システムSは、情報処理装置1と、管理者端末2と、複数の情報端末3(情報端末3-1~情報端末3-M、Mは整数)を有する。情報処理装置1は、ネットワークNを介して管理者端末2及び複数の情報端末3と各種のデータを送受信する。
【0026】
情報処理装置1は、建物内又は建物外の少なくともいずれかの空間(以下、「建物内外の空間」という場合がある)の画像を示す空間画像データに基づく画像データを情報端末3に表示させるために用いられる。情報端末3を使用するユーザは、情報端末3に表示された空間に対応する画像データを見ながら情報端末3を操作することにより、疑似的に空間内を移動する。空間は、オフィス、店舗、展示会場等のように、ユーザが移動可能な任意の空間でよい。
【0027】
情報処理装置1は、情報端末3から、空間画像データにおけるユーザの位置を特定する。情報処理装置1は、特定した複数のユーザの位置に、ユーザの存在を示すユーザ画像データを重ねた表示用画像データを作成する。表示用画像データに、疑似的な空間内を移動している他のユーザの存在を示すユーザ画像データが含まれているため、表示用画像データを見るユーザの臨場感が高まる。
【0028】
情報処理装置1の用途は任意であるが、本明細書においては、主に、建物内における避難訓練の用途を例にして情報処理装置1の構成及び動作を説明する。本実施の形態におけるユーザを訓練参加者と称し、ユーザ画像データを参加者画像データと称する場合がある。
【0029】
情報処理装置1は、避難訓練で用いる表示用画像データ(例えば映像データ)を複数の情報端末3に提供し、複数の情報端末3を使用する訓練参加者が情報端末3において避難中の様子を示す仮想的な画像を見ることができるようにするためのサーバである。表示用画像データは、避難訓練の対象となるエリアが撮影されることにより作成された空間画像データ又はコンピュータにより作成された空間画像データを含む。本明細書においては、避難訓練の対象となるエリアに対応する空間画像データにより表される仮想空間内のエリアを訓練空間という。
【0030】
管理者端末2は、情報処理システムSの管理者が使用する端末であり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット又はスマートフォンである。管理者は、管理者端末2を操作することにより、表示用画像データの提供を情報処理装置1に開始させたり、表示用画像データの内容を変化させたりすることができる。
【0031】
情報端末3は、訓練参加者が使用する端末であり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット又はスマートフォンである。訓練参加者は、情報端末3において自身の訓練空間内での位置を移動させるための移動操作をすることにより、訓練空間内を移動することができる。情報端末3は、移動操作が行われたことを情報処理装置1に送信することにより、移動後の位置に対応する表示用画像データを情報処理装置1から受信する。訓練参加者は、移動操作をすることにより、移動後の位置に対応する表示用画像を見ることができるので、訓練空間内を実際に移動しているように感じることができる。
【0032】
図2は、情報端末3の画面に表示された表示用画像の一例を示す図である。
図2(a)には、情報端末3に表示される画面の全体図が示されている。領域R1には、避難訓練空間のレイアウトを示すレイアウト画像が示されている。領域R2には、訓練参加者の位置から見える訓練空間の状態を示す表示用画像が示されている。領域R3には、訓練に関する情報として、訓練への参加者数、及び訓練エリア内の複数の地点それぞれにいる訓練参加者の人数が示されている。
【0033】
図2(b)は、領域R1に表示されるレイアウト画像の拡大図である。レイアウト図においては、机及び椅子を示す画像が示されている。レイアウト図内の三角形、四角形、六角形の図形画像は、訓練参加者がいる位置を示している。そして、図形画像の形状の違いにより、表示位置の付近にいる訓練参加者の人数を示している。一例として、三角形の図形画像は3人に対応し、四角形の図形画像は4人に対応し、六角形は6人に対応している。
【0034】
図2(c)は、領域R2に表示される表示用画像の拡大図である。表示用画像には、エリア内に設置されている机、椅子、棚、本棚及び通路が示されている。また、表示用画像には、訓練参加者の位置から見える他の訓練参加者の疑似的な画像である参加者画像Gも示されている。表示用画像に、他の訓練参加者の参加者画像Gが表示され、訓練参加者及び他の訓練参加者の移動に伴って参加者画像Gの位置が変化するので、訓練参加者は、多数の参加者が同時に避難する状況を体験することができる。その結果、コンピュータを用いて行う訓練の効果が高まる。
【0035】
[情報処理装置1の構成]
図3は、情報処理装置1の構成を示す図である。情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。
【0036】
通信部11は、管理者端末2及び情報端末3との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部11は、管理者端末2から受信した設定用データを設定受付部131に入力する。また、通信部11は、情報端末3から受信した位置情報を位置特定部132に入力する。さらに、通信部11は、画像提供部134から入力された表示用画像データを複数の情報端末3に向けて送信する。
【0037】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部12は、表示用画像データを複数の情報端末3に提供するために必要な各種のデータを記憶する。
【0038】
一例として、記憶部12は、複数の情報端末3のそれぞれを識別するための端末識別情報又は複数の情報端末3を使用する訓練参加者それぞれを識別するための参加者識別情報に関連付けて、各訓練参加者の訓練空間における位置を示す位置情報を記憶している。位置情報の形式は任意であり、例えば、訓練空間における所定の位置を原点とするX方向の座標とY方向の座標との組み合わせにより表される。
図2(b)に示した訓練空間の例の場合、位置情報は、例えば、訓練空間の左下の位置を原点として、左右方向の座標と上下方向の座標との組み合わせにより表される。
【0039】
また、記憶部12は、訓練空間における複数の位置の座標と視認する向きとの組み合わせに関連付けて、複数の空間画像データを記憶している。さらに、記憶部12は、空間画像データに重ねて表示される重畳画像データを記憶してもよい。重畳画像データは、訓練参加者が移動するための操作に用いる移動先画像データ、及び火事が発生した際の炎又は煙の画像データである。記憶部12は、情報端末3に関連付けて、情報端末3に移動先画像データが表示された訓練空間内の位置を記憶してもよい。
【0040】
制御部13は、例えばCPU(Central Processor Unit)であり、複数の情報端末3に表示用画像データを提供するための各種の処理を実行する。記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、設定受付部131、位置特定部132、画像作成部133及び画像提供部134として機能する。
【0041】
設定受付部131は、例えば、空間画像データに重ねて表示させる重畳画像データの種別及び表示位置の設定を受け付ける。設定受付部131は、受け付けた設定の内容を画像提供部134に通知する。
【0042】
一例として、設定受付部131は、通信部11を介して、炎の画像、煙の画像、又は物品が破壊された状態を示す画像の少なくともいずれかを選択する種別設定データを管理者端末2から取得する。また、設定受付部131は、重畳画像を表示させる位置の座標を示す位置設定データを管理者端末2から取得する。設定受付部131は、訓練空間のレイアウト図を管理者端末2に表示させ、レイアウト図において選択された位置を、重畳画像を表示させる位置として受け付けてもよい。
【0043】
設定受付部131は、地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す空間画像データを表示するための地震動作設定を受け付けてもよい。地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す空間画像データは、情報端末3の画面における表示位置が変動する画像データである。設定受付部131は、画像データの表示位置の変動を開始する時刻を示す地震動作設定をさらに受け付けてもよい。設定受付部131は、画像データの表示位置が変動する複数の時刻の地震動作設定を受け付けてもよい。その場合、設定受付部131は、それぞれの時刻における変動量(訓練空間の揺れの大きさに相当)を示す地震動作設定を受け付けてもよい。
【0044】
位置特定部132は、訓練空間における訓練参加者の位置、及び訓練参加者の移動後の位置を特定する。訓練参加者の位置は、例えば訓練空間における座標により表される。位置特定部132は、訓練参加者が移動しようとしている向きをさらに特定してもよい。
【0045】
位置特定部132は、例えば、訓練参加者に関連付けて訓練空間における初期位置を予め記憶している記憶部12を参照することにより、訓練を開始する時点における訓練参加者の初期位置を特定する。位置特定部132は、情報端末3に表示されたレイアウト図において訓練参加者が選択した位置を初期位置として特定してもよい。
【0046】
訓練が開始された後において、位置特定部132は、移動する向きを選択するための移動先画像が情報端末3において選択されたという移動通知を情報端末3から取得した場合に、移動先画像が表示された位置を、訓練参加者が移動した後の位置として特定する。移動先画像の詳細については後述するが、移動先画像は、表示用画像に重ねて、訓練参加者の現在位置に対して訓練参加者が移動可能な側の位置に表示される画像である。移動先画像は、例えば訓練参加者の現在位置に対して非常口の位置に向かう側の位置に表示される。
【0047】
位置特定部132は、例えば、情報端末3において移動先画像が選択されたことに応じて、情報端末3を使用する訓練参加者の移動後の位置を特定する。具体的には、位置特定部132は、移動先画像が選択されたという移動通知を情報端末3から取得した場合に、情報端末3に表示された移動先画像の位置を記憶部12から読み出すことにより移動先画像の位置を特定する。位置特定部132は、通信部11を介して、移動先画像の位置を示す位置情報を情報端末3から取得することにより移動先画像の位置を特定してもよい。
【0048】
位置特定部132は、訓練参加者の現在位置と、移動後の位置との関係とに基づいて、訓練参加者の向きを特定してもよい。位置特定部132は、例えば、現在位置から移動後の位置に向かう向きを訓練参加者の現在の向きとして特定する。位置特定部132は、特定した位置及び向きを、訓練参加者の移動後の位置及び向きとして画像作成部133に通知する。具体的には、位置特定部132は、訓練空間における位置を示す座標及び向きを画像作成部133に通知する。
【0049】
画像作成部133は、記憶部12に記憶された空間画像データに基づいて表示用画像データを作成する。画像作成部133は、例えば、位置特定部132から通知された訓練参加者の現在位置の座標及び訓練参加者の向きに関連付けて記憶部12に記憶された空間画像データを表示用画像データの作成に用いる空間画像データとして抽出する。
【0050】
画像作成部133は、空間画像データにおける、位置特定部132が特定した複数の訓練参加者の複数の位置に訓練参加者を示す参加者画像データを重ねた表示用画像データを作成する。画像作成部133は、画像提供部134が表示用画像を表示させる情報端末3を使用する訓練参加者(以下、「表示対象参加者」という。)の位置から所定範囲内に位置する他の訓練参加者を示す参加者画像データを重ねた表示用画像データを作成する。所定範囲は、例えば、人が存在することにより避難時に移動する速度に影響が生じ得る範囲であり、表示用画像を視認する訓練参加者の位置から5m以内の範囲である。
【0051】
画像作成部133は、例えば、表示対象参加者から所定範囲内の訓練参加者の数と等しい数の参加者画像データを含む表示用画像データを作成する。画像作成部133は、所定範囲内の訓練参加者の数が閾値以上である場合、閾値に相当する数の参加者画像を含む表示用画像データを作成してもよい。閾値は、所定範囲内の訓練参加者の数がそれ以上増加しても、避難時に移動する速度に影響が生じなくなる人数であり、例えば10人である。
【0052】
画像作成部133は、位置特定部132が訓練参加者の移動後の位置を特定するたびに、位置を特定した訓練参加者が使用する情報端末3に提供する表示用画像データを更新する。画像作成部133は、表示用画像データを提供する情報端末3から所定範囲内の他の訓練参加者の位置が変化するたびに、表示用画像データに含まれる参加者画像データの位置を変化させてもよい。画像作成部133がこのように動作することで、訓練参加者は実際の避難訓練と同様の体験をすることができるので、訓練の効果が高まる。
【0053】
画像提供部134は、避難訓練を実施する建物内外の空間の画像を示す空間画像データを複数の情報端末3に提供する。画像提供部134は、位置特定部132が位置を特定したことに応じて、画像作成部133が作成した表示用画像データを複数の情報端末3に提供する。画像提供部134は、表示用画像データを提供する情報端末3から所定範囲内の他の訓練参加者の位置が変化するたびに、参加者画像データの位置が変化した表示用画像データを情報端末3に提供してもよい。
【0054】
画像提供部134は、訓練参加者が移動可能な位置を示す移動先画像データを含む空間画像データを情報端末3に提供する。移動先画像データは、表示用画像を表示している情報端末3を使用している訓練参加者が移動可能な位置を示す画像データであり、例えば矢印の形状の画像データである。
【0055】
図4は、移動先画像を含む表示用画像の例を示す図である。
図4(a)においては、通路の手前側に通路の奥側を向いた矢印形状の移動先画像が表示されている。訓練参加者は、移動先画像をクリックしたり移動先画像にタッチしたりして移動先画像を選択することにより、移動先画像が示す向きに移動することができる。
【0056】
図4(b)は、
図4(a)の位置から移動した後に表示される表示用画像である。
図4(b)においては、移動先画像の先に1人の他の訓練参加者を示す参加者画像が表示されている。
図4(c)は、
図4(b)の位置から移動した後に表示される表示用画像である。
図4(c)においては、移動先画像の先に複数名(5名)の他の訓練参加者を示す参加者画像が表示されている。
【0057】
ところで、
図4(c)のように、前方の多くの他の訓練参加者がいる場合には、訓練参加者が速く移動することができない。そこで、このような状態を訓練参加者に体験させるために、画像提供部134は、位置特定部132が訓練参加者の位置を特定してから、特定された位置から所定範囲内の人の密度に対応する時間が経過した後に、新たな移動先画像を含む表示用画像データを情報端末3に提供してもよい。すなわち、画像提供部134は、訓練参加者が移動したことに応じて新たな表示用画像データを情報端末3に提供した後に、訓練参加者から所定範囲内の人の数が多いほど、移動先画像を情報端末3に表示させるまでの時間を長くする。
【0058】
具体的には、画像提供部134は、
図4(a)の表示用画像を表示させる際には、表示用画像データと同時に移動先画像データを情報端末3に提供することで、情報端末3は、表示用画像を更新すると同時に移動先画像を表示する。これにより、情報端末3を使用する訓練参加者は、表示用画像が更新された直後に、移動先画像を選択することにより次の位置に移動することができる。
【0059】
これに対して、画像提供部134は、
図4(b)の表示用画像を表示させる際には、移動先画像データを含まない表示用画像データを情報端末3に提供してから第1時間(例えば1秒)が経過してから移動先画像データを情報端末3に提供することで、情報端末3は、空間画像を更新してから1秒が経過した後に移動先画像を表示する。この場合、情報端末3を使用する訓練参加者は、表示用画像が更新されてから1秒が経過しないと次の位置に移動することができない。
【0060】
また、画像提供部134は、
図4(c)の表示用画像を表示させる際には、移動先画像データを含まない表示用画像データを情報端末3に提供してから第2時間(例えば5秒)が経過してから移動先画像データを情報端末3に提供することで、情報端末3は、表示用画像を更新してから5秒が経過した後に移動先画像を表示する。この場合、情報端末3を使用する訓練参加者は、表示用画像が更新されてから5秒が経過しないと次の位置に移動することができない。
【0061】
画像提供部134がこのように構成されていることで、訓練参加者の周囲に他の訓練参加者が密集している場合に訓練参加者が自分の思い通りの速度で進むことができないという状況を疑似体験することができるので、訓練の効果が高まる。
【0062】
なお、画像提供部134は、待ち時間を情報端末3に通知し、情報端末3に待ち時間を表示させてもよい。画像提供部134が待ち時間を情報端末3に表示させることで、訓練参加者が、ソフトウェアが誤動作していると勘違いすることを防げる。
【0063】
また、
図4に示す例では、表示用画像に一つの移動先画像が表示されているが、画像提供部134は、それぞれ向きが異なる複数の移動先画像を表示してもよい。この場合、画像提供部134は、移動先候補の位置から所定範囲内の他の訓練参加者の人数に基づいて、それぞれの移動先画像を表示させる時間を決定してもよい。情報端末3には、他の訓練参加者が少ない位置に向かう移動先画像が先に表示され、他の訓練参加者が多い位置に向かう移動先画像が後に表示される。
【0064】
この場合、訓練参加者は、他の訓練参加者が少ない位置に早く移動するべきか、時間がかかるとしても他の訓練参加者が多い位置に移動するべきかの判断をする必要が生じる。このような判断は、実際に避難をする際にも必要になるので、画像提供部134がこのように複数の移動先画像を情報端末3に表示させることにより、訓練の効果がさらに高まる。
【0065】
ところで、通路の幅が狭いほど移動速度が遅くなると考えられる。そこで、画像提供部134は、位置特定部132が位置を特定してから、特定された位置における通路の幅に対応する時間が経過した後に、新たな移動先画像データを含む表示用画像データを情報端末3に提供してもよい。画像提供部134は、位置特定部132が位置を特定してから、特定された位置の先にある出口の幅に対応する時間が経過した後に、新たな移動先画像データを含む空間画像データを情報端末3に提供してもよい。すなわち、画像提供部134は、訓練参加者が移動する通路の幅又は出口の幅が狭ければ狭いほど、移動先の位置に対応する表示用画像データに更新してから情報端末3に移動先画像を表示させるまでの時間を長くする。
【0066】
画像提供部134は、通路の幅と、その通路にいる他の訓練参加者数とに基づいて算出した訓練参加者の密度に基づいて、表示用画像データを更新してから移動先画像データを情報端末3に提供するまでの時間を決定してもよい。画像提供部134がこのように構成されていることで、臨場感がさらに向上して訓練の効果がさらに高まる。
【0067】
ところで、地震が発生した場合、避難中に火災が発生したり、避難中に余震が発生した物品が落下又は崩壊したりすることがある。このような状況を訓練参加者が疑似的に体験できるようにするために、画像提供部134は、情報端末3に提供する空間画像データにおける設定受付部131が受け付けた表示位置に、設定受付部131が受け付けた種別の火災画像を重ねて表示させるように、複数の情報端末3に火災画像データを提供してもよい。火災画像データは、例えば炎の画像又は煙の画像データである。表示位置は、訓練空間内の位置を示す座標により表される。画像提供部134は、情報端末3に提供している空間画像データが示す範囲に表示位置が含まれている場合に、火災画像データを情報端末3に提供する。炎や煙の形状、大きさ又は発生範囲は、時間の経過に伴って変化してもよい。
【0068】
画像提供部134は、設定受付部131が地震動作設定を受け付けた場合に、地震の発生により訓練空間が揺れて器物が損壊する状態を示す空間画像データ(以下、「地震空間画像データ」という)を含む表示用画像データを複数の情報端末3に提供してもよい。画像提供部134は、例えば、設定受付部131が地震動作設定を受け付けたことに応じて、情報端末3に提供している空間画像データに対応する位置に対応する地震空間画像データを情報端末3に提供する。画像提供部134は、地震動作設定が示す時刻が到来した時点で地震空間画像データを情報端末3に提供してもよい。
【0069】
なお、地震が発生した後に避難を開始するという状況が想定される。そこで、画像提供部134は、地震空間画像データを複数の情報端末3に提供した後に、訓練参加者が避難のための移動を開始するための移動用画像データを複数の情報端末3に提供するようにしてもよい。この場合、位置特定部132は、地震に伴う振動により器物が損壊する状態を示す地震空間画像データを画像提供部134が複数の情報端末3に提供した後に、位置情報の取得を開始する。
【0070】
画像提供部134は、設定受付部131が複数の時刻に対応して、それぞれ揺れの大きさが異なる地震動作設定を受け付けた場合、設定された複数の時刻において、表示位置の変動量が異なる地震空間画像データを情報端末3に提供するとともに、移動用画像データを情報端末3に提供してもよい。画像提供部134がこのように動作することで、余震が繰り返し発生している状態で避難する訓練を効果的に実施することが可能になる。
【0071】
[情報処理システムSにおける処理の流れ]
図5は、情報処理システムSにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図5に示すシーケンス図は、管理者端末2において訓練を開始するための操作が行われた時点から開始している。
図5においては、情報端末3-1及び情報端末3-2のみが示されているが、情報端末3の数は任意である。
【0072】
まず、情報処理装置1の画像作成部133は、情報端末3-1及び情報端末3-2を使用する各訓練参加者の訓練空間内の位置を特定する(S11)。画像作成部133は、各訓練参加者の位置に対応する空間画像データにおける他の訓練参加者の位置に参加者画像データが重ねられるとともに、各訓練参加者の位置から移動可能な位置に移動先画像データが重ねられた表示用画像データを作成する(S12)。画像作成部133は、情報端末3-1を使用する訓練参加者の位置に対応する第1表示用画像データ、及び情報端末3-2を使用する訓練参加者の位置に対応する第2表示用画像データを作成する。画像作成部133は、移動先画像データの座標を、表示用画像データを識別するための画像識別情報に関連付けて記憶部12に記憶させてもよい。
【0073】
画像提供部134は、第1表示用画像データを情報端末3-1に送信し、第2表示用画像データを情報端末3-2に送信する。情報端末3-1及び情報端末3-2は、受信した表示用画像データに基づく画像を表示する(S13、S14)。情報端末3-1及び情報端末3-2は、訓練参加者による移動先画像の選択操作を受け付ける(S15、S16)。訓練参加者が移動先画像を選択すると、情報端末3-1及び情報端末3-2は、移動先画像が選択されたことを示す移動通知を情報処理装置1に送信する。
【0074】
画像作成部133は、移動通知を取得すると、画像識別情報に関連付けて記憶部12に記憶された移動先画像データの座標を参照して移動後の訓練参加者の位置を特定することにより位置を更新する(S17)。画像作成部133は、S12と同様に、更新された位置に基づいて第1表示用画像データ及び第2表示用画像データを作成する(S18)。画像提供部134は、新たな第1表示用画像データを情報端末3-1に送信し、第2表示用画像データを情報端末3-2に送信する。情報処理装置1及び複数の情報端末3がこれらの処理を繰り返すことにより、訓練参加者は、情報端末3の画面上で移動しながら避難訓練をすることができる。
【0075】
[情報処理装置1の処理の流れ]
図6は、情報処理装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、管理者端末2を使用する管理者が、避難訓練用のアプリケーションソフトウェアを起動した時点から開始している。
【0076】
設定受付部131は、管理者端末2から各種の設定を受け付ける(S21)。設定受付部131が、避難訓練を開始するという設定を受け付けると、位置特定部132は各訓練参加者の位置を特定する(S22)。続いて、画像作成部133は、各訓練参加者の位置から所定範囲内の他の訓練参加者の人数を算出する(S23)。画像作成部133は、算出した人数に基づいて、各訓練参加者が移動できるようになるまでの待ち時間を算出し(S24)、訓練参加者を識別するための参加者識別情報、又は訓練参加者が使用する情報端末3を識別するための端末識別情報に関連付けて待ち時間を記憶部12に記憶させる。
【0077】
続いて、画像作成部133は、各訓練参加者の位置から所定範囲内の他の訓練参加者の人数に対応する参加者画像データを空間画像データに重ねた表示用画像データを作成する(S25)。画像提供部134は、作成された表示用画像データを複数の情報端末3それぞれに送信する(S26)。画像提供部134は、参加者識別情報又は端末識別情報に関連付けて記憶部12に記憶された待ち時間が経過すると(S27においてYES)、参加者識別情報又は端末識別情報に対応する情報端末3に対して移動先画像データを送信する(S28)。
【0078】
続いて、位置特定部132は、移動先を選択する操作が行われたことを示す移動通知を情報端末3から取得すると(S29においてYES)、S22に戻って、移動通知を送信した情報端末3に関連付けて記憶部12に記憶された移動先の位置を特定する。その後、制御部13は、S22からS29までの処理を繰り返す。
【0079】
画像提供部134が移動先画像データを送信してから所定の時間が経過しても位置特定部132が移動通知を情報端末3から取得しない場合(S29においてNO)、画像提供部134は、警告メッセージを情報端末3に送信する(S30)。警告メッセージには、移動先画像データの選択方法の説明が含まれていてもよい。このような警告メッセージが情報端末3に表示されることで、初めて訓練に参加する訓練参加者であっても移動先画像データを選択する操作を行うことが可能になる。
【0080】
[情報処理システムSによる効果]
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置1は、空間画像データが示す空間画像における複数の訓練参加者の位置を特定する位置特定部132と、位置特定部132が特定した位置に訓練参加者を示す参加者画像データを重ねた表示用画像データを作成する画像作成部133と、表示用画像データを複数の情報端末3に提供する画像提供部134と、を有する。情報処理装置1がこのような構成を有することで、避難訓練に参加している複数の訓練参加者の位置に応じて訓練参加者の周囲にいる他の訓練参加者の位置及び人数が変化するため、多数の参加者が同時に避難する状況を疑似的に体験することができる。その結果、コンピュータを用いた避難訓練の効果が高まる。
【0081】
以上の説明では、情報処理装置1が避難訓練に用いられる場合を中心に説明したが、情報処理装置1が、避難訓練以外の用途として、疑似的なショッピングモールや疑似的な展示会場の画像を表示させる場合にも、避難訓練の場合と同様に臨場感を高めるという効果を得ることができる。本実施形態に係る情報処理装置1を用いることにより、ショッピングモールや展示会場が混雑している場合に、ユーザがゆっくりとしか進めないという体験をすることができるので、ユーザの臨場感が高まる。
【0082】
また、以上の説明では、既に完成している建物内外の空間でユーザが疑似的な体験を可能にするという用途が想定されていたが、情報処理装置1は、建物の設計時に用いられてもよい。例えば、情報処理装置1を用いることにより、建物の設計者が、人の移動・誘導を補助するための装置(例えば避難誘導灯)を建物内外の空間のどこに設置すれば効果的であるかの検証をすることが可能になる。
【0083】
[第1変形例]
図7は、第1変形例に係る情報処理装置1Aの構成を示す図である。
図7に示す情報処理装置1Aは、分析部135をさらに有するという点で、
図3に示した情報処理装置1と異なり、他の点で同じである。
【0084】
情報処理装置1Aが有する記憶部12は、複数のユーザ(例えば訓練参加者)それぞれの位置と時刻とを関連付けて記憶する。一例として、位置特定部132が、移動先画像が選択されたという移動通知を情報端末3から取得した場合に、情報端末3に表示された移動先画像の位置と、移動通知を取得した時刻とを、ユーザに関連付けて記憶部12に記憶させる。
【0085】
分析部135は、記憶部12に記憶された複数のユーザそれぞれの位置と時刻との関係に基づいて、複数のユーザのうち少なくとも一部のユーザが移動を開始してから所定の場所に到達するまでに要した時間(以下、「避難時間」という)を算出する。ユーザが移動を開始した時点は、例えばユーザが訓練を開始する時刻である。ユーザが移動を開始する時点は、画像提供部134が空間画像データを情報端末3に提供した時点であってもよい。所定の場所は、一例として、避難訓練を実施する空間に設けられた出口である。分析部135は、ユーザに関連付けて、算出した避難時間を記憶部12に記憶させる。
【0086】
分析部135は、管理者端末2からの要求に応じて、記憶部12に記憶された避難時間を管理者端末2に通知してもよい。分析部135は、管理者端末2又は情報端末3において入力された避難時間の長さごとに、対応する一以上のユーザを選択し、選択したユーザを示す情報を管理者端末2に提供してもよい。分析部135は、例えば、避難時間が最短のユーザを通知したり、避難時間が1分以内のユーザを通知したり、避難時間が最長のユーザを通知したりする。このような情報が管理者端末2に提供されることで、避難に長時間を要したユーザに管理者が指導をしたり、避難時間を短縮するために管理者が対策を講じたりすることが可能になる。
【0087】
分析部135は、選択されたユーザが移動した経路を示す画像データを管理者端末2に提供してもよい。
図8は、経路を示す画像データの一例を示す図である。
図8(a)には、左下の位置のユーザが、出口Eまで移動した経路が示されている。経路を示す線の態様により、移動速度が示されてもよい。
図8(a)に示す例における太線は毎秒2m以上の移動速度に対応し、細線は毎秒1m以上2m未満の移動速度に対応し、点線は毎秒1m未満の移動速度に対応している。このような図が管理者端末2に表示されることで、管理者は、どこが移動のボトルネックになっているかを把握して対策を講じることが可能になる。
【0088】
分析部135は、
図8(a)に示した異なる態様の線に代えて、又は異なる態様の線とともに、ユーザが停止した位置における滞在時間を示すテキスト又は図形を管理者端末2に表示させるようにしてもよい。一例として、
図8(b)には、径の大きさが滞在時間に対応する黒い円が示されている。一例として、径が小さい円は滞在時間が2秒未満であることを示しており、径が大きい円は滞在時間が2秒以上であることを示している。このような情報によっても、管理者がボトルネックの位置を把握しやすくなる。
【0089】
記憶部12は、複数のユーザに関連付けて、それぞれのユーザが使用する情報端末3に表示された表示用画像データを記憶してもよい。分析部135は、記憶部12に記憶された表示用画像データに基づいて、複数のユーザそれぞれの情報端末3に表示された複数の表示用画像データにおける中心から所定の範囲内に出口に関する情報を含む物体(以下、「案内物体」という)が含まれているか否かを分析した結果を出力してもよい。中心から所定の範囲は、ユーザが物体を視認したと考えられる範囲であり、例えば、画面の横方向における画面の中心位置から、画面の横方向の幅の10%以内の範囲である。中心から所定の範囲は、画面の中心位置から、画面の横方向の幅の10%以内であり、かつ縦方向の幅の10%以内の範囲であってもよい。
【0090】
案内物体は、例えば、非常口を示す案内、避難扉、又は出口付近に設置されているソファである。
図9は、非常口を示す案内が表示された例を示す図である。
図9(a)は、非常口を示す案内が、情報端末3の画面の中心から所定の範囲内に表示されている例を示しており、
図9(b)は、当該案内が、情報端末3の画面の中心から所定の範囲内に表示されていない例を示している。
図9(a)の画像を見たユーザは、非常口を示す案内を見て移動したと考えられる。一方、
図9(b)の画像を見たユーザは、非常口を示す案内を見ないで移動したと考えられる。
【0091】
分析部135は、避難訓練を行った複数のユーザのうち、案内物体を見たと考えられるユーザの割合を特定し、特定した結果を管理者端末2に通知してもよい。空間内に複数の案内物体がある場合、分析部135は、複数の案内物体それぞれに関連付けて、案内物体を見たユーザの割合を管理者端末2に通知してもよい。分析部135がこのような情報を管理者端末2に通知することで、管理者は、どの案内物体が有効であり、どの案内物体が役立っていないかを把握することができ、案内物体の設置位置や大きさを改善することが可能になる。
【0092】
[第2変形例]
図10は、第2変形例に係る情報処理装置1Bの構成を示す図である。
図10に示す情報処理装置1Bは、記録部136をさらに有するという点で、
図3に示した情報処理装置1と異なり、他の点で同じである。
【0093】
避難訓練への参加者が少ない場合、避難訓練の効果を十分に得られないということが想定される。そこで、情報処理装置1Bは、避難訓練に参加しているユーザに対応するユーザ画像の他に、避難訓練に参加していないダミーユーザのユーザ画像も同時に表示することで、多くのユーザが避難訓練に参加している状態と同じ効果を得られるようにすることを特徴としている。
【0094】
このようにするために、画像作成部133は、複数のユーザの数よりも多い数のユーザ画像データを空間画像データに重ねた表示用画像データを作成する。画像作成部133は、例えば、演算処理によって作成したダミーユーザのユーザ画像データを重ねて表示用画像データを作成する。
【0095】
画像作成部133は、過去の避難訓練における表示用画像データを利用して新たな表示用画像データを作成してもよい。一例として、記録部136は、空間における位置に関連付けて画像作成部133が作成した表示用画像データを記憶部12に記憶させる。画像作成部133は、記憶部12に記憶された過去の表示用画像データにユーザ画像データを重ねることにより、新たな表示用画像データを作成する。過去の表示用画像データにユーザ画像データが含まれている場合、新たな表示用画像データには、避難訓練に参加しているユーザの数よりも多いユーザのユーザ画像データが含まれる。その結果、ユーザは、実際に避難訓練に参加している人数よりも多くのユーザがいる環境を模した避難訓練をすることができるので、避難訓練の効果が向上する。
【0096】
[第3変形例]
図11は、第3変形例に係る情報処理装置1Cの構成を示す図である。
図11に示す情報処理装置1Cは、音声処理部137をさらに有するという点で、
図3に示した情報処理装置1と異なり、他の点で同じである。
【0097】
情報処理装置1Cは、避難訓練に参加しているユーザが他のユーザの声を聴くことができるようにすることを特徴としている。音声処理部137は、管理者端末2を使用する管理者又は情報端末3を使用するユーザの音声に基づく音声データを管理者端末2又は情報端末3から取得し、取得した音声データを他の情報端末3に提供する。
【0098】
音声処理部137は、例えば、複数のユーザの少なくとも一部のユーザが発した音声に基づく音声データを取得し、音声を発したユーザから他のユーザまでの距離に対応する大きさで、他のユーザが使用する情報端末3に音声データを提供することで、音声データに基づく音声を出力させる。このように音声処理部137が動作することで、ユーザは、近くにいる他のユーザの声が遠くのユーザの声よりも大きく聞こえるので、避難訓練の臨場感が高まり避難訓練の効果が高まる。
【0099】
また、音声処理部137がこのように構成されていることで、ユーザの一部の人が避難を誘導する担当者である場合、当該ユーザが避難を誘導するために発した音声が、避難する他のユーザの情報端末3から出力され、他のユーザは避難誘導者の音声を聞きながら避難をすることができる。
【0100】
音声処理部137は、避難誘導者の音声を記憶部12に記憶させてもよい。このように音声が記録されることで、管理者は、第1変形例で説明した避難時間が長い場合の避難誘導者の音声と避難時間が短い場合の避難誘導者の音声とを比較することで、避難誘導者がどのような音声を発すると避難に効果的であるかを分析することができるので、避難誘導者の訓練にも好適である。
【0101】
音声処理部137は、情報端末3から、第1ユーザが他の第2ユーザのユーザ画像データを選択したことの通知を受けた場合に、第1ユーザと第2ユーザとの間で会話ができるようにしてもよい。具体的には、第1ユーザの情報端末3において入力された音声を第2ユーザの情報端末3に送信し、第2ユーザの情報端末3において入力された音声を第1ユーザの情報端末3に送信する。このように音声処理部137が動作することで、避難訓練の臨場感がさらに高まる。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0103】
1 情報処理装置
2 管理者端末
3 情報端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 設定受付部
132 位置特定部
133 画像作成部
134 画像提供部
135 分析部
136 記録部
137 音声処理部