(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079259
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】硬貨処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 3/00 20060101AFI20230601BHJP
G07D 11/12 20190101ALI20230601BHJP
【FI】
G07D3/00 C
G07D11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192634
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】木村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】山野 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】古林 克規
(72)【発明者】
【氏名】立花 祐也
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141FB01
3E141FC06
3E141FG03
3E141GA02
3E141HA06
3E141HA09
3E141JA14
3E141KA06
3E141LA01
3E141LA11
3E141LA23
3E141LA33
3E141LA43
(57)【要約】
【課題】出金処理の際、入出金部への硬貨の出金に要する時間を短縮でき得る硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】硬貨処理装置10は、硬貨が入金および出金される入出金部110と、入出金部110から排出された硬貨を受け入れて繰り出す繰出部120と、繰出部120から繰り出された硬貨が一時的に収納される一時保留部130と、硬貨が金種別に収納され、出金処理の際に硬貨が出金される複数の金種別収納部150と、繰出部120から繰り出された硬貨を一時保留部130へ搬送するとともに、一時保留部130から出された硬貨を複数の金種別収納部150へ搬送する入金搬送部190と、複数の金種別収納部150から出金された硬貨を入出金部110へ搬送する出金搬送部200と、を備える。入出金部110の後側(所定方向側)に、全ての複数の金種別収納部150が列状に並んで配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が入金および出金される入出金部と、
前記入出金部から排出された硬貨を受け入れて繰り出す繰出部と、
前記繰出部から繰り出された硬貨が一時的に収納される一時保留部と、
硬貨が金種別に収納され、出金処理の際に硬貨が出金される複数の金種別収納部と、
前記繰出部から繰り出された硬貨を前記一時保留部へ搬送するとともに、前記一時保留部から出された硬貨を前記複数の金種別収納部へ搬送する入金搬送部と、
前記複数の金種別収納部から出金された硬貨を前記入出金部へ搬送する出金搬送部と、を備え、
前記入出金部の所定方向側に、全ての前記複数の金種別収納部が列状に並んで配置される、
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記入出金部は、前記複数の金種別収納部よりも低い位置に配置されて硬貨を受ける受皿部を含み、
前記複数の金種別収納部は、底部から硬貨が出される構成を有し、
前記出金搬送部は、前記複数の金種別収納部の配列方向に延びて各前記金種別収納部の底部から排出された硬貨を前記入出金部へと搬送するコンベアにより構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記入出金部の下方に、前記繰出部が配置され、
前記繰出部の前記所定方向側に、前記繰出部と隣り合うように前記一時保留部が配置される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記入金搬送部には、前記一時保留部よりも上流側に、硬貨を識別する識別部が配置され、
前記一時保留部から出された硬貨を前記繰出部へ戻す戻し搬送部を、さらに備え、
前記入金搬送部は、前記戻し搬送部により前記繰出部に戻されて前記繰出部から繰り出された硬貨を前記複数の金種別収納部へ搬送する、
ことを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記繰出部は、鉛直方向に対して傾く回転円盤により硬貨を繰り出す構成を有し、
前記複数の金種別収納部の下方に配置され、前記回転円盤の傾きに対応して傾く第1基盤と、前記第1基盤の上方且つ前記複数の金種別収納部の側方に縦向きに配置された第2基盤と、をさらに備え、
前記入金搬送部は、硬貨が流れる入金搬送路を含み、
前記入金搬送路は、
前記第1基盤に設置された第1搬送路と、
前記第2基盤に設置された第2搬送路と、
前記第1搬送路と前記第2搬送路との間を中継し、硬貨の姿勢を、前記第1搬送路を流れる姿勢から前記第2搬送路を流れる姿勢に変える中継搬送路と、を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記第2搬送路は、前記第2基盤における前記複数の金種別収納部に対向しない面に設置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記入出金部は、硬貨を受ける受皿部を含み、
前記入金搬送部は、硬貨が流れる入金搬送路を含み、
前記入金搬送路における前記受皿部より高い位置から分岐し、前記入金搬送路を流れた硬貨を前記受皿部に排出する排出路を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の硬貨処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨の入出金等を行う硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨が入金または出金される入出金部と、入出金部から排出された硬貨を受け入れて繰り出す入金繰出部と、硬貨が一時的に収納される一時保留部と、硬貨が金種別に収納される複数の収納繰出部(金種別収納部)と、硬貨を搬送する搬送部とを備える硬貨処理装置が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の硬貨処理装置では、筐体内の前側上部に入出金部が配置され、入出金部の後方に、一時保留部と一部の収納繰出部とがこの順に前後に並んで配置される。入出金部の下方に入金繰出部が配置され、繰出部の後方に、残りの収納繰出部が前後に並んで配置される。入金繰出部と、一時保留部と、複数の収納繰出部と、入出金部とを繋ぐように搬送部が配置される。搬送部は、入金繰出部から後方へ延び、最後尾の収納繰出部の後方で上方へと延びるように折り返され、前方へと延びて入出金部へと至る。
【0004】
入金処理の際には、入出金部に入金された硬貨が、一旦、入金繰出部に収納され、入金繰出部から搬送部に繰り出される。繰り出された硬貨は、搬送部により搬送されて一時保留部に収納される。入金が確定すると、一時保留部から硬貨が搬送部に繰り出される。繰出された硬貨は、搬送部により搬送され、金種に応じた収納繰出部に収納される。
【0005】
出金処理の際には、出金額に応じた金種の硬貨が、その金種に割り当てられた収納繰出部から搬送部に繰り出される。繰り出された硬貨は、搬送部により搬送され、入出金部に出金される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記硬貨処理装置は、入出金部の後方に一時保留部を挟んで一部の収納繰出部が並ぶとともに、一時保留部と一部の収納繰出部の下方に残りの収納繰出部が並ぶよう構成されているため、複数の収納繰出部全体として、収納繰出部から入出金部への出金経路が長くなる。このため、入出金部への硬貨の出金に要する時間(出金時間)が長くなりやすい。
【0008】
さらに、上記硬貨処理装置では、入出金部と上側の最も前の収納繰出部との間に一時保留部が位置しており、入金繰出部から延びた搬送部が、全ての収納繰出部を通って一時保留部へ至るため、一時保留部への入金経路が長くなる。このため、硬貨の入金処理の際、入金を確定するまでに要する時間(係員等が装置から離れられるまで時間)が長くなりやすい。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、出金処理の際、入出金部への硬貨の出金に要する時間を短縮でき得る硬貨処理装置を提供することを目的とする。また、本発明は、入金処理の際、入金を確定するまでに要する時間を短縮でき得る硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主たる態様に係る硬貨処理装置は、硬貨が入金および出金される入出金部と、前記入出金部から排出された硬貨を受け入れて繰り出す繰出部と、前記繰出部から繰り出された硬貨が一時的に収納される一時保留部と、硬貨が金種別に収納され、出金処理の際に硬貨が出金される複数の金種別収納部と、前記繰出部から繰り出された硬貨を前記一時保留部へ搬送するとともに、前記一時保留部から出された硬貨を前記複数の金種別収納部へ搬送する入金搬送部と、前記複数の金種別収納部から出金された硬貨を前記入出金部へ搬送する出金搬送部と、を備える。前記入出金部の所定方向側に、全ての前記複数の金種別収納部が列状に並んで配置される。
【0011】
上記の構成によれば、複数の金種別収納部全体として、入出金部への硬貨の出金経路が短くなる。これにより、出金処理の際、入出金部への硬貨の出金に要する時間を短縮できる。
【0012】
本態様に係る硬貨処理装置において、前記入出金部は、前記複数の金種別収納部よりも低い位置に配置されて硬貨を受ける受皿部を含むような構成とされ得る。この場合、前記複数の金種別収納部は、底部から硬貨が出される構成を有し得る。さらに、前記出金搬送部は、前記複数の金種別収納部の配列方向に延びて各前記金種別収納部の底部から排出された硬貨を前記入出金部へと搬送するコンベアにより構成され得る。
【0013】
上記の構成によれば、各金種別収納部の底部から硬貨が排出されてコンベアにより直線的に受皿部へと搬送されるので、各金種別収納部より低い位置に配置された受皿部へ短い搬送経路で硬貨を搬送できる。
【0014】
本態様に係る硬貨処理装置において、前記入出金部の下方に、前記繰出部が配置され、前記繰出部の前記所定方向側に、前記繰出部と隣り合うように前記一時保留部が配置されるような構成が採られ得る。
【0015】
上記の構成によれば、入出金部から一時保留部への入金経路を短くできるので、入金処理の際、入出金部の硬貨を一時保留部に収納させるのに要する時間を短縮できる。これにより、係員等が入金を確定させて硬貨処理装置から離れることができるようになるまで時間を短くできる。
【0016】
上記の構成とされた場合、さらに、前記入金搬送部には、前記一時保留部よりも上流側に、硬貨を識別する識別部が配置され、前記一時保留部から出された硬貨を前記繰出部へ戻す戻し搬送部が、さらに備えられ、前記入金搬送部が、前記戻し搬送部により前記繰出部に戻されて前記繰出部から繰り出された硬貨を前記複数の金種別収納部へ搬送するような構成が採られ得る。
【0017】
このような構成とされれば、一時保留部に収納される硬貨だけでなく、一時保留部から出されて金種別収納部に収納される硬貨を、同じ識別部により識別できる。また、一時保留部と繰出部とが隣り合っているので、戻し搬送部による搬送経路が短くなり、硬貨を繰出部へ素早く戻すことができる。
【0018】
本態様に係る硬貨処理装置において、前記繰出部は、鉛直方向に対して傾く回転円盤により硬貨を繰り出す構成を有し得る。また、前記複数の金種別収納部の下方に配置され、前記回転円盤の傾きに対応して傾く第1基盤と、前記第1基盤の上方且つ前記複数の金種別収納部の側方に縦向きに配置された第2基盤と、がさらに備えられ得る。さらに、前記入金搬送部は、硬貨が流れる入金搬送路を含むような構成とされ得る。そして、前記入金搬送路は、前記第1基盤に設置された第1搬送路と、前記第2基盤に設置された第2搬送路と、前記第1搬送路と前記第2搬送路との間を中継し、硬貨の姿勢を、前記第1搬送路を流れる姿勢から前記第2搬送路を流れる姿勢に変える中継搬送路と、を含むような構成とされ得る。
【0019】
上記の構成によれば、回転円盤の傾きに対応して傾く第1基盤のみが備えられ、入金搬送路全体が第1基盤に設置されるような構成とされる場合に比べて、第1基盤が傾く方向の装置サイズをコンパクトにできる。さらに、中継搬送路において硬貨の姿勢が、第1搬送路を流れる姿勢から第2搬送路を流れる姿勢に変えられるので、第1搬送路から第2搬送路へ硬貨を円滑に受け渡すことができる。
【0020】
上記の構成とされた場合、さらに、前記第2搬送路は、前記第2基盤における前記複数の金種別収納部に対向しない面に設置されるような構成とされ得る。
【0021】
このような構成とされれば、第2搬送路において硬貨詰まりが発生したときに、第2搬送路に対して金種別収納部や入出金部が存在しない側からアクセスできるため、硬貨詰まりの解消作業が行いやすくなる。
【0022】
本態様に係る硬貨処理装置において、前記入出金部は、硬貨を受ける受皿部を含むような構成とされ得る。また、前記入金搬送部は、硬貨が流れる入金搬送路を含むような構成とされ得る。さらに、前記入金搬送路における前記受皿部より高い位置から分岐し、前記入金搬送路を流れた硬貨を前記受皿部に排出する排出路が、さらに備えられ得る。
【0023】
上記の構成によれば、入金された硬貨を金種別収納部に収納せずに返却する場合に、返却する硬貨を、排出路を通じて入出金部に排出できるので、硬貨の返却先が入金先と同じになり、分かりやすい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、出金処理の際、入出金部への硬貨の出金に要する時間を短縮でき得る硬貨処理装置を提供できる。さらに、本発明によれば、入金処理の際、入金を確定するまでに要する時間を短縮でき得る硬貨処理装置を提供できる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1(a)、(b)は、実施形態に係る、硬貨処理装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態に係る、硬貨処理装置の構成を示す概略図であり、
図2(b)は、実施形態に係る、一時保留部および戻し搬送部の構成を示す平面図である。
【
図3】
図3(a)は、実施形態に係る、第1基盤、第2基盤および入金搬送路を模式的に示す斜視図である。
図3(b)、(c)は、それぞれ、実施形態に係る、第1搬送路および第2搬送路の構成を示す断面図である。
図3(d)は、実施形態に係る、中継搬送路の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る、入出金トレイおよび回動機構の構成を示す正面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のA-A´断面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、実施形態に係る、入出金トレイと、保持板が省略された回動機構とを示す側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、硬貨処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、実施形態に係る、硬貨処理装置の入金処理について説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、硬貨処理装置の入金処理について説明するための図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、実施形態に係る、硬貨処理装置の出金処理について説明するための図である。
【
図10】
図10(a)は、実施形態に係る、硬貨処理装置の自動精査処理について説明するための図である。
図10(b)は、実施形態に係る、硬貨処理装置の回収処理について説明するための図である。
【
図11】
図11(a)は、実施形態に係る、入出金トレイからの硬貨の小分け排出動作のために制御部により実行される制御処理を示すフローチャートである。
図11(b)~(e)は、実施形態に係る、硬貨の小分け排出動作について説明するための図である。
【
図12】
図12(a)は、実施形態に係る、入出金トレイの揺動動作のために制御部により実行される制御処理を示すフローチャートである。
図12(b)~(d)は、実施形態に係る、入出金トレイの揺動動作について説明するための図である。
図12(e)は、入出金トレイの変形例を示す図である。
【
図13】
図13は、変更例1に係る、入出金トレイユニットの構成を示す正面断面図である。
【
図14】
図14(a)、(b)は、変更例1に係る、入出金トレイユニットの構成を示す側面断面図である。
【
図15】
図15(a)~(f)は、変更例1に係る、硬貨の小分け排出動作について説明するための図である。
【
図16】
図16(a)~(c)は、変更例1に係る、回動体の揺動動作について説明するための図である。
【
図17】
図17(a)、(b)は、変更例2に係る、硬貨処理装置の入金処理におけるリジェクト硬貨の返却動作について説明するための図である。
【
図18】
図18(a)、(b)は、変更例3に係る、硬貨処理装置の入金処理について説明するための図である。
【
図19】
図19(a)は、変更例4に係る、入金処理において制御部により実行される、一時保留部に保留された硬貨を収納するための制御処理を示すフローチャートである。
図19(b)は、変更例4に係る、高速収納処理が行われたときの硬貨の収納動作について説明するための図である。
【
図20】
図20(a)、(b)は、変更例5に係る、硬貨処理装置の出金処理について説明するための図である。
【
図21】
図21は、変更例6に係る、硬貨処理装置の出金処理について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1(a)、(b)は、硬貨処理装置10の構成を示す概略図である。
図1(a)は、硬貨処理装置10を側面から見た図であり、
図1(b)は、硬貨処理装置10を正面から見た図である。
図2(a)は、硬貨処理装置10の構成を示す概略図であり、
図2(b)は、一時保留部130および戻し搬送部140の構成を示す平面図である。
図2(a)では、
図1(b)に示す構成から入出金部110、繰出部120等の一部の構成が省略されている。
図3(a)は、第1基盤231、第2基盤232および入金搬送路191を模式的に示す斜視図である。
図3(b)、(c)は、それぞれ、第1搬送路192および第2搬送路193の構成を示す断面図である。
図3(d)は、中継搬送路194の構成を示す平面図である。
【0029】
硬貨処理装置10において、筐体100の前後左右の側面のうち、入出金口101が設けられた面を、筐体100、即ち硬貨処理装置10の前面(正面)として、以下、説明を行う。
【0030】
硬貨処理装置10は、硬貨の入金処理、出金処理等の取引処理を行う。硬貨処理装置10は、紙幣処理装置20および端末装置30とともに貨幣処理システム1を構成し(
図6参照)、金融機関のカウンタの後方に設置され、行員により利用される。また、硬貨処理装置10は、金融機関の顧客ロビーに設置され、一般顧客に利用されたり、流通店舗に設置されて店員等に利用されたりし得る。紙幣処理装置20は、紙幣の入金処理、出金処理等の取引処理を行う。端末装置30は、タッチパネル等の操作表示部を有し、操作表示部において、取引処理に関する各種画面の表示と各種操作の受付とを行う。なお、硬貨処理装置10は、金融機関等に単体で設置されてもよいし、ATM(automatic teller machine)に組み込まれてもよい。さらに、硬貨処理装置10が操作表示部を備えていてもよい。
【0031】
硬貨処理装置10は、方形箱状の筐体100を備える。筐体100の前面には、上部に入出金口101が設けられ、下部に返却口102が設けられる。入出金口101は、内側から扉体103により閉鎖される。扉体103が後方へ移動すると、入出金口101が開放される。返却口102は、扉体104により閉鎖される。扉体104が上方へ移動すると、返却口102が開放される。
【0032】
硬貨処理装置10は、筐体100内に、入出金部110と、繰出部120と、一時保留部130と、戻し搬送部140と、複数の金種別収納部150と、リジェクト部160と、第1収納カセット170と、第2収納カセット180と、入金搬送部190と、出金搬送部200と、を備える。本実施形態では、一例として、硬貨処理装置10が、6つの金種別収納部150を備えている。
【0033】
入出金部110は、筐体100内の上部前側に設けられ、入出金口101に繋がる。入出金部110には、入出金口101を通じて硬貨が入金される。また、入出金部110には、各金種別収納部150に収納された硬貨が出金される。出金された硬貨は、入出金口101を通じて取り出される。
【0034】
入出金部110は、入出金口101の下側において硬貨を受ける、受皿部である入出金トレイ111を含む。入出金トレイ111は、後述する回動機構300によって前後方向に回動させることができる。硬貨の入金時には、硬貨が収容された入出金トレイ111が、後側が低くなるように徐々に傾けられ、入出金トレイ111から硬貨が少しずつ排出される。排出された硬貨は、入出金トレイ111の後側の下方に配置された入金シュート210に放出される。また、硬貨の出金中には、入出金トレイ111が前後に細かく揺らされる。
【0035】
なお、入出金トレイ111と回動機構300の詳細な構成については、追って説明する。
【0036】
繰出部120は、入出金部110の下方に配置され、入出金部110と上下方向に重なる。繰出部120は、入出金部110から排出された硬貨を受け入れて繰り出す。
【0037】
繰出部120は、ハウジング121と、ハウジング121内に配置された回転円盤122および受渡円盤123を含む。
図1(b)に示すように、回転円盤122および受渡円盤123は、鉛直方向に対して所定角度だけ傾いている。各ハウジング121に設けられた投入口121aに、入金シュート210の下端が接続される。入金シュート210内を落下した硬貨が、ハウジング121内、即ち繰出部120に収納される。
【0038】
回転円盤122の表面には多数の突起が形成される。回転円盤122が回転すると、繰出部120内の硬貨が突起に引っ掛けられて出口部へと運ばれる。硬貨は出口部で受渡円盤123へと受け渡され、受渡円盤123の回転により入金搬送部190の入金搬送路191へと送り出される。このようにして、繰出部120は、入出金部110から受け取った硬貨を、一枚ずつ入金搬送路191へ繰り出す。
【0039】
繰出部120には、硬貨量を検知するための量検知センサ124が設けられる。量検知センサ124は、発光センサ124aと受光センサ124bとを含む。繰出部120に規定量の硬貨が収納されると、硬貨が量検知センサ124の検出ラインを横切る。発光センサ124aからの光が硬貨で遮光されて受光センサ124bに受光されなくなる。これにより、繰出部120への規定量の硬貨の収納を検知できる。規定量は、硬貨が多過ぎず、硬貨が詰まらずに円滑に繰出部120から排出できる適度な量に設定され得る。
【0040】
一時保留部130は、繰出部120の後方に、繰出部120と隣り合うように配置され、前後方向に繰出部120と重なる。一時保留部130は、繰出部120および複数の金種別収納部150から繰り出された硬貨を一時的に保留(収納)する。一時保留部130は、ホッパー形状を有し、前側の本体部131と後側の扉部132とにより構成される。扉部132は、開閉機構(図示せず)によって上方に開放可能である(
図1(a)の破線参照)。一時保留部130には、上面の開口から硬貨が収納される。一時保留部130は、戻し搬送部140と一体化されて一時保留モジュールを構成する。
【0041】
戻し搬送部140は、ベルトコンベアにより構成され、搬送ベルト141を含む。搬送ベルト141は、後側が水平に延び、前側が繰出部120の投入口121aまで上り傾斜するように延びる。戻し搬送部140は、一時保留部130の底部に接続される。
図2(b)に示すように、搬送ベルト141が一時保留部130の底面の一部となって内部に露出する。搬送ベルト141には、全面に、一対の突起141aが500円硬貨の径よりも広い間隔で配列されており、2組の一対の突起141aの間に硬貨が収まる。戻し搬送部140の一時保留部130よりも前側部分には、搬送ベルト141の両側にガイド142が設けられる。
【0042】
図2(b)の実線矢印のように、搬送ベルト141が前方向に周回すると、搬送ベルト141に載っている一時保留部130内の硬貨が前方向に送られて排出口133から排出される。排出された硬貨は、続けて搬送ベルト141により搬送され、投入口121aへ放出されて繰出部120内に収納される。
【0043】
一方、
図2(b)の破線矢印のように、搬送ベルト141が後方向に周回すると、一時保留部130内の硬貨が後方向に送られる。このときには扉部132が開放され、一時保留部130の後側から硬貨が排出される。
【0044】
複数(6つ)の金種別収納部150は、全てが、入出金部110の所定方向側である後側に、一列に並んで配置され、入出金部110と前後方向に重なる。複数の金種別収納部150は、入出金部110との間に一時保留部130等の他の収納部を挟むことなく、入出金部110と隣り合って配置される。各金種別収納部150には、1円、5円、10円、50円、100円、500円の金種うち、それぞれに割り当てられた金種の硬貨が収納される。入出金部110において、入出金トレイ111は、複数の金種別収納部150よりも低い位置に配置される。
【0045】
各金種別収納部150は、ホッパー形状を有する。各金種別収納部150には、上面の開口から硬貨が収納される。各金種別収納部150には、底部に回転円盤151が配置されており、底部の側面に排出口152が形成されている。回転円盤151には、周方向に並ぶ複数の収容穴が形成されており、各収納穴に一枚ずつ硬貨が収まる。回転円盤151が回転すると、各収納穴に収まった硬貨が順次、排出口152から排出される。即ち、各金種別収納部150では、底部から一枚ずつ硬貨が繰り出される。
【0046】
リジェクト部160は、筐体100内の下部前側に設けられ、返却口102に繋がる。リジェクト部160は、硬貨を受けるリジェクトトレイ161を含む。リジェクトトレイ161には、入金処理等において正常硬貨と見做されなかった硬貨(汚損硬貨、外国硬貨等)が、リジェクト硬貨として返却される。また、リジェクトトレイ161には、繰出部120に残留した硬貨(変形硬貨等)や異物が、返却シュート220を通じて排出される。
【0047】
第1収納カセット170および第2収納カセット180は、繰出部120および一時保留部130の下方であってリジェクト部160の後方に、前後に並ぶように配置される。
【0048】
第1収納カセット170は、各金種別収納部150に収納しきれない硬貨や各金種別収納部150から回収された硬貨などが収納される収納部である。第1収納カセット170には、天面に硬貨の投入口171が設けられる。
【0049】
第2収納カセット180は、各金種別収納部150から回収された硬貨などが収納される収納部である。第2収納カセット180には、天面における一時保留部130の扉部132の真下の位置に硬貨の投入口181が設けられる。一時保留部130の後側から排出された硬貨が、投入口181を通じて第2収納カセット180に収納される。
【0050】
第1収納カセット170および第2収納カセット180は、筐体100内から外部へ引き出すことができ、引き出された収納カセット170、180から硬貨を取り出すことができる。
【0051】
入金搬送部190は、繰出部120と、一時保留部130と、複数の金種別収納部150との間に巡らされ、繰出部120から繰り出された硬貨を一時保留部130へ搬送するとともに、一時保留部130から排出された硬貨を複数の金種別収納部150へ搬送する。一時保留部130から排出された硬貨は、戻し搬送部140により繰出部120に一度戻される。入金搬送部190は、戻された後に繰出部120から繰り出された硬貨を複数の金種別収納部150へ搬送する。
【0052】
筐体100内には、入金搬送部190に関連して、所定形状を有する第1基盤231と第2基盤232とが設置される。第1基盤231は、複数の金種別収納部150の下方に配置され、繰出部120の回転円盤122とほぼ平行となるように、回転円盤122の傾きに対応して傾く。第2基盤232は、第1基盤231の上方且つ複数の金種別収納部150の左側方に縦向き(ほぼ鉛直)に配置される。
図3(a)に示すように、第2基盤232の前側の下端部が第1基盤231よりも下方に延び、第1基盤231の後側の上端部が第2基盤232よりも左方に延びる。第1基盤231および第2基盤232は、1つの部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてよい。
【0053】
入金搬送部190は、硬貨が流れる入金搬送路191を含む。入金搬送路191は、第1搬送路192と、第2搬送路193と、中継搬送路194とを含む。
【0054】
第1搬送路192は、第1基盤231の上側であって右側である面に設置される。第1搬送路192は、第1基盤231の第2基盤232よりも右側部分において繰出部120の出口部の位置から後方へ延びた後、一時保留部130を越えた位置で上側に折り返され、第1基盤231の第2基盤232よりも左側部分において前方に延びるような構成を有する。
【0055】
第2搬送路193は、第2基盤232の左側の面、即ち、複数の金種別収納部150に対向しない面に設置される。第2搬送路193は、第2基盤232の下端部分において前方に延びた後、第2基盤232の前端部分において屈曲して上方へと延び、複数の金種別収納部150の高さを超えた位置で屈曲して後方へと延び、最後尾の金種別収納部150の位置に至るような構成を有する。
【0056】
図3(b)、(c)に示すように、第1搬送路192および第2搬送路193は、硬貨の表裏面が接する搬送面192a、193aと、搬送面192a、193aの幅方向の両端から立ち上がるガイド面192b、193bとを含む。第1搬送路192および第2搬送路193には、それぞれ、搬送面192a、193aと対向するように、第1搬送路192および第2搬送路193に沿って周回するループ状の第1ベルト195および第2ベルト196が配置される。第1ベルト195および第2ベルト196には、全周に亘って、搬送面192a、193aに向かって突出する複数の突起195a、196aが、500円硬貨の径よりも広い間隔で形成されている。第1搬送路192および第2搬送路193において、硬貨は、突起195a、196aに押されて搬送面192a、193a上を滑るように移動する。この際、硬貨は、第1搬送路192では鉛直方向に対して傾いた姿勢で流れ、第2搬送路193では鉛直方向に起立した姿勢で流れる。
【0057】
中継搬送路194は、第1搬送路192と第2搬送路193との間を中継し、硬貨の姿勢を、第1搬送路192を流れる姿勢(斜め姿勢)から第2搬送路193を流れる姿勢(起立姿勢)に変える。
【0058】
図3(d)に示すように、中継搬送路194は、第1搬送路192の搬送面192aと平行な導入面194aと、第1搬送路192から第2搬送路193に向かって下り傾斜するスロープ面194bと、導入面194aから徐々に立ち上がりつつスロープ面194b側へと迫り出す変換面194cとを含む。導入面194aとスロープ面194bの両側には、ガイド部194dが設けられる。第1搬送路192から中継搬送路194へ流れてきた斜め姿勢の硬貨は、導入面194aから変換面194cへと流れ、変換面194cに案内されて徐々に立ち上がり、起立姿勢となってスロープ面194bを下り、第2搬送路193へと至る。
【0059】
入金搬送部190には、入金搬送路191の一時保留部130よりも上流側に入金識別部240が配置される。入金識別部240は、入金搬送路191を流れる硬貨の属性として、硬貨の真偽、金種、正損等を識別する。さらに、入金識別部240は、硬貨の計数を行う。
【0060】
入金搬送部190の第1搬送路192には、一時保留部130に対応する位置に、一時保留部130に硬貨を振り分ける第1振分機構251が設けられ、第1振分機構251よりも下流の位置に、第1収納カセット170に硬貨を振り分ける第2振分機構252が設けられる。
【0061】
第1振分機構251により振り分けられた硬貨は、第1搬送路192から一時保留部130の上面開口へと延びる第1シュート261を通じて一時保留部130に収納される。第2振分機構252により振り分けられた硬貨は、第1搬送路192から第1収納カセット170の投入口171へと延びる第2シュート262を通じて第1収納カセット170に収納される。
【0062】
入金搬送部190の第2搬送路193には、最前列の金種別収納部150より上流であって入出金トレイ111よりも高い位置に、入出金部110またはリジェクト部160に硬貨を振り分ける第3振分機構253が設けられる。また、第2搬送路193には、最後尾の金種別収納部150を除く各金種別収納部150に対応する位置に、各金種別収納部150に硬貨を振り分ける第4振分機構254が設けられる。
【0063】
第3振分機構253により振り分けられた硬貨は、第2搬送路193からリジェクト部160へと延びる第3シュート263を通って、リジェクトトレイ161に排出される。あるいは、第3振分機構253により振り分けられた硬貨は、第3シュート263から分岐する第4シュート264を通って、入出金トレイ111に排出される。第3シュート263と第4シュート264の分岐位置には、これらシュートへの硬貨の振り分けを行う第5振分機構255が設けられる。第3シュート263における第4シュート264よりも上流側部分と第4シュート264とにより、入金搬送路191を流れた硬貨を入出金トレイ111に排出する排出路が構成される。
【0064】
各第4振分機構254により振り分けられた硬貨は、第2搬送路193から各金種別収納部150の上面開口へと延びる第5シュート265を通じて各金種別収納部150に収納される。第2搬送路193を流れて最後尾の金種別収納部150の位置に至った硬貨は、当該金種別収納部150の上面開口へと延びる第5シュート265を通じて当該金種別収納部150に収納される。
【0065】
出金搬送部200は、複数の金種別収納部150から出金された硬貨を入出金部110へ搬送する。出金搬送部200は、複数の金種別収納部150の配列方向に延びるベルトコンベア201により構成される。ベルトコンベア201は、各金種別収納部150の底部の排出口152から排出された硬貨が落下する位置に配置され、排出された硬貨を、前方の入出金部110へと搬送する。ベルトコンベア201の前方には、出金スロープ270が配置されており、硬貨は、出金スロープ270を滑り落ちて入出金トレイ111に後方から収納される。
【0066】
なお、本実施形態では、出金搬送部200および出金スロープ270の位置が、入出金トレイ111の中央部よりも右の側面部111a側に寄った位置とされている。しかしながら、出金搬送部200および出金スロープ270の位置が、入出金トレイ111の中央部の位置とされてもよい。
【0067】
出金搬送部200には、ベルトコンベア201の前端部の上方に、分離ローラ202が配置されている。分離ローラ202によって、2枚以上に重なった硬貨が一枚ずつの硬貨に分離される。
【0068】
出金スロープ270には、出金識別部280が配置される。出金識別部280は、入出金トレイ111に出金される硬貨の属性として、硬貨の真偽、金種、正損等を識別する。さらに、出金識別部280は、硬貨の計数を行う。
【0069】
筐体100の前面は、上側が扉になっており、入金搬送部190で硬貨詰まり(ジャム)が発生した際には、扉を開いて、入出金部110、繰出部120、一時保留部130、戻し搬送部140および入金搬送部190が一体となった入金ユニットを、筐体100の外へ引き出すことができる。さらに、出金搬送部200で硬貨詰まりが発生した際には、扉を開いて、複数の金種別収納部150および出金搬送部200が一体となった出金ユニットを、筐体100の外へ引き出すことができる。なお、入金ユニットと出金ユニットを一体させて、同時に筐体100から引き出すこともできる。
【0070】
図4(a)は、入出金トレイ111および回動機構300の構成を示す正面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のA-A´断面図である。
図5(a)、(b)は、入出金トレイ111と、保持板310が省略された回動機構300とを示す側面図である。
図5(a)は、入出金トレイ111が傾けられていない状態を示し、
図5(b)は、入出金トレイ111が傾けられた状態を示す。
【0071】
入出金部110には、硬貨が溜められる入出金トレイ111の他、入出金トレイ111を回動させるための回動機構300が設けられる。また、入出金部110には、入出金トレイ111内にフル状態(満杯)に硬貨が収容されていることを検知するための2つのフル検知センサ291と、入出金トレイ111に硬貨が残留していることを検知するための3つの残留検知センサ292とが設けられる。
【0072】
入出金トレイ111は、左右方向に長く、底部が円弧状に湾曲したトレイ(受皿)である。入出金トレイ111は、後側の上端が前側の上端よりも低くなっている。入出金トレイ111の両側面部111aには、外側に突出する円柱状の回動軸112が設けられる。また、両側面部111aには、上部の位置にフル検知センサ291の光を通す2つの上孔113が形成され、下端部の位置に残留検知センサ292の光を通す3つの下孔114が形成される。上孔113の高さ位置が、フル検知センサ291によるフル状態の検知ラインL1となる。
【0073】
回動機構300は、保持板310と、モータ320と、第1カム330と、第2カム340と、レバー350と、フォトセンサ360と、を含む。回動機構300は、入出金トレイ111を、当該トレイが開口する方向である上方向に垂直な、左右に延びる軸周りに回動させる。
【0074】
保持板310は、両側面部311と後面部312とで構成され、左右両側と後側とから入出金トレイ111を囲む。入出金トレイ111の左右の回動軸112が、保持板310の両側面部311に形成された軸孔313に挿入される。これにより、保持板310は、入出金トレイ111を回動可能に支持する。
【0075】
後面部312には、出金スロープ270に対応する位置に開口部314が形成される。また、後面部312からは、閉塞板315が、入出金トレイ111の後側上端に向けて斜め下方向に延び、入出金トレイ111と後面部312と間の隙間を塞いている。出金搬送部200から排出されて出金スロープ270を下った硬貨は、開口部314および閉塞板315を通って、入出金トレイ111内に投出される。
【0076】
モータ320は、保持板310の後方に配置される。たとえば、モータ320は、保持板310の後面部312にブラケット(図示せず)を介して取り付けられる。モータ320は、その回転軸321の回転角度を検知するセンサ(図示せず)を有する。
【0077】
第1カム330は、円板状を有し、入出金トレイ111の一方の回動軸112の先端に取り付けられる。第1カム330には、中心からずれた位置にカム軸331が設けられる。第1カム330には、外周縁部に切欠部332が形成される。
図5(a)に示すように、入出金トレイ111が傾いていない位置(以下、「初期位置」と称する)にあるとき、切欠部332が最下部に位置する。
【0078】
第2カム340は、円板状を有し、モータ320の回転軸321に取り付けられる。第2カム340には、中心からずれた位置にカム軸341が設けられる。
【0079】
レバー350は、一端が第1カム330のカム軸331に回動可能に接続され、他端が第2カム340のカム軸341に回動可能に接続される。
【0080】
フォトセンサ360は、そのセンサ部が第1カム330の外周縁部を挟むように、第1カム330の下端部に配置される。フォトセンサ360は、切欠部332を光が透過することにより、入出金トレイ111が初期位置にあることを検知する。
【0081】
図5(a)に示すように、入出金トレイ111が初期位置にある状態から、モータ320が動作して第2カム340が後回りに回動すると、レバー350が後方に引かれて第1カム330が後回りに回動し、
図5(b)に示すように、入出金トレイ111が後回りに回動して、その後側が低くなるように傾く。動作開始からのモータ320の回転軸321の回転角度に基づいて、入出金トレイ111の初期位置からの回動角度、即ち傾き角度を検知できる。
【0082】
入出金トレイ111が傾いた位置から初期位置に戻される場合、フォトセンサ360により初期位置が検知されるまで、モータ320の動作によって第2カム340が前回りに回動する。
【0083】
さらに、モータ320を正逆回転動作させて、第2カム340および第1カム330を小さな回動角度で前回りと後回りとに交互に回動させることにより、入出金トレイ111を前後に揺動させることができる。
【0084】
各フル検知センサ291は、フォトセンサであり、入出金トレイ111を挟んで対向する発光素子291aと受光素子291bとを含む。発光素子291aは、保持板310の一方の側面部311に設置され、受光素子291bは、他方の側面部311に設置される。発光素子291aおよび受光素子291bの上下前後の位置が入出金トレイ111の上孔113の上下前後の位置と一致する。入出金トレイ111内に硬貨が溜まり、フル状態の検知ラインL1に到達すると、発光素子291aからの光が硬貨で遮断され、受光素子291bに受光されなくなる。これにより、入出金トレイ111内の硬貨がフル状態となる量(規定量)、即ちフル状態の積載高さに達したことが検知される。
【0085】
各残留検知センサ292は、フォトセンサであり、入出金トレイ111を挟んで対向する発光素子292aと受光素子292bとを含む。発光素子292aは、保持板310の一方の側面部311に設置され、受光素子292bは他方の側面部311に設置される。発光素子292aおよび受光素子292bの上下前後の位置が下孔114の上下前後の位置と一致する。入出金トレイ111の底部に硬貨が残っている場合、発光素子292aからの光が硬貨で遮断され、受光素子292bに受光されない。これにより、入出金トレイ111に硬貨が残留していることが検知される。
【0086】
なお、入出金トレイ111には、入金時、たとえば、600枚の硬貨が収納可能であり、この収納可能枚数の硬貨によりフル状態となる。しかしながら、入出金トレイ111は、出金時の収納可能な硬貨の枚数がフル状態より少ない枚数、たとえば、200枚に制限される。これは、出金搬送部200を搬送された硬貨が入出金トレイ111に投出される入口部分(開口部314の下部、閉塞板315)の位置が、硬貨がフル状態となる位置よりも低いため、入口部分に硬貨が詰まってしまう虞があるためである。
【0087】
繰出部120には、たとえば、200枚の硬貨が収納可能であり、一時保留部130には、たとえば、600枚の硬貨が収納可能である。各金種別収納部150には、たとえば、1000枚の硬貨が収納可能であり、第1収納カセット170および第2収納カセット180には、たとえば、それぞれ、4500枚の硬貨が収納可能である。収納可能な硬貨の量が多い順位に、第1収納カセット170および第2収納カセット180、各金種別収納部150、一時保留部130、入出金トレイ111、繰出部120となる。
【0088】
図6は、硬貨処理装置10の構成を示すブロック図である。
【0089】
硬貨処理装置10は、上記の構成の他、制御部410と、記憶部420と、通信部430と、を備える。
【0090】
制御部410は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を備える。制御部410には、入出金部110のフル検知センサ291および残留検知センサ292、繰出部120の量検知センサ124等の各種検知センサから検知信号が入力される。また、制御部410には、入金識別部240および出金識別部280から識別結果や計数結果を示す信号が入力される。制御部410は、記憶部420に記憶された動作プログラムに従って、入出金部110、繰出部120、一時保留部130、戻し搬送部140、金種別収納部150、入金搬送部190、出金搬送部200等の各部を制御する。
【0091】
記憶部420は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部410の動作プログラムを記憶し、また、制御部410の制御処理の際にワーク領域として利用される。
【0092】
通信部430は、端末装置30との間で通信を行う。制御部410は、端末装置30から送信された各種操作に基づく信号を、通信部430を介して取得する。また、制御部410は、計数結果等の各種情報を、通信部430を介して端末装置30に送信する。
【0093】
なお、端末装置30は、紙幣処理装置20と通信可能であり、各種操作に基づく信号を紙幣処理装置20に送信し、計数結果等の各種情報を紙幣処理装置20から受信する。
【0094】
次に、硬貨処理装置10の動作について説明する。
【0095】
硬貨処理装置10では、制御部410による各部の制御の下、入金処理、出金処理、自動精査処理、回収処理等の取引処理が行われる。以下、入金処理、出金処理、自動精査処理および回収処理の動作について説明する。
【0096】
図7(a)、(b)および
図8は、硬貨処理装置10の入金処理について説明するための図である。
【0097】
係員等により、入出金部110に硬貨が投入され、端末装置30で入金操作が行われる。入金操作に基づいて入金処理が開始される。硬貨が投入されるときに扉体103が開かれ、入金処理が開始されると扉体103が閉じられる。
【0098】
図7(a)に示すように、入出金部110、即ち入出金トレイ111に投入された硬貨が、入金シュート210を介して繰出部120に送られ、繰出部120から入金搬送部190(入金搬送路191)に1枚ずつ繰り出される。この際、入出金トレイ111が少しずつ傾けられて、入出金トレイ111から少しずつ硬貨が排出される。これにより、繰出部120に一気に多くの硬貨が溜まらないので、繰出部120から円滑に硬貨の繰り出しが行える。
【0099】
繰り出された硬貨は、入金搬送部190により搬送されつつ入金識別部240により真偽、金種および正損が識別される。識別の結果、金種が識別でき且つ破損等のない正常硬貨は、計数された後、第1振分機構251で振り分けられて第1シュート261を通じて一時保留部130に収納される。一方、入金識別部240で金種が識別できなかったリジェクト硬貨は、計数されることなく、第3振分機構253で振り分けられて第3シュート263を通じてリジェクトトレイ161に返却される。また、入金された硬貨の中に変形した硬貨、異物等が混在した場合、繰出部120から硬貨が繰りだせない繰出不良が発生し得る。繰出不良が発生した場合、繰出部120に残った変形硬貨や異物が返却シュート220を通じてリジェクトトレイ161に返却される。
【0100】
入金された硬貨の計数結果は、端末装置30の操作表示部に表示される。全ての正常硬貨が一時保留部130に保留された後、計数結果が承認されると端末装置30で入金の確定操作が行われる。この時点で、係員等は、硬貨処理装置10から離れることが可能となる。
【0101】
図7(b)に示すように、一時保留部130内の正常硬貨が戻し搬送部140により繰出部120に戻された後、繰出部120から入金搬送部190に繰り出される。繰出された正常硬貨は、入金搬送部190で搬送されつつ入金識別部240で金種が識別され、対応する第4振分機構254で振り分けられて金種に応じた金種別収納部150に第5シュート265を通じて収納される。
【0102】
収納されるべき金種別収納部150がフル状態で収納できない硬貨(オーバーフロー硬貨)は、第2振分機構252で振り分けられて第2シュート262を通じて第1収納カセット170に収納される。また、入金識別部240で金種が識別できなかった硬貨は、幾度か、一時保留部130と繰出部120と入金搬送部190との間を循環し、入金識別部240で再識別される。最終的に金種が識別できなかった硬貨(機内リジェクト硬貨)は、第2振分機構252で振り分けられて第2シュート262を通じて第1収納カセット170に収納される。
【0103】
計数結果が承認されない場合、端末装置30で硬貨の返却操作が行われる。
図8に示すように、一時保留部130内の硬貨が戻し搬送部140により繰出部120に戻された後、繰出部120から入金搬送部190に繰り出される。繰出された硬貨は、入金搬送部190により搬送され、第3振分機構253および第4振分機構254で振り分けられて第3シュート263および第4シュート264を通じて入出金トレイ111に返却される。その後、扉体103が開かれ、係員等により入出金トレイ111から硬貨が取り出される。
【0104】
図9(a)、(b)は、硬貨処理装置10の出金処理について説明するための図である。
【0105】
係員等により、端末装置30で出金額(あるいは金種別の出金枚数)の入力を含む出金操作が行われる。出金操作に基づいて出金処理が開始される。
図9(a)に示すように、出金額に応じた金種の硬貨が、その金種に割り当てられた金種別収納部150から出金搬送部200(ベルトコンベア201)に繰り出される。繰り出された硬貨(出金硬貨)は、出金搬送部200により搬送され、出金スロープ270を滑り降りて入出金トレイ111に溜められる。硬貨の出金中、適宜、入出金トレイ111が揺らされることで、硬貨が一部分に固まらず、均一に溜められていく。
【0106】
出金スロープ270を通過する際、出金識別部280により硬貨の真偽、金種および正損が識別される。出金識別部280による識別の結果、正常硬貨でない機内リジェクト硬貨が発生した場合、当該機内リジェクト硬貨を含む入出金トレイ111内の全ての硬貨が繰出部120に排出される。そして、金種別収納部150から入出金トレイ111への出金が、最初から開始される。
【0107】
繰出部120に排出された硬貨は、入金搬送部190により搬送されて、入金識別部240により識別される。そして、識別の結果、正常硬貨は金種別収納部150に戻され、機内リジェクト硬貨は第1収納カセット170に収納される。
【0108】
機内リジェクト硬貨が発生することなく、全ての硬貨が入出金トレイ111に出金されると、扉体103が開かれ、係員等により入出金トレイ111から硬貨が取り出される。
【0109】
入出金トレイ111からの硬貨の取り忘れが発生すると、当該硬貨が残留検知センサ292により検知される。
図9(b)に示すように、取り忘れ硬貨は、入出金トレイ111から繰出部120に排出され、入金搬送部190により搬送されて、第1収納カセット170に収納される。
【0110】
図10(a)は、硬貨処理装置10の自動精査処理について説明するための図である。
【0111】
自動精査処理は、全ての金種別収納部150について精査を行う全精査処理と、選択された一部の金種別収納部150について精査を行う一部精査処理とを含む。
【0112】
係員等により、端末装置30で全精査または一部精査の操作が行われると、全精査処理または一部精査処理が開始される。2つの精査処理は、精査の対象が金種別収納部150の全てであるか一部であるかを除いて同じであり、金種別収納部150ごとに精査の動作が行われる。なお、
図10(a)では、便宜上、全ての金種別収納部150から硬貨が排出されているように矢印が描かれている。
【0113】
図10(a)に示すように、全精査処理または一部精査処理が開始されると、一つの金種別収納部150から硬貨が排出されて出金搬送部200により搬送され、入出金トレイ111を経由して繰出部120に収納される。この際、入出金トレイ111は、硬貨の排出が円滑に行われるよう、最大限、傾けられ得る。繰出部120から硬貨が繰り出され、入金搬送部190を搬送されて入金識別部240で金種の識別と計数が行われた後に一時保留部130に収納される(実線矢印参照)。
【0114】
一つの金種別収納部150内の全ての硬貨が一時保留部130に収納されると、一時保留部130内から全ての硬貨が排出されて、戻し搬送部140、繰出部120および入金搬送部190を通じて元の金種別収納部150に戻される(破線矢印参照)。機内リジェクト硬貨が発生した場合、当該硬貨は第1収納カセット170に送られる。
【0115】
残り全ての対象となる金種別収納部150について、上記と同様の精査動作が順次、行われる。
【0116】
各金種別収納部150における硬貨の計数結果が端末装置30に送信される。端末装置30では、その記憶部で金種別収納部150ごとに管理されている硬貨の在高と取得した計数結果とが比較され、操作表示部に精査結果が表示される。
【0117】
なお、各金種別収納部150の収納可能枚数(たとえば、1000枚)は、一時保留部130の収納可能枚数(たとえば、600枚)より多い。このため、一つの金種別収納部150の全ての硬貨が一時保留部130に収納できないことが生じ得る。この場合は、収納できない硬貨が、その量に応じて繰出部120、または、繰出部120と入出金トレイ111の双方に収納される。そして、これら硬貨が入金識別部240で金種の識別と計数が行われながら元の金種別収納部150に戻され、その後、一時保留部130内の硬貨が元の金種別収納部150に戻される。一時保留部130に収納された硬貨と収納されなかった硬貨の計数結果が合算される。
【0118】
自動精査処理(全精査処理、一部精査処理)は、予め設定された時刻に開始されてもよい。
【0119】
図10(b)は、硬貨処理装置10の回収処理について説明するための図である。
【0120】
回収処理は、全回収処理と一部回収処理とを含む。全回収処理では、全ての金種別収納部150に収納された全ての硬貨が回収される。一部回収処理では、予め選択された金種別収納部150において、硬貨の量が上限の所定量に達すると、下限の所定量に達するまで硬貨が回収される。
【0121】
係員等により、端末装置30で全回収の操作が行われると全回収処理が開始される。全回収処理が、予め設定された時刻に開始されてもよい。また、選択された金種別収納部150で硬貨が上限の所定量に達すると、一部回収処理が開始される。
【0122】
図10(b)に示すように、金種別収納部150から硬貨が排出されて出金搬送部200により搬送され、入出金トレイ111を経由して繰出部120に収納される。繰出部120から硬貨が繰り出され、入金搬送部190を搬送されて第1収納カセット170に収納される(実線矢印参照)。全回収処理では、各金種別収納部150から順次、全ての硬貨が排出される。一方、一部回収処理では、金種別収納部150から、下限の所定量となるまで硬貨が排出される。
【0123】
全回収処理では、全ての金種別収納部150から回収された硬貨が、第1収納カセット170に収納できない場合が生じ得る。このような場合など、第1収納カセット170が満杯で硬貨が収納できなくなった場合、収納できない硬貨が、一時保留部130を経由して第2収納カセット180に収納される(破線矢印参照)。
【0124】
なお、回収処理において、回収先を選択できるようにし、第1収納カセット170および第2収納カセット180のうち、選択された収納カセットに硬貨が回収されるようにしてもよい。さらに、入金識別部240で硬貨が識別され、識別の結果、正常硬貨が、第1収納カセット170および第2収納カセット180のうち一方の収納カセットに回収され、機内リジェクト硬貨が、他方の収納カセットに回収されるようにしてもよい。
【0125】
次に、入出金トレイ111から小分けに硬貨を排出させて繰出部120へ供給する、硬貨の小分け排出動作について説明する。
【0126】
図11(a)は、入出金トレイ111からの硬貨の小分け排出動作のために制御部410により実行される制御処理を示すフローチャートである。
図11(b)~(e)は、硬貨の小分け排出動作について説明するための図である。
【0127】
制御部410は、入金処理等において繰出部120へ硬貨を排出する際、硬貨が溜まった入出金トレイ111が徐々に傾くように回動機構300(モータ320)を制御する。また、制御部410は、繰出部120内の硬貨の量に基づいて回動機構300を制御する。
【0128】
図11(a)を参照して、制御部410は、回動機構300を動作させて、硬貨が溜められた入出金トレイ111を、その後側(入金シュート210側)が低くなるよう傾くように、所定角度だけ回動させる(S101)。
図11(b)に示すように、傾いた入出金トレイ111から一部の硬貨が排出され、入金シュート210を通じて繰出部120に収納される。
【0129】
制御部410は、繰出部120内の硬貨の量が規定量以上であるか否かを判定する(S102)。制御部410は、硬貨の量が規定量以上でなければ(S102:NO)、入出金トレイ111の角度が傾斜可能な最大角度に達したか否かを判定する(S103)。制御部410は、入出金トレイ111の角度が最大角度に達していなければ(S103:NO)、再び、入出金トレイ111所定角度だけ回動させる(S101)。
【0130】
図11(c)に示すように、繰出部120内に規定量の硬貨が溜まると、量検知センサ124により硬貨が検知される。これにより、制御部410は、硬貨の量が規定量以上に達したと判定する(S102:NO)。繰出部120の動作が開始され、繰出部120から硬貨が入金搬送部190に繰り出される。
【0131】
制御部410は、繰出部120内の硬貨の量が規定量未満になったか否かを判定する(S104)。
図11(d)に示すように、繰出部120から硬貨が繰り出されることにより、硬貨の量が規定量未満になると、量検知センサ124により硬貨が検知されなくなる。制御部410は、硬貨の量が規定量未満になったと判定すると(S104:YES)、入出金トレイ111を所定角度だけ回動させる(S101)。傾いた入出金トレイ111から硬貨が排出され、繰出部120に収納される。
【0132】
このように、硬貨の量が規定量未満になると入出金トレイ111が傾けられて規定量以上になるまで繰出部120に硬貨が供給される、という動作が繰り返される。
【0133】
図11(e)に示すように、入出金トレイ111が最大角度まで傾けられると、全ての硬貨の排出が完了する。制御部410は、入出金トレイ111の角度が最大角度に達していると判定すると(S103:YES)、入出金トレイ111を初期位置に戻す(S105)。
図11(a)の硬貨の小分け排出動作の制御処理が終了する。その後、繰出部120内の硬貨が全て排出されると、繰出部120の繰出動作が停止する。
【0134】
次に、出金時に入出金トレイ111を揺動させる揺動動作について説明する。
【0135】
図12(a)は、入出金トレイ111の揺動動作のために制御部410により実行される制御処理を示すフローチャートである。
図12(b)~(d)は、入出金トレイ111の揺動動作について説明するための図である。
【0136】
制御部410は、出金処理等において各金種別収納部150から入出金トレイ111へ出金される際、硬貨が溜まった入出金トレイ111が揺動するように回動機構300(モータ320)を制御する、また、制御部410は、入出金トレイ111の硬貨の量に基づいて回動機構300を制御する。
【0137】
図12(a)を参照して、制御部410は、フル検知センサ291により硬貨のフル状態が検知されたか否かを検知する(S201)。
図12(b)に示すように、出金搬送部200および出金スロープ270を通じて入出金トレイ111に出金された硬貨が、入出金トレイ111の入口付近に偏って集積され、積み上げられた状態になった場合、フル状態の量より少なくても、積まれた硬貨の高さが検知ラインL1を超え得る。この場合、フル検知センサ291によりフル状態が検知される。
【0138】
制御部410は、フル状態が検知されると(S201:YES)、回動機構300を動作させ、所定時間、入出金トレイ111を揺動させる(S202)。
図12(c)に示すように、入出金トレイ111が揺動することにより、積み上がった硬貨の山が崩れていき、
図12(d)に示すように、入出金トレイ111内で硬貨が均された状態となる。制御部410は、要求された出金枚数(出金額)の硬貨の出金が完了するまでに(S203:NO)、再度、フル状態が検知されれば(S201:YES)、入出金トレイ111を、再度、揺動させる(S202)。制御部410は、出金が完了すると(S203:YES)、制御処理を終了する。なお、制御部410は、出金識別部280によって硬貨の滞留が発生していないかを監視し、滞留の発生が検知された場合には、フル状態が検知されていなくても、回動機構300を動作させ、所定時間、入出金トレイ111を揺動させる。
【0139】
上記の例では、制御部410は、フル検知センサ291によりフル状態が検知された場合に入出金トレイ111を揺動させる。しかしながら、制御部410は、フル検知センサ291によるフル状態の検知を行わず、入出金トレイ111への出金が行われている時間、継続して入出金トレイ111を揺動させてもよい。また、制御部410は、出金が行われている時間に、定期的にあるいは1回だけ、所定時間、入出金トレイ111を揺動させてもよい。
【0140】
なお、
図12(e)に示すように、入出金トレイ111に導入された硬貨が、入出金トレイ111の右側の側面部111aに寄った位置に集まらずに中央部側に移動しやすいよう、側面部111aから内側に突出して硬貨を中央部へ案内するガイド部111bが設けられたり、入出金トレイ111の底面部に側面部111a側から中央部に向かって下る傾斜面111cが設けられたりしてもよい。
【0141】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0142】
入出金部110の後側(所定方向側)に、全ての複数の金種別収納部150が一列に並んで配置されているので、複数の金種別収納部150全体として、入出金部110への硬貨の出金経路が短くなる。これにより、出金処理の際、入出金部110への硬貨の出金に要する時間を短縮できる。
【0143】
さらに、各金種別収納部150の底部から硬貨が排出されてベルトコンベア201により直線的に入出金トレイ111へと搬送されるので、各金種別収納部150より低い位置に配置された入出金トレイ111へ短い搬送経路で硬貨を搬送できる。
【0144】
さらに、入出金部110の下方に繰出部120が配置され、繰出部120の後側(所定方向側)に、繰出部120と隣り合うように一時保留部130が配置されているので、入出金部110から一時保留部130への入金経路を短くできる。これにより、入金処理の際、入出金部110の硬貨を一時保留部130に収納させるのに要する時間を短縮でき、係員等が入金を確定させて硬貨処理装置10から離れることができるようになるまで時間を短くできる。
【0145】
さらに、入金搬送部190における一時保留部130よりも上流側に入金識別部240が配置されるとともに、一時保留部130から排出された硬貨を繰出部120へ戻す戻し搬送部140が設けられ、入金搬送部190が、戻し搬送部140により繰出部120に戻されて繰出部120から繰り出された硬貨を複数の金種別収納部150へ搬送するような構成とされている。これにより、一時保留部130に収納される硬貨だけでなく、一時保留部130から排出されて金種別収納部150に収納される硬貨を、同じ入金識別部240により識別できる。また、一時保留部130と繰出部120とが隣り合っているので、戻し搬送部140による搬送経路が短くなり、硬貨を繰出部120へ素早く戻すことができる。
【0146】
さらに、繰出部120の回転円盤122の傾きに対応して傾く第1基盤231と、縦向きに配置された第2基盤232が備えられるとともに、入金搬送路191が、第1基盤231に設置される第1搬送路192と第2基盤232に設置される第2搬送路193とを含むような構成とされているので、傾く方向(左右方向)の第1基盤231の寸法が大きくならず、当該方向の装置サイズ(左右の幅)をコンパクトにできる。
【0147】
なお、第1基盤231のみが備えられ、入金搬送路191全体が第1基盤231に設置された場合は、傾く方向(左右方向)の第1基盤231の寸法が大きくなるため、当該方向の装置サイズ(左右の幅)が大きくなってしまう。
【0148】
さらに、第1搬送路192と第2搬送路193とが中継搬送路194により中継され、当該中継搬送路194において硬貨の姿勢が、第1搬送路192を流れる姿勢から第2搬送路193を流れる姿勢に変えられるので、第1搬送路192から第2搬送路193へ硬貨を円滑に受け渡すことができる。
【0149】
さらに、第2搬送路193が、第2基盤232における複数の金種別収納部150に対向しない面に設置されているので、第2搬送路193において硬貨詰まりが発生したときに、第2搬送路193に対して金種別収納部150や入出金部110が存在しない側(装置の左側)からアクセスでき、硬貨詰まりの解消作業が行いやすくなる。
【0150】
さらに、入金された硬貨を金種別収納部150に収納せずに返却する場合に、返却する硬貨を第3シュート263の一部と第4シュート264とからなる排出路を通じて入出金部110に排出できるので、硬貨の返却先が入金先と同じになり、分かりやすい。
【0151】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0152】
<変更例1>
図13は、変更例1に係る、入出金トレイユニット500の構成を示す正面断面図である。
図14(a)、(b)は、変更例1に係る、入出金トレイユニット500の構成を示す側面断面図である。
図13は、
図14(a)のC-C´線で切断された断面図であり、
図14(a)、(b)は、
図13のB-B´線で切断された断面図である。
図14(b)には、回動体530が取り外された入出金トレイユニット500が示されている。また、
図14(a)、(b)には、入出金トレイユニット500とともに、出金スロープ270が描かれている。
【0153】
本変更例の硬貨処理装置10では、入出金部110が、上記実施形態の入出金トレイ111および回動機構300に替えて、入出金トレイユニット500を備える。入出金トレイユニット500は、入出金トレイ510と、排出筒520と、回動体530と、回動機構540と、を備える。
【0154】
入出金トレイ510は、外部から入金された硬貨および各金種別収納部150から出金された硬貨が溜まる、底部が円弧状の受皿部である。入出金トレイ510は、正面から見た断面形状が略五角形状を有するとともに、側面から見た断面形状が略半円形状を有し、上面が開口する。入出金トレイ510には、左右に、半円形の開口部511が形成される。また、入出金トレイ510には、後側に、硬貨が排出される排出口512が形成される。
【0155】
排出筒520は、上下方向に延びる方形の筒状を有し、排出口512に接続されるように入出金トレイ510と一体形成される。
【0156】
回動体530は、入出金トレイ510内に配置され、当該入出金トレイ510が開口する方向(上方向)に垂直な軸周りに回動可能である。回動体530は、入出金トレイ510の内部形状に対応した皿形状に形成され、側面から見た断面形状が略扇形形状を有する。回動体530には、左右に円盤部531が設けられる。各円盤部531の中心には、外側に突出する回動軸532が形成される。左右の円盤部531は、入出金トレイ510の左右の開口部511内に収まる。回動体530は回動方向に入出金トレイ111の排出口512よりも大きな寸法を有し、入出金トレイ510から硬貨が排出されないときには、排出口512が回動体530により塞がれる。
【0157】
回動機構540は、保持板541と、モータ542と、円板543と、フォトセンサ544と、を含む。回動機構540は、入出金トレイ510内で回動体530を回動させる。
【0158】
保持板541は、両側面部541aと後面部541bとで構成され、左右両側と後側とから入出金トレイ510および排出筒520を囲む。入出金トレイ510および排出筒520は、両側面部541aに固定される。回動体530の左右の回動軸532が、両側面部541aに形成された軸孔541cに挿入される。これにより、保持板541は、回動体530を回動可能に支持する。
【0159】
モータ542は、保持板541の右方に配置され、保持板541の右側の側面部541aにブラケット545を介して取り付けられる。モータ542は、その回転軸542aの回転角度を検知するセンサ(図示せず)を有する。回転軸542aが、回動体530の右側の回動軸532に連結される。
【0160】
円板543は、回動体530の左側の回動軸532に固定される。円板543には、外周縁部に切欠部543aが形成される。
図13に示すように、回動体530が排出口512を塞ぐ位置(以下、「初期位置」と称する)にあるとき、切欠部543aが最下部に位置する。
【0161】
フォトセンサ544は、そのセンサ部が円板543の外周縁部を挟むように、円板543の下端部に配置される。フォトセンサ544は、切欠部543aを光が透過することにより、回動体530が初期位置にあることを検知する。
【0162】
保持板541の上部には、入出金トレイ510の後側と排出筒520とを上方から覆うカバー550が取り付けられる。カバー550は、後側が高くなるように傾斜し、出金スロープ270に繋がる。カバー550には、回動体530が通る開口部551が形成される。
【0163】
図13、
図14(a)、(b)には示されていないが、入出金トレイユニット500には、上記実施形態の入出金トレイ111と同様、フル検知センサ291と残留検知センサ292とが設けられる。
【0164】
次に、入金時等に、入出金トレイ510から小分けに硬貨を排出させて繰出部120へ供給する、硬貨の小分け排出動作について説明する。
【0165】
図15(a)~(f)は、変更例1に係る、硬貨の小分け排出動作について説明するための図である。
【0166】
制御部410は、入金処理等において繰出部120へ硬貨を排出する際、回動体530が入出金トレイ510に溜められた硬貨に接して硬貨を少量ずつ排出口512から押し出すように、回動機構540により回動体530を回動させる。
【0167】
図15(a)に示すように、回動体530が初期位置にあり、当該回動体530で排出口512が塞がれた状態において、入出金トレイ510に硬貨が投入(入金)される。制御部410は、回動機構540を動作させて、回動体530を前回りに回動させる。
【0168】
図15(b)から
図15(e)に示すように、入出金トレイ510内に溜められた複数の硬貨のうち、一部の硬貨は回動体530に押されて排出口512から排出され、他の硬貨は回動体530がそれらの下を通過することにより入出金トレイ510内に残る。このようにして、回動体530に回動している間に、入出金トレイ510内から少しずつ硬貨が排出される。排出された硬貨は、排出筒520および入金シュート210を通って繰出部120に収納される。
【0169】
図15(f)に示すように、入出金トレイ510から全ての硬貨が排出されると、制御部410は、フォトセンサ544の検知に基づいて、回動体530を初期位置に停止させる。
【0170】
制御部410は、繰出部120内の硬貨の量に応じて回動体530の回動と停止とを繰り返すように構成され得る。この場合、制御部410は、量検知センサ124により繰出部120内の硬貨が規定量以上になったことが検知されると回動体530を停止し、その後、量検知センサ124により硬貨が規定量以下になったことが検知されると回動体530を回動させる。
【0171】
次に、出金時に回動体530を揺動させる揺動動作について説明する。
【0172】
図16(a)~(c)は、変更例1に係る、回動体530の揺動動作について説明するための図である。
【0173】
制御部410は、出金処理等において各金種別収納部150から硬貨が送り込まれる際、回動体530が入出金トレイ510に溜められた硬貨に接して硬貨を均すように、回動機構540により回動体530を揺動させる。
【0174】
制御部410は、
図12(a)の制御処理と同様の制御処理を実行する。即ち、制御部410は、フル検知センサ291により硬貨のフル状態が検知されると、所定時間、回動機構540を動作させ、回動体530を、後回りと前回りとに所定角度だけ交互に回動させて、揺動させる。制御部410は、入出金トレイ510への硬貨の出金が完了するまで、フル状態が検知される度に回動体530の揺動を繰り返す。
【0175】
図16(a)、(b)に示すように、回動体530が揺動することにより、入出金トレイ510内の硬貨が揺さぶられる。これにより、
図16(c)に示すように、入出金トレイ510内で硬貨が均された状態となる。
【0176】
なお、制御部410は、フル検知センサ291によるフル状態の検知を行わず、入出金トレイ510への出金が行われている時間、継続して回動体530を揺動させてもよい。また、制御部410は、出金が行われている時間に、定期的にあるいは1回だけ、所定時間、回動体530を揺動させてもよい。
【0177】
<変更例2>
図17(a)、(b)は、変更例2に係る、硬貨処理装置10の入金処理におけるリジェクト硬貨の返却動作について説明するための図である。
【0178】
上記実施形態では、
図7(a)に示すように、入金処理の際、入金識別部240で金種が識別できなかったリジェクト硬貨は、計数されることなく、入金搬送路191を搬送された後、第3シュート263を通じてリジェクト部160のリジェクトトレイ161に返却される。
【0179】
本変更例では、入金処理の際に、リジェクト硬貨を入出金トレイ111に返却できる。
【0180】
図17(a)に示すように、入金識別部240で金種が識別できなかったリジェクト硬貨は、計数されることなく、第1搬送路192を流れて第2搬送路193へと至り、第2搬送路193内に保留される。そして、入出金トレイ111から全ての硬貨が排出されると、入金の確定操作が行われる前のタイミングにおいて、
図17(b)に示すように、第2搬送路193に保留された硬貨が、第3シュート263および第4シュート264、即ち排出路を通じて入出金トレイ111に返却される。
【0181】
本変更例では、リジェクト硬貨が入出金トレイ111に返却されるので、返却された硬貨を、再度、入出金トレイ111から排出させて、入金搬送部190の入金識別部240で識別させることができる。この場合、金種が識別できた硬貨(正常硬貨)は、一時保留部130に収納され、金種が識別できなかった硬貨(リジェクト硬貨)は、第2搬送路193で保留された後に、再び、入出金トレイ111に返却される。入金識別部240での再識別は、1回あるいは複数回とすることができる。再識別されても最後まで入出金トレイ111に返却されたリジェクト硬貨は、その後、入出金口101から取り出される。
【0182】
さらに、本変更例では、第2搬送路193にリジェクト硬貨が保留されるので、リジェクト硬貨専用の保留部を設けなくてよい。
【0183】
なお、リジェクト硬貨がリジェクト部160に返却される返却モードと、リジェクト硬貨が入出金トレイ111に返却される返却モードとが選択できるようにされるとよい。また、第3シュート263がなくされることにより、リジェクト硬貨の返却先が入出金トレイ111のみにされてもよい。この場合、リジェクト部160には、繰出部120からの変形硬貨等のみが返却される。また、第4シュート264が入金搬送路191に接続される。
【0184】
<変更例3>
図18(a)、(b)は、変更例3に係る、硬貨処理装置10の入金処理について説明するための図である。
【0185】
本変更例では、入金処理において、別案件の硬貨の入金を連続して受け付けることができる。即ち、最初の硬貨の入金処理について確定操作が行われた後に、直ちに次の硬貨の入金処理を開始できる。
【0186】
まず、
図7(a)に示すように、最初の入金処理において、硬貨が一時保留部130に保留(収納)される。続けて、次の硬貨の入金処理が行われる場合、たとえば、最初の入金処理において確定操作が行われる前または同時に、連続入金を行うための操作が行われる。これにより、入金の確定操作が行われたとき、一時保留部130から金種別収納部150への硬貨の搬送が開始されない。
【0187】
扉体103が開かれて入出金トレイ111に硬貨が投入され、次の入金処理が開始される。この入金処理では、入出金トレイ111が一時保留部130の代わりに硬貨を保留する収納部として利用される。
【0188】
図18(a)に示すように、入出金トレイ111から硬貨が排出され、繰出部120に収納される。入出金トレイ111内の全ての硬貨が繰出部120に収納されると、
図18(b)に示すように、繰出部120から入金搬送部190に硬貨が繰り出され、搬送中に入金識別部240で識別される。識別の結果、正常硬貨は、第3シュート263および第4シュート264、即ち排出路を通じて入出金トレイ111に収納される。一方、リジェクト硬貨は、第3シュート263を通じてリジェクトトレイ161に返却される。
【0189】
その後、入金の確定操作が行われると、一時保留部130内の硬貨が、戻し搬送部140、繰出部120および入金搬送部190を経由して各金種別収納部150に収納される。その後、入出金トレイ111内の硬貨が、繰出部120および入金搬送部190を経由して各金種別収納部150に収納される。
【0190】
返却操作が行われた場合は、扉体103が開かれて入出金トレイ111から硬貨の取出しが可能となる。
【0191】
本変更例では、最初の入金処理の硬貨が一時保留部130から金種別収納部150に収納されるのを待つことなく、次の硬貨の入金処理を行うことができる。また、次の入金処理での硬貨の保留に入出金トレイ111が利用されるので、別の一時保留部が不要となる。また、返却操作がなされたときに、入出金トレイ111内から硬貨を素早く取り出せる。
【0192】
<変更例4>
図19(a)は、変更例4に係る、入金処理において制御部410により実行される、一時保留部130に保留された硬貨を収納するための制御処理を示すフローチャートである。
図19(b)は、変更例4に係る、高速収納処理が行われたときの硬貨の収納動作について説明するための図である。
【0193】
上記実施形態では、
図7(b)に示すように、入金の確定操作が行われると、一時保留部130内の硬貨が、その金種に応じた金種別収納部150に収納される。
【0194】
本変更例では、一時保留部130内の硬貨を金種別収納部150に収納する通常収納処理に加えて、一時保留部130内の硬貨を第2収納カセット180に収納する高速収納処理を行うことができる。高速収納処理が行われた場合、一時保留部130からの搬送径路が短い第2収納カセット180に硬貨が収納されるので、入金確定後の硬貨の収納時間を短縮でき、入金処理の時間を短縮できる。
【0195】
入金の確定操作が行われると、
図19(a)の制御処理が開始される。制御部410は、高速収納処理へ移行するための高速処理条件が満たされているか否かを判定する(S301)。高速処理条件は、予め設定でき、たとえば、以下の条件1~4のうち、少なくとも1つの条件とすることができる。
【0196】
条件1は、入金の確定操作の直後に次の入金を受け付ける要求(操作)を受けた場合である。条件2は、一時保留部130内の硬貨のうち、金種別収納部150へ収納可能な硬貨の割合が所定割合より低い場合である。たとえば、フル状態の金種別収納部150へは一時保留部130から硬貨を搬送できない。条件3は、一時保留部130内の硬貨が収納されるべき金種別収納部150に所定量以上の硬貨が収納されている場合である。条件4は、高速収納処理を行う設定が予め行われている場合である。なお、条件2の所定割合および条件3の所定量は、日時に応じて自動で変更できてもよい。
【0197】
高速処理条件が満たされていない場合(S301:NO)、制御部410は、通常収納処理を実行する(S302)。
図7(b)に示すように、一時保留部130内の硬貨が、戻し搬送部140、繰出部120および入金搬送部190を経由して各金種別収納部150に収納される。
【0198】
一方、高速処理条件が満たされている場合(S301:YES)、制御部410は、高速収納処理を実行する(S303)。
図19(b)に示すように、一時保留部130内の硬貨が、一時保留部130の後側から排出されて、第2収納カセット180に収納される。
【0199】
なお、一時保留部130から金種別収納部150への硬貨の搬送中に入金搬送部190で硬貨詰まり(ジャム)が発生することが、高速処理条件として設定されてもよい。この場合、通常収納処理中に硬貨詰まりが発生すると、制御部410は、通常収納処理から高速収納処理に切り替える。
【0200】
<変更例5>
図20(a)、(b)は、変更例5に係る、硬貨処理装置10の出金処理について説明するための図である。
【0201】
上記実施形態では、硬貨の詰まりを防止するため、出金時の入出金トレイ111の収容可能枚数が、入金時より少ない枚数に制限されている。
【0202】
本変更例では、出金時の収納可能枚数(たとえば、200枚)より多い硬貨が出金される場合、制御部410により、大量出金のための制御処理が実行される。これにより、出金時の収納可能枚数より多い硬貨を、入出金トレイ111に出金できる。
【0203】
大量出金のための制御処理が実行されると、
図20(a)に示すように、各金種別収納部150から繰り出された硬貨が、出金搬送部200により搬送され、入出金トレイ111に溜められることなく、繰出部120および入金搬送部190を経由して一時保留部130に溜められる。次に、
図20(b)に示すように、一時保留部130内の硬貨が、戻し搬送部140、繰出部120、入金搬送部190、第3シュート263および第4シュート264を通り、入出金トレイ111に上方から投出される。このように、出金搬送部200からではなく、入出金トレイ111の上方の第4シュート264から硬貨が入出金トレイ111内に投出されるので、出金時の許容枚数より多い硬貨が出金される場合であっても、硬貨の詰まりが懸念されない。
【0204】
<変更例6>
図21は、変更例6に係る、硬貨処理装置10の出金処理について説明するための図である。
【0205】
本変更例では、入金処理において、一時保留部130に硬貨が収納されて入金が確定した後、続いて硬貨の出金処理が行われる場合に、一時保留部130内の硬貨が、直接、出金される。
【0206】
図21に示すように、入出金処理が開始されると、各金種別収納部150から硬貨が排出され、出金搬送部200により搬送されて入出金トレイ111に出金される。同時に、一時保留部130から硬貨が排出されて、戻し搬送部140、繰出部120、入金搬送部190、第3シュート263および第4シュート264を通り、入出金トレイ111に出金される。これにより、出金処理に要する時間が短縮される。一時保留部130から排出された硬貨のうち、出金対象とならない金種の硬貨は、第3シュート263の位置を通過して金種別収納部150に収納されるとよい。あるいは、出金対象とならない金種の硬貨は、入金識別部240を通過した後に、一時保留部130に戻されてもよい。
【0207】
なお、出金に必要な硬貨が、一時保留部130内の硬貨で補える場合、金種別収納部150から硬貨が出金されないようにしてもよい。
【0208】
<その他の変更例>
上記実施形態では、全ての複数の金種別収納部150が入出金部110の後側に一列に並んで配置されているが、入出金部110の右側または左側に一列に並んで配置されてもよい。また、複数の金種別収納部150が、出金搬送部200(ベルトコンベア201)を挟んだ両側に配置(合せて二列に配置)されてもよい。
【0209】
さらに、上記実施形態では、出金搬送部200が、ベルトコンベア201により構成されているが、他のコンベアやコンベア以外の搬送装置により構成されてもよい。同様に、戻し搬送部140が、ベルトコンベア以外のコンベアやコンベア以外の搬送装置により構成されてもよい。さらに、入金搬送部190が、上記実施形態の構成以外の構成とされてもよい。
【0210】
さらに、上記実施形態では、一時保留部130は、戻し搬送部140と一体化されている。しかしながら、一時保留部130と戻し搬送部140とが別体に構成され、一時保留部130から戻し搬送部140に一枚ずつ硬貨が繰り出されるようにしてもよい。
【0211】
さらに、上記実施形態では、第2搬送路193が、第2基盤232の複数の金種別収納部150に対向しない面に設置されているが、第2基盤232の複数の金種別収納部150に対向する面に設置されてもよい。
【0212】
さらに、繰出部120、一時保留部130および金種別収納部150の構成は、上記実施形態の構成に限られず、硬貨を収納でき、繰り出すことができれば、如何なる構成であってもよい。
【0213】
さらに、上記実施形態において、制御部410は、入出金トレイ111を所定角度だけ回動させる際、入出金トレイ111を揺らしながらその傾き角度を大きくしていくように、回動機構300を制御してもよい。また、入出金トレイ111に振動装置が取り付けられてもよい。この場合、入出金トレイ111を回動させるときに振動装置を動作させて、入出金トレイ111を振動させる。入出金トレイ111が揺れることにより、その中の硬貨が均らされるので、傾いた入出金トレイ111から、より少量ずつ硬貨を排出できる。
【0214】
さらに、上記実施形態では、硬貨の量が規定量以上となるまで、入出金トレイ111が所定角度ずつ回動する。しかしながら、入出金トレイ111が、硬貨の量が規定量以上となるまで継続して回動するようにしてもよい。また、上限の規定量を検知するための上限量検知センサと下限の規定量を検知するための下限量検知センサとが設けられてもよい。この場合、上限の規定量まで硬貨が溜まると、入出金トレイ111の回動が停止され、下限の規定量まで硬貨が減ると、入出金トレイ111の回動が開始される。
【0215】
さらに、上記実施形態では、繰出部120内の硬貨の量を検知しながら、入出金トレイ111を段階的に徐々に傾ける。しかしながら、繰出部120内の硬貨の量を検知することなく、入出金トレイ111を段階的に徐々に傾けるようにしてもよく、また、入出金トレイ111を最大角度まで連続して徐々にゆっくりと傾けるようにしてもよい。
【0216】
さらに、入出金トレイ111に溜められた硬貨の量が少量である場合、入出金トレイ111を最大角度まで一気に素早く回動させるようにしてもよい。この場合、たとえば、硬貨が少量であることを検知するための検知センサが入出金トレイ111に設けられる。
【0217】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0218】
10 硬貨処理装置
110 入出金部
111 入出金トレイ(受皿部)
120 繰出部
122 回転円盤
130 一時保留部
140 戻し搬送部
150 金種別収納部
190 入金搬送部
191 入金搬送路
192 第1搬送路
193 第2搬送路
194 中継搬送路
200 出金搬送部
201 ベルトコンベア(コンベア)
231 第1基盤
232 第2基盤
240 入金識別部(識別部)
263 第3シュート(排出路)
264 第4シュート(排出路)