(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079243
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ウェザーストリップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 10/21 20160101AFI20230601BHJP
B60J 10/18 20160101ALI20230601BHJP
B60J 10/23 20160101ALI20230601BHJP
B60J 10/248 20160101ALI20230601BHJP
B60J 10/273 20160101ALI20230601BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20230601BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20230601BHJP
【FI】
B60J10/21
B60J10/18
B60J10/23
B60J10/248
B60J10/273
B60J10/84
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192609
(22)【出願日】2021-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 大祐
(72)【発明者】
【氏名】篠田 康尊
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 基成
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA26
3D201BA01
3D201CA25
3D201DA09
3D201DA10
3D201DA13
3D201DA23
3D201DA49
3D201DA75
3D201FA01
3D201FA04
3D201FA16
(57)【要約】
【課題】特に外観が悪化することなく湾曲部に沿ったウェザーストリップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】自動車の開口部を開閉するスライドドア1に形成され湾曲部1a,1bを有するフランジFに取付けられ、車内側側壁21a,車外側側壁21b,連結壁21cからなる取付基部21と、取付基部21とともに一体的に押出成形された中空部22を備え、湾曲部1a,1bでは取付基部21の一部分を切除して切欠部Kを形成し、切欠部Kを型成形材で金型成形して型成形部Mとするウェザーストリップ30で、湾曲部1a,1bの形状に沿ったインサート50を型成形部Mに埋設したもので、インサート50には、型形時に金型103,104に設けられた複数の第1ピン103a,複数の第2ピン104aに当接する複数の凹部53,54が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の開口部を開閉する開閉体又は前記開口部側のボディに形成され湾曲部を有するフランジに取付けられ、車内側側壁,車外側側壁,及び両側壁を連結する連結壁からなる取付基部と、
その取付基部とともに一体的に押出成形された中空部を備え、
前記湾曲部では前記取付基部の一部分を切除して切欠部を形成し、前記切欠部を型成形材で金型成形して型成形部とするウェザーストリップであって、
前記湾曲部の形状に沿ったインサートを、前記型成形部に埋設したもので、前記インサートには、前記金型形時に金型に設けられた複数のピンに当接する複数の凹部が形成されてなることを特徴とするウェザーストリップ。
【請求項2】
前記複数のピンが当接する前記複数の凹部の部位を、前記型成形材によって被覆させずに露出させたことを特徴とする請求項1に記載のウェザーストリップ。
【請求項3】
前記インサートの両端をそれぞれ平担部とし、それら平担部を前記切欠部から切欠きされていない前記押出成形された取付基部側に挿入して前記車外側側壁の車外側面に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェザーストリップ。
【請求項4】
前記押出成形された取付基部の車外側に中空シール部を設け、
前記切欠部は、前記中空シール部と前記取付基部の車外側側壁を切除することにより形成するとともに、前記金型成形により、前記中空シール部に対応した型成形中空シール部と、前記取付基部の車外側側壁に対応した型成形車外側側壁を形成し、前記インサートを前記型成形車外側側壁に埋設するように配置したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のウェザーストリップ。
【請求項5】
前記型成形中空シール部は、型成形車外側側壁の前記中空部側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁と、その型成形傾斜壁の端部に連結するとともに、前記型成形車外側側壁の端部に近接する型成形取付壁を有し、前記型成形傾斜壁をその型成形傾斜壁が相対向する部材の形状に沿って湾曲させたことを特徴とする請求項4に記載のウェザーストリップ。
【請求項6】
前記型成形中空シール部は、型成形車外側側壁の前記中空部側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁と、その型成形傾斜壁の端部に連結するとともに、前記型成形車外側側壁の端部に近接する型成形取付壁を有し、前記型成形取付壁にクリップ取付用の穴を形成したことを特徴とする請求項4又は5に記載のウェザーストリップ。
【請求項7】
前記中空部にはセンサーが設けられ、前記ドアとドア開口部との間に異物が挟み込まれるとそれに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知するようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のウェザーストリップ。
【請求項8】
自動車の開口部を開閉する開閉体又は前記開口部側のボディに形成され湾曲部を有するフランジに取付けられ、車内側側壁,車外側側壁,及び両側壁を連結する連結壁からなる取付基部と、
その取付基部とともに一体的に押出成形された中空部を備え、
前記湾曲部では前記取付基部の一部分を切除して切欠部を形成し、前記切欠部を型成形材で金型成形して型成形部とするウェザーストリップの製造方法であって、
前記金型成形時には、前記切欠部を形成した前記ウェザーストリップを上型と下型で挟み込み、
前記上型と下型の間に突出した複数のピンが形成された中型を設け、
前記湾曲部の形状に沿うとともに複数の凹部が形成されたインサートを、前記中型の複数のピンと前記複数の凹部を当接させた状態で、前記切欠部に対して埋設するように位置決め固定した後、型成形材を流して金型成形することを特徴とするウェザーストリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴン車やワンボックスカーなどのように車体の前後に移動するスライドドアのように、自動車の開口部を開閉する開閉体又は前記開口部側のボディに形成され湾曲部を有するフランジに取付けられるウェザーストリップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10及び
図11に示すように、例えば、ワゴン車などのようにスライドドア1(あるいはバックドア)によって車体の開口部を開閉する自動車では、スライドドア1の前端部に中空部にセンサーが挿入されたウェザーストリップ10が取付けられ、スライドドア1とフロントドア2の後端部との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合、その挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するようにされている。
【0003】
このようなウェザーストリップ10をスライドドア1に取付ける場合、特にベルトラインBLでは、ウェザーストリップ10を嵌め込むフランジFがスライドドア1の形状に対応して略S字状に形成されている。すなわち、スライドドア1の前端部には、ベルトラインBLからその上部にかけては車内側に向けて凸状に湾曲した湾曲部1aが形成され、ベルトラインBLからその下部にかけては車外側に向けて凸状に湾曲した湾曲部1bが形成されている。
【0004】
そのため、押出成形されたウェザーストリップ10をスライドドア1の湾曲部1a,湾曲部1bに追従させることは困難である。特にセンサー付きのウェザーストリップ10がスライドドア1の形状に追従していないと、センサーとしての検知精度を確保することができない恐れもある。
そこで、押出成形されたウェザーストリップ10をスライドドア1の湾曲部1a,湾曲部1bに対応する部分を切り欠いた後、金型成形することで湾曲部1a,湾曲部1bに追従させるものが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2など)。
【0005】
一方、自動車ドア外周縁部のコーナー部では、ウェザーストリップを、インサートを埋設した状態で型成形することが知られている(例えば、特許文献3など)ので、スライドドア1の湾曲部1a,湾曲部1bにインサートを埋設させることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-203661号公報
【特許文献2】特開2005-075085号公報
【特許文献3】実開平5-000517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、ウェザーストリップの湾曲部を切り欠いた後、金型成形して湾曲保持部を設けたものはウェザーストリップの押出成形された部分よりも強度は増すがそれでも強度が不十分になる場合がある。
また、特許文献2のように、押出成形されたウェザーストリップにおいて、フランジ取付部に芯金を埋設しているが、湾曲部において、芯金を埋設している取付部の一部(車外側側壁)を切り欠いた後、金型成形して湾曲保持部を設けたものは、ウェザーストリップの押出成形された部分よりも強度が低下する場合がある。
また、強度のさらなる向上を狙って特許文献3に記載されたようなインサートをウェザーストリップの湾曲部に埋設する場合、型成形部を形成する金型のキャビティ内において、インサートを位置決めしても型成形材を射出する時の圧力によってインサートの位置がずれてしまうといった問題もある。その結果、インサートの埋設によって強度は向上するものの、インサートの位置がずれするとウェザーストリップの外観が悪化し、特にセンサー付きのウェザーストリップの場合ではセンサー検知機能低下の恐れもある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、特に外観が悪化することなく湾曲部に沿ったウェザーストリップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のウェザーストリップは、自動車の開口部を開閉する開閉体(1)又は前記開口部側のボディに形成され湾曲部(1a,1b)を有するフランジ(F)に取付けられ、車内側側壁(21a),車外側側壁(21b),及び両側壁(21a,21b)を連結する連結壁(21c)からなる取付基部(21)と、
その取付基部(21)とともに一体的に押出成形された中空部(22)を備え、
前記湾曲部(1a,1b)では前記取付基部(21)の一部分(21b)を切除して切欠部(K)を形成し、前記切欠部(K)を型成形材で金型成形して型成形部(M)とするウェザーストリップ(30)であって、
前記湾曲部(1a,1b)の形状に沿ったインサート(50)を、前記型成形部(M)に埋設したもので、前記インサート(50)には、前記金型形時に金型(103,104)に設けられた複数のピン(103a,104a)に当接する複数の凹部(53,54)が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記複数のピン(103a,104a)が当接する前記複数の凹部(53,54)の部位を、前記型成形材によって被覆させずに露出させたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記インサート(50)の両端(51,52)をそれぞれ平担部とし、それら平担部を前記切欠部(K)から切欠きされていない前記押出成形された取付基部(21)側に挿入して前記車外側側壁(21b)の車外側面に配置したことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記押出成形された取付基部(21)の車外側に中空シール部(26)を設け、
前記切欠部(K)は、前記中空シール部(26)と前記取付基部(21)の車外側側壁(21b)を切除することにより形成するとともに、前記金型成形により、前記中空シール部(26)に対応した型成形中空シール部(26M)と、前記取付基部(21)の車外側側壁(21b)に対応した型成形車外側側壁(21bM)を形成し、前記インサート(50)を前記型成形車外側側壁(21bM)に埋設するように配置したことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記型成形中空シール部(26M)は、型成形車外側側壁(21bM)の前記中空部(22)側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁(26M1)と、その型成形傾斜壁(26M1)の端部に連結するとともに、前記型成形車外側側壁(21bM)の端部に近接する型成形取付壁(26M2)を有し、前記型成形傾斜壁(26M1)をその型成形傾斜壁(26M1)が相対向する部材の形状に沿って湾曲させたことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記型成形中空シール部(26M)は、型成形車外側側壁(21bM)の前記中空部側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁(26M1)と、その型成形傾斜壁(26M1)の端部に連結するとともに、前記型成形車外側側壁(21bM)の端部に近接する型成形取付壁(26M2)を有し、前記型成形取付壁(26M2)にクリップ取付用の穴(CH)を形成したことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記中空部(22)にはセンサー(S)が設けられ、前記ドア(1)とドア開口部との間に異物が挟み込まれるとそれに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知するようにしたことを特徴とする。
なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0016】
また本発明のウェザーストリップの製造方法は、自動車の開口部を開閉する開閉体(1)
又は前記開口部側のボディに形成され湾曲部(1a,1b)を有するフランジ(F)に取付けられ、車内側側壁(21a),車外側側壁(21b),及び両側壁(21a,21b)を連結する連結壁(21c)からなる取付基部(21)と、
その取付基部(21)とともに一体的に押出成形された中空部(22)を備え、
前記湾曲部(1a,1b)では前記取付基部(21)の一部分(21b)を切除して切欠部(K)を形成し、前記切欠部(K)を型成形材で金型成形して型成形部(M)とするウェザーストリップ(30)の製造方法であって、
前記型成形時には、前記切欠部(K)を形成したウェザーストリップ(30)を上型(101)と下型(102)で挟み込み、
前記上型(101)と下型(102)の間に突出した複数のピン(103a,104a)が形成された中型(103,104)を設け、
前記湾曲部(1a,1b)の形状に沿うとともに複数の凹部(53,54)が形成されたインサート(50)を、前記中型(103,104)の複数のピン(103a,104a)と前記複数の凹部(53,54)を当接させた状態で、前記切欠部(K)に対して埋設するように位置決め固定した後、型成形材を流して金型成形することを特徴とする。
【0017】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動車の開口部を開閉する開閉体又は前記開口部側のボディに形成されたフランジでしかも湾曲部を有するものに対して、取付基部と中空部が押出成形されたウェザーストリップを取付けるときに、湾曲部では取付基部の一部分を切除して切欠部を形成し、切欠部を型成形材で金型成形して型成形部とする際に、湾曲部の形状に沿ったインサートを型成形部に埋設したもので、切付部を単に型成形部にしたものと比較して十分な強度を有する。
【0019】
また、インサートには金型成形時に金型に設けられた複数のピンに当接する複数の凹部が形成されているので、インサートの固定力が増大し型成形材を射出する時の圧力によるインサートの位置ずれが抑制される。
これにより、ウェザーストリップの外観は悪化しない。
特にウェザーストリップの中空部にセンサーが設けられ、ドアなどの開閉体と開口部との間に異物が挟み込まれるとそれに対応した電気信号の変化によって異物の存在を検知するものでは、インサートの位置ずれに起因するセンサーの機能低下が防止されるので有効である。
【0020】
また本発明によれば、複数のピンが当接する複数の凹部の部位を型成形材によって被覆させずに露出させるようにしたので金型のキャビティ内における、インサートの固定力を更に増大させることができる。
【0021】
また本発明によれば、インサートの両端をそれぞれ平担部とし、平担部を切欠部から切欠きされていない押出成形された取付基部側に挿入して車外側側壁の車外側面に配置するようしたので、インサートの両端を取付基部の車外側側壁と金型の中型によって挟むことができ一層インサートの固定力が増大する。
【0022】
また本発明によれば、押出成形された取付基部の車外側に中空シール部を設け、切欠部は、中空シール部と取付基部の車外側側壁を切除することにより形成するとともに、金型成形により、中空シール部に対応した型成形中空シール部と、取付基部の車外側側壁に対応した型成形車外側側壁を形成し、インサートを型成形車外側側壁に埋設するように配置したので、インサートの露出部を型成形中空シール部によって外から覆い隠すことができ、外観が悪化しない。
【0023】
また本発明によれば、型成形中空シール部は、型成形車外側側壁の中空部側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁の端部に連結するとともに、型成形車外側側壁の端部に近接する型成形取付壁を有し、型成形傾斜壁をその型成形傾斜壁が相対向する部材の形状に沿って湾曲させたので外観が悪化しない。
【0024】
また本発明によれば、型成形中空シール部は、型成形車外側側壁の中空部側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁と、その型成形傾斜壁の端部に連結するとともに、型成形車外側側壁の端部に近接する型成形取付壁を有し、型成形取付壁にクリップ取付用の穴を形成したので、ウェザーストリップを、開閉体又は開口部側のボディに両面テープを利用して取付けるのではなく所定間隔をあけてクリップで強固に取付けることができる。
【0025】
また本発明のウェザーストリップの製造方法によれば、型成形時には、押出成形されたウェザーストリップに形成された切欠部を形成したウェザーストリップを上型と下型で挟み込み、湾曲部の形状に沿うとともに複数の凹部が形成されたインサートを、中型の複数のピンと複数の凹部を当接させた状態で、型成形部に対して埋設するように位置決め固定した後、型成形材を流して金型成形するものであるので、インサートの固定力が増大し、型成形材を射出する時の圧力によるインサートの位置ずれが抑制される。
またインサートの埋設によりウェザーストリップをフランジの湾曲部に対しても安定した状態で取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図10に示すスライドドアに、本発明の実施形態に係るウェザーストリップが取付けられた状態を示す拡大斜視図である。
【
図2】
図1に示したウェザーストリップの要部外観を示す拡大斜視図である。
【
図3】
図2に示すウェザーストリップに埋設されるインサートのみを示す図で、(a)は側面図,(b)は正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るウェザーストリップの型成形時、
図2のB-B線断面における金型構成を示す拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るウェザーストリップの型成形時、
図2のC-C線断面における金型構成を示す拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るウェザーストリップの型成形時、
図2のD-D線断面における金型構成を示す拡大断面図である。
【
図10】スライドドアによって開閉する自動車の側面図である。
【
図11】
図10に示すスライドドアに、従来例に係るウェザーストリップが取付けられた状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るウェザーストリップ30について説明する。
本発明の実施形態に係るウェザーストリップ30は、
図10及び
図1で示したようなスライドドア1によって車体の開口部を開閉する自動車におけるそのスライドドア1の前端面に形成されたフランジFに対して、車体前側に向けて突出するように取付けられ、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア2(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられている。フランジFは、特にベルトラインBLではスライドドア1の形状に対応して略S字状に形成されている。すなわち、スライドドア1の前端部には、ベルトラインBLからその上部にかけては車内側に向けて凸状に湾曲した湾曲部1aが形成され、ベルトラインBLからその下部にかけては車外側に向けて凸状に湾曲した湾曲部1bが形成されている。従来例と同一部分には同一符号を付した。なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線31,32が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0028】
このウェザーストリップ30は、
図2及び
図4で示すように、スライドドア1に形成されたフランジFに直接、取付けられる、車内側側壁21a,車外側側壁21b,及び両側壁21a,21bを連結する連結壁21cからなる取付基部21と、その取付基部21に一体的に押出成形され、スライドドア1の閉時にスライドドア1の前端面とその前端面が対向するボディ側開口部との間に指等の異物があるとその異物に弾接する中空部22と、その中空部22に組み込まれ異物を検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sを備え、センサー(感圧センサー)Sは、上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線(撚り線も含まれる))31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体34,35に埋設されるようにして中空部22内に固定されてなる。また、取付基部21の内側には複数の保持リップ24,24が設けられ、また取付基部21には剛性をアップさせるために断面U字形状の芯材25が埋設されている。さらに取付基部21の車外側側壁21bには中空(リップ状のものでもよい)のシール部26が設けられている。
【0029】
ウェザーストリップ30は、
図2に示すように、湾曲部1a,1bに対応する部分では取付基部21の一部分、ここでは車外側側壁21bを中空シール部26とともに切除して切欠部Kを形成し、切欠部Kを型成形材で金型成形して型成形部Mとしている。
図2においては黒三角側を型成形部,白三角側を押出成形部とした(
図7,
図8,
図9も同様)。
そして、型成形部Mには、
図3に示すような、湾曲部1a,1bの形状に沿ったインサート50が埋設されている。
【0030】
そのインサート50には、後述するように、型形時に金型100の第1中型103,第2中型104に設けられた第1ピン103a,第2ピン104aにそれぞれ当接する複数の凹部53,54が形成されている。
複数の凹部53,54は、
図3,
図8に示すように、自動車の車内外方向に貫通する穴を形成することで設定される第1凹部53と、
図3,
図7に示すように、自動車の車外方向に突出する突出部55を形成することで突出部55の自動車前側に設定される第2凹部54からなる。
【0031】
また、
図3に示すように、インサート50の両端、すなわち上端51及び下端52はそれぞれ平担部とされている。上端51も下端52も車内外方向の厚さよりも自動車の前後方向の幅が大きくされている。この平担部は、
図2,
図5及び
図6に示すように、切欠部Kから切欠きされていない、押出成形された取付基部21の車外側に挿入して車外側側壁21bの車外側面に配置されている。インサート50の上端51は、切欠部Kから上方の押出成形された取付基部21の車外側に挿入され、インサート50の下端52は、切欠部Kから下方の押出成形された取付基部21の車外側に挿入される。またその際、
図3に示すように、上端51の下端部及び下端52の上端部には、それぞれ、車内側に突出する車内側小突部58が設定されているため、インサート50の挿入時には、切欠きされていない取付基部21の端面にそれぞれ当接し、インサート50を差込みすぎないようにするための、ストッパーにすることができる(図示しない)。
【0032】
また切欠部Kには、
図7や
図8で後述する金型成形により、押出成形された中空シール部26に対応した型成形中空シール部26Mと、押出成形された取付基部21の車外側側壁21bに対応した型成形車外側側壁21bMが形成され、型成形中空シール部26Mは、型成形車外側側壁21bMの中空部22側から車外側に傾斜して延びる型成形傾斜壁26M1と、その型成形傾斜壁26M1の端部に連結(接続)するとともに、型成形車外側側壁21bMの端部に近接する型成形取付壁26M2を有している。
型成形部Mに埋設されるインサート50は型成形車外側側壁21bMに埋設され、一部分が露出するように配置される。より詳細には、
図7,
図8にて後述する、インサート50の車内側面である車内側平面部56と第1凹部53は、型成形部Mから露出させているが、ウェザーストリップ30の型成形車外側側壁21bMはフランジFに取付けられる為、フランジFに覆い隠されて、露出部が目視されない。
また、
図7にて後述する、インサート50の車外側面である、第2凹部54と突出部55も、型成形部Mから露出させているが、車外側に型成形中空シール部26Mを配置している為、型成形中空シール部26Mに覆い隠されて、露出部が目視されない。
以上より、インサート50は、車内側面と車外側面は、ともに、一部分が露出するようにしているが、露出部が目視されず、外観は悪化しない。
【0033】
また、
図7に示すように、第3中型105の突出ピン105aを第2中型104に当接させることにより、型成形取付壁26M2にクリップ取付用の穴CHが所定間隔をあけて形成することができる。また、
図7,
図8に示すように、型成形取付壁26M2又は型成形車外側側壁21bMには、型成形部Mの全長に渡って、第2中型104抜き出し用の中型抜き穴NHが形成される。
また、
図9に示すように、型成形傾斜壁26M1はその型成形傾斜壁26M1が相対向するドア1の形状に沿って湾曲させることもできる。
例えば、
図1に示す、ドアハンドルノブ3の周りでは窪み3a,3bが形成されることもあるが、その窪み形状に型成形傾斜壁26M1の形状を、
図1,
図9に示すようにその窪みに沿わせるようにして、外観悪化を防止することもできる。
【0034】
このようにして構成されるセンサー付きのウェザーストリップ30は次のようにして金型成形されることにより製造される。
まず、
図1に示すように、押出成形されたセンサー付きウェザーストリップ30をスライドア1に取付けた場合に、スライドドア1の湾曲部1a,1bに相対向する部分では、
図2に示すように、取付基部21の車外側側壁21bを中空シール部26とともに切除して切欠部Kを形成する。また、その際、
図5に示すように、切欠きされていない中空シール部26の取付壁26aに、第2中型104の両端部を脱型可能にするために、取付壁切欠部26Kを形成する。
【0035】
次に、
図6,
図7及び
図8に示すように、切欠部Kを形成したウェザーストリップ30を金型100の上型101と下型102で挟み込むようにして上型101と下型102の間にセットする。金型100は、上側101と下側102と、その間に設けられた第1中型103と第2中型104をと第3中型105を有する。またここで、説明の便宜上、
図6,
図7及び
図8には、ウェザーストリップ30が車体に取付けられた際の、車内,車外,前,後の4方向を、金型の上,下,左,右の4方向に対応させて、()書きで併記した。
第1中型103の両端部は、
図6に示すように、取付基部21の車内側側壁21aと連結壁21cと車外側側壁21bに接するように取付基部21の内側に挿入され、ウェザーストリップ30の取付基部21を金型100内で支持する。また、第1中型103の両端部以外の場所は、
図7,
図8に示すように、ウェザーストリップ30の取付基部21を金型100内で支持するとともに、第1中型103の下側面は、ウェザーストリップ30の型成形部車外側側壁21bMを金型成形するためのキャビテイの一部分を構成する。
第2中型104の両端部は、
図6に示すように、中空シール部26の内面に接するように挿入され、ウェザーストリップ30の中空シール部26を金型100内で支持するとともに、前述した、インサート50の下端52を、車外側側壁21bに押し付けて固定するようにしている。
また、第2中型104の両端部以外の場所は、
図7,
図8に示すように、押出成形された中空シール部26に連設する型成形部(型成形中空シール部26M)を形成するためのキャビティの一部分として、第1中型103と第3中型105の間に挿入される。
第1中型103には、
図8に示すように、間隔をおいて下向き、すなわち第2中型104側に向けて突出する第1ピン103aが形成され、第2中型104には、
図7に示すように、間隔をおいて上向き、すなわち第1中型103側に向けて突出する第2ピン104aが形成されている。第3中型105には、
図7に示すように、間隔をおいて、第2中型104側に向けて突出する突出ピン105aが形成されている。
【0036】
次に湾曲部1a,1bの形状に沿った形状のインサート50を、湾曲部1a,1bの形状に沿わせた姿勢で、キャビティ内の切欠部Kにセットする。
このとき、インサート50の上端51については、
図5,
図6に示すように、キャビティ内の切欠部Kから上方の押出成形された取付基部21の車外側に挿入して第2中型104の上側面で押し付ける事により、車外側側壁21bの車外側面に当て、下端52については、同じく、
図5,
図6に示すように、キャビティ内の切欠部Kから下方の押出成形された取付基部21の車外側に挿入して第2中型104の上側面で押し付ける事により、車外側側壁21bの車外側面に当てるように配置する。
そして、
図8に示すように、第1中型103の第1ピン103aとインサート50に形成された第1凹部53を当接させるとともに、
図7に示すように、第2中型104の第2ピン104aとインサート50に形成された第2凹部54を当接させた状態でインサート50をキャビティ内の切欠部K中において位置決め固定する。
このようにして、
図7と
図8で示した、(方向の異なる)2方向の当接により、金型100のキャビティ内における、インサート50の左右方向の位置決め固定をすることができる。また、
図7,
図8で示すように、インサート50の車内側平面部56は、第1中型103の下側面に当接させるとともに、
図3に示す、インサート50の車外側小突部57は、第2中型104の上側面に当接させる(図示しない)。このようにして、
図7,
図8,
図3で示した、(方向の異なる)2方向の当接により、金型100のキャビティ内における、インサート50の上下方向の位置決め固定をすることができる。
上述したように、上下,左右の4方向の位置決め固定をすることができるため、型成形材を射出する時の圧力を受けても、インサート50が位置ズレしないにすることができる。また、
図7,
図8で示すように、インサート50には前側及び車外側に斜め方向に突出する、前側突部59を設けている。前側突部59は、第1中型103や第2中型104に当接しないようにすることで、型成形部Mから露出する事なく埋設され、型成形部Mに対するインサート50の接合強度を向上させている。
また、
図7に示すように、型成形中空シール部26Mから第2中型104を抜くために、中型抜き穴NHが、型成形部Mの全長に渡って連続的に設けられている。また、更に、中型抜き穴NHとは別に、ウェザーストリップ30を所定間隔毎にスライドドア1に固定するクリップ(図示しない)取付用の穴CHが、間隔をあけて設けられている。クリップ取付用の穴CHは、第3中型105の突出ピン105aと第2中型104を当接させた状態で型成形材を金型100内に流し込み、金型100から開放すると、型成形部取付壁26M2を形成するとともに、型成形部取付壁26M2にクリップ取付用の穴CHも形成することができる。
【0037】
以上、説明したような金型100に型成形材を流し、金型100から開放すると、
図2に示したような、切欠部Kを型成形材で金型成形して型成形部Mとするウェザーストリップ30が製造される。
【0038】
このようなウェザーストリップ30の製造方法によれば、型成形時に、インサート50は、
図6に示すように第1中型103,第2中型104に設けられた第1ピン103a,第2ピン104aに当接するので固定されるとともに、更に、中空シール部26内部に、第2中型104を挿入する際に、第2中型104と車外側取付基部21との間に、インサート50の上端51と下端52を、挟み込んで固定することにより、金型100のキャビティ内での、インサート50の固定力が増大し、型成形材を射出する時の圧力によるインサート50の位置ずれが抑制される。
これにより、ウェザーストリップ30が外観が悪化することなく、インサート50位置ずれに起因するセンサーSの機能低下も防止される。
【0039】
このとき、第1中型103,第2中型104に設けられた第1ピン103a,第2ピン104aに当接することで、インサート50の当接部位には型成形材が流れないのでその部位は露出することになるが、露出部は型成形中空シール部26Mによって覆い隠されるので外観は悪化しない。
【0040】
なお、インサート50の材質と型成形材の材質を、共に類似な可撓性のある材料にすることができる。例えば、インサート50の材質をPPとし、型成形材の材質をTPOとする事が、あげられる。
これによるとインサート50と型成形材が接着することで一体感ができ、センサー付きのウェザーストリップ30の取扱いを容易にすることができる。硬度は軟質のJISA20~90の範囲が好ましく、より好ましくはJISA40~90である。JISA40未満だと型成形部の機能(例えば車体への組付け性)に不安があり、JISA20未満では機能が不十分となる。また外部から内部電気部品や配線へ水が浸入するのを防止するために、インサート50が異なる別の樹脂材(例えば接着剤)で包まれることもあるが、この別の樹脂材料も型成形材と同程度又は、これより軟らかい(低硬度)であれば、前記した一体感を阻害しない。
【0041】
またインサート50の材質と型成形材の材質を相溶性のある材質にすることもできる。この場合もインサート50と型成形部Mとに一体感ができ、センサー付きウェザーストリップ30の取扱いを容易にすることができる。さらに、水の浸入の更なる防止を目的に異なる別の樹脂材(接着剤)でインサート50を包む必要があったとしても、インサート50の材質と型成形材の材質に相溶性があれば、両者と良好に接着する接着剤の選定が容易である。また、両者が融着する程度に同質であると接着剤などを使用せずともインサート50が型成形時に密着することができるため、接着剤を使わずとも外部からの水の内部電気部品や配線への侵入を防止することができる。なお相溶性があるとは、狭義には両者が融着する程度に同質のものであることを意味し、例えば、一方の材質がTPOである場合は、ポリプロピレン,ポリエチレン,TPO、又はオレフィン系樹脂を含有する各種TPEであればよい。オレフィン系樹脂を含有する各種TPEとしてはスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)があげられる。また一方の材質がTPSである場合は、これにオレフィン系樹脂が含有されていれば前記したTPOに対すると同様な材質を、相溶性があって、特に溶着又は融着する程度に同質として選択できる。
【0042】
なお、本実施形態では、第1中型103に設けられた第1ピン103aに当接するインサート50の第1凹部53をインサート50の上下方向(長手方向)に間隔をあけて3カ所設け、第2中型104に設けられた第2ピン104aに当接するインサート50の第2凹部54をインサート50の上下方向(長手方向)に間隔をあけて8カ所設けるようにしたが、型成形時にインサート50が位置ずれしないように中型に形成された第1ピン103a・第2ピン104aとインサート50側の凹部を当接させて固定するものであれば固定箇所の数や固定方法は特に限定されるものではない。
【0043】
また、本発明の実施形態では、スライドドア1が前後方向に移動する車両において、スライドドア1側の湾曲部1a,1bにウェザーストリップ30を取付けたものを例にして説明したが、ボディ側開口部に形成された湾曲部にウェザーストリップ30を取付けるものであってもよい。
また、ウェザーストリップ30をバックドアの湾曲部やサンルーフの湾曲部に適用することもできる。
また、異物検知用のセンサー付きのウェザーストリップ30で、センサーが中空部に一体化されている場合を例に説明したが、センサーが中空部に一体化されてなく、後挿入されているウェザーストリップを湾曲部に沿って取付ける場合であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 スライドドア
1a,1b 湾曲部
2 フロントドア
3 ドアハンドルノブ
3a,3b 窪み
10 ウェザーストリップ
21 取付基部
21a 車内側側壁
21b 車外側側壁
21bM 型成形車外側側壁
21c 連結壁
22 中空部
24 保持リップ
25 芯材
26 中空シール部
26a 取付壁
26K 取付壁切欠部
26M 型成形中空シール部
26M1 型成形傾斜壁
26M2 型成形取付壁
30 ウェザーストリップ
31,32 芯線
33 空間部
34,35 導電性のゴム様弾性体
50 インサート
51 上端
52 下端
53 第1凹部(凹部)
54 第2凹部(凹部)
55 突出部
56 車内側平面部
57 車外側小突部
58 車内側小突部
59 前側突部
100 金型
101 上型
102 下型
103 第1中型
103a 第1ピン
104 第2中型
104a 第2ピン
105 第3中型
105a 突出ピン
BL ベルトライン
CH クリップ取付用の穴
F フランジ
K 切欠部
M 型成形部
NH 中型抜き穴
S センサー(感圧センサー)