(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079212
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】環状オレフィン系共重合体および環状オレフィン系共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 232/00 20060101AFI20230531BHJP
C08F 210/00 20060101ALI20230531BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C08F232/00
C08F210/00
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188187
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021191817
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】和佐 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 真実
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮平
(72)【発明者】
【氏名】中川 絢太
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA03P
4J100AA04P
4J100AA07P
4J100AA09P
4J100AA15P
4J100AA16P
4J100AA17P
4J100AA18P
4J100AA19P
4J100AA21P
4J100AR09Q
4J100AR11Q
4J100AS13Q
4J100AS15Q
4J100BA20Q
4J100BC43Q
4J100BC49Q
4J100CA04
4J100DA22
4J100DA24
4J100DA41
4J100FA10
4J100FA19
4J100JA33
4J100JA58
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB18
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA18
4J128GA19
4J128GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性に優れた環状オレフィン系共重合体を提供する。
【解決手段】エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を有する環状オレフィン系共重合体であって、特定の手順により行われる熱分析の第2回目の昇温工程において得られるDSC曲線で観測される吸熱ピークを融解ピークとし、当該融解ピークの頂点の温度を融点とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融点が190℃以上400℃以下であり、特定の手順により行われる熱分析の第1回目の降温工程において得られるDSC曲線で観測される発熱ピークを結晶化ピークとし、当該結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の結晶化温度が150℃以上350℃以下である、環状オレフィン系共重合体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を有する環状オレフィン系共重合体であって、
下記の手順により行われる熱分析の第2回目の昇温工程において得られるDSC曲線で観測される吸熱ピークを融解ピークとし、当該融解ピークの頂点の温度を融点とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融点が190℃以上400℃以下であり、
下記の手順により行われる熱分析の第1回目の降温工程において得られるDSC曲線で観測される発熱ピークを結晶化ピークとし、当該結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の結晶化温度が150℃以上350℃以下である、環状オレフィン系共重合体。
<手順>
(1)示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下にて、環状オレフィン系共重合体を常温から10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温する。
(2)400℃で5分間保持する。
(3)10℃/分の降温速度で-20℃まで降温する。
(4)-20℃で5分間保持する。
(5)10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温する。
【請求項2】
請求項1に記載の環状オレフィン系共重合体であって、
前記DSC曲線で観測される前記融解ピークの面積から熱量を求め、これを融解熱量とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融解熱量が10J/g以上である、環状オレフィン系共重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状オレフィン系共重合体であって、
前記DSC曲線で観測される前記融解ピークにおける融解開始温度と融解終了温度との差を融解ピーク幅とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融解ピーク幅が100℃以下である、環状オレフィン系共重合体。
【請求項4】
下記の一般式(1)で示される遷移金属化合物(X)を含有する触媒の存在下において、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を共重合させる重合工程を備える環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
当該製造方法により得られる環状オレフィン系共重合体は、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の前記構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の前記構成単位(B)と、を有する、環状オレフィン系共重合体の製造方法。
【化1】
(前記一般式(1)において、
M
1は、周期律表4族の遷移金属原子を示し、
X
1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、
n
1は、1~4の整数を示し、
Y
1は、炭素原子またはケイ素原子を示し、
R
1~R
14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、
R
1~R
14のうち隣接するもの同士は互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよく、
R
1~R
14のうち2つ以上は、炭素数4以上の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である。)
【請求項5】
請求項4に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
前記一般式(1)において、
R1~R14のうち2つ以上は、炭素数4以上の炭化水素基である、環状オレフィン系共重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
前記一般式(1)において、
R1~R14のうち2つ以上は、t-ブチル基である、環状オレフィン系共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系共重合体および環状オレフィン系共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系共重合体は、フィルム、シート、レンズ、容器等の様々な用途に適用することができる。
【0003】
たとえば、特許文献1には、耐熱性、引張特性を備えたフィルムを製造するのに適した環状オレフィン系共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、様々な用途や多様な環境で環状オレフィン系共重合体が使用されるようになり、環状オレフィン系共重合体には、従来にない過酷な使用状況にも耐えることが求められている。たとえば、高温環境下での使用に耐えることが求められている。そのため、環状オレフィン系共重合体には更なる耐熱性の向上が要請されている。
しかし、かかる要請に対して従来技術では充分に対応できていなかった。
【0006】
本発明の目的は、耐熱性に優れた環状オレフィン系共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、融点および結晶化温度を所定の数値範囲とすることにより、環状オレフィン系共重合体の耐熱性を向上させられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す環状オレフィン系共重合体および環状オレフィン系共重合体の製造方法が提供される。
【0009】
[1]
エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を有する環状オレフィン系共重合体であって、
下記の手順により行われる熱分析の第2回目の昇温工程において得られるDSC曲線で観測される吸熱ピークを融解ピークとし、当該融解ピークの頂点の温度を融点とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融点が190℃以上400℃以下であり、
下記の手順により行われる熱分析の第1回目の降温工程において得られるDSC曲線で観測される発熱ピークを結晶化ピークとし、当該結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の結晶化温度が150℃以上350℃以下である、環状オレフィン系共重合体。
<手順>
(1)示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下にて、環状オレフィン系共重合体を常温から10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温する。
(2)400℃で5分間保持する。
(3)10℃/分の降温速度で-20℃まで降温する。
(4)-20℃で5分間保持する。
(5)10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温する。
[2]
上記[1]に記載の環状オレフィン系共重合体であって、
上記DSC曲線で観測される上記融解ピークの面積から熱量を求め、これを融解熱量とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融解熱量が10J/g以上である、環状オレフィン系共重合体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の環状オレフィン系共重合体であって、
上記DSC曲線で観測される上記融解ピークにおける融解開始温度と融解終了温度との差を融解ピーク幅とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融解ピーク幅が100℃以下である、環状オレフィン系共重合体。
[4]
下記の一般式(1)で示される遷移金属化合物(X)を含有する触媒の存在下において、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を共重合させる重合工程を備える環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
当該製造方法により得られる環状オレフィン系共重合体は、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の上記構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の上記構成単位(B)と、を有する、環状オレフィン系共重合体の製造方法。
【0010】
【0011】
(上記一般式(1)において、
M1は、周期律表4族の遷移金属原子を示し、
X1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、
n1は、1~4の整数を示し、
Y1は、炭素原子またはケイ素原子を示し、
R1~R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、
R1~R14のうち隣接するもの同士は互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよく、
R1~R14のうち2つ以上は、炭素数4以上の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である。)
[5]
上記[4]に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
上記一般式(1)において、
R1~R14のうち2つ以上は、炭素数4以上の炭化水素基である、環状オレフィン系共重合体の製造方法。
[6]
上記[4]または[5]に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
上記式一般式(1)において、
R1~R14のうち2つ以上は、t-ブチル基である、環状オレフィン系共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性に優れた環状オレフィン系共重合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の環状オレフィン共重合体をそれぞれ実施例に記載された手順により熱分析することで得られたDSC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0015】
[環状オレフィン系共重合体]
以下、本発明の環状オレフィン系共重合体について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、
エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を有する環状オレフィン系共重合体であって、
下記の手順により行われる熱分析の第2回目の昇温工程において得られるDSC曲線で観測される吸熱ピークを融解ピークとし、当該融解ピークの頂点の温度を融点とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融点が190℃以上400℃以下であり、
下記の手順により行われる熱分析の第1回目の降温工程において得られるDSC曲線で観測される発熱ピークを結晶化ピークとし、当該結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の結晶化温度が150℃以上350℃以下である、環状オレフィン系共重合体。
<手順>
(1)示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下にて、環状オレフィン系共重合体を常温から10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温する。
(2)400℃で5分間保持する。
(3)10℃/分の降温速度で-20℃まで降温する。
(4)-20℃で5分間保持する。
(5)10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温する。
【0017】
示差走査熱量計としては、例えば、TA Instrument社製、Discovery DSC2500等を用いることができる。
【0018】
本実施形態において、熱分析および熱分析により得られたDSC曲線の解析は、JIS K 7121:2012に準拠して行った。
【0019】
本実施形態において、転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線をベースラインとする。また、DSC曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分をピークとし、ピークの極小または極大をピークの頂点とする。また、DSC曲線がそれまでのベースラインから離れ新しいベースラインに移行するまでの部分を階段状変化部分とする。
転移及び反応が生じている部分のDSC曲線は、ピーク、階段状変化部分及びこれらの組み合わさった形状を示す。
【0020】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は耐熱性に優れる。
【0021】
鋭意検討の結果、本発明者は、環状オレフィン系共重合体が下記(I)および(II)の要件を満たすことにより、耐熱性が向上するということを見出した。
(I)当該環状オレフィン系共重合体の融点が190℃以上400℃以下である。
(II)当該環状オレフィン系共重合体の結晶化温度が150℃以上350℃以下である。
【0022】
環状オレフィン系共重合体が上記(I)および(II)の要件を満たすことにより上述の課題が解決されるメカニズムは明らかではないが、融点のみならず結晶化温度も所定の数値範囲とすることにより、環状オレフィン系共重合体が結晶構造を形成しやすくなり、これにより耐熱性が向上するものと推測される。
【0023】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の融点は、好適には220℃以上であり、より好適には240℃以上、さらに好適には260℃以上、さらに好適には270℃以上、さらに好適には280℃以上である。融点が上記下限値以上であることにより、耐熱性がより向上する。
【0024】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の融点は、好適には390℃以下であり、より好適には370℃以下、さらに好適には350℃以下、さらに好適には330℃以下である。融点が上記上限値以下であることにより、加工性がより向上する。
【0025】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の融点は、好適には220℃以上390℃以下であり、より好適には240℃以上370℃以下、さらに好適には260℃以上350℃以下、さらに好適には270℃以上330℃以下である。融点が上記範囲内であることにより、耐熱性および加工性のバランスがより高度に両立される。
【0026】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の結晶化温度は、好適には170℃以上であり、より好適には190℃以上、さらに好適には200℃以上、さらに好適には210℃以上である。結晶化温度が上記下限値以上であることにより、耐熱性がより向上する。
【0027】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の結晶化温度は、好適には320℃以下であり、より好適には300℃以下、さらに好適には290℃以下、さらに好適には280℃以下である。結晶化温度が上記上限値以下であることにより、加工性がより向上する。
【0028】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の結晶化温度は、好適には170℃以上320℃以下であり、より好適には190℃以上300℃以下、さらに好適には200℃以上290℃以下、さらに好適には210℃以上280℃以下である。融点が上記範囲内であることにより、耐熱性および加工性のバランスがより高度に両立される。
【0029】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、その融点が220℃以上390℃以下であり且つその結晶化温度が170℃以上320℃以下であることが好ましく、その融点が240℃以上370℃以下であり且つその結晶化温度が190℃以上300℃以下であることがより好ましく、その融点が260℃以上350℃以下であり且つその結晶化温度が200℃以上290℃以下であることがさらに好ましく、その融点が270℃以上330℃以下であり且つその結晶化温度が210℃以上280℃以下であることがさらに好ましい。融点および結晶化温度が上記範囲内であることにより、耐熱性および加工性のバランスがより高度に両立される。
【0030】
本実施形態において、内挿されたベースラインとピークとで囲まれた領域の面積をピークの面積とする。
【0031】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、上記融解ピークの面積から熱量を求め、これを融解熱量とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の融解熱量が、好適には10J/g以上であり、より好適には15J/g以上であり、さらに好適には20J/g以上である。融解熱量が上記下限値以上であることにより、耐熱性がより向上する。
【0032】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の融解熱量は、通常100J/g以下であり、好適には80J/g以下、より好適には60J/g以下、さらに好適には40J/g以下、さらに好適には35J/g以下である。
【0033】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、上記結晶化ピークの面積から熱量を求め、これを結晶化熱量とした場合の当該環状オレフィン系共重合体の結晶化熱量が、好適には5J/g以上であり、より好適には10J/g以上であり、さらに好適には15J/g以上、さらに好適には20J/g以上である。結晶化熱量が上記下限値以上であることにより、耐熱性がより向上する。
【0034】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の結晶化熱量は、通常100J/g以下であり、好適には80J/g以下、より好適には60J/g以下、さらに好適には45J/g以下である。
【0035】
本実施形態においては、階段状変化部分の低温側を低温側のベースラインとし、高温側を高温側のベースラインとする。
【0036】
本実施形態においては、上記の手順により行われる熱分析の第2回目の昇温工程で、DSC曲線の低温側のベースラインと高温側のベースラインとをそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をTgとする。
【0037】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好適には50℃以上であり、より好適には70℃以上であり、さらに好適には80℃以上、さらに好適には90℃以上である。Tgが上記下限値以上であることにより、耐熱性がより向上する。
【0038】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好適には180℃以下であり、より好適には150℃以下、さらに好適には130℃以下、さらに好適には120℃以下、さらに好適には110℃以下である。Tgが上記上限値以下であることにより、加工性がより向上する。
【0039】
本実施形態においては、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、上記融解ピークの低温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度を上記融解ピークにおける融解開始温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、上記融解ピークの高温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度を上記融解ピークにおける融解終了温度とする。そして、上記融解ピークにおける融解開始温度と融解終了温度の差を融解ピーク幅とする。
当該環状オレフィン系共重合体の融解ピーク幅は、狭いほうが好ましい。吸熱ピークの幅が狭いほど、環状オレフィン系共重合体の結晶性が高いと考えられ、これにより環状オレフィン系共重合体の耐熱性が向上するもの考えられる。
【0040】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の融解ピーク幅は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがより好ましい。吸熱ピークの幅が上記上限値以下であることにより、環状オレフィン共重合体の耐熱性がより向上する。
【0041】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を有する。
【0042】
非環状オレフィン(A´)とは環状オレフィンでないオレフィンを指し、具体的には直鎖状または分岐鎖状のオレフィンを指す。
【0043】
環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)は特に限定はされないが、例えば、国際公開第2006/118261号の段落0037~0063に記載の環状オレフィンモノマー等をその例として挙げることができる。
【0044】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスを良好に保ちつつ耐熱性をさらに向上したり、成形性を向上したりする観点から、下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位、下記一般式(V)で表される繰り返し単位および下記一般式(VI)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を有することが好ましい。
【0045】
【化2】
上記一般式(I)において、R
300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。
【0046】
【化3】
上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61~R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R
75~R
78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0047】
【化4】
上記一般式(III)において、xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzはそれぞれ独立に0、1または2であり、R
81~R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基若しくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0048】
【化5】
上記一般式(IV)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
R
18~R
31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R
18~R
31はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
28とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0049】
【化6】
上記一般式(V)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0050】
【化7】
上記一般式(VI)において、qは1、2または3であり、R
32~R
39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
36とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0051】
本実施形態にかかる非環状オレフィン(A´)として、具体的には、上記一般式(I)に対応する下記一般式(Ia)で表されたオレフィンモノマーを挙げることができる。
【0052】
【化8】
上記一般式(Ia)において、R
300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。より優れた耐熱性、機械的特性および光学特性を有する成形体を得る観点から、これらのなかでも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは2種類以上を用いてもよい。
【0053】
本実施形態にかかる環状オレフィン(B´)として、具体的には、上記一般式(II)、上記一般式(III)、上記一般式(IV)、上記一般式(V)および上記一般式(VI)にそれぞれ対応する一般式(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)および(VIa)で表される環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
【0054】
【化9】
上記一般式(IIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61~R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R
75~R
78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0055】
【化10】
上記一般式(IIIa)において、xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzはそれぞれ独立に0、1または2であり、R
81~R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基若しくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0056】
【化11】
上記一般式(IVa)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
R
18~R
31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R
18~R
31はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
28とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0057】
【化12】
上記一般式(Va)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0058】
【化13】
上記一般式(VIa)において、qは1、2または3である。qは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
R
32~R
39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。R
32~R
39はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
36とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
また、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0059】
上述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)で表される環状オレフィンモノマーを共重合成分として用いることにより、環状オレフィン系共重合体の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
【0060】
一般式(IIa)、(IIIa)または(Va)で表される環状オレフィンモノマーの具体例としては、国際公開第2006/118261号の段落0037~0063に記載の化合物を挙げることができる。
【0061】
具体的には、ビシクロ-2-ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト-2-エン誘導体)、トリシクロ-3-デセン誘導体、トリシクロ-3-ウンデセン誘導体、テトラシクロ-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ-3-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ-3-ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ-4-ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-4-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ-5-ドコセン誘導体、ノナシクロ-5-ペンタコセン誘導体、ノナシクロ-6-ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3~20のシクロアルキレン誘導体等が挙げられる。
【0062】
一般式(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)で表される環状オレフィンモノマーの中でも、一般式(IIa)で表される環状オレフィンが好ましい。
また、一般式(IIa)で表される環状オレフィンと、一般式(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)で表される環状オレフィンのいずれかを用いることが好ましい。
【0063】
上記一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマーとして、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネンとも呼ぶ。)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)を用いることが好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを用いることがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および成形体の弾性率が保持され易くなる利点がある。
上記一般式(VIa)で表される環状オレフィンモノマーとして、式(VIa)中のq=1であるモノマーを用いることが好ましい。これらの環状オレフィンは、ベンゼン環を一つ有するため、二つ以上のベンゼン環を有する場合と比べて着色しにくい樹脂組成物が得られやすくなる利点がある。特に、ベンゾノルボルナジエンを用いることが好ましい。ベンゾノルボルナジエンを用いることの利点は、芳香環を有するため、樹脂組成物の屈折率を高くできることである。
【0064】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の共重合タイプは特に限定されないが、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体等を挙げることができる。本実施形態においては、透明性、屈折率および複屈折率等の光学物性に優れ、高精度の光学部品を得ることができる観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体としては、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体、エチレンとビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンとのランダム共重合体およびエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとベンゾノルボルナジエンとのランダム共重合体であることが好ましく、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体およびエチレンとテトラシクロ[[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとベンゾノルボルナジエンとのランダム共重合体がより好ましい。
【0066】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体は、環状オレフィンの開環重合体であってもよい。
環状オレフィンの開環重合体としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。
【0067】
開環重合体の重合に用いられるノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体、等が挙げられる。
これらの誘導体の環に置換される置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。なお、置換基は、1個または2個以上を有することができる。このような環に置換基を有する誘導体としては、例えば、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等が挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0068】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、またはノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。
開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウム等の金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒;等を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体等を挙げることができる。
【0069】
ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物や、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体の水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素-炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0070】
本実施形態にかかる環状オレフィン系重合体のメルトフローレート(MFR)の下限値は、環状オレフィン系共重合体の加工性や製造の容易さ等の観点から、好ましくは5g/10分以上であり、より好ましくは8g/10分以上であり、さらに好ましくは10g/10分以上である。
【0071】
また、本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体のMFRの上限値は、例えば100g/10分以下である。
【0072】
本実施形態において、環状オレフィン系共重合体のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠し、260℃、荷重2.16kgで測定される。
【0073】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体中には、炭素-炭素二重結合は含まれないことが好ましいが、含む場合は、環状オレフィン系共重合体100g中に0.5g以下であることが好ましい。炭素-炭素二重結合を実質的に含まないことにより樹脂組成物の劣化を抑制できるため、好ましい。
本実施形態において、環状オレフィン系共重合体中の炭素-炭素二重結合の含有量は、JIS K 0070に従い、ヨウ素価法(滴定法)で求められる。
【0074】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体のアルミニウム含量は、環状オレフィン系共重合体の着色を防ぐ観点から、好適には10ppm以下であり、より好適には8ppm以下である。
【0075】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、例えば0.05~5.0dl/gであり、好ましくは0.2~4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.3~2.0dl/g、特に好ましくは0.4~1.0dl/gである。
【0076】
環状オレフィン系共重合体中の構成単位(A)および構成単位(B)の合計含有率を100モル%としたとき、本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(A)の含有率は、好適には10モル%以上90モル%以下であり、より好適には30モル%以上70モル%以下であり、さらに好適には35モル%以上65モル%以下、さらに好適には45モル%以上65モル%以下である。
【0077】
環状オレフィン系共重合体中の構成単位(A)および構成単位(B)の合計含有率を100モル%としたとき、本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(B)の含有率は、好適には10モル%以上90モル%以下であり、より好適には30モル%以上70モル%以下であり、さらに好適には35モル%以上65モル%以下、さらに好適には35モル%以上55モル%以下である。
【0078】
構成単位(A)および構成単位(B)の含有率は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
【0079】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の用途は特に限定されず、フィルム、シート、レンズ、容器等に用いることができる。本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体は耐熱性に優れているため、高温環境下での使用に耐えることができる。
【0080】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の用途としては、たとえば、光ディスク、光学レンズ、プリズム、光拡散板、光カード、光ファイバー、光学ミラー、液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学材料;液体、粉体、または固体薬品の容器(注射用の液体薬品容器、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、輸液用バッグ、密封薬袋、プレス・スルー・パッケージ、固体薬品容器、点眼薬容器など)、サンプリング容器(血液検査用サンプリング試験管、薬品容器用キャップ、採血管、検体容器など)、医療器具(注射器など)、医療器具などの滅菌容器(メス用、鉗子用、ガーゼ用、コンタクトレンズ用など)、実験・分析器具(ビーカー、シャーレ、フラスコ、試験管、遠心管など)、医療用光学部品(医療検査用プラスチックレンズなど)、配管材料(医療用輸液チューブ、配管、継ぎ手、バルブなど)、人工臓器やその部品義(歯床、人工心臓、人造歯根など)などの医療用器材;ボトル、リターナブルボトル、哺乳瓶、フィルム、シュリンクフィルムなどの食品用容器;処理用または移送用容器(タンク、トレイ、キャリア、ケースなど)、保護材(キャリアテープ、セパレーション・フィルムなど)、配管類(パイプ、チューブ、バルブ、流量計、フィルター、ポンプなど)、液体用容器類(サンプリング容器、ボトル、アンプルバッグなど)の電子部品処理用器材;被覆材(電線用、ケーブル用など)、民生用・産業用電子機器匡体(複写機、コンピューター、プリンター、テレビ、ビデオデッキ、ビデオカメラなど)、構造部材(パラボラアンテナ構造部材、フラットアンテナ構造部材、レーダードーム構造部材など)などの電気絶縁材料;一般回路基板(硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板など)、高周波回路基板(衛星通信機器用回路基板など)などの回路基板;透明導電性フィルム(液晶基板、光メモリー、面発熱体など)の基材;半導体封止材(トランジスタ封止材、IC封止材、LSI封止材、LED封止材など)、電気・電子部品の封止材(モーター封止材、コンデンサー封止材、スイッチ封止材、センサー封止材など)の封止材;ルームミラーやメーター類のカバーなど自動車用内装材料;ドアミラー、フェンダーミラー、ビーム用レンズ、ライト・カバーなど自動車用外装材料;などが挙げられる。
【0081】
また、本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の用途としては、たとえば、一般回路基板(硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板など)、高周波回路基板(衛星通信機器用回路基板など)などの回路基板;透明導電性フィルム(液晶基板、光メモリー、面発熱体など)の基材;半導体封止材(トランジスタ封止材、IC封止材、LSI封止材、LED封止材など)、電気・電子部品の封止材(モーター封止材、コンデンサー封止材、スイッチ封止材、センサー封止材など)の封止材;ルームミラーやメーター類のカバーなど自動車用内装材料;ドアミラー、フェンダーミラー、ビーム用レンズ、ライト・カバーなど自動車用外装材料;などが挙げられる。
【0082】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、任意の製造方法によりで製造することができる。例えば、特開昭60-168708号公報、特開昭61-120816号公報、特開昭61-115912号公報、特開昭61-115916号公報、特開昭61-271308号公報、特開昭61-272216号公報、特開昭62-252406号公報、特開昭62-252407号公報等の方法に従い適宜条件を選択することにより製造することができる。
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体であって、環状オレフィンの開環重合体であるものは、例えば、特開昭60-26024号公報、特開平9-268250号公報、特開昭63-145324号公報、特開2001-72839号公報等の方法に従い適宜条件を選択することにより製造することができる。
【0083】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体は、好適には下記の製造方法により製造することができる。
【0084】
[環状オレフィン系共重合体の製造方法]
以下、本発明の環状オレフィン系共重合体の製造方法について詳細に説明する。
【0085】
本実施形態にかかる環状オレフィン系共重合体の製造方法は、下記の一般式(1)で示される遷移金属化合物(X)を含有する触媒の存在下において、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の構成単位(B)と、を共重合させる重合工程を備える環状オレフィン系共重合体の製造方法であって、
当該製造方法により得られる環状オレフィン系共重合体は、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)由来の上記構成単位(A)と、環状オレフィン(B´)由来の上記構成単位(B)と、を有する。
【0086】
【0087】
上記一般式(1)において、M1は、周期律表4族の遷移金属原子を示し、X1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、n1は、1~4の整数を示し、Y1は、炭素原子またはケイ素原子を示し、R1~R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示し、R1~R14のうち隣接するもの同士は互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよく、R1~R14のうち2つ以上は、炭素数4以上の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である。
【0088】
本実施形態にかかる製造方法によると、耐熱性に優れた環状オレフィン系共重合体を製造することができる。
耐熱性に優れた環状オレフィン系共重合体を製造することができる詳細なメカニズムは不明であるが、上記の一般式(1)で示される遷移金属化合物(X)を含有する触媒は、置換基R1~R14のうち2つ以上がハロゲン含有基や酸素含有基等のようなヘテロ原子を含有する基や、t-ブチル基のような炭素数4以上の炭化水素基といった、ある程度の嵩高さを有する基であるという特徴を有し、このように嵩高い置換基を複数有することにより、環状オレフィン系共重合体の結晶性に何らかの影響が与えられ、これにより耐熱性が向上するものと推測される。
【0089】
本実施形態にかかる製造方法は、エチレンまたは非環状オレフィン(A´)と、環状オレフィン(B´)とを共重合させる重合工程を備える環状オレフィン系共重合体の製造方法である。
【0090】
本実施形態にかかる製造方法の重合工程においては、エチレンまたは炭素原子数3~20の非環状オレフィン(A´)を用いることが好ましく、エチレンまたは炭素原子数3~10の非環状オレフィン(A´)を用いることがより好ましく、エチレンを用いることがさらに好ましい。
【0091】
本実施形態にかかる製造方法の重合工程においては、好適には20℃以上、より好適には30℃以上で重合反応を行う。温度が上記下限値以上であることにより、重合反応の効率がより向上する。
【0092】
本実施形態にかかる製造方法の重合工程においては、好適には100℃以下、より好適には80℃以下で重合反応を行う。温度が上記上限値以下であることにより、触媒失活や副反応がより抑制される。
【0093】
本実施形態にかかる製造方法の重合工程においては、上記の一般式(1)で示される遷移金属化合物(X)を含有する触媒以外の任意の成分を用いてもよい。たとえば、後述する有機アルミニウムオキシ化合物を助触媒として用いることができる。
【0094】
<遷移金属化合物(X)>
本実施形態にかかる製造方法の重合工程では、下記の一般式(1)で示される遷移金属化合物(X)の存在下で重合反応が行われる。
【0095】
【0096】
上記一般式(1)において、M1は、周期律表4族の遷移金属原子を示す。
M1としては、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子等を例示できる。
【0097】
M1は、チタン原子またはジルコニウム原子であることが好ましく、ジルコニウム原子であることがより好ましい。
【0098】
上記一般式(1)において、X1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示す。
【0099】
X1が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子または臭素原子などを例示できる。
【0100】
X1が示す炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基またはデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボニル基、ビシクロノニル基またはトリシクロデカン基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基またはアントラセニル基等のアリール基;ベンジル基またはフェニルエチル基等のアラルキル基;1,3-ブタジエニル基、イソプレニル(2-メチル-1,3-ブタジエニル)基、ピペリレニル(1,3-ペンタジエニル)基、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基またはシクロペンタジエニル基等のジエン系二価誘導体基;等を例示できる。
【0101】
X1が示すハロゲン含有基としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルまたはノナフルオロ-t-ブチル等のハロゲン含有炭化水素基;ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル等のハロゲン含有アリール基;
等を例示できる。
【0102】
X1が示す酸素含有基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基またはt-ブトキシ基等のアルコシキ基;フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基または2,4,6-トリメチルフェノキシ基等のアリーロキシ基;アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基またはp-クロロフェノキシカルボニル基等のエステル基;エーテル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基またはp-メトキシベンゾイル基等のアシル基;カルボキシル基;カルボナート基;ヒドロキシ基;ペルオキシ基;カルボン酸無水物基;フリル基;
等を例示できる。
【0103】
X1が示す硫黄含有基としては、メルカプト基;アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基またはフェニルチオカルボニル基等のチオエステル基;ジチオエステル基;メチルチオ基またはエチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基またはナフチルチオ基等のアリールチオ基;チオアシル基;チオエーテル基;チオシアン酸エステル基;イソチオシアン酸エステル基;スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基もしくはスルホン酸フェニル基等のスルホン酸エステル基;フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基もしくはN-メチル-p-トルエンスルホンアミド基等のスルホンアミド基;チオカルボキシル基;ジチオカルボキシル基;スルホ基;スルホニル基;スルフィニル基;スルフェニル基;等を例示できる。
【0104】
X1が示す窒素含有基としては、アミノ基;ジメチルアミノ基またはエチルメチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のアリールアミノ基;イミノ基;メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノまたはブチルイミノ基等のアルキルイミノ基;フェニルイミノ基等のアリールイミノ基;アミド基;アセトアミド基またはN-メチルアセトアミド基等のアルキルアミド基;N-メチルベンズアミド基等のアリールアミド基;イミド基;アセトイミド基等のアルキルイミド基;ベンズイミド基等のアリールイミド基;ピロリジノ基;ヒドラジノ基;ヒドラゾノ基;ニトロ基;ニトロソ基;シアノ基;イソシアノ基;シアン酸エステル基;アミジノ基;ジアゾ基;アミノ基がアンモニウム塩となったもの等を例示できる。
また、X1が示す窒素含有基の置換体としては、シリルアミド基またはホスフィノアミド基等を例示できる。
【0105】
X1が示すリン含有基としては、ホスフィド基;ホスホリル基;チオホスホリル基;ホスフェート基等を例示できる。
【0106】
X1が示すケイ素含有基としては、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基またはジメチル-t-ブチルシリル基等のアルキルシリル基;等を例示できる。
【0107】
X1が示すホウ素含有基としては、ボランジイル基;ボラントリイル基;ジボラニル基;等を例示できる。
X1が示すホウ素含有基の置換体としては、(Et)2B-、(iPr)2B-、(iBu)2B-、(Et)3B、(iPr)3Bまたは(iBu)3B等で表されるアルキル基置換ホウ素;(C6H5)2B-、(C6H5)3B、(C6F5)3Bもしくは(3,5-(CF3)2C6H3)3B等で表されるアリール基置換ホウ素;BCl2-またはBCl3等で表されるハロゲン化ホウ素;(Et)BCl-、(iBu)BCl-または(C6H5)2BCl等で表されるアルキル基置換ハロゲン化ホウ素;等を例示できる。
ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0108】
X1が示すアルミニウム含有基の置換体としては、(Et)2Al-、(iPr)2Al-、(iBu)2Al-、(Et)3Al、(iPr)3Alまたは(iBu)3Al等で表されるアルキル基置換アルミニウム;(C6H5)2Al-等で表されるアリール基置換アルミニウム;AlCl2-、またはAlCl3等で表されるハロゲン化アルミニウム;(Et)AlCl-、(iBu)AlCl-等で表されるアルキル基置換ハロゲン化アルミニウム;等を例示できる。
ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0109】
X1が炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である場合、X1の炭素原子数は、それぞれ独立に、1~20であることが好ましい。
【0110】
X1は、それぞれ独立に、ハロゲン原子または炭化水素基であることが好ましく、ハロゲン原子であることがより好ましい。
【0111】
X1がハロゲン原子である場合、X1は、それぞれ独立に、塩素原子であることがより好ましい。
【0112】
n1は、1~4の整数を示す。n1は、M1の価数およびX1の種類に応じて、上記の一般式(1)が示す遷移金属化合物(X)全体が電気的に中性になるように選択される。
【0113】
n1は、2または3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0114】
Y1は、炭素原子またはケイ素原子を示す。
【0115】
Y1は、炭素原子であることが好ましい。
【0116】
R1~R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される原子または基を示す。
【0117】
R1~R14が示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体としては、X1が示すハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基およびアルミニウム含有基、ならびにそれらの置換体として例示したものを例示できる。
【0118】
R1~R14のうち隣接するもの同士は互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は共役二重結合を含む芳香族性を有するものでもよい。
【0119】
好適には、R1~R14のうち隣接するもの同士は、互いに結合して環を形成し、形成される環はシクロペンタジエニル基と結合する。
形成される環がシクロペンタジエニル基と結合した構造の例としては、以下のものが例示できる。
【0120】
【0121】
R1~R14のうち2つ以上は、ハロゲン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基および炭素数4以上の炭化水素基からなる群、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される基である。
【0122】
R1~R14のうち2つ以上は、炭素数4以上の炭化水素基であることが好ましく、t-ブチル基であることがより好ましい。R1~R14のうち2つ以上がこれらの基であることにより、得られる環状オレフィン系共重合体の耐熱性がより向上する。
R1~R14のうち2つ以上がこれらの基であることによって得られる環状オレフィン系共重合体の耐熱性がより向上する詳細なメカニズムは不明であるが、触媒がt-ブチル基のような嵩高い基を複数有することが環状オレフィン系共重合体の結晶性に何らかの影響を与え、これにより耐熱性がより向上すると推測される。
【0123】
<有機アルミニウムオキシ化合物>
本実施形態にかかる製造方法の重合工程では、有機アルミニウムオキシ化合物を助触媒として用いることができる。
【0124】
有機アルミニウムオキシ化合物としては、従来公知の有機アルミニウムオキシ化合物を使用することができる。
具体的には、たとえば、下記式[B2-1]、[B2-2]、[B2-3]および[B2-4]で表わされる化合物、特開平2-78687号公報、特開平2-167305号公報に記載れたベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサン等が挙げられる。
【0125】
【0126】
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0127】
【0128】
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。
【0129】
【0130】
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、Meはメチル基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
【0131】
式[B2-3]で表される化合物は修飾メチルアルミノキサンと呼ばれ、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製されるものである。このような化合物は一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOは、米国特許第4960878号明細書および米国特許第5041584号明細書で挙げられている方法で調製することができる。
【0132】
【0133】
式中、Rcは炭素数1から10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から10の炭化水素基を示す。
【0134】
有機アルミニウムオキシ化合物としては、市販品のために入手が容易なメチルアルミノキサン、およびトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製したMMAOが好ましい。
【0135】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0136】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0137】
[実施例1]
充分に窒素置換した500mlのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン300mLと2-ノルボルネン11.9gを装入し、エチレンガスを6L/時間、窒素ガスを96L/時間の流量で流通させ、600rpmで攪拌しながら50℃に昇温し、昇温後10分間保持した。
続いて、触媒1(ジメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド)およびメチルアルミノキサンをそれぞれ0.03mmоl装入し、重合を開始させた。50℃で30分間、常圧下で重合させた後、過剰量のイソプロパノールを加え、重合を停止させ、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を過剰量のメタノール/アセトン混合溶媒(混合比率1/4(体積比))に加え、ポリマーを折出させた。析出させたポリマーを取出し、130℃で一晩減圧乾燥し、エチレンと2-ノルボルネンの共重合体0.20gを得た。
【0138】
実施例1で用いた触媒1は、下記一般式(1)で表される構造を有する触媒である。触媒1の構造を下記一般式(1)に当て嵌めると、M1はジルコニウム原子であり、X1は塩素原子であり、n1は2であり、Y1は炭素原子であり、R1、R2、R4、R5、R6、R8、R9、R11およびR12は水素原子であり、R3、R7およびR10はt-Bu基であり、R13およびR14はメチル基である。
【0139】
【0140】
[実施例2]
充分に窒素置換した500mlのガラス製オートクレーブにトルエン300mLと2-ノルボルネン33.2gを装入し、エチレンガスを24L/時間、窒素ガスを72L/時間の流量で流通させ、600rpmで攪拌しながら50℃に昇温し、昇温後10分間保持した。
続いて、触媒1およびメチルアルミノキサンをそれぞれ0.03mmоl装入し、重合を開始させた。50℃で30分間、常圧下で重合させた後、過剰量のイソプロパノールを加え、重合を停止させ、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を過剰量のメタノール/アセトン混合溶媒(混合比率1/4(体積比))に加え、ポリマーを折出させた。析出させたポリマーを取出し、130℃で一晩減圧乾燥し、エチレンと2-ノルボルネンの共重合体0.74gを得た。
【0141】
[実施例3]
溶媒をトルエン300mL、2-ノルボルネン装入量を15.8gに変更した以外は実施例1と同様にして、エチレンと2-ノルボルネンの共重合体0.23gを得た。
【0142】
[実施例4]
2-ノルボルネン装入量を21.9gに変更した以外は実施例2と同様にして、エチレンと2-ノルボルネンの共重合体1.29gを得た。
【0143】
[比較例1]
充分に窒素置換した500mlのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン300mLと2-ノルボルネン33.2gを装入し、エチレンガスを51L/時間、窒素ガスを2L/時間で流通させ、600rpmで攪拌しながら50℃に昇温し、昇温後10分間保持した。
続いて、触媒2(ジメチルメチレンビスインデニルジルコニウムジクロリド)およびメチルアルミノキサンをそれぞれ0.01mmol装入し、重合を開始させた。50℃で10分間、常圧下で重合させた後、過剰量のイソプロパノールを加え、重合を停止させ、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を過剰量のメタノール/アセトン混合溶媒(混合比率1/4(体積比))に加え、ポリマーを折出させた。析出させたポリマーを取出し、130℃で一晩減圧乾燥し、エチレンと2-ノルボルネンの共重合体0.21gを得た。
【0144】
実施例1および2、ならびに比較例1について、各種物性を下記の方法によって評価した。得られた結果を表1に示す。なお、表中「N.D.」は測定値を検出できなかったことを示す。
【0145】
[熱分析]
得られた環状オレフィン系共重合体を、下記の手順により熱分析に供した。
(1)示差走査熱量計(TA Instrument社製、Discovery DSC2500)を用い、窒素雰囲気下にて、環状オレフィン系共重合体を常温から10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。
(2)400℃で5分間保持した。
(3)10℃/分の降温速度で-20℃まで降温した。
(4)-20℃で5分間保持した。
(5)10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。
【0146】
上記の手順により行われた熱分析の第2回目の昇温工程において得られるDSC曲線で観測された吸熱ピークを融解ピークとした。当該融解ピークの頂点の温度を融点とし、当該融解ピークの面積から熱量を求め、これを融解熱量とした。得られた結果を表1に示す。
【0147】
上記の手順により行われた熱分析の第1回目の降温工程において得られるDSC曲線で観測された発熱ピークを結晶化ピークとした。当該結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とし、当該発熱ピークの面積から熱量を求め、これを結晶化熱量とした。得られた結果を表1に示す。
【0148】
上記の手順により行われた熱分析の第2回目の昇温工程において、DSC曲線の低温側のベースラインと高温側のベースラインとをそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をTgとした。得られた結果を表1に示す。
【0149】
上記の手順により行われた熱分析の第2回目の昇温工程で観測された融解ピークにおける融解開始温度と融解終了温度の差を融解ピーク幅とした。得られた結果を表1に示す。
【0150】
実施例1の環状オレフィン共重合体を上記の手順により熱分析することで得られたDSC曲線を
図1に示す。
【0151】
[耐熱性]
得られた環状オレフィン系共重合体を350℃10分間の加熱溶融により30mm×30mm、厚さ1mmのシート状に成形しシート片を得た。
得られたシート片を260℃のオーブン内で10分間静置し、以下の基準に従って形状変化を評価した。得られた結果を表1に示す。視認できる形状変化が生じないものは耐熱性に優れるといえる。
<評価基準>
〇(良):視認できる形状変化なし
×(悪):視認できる形状変化あり
【0152】
[構成単位(A)および(B)の含有量]
得られた環状オレフィン系共重合体の13C-NMRスペクトルを、ブルカー・バイオスピン製のAVANCE III cryo-500型核磁気共鳴装置を用い、下記条件により測定することにより、構成単位(A)および(B)の含有量を求めた。得られた結果を表1に示す。
溶媒:重オルトジクロロベンゼン
サンプル濃度:50~100g/l-solvent
パルス繰り返し時間:5.5秒
積算回数:6000~16000回
測定温度:120℃
【0153】
【0154】
表1に示す通り、実施例1~4の環状オレフィン系共重合体では融解ピークおよび結晶化ピークが観測された。このことから本発明の実施形態にかかる実施例1および2の環状オレフィン系共重合体では熱分析中に結晶の融解と再結晶化が起こったことがわかる。
一方、比較例1の環状オレフィン系共重合体では融解ピークおよび結晶化ピークが観測されなかった。このことから比較例1の環状オレフィン系共重合体では熱分析中に結晶の融解と再結晶化が起こらなかったことがわかる。
【0155】
表1に示す通り、実施例1~4の環状オレフィン系共重合体は耐熱性に優れていた。