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特開2023-79214植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079214
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230531BHJP
   E03F 5/04 20060101ALI20230531BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
A01G7/00 602B
E03F5/04 A
E03F1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188582
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021192225
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021193584
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520191525
【氏名又は名称】合同会社杜の学校
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智徳
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA13
2D063CA02
2D063CA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】土壌通気浸透排水施工システムを設置地盤環境に施した植栽通気浸透水脈システムを提供する。
【解決手段】少なくともコンクリート構造物を利用し、水や空気の流通路の確保をした植栽通気浸透水脈システムであって、前記植栽通気浸透水脈システムSの対象領域に形成されたコンクリート構造物と、前記コンクリート構造物の近傍に形成された少なくとも一部にしがらみ構造を備えた植栽土木と、前記コンクリート構造物の少なくとも地面側に位置する部位の一部に形成された、水や空気を地中に導く導通部と、前記コンクリート構造物の一部又は近傍に、前記導通部と異なる水や空気の通路であって、前記コンクリート構造物以外の部分と連通させて形成された水や空気が流動可能な長尺溝部と、前記導通部と前記溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路と、を備え、水流や空気流の流れを確保した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコンクリート構造物を利用し、水や空気の流通路の確保をした植栽通気浸透水脈システムであって、
前記植栽通気浸透水脈システムの対象領域に形成されたコンクリート構造物と、
前記コンクリート構造物の近傍に形成された少なくとも一部にしがらみ構造を備えた植栽土木と、
前記コンクリート構造物の少なくとも地面側に位置する部位の一部に形成された、水や空気を地中に導く導通部と、
前記コンクリート構造物の一部又は近傍に、前記導通部と異なる水や空気の通路であって、前記コンクリート構造物以外の部分と連通させて形成された水や空気が流動可能な長尺溝部と、
前記導通部と前記溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路と、を備え、水流や空気流の流れを循環型に確保したことを特徴とする植栽通気浸透水脈システム。
【請求項2】
前記コンクリート構造物の近傍に形成されたにしがらみ構造を備えた植栽土木は、前記導通部と前記長尺溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路に沿って、一定の間隔で形成されていることを特徴とするにしがらみ構造を備えた特徴とする請求項1に記載の植栽通気浸透水脈システム。
【請求項3】
前記長尺溝部にはしがらみ構造が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽通気浸透水脈システム。
【請求項4】
少なくともコンクリート構造物を利用し、水や空気の流通路の確保をした植栽通気浸透水脈システムの施工方法であって、
前記植栽通気浸透水脈システムの対象領域にコンクリート構造物を形成するコンクリート構造物形成工程と、
前記コンクリート構造物の近傍に植栽土木を形成する植栽土木形成工程と、
前記コンクリート構造物の少なくとも地面側に位置する部位の一部に、水や空気を地中に導く導通部を形成する導通部形成工程と、
前記コンクリート構造物の一部又は近傍に、前記導通部と異なる水や空気の通路であって、前記コンクリート構造物以外の部分と連通する水や空気が流動可能な長尺溝部を形成する溝部形成工程と、
水や空気が流動可能に導通部形成工程及び溝部形成工程で形成された前記導通部と前記長尺溝部とを接続させる接続工程と、
を備えたことを特徴とする植栽通気浸透水脈システムの施工方法。
【請求項5】
前記植栽土木形成工程は、前記導通部と前記長尺溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路に沿って、一定の間隔で施工されていることを特徴とする請求項4に記載の植栽通気浸透水脈システムの施工方法。
【請求項6】
前記溝部形成工程にはしがらみ構造形成工程が含まれていることを特徴とする請求項4又は5に記載の植栽通気浸透水脈システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法に係り、植栽土木とコンクリート土木の改善により、土壌内の空気の流れ及び水の流れを向上させ、システム対象領域(又はシステム対象流域)の流域全体の機能を改善し、植物の繁茂環境を改善した植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が既に提案した発明等においては、大地における通気浸透排水システム及び通気浸透排水システムの施工方法の発明が主軸(対象)であり、対象領域の土地等において地盤改良等に極めて有用な技術を提案してきた(特開2021-185916)。
しかし、既に提案した発明等では、十分に説明しきれていない建築分野、植物分野(造園、緑化、農業、森林等々植物に関連する技術分野)を、もう一歩踏み込んで、具体的に植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法として提案したのが、本発明である。
【0003】
換言すれば、大地全般を対象とした土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法(特開2021-185916)に対して対象を建設エリア、植物を扱うエリアにまで拡大できる技術としたものである。
自然生態系の多様性機能をある程度実用的範疇において特定化するためには、必然的に、人間に与えられた複数の五感を同時に、相乗的に活用し、五感観察、五感測定、五感科学といった状態を特定し実用化することが出来れば、自然を対象とする日常的事象(例えば、災害、コロナ、異常気象)に対応可能であり、これら自然を対象とする日常的事象に対処するときに、前記自然現象は、リスクとして避けられない現状となっている。
【0004】
つまり既に提案した土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法(特開2021-185916)は、既存構造物や新設構造物と、周辺環境の安息状態が保たれ、結果として、空気と水の流形、流質、流圧が安息状態の範囲に収まるようにすることが可能となるよう期待し、対象とする任意の大地とその中に組み込む材料とのシガラミ構造(相対的)とその間隙(隙間)を動く(対流する)空気と水の安息状態へ向けての脈としての調整施工であったものである。
これに対して、本発明は、人間が構築した構造物と自然そのものである大地とのシガラミ構造の調整施工であり、また植栽(植物)と、その植栽の生育した大地とのシガラミ構造の調整施工である。
【0005】
一般に、自然状態として、人間が、手をつける(人口的に生成する)以前には、地上と地下の大気と大地が接する生物が生息していたもので、この2つの空間(場)における境界エリアの空気と水と熱の対流機能が一定の等加速度的(相対的等加速度)運動を保っていた状態(これを安息状態と表現する)が、現代土木の視点と技術によって、損なわれたもので、これらの損なわれた状態を、安息状態に再生しようとするものである。以下、これを具体的に説明する。
【0006】
従来から土木工事にコンクリートブロックを用いた技術が知られている。例えば、断面U字状のコンクリートブロックを長尺溝に沿って多数連続して配置し、このU字溝を導水U字溝として用いる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1では、特に、コンクリート水路網に着目し、その形、質、重さ(加重圧)の改善について、排水効率に優れた導水U字溝ブロック、及び既設のU字溝を導水U字溝に改修する。
例えば、側壁上部に、水平段部とその外側に立設した垂直壁からなる蓋受部を有するU字溝において、垂直壁に切欠部を設け、その切欠部に、略直方体形状をなし表裏に貫通する複数のスリット孔を有するコンクリートで形成した導水体は、接着剤を介して装着する。導水体は既設のU字溝に装着することもできる。
導水体はコンクリートで形成するから、強度を十分なものとすることができ、スリット孔を多数設けて十分な開口面積とし、排水効率を高くできる。導水体はU字溝本体と別体で製造するので、容易に製造することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2004-225385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のような、コンクリート構造物の問題点(課題)は、相対的等速・等圧を生み出すような材形、材質、材圧、地形、地質、地圧等において不都合がある。
【0010】
一般的に現在行われている人工開発は、自然地形を造成し、やわらかかった地面から、直線形状の地形に切り出して、安定剤(砕石、砂利、砂等)を投入、敷き込んで、重機転圧をかけた所に、さらにコンクリート、鉄筋、鉄骨等の重量構造物を設置するという土地開発がなされている。
【0011】
しかしながら、この開発手法では、大気中から土中に、空気や雨水が植物腐葉土層を通して、円滑に浸透し、土中に水脈を形成しつつ、最終的に地下水脈や河川水脈へと湧き出す機構が循環型に保たれていた状況(良好な状況)を、上記のような開発が伴うと、たちどころに周辺土壌は通気・通水機能が低下し、大地における表層土壌層が層をなしてこの循環が停滞し、大地の安定機能、生物の呼吸環境、気象の地上と地下の安定した対流循環を損なう状態となってしまう。
このような状態が全国の至る所で顕著に確保できるようになってきた(ここでは、上記の自然状態下における地上と地下の空気と水の気象環境の安定した循環状態を安息状態と呼ぶことにする)。
【0012】
本発明者は、上記安息状態が保たれるように土木技術の改善として、「土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法」(特開2021-185916)を提案するに至った。そして、これに加え、これまで既存コンクリート構造物及び現代土木の総合分野において、根本的な土木視点の改善提案をして、本発明である植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法を成し遂げた。
【0013】
つまり、既存コンクリート構造物ほか、地上地盤面に対して重加重をかけている構造物及びこれに類する地形造成開発地盤において、上記開発以前の相対的な安息状態環境が補償されるように構成したものである。
【0014】
本発明の目的は、コンクリート構造物及びこの周辺環境において安息状態を低下させる(衰退)構造物の形、質、重さ(重量)(性質を生み出す三要素→圧が決まる)の相対的改善を行うことにある。そして、上記改善に伴い、地盤面である大地の相対的安息状態を保つために、既に提案した土壌通気浸透排水施工システム及び土壌通気浸透排水施工方法を設置地盤環境に施した「植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法」を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、請求項1の植栽通気浸透水脈システムによれば、前記植栽通気浸透水脈システムの対象領域に形成されたコンクリート構造物と、前記コンクリート構造物の近傍に形成された少なくとも一部にしがらみ構造を備えた植栽土木と、前記コンクリート構造物の少なくとも地面側に位置する部位の一部に形成された、水や空気を地中に導く導通部と、前記コンクリート構造物の一部又は近傍に、前記導通部と異なる水や空気の通路であって、前記コンクリート構造物以外の部分と連通させて形成された水や空気が流動可能な長尺溝部と、前記導通部と前記溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路と、を備え、水流や空気流の流れを循環型(持続的)に確保したこと、によって解決される。
【0016】
このとき、前記コンクリート構造物の近傍に形成されたにしがらみ構造を備えた植栽土木は、前記導通部と前記長尺溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路に沿って、一定の間隔で形成されていると好適である。
【0017】
前記長尺溝部にはしがらみ構造が形成されていると好適である。
【0018】
前記課題は、請求項4の植栽通気浸透水脈システムの施工方法によれば、少なくともコンクリート構造物を利用し、水や空気の流通路の確保をした植栽通気浸透水脈システムの施工方法であって、前記植栽通気浸透水脈システムの対象領域にコンクリート構造物を形成するコンクリート構造物形成工程と、前記コンクリート構造物の近傍に植栽土木を形成する植栽土木形成工程と、前記コンクリート構造物の少なくとも地面側に位置する部位の一部に、水や空気を地中に導く導通部を形成する導通部形成工程と、前記コンクリート構造物の一部又は近傍に、前記導通部と異なる水や空気の通路であって、前記コンクリート構造物以外の部分と連通する水や空気が流動可能な長尺溝部を形成する溝部形成工程と、水や空気が流動可能に導通部形成工程及び溝部形成工程で形成された前記導通部と前記長尺溝部とを接続させる接続工程と、を備えた5つの工程、により解決される。
【0019】
前記植栽土木形成工程は、前記導通部と前記長尺溝部とを接続させて水や空気が流動可能に形成された通路に沿って、一定の間隔で施工されていると好適である。
【0020】
このとき、前記溝部形成工程にはしがらみ構造形成工程が含まれていると好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法によれば、上記2つの土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法により、既存構造物や新設構造物と、周辺環境の安息状態が保たれ、結果として、空気と水の流形、流質、流圧が安息状態の範囲に収まるようにすることが可能となる。
このことによって、人の施工が自然生態系の(1)大地と(2)生物と(3)気象の全体的連鎖機能を再生させ、相乗的な桁違いのエネルギーを取り込んだ改善が見込めることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一般的なコンクリート擁壁の施工例の説明図である。
図2図1の概略断面である。
図3】コンクリート構造物として、建築のコンクリート基礎施工例の説明図である。
図4図3で示すコンクリート基礎の平面図及びX-Xによる概略断面図である。
図5】一般的な砂防堰堤と、本発明による改良施工された砂防堰堤を示すものである。
図6】砂防堰堤の近傍に形成された植栽土木と、発明によって改良施工された植栽土木を説明する説明図である
図7図6の概略断面及び平面を示す説明図である。
図8】S字流路の水及び空気の流れの模式図である。
図9】一般的なコンクリート構造物としてU字溝と、本発明によって改良施工された例の説明図である。
図10図9で示すU字溝の作用を矢印で示した説明図である。
図11】コンクリート水路ジョイント部分(入)の流れを説明する説明図である。
図12】コンクリート水路ジョイント部分の流れを説明する説明図である。
図13】コンクリート水路ジョイント部分(出)の流れを説明する説明図である。
図14】コンクリート水路ジョイント部分(出)の流れの作用を矢印で説明する説明図である。
図15】コンクリートブロックによる土留めブロックと、本発明によって改良施工された例の説明図である。
図16図15の改良施工された土留めブロックの作用を説明する模式図である。
図17】本発明に係る中空部材である雨水浸透枡を説明する模式的断面である。
図18】(a)、(b)は中空部材とコルゲート管を流れる流体の関係を説明する模式的断面である
図19図17のWの位置を説明する概略拡大図である。
図20】(a)~(f)は、中空部材、グレーチング蓋等の構成を担う部材の一例を示す概略平面図である。
図21】(a)、(b)は、長尺溝に配置される長尺中空部材(中空コルゲート管)の一例を示す説明図である。
図22】立穴に配置される中空部材の概略を示し、(a)は単体、(b)は立穴及び長尺溝に配置される中空部材の連結を説明する概略斜視図である。
図23】土壌通気浸透排水施工における立穴及び長尺溝を示す説明図である。
図24】立穴及び長尺溝に敷砂などを敷き、中空部材を配置するときの説明図である。
図25】立穴及び長尺溝に中空部材を配置し、グレーチング蓋を配置するときの説明図である。
図26】長尺中空部材を長尺溝に配置して固定するときの状態の説明図である。
図27】充填材配置工程の後に、泥侵入防止材を配置し、グレーチング蓋を配置した状態を示す説明図である。
図28】泥侵入防止材配置工程の説明図である。
図29図28の埋戻し工程の説明図である。
図30図29の土壌形成工程の説明図である。
図31】(a)、(b)は中空部材を長尺溝から地表に出した状態の説明図である。
図32】植栽土木を施した土壌通気浸透排水システム施工の概略部分断面図である。
図33】立穴に単体で中空部材を配置した状態の概略断面説明図である。
図34図33の埋戻し工程の説明図である。
図35図33の土壌形成工程の説明図である。
図36】土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図である。
図37】土壌通気浸透排水システムを適用した一例の概略断面説明図である。
図38図33図35で示す土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図である。
図39図33図35で示す土壌通気浸透排水システムを適用した他の例を示す説明図である。
図40】点穴におけるしがらみ構造の施工を説明する説明図である。
図41】長尺溝にコルゲート管を施工するときの説明図である。
図42】長尺溝を掘削して施工する説明図である。
図43】長尺溝にしがらみ構造を形成するときの枝等の配置状態の説明図である。
図44】空気や水の流れを規制する状態の説明図である。
図45】(a)~(f)は長尺溝にコルゲート管、しがらみ構造の施工説明図である。
図46】施工対象領域における土壌通気浸透排水施工の一部の説明図である。
図47】(a)~(c)は、本発明の植栽土木の一例を示す模式図的説明図である。
図48】(a)~(g)は、地面の表層層の施工を説明する説明図である。
図49】(a)~(f)は、水の流れにおける植栽土木と石等の構造物との施工状態の説明図である。
図50】(a)~(c)は、水流と、しがらみ構造の形成による流れの変化を示す説明図である。
図51】(a)~(e)は、既存水流に対して柵(しがらみ)構造構築及び植栽土木により流の変化があることを示す模式図である。
図52】井戸に関する内容を説明する図である。
図53】井戸に関する内容を説明する図である。
図54】井戸に関する内容を説明する図である。
図55】井戸に関する内容を説明する図である。
図56】井戸に関する内容を説明する図である。
図57】井戸に関する内容を説明する図である。
図58】井戸に関する内容を説明する図である。
図59】井戸に関する内容を説明する図である。
図60】井戸に関する内容を説明する図である。
図61】井戸に関する内容を説明する図である。
図62】井戸に関する内容を説明する図である。
図63】井戸に関する内容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図は本発明を示すものである。
図1及び図2は、コンクリート構造物である一般的なコンクリート擁壁の施工例を示す説明図であり、図1は一般的なコンクリート擁壁の施工例の説明図、図2図1の概略断面、図3はコンクリート構造物として、建築のコンクリート基礎施工例の説明図、図4図3で示すコンクリート基礎の平面図及びX-Xによる概略断面図、図5は一般的な砂防堰堤と、本発明によって改良施工された砂防堰堤の説明図、図6は砂防堰堤の近傍に形成された植栽土木と、発明によって改良施工された植栽土木を説明する説明図、図7図6の概略断面及び平面を示す説明図、図8はS字流路の水及び空気の流れの模式図、図9は一般的なコンクリート構造物としてU字溝と、本発明によって改良施工された例の説明図、図10図9で示すU字溝の作用図、図11はコンクリート水路ジョイント部分(入)の流れを説明する説明図、図12はコンクリート水路ジョイント部分の流れを説明する説明図、図13はコンクリート水路ジョイント部分(出)の流れを説明する説明図、図14は本発明に係る中空部材である雨水浸透枡を説明する模式的断面、図15はコンクリートブロックによる土留めブロック及び本発明によって改良施工された例の説明図、図16図15の改良施工された土留めブロックの作用を説明する模式図、図17は中空部材である雨水浸透枡を説明する模式的断面、図18は(a)、(b)は中空部材とコルゲート管を流れる流体の関係を説明する模式的断面、図19図17のWの位置を説明する概略拡大図、図20の(a)~(f)は、中空部材、グレーチング蓋等の構成を担う部材の一例を示す概略平面図、図21の(a)、(b)は、長尺溝に配置される長尺中空部材(中空コルゲート管)の一例を示す説明図、図22は立穴に配置される中空部材の概略で、(a)は単体、(b)は立穴及び長尺溝に配置される中空部材の連結を説明する概略斜視図、図23は土壌通気浸透排水施工における立穴及び長尺溝を示す説明図、図24は立穴及び長尺溝に敷砂などを敷き、中空部材を配置するときの説明図、図25は立穴及び長尺溝に中空部材を配置し、グレーチング蓋を配置するときの説明図、図26は長尺中空部材を長尺溝に配置して固定するときの状態の説明図、図27は充填材配置工程の後に、泥侵入防止材を配置し、グレーチング蓋を配置した状態を示す説明図、図28は泥侵入防止材配置工程の説明図、図29図28の埋戻し工程の説明図、図30図29の埋戻し工程の後で、土壌形成工程した説明図、図31の(a)、(b)は中空部材を長尺溝から地表に出した状態の説明図、図32は植栽土木を施した土壌通気浸透排水システム施工の概略部分断面図、図33は立穴に単体で中空部材を配置した状態の概略断面説明図、図34図33の埋戻し工程の説明図、図35図33の土壌形成工程の説明図、図36は土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図、図37は土壌通気浸透排水システムを適用した一例の概略断面説明図、図38図33図35で示す土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図、図39図33図35で示す土壌通気浸透排水システムを適用した他例を示す説明図、図40は点穴におけるしがらみ構造の施工を説明する説明図、図41は長尺溝にコルゲート管を施工するときの説明図、図42は長尺溝を掘削して施工する説明図、図43は長尺溝にしがらみ構造を形成するときの枝等の配置状態の説明図、図44は空気や水の流れを規制する状態の説明図、図45の(a)~(f)は長尺溝にコルゲート管、しがらみ構造の施工説明図、図46は施工対象領域における土壌通気浸透排水施工の一部の説明図、図47の(a)~(c)は、本発明の植栽土木の一例を示す模式図的説明図、図48の(a)~(g)は、地面の表層層の施工を説明する説明図、図49の(a)~(f)は、水の流れにおける植栽土木と石等の構造物との施工状態の説明図、図50の(a)~(c)は、水流と、しがらみ構造の形成による流れの変化を示す説明図、図51の(a)~(e)は、既存水流に対して柵(しがらみ)構造構築及び植栽土木により流の変化があることを示す模式図である。なお、図52図63は、井戸に関する内容を説明するものである。
【0024】
図1及び図2は、コンクリート構造物である一般的なコンクリート擁壁において植栽通気浸透水脈システムSとした例を示すものであり、コンクリート構造物は既設のものや、新しく構築するものであってもよい。
そして、正確に石積みパターン101と既知の水抜き102により施工されたコンクリート擁壁KYに本発明に係る施工方法の一部を適用した例である。コンクリート擁壁KYと土GG等の堺に、V字カット(はつり)の溝103を、らせん状蛇行曲線に形成し、コンクリート擁壁KYの壁面の所定位置(ランダムな間隔)にコア抜き104を複数配置する。
【0025】
そしてコンクリート擁壁KYの下部に、コンクリート擁壁KYに沿って、溝を堀り、長溝105を造る。また上記長溝105の中には、所定位置(ランダムな距離間隔)に、点穴106、必要に応じて、地形の強度によっては、木組み、石組み、盛土工法を要する(その場の安息状態を保つために)。木杭107や、コンクリート擁壁KYの上部で土G側に、横溝109を形成し、点穴106と接続するように形成する。また上述のV字カット(はつり)の溝103と横溝109は接続され、コンクリート擁壁KYより上部側の土G等に含まれる水流を横溝109、V字カット(はつり)の溝103を介して、コンクリート擁壁KYから落下させ、上記長溝105に集積させる。そして長溝105に形成した点穴106等で、空気、水流を大地中へ循環させる。これらは、既知の既製品で形成したものを用いてもよい。また点穴106は、以下の実施例においても同一符号を付して、その説明を省略する。
【0026】
なお、これら横溝109と点穴106等については、既に本発明者が発明し、出願したものを用いることができる。図2図1の概略断面を示すものである。図1で示すような施工をすることにより、大地中において、図2の矢印で示すような空気と水の対流(多様な動き)が生じるようになる。
【0027】
図3は、コンクリート構造物として、建築構造物のコンクリート基礎の施工例を示すもので、図3の上の図で示すように、通常施工されるコンクリートを打設した住宅等のベタ基礎BKの場合、一般には、既存の配線・配管穴110等を形成している。これを図3の下の図のように、既存の配線・配管穴110等の他に、少なくともコンクリート等で区切られた底面(地面)112の部分、つまり、ベタ基礎BKの底面(地面)112側に位置する部位(底面の所定位置)の一部に、空気や水を地中に導く導通部113をコア抜き111によって形成する。
【0028】
図4の上の図はコンクリート基礎の平面図であり、下の図は図4の上のX-Xによる概略断面図である。
図4の上の図は住宅等のベタ基礎BK(断面図)であり、コア抜き111で形成された導通部103、点穴106、水及び空気の流れの向きが矢印で示され、図4の下の図では、コア抜き111、点穴106-点穴106の高低差によって、水及び空気の対流が促される。そして、矢印で示すように、外部へ向かって通気・浸透排水が行われる。
【0029】
また、コンクリート構造物(ベタ基礎BK)により構成される側面114の部位(基礎の外周)の一部には、空気、水分等が外部と連通する部分(導通部)115として、不図示のコア抜きによって形成されている。ここでは、側面の部位の高い位置と低い位置に導通部115を形成し、この導通部115を形成することにより空気と水の対流(多様な動き)を確保する(対流促進)。さらに、ベタ基礎BKの外周の所定位置には点穴106(必要に応じて点穴106と接続した横溝)が形成されている。
【0030】
図5の上の図は一般的な砂防堰堤SE(土石流など上流から流れ出る有害な土砂を受け止め、貯まった土砂を少しずつ流すことにより下流に流れる土砂の量を調節する施設)を示し、下の図は、上の図の改善施工した実施例を示すものである。本体130の中央部の上端には所定幅の水通し131が形成されているが、本実施例では、本体130の水通し131の中央に断面がV字カットとなる通路132が形成されている。全体の脈の形状(地形)は、らせん状蛇行が基本形となる。
【0031】
また本体130より上流の所定位置には点穴106が施工され、水路133が植栽土木、改修されて砂防堰堤SEの本体130に向けて、泥砂を利用したS字蛇行になるように施工されている。水路133が植栽土木、泥砂を利用したS字蛇行となる施工は、砂防堰堤SEの本体130から下流側にも形成するように施工されている。なお符号134は水抜き、符号135は水叩きである。
【0032】
図6は、図5の下の図における砂防堰堤SEの上流側に多くの植栽土木SDを行った状態の説明図である。ここではS字蛇行に改修施工した水路133、この水路133に沿って植栽土木SDが施工されている。図中、符号132はV字カットの通路、符号106は点穴である。
【0033】
図7は砂防堰堤SEにおける空気及び水流の作用を矢印で示した断面及び平面の説明図である。この矢印は、水流や空気流の循環作用による例を示している。
図7中、上の断面は、V字カットの通路132が示され、満水時は本体(躰体)130の上端のV字カット132から水が流出するようになっている。本体(躰体)130の上流側及び下流側の所定位置には、点穴106が形成され、砂防堰堤SEの本体(躰体)130の下流側には、植栽木136が植えられ、木杭(根杭)137や石等138などが配設される。また地下水の上昇、土砂、石、流木、植栽、木杭(捨コン等の進行資材も含めて)によって、水脈地形のしがらみ構造にならった水脈と点穴地形がらせん状蛇行曲線(S字蛇行)となるように造成している。
【0034】
これにより、空気と水の対流が促され、水流の詰まりや空気流の流れを阻止する箇所がだんだん解消されてゆく。そして、流れの流系が上下、左右に蛇行することで流圧を等圧化することが可能となる。図7中、下の図(平面図)は、土砂、石、流木等と木杭、シガラミ構造の植栽で点穴(流れの深み)を形成している。なお、図8は、S字状(らせん状蛇行曲線)の水路133の空気の流れのイメージ図である。
【0035】
図9は一般的なコンクリート構造物としてU字溝200を示すものであり、上の図はU字溝200の竪壁によって、矢印で示すように、U字溝200の両側から空気と水の遮断停滞が生じ、U字溝200自体の重量などからU字溝200自体のコンクリート圧による締めつけが生じた状態となっていることの説明図である。
ここでは、周囲の土壌における水、空気の循環が阻害されていることを示しており、この状態のU字溝200は、下の図で示すような施工により、改良することができる。
【0036】
すなわち、U字溝200の下部の地面側に位置する部位の一部に、地中に導く導通部201がコア抜き(図示せず)によって形成されている。土壌に滞留する水をU字溝200へと導くため、U字溝200の配置位置の上部側方から断面V字カットの横溝である通路202を形成している。またU字溝200の両側の土の所定位置に点穴106を所定間隔で形成し、この各点穴106の施工処理を通して、地面の層の土壌粒子の間隙に、空気と水の対流が促されるように施工している。
【0037】
図10図9の空気或いは水の流れの作用を断面と平面で、矢印を用いて説明したものである。この図の矢印で示すように、空気流及び水流は、周囲の土壌と一体となり、循環するように構成でき、従来のように、空気流及び水流をU字溝200による規制によらず、循環させて、より自然の力によって、自然の体系維持が可能なように施工することができる。
【0038】
図11は、U字溝200と水路又はコンクリート水路210のジョイント部分:接続部分(入)の流れを説明する説明図、盛土や石、自然の堆積物などが形成され、流方向に対して、直線的ではなく、点穴106(或いは深み)から渦を巻くようにオーバーフローし、U字溝200へ向けた水の流れを自然状態に保つように施工している。水の流れが緩い時は、点穴106はコンクリート水路210の近くに1つでよい。
【0039】
図12図11で示すU字溝200とコンクリート水路210のジョイント部分:接続部分(入)の流れを模式的に説明する説明図である。図12で示すように、水流の底の部分には窪地203(或いは点穴106)が形成され、これら窪地203(或いは点穴106)では、水底の水流が渦を形成しながら流れ、水面側の水流がU字溝200に流れ入ることになる。
【0040】
図13及び図14はコンクリート水路200のジョイント部分:接続部分(出)の流れを説明する説明図であり、矢印は、水流の動作を示している。窪地203(或いは点穴106)、盛土205、植栽や石等206によって、水の流れのリズムが変化し、水の流れのリズムが変化し、上流にも下流にも、このリズムが流動となって伝導する。川中に流れの流圧に添って点穴地形を造成し、植栽、石、木杭等で地形の安定処理を施す。ここでは、自然にできる堆積物も含む。この結果、流れの流力が軽減し流形が蛇行し、流れの質と流圧が安定する。
【0041】
図15はコンクリートブロック301による土留めブロック300及び本発明によって改良施工された例の説明図であり、図15の下の図のように、一般には、複数のコンクリートブロック301を並べて土留めブロック300として施工されている。図15の上の図で示すような土留めブロック300を整列させずに、土留めされたラインを壊し、斜面変換線ラインの締めつけを緩めて、通気・浸透排水を促すことで、みるみる斜面土壌相内の循環が連鎖し生態系循環が、回復してくるものである。
図16図15の上の図のように改良施工された土留めブロック300の作用を説明する模式図であり、図16上の図は断面の説明図、図16下の図は平面の説明図である。流力に応じて木杭留め・捨コン留め等の安定処理を施したものである。
【0042】
ここで、植栽土木について説明する。
一般に、植栽工は草や木を植える工事のことであり、植栽工により、水脈の保全循環機能システムとして植栽工が活用されれば自然の生態系における水脈保全循環機能システムとしての植生機能の応用が、より実用化される。
例えばビルにおける温度、排水、空調の問題を含めた気象の問題について、通気浸透排水と植栽土木として絡めると、天然の生態系の水脈の保全循環機能システムの応用が新たな自然エネルギーとしての活用に実用化される。
【0043】
植栽土木の目的は、水脈の循環機能を達成することである。
つまり、対象領域における形(地形)について、水脈地形となるように植栽土木を行うことで、次に述べるような機能を備える。ここで、水脈地形とは、地下に滞留する水脈で、大地に雨等で降り注いだ水はやがて地下へと浸透し、地下水脈に至るが、このとき土壌の土質である団粒構造である土の間に存在する水、土圧(土の重み)で耐圧安定補強が行われる。ここでは、柵構造となり、:安息状態(自然状態で地上と地下の空気と水の対流が場の相違を問わず一定比率で循環する状態)を保つ機能であり、通気・通水機能、保水・保気機能、耐圧 安定機能、泥こし機能を備えている。
【0044】
以上は、理に適っており、大地の組成比率である、生物環境における表層大地の組成比率である土と石と木のバランス調整にも貢献することになる。
建築土木業界に生きた植物を利用するだけではなくて、大地の組成バランスとして絶対的に必要な大地の組成バランス機能の再生にも貢献することになる。
一般に、人間が建築土木で行っている構造物による空間づくりは、大地の組成バランスを絶対的に崩しており、この状態の進行は、現代の地球規模の深刻な環境問題を内蔵する問題でありこれを改善することにも貢献する。
【0045】
人間は人工素材を使って工事・施工を行っているが、工事・施工を行えば行うほど、不自然になり、本来の大地の機能を損ねている。
水脈保全循環機能に植栽土木を活用することは、大地の組成バランス機能の再生と、水脈保全機能の両方の課題を解決することになる。
【0046】
植栽土木は、大地の機能再生でもあり、生物機能の再生でもあり、気象環境機能の再生でもある(つまり、地球環境の[1]大地[2]生物[3]気象の3つの環境分野全ての再生につながる)。
このように、植栽土木を通して、水脈と植栽というのが一緒になって土木的に活用されることが最も合理的な生態系循環機能の再生、自然エネルギーとしての活用につながるものである。
本発明の植栽通気浸透水脈システムは、直接土壌の世界の話であるが、既に形成されている(つまり改造されてしまっている)既存の環境に適応するために、有効に適用できるものである。
地形の変換ポイントとすると、例えば、擁壁沿いに溝のように、上部からの土圧がかかる擁壁沿いに溝や穴を掘り、停滞する空気と水が抜ける構造を施工する。
【0047】
植栽通気浸透水脈システム及びその施工方法は、植栽工が、一般土木的に中核部に植物をも使用するもので、基本的には、「しがらみ構造」を中心とした構成を形成している。
そして、空気・水脈の対流におけるポイントは、様々な状態において、強く、弱く、早く、ゆっくりと流れる空気・水脈の対流における脈機能である。いわば、脈機能が宇宙エネルギー、宇宙機能として渦流となり、この渦流を生み出すためには「しがらみ構造」が必要となる。
【0048】
本発明を構成する植栽土木には、単に草木を植えるだけではなく、地中への水や空気が流通可能な状態をなすようにして植えることである。
【0049】
一般に、糸・織・紐は、井桁状、やたら状、綾状、らせん状、流線状、ともえ状等いろいろな形状で織りなすことができ、植栽土木の基本機能は、大地の組成を成す土、石、木の3つの素材が、上記糸・織・紐と同様に、空気と水が抜けながら間隙比率を一定に保ちつつ、安息状態を生み出す一定の比率とすることである。
この地形と間隙を保全維持し、大地における土壌層の脈の機能を保全する目的で、対象となる場の環境を維持、持続する担い手として、植栽された植物(植栽土木)が、下草から高木までの人工的な植生(群落)を生み出していると考えられる。
植栽土木によって、人工開発の場において、自然生態系の環境分野である大地と気象と生物の3つのスクラムが壊された時、大地と生物とその中の人間と気象の4つのスクラム(開発)が、かつての自然状態(安息状態)とほぼ同じ範囲(範疇)に収まる状態(環境―人工開発)に、施工できれば、大きな生態系循環を損なう開発から逃れることになる。
そして植栽土木は、土木的な本来機能として、上記範囲、加減、程度を射程に、植栽施工を応用することになる。
【0050】
一般に、植栽土木は、植物の重心が、コンクリートや大地の重心と一体化してその間を流れる水脈圧が一定となるように、相対的等圧・等速を保つ状態に設定し施工する。つまり、人間が設置する植物及び木質材、石質、土質材が、締まり過ぎず、緩み過ぎず、程良い一定の圧を保ちながら、安定している状態にする。
このとき、比重1の水比重が、圧力のモーメントをかけた状態の加減範囲を計算して施工する。そこでは、
空気と水の通る間隙比率 > 土質、石質、木質の容積比率、
大気圧 > 材圧の時
大地圧 < 材圧の時
これらの状態のときにおいて、
圧強 → (間隙大) → 脈の抜き 大
圧中 → (間隙中) → 脈の抜き 中
圧小 → (間隙小) → 脈の抜き 小
というような関係となるような状態とする。
【0051】
土壌通気浸透排水施工及び土壌通気浸透排水システムにおいて、
安息状態は、自然状態で大気中の空気が大気圧に押されて、地表面から浸透し、地下部の土壌気水脈を軸に土壌層の粒子の間隙を相対的等速・等圧で対流する状態となっている。これは、大気層(上空)、空気と水、表層気水脈、植物の枝葉網、大気(地上部)、地表面、対流、植物の根網、地表表面層(土壌間隙層)、地表表面層より深い範囲(中層・深層気水脈)、大地(地下部)となっている状態で、大地には、大気圧――気象圧、生物圧(植物圧、動物圧を除く)、植物圧、動物圧、生活圧(人間)が加わっており、シガラミ構造は、下記の各種状況において関与している。
つまりシガラミ構造の関与は、1通気・通水、2保水・保気、3耐圧、4ろ過・泥こし等である。また、大地圧は、1地形圧 形、2土質圧 質、3土重圧 重等によって大地に負荷を与えている。
【0052】
このように、相対視点が必須である大地、材料、構造{1地形(形)、2土質(質)、3土圧=重圧(地質、その大地の重さ)}は、上記した1形、2質、3重さ(重圧)が、安息状態(気層、土層、地層)となるように構成されることが必要である。
そこでは、対流と循環が必要とされ、このため、柵構造が要求され、それは1通気・通水、2保水・保気、3耐圧、4ろ過・泥こしの各機能の確保が必要である。そして、これらの観点から上記を点と線の脈(線)・絡(点)で継ぐことであり、これを構成するために、波紋状構造、流線形(点穴→通気・通水)、綾状、らせん状、井桁状、やたら構造、ともえ構造を用いることによって確保できる。
また渦流機能は、空気流・水流・熱流・電気流・磁気流などの流体の対流(地球上の全ての空間-場[気圏・水圏・岩圏]に作用する)によって確保できる。これにより、地球規模の対流・循環機能が回復してくるものである。
【0053】
以上の状態を構成する施工について簡単に説明する。
構造物の設置地盤に対する重圧に対して、相対的に圧迫された空気と水の循環機能を達成できるように施工する。これらは、次の4つの機能を備えるように施工する。即ち、
(a)通気・通水機能
(b)保水・保気機能
(c)耐圧安定機能
(d)泥こし機能
の4つの機能が脈をなして循環しやすいように、形、質、重さ(重量)のいずれか1つ以上の改善をするように実施する。
この時構造物の本来の目的機能(法的安定強度、他e.t.c...)を損なわない範囲において考慮されることは必須である。
よって、構造物の重圧とそれを受ける大地の地盤における重心バランスとしての安定機能が問われることは必然であり、相対的、土木工学の技術機能が発揮される必要がある。
【0054】
前記土壌通気浸透排水施工及び土壌通気浸透排水システムの対象となる施設例は、例えば、人工水路網、コンクリート建造物基礎、コンクリート擁壁、コンクリート壁を有する井戸、現代土木道路網などが挙げられる。
コンクリート土木の改善点としては、形状改善の例として、(a)形 →加圧・加速の直線形状から →等加圧・等加速の流線形形状になるように施工する。
質改善の例として(b)質 →無機質の石、砂、セメント、鉄筋質に、炭、土、生物質の有機質を加えて、材そのものの中に空気と水の循環機能を促す。このとき、場(空間軸)、種(ファクター軸)、時(時間軸)、流(流域軸)という各環境軸(環境全体のメジャー)についても検討する。
耐圧改善の例として、(c)重さ(圧)→ 大地(地盤)に対してかけられている超過圧(重圧)を緩和し、自然状態で大気空間と大地空間での空気と水の循環機能(安息状態)が再生する状態(安息状態)を確保する(いわゆる正対流)。
特に、構造物の基礎施工において、一つ考慮ポイントを説明する。コンクリートを打設する時点で、直接の地盤に、安定剤としての砕石、ぐり石、砂、その他の無機物材を使用する時、その材及び安定転圧の手法において、常に安息状態を生み出すための上記(a)~(d)での脈の機能が確保される相対的気遣い施工が考慮される必要が不可欠である。
さらに、コンクリートが打設され硬化するまでの時間に有機物(植物)の(a)~(d)機能を活用した養生手法を用いるとより効果的な、コンクリートの質が確保できる。
【0055】
図17図39は、本発明の基礎となる技術であって、土壌通気浸透排水システム及び土壌通気浸透排水施工方法に関し、既に、特願2021-090362号として、出願したものである。以下その内容の一部を記載する
【0056】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。図17及び図18は土壌通気浸透排水システムの実施形態の一部分を説明する模式的断面、図19図17のWの位置を説明する概略拡大図、図20(a)~(f)は中空部材、グレーチング蓋等の構成を担う部材の一例を示す概略平面図、図21(a)、(b)は、長尺溝に配置される中空部材の一例を示す説明図、図22は立穴に配置される中空部材の概略図で、(a)は単体、(b)は長尺溝に配置される中空部材との連結を説明する概略斜視図、図23は土壌通気浸透排水施工方法の立穴形成工程及び長尺溝形成工程を示す図、図24は立穴及び長尺溝に炭などを敷き、中空部材を配置するときの説明図、図25は立穴及び長尺溝に中空部材を配置し、グレーチング蓋を配置するときの説明図、図26は中空部材を長尺溝に配置して固定するときの状態の説明図、図27は充填材配置工程の後に、泥侵入防止材を配置し、グレーチング蓋を配置した状態を示す説明図、図28は泥侵入防止材配置工程の説明図、図29は埋戻し工程の説明図、図30は土壌形成工程の説明図、図31の(a)(b)は中空部材を長尺溝から地表に出した状態の説明図、図32は土壌通気浸透排水システムの部分断面を説明するイメージ図、図33は立穴に単体で中空部材を配置した状態の概略断を示す説明図、図34図33の埋戻し工程の説明図、図35図34の土壌形成工程の説明図、図36は土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図、図37は土壌通気浸透排水システムを適用した一例の概略断面を示す説明図、図38図17図35で示す土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図、図39図17図35で示す土壌通気浸透排水システムを適用した他の例を示す説明図である。
なお、図40図51は、本発明を補足するものであり、施工方法や施工状態をより具体的内容として示したものである。
【0057】
以下実施態様における部材等は、部材を構成する材料のもつ形、質、重さのそれぞれのオリジナル性質にあいまった多様性を考慮して使用することによって、より相乗的目詰まり解消機能等を生み出せるようになる。つまり、多様性(例えば3種以上)をセットで用いることにより、それぞれ単体で配置される以上の相乗的効果機能が生み出されるものである。
【0058】
シガラミ構造の説明(ここでの定義)として、●不定形構造の中でも、いわゆる宇宙エネルギーの一つとも言える渦流エネルギーによって、空気と水の流れの圧力により回転運動と往復運動が合成された結果生み出される構造、●波紋状、らせん状の空気と水の流体エネルギーの上下・左右の立体的蛇行運動によって生み出された構造らせん状蛇行曲線)。よって、使用する材のある程度の構造上の条件を特定できる。
【0059】
ここで材における三種とは、(1)形、(2)質、(3)重さをいい、三種三様の組み合わせは、多様性を基準に、実証法的に実用化していくことが必要である。対象領域の自然状態である水量含めた集水量及び人間の土地利用含めたその場の土圧等を考慮して、対象領域におけるこのシステムの規模特定を実用化する。つまり、ここでは、対象領域(場)の三種は人為条件である人間の土地利用も含むもので、地形、質、重さ(土圧)である。
【0060】
本発明におけるシガラミ構造とは、不定形構造の中でも、いわゆる宇宙エネルギーの一つとも言える渦流エネルギーによって、空気と水の流れの圧力により回転運動と往復運動が合成された結果生み出される構造である。または、波紋状、らせん状の空気と水の流体エネルギーの上下・左右の立体的蛇行運動によって生み出された構造である。よって、材のある程度の構造上の条件を特定できる。
シガラミ構造を生み出すために、単一ではなく多様性が必要であるが、それは三種三様を基準にした組み合わせによっておおよそ多様性を実現できる。まず、材を形と質と重さの三種から、形の三様は例えば大・中・小、重さの三様は軽~重のうち三種類などから、それぞれに対して、三様を組み合わせる。
その三種三様の組み合わせは、多様性を基準に、実証法的に実用化していく。対象領域の自然状態である水量含めた集水量及び人為条件である人の土地利用も含めたその場の土圧等を考慮して対象領域(場)の地形、質、重さ(土圧)の三種に注目しながら、このシステムの規模特定を実用化する。
【0061】
一般に、土地造成や大型の人工構造物の建設等により土壌の通水性と通気性が減少し、植物の繁 茂環境が悪化した敷地や、公園、緑地等の現在植物繁茂環境が良好な敷地において、本発明に係る土壌通気浸透排水システムが、土壌の保水及び保気性の向上、通気性及び通水性の改善、維持を目的として適用されるものである。そして、地下水を涵養することにより、水害の軽減・地球温暖化の防止などといった働きを果たすことが可能であり、雨水を資源として有効活用することができる。
【0062】
図17は、本発明の土壌通気浸透排水システムSを適用する対象領域に、縦方向の立穴Hに配設された中空部材10と、この中空部材10と長尺溝M(横方向)に配設された長尺の中空部材Pとが連結された状態を示すものである。
地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水システムSを適用する対象領域において、土壌Dの所定位置と所定間隔で、立穴Hを掘削する。立穴Hの径、深さ、間隔、地形は、土壌Dの通水性、通気性、耐圧、保水・保気、泥こしの各機能状態による悪化の程度等の土壌環境に応じて選択される。
【0063】
このとき、立穴Hに連続して、長尺の中空部材P(図21(a)(b)参照)を配置する長尺溝(通路)Mを掘削する(図23参照)。この長尺溝(通路)Mは、所謂やたら掘りにより、底面は平らにさらうのではなく、左右交互にクサビ状の凹凸が形成されるようになる。そして溝は緩やかな蛇行曲線の溝となるように掘ると好適であるが、ある程度の幅で掘削されていれば、この幅において、長尺の中空部材Pを直線状でなく配置できるので、直線状の溝であってもよい。
長尺の中空部材Pは、空気や水の通排気性が確保されたシガラミ構造からなる構造物で、本例ではコルゲート管のような部材で、周囲面は縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で構成される不定形の面を有して構成され、フレキシブルなものとなっている。
【0064】
図17の例では、立穴に配置される中空部材10と長尺の中空部材Pを接続しているが、中空部材10に水が相対的等速―水量、水圧、土圧に応じたその場の流速(等速)で、円滑に流れるように長尺の中空部材Pも相対的に考慮した勾配を付けて、長尺溝Mを掘削する。このとき、逆流しないように、長尺溝Mの深さを決定するが、図37で示すように、排水できる層に厚みが出来るように立穴に配置される中空部材10内の水面より高い位置に、長尺の中空部材Pの底が位置するように行う。
【0065】
なお本例において長尺の中空部材Pは、外周面が不特定面で構成されたコルゲート管のような長尺部材(パイプ状)を用いている。長尺部材(パイプ状)の径は80~100mmのもので、より機能的に言うならば、らせん曲線の組合せによるメッシュ構造で、施設時に曲げることができるように構成されている。
【0066】
本例における中空部材10と中空部材Pの接続は、図18(b)で示すように、中空部材10の中心から外れた位置で対向するように連結されると、中空部材Pからの流れが、中空部材10内で渦様の流れとなり円滑に流通する。また、中空部材10と中空部材Pの上下方向の接続位置は、図18(a)で示すように、高い位置側の中空部材Pを中空部材10の高い位置で連結し、低い位置側の中空部材Pを中空部材10の低い位置で連結している。
【0067】
図19図17のWの位置を説明する概略拡大図であり、地ならしとグランドカバーの部分を示す断面図である。表層5cm~20cmを掘削した土の上(いちばん表面)に「チップと炭」(粗腐葉土、炭)の層G1及びG2をグランドカバーGとした例である。このグランドカバーGの下側には、土が、ほぐれて堆積している層G3となっている。
【0068】
また図17示すように、立穴Hの底部には泥浸入防止のため透水性の軽量な砂等の敷砂20や砂利、砕石、植物枝葉を設置する。
敷砂20が設置された立穴Hの底部に、充填材60を配置する。そして敷砂20は泥浸入防止のため、透水性の軽量の砂等から構成され、そして敷砂20の次に充填材60を配置する。この充填材60は炭、軽石、砂等を混ぜたものを用いる。
そして、充填材60の上部に、泥浸入防止材70を配置する。この泥浸入防止材70は、伐採した樹木の枝や粗朶(そだ)などで構成されている。さらに複数の捨てコンクリート30を配置する。
この捨てコンクリート30が固化する前に、外周に通水性、通気性を確保された中空部材10を、その下端が捨てコンクリート30やその他支持部材で適宜の固化により固定されるように設置する。中空部材10を構成する径は、立穴Hの径より小さく、好ましくは約半分または3分の2程度の範囲(相対選択とする)とすると好適である。なお、符号80は埋戻し土壌、符号90は芝生等の植栽である。
【0069】
中空部材10(中空部材P)の材質としては、 コンクリート、樹脂、金属製等どのようなものでも良いが、好ましくは有機材料、例えば木等の天然素材が最も好ましく、中空部材10の重量により周囲土壌を圧密しない軽量で耐圧性の材料が望ましい。
そして、中空部材10(中空部材P)は、例えば図20の(a)~(f)で示すように、通排気性が確保され不定形の面からなる部材11を複数接合して構成されており、シガラミ構造として形成されている。
【0070】
本実施形態のシガラミ構造は、不定形の柵状の枠材12で形成されている。不定形の柵状の枠材12は、図20の(a)~(f)では平面で描かれているが、立体的に配置されて、不定形の面からなる部材11を構成することができる。また井桁構造によれば、グレーチング蓋の下で、井桁構造を応用し、グレーチング枠との立体的な構造とすることが可能である。
なお、符号13は枠材12で形成される開口面である。また枠材12には、所定位置に切れ目14が形成され、枠材12に加わる圧力が大きい場合には変形してして。円滑に流れるようになっている。
【0071】
そして、本例では、中空部材10(中空部材P)を構成する部材(枠材)12の総面積に対して、水や空気が流通する開口面(枠材12間の開口部:間隙)13の面積の方が同等以上で形成されている。つまり、間隙13を構成する柵状の枠体(枠材)12と間隙13による面積比率を、間隙13を構成する材料の総面積≦間隙の総面積とし、間隙13から、水と空気が土壌浸透気水脈として等加速度運動で、渦流となって流通する。
【0072】
さらに、中空部材10(中空部材P)の底部と、立穴H及び中空部材10との環状空間に通気性、通水性の高い充填材60を充填する。通気性、通水性の高い充填材60としては、乾留により得られた炭化物を主材料とし、それに軽石、砂、又は砕いた炭化物等を混ぜたものとし、充填材60を含めた構築に関する全体重量を軽量にし、その重量により土壌を圧密するのを防止する。乾留により得られる炭化物としては、木炭、竹炭等である。乾留により得られる炭化物は、様々な大きさの細孔が存在し、ポーラスな構造であるため、その表面積が非常に大きく水、空気の浄化能力が非常に大きい。さらに、圧密状態における通気、通水、保気、保水機能が非常に高い。
【0073】
そのため、周囲土壌中から有機ガス等を含む空気や、有害な物質が溶け込んだ水が充填材60中に流入しても、炭化物が有機ガス、有害物質を吸収し浄化する機能を持ち、充填材60中に有機ガスや有害物質が滞留するのを防止し、通気性、透水性を中期期間長期間維持できる。乾留により得られる炭化物の細孔中の空気や水が程よく循環すると、有機ガス、有害物質を分解するバクテリアが自然発生し、その効果がより一層発揮される。なお、これらのバクテリアを予め付着させておくと、その効果が相乗的に期待できる。なお、上記充填材以外に、その場における土壌そのものが、団粒構造を保つ範囲において使用されることも有効である。
【0074】
浸透雨水が中空部材10(中空部材P)の周辺に浸透してきた場合、雨水の動きの前に土壌内から空気が押し出されてくる。この空気が、雨水の水圧で押し出されてきた時、円滑に中空部材10の中及びその周辺に移動してくれないと、その後から押し出されてくる雨水が、空気の抵抗を受けて集水が弱くなることになる。よって、開口面が大なり小なりの複数の間隙(孔)などで、確保されていることで様々な水圧に伴う空気圧を抜くことが可能となる。
【0075】
図17で示すように、立穴に配置される中空部材10には、通水性、通気性が確保されたフレキシブルな長尺の中空部材(パイプ状)Pが連結され、この長尺の中空部材Pは土壌Dに形成された通路(長尺溝M)に配置される。長尺の中空部材Pは周囲の土壌Dの圧力に耐えるもの(圧力でつぶれないもの)であれば、網目の円筒体ではなく、空気と水の渦流モーメントに沿った構造で、流線形、波紋状、らせん形等の合成された構造で形成されている。
つまり、定型的な規則だった構成ではなく、特定なものと定めず、手当たり次第な様子の構造、いわゆる、やたら構造で形成することができる。これにより長尺の中空部材P自体が目詰まりすることがなく、通気性及び通水性に優れているものとなる。
【0076】
上述の実施態様では、中空部材10として、シガラミ構造のものを説明したが、通気性及び通水性、即ち通気浸透排水性が確保された不定形の面で構成された中空部材10、例えば外形部を形成する外面を備え、外面は、長さや幅の異なる部材であって、縦、横、斜めの直線又は曲線の少なくとも一つ以上の部材で不規則に組み込まれた不定形の組込み部材10aを用いて、この組込み部材10aの間で形成された間隙13とで構成するようにすることができる。このとき、間隙13を構成する材料(組込み部材10a)と間隙13の面積比率を、間隙13を構成する材料(組込み部材10a)の総面積≦間隙13の総面積で構成すると好適である。
【0077】
立穴に配置される不定形の立体構造物である中空部材10の上面は、解放面となっており、この上面の解放面を覆うようにグレーチング蓋40が配設されている。
グレーチング蓋40は、前述の中空部材10(中空部材P)の材質と同様で、その形状は図20(a)~(f)で示すように、中空部材10の空気と水の渦流に沿った構造で、流線形、波紋状、らせん形等の合成された構造、上記したシガラミ構造や、いわゆるやたら構造で構成されている。グレーチング蓋40の材質は鉄(亜鉛メッキ)、ステンレス、アルミニウム、FRP製、木材等の天然素材などが用いられる。
【0078】
つまり、グレーチング蓋40の平面視形状は、図20(a)~(f)で示すような、長さ等が異なる不定形からなる部材を組み合わせたもの、長さ等が異なる部材を組み合わせたもの、長さ等が異なる外周辺からなる部材を組み合わせ楕円形・二等辺三角形・不等辺三角形となるようにしたもので、中空部材10の上面の解放面の形状に合わせて形成したもの等、多面体の構造となるように構成されている。
なお、部材の角部15は、流線形状にして、水、空気、その他の流通を阻害する流動物が、引っかからないような形状をしている。
さらに、図示はしないが、長さ等が異なる外周辺からなる各枠部材を組み合わせたもので中空部材10の上面の形状に合わせて不等辺五角形となるようにしたものも用いることができる。
【0079】
一般に、「雨水浸透枡」は、地表の雨水を効率的に土中へ浸透させるため、枡の底は砂利など水が土に浸透しやすい状態とし、地表に降り注いだ雨水を枡の中で一時的に貯蓄させ、徐々に地中へと浸透させてゆく。雨水浸透枡の設置により不飽和の地層や帯水層まで雨水が到達することが可能となり、十分な水量が供給されることによって湧水泉を復活させることに繋がる。更に、一度土の中にしみ込んだ雨水はゆっくりと時間をかけて河川へと到達するため、大量の水が一気に流入するために起こる都市型水害を緩和する効果がある。つまり、自然の天然水脈における、浸透分散機能にならう設備が構成されることが重要である。ここでは、間接的な対応として、流域機能の再生・改善を図るため、土壌の団粒化として、土壌層の均等化、植物根層の再生安定化、土壌層の通気・通水機能として土壌層の保水・保気機能の再生、土壌層の耐圧機能の再生、気象機能の再生を図ることが重要である。
【0080】
そこで、本発明に係る中空部材10を雨水浸透枡(住宅地などに降った雨水を地面へと浸透させることのできる設備)として、利用し、浸透の速度を緩やかにすることができるため、設備一つ一つが巨大である必要はない。多くの場所で少量ずつ浸透させて処理できるよう広範囲に分散させて設置することにより、その効果をよく発揮する。このため、雨水浸透枡は個別住宅での使用に適した、設置・管理が容易で小型かつ安価なものとなっている。
【0081】
中空部材10の上面をグレーチング蓋40で覆うが、立穴及び長尺の溝上部は、基本的に埋戻さず、やむおえない場合は、ふさいだ機能を他の場で代替できるようにして、抜く必要がある。なお相対的には均等分配を行う。さらに、土壌通気浸透排水システムを適用する対象領域に整地、植物等を配置できるように充填材60などを配置する。この場合も、上述と同様に基本的に埋戻さないで土壌80を形成する。また、上記通気性、通水性の高い充填材60としては、主材料としての乾留により得られた炭化物、天然素材などに軽石、砂等を混ぜたものとし、全体重量を軽量に、その重量により土壌を圧密するのを防止し、それぞれの目地、相互通気・通水機能を確保する。乾留により得られる炭化物としては、木炭、竹炭等であり、少なくとも2種以上の材料で、上述のやたら構造としたものであることが好ましい。
【0082】
中空部材10の周囲に配置される充填材60は、通気性及び通水性を確保しつつ、泥の浸入を防止する泥浸入防止材70を配置する。泥浸入防止材70としては、伐採した 樹木の枝や粗朶を配置してもよい。泥浸入防止材70の選択は、周囲土壌中に含まれる泥成分の量等に応じて適宜選択する。充填材60の周囲に泥浸入防止材70を配置することにより、充填材60の間隙に泥が浸入しないので、充填材60、中空部材10の開口部の目詰まりが防止、上述のようなやたら構造を構成することで確保できる。
要するに、充填材60を充填した中空部材10と立穴Hについて、埋戻しをしないで、これらの環状空間の上部に薄い土壌層を形成し、芝等を植生して生きた植物の根で表土を濾過する構造とすることができる。
【0083】
乾留により得られる炭化物は、土壌に対する環境親和性に優れているので、長期間の使用により炭化物が粉炭状態になっても周囲土壌の植物繁茂環境を向上させる。周囲土壌に植物が繁茂することにより、植物の根が土壌中に張り巡らされ、土壌の通気性、通水性をより向上させる。このとき、水脈ライン上における上記の構造は、目詰まりを起こしやすいため、ある間隔で天穴構造をもって地上部に空気圧を抜くように構成されている。上述のように、中空部材10と溝Mとの間隙に通気性、通水性の高い充填材60を充填している。
【0084】
上記中空部材10について説明しているが、長尺の中空部材(パイプ状)についても、同様に施工することができる。これは、中空部材Pを長尺溝Mに沿って横方向に配置すると、暗渠排水などとして活用することができる。このとき、所定間隔で中空部材10と長尺の中空部材Pとを接合するなどができ、長尺の中空部材Pと接合する場合には、所定位置に長尺の中空部材Pより大きめの中空部材10が所定間隔・位置で配置されるので、ある程度多めの雨水にも対応することが可能となり、ゲリラ豪雨などのように、短時間で大量の雨水にも対応可能に、構成することもできる。
【0085】
本例において、立穴に配置された中空部材10の概略のサイズは、図22(a)で示すように、上端側の径が250mm~300mmで、下端側(底面側)の径が100mm~150mmの尻すぼみ形状となっており、深さ(高さ)は250mm~350mmのものとなっている。
【0086】
立穴に配置された中空部材10と、長尺溝に配置された中空部材Pとの連結は、立穴に配置された中空部材10の網目のうち、中空部材10の中央から外れた位置をカット(切断)して連結穴15を形成する。本例では中空部材の下端側(底面側)より少し高い位置で中空部材10の中央から外れた位置と、高さ方向の中央位置で中空部材10の幅方向の径の中央から外れた位置に、二か所連結穴15を形成する。
この連結穴15に、長尺溝に配置された中空部材Pを差し込むことによって行う。このとき、長尺溝に配置された長尺の中空部材Pの端部が、立穴に配置された中空部材10に対して、下方に向けて連結する。
これにより、長尺溝に配置された長尺の中空部材Pからの水、空気の流れが、立穴に配置された中空部材10に入るときに、渦状の流れとなって、円滑に流通するようになる。
【0087】
次に、土地盤改良に用いられる土壌通気浸透排水施工方法について、図に基づいて説明する。なお、図23乃至図34は、各工程を示している。
図23は土壌通気浸透排水施工方法の立穴形成工程及び長尺溝形成工程を示す図であり、立穴形成工程及び長尺溝形成工程を、連結できるように形成した例を示している。対象領域の所定位置に少なくとも一つの立穴Hを形成する立穴形成工程を行う。この時、同時に或いは別途、対象領域の所定領域に長尺溝を形成する長尺溝形成工程を行う。
長尺溝M(通路)は所定の幅の溝で掘削することができるが、この場合には長尺溝Mの幅で、長尺の中空部材Pを、直線状ではなく、ある程度蛇行したように配置することができる。
【0088】
そして、中空部材Pは図26で示すように、固定部材17(例えば、長尺のピン等で構成された留め具)により、中空部材Pの端側で、長尺溝Mの底の土壌に突き刺し、固定できるように構成したいる。中空部材Pは三次元的に曲がりを入れて、固定部材17は、中空部材Pの幅方向(径方向)の両端に千鳥状に打つ。このとき固定部材17は、中空部材Pの中を流れる空気、水等を阻害しないように、図で示すように斜めに取り付け、固定する。なお、固定部材17は、中空部材Pの所定間隔毎に、中空部材Pの左右交互で固定している。また本例では、固定部材17として、長尺のピンを用いているが、中空部材10(中空部材P)の材質などを用いることもできる。
本例は、立穴Hから所定方向に延びる長尺溝M(通路)を同時に連結して形成した例であるが、立穴形成工程及び長尺溝形成工程は別々に形成し、それぞれ単独で形成することができる。
【0089】
図24及び図25は中空部材10及び中空部材Pの配置工程を示し、図24は立穴及び長尺溝Mに炭などを敷き、中空部材10及び中空部材Pを土壌中に配置する工程(この時の固定の仕方も、植物の根がそれぞれの場の土壌に張力を効かせながら食い付くように、土中に侵入するような固定を工夫するとよい。)、図25は立穴及び長尺溝Mに中空部材10、Pを配置し、グレーチング蓋40を配置するときの説明図、図26は中空部材Pを長尺溝Mに配置して固定するときの状態の断面説明図である。
【0090】
図27は、充填材60の配置工程の後に、中空部材10及び泥侵入防止材70を配置し、グレーチング蓋40を配置した状態を示す説明図である。
図28は、炭化物を含む充填材60の充填工程及び泥侵入防止材70の配置工程である。泥侵入防止材70の配置は、流線形に柵(シガラ)む構造とし、水や空気の流下方向と枝刺しの向きが、対向するようになって配置させる。これにより、泥こしが行われる。
【0091】
図29は、図28の状態の長尺溝Mを埋戻した工程の説明図である。この埋め戻し工程も、渦流方向に沿って、流線形、回転形、波紋状、らせん状に力を加えながら、整地し、埋め戻し施工を行う工程である。
【0092】
図30は土壌形成工程の説明図である。長尺溝Mを埋戻し、グレーチング蓋40の部分を残し、土壌形成を行う。そして、表層5cm程度の土を形成するものである。このとき、所定間隔で木々を植栽し、自然の土壌通気浸透排水が行われるように施工する。
【0093】
図31(a)(b)は中空部材Pを長尺溝Mから地表に出した状態の説明図である。この図では、地面からしがらみ構造をした中空部材(パイプ状のもの)Pを地上に露出させている。このとき、露出した中空部材Pの端部(地表に出た部分)にやたら編みで創られた籠様のものを被せて中空部材Pの端部を保護している。
【0094】
図32は土壌通気浸透排水システムの長尺溝Mに配置された中空部材Pの部分断面を説明するイメージ図である。この図で示すように、埋設された中空部材Pは、図17と同様に、同様部材、配置については同一符号を付して、その説明を省略するが、各工程により、中空部材Pを介して、土壌通気浸透排水が、行われる。
【0095】
図33は立穴Hに単体で中空部材10を配置した状態の概略断面を示す説明図である。図17とは、中空部材Pが連結されていない点等が異なるものである。このように、中空部材10と中空部材Pを連結しなくても、土壌通気浸透排水を確保することができる。
【0096】
図34は、中空部材10を単体で構成し活用するときの、図33の埋戻し工程の説明図である。図35図34の状態から土壌を形成する工程の説明図である。表層5cm程度の土があり、水脈機能が欠かせない。また、中空部材10は安息機能の安定確保のため耐圧機能を有している。
【0097】
図36は土壌通気浸透排水システムを適用した一例を示す説明図であり、図37は土壌通気浸透排水システムを適用した一例の概略断面を示す説明図である。
【0098】
図38図17図35で示す土壌通気浸透排水システムについて、各工程を適宜適用して施工した例を示す説明図である。
【0099】
図39図17図35で示す土壌通気浸透排水システムについて、各工程を適宜適用して施工した例を示す説明図である。
【0100】
以下、参考までに、図40~51に基づいて、本発明に関する補足を行う。
健全な大地があること、それを元に「すべての生き物たち」が健全さを取り戻すこと。それが、あらゆる産業の復興に必要なのであり、今ほど「大地の再生」が求められている時代はない。
健全な空気と水の流れを取り戻すことから始まるのであり、生き物たち――とくに植物たちと足並みを合わせ、その力を最大限に生かしていくことが大切。
【0101】
ここでは、次に示すように、
●空気視点を取り戻す、という観点から、
1)大地の疲弊、そのサインと解決法
2)その場にあるものを使う
3)やりすぎない、脈は直線や直角を嫌う
4)小さな水切りが与える変化
5)火を燃やす
6)炭の効用と枝葉のフィルター
7)メンテナンスと風の草刈り
●地上部の空気通し改善、という観点から、
1)風の流れを作る、そのために草を刈る
2)風の草刈り1(草を味方にする高刈り・撫で刈り)
3)風の草刈り2(風の抜け道をつくりブロック・カマボコ状に)
4)風の草刈り3(エンジンカッターの使い方)
5)つる植物、ススキ
6)低潅木の風の剪定
7)樹木の伐採法
8)伐採枝、物の置き方
●水切りと水脈、という観点から、
1)表層の水切り改善
2)コルゲート管と有機資材
3)埋め戻し・地ならし
4)グランドカバー・水まきと風まき
5)点穴
6)水脈メンテナンス
7)抵抗柵(杭の打ち方)
8)水路・沢の管理
9)人工水路の管理
10)U字溝の処理
2-7ブロワーと水やり(a)ブロワー清掃、b)水やり)
2-8重機の使用法
について、説明する。
【0102】
空気視点を取り戻す。
大地の疲弊、そのサインと解決法
近代土木のコンクリートやアスファルトによって地中の空気の動きが止められ、水はけが悪くなり土壌が腐敗して植物が育ちにくくなりました。便利さを優先するあまり、空気や水の流れを保ちながら生物環境を豊かにし、浄化機能を持っていた池や湿地や土や石積みの水路などが、埋め立てや暗渠化、コンクリート三面張り水路となり、消えていきました。
その結果、雨の日は地面に雨水が浸透せず「水たまり」ができるようになりました。水たまりができるのは地面が詰まっているサインです。底には泥だまりができ、乾けばホコリを立てる。泥だまりが厚い堆積を繰り返せば、ヘドロ化して有機ガスを発生させる。そのドブのような臭いは人だけが不快なのではなく、周囲の植物を弱らせます。ヤブ化は大地と植物の疲弊のサインなのです。
【0103】
植物が弱れば根っこが細根を出せず、植物自体が地面の空気通しをする力がますます弱まります。この負のスパイラルに陥っている場所が、現代は都会から田舎までかなりの面積を覆っていのです。
当然ながら地下水は涵かんよう養されず、大雨のときのオーバーフロー水(それは泥アクを大量に含む)だけが川や湖に流れ込む、ということになります。地球温暖化の原因は、CO2の増加やヒートアイランド現象だけではありません。この現代土木構造物による遮断と泥アクによる「地中の空気や水の流れの詰まり」も大きいのです。また洪水の頻発もその原因は異常豪雨だけでなく、流域全体の浸透機能の弱まりに起因しているのです。
【0104】
水たまりができるのは地面の空気穴が泥の膜によって塞がれているからです。移植ゴテで表層5cmを引っ掻いて水たまりの水を排水溝に誘導してやればよいのです。水は移動するだけでなく縦方向にも浸透します。すると裸地にも草が生えてきます。地中にタネがあるのに発芽しないのは、土の中の空気が動かないからです。泥アクが消えると明るくなり、空気感が変わります。草が生え、苔の色がよくなります。その溝には炭と枝葉を入れ、周囲には粗腐葉土やチップのグランドカバーで仕上げるのが「大地の再生」のやり方です。
【0105】
既にコンクリート構造物に変わった場所は、現代的なアレンジを施して同じ機能を回復させます。コンクリートが悪いのではない、現代土木に空気視点がなく、その構造が閉鎖的に使われることが悪いのです(新たなコンクリート構造物を開発する必要があります)。
現代の里山には有機資材が溢れており、風通しの手入れをするだけでその材料が簡単に入手できます。屋敷周りの植物の剪定だけでもかなり枝葉が出るものです。剪定によって風通しをよくする(水脈の上の風通しはとくに重要)わけですが、同時に「大地の再生」の水脈整備に使われる有機資材が簡単に手に入るのです。また、スギ・ヒノキの荒廃人工林が蔓延しているため、とくに崩壊地などでは長丸太が入手しやすく、杭や土留め柵として良い素材となります。
【0106】
便利な暮らしと現代土木によって浸透水が奪われ、雨水の多くは暗渠やU 字溝に集められ、直接川へ流れるようになりました。浸透水がなければ河川や湖水の湧き水も激減し、水は浄化されず、淀んで石にも泥アクがつくようになります。放置された農地や山林もまた水脈を詰まらせて、グライ化した土(地中に酸素がなくなり還元状態になることで主に青灰色に粘土化し、メタン、硫化水素などに起因する腐敗臭=ドブ臭=のあるガスを出す土)から有害なガスを放出させています。「大地の再生」でこれを改善・克服すれば植物の根が大地を耕し始め、再生作業に味方してくれるようになります。また姿も穏やかな成長となり、植物たちは互いに棲み分けを始めてコンパクトになり自然に風通しが蘇よみがえるのです。
【0107】
私たちが現在目にしているほとんどの植物空間は、実は疲弊した植物たちの断末魔の姿なのです。かといって根元からばっさり切って見栄えを優先するような作業をすると、風通しや陽当たりが激変し、植物たちは大慌てでまた強根を出し、ササやツル植物に覆われるという繰り返しになってしまいます。たとえばブヨやヤブ蚊が多いのは大地が詰まっている証拠で、詰まっているからササ類が苦しくて根を伸ばし、それで暴れてヤブになっているのです。
部分的に刈ることで穏やかな風みちを作り、等速に流れるような、浸透しやすい溝を掘ってつないでやる。風や水が走り過ぎるなら緩衝帯を作る。そうすることで大地は守られ、詰まっていた土中の空気が動き出し、微生物の活動が活性化し、農林水産業の核になるベースが豊かに再生していきます。それだけではなく、建物も風化しにくくなり、人の健康も守られます。逆に水と空気の流れが悪くなる・滞ると植物がダメージを受け、ひいては土砂崩壊など災害を誘発します。
【0108】
「大地の再生」を通して、流域に安全で生産性の高い環境を速やかに実現していくこと、これが子供たちの未来に残す私たちの大きな責務です。
【0109】
その場にあるものを使う
現在の土木工事はスクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきました。災害現場でさえ、崩れた土砂や流木を大移動し、そこに前と同じような土木構造物を、いっそう強固に(ということはまた空気を詰まらせる形で)作ろうとします。災害が起きるのは大地が詰まりや疲弊を解消するために動いたと見るべきで、解放後の形はいわば大地の新たな答えであり造形なのです。ならばその地形を生かして土木工事を再構成するべきで、とくに初期の仮復旧は災害で出た石・土・丸太・枝など現地素材を最大限に活用したいものです。
庭の再生などもできるだけあるものを用いて風合いを出していく。そのようなやり方が現代では(そして今後も)むしろ主流になるのであり、運搬処理費用が軽減され、施主のみならず地域にも喜ばれます。
【0110】
やりすぎない、脈は直線や直角を嫌う。
途方にくれるような耕作放棄地を再生したいとき、全部のヤブを徹底して刈り払う必要はなく、何本か風道を開けることから始めます。そして風がほどよく流れるように、田畑の中の雑草は腰の高さで刈る。石垣の下部はきれいに刈り払って、水路があればその上を風が流れるようにする。風がどういうふうに通り抜けるか全体を考え、作業は常にひかえ目に深追いしないようにする。今日はどのぐらいのエネルギーをかけれるか、その作業量を考えながら、全体のバランスを崩さないようにムラなくつなぐ。1カ所に時間をかけすぎない。
【0111】
これまで里山整備のボランティアの人たちはて徹底的に刈り払うことを部分的に繰り返してきました。しかし、風が通り過ぎるとかえって再生する植物たちはまた暴れ始めるのです。イタチごっこになっていつまで経っても終わりません。むしろ省力的に数本の風みちを空けてやるほうがはるかに合理的なのです。これに水脈整備を加えることで、地中の空気が動き、植物が細根を出し穏やかにコンパクトに姿を変える。つまり、自ら空間を作るようになり、植物が逆に応援してくれるのようになるのです。
【0112】
風や水の流れをデザインするときは直線や直角を避け、蛇行や流線型を目指すようにします。すると風や水は自然に渦流を作りながら動きます。渦ができるとホコリや泥アクが溜まりにくくなり土の団粒化が起きます。団粒化が起きるとホコリが立たず空気が通りやすくなります。本来は「木の根と石が抵抗を作り、流れをやさしくする」のですが、直線的な人工構造物がそのリズムを壊すことで詰まりが生じるのです。だから現代の構造物の周囲はメンテナンスが必要になるのです。
【0113】
小さな水切りが与える変化
斜面の変換点には土圧がかかります。また透水性のない構造物で遮断されている場所も同じです。だからその接点に空気抜きとしての水脈溝(通気浸透水脈)を掘ることが効果的です。その溝には伐採枝などを噛み合うように入れると溝が崩れず微生物や菌類の住処にもなります。また補助として有孔管(ポリプロピレン製の「ゴルゲート管」)を入れるとさらに効果的です。溝の曲がりや合流点などにはやや大きめな三角錐の穴(点穴)を点在させると、縦方向にも空気が動き、地下浸透もしやすくなります。
【0114】
小さな水切りが毛細血管ならこの水脈溝は動脈といえます。そしてその脈は沢や河川へ、そして海へとつながっていきます。小さな水切りから始めたこれらの変化は、周囲の山や尾根筋の風や水をも動かす力を持っています。風や水は手をつなぐように一体だからです。満たしたホースの先端を解放すれば、100m先の水も瞬時に動く、と考えれば解りやすいでしょう。
小さな水切りの溝は、水がないときも大気圧に押された空気がそこを通路として常に動いています。それらが地中の空気に、地上の風に影響を与え続けます。風が変わると植物たちが変化するのがわかります。空間が爽やかに、明るくなるのです。そして鳥や虫たちが祝福するかのように集まり、嬉しそうに飛び回るのです。
【0115】
炭の効用と枝葉のフィルター
地中に空気を通すには、構造物による遮断をなくすことはもちろんですが、地中に有機物があることが重要です。すなわち最も有用なのは生きた植物の細根ですが、もしそこが植物の生えていない裸地であるなら、枝葉などの有機物を漉き込み、表面に木質チップや粗腐葉土などの有機物をグランドカバーとしてかぶせることが有効です。しかしそれらは分解の過程で有機ガスを出し、とくに地中での分解は有機ガスをこもらせるので、ガスを吸着・分解・放散させるために「炭」を抱き合わせます。
【0116】
炭の材料はどんな樹木でもよく、もちろん竹でもかまいません。炭を作る場合は木・竹の種類や伐る時期も問いません。生木や青竹も枯れた竹も使うことができます。また、専門の窯で焼いたような高級な炭の必要はなく、焚き火でできるような熾炭でも十分使えます。
炭は多孔質構造なので糸状菌やバクテリアなどの有用微生物が棲みついて繁殖し、土中の有機物の分解を促して土の団粒化を進め、保水性や浸透性を向上させます。さらに炭自身に豊富なミネラルを含むため、土壌改良効果があります。
ただし炭の微細な穴は泥で詰まりやすい。そのために伐採した植物の枝葉を泥漉こしとして用います。つまり炭と枝葉はお互いに「有機ガスの吸着」「炭の泥漉し」という持ちつ持たれつの関係を作るのです。
【0117】
メンテナンスと風の草刈り
地中の枝葉が分解し、炭の泥漉し作用も弱まった頃には、地表に植物が繁茂し始め、地中に張り巡らされた植物の根が空気通しをしてくれるようになります。その頃には構築した水脈溝や点穴は泥で詰まっていることもあるので、定期的にメンテナンスしてその構造を維持していくことも重要です。そして、草が生え出せば「風の草刈り・選定」での管理が必要になります。
草刈りは何のためにするのか? 敷地を見栄え良く整理するためではありません。地表の風を「風の草刈り」でコントロールするためです。敷地全体を均一に程よく風が通るように、草刈りによって風みちの空間づくりをしていくのです。
とくに水脈の上は風の開口部として常に開かれている必要があります。水脈と風の流れが連動することで、周囲の地中全体の空気が動き、有機ガスが抜け、植物が元気になって細根を出すようになります。すると植物たちの成長が落ち着き、樹木がしっかりと育つようになると、木の根が浸透水脈や抵抗柵の役割をするようになり、自然の雨風の手入も手伝って、その後の管理はずっと楽になっていくのです。
【0118】
地上部の空気通し改善
1)風の流れを作る、そのために草を刈る
風が通らないと有機ガスが停滞し、植物が弱る。風通しがよくなると植物も穏やかになり枝もコンパクトになる。徒長した花芽は思い切って刈ったほうがあとに出る脇芽にきれいな花が咲く。
【0119】
2)風の草刈り1(草を味方にする高刈り・撫で刈り)
草が風で揺れる場所・曲がる場所で刈る。いわゆる「高刈り・撫なで刈り」をする。再生するとき分岐がたくさん出て、地中には細根が発達する。再生も遅くなるので地際で刈るより作業量はずっと少なくなる。
道具は、のこガマやナイロンコードの刈払機でちぎるように刈る(鋭利な切り口よりも再生スピードが遅くなり、そのぶん栄養が脇芽や3番手に向かいやすい)。
【0120】
3)風の草刈り2(風の抜け道をつくりブロック・カマボコ状に)
高刈り・撫なで刈りするだけでなく、全体がブロック状に別れるように風の抜け道をいくつか作る(そこだけは地際から刈る)。そして側面はカマボコ状に整えると風が滑らかに均等に流れ、草の中に風が入りやすい。
樹木の根元周りと畝溝、農道・作業道だけは低く(足のくるぶしくらいの高さ)刈る。草丈に触れるような垂れた下枝があれば剪定して風通しをよくしておく。
【0121】
水切りと水脈
1)表層の水切り改善
基本は水たまりに溝を切って水を流してやること。そして水みちの詰まりの改善である。土が軟らかい所を狙ってやや蛇行させ、「走らない」「淀まない」等速のリズムを保つこと。走れば地形を壊して泥アクを出し、淀めば泥アクが堆積して地下の詰まりを導き有機ガスを発生させる。アクは縦方向にも消えていくので、分散・等速の水流を作ることで浸透が促される。溝の深さは5cm程度でよい。石混じりで草が生えているような地面の場合はやや大きな水切りになるので、三つグワ、唐グワ等での作業になる。その際ただ平滑なU 字溝的な溝を掘るのではなく、V字に左右交互に掘ることで、浸透しやすく渦ができる流れを作ることができる。水脈の上の地上部は草刈りでほどよい風通しを確保する。泥アクが消えると木道なども滑らなくなる。また爽やかな緑が回復していく(たとえばゼニゴケがスギゴケに変化)。
【0122】
2)コルゲート管と有機資材
コルゲート管を入れる水脈の場合は重機のブレーカーで掘削した後、剣スコップで溝(深さ20~30cmほど)を仕上げていくが、その際も平滑なU字溝的な溝を掘るのではなく、V字に左右交互に掘る。
水脈にコルゲート管を入れる場合は溝の中でやや蛇行させて配置する。人工的な流路は直線や直角になりがちだが、適度な凹凸や曲がりを入れてやることで空気や水は渦流で動き、浄化や浸透機能が高まる。「管をくねくねと曲げてやろう」と頭で作るのではなく、コルゲート管の動きにあわせ自然にできる曲線で収める。
コルゲート管は型枠用のセパレーターや竹串などを利用して一定間隔で地面に固定するが、流路を邪魔しないように管の中心を避け、そして千鳥に打つ。
その上に枝や割竹などの有機資材を入れていくが、ただ投げ入れるのではなく、編み込むように・噛み合うように入れていき(これを「しがらみ」という)、上からよく踏み込んでおく。大枝・中枝・小枝をバランスよく入れていく。あるところに大枝が集中したり、小枝ばかりにならないように。その比率は自然の木の幹枝のつき方に準じる。
【0123】
このしがらみ構造で構築すると水脈の機能――構造の強固さ、水脈としてのガイド、渦のでき方、微生物の増加――などが全然ちがってくるので、細心の注意を払う。
そして炭と落ち葉や葉付き枝をかける。葉っぱを置くだけで「しがらみの空間・コルゲート管の孔・炭」それぞれに対してかなりの泥漉し効果があるが、入れ過ぎても詰まってしまう。自然の樹木に付いている枝と葉っぱの比率で全体が収まると詰まらない。
【0124】
3)埋め戻し・地ならし
水脈はただ埋めるのではなく溝の中央部で水と空気のつながりを保ちたいので繊細な感覚が要求される。三つグワを使う場合、溝に向かって掻き下ろすのではなく、逆に上げ気味にして先に石を落としていく(叩き上げることで細かい土は落ちず、石だけが転がり落ちる)。石は枝と土斜面の間に入り込み、土圧を支える(三つグワで押し込んでやる)。そのすき間にまた小さな石が載って最後に土がかぶさる、という階層構造ができると、泥漉し効果できてコルゲート管も詰まりにくい。
【0125】
4)グランドカバー・水まきと風まき
水脈周りの地面に仕上げのグランドカバーとして炭や粗腐葉土(チップ)をまく。箕みによる資材のまき方には風のように散らばって広がりをもつ「風まき」と、水が落ちるようにドドッとまく「水まき」がある。グランドカバーには前者を、水脈への投下・埋め戻しのときなどは後者を使い分ける。
【0126】
5)点穴
水脈の変化点には「点穴」と呼ぶ深さ30~40cmほどの穴を掘る(深さは土相の状態によって異なる)。これは縦方向に空気や水を通す役目をし、また雨のときには泥だまりになる。ずっと直線が続く場合も数メートルおきに点穴を作る。
水脈幅よりやや大きく直径を取って逆円錐状に掘って炭を入れ、放射状に枝や竹を入れて土留めと水・空気流のガイドとする。効果を高めるために短く切ったコルゲート管を立てることもある。上段右の図はコルゲート管を立てたときで、このときは、竹杭で支えを行う(図40参照)。図40の上段真ん中はタコつぼ型である。必ずしも×ではなく、土相の状態によってはこの形もあり得る(固い場合など)。
図40の下段の真ん中に示すように、水と空気の作る柵(しがら)み構造の木組みで、(1)穴の中に炭を入れ、竹や枝を放射状に置く(2)刈り草や木の葉を巻くように収める(3)周囲を軽く埋め戻す。
放射状に溝を形成して土留めと水・空気流のガイドとする。水脈幅よりやや大きく直径を取って逆円錐状に掘って炭を入れ、しがらみ構造となるように放射状に枝や竹を入れて土留めと水・空気流のガイドとする。
横かき カマボコ型地形で流線形状にする。
溝を掘ったあとで、掘り起こした土は、地ならししてカマボコ状にし、流線形になるように構成する。
大きな石や土の中からの植物有機材(根・枝・草等が水に流されるように)から先に落ちるので詰まりにくい。
傾斜地の果樹園などでは作業道の山側に水脈を作り、谷側に点穴を穿うがつのも効果的である。また元気のない樹木の根周りに小さな点穴を作るのもよい。炭を入れた点穴はマツ枯れ・ナラ枯れに効果が高い。
【0127】
6)水脈のメンテナンス
図41で示すように、時が経って埋まってしまった水脈は、三つグワを使って掘り起こしメンテをする。斜面では下から上に、溝に足を入れて掘る。溝をただ真っ直ぐ掘削するのではなく、土から教えられる柔らかいところを掘っていく(多少ジグザグになっていい)。掘削して枝が出て来たら、今度は三つグワの先で押し付けて安定させる。ただ掘ればいいのではない。掘削、開き、押し…という複雑な作業を同時にこなす(図41参照)。
【0128】
7)抵抗柵(杭の打ち方)
雨水が斜面を一気に流れるような場所には障害物「抵抗柵」をつくり、流速を弱め、水を分散・停滞させ、浸透を促す。抵抗柵は自然の川の蛇行に習い、流れに直角に置くのではなくやや斜めに傾ける。
周囲に丸太や枝、竹などがあれば、外部から資材を持ち込む必要はなく、それらを工夫して使っていく。それらを杭で止めれば流れを誘導する抵抗柵ができる。その際、2本の杭は同じ側に打たず互い違いに打つ。そのほうが植物の根と同じように、どの方向にも働く。そして強く打ちすぎない。ちょうどいい硬さの加減で止めておく。植物の根も地中にガチガチに入っていくことはなく必ず隙間がある。大地に対して締めすぎない、わずかなゆるみがあってよい。
横棒の隙間には草と石をおいて間をふさぎ、杭には番線でしばる。そして杭の出すぎた部分をノコで切る。雨風が通って安定する自然さで作り終える。「雨降って地固まる」……最後は降った雨が整地する。
【0129】
9)人工水路の管理
すでにコンクリートで固められてしまった三面張りの水路などは、中の土砂や落ち葉をすべてさらい上げることはせず、落ち葉や腐葉土の適当な堆積を残して。クワで蛇行した筋みちをつけてやる。さらに両脇に枝葉の有機物を追加して、石で重みをかぶせて動かないように止める。つまりコンクリート水路の中に新たな自然水路を「入れ子」のように作る。
水路の外側はコンクリートと地面の境界を少し掘ってやり、所々に点穴を作ってやる。この溝にも雨のときは水が流れるので、できるなら下流側のどこかでコンクリートの壁の天端を欠いて水路に落ちるようにしてやるとよい。その際、「天端」に尖った部分を作らないようにする。空気や水が滑らかに通るような曲線を描くように、自然がやったような作業の風合いを出すのが大事。
【0130】
10)U字溝の処理
コンクリートのU字溝は撤去して石積み水路にするか通気・通水できる新たな構造物に変える。できなければ取り急ぎ底面に1~1.5mのピッチでブレーカーで穴を開けるとよい。水を地中に浸透させ、地中の空気を抜くという効果がある。常に通水がある場合は水分過多にならないように小さめに開ける。ふだん流れのないU 字溝には炭をまき、竹の枝葉などを敷いて石の重しを置くと泥漉しと浸透の効果が高まる。
【0131】
ブロワー清掃
物の配置や片付けを終えた後、ブロワー清掃することで片付けたすべての空間に風等が行き渡っているかを確認することができる。空間を最終的に仕上げる重要な仕事でもある。三つグワ、ケンスコ、レーキ(表層整形)、さらに熊手、竹ぼうき、手ぼうき(表層均し)、そして最終的にブロワー清掃。すべて深さに応じたエネルギーを水と風に習った作業として使う道具であり、それぞれの道具の手応えを常に感じ取ることが大切。ブロワーはうまく使えば手仕事の3倍のスピードで仕事ができ、しかもずっときれいになる。
現場では泥が層になって溜まっているようなところを見つけてホコリを飛ばしていく。汚れだまりの「点」が広がって「線」になっている(なるような)ところを見つける。全部やる必要はなく、サッと時間をかけないで次元を同じにしてやる。それだけで現場の作業は円滑に進み、場も痛まない。
【0132】
水やり
水やりもブロワーに同じで、均等に水が分かれ地面に浸透していかねばならないし、ダメならそこに不具合を発見できる。水まきは風と水を土の中に通す作業で、「息のできる水まき」と「息をつまらせる水まき」がある。水まきは植物治療の最重要な処方である。
枕木などの構造物の上も、ただ漫然とかけるのではなく、テンションをかけて谷に泥を落とすイメージで水をまく。谷には空気が通っているから落ちた泥を団粒化してくれる。
弱っている木には柔らかくかける(泥水が出ないように)。
どこまで自分の距離で水かけできるか範囲を常に把握する。
縁石のキワなどは空気が通るように、片手にドライバーを持って地面に突き刺し、すき間をあけながらまく。
散水ノズルは均等に散布されるものがよいが、慣れれば直接ホースに親指を当てて調整しながらまくこともできる。なお、重機の使用法については、一般的なものであり、ここでは説明しない。
【0133】
植栽土木
水脈地形の仕上げとして埋戻し造形整地の時、地形の安定と機能促進の手立てとして、植栽を当てがい、有機物のグランドカバーを施すと、より安定した有機的水脈環境が保たれる。
水脈ラインの中空部材は、水脈の相対的規模に応じた材として、竹・丸太・大枝・中枝等の植物有機材や、人工パイプ等もそれぞれしがらませ(柵ませ)水脈の中心軸を造作する。
さらにこの中空部材の中心軸の柵構造は、らせん状に数種類の多様性で柵むことで、より機能が高まるものと考えられる。
よって、中空部材の材質は、植物有機材に限らず、線状構造のものであれば、人工資材としてのプラスチック他多様性が可能である。
植栽、雨、空気(風)、粗枝、丸太杭、杭、竹杭等を使用し、植物の地中に根を張っている状態と同じように土圧を支える耐圧機能を狙う。
【0134】
(縦方向の耐圧柵み構造)
上部立穴としての主に縦方向の通気浸透機能を促進し、保全の機能を狙う。
立穴的構造体(柵構造A-A’断面部)は、不等間隔であり、それらはあたかも流れの中心軸が木の幹に対して各大枝が自然的に分配されているように配置される(脈の構造として不等間隔)。そして、そのリズムは地形の急峻さや土壌の硬さに応じて密になる。これは、流木がまるごと水脈に流され、水圧、土圧によって、柵構造に組み込まれていくイメージである。
【0135】
図40で示すものは、渦流機能を生成するため、定形で生成するように見えるが、不定形リズムで説明することができるものである。固い地面の場合、つまり、土が固いときはタコつぼ型の穴を掘ることもある。そして、図40の上段右側のように、コルゲート管を立てるときは竹杭などで支えをつくることも考慮する。このとき、注意するのは、コルゲート管と竹杭とを強固に締めすぎないようにすることである。コルゲート管の上部部分をゆるめる(その場の固さ、締まり、具合によって調整する)。
(1)穴の中に炭を入れ、竹や枝を柵み(しがらみ)構造に組みながら大・中・小の枝を不定期に絡ませる。さらに、柵みは、大・中・小の枝を放射線状に配置するように穴を埋める。
(2)その上に刈り草や木の葉を巻くように収める。または枝を柵みに組みながら被せるように配置する(図40の下段中)。
(3)周囲を軽く埋め戻す(完成:図40の下段右)。
【0136】
図41は、水脈埋戻しを説明するものである。図41の左側の図のように、溝にコルゲート管を配置した後で、溝に直接埋め戻すと先に土が落ちて詰まるので、好ましくない。図41の右側の図のように、クワで、往復運動をしながら整地すると、先に大きな石や枝が溝に落ちる。施工後、結果的に水脈が詰まりにくい階層構造になるだけでえなく、水と重たい空気は下方へ、軽い水蒸気と空気は上方へ対流させることが可能となる。
【0137】
図42は水脈溝の溝堀の説明であり、は、図42の×のように立壁、底面など直線的では不可で、△のように部分的に流線形でない状態で掘った場合にも、十分な掘り方ではない。〇のように、部分と全体が相対的に流線形状となる。コマやいのししの渦流掘削となるように掘る。
水脈溝を掘ったらまず炭が入る。次にコルゲート管を入れていくが、ただ直線に引き伸ばして入れるのではなく溝の中でやや蛇行させて配置する。人工的な流路は直線や直角になりがちだが、適度な凹凸や曲がりを入れてやることで空気や水や渦流で動き、浄化や浸透機能が高まる。「管をくねくねと曲げてやろう」と頭で作るのではなく、コルゲート管の動きにあわせ自然にできる曲線で収める。
コルゲート管は型枠用のセパレーターや竹串などを利用して一定間隔で地面に固定するが、流路を邪魔しないように管の中心を避け、そして千鳥に打つ。このように、カマボコ型流線形になるように掘ることが最善であり、図中央の底部がR状の溝が次善、図左のように底部が矩形の溝は最も不適合である。そして溝底は、カマボコ型流線形にすることで、結果的に水脈が詰まりにくい階層構造になる。このような構造により、水と重たい空気は下方へ、軽い水蒸気と空気は上方へ対流するようになる。
【0138】
図43は、水脈への枝の入れ方の説明図であり、コルゲート管の有無に関係なく、枝等は、単に配置するだけでなく、編み込むように・噛み合うように入れていき(これを「しがらみ」という)、上からよく踏み込んでおく(図の×ではなく、部分的に△、好ましくは〇)。大枝、中枝、小枝をバランスよく入れていく。あるところに大枝が集中したり、小枝ばかりにならないように。その比率は自然の木の幹枝のつき方に準じる。
このしがらみ構造で構築すると水脈の機能―構造の強固さ、水脈としてのガイド、渦のでき方、微生物の増加など―が全然ちがってくるので、細心の注意を払う。
水脈への枝の入れ方を、更に説明すると、コルゲート管のない場合も、ある場合も同じように枝を入れる。図43で示すように、枝を交互に絡ませて「しがらみ」を作り、上から足で踏む。上に飛び出た枝は切って挿入する。
そして炭と落ち葉や葉付き枝をかける。葉っぱを置くだけで「しがらみの空間・コルゲート管の孔・炭」それぞれに対してかなりの泥漉し効果があるが、入れすぎても詰まってしまう。自然の樹木に付いている枝と葉っぱの比率で全体が収まると詰まらない。
図43の右>中>左のように、右側の配置状態が最善である。つまり、溝を埋めるのではなく、溝の中央部で水と空気のつながりを保ちたいので繊細な施工が要求される。図44は水流、気流が直線状ではなく、S字状に流通すべく、所々に、障壁を形成して、この障壁によって、水流、気流が流線形に流れる状態を示すものである。
【0139】
図44は水流の制御の一例を示す説明図であり、細い杭と、太めの杭(角材や小丸太でもよい)を利用する。つまり、先ず、番線を横木の下に水流を通す。次にシノでねじって締め上げる。そして、余分な杭頭と番線をカットする。これにより、水の流れを制御し、地面のすきまを調整し、水の勢い、流量を調整できるようにする。
【0140】
図45の(a)~(f)は水脈埋戻し例の説明図である。
水脈埋め戻しは、雨と風が渦流の力で土・石・枝葉を動かすことができるように、埋め戻し・整地を行う。(a)は施工前の状態であり、(b)のように、溝に直接埋め戻すと先に土が落ちて詰まるので、不可である(足踏み転圧も同時に不可)。そして、施工中は、(c)で示すように、横かきで往復運動の整地を行う。これにより、先に大きな石や枝が落ちる。次に、(d)で示すように、途中クワの背で側面を叩き締める(水締めの加減で)。さらに、(e)で示すように、施工後は、(上から順)カマボコ型流線形になっているので、上がる空気(軽い空気)と下がる空気(重たい空気)の循環ができ、(f)の断面図で示すように、結果的に水脈が詰まりにくい階層構図になる。
例えば、三つグワの動かし方は、横かきして、カマボコ型地形で流線形状にする、そして、三つグワの背で、溝の上部縁を叩き、地ならししてカマボコ状に施工する。
このようにすると、堀った土等のうち大きな石や土の中の植物有機材(根・枝・草等が水に流されるように)が先に落ちるので詰まりにくいそして(e)の矢印で示すように、水、空気が循環して自然の流れのように、振舞うようにする。
【0141】
図46の(a)~(f)は樹木周りの点穴とその施工の説明図である。
(a)の断面図で示すように、ゆるみをつけ、ひとにぎりの炭と粗枝、作業ひとつ1~2分で行う。(b)の断面図で示すように、樹木周りには、図の時計周り順に、表流水、長の表層から浸透した泥水でできた硬盤層を抜く、新たな発根が始まる。樹木の傍にある縁石の近くにはU字溝があり、このU字溝は捨てコンの上方に、図(e)で示すようなオーガー堀削工法(ハンドオーガーを用いて掘削する)によって形成される。
そして、断面図 (c)で示すように、20~30cmの溝が掘られ、この中に枝葉(10~12cm)、土、炭な(炭ひとにぎり)どが投入されれる。この溝は、途中の硬盤層を破って形成される。
【0142】
図47の(a)~(c)は空気視点から見た人口林の手入れ説明図である。
空気視点から見た人工林の手入れ:スギ・ヒノキ人工林における「切り捨て間伐採」の一般的な処置を「大地の再生」から検証する。
図(a)は×である。間伐の遅れたスギ・ヒノキ人工林は下層植林がほとんどなく、その流亡する。土止めのために(そして見栄えもよいので)、切り捨て間伐材は上図のように、等高線に沿ったベタ置きが(森林組合などの施業でも)慣例化している。等高線に平行に置かれた刈り捨て間伐材
図(b)は×である。この施業(等高線に沿ったベタ置き)のために枝払い・玉切り・移動・設置…といった無駄な労力が使われ、そのわりに下層植生が回復しない(上からの締め付け、表層にも地下にも空気が通りにくい)。
図(c)は〇である。切り捨て間伐材はランダムに斜め置き(重ね置き)することで空気や水が動く。枝払い・玉切りは最小限でよい(作業や歩行にじゃまにならない程度)。その結果、下層植生の回復が早まり表土が守られる。植裁木も細根を出して安定する。
【0143】
図48の(a)~(g)はグランドカバーと炭、炭・チップの巻き方の説明図である。
グランドカバーと炭
図(a)のように、土は圧縮すると詰まって空気を通さなくなることっを示している。図(b)では、粗腐葉土・チップの場合(炭がない場合)は縦に空気が通るようにラフに整地する。図(c)のように、炭は自身に小さな穴を持っているので圧縮し締め付けられても空気を通すので、図(d)のように、粗腐葉土・チップに対して、炭が上の場合は△であり、図(e)のように、粗腐葉土・チップに対して、炭が下の場合は〇である。炭は泥で詰まるので粗腐葉土・チップなど有機物をセットに使うと泥漉(こ)しになる(状況に応じて炭と粗腐葉土・チップは混ぜて使ってもよい)。
炭やチップのまき方において、図(f)は風まきであり、空気にのせるイメージで、やや高い位置から両手で横振り・縦振りの動きで空気に乗せて振りまく。図(g)は水まきであり、地面に流すイメージで、やや低い位置から縦に振りながら水が流れ落ちるようにまく(風まきより多めの量になる)。まき方については、後述する。
【0144】
図49(a)~(f)は自然の沢に関する施工例の説明図である。
自然の沢(その1):図(a)は施工前の状態を示し、直線の強い流れ、土砂やレキで浅くなった川床である。図(b)は施工後であり、泥アクや土砂を浚渫しながらS字蛇行の流れを作る。
自然の沢(その2):図(c)は施工前であり、図(d)は施工後である。流木、落ち葉などを取り去り、石を移動して水脈の流れを等速化する。図(e)及び図(f)は断面図であり、施工前は川床に泥アクが溜まる。施工後は川面を風が流れるように草を刈ることで、流れを等速化すると泥アクが消え、清流が戻ってくる。
【0145】
図50の(a)~(c)はわだちの水切りの説明図である。
わだちの水切りの図50(a)は施工前で、図示の順に、草部、土石と一部コンクリート、わだち、雨水の流れ、草部、フェンス、コンクリート舗装のくぼみである。
図50(b)は、上から順にフェンス、えぐる感じで削る、削った土で穴埋めである。
図50(c)は施工後で、上から順に、枝と炭、枯れ葉をかぶせる、状態を示している。
【0146】
図51の(a)~(c)は直線斜面の作業道における抵抗柵の説明図である。
図51(a)は施工前であり、左から順に、傾斜、成長不良(ヤブ化)、図51(b)は施工中であり、初期の雨水の動きを示している。図51(c)は施工後であり、ヤブ化が収まり木々が成長し始める。図51(d)は全ネジ+ボルトで、ツーバイ材(ツーバイフォー(2×4)材 断面サイズ=38×89mm)の取り付け状態を示している。図51(e)は施工断面図であり、炭と小枝・枯草との関係を示している。
【0147】
ここでは、グランドカバー・水まきと風まきについて述べる。
施工した地面に仕上げのグランドカバーとして炭や粗腐葉土(チップ)をまく。これらの各種材のまき方には風のように散らばって広がりをもつ「風まき」と、水が落ちるように、ドッとまく「水まき」がある。グランドカバーには前者を、水脈への投下・埋戻しのときなどは後者を使い分ける。
ここでいう、風まきとは、高目に両手で横振り・縦振り等の振動を加えて空気に乗せていくまき方であり、水まきとは、仮目に振りながら水に習ったように流しまく、ことを言う。いずれも空気まき、に比してより多目の量となる。
【0148】
一般に、土は圧縮すると詰まって空気を通さなくなる。このため、土だけでなく、炭やその他の材を利用し、土自身も空気を通すように改質する。
このため、粗腐葉土・チップ・炭の順に積層する(つまり炭が上)より、炭・粗腐葉土・チップの順にするのが好ましい。なお炭がない場合は縦に空気が通るように整地する。炭は泥で詰まるので粗腐葉土・チップをセットにして使うと泥漉(こ)しになる(時として混ぜて使用)。
【0149】
次にコンクリート構造物として、井戸について説明する。
図52図63を参照して井戸に関する説明をする。
【0150】
上記実施形態では、主として本発明に係る植栽通気浸透水脈システム及び植栽通気浸透水脈システムの施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0151】
101 石積みパターン
102 水抜き
103 溝
104 コア抜き
105 長溝
106 点穴
107 木杭
109 横溝
110 配線・配管穴
111 コア抜き
112 底面(地面)
113、115 導通部
114 側面
130 砂防堰堤SEの本体
131 水通し
132 通路
133 水路
134 水抜き、
135 水叩き
136 植栽木
137 木杭(根杭)
138 石等
200 U字溝
201 導通部
202 通路
203 窪地
205 盛土
210 コンクリート水路
206 石等
300 土留めブロック
301 コンクリートブロック
KY コンクリート擁壁
BK ベタ基礎
SE 砂防堰堤
GG 土
SD 植栽土木
S 植栽通気浸透水脈システム
D 土壌、土
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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